説明

グロメット

【課題】グロメットに設けた車体係止凹部に車体パネルの貫通穴を引っ掛かりなく落とし込めるようにして、挿入操作をスムーズに行うことができるグロメットを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスの電線群を密着させて貫通する内筒と、前記内筒の外周面に環状連結部を介して連結すると共に、傾斜壁部を備えた外筒とを備え、前記外筒は傾斜壁部の大径端側に軸線方向と平行の厚肉部を連続させると共に、該厚肉部との境界部の外周面に車体係止凹部を環状に設け、前記傾斜壁部の外周面に小径端から大径端にかけて段状の突条を周方向に間隔をあけて放射状に突設し、各段状の突条の先端を前記車体係止凹部の側面先端に位置させ、該突条の頂面を車体係止凹部の側面先端に向けて傾斜させた第1傾斜面を設けると共に、該第1傾斜面を挟む突条の両側面も傾斜させて第2、第3傾斜面として、該突条の先端部を3面カットの傾斜面としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグロメットに関し、詳しくは、自動車に配索するワイヤハーネスに組みつけて、車体パネルの貫通穴に装着し、貫通穴の挿通部分におけるワイヤハーネスの保護および防水、防塵を図るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンルームから車室内へ配索されるワイヤハーネスにはグロメットを装着し、エンジンルームと車室とを仕切る車体パネルの貫通穴にグロメットを取り付けて、貫通穴を通るワイヤハーネスの保護およびエンジンルーム側から車室への防水、防塵、遮音を図っている。
【0003】
この種のグロメットとして、本出願人は、車体パネルの貫通穴にグロメットを一方向より押し込むだけで、グロメットの外周に設けた車体係止凹部が貫通穴の周縁に係止される所謂ワンモーショングロメットを提供している。
特開2002−171647号公報で提供したワンモーション型のグロメット100は、図9(A)に示すように、エンジンルーム(X)と車室(Y)を仕切る車体パネル2の貫通穴3に、エンジンルーム(X)よりグロメット100に貫通して固着したワイヤハーネスW/Hを押し込む操作だけで、グロメット100の外周面に設けた車体係止凹部101を貫通穴3の周縁に係止し、ワイヤハーネスW/Hを車室(Y)に引き出している。即ち、車体パネル2を挟んでエンジンルーム(X)側がワイヤハーネスの押込側P1、車室(Y)側がワイヤハーネスの引出側P2となる。
【0004】
前記グロメット100は、ワイヤハーネスW/Hを密着して貫通させる小径筒部103の押込側端に拡径筒部104の小径端104aが連続し、該拡径筒部104の拡径端104b側の外周面に車体係止凹部101を設けている。
車体パネル2の貫通穴3への貫通・装着作業時には、小径筒部103を貫通穴3に挿入し、押込側P1からワイヤハーネスW/Hを押し込み、拡径筒部104の傾斜部分を内方に撓ませて変形させ、車体係止凹部101に貫通穴3の周縁を落とし込むことでグロメット1を車体2に係止している。
其の際、拡径筒部104の傾斜した外周面には周方向に段状の突条105を設けて貫通穴3の内周面との接触面積を減少して挿入抵抗を低減している。かつ、図9(B)に示すように、車体係止凹部101の側面101aの先端に達する方向に向けて突条105の突出量を減少し、側面101aの先端位置では突条105の突出量をゼロとしている。
【0005】
前記のように突条105の突出量を車体係止凹部101にむけて次第に減少すると挿入力の低減を図ることができる。
