説明

グレーチング

【課題】 グレーチング本体の開閉操作をする際に、跳ね上がり防止機構を別途操作することなく跳ね上がり防止あるいは解除ができるグレーチングを提供する。
【解決手段】 グレーチング本体1の開閉用の取っ手15を上下摺動自在なものとするとともに躯体側の係止部材22と係合するグレーチング本体1の跳ね上がり防止機構5を組み込んだグレーチング。下端のフック部10が常時は自重によって躯体側の係止部材22に係止される位置にあるようグレーチング本体1の他端側に揺動自在に懸吊した懸吊部材9と、この懸吊部材9の上部に形成してある係合部12の下側に先端操作部が位置するように取っ手15の脚端から張出された作動アーム20とを備えていて、取っ手15をもち上げると作動アーム20の操作端部が係合部12と係合してフック部10が躯体側の係止部材22から離脱される方向に懸吊部材9を揺動させてロック解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の側溝等の上面を覆うグレーチングに関し、特に、跳ね上がり防止機構を備える片開きまたは観音開きのグレーチングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の側溝や排水枡等の蓋としては、水はけが良く、側溝等の内部のごみ詰まりが容易に視認でき、強度が高く、美観に優れる等の利点があるグレーチングが多く使用されている。グレーチングは側溝にごみが詰まったとき等に開く必要があり、取り外しできるように側溝等に設けられた受枠にはめ込まれて特に固定されないことが多いのであるが、グレーチングを取り外すときにはこれを持ち上げるために大きな力が必要であり、持ち上げるための大きな力を必要とせず開閉操作が楽な片開きまたは観音開きとしたものも使用されている。
【0003】
一般に車輌の通行量の多いところではグレーチングが変形して跳ね上がることがあり、そうした場所には跳ね上がり防止機構を備えたグレーチングが設置されている。ところが、片開きあるいは観音開きとしたグレーチングでは一方が枢着されているため跳ね上がることが少ないとの考えから跳ね上がり防止機構を備えないものが多く、跳ね上がり防止機構を備えるものであってもその跳ね上がり防止機構が特に片開きあるいは観音開き用ではない特許文献1に示されるようなものとなっている。
【0004】
特許文献1に開示されているのは、外枠内に主部材と横部材が格子状に形成されてなるグレーチングにおいて、平行する主部材間の底側外枠寄りに設けられ上下方向の貫通孔を有する補助部材と、この補助部材の貫通孔に回動自在に設けられた回動軸と、この回動軸の底側の端部に設けられた締付け板とを備えてなるグレーチングである。この特許文献1に示されるものでは締付け板によってU字状溝の受部の底板部を挟み付けることにより跳ね上がりを防止するものであり、回動軸を回動させることにより締付けたりそれを解除したりするようになっている。
【0005】
グレーチングを片開きあるいは観音開きとするのは主としてグレーチングを持ち上げるための大きな力を軽減するためであるが、開閉操作を楽に行うことも期待されている。ところが特許文献1に示されるような跳ね上がり防止機構を備えるものではグレーチングの開閉操作の際に跳ね上がり防止機構の回動軸を回動させて締付けたりそれを解除したりする必要があり、その回動させる操作が煩わしいという問題があった。
【特許文献1】特開2003−268865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点を解決し、グレーチングの開閉操作をする際に跳ね上がり防止機構を別途操作することなく跳ね上がり防止あるいは解除ができる、片開きまたは観音開きのグレーチングを提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために完成された本発明のグレーチングは、躯体側に一端が枢着されて躯体の溝口を塞ぐグレーチング本体の他端側に開閉用の取っ手を上下摺動自在に設けるとともに躯体側に設けた係止部材と係合してグレーチング本体の跳ね上がりを防止する跳ね上がり防止機構を組み込んだグレーチングであって、前記した跳ね上がり防止機構が、常時は自重によって下端に形成されているフック部が躯体側の係止部材に係止される位置にあるようグレーチング本体の他端側に揺動自在に懸吊された懸吊部材と、前記した取っ手の脚端から張出されてその先端操作部が懸吊部材の上部に形成した係合部の下側に位置する作動アームとを備えており、取っ手をもち上げると作動アームの操作端部が前記した係合部と係合して下端のフック部が躯体側の係止部材から離脱される方向に懸吊部材を揺動させてロック解除するように構成したことを特徴とするものである。