説明

ケイ素化合物の製造方法

【課題】本発明の目的は、リビングラジカル重合開始能を有するケイ素化合物を短時間且つ高純度で製造する方法を提供することである。
【解決手段】式(2)で示される化合物に式(3)で示される化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法。Aは重合開始基であり、Rは炭素数1〜4のアルキルであり、Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり、Xはハロゲンであり、そしてnは1〜3の整数である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加重合性単量体に対して重合開始能を有することを特徴とするケイ素化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体表面へのグラフト重合は、重合させる付加重合性単量体の種類を変えることにより、多様な表面特性を付与することが可能な重合法である。そのため、この重合方法は、表面改質法の一つとしてこれまでにも広く採用されてきた。しかしながら、無機固体表面へのグラフト重合には、均一な表面修飾を目的として表面グラフト密度をコントロールすることや、グラフト鎖の一次構造(分子量、分子量分布、モノマー配列様式など)を厳密に制御することが困難であるという問題点がある。
【0003】
先端科学技術が発展する中で、固体表面へのグラフト重合の分野においても、高分子材料を精密な設計のもとに製造し、新しい機能性高分子表面を創成することの重要性が増してきている。このような、表面の特性を任意に制御するためには、構造の明確な重合体をグラフトさせることが極めて重要である。そうでなければ、表面グラフト重合体の分子構造と表面特性との性質を精密に解析することが困難であり、目的に合わせた表面改質を達成することができない。
【0004】
この様な背景から、リビングラジカル重合開始基を有するケイ素化合物(以下LRP−SCAと称することがある。)を用いて、無機固体表面へのシランカップリング剤処理を行った後、この重合開始基を起点として付加重合性単量体のリビングラジカル重合を行うといった、いわゆる表面開始グラフト重合法により、上記問題点に解決を与える試みが行われている(非特許文献1〜3)。リビングラジカル重合における付加重合性単量体の汎用性に鑑みると、このグラフト重合法に用いられる付加重合性単量体の種類を変化させることで、様々な無機固体表面への新たな特性を付与することも可能となる。
【0005】
このような優れた方法を工業レベルにおいて適用する場合、高純度のLRP−SCAを短時間且つ高収率で製造する方法を確立しなければならない。これまでの研究では、分子鎖の一方にリビングラジカル重合開始基を有し、且つもう一方に二重結合を持つ化合物に対して、アルコキシシランをヒドロシリル化反応を用いて導入することによって、LRP−SCAの製造が行われてきた。例えば、前記の非特許文献1においては、以下に示すスキーム1によりLRP−SCAの合成が行われている。
<スキーム1>


【0006】
しかしながら、この合成法は、反応収率が62%と低く、使用するトリメトキシシランは不均化により爆発性のシランガスを発生する恐れも有しており、必ずしも工業的に適した方法ではない。非特許文献3においては、同様の方法をトリエトキシシランを用いて実施しているが反応完結時間が極めて長いなどの問題点を有している。また、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒成分(Ptなど)が残留することから高純度のLRP−SCAを製造するのは困難である。したがって、これまでに高純度のLRP−SCAを短時間且つ高収率で製造する方法はまったく知られていなかった。
【非特許文献1】Chem.Commun., 2000, (21), p.2083 - 2084
【非特許文献2】Polymer Preprints, 2003, 44(1), p.532 - 533
【非特許文献3】Polymer Preprints, 2002, 43(2), p.271 - 272
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、リビングラジカル重合開始能を有するケイ素化合物を短時間且つ高純度で製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、リビングラジカル重合開始能を有するケイ素化合物の場合には、アルコキシシランのSi−H官能基よりも、クロロシランのSi−H官能基において、二重結合とのヒドロシリル化反応が高収率で進行することを知った。そして、リビングラジカル重合開始基とアルコキシシリル基を官能基として有するケイ素化合物の効率的な製造方法として、まずリビングラジカル重合開始基と二重結合を有する化合物とクロロシランによるヒドロシリル化を行なって、リビングラジカル重合開始能を有するクロロシランを製造し、次いでこのクロロシランをアルコキシ化する方法を開発した。
即ち、本発明は下記の構成を有する。
【0009】
[1] 式(2)で示される化合物に式(3)で示される化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Aは重合開始基であり;Rは炭素数1〜4のアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、nは1〜3の整数である。
【0010】
[2] 式(4)で示される化合物に式(5)で示される化合物をヒドロシリル化反応させて式(2)で示される化合物を得る工程と、この式(2)で示される化合物に式(3)で示される化合物を反応させる工程とを含むことを特徴とする、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Aは重合開始基であり;Rは炭素数1〜4のアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;そしてnは1〜3の整数である。
【0011】
[3] Aがリビングラジカル重合開始基である、[1]項または[2]項に記載の製造方法。
【0012】
[4] Aが式(6−1)、式(6−2)、式(6−3)および式(6−4)のいずれか1つで示される基を有するリビングラジカル重合開始基である、[1]項または[2]項に記載の製造方法:


式(6−1)において、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;そして、Xはハロゲンである:


式(6−2)において、Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;そして、−SOの結合位置は不対電子を有する炭素に対してオルト位、メタ位またはパラ位であって、Rの結合位置は−SOの結合位置を除く任意の位置である:


式(6−3)において、Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;そして、Zの結合位置は不対電子を有する炭素に対してメタ位またはパラ位であって、Rの置換位置はZの結合位置を除く任意の位置である:


式(6−4)において、RおよびRは独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数6〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、そしてRおよびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよく;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;aは0〜2の整数であり;そして、Zの結合位置は不対電子を有する炭素に対してメタ位またはパラ位であり、Rの結合位置はZの結合位置を除く任意の位置である。
【0013】
[5] Aが式(7−1)、式(7−2)、式(7−3)および式(7−4)のいずれか1つで示される基である、[1]項または[2]項に記載の製造方法:


式(7−1)において、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;Zは炭素数1〜10のアルキレンであり;そして、このアルキレンにおいて、炭素数が3であるとき1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、炭素数が3を超えるとき1つの−CH−または隣り合わない複数の−CH−は−O−で置き換えられてもよい:


式(7−2)において、Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、−SOの結合位置はZの結合位置に対してオルト位、メタ位またはパラ位であって、Rの結合位置は−SOの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−3)において、Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であって、Rの置換位置はZの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−4)において、RおよびRは独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数6〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜10のアリールであり、そしてRおよびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよく;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;aは0〜2の整数であり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であり、Rの結合位置はZの結合位置を除く任意の位置である。
【0014】
[6] Rがメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、または1,1−ジメチルエチルであり;nが2または3であり、そしてAが式(7−1)、式(7−2)、式(7−3)および式(7−4)のいずれか1つで示される基である、[1]項または[2]項に記載の製造方法:


式(7−1)において、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、Zは炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、炭素数が3であるとき1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、炭素数が3を超えるとき1つの−CH−または隣り合わない複数の−CH−は−O−で置き換えられてもよい:


式(7−2)において、Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、−SOの結合位置はZの結合位置に対してオルト位、メタ位またはパラ位であって、Rの結合位置は−SOの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−3)において、Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であって、Rの置換位置はZの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−4)において、RおよびRは独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数6〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜10のアリールであり、そしてRおよびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよく;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;aは0〜2の整数であり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であり、Rの結合位置はZの結合位置を除く任意の位置である。
【0015】
[7] Aが式(7−1)、式(7−2)または式(7−3)で示される基である、[5]項に記載の製造方法。
【0016】
[8] Aが式(7−1)、式(7−2)または式(7−3)で示される基である、[6]項に記載の製造方法。
【0017】
[9] Aが式(7−1)で示される基である、[5]項に記載の製造方法:
【0018】
[10] Aが式(7−1)で示される基である、[6]項に記載の製造方法。
【0019】
[11] Aが式(7−1)で示され;Rが水素、メチルまたはエチルであり;Rがメチルまたはエチルであり;そして、Xが塩素または臭素である、[6]項に記載の製造方法。
【0020】
[12] Rがメチルまたはエチルであり;nが3であり;Aが式(7−1)で表され;式(7−1)において、Xが臭素であり、RおよびRが共にメチルであり、そしてZが−C−、−C−または−C−O−C−である、[6]項に記載の製造方法。
【0021】
[13] 式(2)で示される化合物とこの化合物に対するモル比で1〜10倍量の式(3)で示される化合物とを反応させることを特徴とする、[1]項または[2]項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明が提供するリビングラジカル重合開始能を有するケイ素化合物の製造方法は、従来の製造方法に比べ、簡便且つ効率的な方法であり、工業レベルで高純度のケイ素化合物を安全に低コストで製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明において、アルキルおよびアルキレンはいずれも直鎖の基であってよいし、分岐された基であってもよい。本発明で用いる「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意に選択できることを示す。例えば、任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシアルキルのような基が含まれる。しかしながら本発明においては、エステル基に結合する−CH−が−O−で置き換えられる場合および連続する複数の−CH−が−O−で置き換えられる場合は含まれない。以下の説明では、式(1)で示される化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で示される化合物についても、同様の簡略化法によって表記することがある。
【0024】
本発明の製造方法は、化合物(1)の製造方法であり、式(2)で示される化合物に式(3)で示される化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする。