しかしながら、グロメットの貫通穴への挿入作業時、グロメットの中心軸線を貫通穴3の軸心と一致させて真っすぐに挿入することは難しく、グロメットはある程度は傾いて挿入される。その場合、貫通穴に対して車体係止凹部が傾いた状態となり、突条の側面のエッジが貫通穴の周縁に引っ掛かりやすい問題がある。特に、貫通穴の周縁からバーリングが突出したバーリング穴の場合、バーリングの先端が突条の側面に引っ掛かりやすい。よって、貫通穴は車体係止凹部にスムーズに落とし込みにくく、かつ、突条に損傷が生じやすい問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−171647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされもので、グロメットの傾斜した外周面に突条を設けて車体パネルの貫通穴へのグロメットの挿入力の低減を図ると共に、該突条に貫通穴の周縁が引っ掛かりにくくして、スムーズな挿入係止が行えるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、車体に設けた貫通穴に挿通するワイヤハーネスに外装し、前記車体に係止する弾性体からなるグロメットであって、
前記ワイヤハーネスの電線群を密着させて貫通する内筒と、
前記内筒の外周面に環状連結部を介して連結すると共に傾斜壁部を備えた外筒を備え、
前記外筒は、前記傾斜壁部の大径端側に軸線方向と平行の厚肉部を連続させ、該厚肉部との境界部の外周面に車体係止凹部を環状に設け、かつ、前記傾斜壁部の外周面に小径端から大径端にかけて段状の突条を周方向に間隔をあけて放射状に突設し、
前記各段状の突条の先端を前記車体係止凹部の側面先端に位置させ、各突条の段状の頂面を車体係止凹部の側面先端に向けて傾斜させた第1傾斜面を設けると共に、該第1傾斜面を挟む突条の両側面を傾斜させて第2、第3傾斜面として、該突条の先端部を3面カットの傾斜面としていることを特徴とするグロメットを提供している。
【0009】
前記のように、突条の先端部で、頂面をカットして第1傾斜部を設けるだけでなく、突条の両側面もカットして第2、第3傾斜面を設け、車体係止凹部に接する突条の先端部を3面カットの傾斜面で構成している。該形状とすると、車体係止凹部が貫通穴に対して傾斜しても、貫通穴の内周面または内周面から突出したバーリングは突条に引っ掛かっても、傾斜面に対して滑るように作動し、傾斜面で車体係止凹部へとガイドして貫通穴の周縁およびバーリングを車体係止凹部にスムーズに落とし込むことができる。
【0010】
前記外筒の傾斜壁部および突条は、車体の貫通穴の内径と対応する外径位置で傾斜角度を変えた屈曲部を設け、該傾斜壁部の外周面は前記屈曲部から大径側の傾斜角度を小径側より小さく、前記第1〜第3傾斜面は前記屈曲部から車体係止凹部に達する大径側に設けている。また、第1〜第3傾斜面同士の接合ラインおよび第2、第3傾斜面と頂面との接合ラインにアールを付けて、エッジとしていない。
このように、貫通穴の内周面と接触する位置から突条を3面カットとすると、挿入力の低減と、前記貫通穴の周縁との引っ掛かりが無くなることの両方の作用で、よりスムーズに車体係止凹部で貫通穴の周縁を係止することができる。
【0011】
前記第1〜第3傾斜面の頂面に対する傾斜角度は30度〜60度とすることが好ましい。
【0012】
また、前記突条の個数は4〜8本、好ましくは6本としている。
前記突条は周方向に所要幅を有する段状の突起と、これら突条の頂面を貫通穴の内周面と面接触させてグロメットを安定姿勢で挿入できるようにしている。其の際、接触面積が小さい程、挿入抵抗を低減して挿入力の低下を図ることができるが、突条の接触面積が小さいと、グロメットが傾いた際に突条を設けていない部分に貫通穴の内周面が接触することになる。この両者の相関関係より、突条の本数および接触面積が最適となるように設定しており、この観点から、前記突条は4〜8本、好ましくは6本としている。
【0013】
グロメットは、前記内筒の両端の押込側と引出側に挟まれた長さ方向中間部の外周から前記環状連結部を突設し、該連結部の外周端に前記外筒の厚肉部を連続させ、該外筒の傾斜壁部の小径端側内周面は前記内筒の外周面と空間をあけて切り離し、該内筒の引出側は前記傾斜壁部より外方へ突出していることが好ましい。
