説明

グローブボックスの開閉機構

【課題】収納部の開放に際して蓋部材の乗員室への突出量を抑える。
【解決手段】グローブボックス20における蓋部材22の開閉機構30は、リンクアーム32と、一方の端部が収納ボックス14に第1支点Aを介して回転可能に支持され、他方の端部がリンクアーム32に第2支点Bを介して回転可能に支持される第1リンク34と、一方の端部が収納部14に第3支点Cを介して回転可能に支持され、他方の端部がリンクアーム32に第4支点Dを介して回転可能に支持される第2リンク36とから構成される。そして、開閉機構30は、第1リンク34における2つの支点間距離LABとリンクアーム32における2つの支点間距離LBDとの和が、収納部14における2つの支点間距離LACと第2リンク36における2つの支点間距離LCDとの和より小さく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用内装部材に設けた収納部における乗員室側の開口部を塞ぐ蓋部材を有し、開口部を閉成する位置および乗員室側へ倒れ込んで該開口部を開放する位置に該蓋部材を姿勢変位させるグローブボックスの開閉機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、車両における乗員室11の前方には、インストルメントパネル10が設けられて、このインストルメントパネル10の助手席側には、小間物を収納可能なグローブボックス12が配設されている(例えば、特許文献1参照)。このグローブボックス12は、インストルメントパネル10に開設した開口部10aに開口14bを整合させて配設されて、内部に収納空間14aが形成された収納ボックス14と、下端側に設けたヒンジ部16aを介して回動自在に取付けられて、開口部10aを開閉可能なリッド16とを備えている。そして、リッド16を乗員室11側(手前側)に引くことにより、下端側のヒンジ部16aを中心としてリッド16の上端が乗員室11側へ回動して、収納空間14aが開放されるようになっている。なお、リッド16による開口部10aの閉成時において、リッド16の上端と開口部10aの上縁との間には隙間が設けられ(図8参照)、リッド16の回動に際してインストルメントパネル10とリッド16とが干渉しないよう構成される。また、特許文献2のグローブボックスのように、ボックス本体の開口部に対し支軸を介して開閉回動可能に設けた開閉蓋を、開放姿勢においてボックス本体の収容室に収容可能とした構成も提案されている。
【特許文献1】特開2003−276495号公報
【特許文献2】特開2005−170101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のグローブボックス12では、収納空間14aを開放する場合に、ヒンジ部16aを回動支点として回動したリッド16が、該リッド16の上下寸法だけインストルメントパネル10の表面から乗員室11に突出することになる。このため、助手席18のシートポジションが前側に設定してある場合は、助手席18に座った乗員の脚にリッド16が当たってしまうことがある。この場合、リッド16を大きく開放することができず、収納空間14aの物品を取出し難い問題も生じる。また、リッド16が乗員室11に大きく突出するため、リッド16自体が邪魔となって、乗員から収納空間14aが遠くなるので、収納空間14aの物品が取出し難くなる不都合も指摘される。一方、特許文献2のグローブボックスでは、開放姿勢の開閉蓋を収容室へ収容できるので、物品の取出しに際して開閉蓋が邪魔とならない利点があるものの、開放姿勢とするまでに支軸を中心として回動する開閉蓋が乗員室に大きく突出するから、助手席に座った乗員の脚に開閉蓋が当たることがある。
【0004】
すなわち本発明は、従来の技術に係るグローブボックスの開閉機構に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、収納部の開放に際して蓋部材の乗員室への突出量を抑えることができるグローブボックスの開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のグローブボックスの開閉機構は、