なお、このような発明における懸吊部材はその下端面をフック部の鉤先に向けて傾斜する案内面としておくことが好ましく、これを請求項2の発明とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のグレーチングによれば、下端に形成されているフック部が常時は自重によって躯体側の係止部材に係止される位置にあるようグレーチング本体の他端側に揺動自在に懸吊されている懸吊部材と、この懸吊部材の上部に形成されている係合部の下側に先端操作部が位置するように前記した取っ手の脚端から張出された作動アームとよりなる跳ね上がり防止機構を採用したので、グレーチング本体が躯体に対して水平に収まっている状態では、懸吊部材の下端部が重力により躯体側の係止部材に係止される位置に向け振れてフック部が躯体側の係止部材に係合してグレーチングの跳ね上がりが防止される。また、グレーチング本体を開くときには取っ手を引き上げると、取っ手の脚端から張出された作動アームが引き上げられてその操作端部が前記した係合部と係合し、懸吊部材はそのフック部が躯体側の係止部材から離脱される方向に揺動させるのでフック部と係止部材の係合が解かれる。そして、さらに取っ手を引き上げれば躯体側に一端が枢着されて躯体の溝口を塞ぐグレーチング本体は開かれる方向に枢動されることとなり、従って、グレーチング本体を開くときには取っ手を引き上げるだけで、予め跳ね上がり防止機構を操作して係止状態を解除する手間が不要となる。
【0009】
また、取っ手を引き上げた状態では懸吊部材と係止部材とが接触しないので、取っ手を持ってグレーチング本体を閉じることができ、閉じた後取っ手を離せば係合部から離れるので、懸吊部材は係止部の設けられる端面側に振れてフック部が躯体側に設けられる係止部材に係合してグレーチング本体の跳ね上がりが抑止される。従って、グレーチング本体を閉じるときには閉じた後取っ手を離すだけで係止状態となり、閉じた後跳ね上がり防止機構を操作して係止状態とする手間が不要となる。さらに、懸吊部材の下端面をフック部の鉤先に向けて傾斜する案内面とした場合には、懸吊部材が係止部材と接触しても懸吊部材は案内面が係止部材に接触して回動し、グレーチングの下降を妨げることがないので取っ手を引き上げることなくグレーチングを閉じることができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照しながら具体的に説明する。
図は本発明の実施の形態を示すもので、図1は要部の縦断正面図、図2は要部の平面図、図3は要部の縦断側面図であり、図1及び図3はそれぞれ図2のA−A部及びB−B部における断面に相当するものである。
【0011】
このような図において、1はグレーチング本体であって、従来知られるグレーチング本体と同様、外枠2内に主部材3、3と横部材4、4を格子状に組み合わせて構成されており、図示しない側の端部は躯体に固着される受枠に枢着されて開閉自在となっている。そして、このグレーチング本体1のうち受枠に枢着されない側の端部には跳ね上がり防止機構5が設けられており、この跳ね上がり防止機構5を設けるために主部材3、横部材4は適宜切り取られている。前記した跳ね上がり防止機構5はその本体枠となる平行する2枚の枠板6、7と、枠板6、7の間に軸8により揺動自在に支持される懸吊部材9とから構成され、枠板6、7はグレーチング本体1の端面と直角に取付けられている。また、懸吊部材9のグレーチング本体1の端面に近い側の軸8による軸支部下方には上面が係止面となるフック部10が設けられており、懸吊部材9の下端面はフック部10が設けられた側が高くなる傾斜面の案内面11となっている。さらに、フック部10が設けられない側の端面上部には係合部12としての桿が固着されており、この桿12の両端部は枠板6、7を貫通して両側に張り出している。枠板6、7には前記した桿12が貫通する窓13、14が設けられ、この窓13、14は桿12の移動を妨げない形状として懸吊部材9の揺動を妨げないようになっている。