前記傾斜壁部の小径端に前記内筒の軸線方向と平行に延在する引出先端側筒部を設け、該引出先端側筒部の内周面と内筒の外周面との間に前記切り離された空間をあけてもよい。
【0014】
前記グロメットでは、ワイヤハーネスを密着して貫通させる内筒と、車体係止凹部を設けた外筒とは、ワイヤハーネスの引出端側で大きな空間をあけて切り離している。
この切り離し型としたグロメットでは、グロメットから引き出されて車室側に配索されるワイヤハーネスが90度近く急激に屈曲され、内筒が屈曲されても、外筒に直接的に内筒の変形を伝達させないようにすることができる。また、内筒の引出端側から距離をあけた長さ方向の中間位置から環状連結部を介して外筒と連結しているため、内筒の変形は環状連結部でも吸収でき、外筒の大径端側に設けた車体係止凹部に変形の影響を与えないようにすることができる。
【0015】
前記切り離し型のグロメットでは、前記環状連結部は前記内筒との連結点より前記押込側に向けて傾斜して突出し、該環状連結部の傾斜部から前記外筒の傾斜壁部の内面に向けて押しリブを突設し、該押しリブが当接する前記傾斜壁部の位置より前記屈曲点側に前記曲げ応力吸収部を設けていることが好ましい。
【0016】
グロメットを車体パネルの貫通穴に挿入する際、内筒の押込側から引き出されるワイヤハーネスを作業員が持って押し込んでいる。該内筒には環状連結部を介して外筒を連結しているため、外筒の引出側の傾斜壁部には押し込み力が伝わりにくい。そのため、環状連結部に押しリブを突設し、該押しリブを傾斜壁部の引出側の内周面に押しあてて、押しリブを介して傾斜壁部を押し込み力を伝達し、グロメットの挿入作業性を高めている。
また、該環状連結部を薄肉としていると共に、径方向に突出させずに、傾斜させて突出させいるため、内筒がワイヤハーネスの曲げにより変形した時に環状連結部で変形を吸収させて外筒に変形の影響を及ぼさないようにしている。これにより、押込側のエンジンルーム側でワイヤハーネスが急激に曲げられても、環状連結部で変形を吸収し、外筒に設けた車体係止凹部を変形させないようにすることができる。
【0017】
前記環状連結部は内筒から押込側に傾斜させた後に引出側に傾斜させたV形状とすることが好ましい。該形状とすることで、内筒がワイヤハーネスの曲げにより変形した際に、環状連結部で変形を吸収できる量を増加することができる。
また、前記押しリブは全周に連続して設けると、傾斜壁部へ伝える押し込み力を均等に作用させることができるために好ましい。但し、グロメットにケーブルやホースを貫通する場合には、これらの貫通部分では分断している。
また、押しリブの肉厚は前記環状連結部の肉厚の2〜4倍とし、かつ、前記傾斜壁部の肉厚より大としていることが好ましい。
【0018】
本発明のグロメットは、前記切り離し型のタイプのグロメットに限定されず、傾斜壁部の小径端を環状連結部を介して前記内筒に連結している前記図9に示すタイプのグロメットにも好適に用いられる。
【発明の効果】
【0019】
前述したように、本発明のグロメットでは、外筒の傾斜壁部に設けた段状の突条を、その車体係止凹部と接する側の先端部で3面カット形状としているため、貫通穴の内周面に突条が引っ掛かることを防止でき、車体係止凹部への貫通穴の周縁の落とし込みをスムーズに行え、挿入フィーリングを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のグロメットの実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7に、本発明のグロメットの第一実施形態を示す。
グロメット1は、図6に示すように、自動車のエンジンルーム(X)から車体パネル2に設けた貫通穴3を通して車室(Y)へと配索されるワイヤハーネスW/Hに装着し、貫通穴3の周縁に係止して車体に取り付けるものである。グロメット1をエンジンルーム側からの押し込み操作で貫通穴3を通して車体に取り付けるワンモーション型のグロメットとし、グロメット1の一端は押込側P1、他端は引出側P2となる。グロメット1はゴムまたはエラストマーで一体成形している。