車両用内装部材に設けた収納部における乗員室側の開口部を塞ぐ蓋部材を有し、開口部を閉成する位置および乗員室側へ倒れ込んで該開口部を開放する位置に該蓋部材を姿勢変位させるグローブボックスの開閉機構において、
一端部が前記蓋部材に固定され、他端部が収納部側に延出するリンクアームと、
一方の端部が前記収納部の側壁面に第1支点を介して回転可能に支持され、他方の端部が前記リンクアームの他端部側に第2支点を介して回転可能に支持される第1リンクと、
一方の端部が前記収納部の側壁面における第1支点の下方に位置する第3支点を介して回転可能に支持され、他方の端部が前記リンクアームにおける第2支点よりも前記一端部から離間して位置する第4支点を介して回転可能に支持される第2リンクとを備え、
前記第1リンクにおける2つの支点間距離と前記リンクアームにおける2つの支点間距離との和を、前記収納部の側壁面における2つの支点間距離と第2リンクにおける2つの支点間距離との和より小さく設定したことを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、4つの支点の支点間距離の関係を適宜に設定することで、蓋部材の開放に際して、乗員室側に回動しつつ乗員室から離間する側へ変位する姿勢変位をさせることができる。すなわち、蓋部材が乗員室から離間する側へ変位する分だけ、蓋部材における蓋部の上端がインストルメントパネル側で回動変位するから、蓋部材における乗員室への突出量を小さくすることができる。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記蓋部材の閉成位置で前記4つの支点を結んだ直線がなす四角形において、前記収納部の側壁面における2つの支点を通る直線と前記第1リンクにおける2つの支点を通る直線とがなす外角を、収納部の側壁面における2つの支点を通る直線と前記第2リンクにおける2つの支点を通る直線とがなす内角以上に設定したことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、蓋部材の開放に際して、蓋部材における乗員室から離間する側への変位量を大きくすることができ、蓋部材における乗員室への突出量をより抑えることができる。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記蓋部材の閉成位置で前記4つの支点を結んだ直線がなす四角形において、前記第1リンクにおける2つの支点を通る直線とリンクアームにおける2つの支点を通る直線とがなす内角を、180°より小さく設定したことを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、蓋部材の開閉に際して、蓋部の上端が開口部の上縁に対し略直線的に近接・離間する動きを与えることができる。これにより、蓋部の上端と開口部の上縁との干渉を回避して、閉成位置で互いに隙間なく密着させた位置関係とし得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るグローブボックスの開閉機構によれば、収納部の開放に際して、蓋部材が回動しつつ乗員室から離間する側へ変位するから、蓋部材の乗員室への突出量を抑えることができる。従って、蓋部材の開放に際して、蓋部材とシートや乗員等とが干渉することを回避し得ると共に、物品の出入れを容易に行ない得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明に係るグローブボックスの開閉機構につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、説明の便宜上、図8に示した車両の構成要素と同一の要素については、同一の符号を使用して詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0010】
図6は、本発明の好適実施例に係るグローブボックス20の開閉機構が実施されたインストルメントパネル10の部分斜視図であり、図1は、図6のX−X線断面図である。図1に示すように、車両用内装部材としてのインストルメントパネル10には、助手席の前側に開口部10aが開設され、この開口部10aに合わせてグローブボックス20が配設されている。グローブボックス20は、物品を収納可能な収納空間14aを画成する収納ボックス(収納部)14と、収納ボックス14の開口14bを開閉可能な蓋部材22と、この蓋部材22を収納ボックス14に対して姿勢変位可能に支持する開閉機構30とを備えている。