【0012】
さらに、グレーチング本体1の跳ね上がり防止機構5が設けられる側の端部には丸棒を折り曲げてコ字を伏せた形状に形成した取っ手15が設けられている。取っ手15の両脚部はそれぞれグレーチング本体1に取付けられた取っ手取付け板16、17に挿通されて上下動自在となっており、両脚部の下端には止め板18、19が固着されている。また、取っ手取付け板16、17の上面はグレーチング本体1の上面から取っ手15を形成する丸棒の直径寸法以上下がった高さとなっており、取っ手15をグレーチング本体1の上面から出ない状態で収納できるようになっている。こうした構成の取っ手は従来のグレーチングにも設けられていることもあるが、取っ手15を引き上げれば止め板18、19が取っ手取付け板16、17に当接してグレーチング本体1の端部が持ち上げられ、グレーチング本体1が開かれる。
【0013】
取っ手15の一方の脚部は枠板7の近傍に配置されており、枠板7側の止め板18には作動アーム20が張り出して設けられ、該作動アーム20は前記した係合部12としての桿の下方に位置するようになっている。そして、グレーチング本体1が水平な状態では懸吊部材9は係合部12としての桿の質量も加わり、下端部が重力によりフック部10が設けられる側に振れて係止状態となるが、取っ手15を引き上げると止め板18、作動アーム20が上方に移動し、前記した桿は作動アーム20により上方に移動させられ、懸吊部材9は回動して下端部がフック部10の設けられない側に振れて係止が解かれた状態となる。
【0014】
前記のように構成されたグレーチング本体1の、跳ね上がり防止機構5が設けられない側の端部は躯体に固着された受枠21に枢着される。受枠21の懸吊部材9に対応する位置には係止部材22が設けられている。図示の例では係止部材22は丸棒をコ字形状に折り曲げて形成されており、観音開きとしたもう一方のグレーチングの係止部材が一体になっている。図1〜3に示すグレーチング本体1が受枠21に収まって水平になっている状態では、懸吊部材9の下端部がフック部10の設けられる側に振れてフック部10が係止部材22に係合し、係止状態となってグレーチング本体1の跳ね上がりが防止される。
【0015】
取っ手15をグレーチング本体1から引き出して引き上げると、止め板18、19は図4、5に示すように上方に移動して取っ手取付け板16、17に当接し、作動アーム20も上方に移動して従動桿12を引き上げる。従動桿12が引き上げられると懸吊部材9は回動して下端部がフック部10の設けられない側に振れ、フック部10の係止部材22への係合が解かれることになる。さらに取っ手15を引き上げればグレーチング本体1の端部が持ち上げられ、グレーチング本体1を開くことができる。このようにグレーチング本体1を開くときには取っ手15を引き上げるだけで係止状態が解除されるので、開く際に跳ね上がり防止機構を操作して係止状態を解除する必要がない。
【0016】
開いたグレーチング本体1を閉じるときには、取っ手15を持って閉じれば懸吊部材9の下端部はフック部10の設けられない側に振れた状態となっているので、懸吊部材9が係止部材22に接触することなくグレーチング本体1が受枠21に収まることになる。グレーチング本体1が受枠21に収まった後取っ手15を離せば、取っ手15は自重で下がってグレーチング本体1の上面より下方に収まり、係合部としての桿12は作動アーム20により持ち上げられなくなるので、懸吊部材9は回動して下端がフック部10の設けられる側に振れ、フック部10が係止部材22に係合した図1〜3に示す係止状態となる。このようにグレーチング本体1を閉じるときにはグレーチング本体1を閉じた後に取っ手15を離すだけで係止状態となるので、グレーチング本体1を閉じた後に跳ね上がり防止機構を操作して係止状態とする必要がない。
【0017】
また、グレーチング本体1を閉じるときには、取っ手15を持つことなくグレーチング本体1を持って閉じることも可能である。その場合、懸吊部材9はグレーチング本体1を閉じる過程でフック部10の設けられる側に振れ、懸吊部材9が係止部材22に接触することになる。ここで係止部材22に接するのは案内面11であり、案内面11が係止部材22に接した状態で懸吊部材9が下降すれば懸吊部材9は案内面11と係止部材22が接触した状態で回動し、懸吊部材9の下降を妨げることはない。このようにグレーチング本体1が閉じられて受け枠21に収まると、案内面11と係止部材22の接触は終わり、懸吊部材9が重力により回動してフック部10が係止部材22に係合した係止状態となる。