【0021】
第一実施形態のグロメット1は、前記した傾斜壁部の小径端側と内筒との間に空間を設けた切り離し型としている。
ワイヤハーネスW/Hの電線群を密着させて貫通する小径の内筒5と、該内筒5の両端の押込側5P1と引出側5P2に挟まれる長さ方向中間部の外周面5aから突出する環状連結部6と、該環状連結部6の外周に連続する大径の外筒8を備えている。
【0022】
外筒8は内筒5と同心で、内筒5の長さ方向の中間部分に空間をあけて位置し、外筒8の長さ方向の両側の押込側P1および引出側P2の両方で内筒5が突出している。
外筒8は環状連結部6の外周との連続位置から引出側P2へと延在し、該連続位置に設けた厚肉部9を設け、厚肉部9に連続して引出側P2へ縮径する傾斜壁部11を延在している。厚肉部9と傾斜壁部11の大径端との境界に車体係止凹部10を外周面に環状に開口して設けている。また、傾斜壁部11の小径端に内筒5の軸線方向と平行に延在する引出先端側筒部12を連続させている。
【0023】
前記引出先端側筒部12の内周面と内筒5の外周面5aとの間は空間Sをあけて切り離している。即ち、内筒5の外周を空間Sをあけて外筒8の小径端側で囲んだ形状とし、かつ、小径筒部5の引出側5P2を外筒8から外方へ突出させている。
【0024】
前記空間Sの径方向寸法d1は、図4に示すように、内筒5の半径d2の1/2〜3/2とし、本実施形態では3/4としている。また、空間Sを挟んで内筒5の外周面5aと平行に対向する引出先端側筒部12の長さL1はグロメット1の大きさに応じて変わるが、5mm〜15mm程度としている。
【0025】
外筒8の厚肉部9は、図4に示すように、環状連結部6の外周端6aとの連続部から押込側P1へと若干突出し、押込側先端面9aは軸線0に対して直交する垂直面としている。該厚肉部9と傾斜壁部11の大径端との間に設ける車体係止凹部10は、底面10aを挟む引出側面10bの先端を前記傾斜壁11の大径端11aに連続させている。該傾斜壁部11は大径端11aと小径端11bとの間で外周面の傾斜角度を変えた屈曲部11cを設けている。該屈曲部11cより小径側部11dの傾斜角度は大とし、屈曲部11cより大径側11eは傾斜角度を小さくしている。
【0026】
前記傾斜壁部11の傾斜角度を変えた外周面には、車体係止凹部10の引出側面10bの先端の大径端11aから小径端11bにかけて軸線方向の段状の突条15を周方向に間隔をあけて6本設けている。これらの突条15は周方向に同一幅としているため、小径端から大径端に向けて放射状に延在する突条15は小径側では周方向の間隔が狭くなり密に配置され、大径側では周方向間隔が広がっている。
前記屈曲部11cでは突条15を周方向の連続させた仮想外径を車体パネル2の貫通穴3の内径と同等としている。
【0027】
前記突条15は、図1(A)および図2に示すように、車体係止凹部10の引出側面10bの先端に接する位置から屈曲部11cに達する大径側11eを3面カット形状としている。
即ち、突条15の頂面15aを車体係止凹部10の引出側面10bの先端に向けて傾斜させた第1傾斜面15cと、該第1傾斜面15cを挟む突条15の両側面15d、15eも傾斜させて第2傾斜面15f、第3傾斜面15gとし、突条15の先端側を3面カットの傾斜面から構成している。
【0028】
かつ、第1傾斜面15cと第2傾斜面15fとが接合する屈折ライン15m、第1傾斜面15cと第3傾斜面15gとが接合する屈曲ライン15n、および第2、第3傾斜面15f、15gと頂面15cとが接合する屈曲ライン15pは、いずれもアールを付けている。
【0029】
前記第1傾斜面15c、第2傾斜面15f、第3傾斜面15gは頂面15aに対して30度〜60度で傾斜させ、本実施形態では48度としている。
【0030】
また、傾斜壁部11の突条15を設けていない外周面には、図1および図2に示すように、突条15の根元部分と中央部分とに軸線方向の溝15k、15iを設けて、傾斜壁部11を撓み易くしている。