【0011】
収納ボックス14は、箱状の部材であって、内部に所要容積の収納空間14aが画成されると共に、収納空間14aに対し各種物品の出入れを許容する開口14bが一端面に開設されている。また、収納ボックス14は、インストルメントパネル10の開口部10aに対して格納可能なサイズに形成されている。そして、収納ボックス14は、乗員室11側に臨ませた開口14bを開口部10aに合わせてインストルメントパネル10の内側に収容した状態で、インストルメントパネル10に対し組付けられる(図1参照)。
【0012】
図4に示すように、蓋部材22は、インストルメントパネル10の開口部10aにおける開口領域に合致するサイズ・形状に形成された蓋部24と、この蓋部24の両側部に形成されてインストルメントパネル10の内部に臨むよう裏側から延出する一対の取着片26,26とを備えている。また、両取着片26,26は、収納ボックス14の幅より広い間隔で離間し、インストルメントパネル10の開口部10aを介してインストルメントパネル10の内部に収納した際に、両取着片26,26が収納ボックス14を挟んで左右両側に臨むようになっている。そして、蓋部材22は、開閉機構30により収納ボックス14に対し蓋部24の上端が乗員室11側に倒れ込むように回動可能に支持されている。すなわち、蓋部材22は、蓋部24が開口部10aの開口領域に整合してインストルメントパネル10の意匠面を構成した閉成位置(閉成する位置:図1参照)と、開口部10aおよび開口14bを開放して、収納空間14aに対する物品の出入れを許容する開放位置(開放する位置:図3参照)との間を姿勢変位するようになっている。なお、図6に示すように、蓋部24の左右方向中央上部には、蓋部材22を閉成位置で保持する図示しないロック機構を解除するための把持部28が設けられている。
【0013】
図1〜図3に示すように、開閉機構30は、蓋部材22における取着片26から裏側へ延出するよう配設したリンクアーム32と、このリンクアーム32および収納ボックス14を連結する第1リンク34と、同じくリンクアーム32および収納ボックス14を連結する第2リンク36とから構成されている。図4に示すように実施例では、リンクアーム32、第1リンク34および第2リンク36からなるリンク組が、収納ボックス14を挟んで左右両側に1組ずつ配設されているが、何れも同一の構成であるから、同一部材には同一符号を付して説明する。
【0014】
図1に示すように、リンクアーム32は、略中間部分が屈曲した「へ字形」を呈した板状部材であって、一端部(乗員室11側の端部)が蓋部材22における取着片26の上部に接続されると共に、他端部が裏側(収納部14側)へ向けて延出されている。そして、蓋部材22の閉成位置において、リンクアーム32は、一端部から裏側に略水平に延出した後、表側から裏側に向かうにつれて下方傾斜するように延出し、屈曲部分の内角が下方に臨むようになっている。なお、リンクアーム32の一端部は、蓋部24における下端縁から所要高さまで延在する取着片26の上端部に固定され、リンクアーム32と蓋部24との相対的な姿勢は変化しないよう構成される。
【0015】
図1または図5に示すように、第1リンク34は、「I字形」を呈する板状部材であって、収納ボックス14の外側壁面(側壁面)に固定された支持板38に対し、一方の端部が第1支点Aを介して回転可能に支持されている。また、第1リンク34は、第1支点Aより乗員室11から離間する裏側に位置するリンクアーム32の他端部に対し、他方の端部が第2支点Bを介して回転可能に支持されている。第1リンク34は、収納ボックス14との連結部分となる第1支点Aが、蓋部材22の開閉動作時に移動しない固定点となり、リンクアーム32との連結部分となる第2支点Bが、第1支点Aを中心として蓋部材22の開閉動作時に移動する移動点となっている。
【0016】
