説明

グロメット

【課題】自動車の車体を構成するパネルへの取り付け、及び、パネルからの取り外しを容易に行うことができるグロメットを提供する。
【解決手段】グロメット1は弾性材料で構成され、グロメット本体5と、第1シール部6と、第2シール部7とを備えている。グロメット本体5は筒状に形成されて内側にワイヤハーネス4を通すとともにパネル2の孔3内に挿入される。第1シール部6は、グロメット本体5の一端部14から外周方向に突出した円環状に形成されている。第2シール部7は、グロメット本体5の外周面11aから突出し且つ該外周面11aから突出するにしたがって徐々に第1シール部6に近づく方向に傾斜した筒状に形成されて、第1シール部6との間にパネル2を挟む。そして、グロメット本体5と第2シール部7との連結箇所の外周面13c,17から凹に形成され且つグロメット本体5の周方向に沿って延在した凹溝8が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両としての自動車の車体等を構成するパネルに取り付けられ且つ内側にワイヤハーネスを収容するグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両としての自動車の車体等を構成するパネルを貫通させてワイヤハーネスを配索する際には、該ワイヤハーネスに水などの液体が付着することを防止するために従来から種々のグロメットが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたグロメットは、ゴムなどの弾性材料で構成されており、前述したパネルに取り付けられ且つ内側にワイヤハーネスを通すグロメット本体と、該グロメット本体をワイヤハーネスの所定の位置に固定するテープ状の固定部材とを備えている。
【0004】
グロメット本体は、ハーネス取付部と、パネル取付部とを一体に備えている。ハーネス取付部は、円筒状に形成され且つ一端部がパネル取付部に連なっている。ハーネス取付部は、内側にワイヤハーネスが挿通されるとともに、前述した固定部材が当該ハーネス取付部とワイヤハーネスとの外周に巻回されて、該ワイヤハーネスと固定される。
【0005】
パネル取付部は、椀状に形成されており、一端部に前述したパネルに設けられた孔に係止するフランジが設けられるとともに、他端部がハーネス取付部と連なっている。また、パネル取付部には、当該パネル取付部の内面からハーネス取付部から離れる方向に突出した棒状の連結部材が設けられている。この連結部材は、パネル取付部の内面から該パネル取付部の外側まで延出しており、先端部がワイヤハーネスの外周面に重ねられてテープ等で固定されている。
【0006】
フランジは、パネル取付部の一端部から該パネル取付部の外周方向に突出し且つ該パネル取付部の周方向に沿って延在した円環状に形成されている。フランジには、当該フランジの外周面から凹状に形成された前記パネルの孔と嵌合する嵌合溝が設けられている。この嵌合溝は、フランジの周方向に沿って延在している。
【0007】
前述した構成のグロメットは、グロメット本体の内側にワイヤハーネスを通し且つ該グロメット本体のハーネス取付部とワイヤハーネスとを固定部材で固定した状態で、嵌合溝をパネルの孔に嵌合させて、グロメット本体のパネル取付部のフランジが前記孔と係止することによって、パネルに取り付けられる。こうして、グロメットは、ワイヤハーネスに外部からの水などの液体が付着することを防止している。
【特許文献1】特開2000−233696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したグロメットは、パネルから取り外すには、連結部材をワイヤハーネスとともにパネルから離れる方向に引張ることにより、グロメットをパネルの孔から引き抜くので、ワイヤハーネス及び連結部材を引張るのに大きな力が必要なため、作業者に負担がかかっていた。また、パネルに取り付けるには、グロメット本体のパネル取付部をパネルの孔内に圧入して嵌合溝を該孔と嵌合させるので、グロメットをパネルの孔に押し込むのに大きな力が必要なため、作業者に負担がかかっていた。