【0031】
前記外筒8の内周面は、厚肉部9から傾斜壁部11の屈曲部11cまで、即ち、厚肉部9と傾斜壁部の大径側部11eの間は、軸線方向Oと平行な平行面11hとしている。
また、突条15では、図5に示すように、その内周面を窪ませて設けた凹部15hを突条の長さ方向全長に設け、突条15を撓みやすくしている。
【0032】
外筒8と内筒5とを連結する前記環状連結部6は図4に示すように、内筒5の外周面5aと連続する内周端6bより押込側P1に向けてV字状に傾斜させて突出している。該環状連結部6の外周端6aは内周端6bより押込側P1に位置させて外筒8の厚肉部9と連結している。
即ち、前記図9に示す従来のグロメット100では、拡径筒部の小径側を小径筒部と連続させていたのに対して、本発明のグロメットでは拡径筒部に対応する外筒8の大径側を環状連結部6を介して内筒5と連結している。
【0033】
環状連結部6の肉厚t3は内筒5の肉厚t4と略同等か若干薄くして撓みやすくしている。また、内筒5の外周面5aと傾斜して連結する環状連結部6の連結部の角度θは20度〜30度としている。このように、内筒5と外筒8とを径方向に連結せずに、環状連結部6を傾斜させて内筒5と連結し、言わばエグリをいれた状態で連結している。これにより、内筒5がワイヤハーネスの曲げに連動して変形した時に環状連結部6で変形を吸収して、外筒8に直接的に変形を伝達しない逃げ部としている。
【0034】
環状連結部6には、内周端6bからV字の突出端6cとの間の傾斜部に前記傾斜壁部11に向けて屈曲した屈曲部6dを設けている。該屈曲部6dに厚肉とした押しリブ18を傾斜壁部11に向けて突出している。該押しリブ18は周方向に連続させ、図5に示すように、オープナーケーブルおよび給水ホースのガイド用内筒28、29の配置部では分割している。
【0035】
前記押しリブ18の肉厚t5は厚くし、環状連結部6の肉厚t3の2〜4倍とし、傾斜壁部11の肉厚t1より大とし、前記厚肉部11と同程度の厚さとしている。
押しリブ18を肉厚としているのは、グロメット1を車体パネル2の貫通穴3に押し込む挿通作業時に、押しリブ18の突出端18aが傾斜壁部11の内周面に当接し、押し込み力を外筒8に伝達する役割を持たせていることによる。また、グロメット1を車体パネル2に取り付けた状態で、押しリブ18の突出端18aは傾斜壁部11の内周面と当接するように突出端18aと傾斜壁部11の内周面に近接させている。これにより、押しリブ18、内筒5、環状連結部6、外筒8に囲まれた遮音空間Bを形成できるようにしている。
【0036】
前記押しリブ18は図4に示すように、外径方向に若干傾斜させて突出し、突出端18aは引出先端側筒部12に連続する傾斜壁部11の小径端側の内周面に対向させている。押しリブ18が当接する傾斜壁部11側には、引出先端側筒部12に傾斜壁部11より内方に突出させたストッパー用突起12aを設けている。該ストッパー用突起12aを設けていることにより、押しリブ18の突出端18aが引出先端側筒部12の内部に滑り落ちることを防止し、傾斜壁部11と必ず接触して傾斜壁部11に押し込み力を伝達できるようにしている。
【0037】
さらに、傾斜壁部11には、前記押しリブ18の突出端18aが当接する部分の外径側から前記屈曲部11cに達するまでの内周面に浅い凹部を環状に設け、肉厚t6を薄くした薄肉部19を形成している。このように、傾斜壁部11の屈曲部11cから小径側に薄肉部19を設けることで、引出先端側筒部12がワイヤハーネスW/Hの曲げにより変形した際の応力吸収部としている。即ち、薄肉部19に曲げ応力を集中させ、車体係止凹部10に変形を伝達しにくくしている。該薄肉部19の肉厚t6は前記環状連結部6の肉厚t3以下としている。
【0038】