図1または図5に示すように、第2リンク36は、「ヘ字形」を呈する板状部材であって、一方の端部が支持板38における第1支点Aの下方に位置する第3支点Cを介して支持板38に対し回転可能に支持されている。また、第2リンク36は、他方の端部がリンクアーム32の他端部における第2支点Bよりもリンクアーム32の一端部(取着片26との固定部)から離間する側(閉成位置での第2支点Bの下方)に位置する第4支点Dを介してリンクアーム32に対し回転可能に支持されている。第2リンク36は、屈曲部分の内角を上方に臨ませた状態で配設され、この屈曲部分が蓋部材22の開放位置において第1リンク34における他方の端部に当接するように構成されており、屈曲部分が係止部36aとして蓋部材22を開放位置で保持するストッパとして機能する(図3参照)。そして、第2リンク36は、収納ボックス14との連結部分となる第3支点Cが、蓋部材22の開閉動作時に移動しない固定点となり、リンクアーム32との連結部分となる第4支点Dが、第3支点Cを中心として蓋部材22の開閉動作時に移動する移動点となっている。
【0017】
図1または図4に示すように、リンク組では、第1リンク34における第1支点Aおよび第2支点Bの2つの支点間距離LABと、リンクアーム32における第2支点Bおよび第4支点Dの2つの支点間距離LBDとの和が、収納ボックス14の外側壁面における第1支点Aおよび第3支点Cの2つの支点間距離LACと、第2リンク36における第3支点Cおよび第4支点Dの2つの支点間距離LCDの和より小さく設定される(LAB+LBD<LAC+LCD)。これら支点間距離の関係は、リンク組が4節リンクとして成立すると共に、蓋部材22の変位軌跡を決定するための条件である。第1リンク34は、図1〜図3および図5に示すように、蓋部材22が閉成位置から開放位置へ開放変位する場合に、第1支点Aを回動中心として一方向(下方)へのみ回動するよう構成される。また、第2リンク36は、蓋部材22の開放変位に際して、第3支点Cを中心として第1リンク34の回動方向と反対方向(上方)へ回動する範囲が設けられる(図3における内角γ>180°となる範囲)。そして、蓋部材22は、開閉機構30により回動しつつ回動中心が乗員室11から離間する側へ変位するよう構成される。具体的には、蓋部材22は、閉成位置から開放位置へ変位するに際して、蓋部24の上端が乗員室11側に倒れ込むように回動しつつ、全体として乗員室11から離間する側へ変位して、開放位置において、収納ボックス14の下方に潜り込むように姿勢変位するようになっている。なお、インストルメントパネル10は、開放位置において収納ボックス14の下方に潜り込む蓋部材22の姿勢変位を許容するように形成されている。
【0018】
第1支点Aと第2支点Bとの支点間距離LABは、蓋部材22の姿勢変位において、蓋部材22の下方への変位量に影響を与え、当該支点間距離LABが大きくなるにつれて、他の支点間距離や角度等の要素との関係もあるが、下方への変位量が大きくなる傾向がある。また、第3支点Cと第4支点Dとの支点間距離LCDは、蓋部材22の姿勢変位において、蓋部材22の下方への変位量および蓋部材22の乗員室11から離間する方向への変位量に影響を与え、当該支点間距離LCDが大きくなるにつれて、他の要素との関係もあるが、変位量が大きくなる傾向がある。更に、第2支点Bと第4支点Dとの支点間距離LBDは、蓋部材22の乗員室11から離間する方向への変位量に影響を与え、当該支点間距離LBD が大きくなるにつれて、他の要素との関係もあるが、変位量が大きくなる傾向がある。
【0019】
図1または図5に示すように、リンク組では、蓋部材22の閉成位置で前述した4つの支点A,B,C,Dを結んだ直線がなす四角形ABCDにおいて、収納ボックス14の外側壁面における2つの支点A,Cを通る直線ACと第1リンク34における2つの支点A,Bを通る直線ABとがなす外角αが、直線ACと第2リンク36における2つの支点C,Dを通る直線CDとがなす内角β以上(α≧β)に設定されている。外角αと内角βとの関係は、蓋部材22の姿勢変位に際して、蓋部材22の乗員室11から離間する側への変位量を規定するものである。すなわち、外角αが内角βより小さい場合(α<β)と比べて、実施例の如く外角αが内角βより大きい場合(α>β)では、蓋部材22の変位に際して、蓋部材22の乗員室11から離間する側への変位量が大きくなる。
【0020】