【0018】
以上説明したように、本発明のグレーチングは、グレーチング本体を開くときには取っ手を引き上げるだけで係止状態が解除されるので、予め跳ね上がり防止機構を操作して係止状態を解除する必要がなく、グレーチング本体を閉じるときにはグレーチング本体を閉じた後に取っ手を離すだけで係止状態となるので、グレーチング本体を閉じた後に跳ね上がり防止機構を操作して係止状態とする必要がない利点がある。また、懸吊部材に案内面を設けた場合には、取っ手を引き上げることなくグレーチングを閉じるだけで係止状態となるので、グレーチング本体を閉じる操作がさらに簡単になる利点がある。
【0019】
前記実施の形態においては、跳ね上がり防止機構5の本体枠を平行する2枚の枠板6、7で構成するものとしているが、1枚の枠板として軸8を片持ちとすることも可能である。また、枠板6、7は懸吊部材9のグレーチング本体1の端面と直角に取付けたものとしているが、懸吊部材9のフック部10に対応する位置に係止部材を22を設けることができ、係合部12としての桿の下方に取っ手15の作動アーム20を位置させることができればどのような位置、角度としてもよい。さらに、取っ手15も丸棒を折り曲げてコ字を伏せた形状としたものに限ることはなく、作動アーム20を取付けることができ取っ手取付け板16、17により落下しないように保持できるものであれば、一本の棒状のもの、L字形状のもの等任意の形状のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部の縦断面図であり、図2のA−A部における断面に相当する図である。
【図2】要部の平面図である。
【図3】図2のB−B部における要部の断面図である。
【図4】取っ手を引き上げた状態を示す図2のA−A部における断面図である。
【図5】取っ手を引き上げた状態を示す図2のB−B部における断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 グレーチング本体
5 跳ね上がり防止機構
9 懸吊部材
10 フック部
11 案内面
12 係合部
15 取っ手
20 作動アーム
21 受枠
22 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体側に一端が枢着されて躯体の溝口を塞ぐグレーチング本体(1) の他端側に開閉用の取っ手(15)を上下摺動自在に設けるとともに躯体側に設けた係止部材(22)と係合してグレーチング本体(1) の跳ね上がりを防止する跳ね上がり防止機構(5) を組み込んだグレーチングであって、前記した跳ね上がり防止機構(5) が、常時は自重によって下端に形成されているフック部(10)が躯体側の係止部材(22)に係止される位置にあるようグレーチング本体(1) の他端側に揺動自在に懸吊された懸吊部材(9) と、前記した取っ手(15)の脚端から張出されてその先端操作部が懸吊部材(9) の上部に形成した係合部(12)の下側に位置する作動アーム(20)とを備えており、取っ手(15)をもち上げると作動アーム(20)の操作端部(20)が前記係合部(12)と係合して下端のフック部(10)が躯体側の係止部材(22)から離脱される方向に懸吊部材(15)を揺動させてロック解除するように構成したことを特徴とするグレーチング。
【請求項2】
懸吊部材(9) の下端面をフック部(10)の鉤先に向けて傾斜する案内面(11)としてある請求項1に記載のグレーチング。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−257706(P2006−257706A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74710(P2005−74710)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(393022470)三重重工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】