グロメット1に、ボンネット開放用のオープナーケーブルとウォッシャー用の給水ホースとの2本の線材を貫通させるようにしている。そのため、図2に示す貫通穴24、25を設け、図1に示すように、貫通穴24、25からガイド用外管26、27を突設している。これらガイド用外管26、27は先端に閉鎖部26a、27aを設け、前記線材を貫通する時に切断している。また、前記環状連結部8には、オープナーケーブルと給水ホースの貫通穴31と32を設けている。
【0039】
ワイヤハーネスW/Hを密着させて貫通する小径な内筒5は、外筒8の長さ方向の両端から突出させ、該突出した部分の内周面に間隔をあけて3カ所に防水用のリールリブ33を突設している。
【0040】
また、図6に示すように、グロメット1を取り付ける車体パネル2の貫通穴3は、貫通穴周縁3aから押込側P1に向けたバーリング3bが突出したバーリング穴であるため、前記外筒8に設ける車体係止凹部10は、該バーリング穴に対応した形状としている。
【0041】
前記グロメット1へのワイヤハーネスW/Hの取り付け方法は、内筒5の内周面を治具(図示せず)で拡大しながらワイヤハーネスW/Hの電線群を貫通させる。貫通後、内筒5の両端5P1と5P1から引き出されたワイヤハーネスW/Hと、両端5P1、5P2を粘着テープ40を巻き付けて固着している。
【0042】
内筒5に貫通するワイヤハーネスW/Hの外径の増減については環状連結部6で吸収し、該環状連結部6を介して内筒5と連結した外筒8に影響を殆ど及ぼさず、外筒8の外径を設計通りに保持できる。即ち、環状連結部6は薄肉として変形しやすくしていると共に、V字状としているため、径方向の増減に屈曲角度を変えるだけで対応できる。
【0043】
ワイヤハーネスW/Hに取り付けたグロメット1は、図6に示すように、エンジンルーム(X)と車室(Y)とを仕切る車体パネル2のバーリング3bを有する貫通穴3に通して取り付けている。
グロメット1の貫通穴3への挿入作業は、エンジンルーム(X)側から貫通穴3に内筒5の引出端5P2を挿入し、エンジンルーム(X)側から、グロメット1に取り付けてワイヤハーネスW/Hを作業員が持ってグロメット1を押し込んでいく。この一方側からの押し込み操作のみのワンモーションでグロメット1を貫通穴3に挿入係止している。
【0044】
詳細には、グロメット1の貫通穴3への挿通作業時に、外筒8の傾斜壁部11の小径側の部分11dは、貫通穴3の内径よりも小さいためにスムーズに挿入できる。傾斜壁部11の屈曲部11cが貫通穴の内周面3aに達すると、傾斜壁部11の突条15が内周面3aに接触した時点から、挿入抵抗が発生し、外筒8は貫通穴の内周面3aから容易に押し込まれない。
しかしながら、内筒5の押込側P1から引き出されるワイヤハーネスW/Hを作業員が持って押し込み作業すると、ワイヤハーネスW/Hに密着した内筒5が引き出し方向のP2側に前進する。該内筒5の移動により、内筒5に連結した環状連結部6の押しリブ18も外筒5の傾斜壁部11の内面に向けて前進し、その突出端18aは傾斜壁部11の内周面に突き当たる。このように、傾斜壁部11が押しリブ18により押されて前進するため、傾斜壁部11を設けた外筒が貫通穴3を通して車室(Y)側へと前進する。
【0045】
前記押しリブ18により傾斜壁部11を押し込んでいく時、その外周面に突条15を設けて、貫通穴の内周面3aおよびバーリング3bの内周面と突条15の頂面15aを接触させているだけであるため、接触面積が減少され、挿入力を低減できる。さらに、突条15の内周面に凹部15hを設け、突条15の剛性を低下して内方へ撓みやすくしているため、挿入力の低減を図ることができ、屈曲部11cからの挿入力は過大とならない。
【0046】
押しリブ18による押し込みで傾斜壁部11が押し込まれ、突条15の大径側が貫通穴内周面3aに達すと、3面カットの第1〜第3傾斜面15c、15f、15gと接触する。その際、車体係止凹部10が貫通穴3の内周面3aおよびバーリング3bの内周面と同心とならず傾いていても、突条15の側面15d、15eに第2、第3傾斜面15f、15gを設けているため、バーリング3bの先端が突条15に引っ掛かることなく傾斜面を滑り、車体係止凹部10側へとガイドされる。このように、突条15の3面カットの先端部から滑り落ちるように車体係止凹部10内に貫通穴の内周面3aおよびバーリング3bが落ち込んでいき、グロメット1を車体パネル2に固定できる。