図1または図5に示すように、リンク組では、蓋部材22の閉成位置で4つの支点A,B,C,Dを結んだ直線がなす四角形ABCDにおいて、第1リンク34における2つの支点A,Bを通る直線ABとリンクアーム32における2つの支点B,Dを通る直線BDとがなす内角γが、180°より小さく設定されている。内角γの条件は、蓋部材22の変位に際して、蓋部材22における下方への変位量を規定するものであって、内角γを小さく設定する程、閉成位置から直線ABと直線BDとが一直線上に並ぶ変曲点(内角γ=180°) に至るタイミングが遅くなる(図2参照)。この条件下に、第2リンク36は、蓋部材22が閉成位置から開放位置へ開放変位するに際して、変曲点まで第1リンク34と同一方向の下方に回動するように構成される。これに対し、第1リンク34および第2リンク36が更に回動されて変曲点を越えて内角γが180°より大きくなる条件において、第2リンク36は、第1リンク34と反対方向の上方に回動するようになっている。すなわち、第2リンク36は、蓋部材22の姿勢変位において、変曲点を挟んで振り子の如く揺動するよう構成される。そして、蓋部材22は、第1リンク34および第2リンク36が同一方向(下方)へ回動する間は、乗員室11側への倒れ込み量より下方への変位量が優勢になり、蓋部材22が下方へ全体的に移動しつつ回動される。また、蓋部材22は、第1リンク34および第2リンク36が異なる方向へ回動する間は、下方への変位量より乗員室11側への倒れ込み量が優勢になり、蓋部材22が主に回動されるようになっている。
【0021】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係るグローブボックスの開閉機構の作用について説明する。先ず、収納ボックス14を開放する場合は、閉成位置に保持されている蓋部材22を、把持部28を介して乗員室11側に引張ることで、図示しないロック機構が解除されて、蓋部材22の開放変位が許容される。更に、蓋部材22を乗員室11側へ引くことで、開閉機構30における第1リンク34および第2リンク36が、何れも反時計回りに下方へ向けて回動する(図5参照)。これにより、蓋部材22は、蓋部24の上端が乗員室11側へ向けて回動しつつ全体として乗員室11から離間する側へ変位するだけではなく、全体として下方へ向けて変位する複合的な姿勢変位を行なう。ここで、蓋部材22における閉成位置からの開放初期段階では、蓋部材22の下方への変位が優勢に発現するから、蓋部材22における蓋部24の上端を開口部10aの上縁から直線的に離間させることができる(図3参照)。すなわち、閉成位置において、蓋部24の上端と開口部10aの上縁との間に隙間を設けずに密着させる構成であっても、蓋部材22の開放に際して蓋部24の上部と開口部10aの上縁とが干渉することを回避し得る。
【0022】
蓋部材22の開放動作途中に、第1支点A、第2支点Bおよび第4支点Dが一直線上に並び内角γが180°となる変曲点を越えると(図2参照)、第2リンク36の回動方向が転換され、第1リンク34と第2リンク36とが反対方向へ回動する。これにより蓋部材22は、下方へ向けての変位量より回動変位および乗員室11から離間する側への変位が優勢に発現し、収納ボックス14の下方に潜り込むように主に回動する姿勢変位をする。そして、蓋部材22が更に姿勢変位して、第1リンク34における他方の端部が第2リンク36の係止部36aに当接することで、収納ボックス14との接触が回避された状態で蓋部材22は開放位置で停止保持される(図3参照)。
【0023】
蓋部材22を閉成する場合は、蓋部材22および開閉機構30が、前述した閉成位置から開放位置への姿勢変位のときと逆作動する。すなわち、蓋部材22を引上げると、開閉機構30における第1リンク34が上方へ回動すると共に、第2リンク36が第1リンク34と反対方向の下方へ回動して、蓋部24の上端が上方へ回動しつつ下端が乗員室11へ変位して、蓋部材22は主に上方へ回動する姿勢変位を行なう。蓋部材22の閉成動作途中に、内角γが180°となる変曲点を越えると、第2リンク36の回動方向が転換され、第1リンク34と第2リンク36とが同一方向へ回動し、蓋部材22は回動変位だけでなく上方への変位も行なう。そして、閉成位置に近くなると、蓋部材22の上方への変位が優勢に発現して、蓋部24の上端が開口部10aの上縁に対し略直線的に近接する。すなわち、蓋部材22の閉成時に、蓋部24の上部と開口部10aの上縁とが干渉することを回避し得るから、蓋部24の上端と開口部10aの上縁との間に隙間を設けずに密着させることができる。蓋部材22は、閉成位置に到るとロック機構により保持され、閉成位置で保持される(図1参照)。