さらに、連結部材をワイヤハーネスに固定するため、部品点数及び組み付け作業工数が増加するという問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、自動車の車体を構成するパネルへの取り付け、及び、パネルからの取り外しを容易に行うことができるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、弾性材料から構成され且つ筒状に形成されて、内側にワイヤハーネスを通すとともに、パネルの孔内に挿入されるグロメット本体と、前記グロメット本体の一端部から外周方向に突出した円環状の第1シール部と、前記グロメット本体の外周面から突出した円環状に形成され且つ前記第1シール部との間に前記パネルを挟む第2シール部と、を備えたグロメットにおいて、前記第2シール部が、前記外周面から突出するにしたがって徐々に前記第1シール部に近づく方向に傾斜した筒状に形成され、前記グロメット本体と前記第2シール部との連結箇所の外周面から凹の凹溝が設けられるとともに、当該凹溝が前記グロメット本体の周方向に沿って延在していることを特徴とするグロメットである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記グロメット本体は、外径が前記パネルの前記孔の内径よりも小さく形成されているとともに、前記第1シール部と前記第2シール部との間の前記外周面から凸に形成され且つ前記パネルの前記孔の内面を押圧する凸部が設けられていることを特徴とするものある。
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、第2シール部がグロメット本体の外周面から突出するにしたがって徐々に第1シール部に近づく方向に傾斜した筒状に形成されるとともに、グロメット本体と第2シール部との連結箇所の外周面から凹で且つグロメット本体の周方向に沿って延在して形成された凹溝が設けられているので、凹溝が軸となって第2シール部を第1シール部から離れる方向に曲げ易くすることができる。このため、パネルの孔からグロメットを引き抜いて取り外す際の引張力を低減することができる。
【0013】
また、凹溝によって第2シール部を第1シール部に近づく方向へより曲げ易くすることができるので、パネルの孔にグロメットを押し込んで取り付ける際の挿入力を低減することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、グロメット本体は、外径がパネルの孔の内径よりも小さく形成されているとともに、第1シール部と第2シール部との間の当該グロメット本体の外周面から凸に形成され且つパネルの孔の内面を押圧する凸部が設けられているので、グロメット本体とパネルの孔との接する面積を小さくすることができる。このため、パネルの孔にグロメットを押し込んで取り付ける際の挿入力、及び、パネルの孔からグロメットを引き抜いて取り外す際の引張力を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明は、凹溝が軸となって第2シール部を第1シール部から離れる方向に曲げ易くすることができる。このため、パネルの孔からグロメットを引き抜いて取り外す際の引張力を低減することができる。したがって、グロメットのパネルからの取り外しを容易に行うことができる。
【0016】
また、凹溝によって第2シール部を第1シール部に近づく方向へより曲げ易くすることができるので、パネルの孔にグロメットを押し込んで取り付ける際の挿入力を低減することができる。したがって、グロメットのパネルへの取り付けを容易に行うことができる。
【0017】
請求項2に記載された発明は、グロメット本体とパネルの孔との接する面積を小さくすることができる。このため、パネルの孔にグロメットを押し込んで取り付ける際の挿入力、及び、パネルの孔からグロメットを引き抜いて取り外す際の引張力を低減することができる。したがって、グロメットのパネルへの取り付け及びパネルからの取り外しをさらに容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかるグロメットを、図1乃至図6を参照して説明する。本発明の一実施形態にかかるグロメット1(図1などに示す)は、車両としての自動車の車体を構成するパネル2(図3に示す)に取り付けられる。
【0019】
グロメット1は、図4に示すように、内側に前記自動車に配索されるとともに前記パネル2に設けられた孔3内を通るワイヤハーネス4を通す。グロメット1は、パネル2との間を水密に保ち、該パネル2との間から内側に水などの水分(液体)が浸入することを防止して、該ワイヤハーネス4に水などの水分(液体)が付着することを防止する。
【0020】
グロメット1は、ゴムなどの弾性変形自在な弾性材料で構成されている。グロメット1は、図1に示すように、筒状に形成されたグロメット本体5と、第1シール部6と、第2シール部7と、凹溝8と、凸部9とを一体に備えている。
【0021】
グロメット本体5は、図1又は図3に示すように、大径部11と、該大径部11に連なる小径部12と、大径部11と小径部12との間に配された段差部13と、を一体に備えている。大径部11と小径部12とは、それぞれ、円筒状に形成されており、互いに同軸に即ち直列に配されている。そして、大径部11の内径は小径部12の内径より大きく、大径部11の外径は小径部12の外径より大きい。
【0022】