【0047】
前記のように車体パネル2にグロメット1が固定された後、図7(A)に示すように、車室(Y)に引き出されたワイヤハーネスW/Hが90度下向き(あるいは上向き、右向き、左向き)に急激に屈曲して配索される場合が多い。
ワイヤハーネスW/Hが90度下向きに屈曲された場合、ワイヤハーネスW/Hを密着して貫通すると共にテープ40で固着された内筒5は、ワイヤハーネスW/Hの曲げに追従し、引出端5P2側では下向きに曲がることとなる。
【0048】
この場合、本発明のグロメット1では、内筒5の引出端5P2が下向きに屈曲しても、外筒8は内筒5の引出端5P2側で連結しておらず、外筒8の引出先端側筒部12と内筒5との間には大きな空間Sを存在させている。よって、内筒5は外筒8との間の空間S内で曲がるだけであり、外筒8の引出端側で曲げを伝えない。
ワイヤハーネスが90度等に急激に曲げられた場合、内筒5と連結した環状連結部6を介して外筒8に曲げが伝達することになるが、その場合も、V形状とした薄肉の環状連結部6で変形を吸収する。
さらに、車体係止凹部10を設けた部分の内周面に連続する傾斜壁部11の内周面に凹部を設けず軸線方向と平行面11hとして、車体係止凹部10の支持力を高めている。よって、車体係止凹部10に浮き上がりを防止してシール性を確保することができる。
【0049】
一方、図7(B)に示すように、押込側P1のエンジンルーム(X)側でワイヤハーネスW/Hが曲げられる場合も、環状連結部6で曲げを吸収できると共に、車体係止凹部10を前記のようにしっかりと支持している。よって、曲げの影響により車体係止凹部10が変形して浮き上がってシール性が低下することを防止できる。
【0050】
図8に本発明の第二実施形態のグロメット1−1を示す。
グロメット1−1は、前記図8に示すグロメット100と同様に、引出側P2で傾斜壁部の小径端を内筒50に連結した連結タイプのグロメットである。
前記第一実施形態の内筒に対応する小径筒部50と、外筒に対応する拡径筒部51の傾斜壁部52の小径端とを、環状連結部53を介して連結している。
前記傾斜壁部52には第一実施形態と同様に傾斜壁部52に屈曲部52cを設け、かつ、小径端から大径端に向けて段状に突出した突条15を放射状に設けている。
該突条15の大径側に第一実施形態と同様に、第1傾斜面15c、第2傾斜面及び第3傾斜面(図示せず)を設け、3面カットの傾斜部としている。
【0051】
前記傾斜壁部52の大径端側に厚肉部54を設け、該厚肉部54と傾斜壁部52との境界位置に車体係止凹部10を環状に設けている。
前記車体係止凹部10の底面側と対向する拡径筒部51の内周面から薄肉とした閉鎖面部56(56A、56B)を突設し、該閉鎖面部56の中央を直径方向に分割して、ワイヤハーネス挿通部分している。該閉鎖面部56は薄肉として断面V形状として押込側P1に突出させている。
閉鎖面部56からワイヤハーネスに密着してテープ巻きする半割りの小径筒部55(55A、55Bを突設すると共に、給水ホース用ガイド管58およびオープナーケーブル用ガイド管(図示せず)を突設している。
【0052】
前記形状のグロメット1−1においても、突条15の先端部を3面カットの傾斜面としているため、貫通穴の周縁が突条15に引っ掛かるのを防止でき、挿入係止作業をスムーズに行うことができる。
また、ワイヤハーネスが曲げられて、小径筒部55が屈曲しても、該小径筒部55は環状連結部56を介して傾斜壁部52と連結しているため、閉鎖面部56で曲げを吸収でき車体係止凹部10は曲げに追従せず浮き上がりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一実施形態のグロメットを示し、(A)は引出側から見た斜視図、(B)は押込側から見た斜視図である。