【0024】
このように、実施例に係る開閉機構30によれば、前述の如くリンクアーム32、第1リンク34および第2リンク36における4つの支点間距離を、LAB+LBD<LAC+LCDの関係に設定することで、蓋部材22が乗員室11側に回動しつつ乗員室11から離間する方向へ変位される。すなわち、蓋部材22が乗員室11から離間する側へ変位する分だけ、開放に際して蓋部24の上端がインストルメントパネル10から乗員室11への突出する量(突出量)を小さくすることができる。図5に示すように、実施例の開閉機構30を採用した蓋部材22の変位軌跡(二点鎖線表示)と、蓋部下端の点Pを回動中心とする従来例のヒンジタイプの開閉機構を採用した場合(破線表示)と比較すると、実施例では蓋部材22の突出量を大きく抑え得る。
【0025】
蓋部材22を開閉する場合に、蓋部24の上端の描く軌跡の乗員室11への突出量が小さいから、助手席に座った乗員やシート等の蓋部材22の開閉側に位置する物に対し蓋部材22が接触することを回避できる。よって、開口部10aを広く開放し得るから、開口部10aを介して収納空間14aに対し物品の出入れを円滑に行なうことができる。また、蓋部材22は、開放位置において収納ボックス14の下方に退避して突出量が小さいから、物品の出入れに際して蓋部材22自体が邪魔となることはなく、助手席の乗員から収納空間14aまで近くなるので、収納空間14aに対し物品を出入れし易い。
【0026】
開閉機構30において、外角αと内角βとをα≧βの関係で設定することで、α<βの関係に設定した場合と比較して、蓋部材22の姿勢変位に際して、蓋部材22の乗員室11から離間する側への変位量が大きくなる。すなわち、蓋部材22における乗員室11への突出量を一層小さくでき、他との干渉を回避し、物品の出入れ容易性を更に向上し得る。
【0027】
開閉機構30において、第1リンク34における2つの支点A,Bを通る直線ABとリンクアーム32における2つの支点B,Dを通る直線BDとがなす内角γを、180°より小さく設定することで、蓋部材22の開閉に際して、蓋部24の上端が開口部10aの上縁に対し略直線的に近接・離間する動きを与えることができる。これにより、蓋部24の上端と開口部10aの上縁との干渉を回避して、閉成位置で互いに隙間なく密着させた位置関係とし得る。従って、閉成位置においてインストルメントパネル10と蓋部材22との一体感を向上できる。
【0028】
(変更例)
前述した実施例は、以下の如く変更することも可能である。
(1)開閉機構では、4つ支点間距離のLAB+LBD<LAC+LCDの関係を維持したまま、各支点間距離や、支点同士を結んだ直線がなす角度等を変更することで、蓋部材の開閉態様を変更することが可能である。例えば、図7に示すように、変更例の開閉機構40において、外角αと内角βとをα<βの関係で設定してもよい。変更例の開閉機構40によれば、実施例の開閉機構30と比較して蓋部材22における乗員室11から離間する側への変位量が小さくなるが、蓋部下端の点Pを回動中心とする従来例のヒンジタイプの開閉機構を採用した場合(破線表示)と比較すると、変更例の蓋部材22の突出量を抑えることができる。ここで、変更例の開閉機構40では、蓋部材22が開放初期の段階で一旦上方へ変位しつつ回動する。なお、図7において、実施例と同じ機能の部材については同一の符号を付してある。
(2)実施例では、第1リンクにおける2つの支点A,Bを通る直線ABとリンクアームにおける2つの支点B,Dを通る直線BDとがなす内角γを、180°より小さく設定したが、180°以上に設定してもよい。この場合、蓋部材の開閉に際して、蓋部の上端が開口部の上縁に対し略直線的に近接・離間する動きはなく、蓋部材が乗員室側に回動しつつ乗員室から離間する方向へ変位する姿勢変位を行なう。