大径部11は、外径が前述したパネル2の孔3の内径より小さく形成されているとともに、内径が前述したワイヤハーネス4外径よりも大きく形成されている。大径部11は、パネル2の孔3内に挿通されるとともに、内側にワイヤハーネス4を通す。小径部12は、内径が前述したワイヤハーネス4の外径と略等しくなるように形成されており、当該小径部12の内面と接触するようにワイヤハーネス4を通す。
【0023】
段差部13は、大径部11の外壁と小径部12の外壁とを連結する円環状の壁であり、大径部11と連なる外周部13aから小径部12と連なる内周部13bに向かうにしたがって徐々に該大径部11から離れる方向に傾斜して形成されている。
【0024】
前述した構成のグロメット本体5は、ワイヤハーネス4を大径部11の内側に通すとともに小径部12に該小径部12の内面と接触するように通した状態で、前述したパネル2の孔3内に大径部11が挿通される。
【0025】
第1シール部6は、グロメット本体5の大径部11の小径部12から離れた側の一端部14、即ちグロメット本体5の一端部14に設けられている。第1シール部6は、大径部11の一端部14から外周方向に突出し且つ該大径部11の周方向に沿って円環状に設けられている。第1シール部6は、大径部11の一端部14から垂直に突出した突出部15と、該突出部15に連なり且つ大径部11の外周面11aと平行に間隔をあけて相対する平行部16とを有した、断面L字状に形成されている。
【0026】
前述した構成の第1シール部6は、グロメット本体5の大径部11がパネル2の孔3内に挿通された際に、当該第1シール部6の平行部16の先端部16aと第2シール部7の後述する先端部18との間にパネル2を挟んで、該パネル2に係止する。即ち、第1シール部6は、第2シール部7との間にパネル2を挟んで、該パネル2に係止する。
【0027】
第2シール部7は、グロメット本体5の大径部11の小径部12寄りの外周面11aから突出して設けられている。第2シール部7は、大径部11の周方向に沿って円環状に設けられている。第2シール部7は、外周面11aから突出するにしたがって徐々に前述した第1シール部6に近づく方向に傾斜した筒状に形成されている。また、第2シール部7の外周面17は、前述したグロメット本体5の段差部13の外周面13cと連なっている。
【0028】
前述した構成の第2シール部7は、グロメット本体5の大径部11がパネル2の孔3内に挿通された際に、当該第2シール部7の先端部18と前述した第1シール部6の平行部16の先端部16aとの間にパネル2を挟んで、該パネル2に係止する。即ち、第2シール部7は、第1シール部6との間にパネル2を挟んで、該パネル2に係止する。
【0029】
凹溝8は、図2又は図3などに示すように、前述したグロメット本体5の大径部11と第2シール部7とが連なった連結箇所、即ちグロメット本体5と第2シール部7との間に設けられている。凹溝8は、グロメット本体5の段差部13即ちグロメット本体5及び第2シール部7の外周面13c,17から凹に形成されている。凹溝8は、グロメット本体5の周方向に沿って該グロメット本体5の全周に亘って形成されている。即ち、凹溝8はグロメット本体5の周方向に沿って延在している。
【0030】
凸部9は、図1又は図3などに示すように、前述したグロメット本体5の大径部11の外周面11aから凸に形成されている。凸部9は、グロメット本体5の大径部11の第1シール部6と第2シール部7との間に配されている。凸部9は、図4又は図6に示すように、グロメット本体5の大径部11がパネル2の孔3内に挿通されるとともに、前述した第1シール部6と第2シール部7とが互いの間にパネル2を挟んで該パネル2に係止した際に、該孔3の内面3aを押圧する。
【0031】
前述した構成のグロメット1は、以下のようにパネル2に取り付けられる。まず、ワイヤハーネス4を、大径部11の内側に通し且つ小径部12の内面と接触するように通して、グロメット本体5の内側に通した状態で、グロメット1をグロメット本体5の小径部12側からパネル2に設けられた孔3内に圧入する。
【0032】
そして、図3に示すように、第2シール部7が凹溝8を軸に第1シール部6に近づく方向に曲げられて、該第2シール部7がパネル2の孔3内に通されることで、図4に示すように、グロメット本体5の大径部11がパネル2の孔3内に挿通されるとともに、第2シール部7の先端部18と第1シール部6の平行部16の先端部16aとの間にパネル2を挟んで、これらの第2シール部7及び第1シール部6が該パネル2に係止する。
【0033】
さらに、グロメット本体5の大径部11の第1シール部6と第2シール部7との間に配された凸部9がパネル2の孔3の内面3aを押圧することで、グロメット本体5の大径部11がパネル2の孔3内に係止して、パネル2にグロメット1を固定する。こうして、グロメット1は、内側にワイヤハーネス4を通して、パネル2に取り付けられる。