【図2】グロメットの引出側の側面図である。
【図3】図1(A)の要部拡大図である。
【図4】図2のVI−VI線断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】グロメットにワイヤハーネスを貫通させ、車体に取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】(A)(B)はワイヤハーネスが屈曲した場合の概略図である。
【図8】第二実施形態のグロメットの断面図である。
【図9】(A)(B)は従来のグロメットを示す図面である。
【符号の説明】
【0054】
1 グロメット
2 車体パネル
3 貫通穴
5 内筒
6 環状連結部
8 外筒
9 厚肉部
10 車体係止凹部
11 傾斜壁部
11h 平面部
15 突条
15a 頂面
15c 第1傾斜面
15f 第2傾斜面
15g 第3傾斜面
18 押しリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けた貫通穴に挿通するワイヤハーネスに外装し、前記車体に係止する弾性体からなるグロメットであって、
前記ワイヤハーネスの電線群を密着させて貫通する内筒と、
前記内筒の外周面に環状連結部を介して連結すると共に傾斜壁部を備えた外筒を備え、
前記外筒は、前記傾斜壁部の大径端側に軸線方向と平行の厚肉部を連続させ、該厚肉部との境界部の外周面に車体係止凹部を環状に設け、かつ、前記傾斜壁部の外周面に小径端から大径端にかけて段状の突条を周方向に間隔をあけて放射状に突設し、
前記各段状の突条の先端を前記車体係止凹部の側面先端に位置させ、各突条の段状の頂面を車体係止凹部の側面先端に向けて傾斜させた第1傾斜面を設けると共に、該第1傾斜面を挟む突条の両側面を傾斜させて第2、第3傾斜面として、該突条の先端部を3面カットの傾斜面としていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記外筒の傾斜壁部および突条は、前記車体の貫通穴の内径と対応する外径位置で傾斜角度を変えた屈曲部を設け、該屈曲部から大径側の傾斜角度を小径側より小さく、前記第1〜第3傾斜面は前記屈曲部から車体係止凹部に達する大径側に設け、
かつ、第1〜第3傾斜面同士の接合ラインおよび第2、第3傾斜面と頂面との接合ラインにアールを付けている請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記第1〜第3傾斜面の頂面に対する傾斜角度は30度〜60度とし、かつ、突条の本数は4〜8本としている請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記内筒の両端の押込側と引出側に挟まれた長さ方向中間部の外周から前記環状連結部を突設し、該連結部の外周端に前記外筒の厚肉部を連続させ、該外筒の傾斜壁部の小径端側内周面は前記内筒の外周面と空間をあけて切り離し、該内筒の引出側は前記傾斜壁部より外方へ突出している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のグロメット。
【請求項5】
前記環状連結部は前記内筒との連結点より前記押込側に向けて傾斜して突出し、該環状連結部の傾斜部から前記外筒の傾斜壁部の内面に向けて押しリブを突設し、該押しリブが当接する前記傾斜壁部の位置より前記屈曲点側に前記曲げ応力吸収部を設けている請求項4に記載のグロメット。
【請求項6】
前記傾斜壁部の小径端を環状連結部を介して前記内筒に連結している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−296740(P2009−296740A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146301(P2008−146301)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】