(3)実施例では、インストルメントパネルに設けた収納ボックスに物品を収納する構成であるが、蓋部材に物品収納部を一体に設け、蓋部材の開放により物品収納部が乗員室側に臨む構成であってもよい。この場合、蓋部材の閉成位置において、インストルメントパネルに設けた収納部に物品収納部が収納されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好適な実施例に係るグローブボックスの開閉機構を備えたグローブボックスの側面図であって、蓋部材が閉成位置にある状態を示す。
【図2】実施例のグローブボックスの側面図であって、蓋部材が変曲点にある状態を示す。
【図3】実施例のグローブボックスの側面図であって、蓋部材が開放位置にある状態を示す。
【図4】実施例のグローブボックスの開閉機構を備えたグローブボックスを示す平断面図である。
【図5】実施例のグローブボックスの開閉機構における要部を示す側面図である。
【図6】実施例に係るグローブボックスを備えたインストルメントパネルの部分斜視図である。
【図7】変更例に係るグローブボックスの開閉機構を備えたグローブボックスの側面図である。
【図8】従来のグローブボックスを示す側断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 インストルメントパネル(車両用内装部材),10a 開口部,11 乗員室,
14 収納ボックス(収納部),22 蓋部材,32 リンクアーム,34 第1リンク,
36 第2リンク,A 第1支点,B 第2支点,C 第3支点,D 第4支点,
AB 第1リンクにおける2つの支点間距離,
BD リンクアームにおける2つの支点間距離,
AC 収納部の側壁面における2つの支点間距離,
CD 第2リンクにおける2つの支点間距離,
AB 第1リンクにおける2つの支点を通る直線,
AC 収納部の側壁面における2つの支点を通る直線,
BD リンクアームにおける2つの支点を通る直線,
CD 第2リンクにおける2つの支点を通る直線,
ABCD 蓋部材の閉成位置で4つの支点を結んだ直線がなす四角形,
α 外角,β 内角,γ 内角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部材に設けた収納部における乗員室側の開口部を塞ぐ蓋部材を有し、開口部を閉成する位置および乗員室側へ倒れ込んで該開口部を開放する位置に該蓋部材を姿勢変位させるグローブボックスの開閉機構において、
一端部が前記蓋部材に固定され、他端部が収納部側に延出するリンクアームと、
一方の端部が前記収納部の側壁面に第1支点を介して回転可能に支持され、他方の端部が前記リンクアームの他端部側に第2支点を介して回転可能に支持される第1リンクと、
一方の端部が前記収納部の側壁面における第1支点の下方に位置する第3支点を介して回転可能に支持され、他方の端部が前記リンクアームにおける第2支点よりも前記一端部から離間して位置する第4支点を介して回転可能に支持される第2リンクとを備え、
前記第1リンクにおける2つの支点間距離と前記リンクアームにおける2つの支点間距離との和を、前記収納部の側壁面における2つの支点間距離と第2リンクにおける2つの支点間距離との和より小さく設定した
ことを特徴とするグローブボックスの開閉機構。
【請求項2】
前記蓋部材の閉成位置で前記4つの支点を結んだ直線がなす四角形において、前記収納部の側壁面における2つの支点を通る直線と前記第1リンクにおける2つの支点を通る直線とがなす外角を、収納部の側壁面における2つの支点を通る直線と前記第2リンクにおける2つの支点を通る直線とがなす内角以上に設定した請求項1記載のグローブボックスの開閉機構。
【請求項3】
前記蓋部材の閉成位置で前記4つの支点を結んだ直線がなす四角形において、前記第1リンクにおける2つの支点を通る直線とリンクアームにおける2つの支点を通る直線とがなす内角を、180°より小さく設定した請求項1または2記載のグローブボックスの開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−149781(P2008−149781A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337369(P2006−337369)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】