【0034】
また、前述したように取り付けられたグロメット1は、以下のようにパネル2から取り外される。作業者が、グロメット本体5の大径部11側をパネル2から離れる方向に引張ることで、図5に示すように、第2シール部7が凹溝8を軸に第1シール部6から離れる方向に曲げられて、該第2シール部7がパネル2の孔3内に通される。そして、グロメット1がパネル2の孔3から引き抜かれる。こうして、グロメット1は、パネル2から取り外される。
【0035】
本実施形態によれば、第2シール部7がグロメット本体5の外周面11aから突出するにしたがって徐々に第1シール部6に近づく方向に傾斜した筒状に形成されるとともに、グロメット本体5と第2シール部7との連結箇所の外周面13c,17から凹で且つグロメット本体5の周方向に沿って延在して形成された凹溝8が設けられている。
【0036】
このため、凹溝8が軸となって第2シール部7を第1シール部6から離れる方向に曲げ易くすることができるので、パネル2の孔3からグロメット1を引き抜いて取り外す際の引張力を低減することができる。したがって、グロメット1のパネル2からの取り外しを容易に行うことができる。
【0037】
また、凹溝8によって第2シール部7を第1シール部6に近づく方向へより曲げ易くすることができるので、パネル2の孔3にグロメット1を押し込んで取り付ける際の挿入力を低減することができる。したがって、グロメット1のパネル2への取り付けを容易に行うことができる。
【0038】
さらに、グロメット本体5は、外径がパネル2の孔3の内径よりも小さく形成されているとともに、第1シール部6と第2シール部7との間の当該グロメット本体5の外周面11aから凸に形成され且つパネル2の孔3の内面3aを押圧する凸部9が設けられている。
【0039】
このため、グロメット本体5とパネル2の孔3との接する面積を小さくすることができるので、パネル2の孔3にグロメット1を押し込んで取り付ける際の挿入力、及び、パネル2の孔3からグロメット1を引き抜いて取り外す際の引張力を低減することができる。したがって、グロメット1のパネル2への取り付け及びパネル2からの取り外しをさらに容易に行うことができる。
【0040】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態にかかるグロメットを示す斜視図である。
【図2】図1に示されたグロメットの小径部側から見た平面図である。
【図3】図1に示されたグロメットをパネルの孔に圧入している状態を示す断面図である。
【図4】図1に示されたグロメットをパネルに取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】図4に示されたグロメットをパネルの孔から引き抜いている状態を示す断面図である。
【図6】図4中のVI−VI線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 グロメット
2 パネル
3 孔
3a 内面
4 ワイヤハーネス
5 グロメット本体
6 第1シール部
7 第2シール部
8 凹溝
9 凸部
11a 外周面
13c 外周面
14 一端部
17 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料から構成され且つ筒状に形成されて、内側にワイヤハーネスを通すとともに、パネルの孔内に挿入されるグロメット本体と、
前記グロメット本体の一端部から外周方向に突出した円環状の第1シール部と、
前記グロメット本体の外周面から突出した円環状に形成され且つ前記第1シール部との間に前記パネルを挟む第2シール部と、を備えたグロメットにおいて、
前記第2シール部が、前記外周面から突出するにしたがって徐々に前記第1シール部に近づく方向に傾斜した筒状に形成され、
前記グロメット本体と前記第2シール部との連結箇所の外周面から凹の凹溝が設けられるとともに、当該凹溝が前記グロメット本体の周方向に沿って延在していることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記グロメット本体は、外径が前記パネルの前記孔の内径よりも小さく形成されているとともに、
前記第1シール部と前記第2シール部との間の前記外周面から凸に形成され且つ前記パネルの前記孔の内面を押圧する凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−183084(P2009−183084A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20510(P2008−20510)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】