ここに、Aは重合開始基であり、Rは炭素数1〜4のアルキルであり、Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり、Xはハロゲンであり、そしてnは1〜3の整数である。本発明において、「重合開始基」は重合開始部位を有する基を意味する。
【0025】
本発明の製造方法のより具体的な例は、式(4)で示される化合物に式(5)で示される化合物をヒドロシリル化反応させて、前記の式(2)で示される化合物を得る工程と、この式(2)で示される化合物に前記の式(3)で示される化合物を反応させる工程とを含む方法である。


これらの式における記号の意味は前記の通りである。
【0026】
Aの好ましい例は、リビングラジカル重合開始部位を有する基である。このようなAの例は、α−ハロエステル結合を有する基、ハロゲン化スルフォニル基を有する基、ハロアルキルフェニル基を有する基、MgBr基を有する基、ジチオカルバメート基を有する基、およびニトロキシル基を有する基である。ハロアルキルフェニル基を有する基は、塩化銅/アミン錯体存在下ではラジカルを発生し、塩素酸銀の存在化ではカチオン重合の開始剤となる。ハロアルキルフェニルの例は、クロロメチルフェニル、ブロモメチルフェニル、およびヨードメチルフェニル等である。Aのより好ましい例は、α−ハロエステル結合を有する基、ハロゲン化スルフォニル基を有する基、ハロアルキルフェニル基を有する基、およびジチオカルバメート基を有する基である。Aの最も好ましい例は、α−ハロエステル結合を有する基である。以下の説明では、α−ハロエステル結合を有する基をα−ハロエステル基と称することがある。
【0027】
α−ハロエステル結合を有する基は、α−ハロカルボニルオキシを末端基として有する基を意味する。このα−ハロカルボニルオキシをラジカル重合の開始基とする重合方法として、原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization)法が知られている。この方法で用いられる重合触媒は、周期律表第8族、9族、10族または11族元素を中心の金属原子とする金属錯体である。この原子移動ラジカル重合において、α−ハロカルボニルオキシを有する基が優れた重合開始能を有することが知られている。この重合がリビング重合的であることもよく知られている。即ち、本発明により製造される化合物は、遷移金属錯体の存在下で優れた重合開始能を有し、リビング重合性を維持し続けることができる。そして本発明により製造されるケイ素化合物は、あらゆるラジカル重合性単量体に対して重合を開始させることが可能であり、特にスチレン系誘導体に対して優れたリビング重合性を発現させることが可能である。
【0028】
なお、本発明により製造されるα−ハロエステル基を有するケイ素化合物は、各種の有機反応を適用して多数の誘導体に導くことが可能である。例えば、リチウム、マグネシウムまたは亜鉛などと本発明により製造されるケイ素化合物とを反応させることにより、有機金属官能基を有するシルセスキオキサンに誘導することができる。具体的には、本発明により製造されるケイ素化合物に亜鉛を反応させて、有機亜鉛官能基を有するシルセスキオキサンに誘導した後、アルデヒドやケトンを付加させることによって、アルコール類に変換させることができる。即ち、有機亜鉛官能基を有するシルセスキオキサンは、いわゆるリフォマッキー反応に用いる中間原料として有用である。
【0029】
α−ハロエステル基は強い求電子性を有するので、種々の求核試薬を用いてアミノ基、メルカプト基などに変換することが可能である。さらに、α−ハロエステル基を有するケイ素化合物をエナミンで処理してイミン塩とし、このイミン塩を加水分解することによってケトンに変換させることができる。即ち、本発明により製造されるケイ素化合物はストーク−エナミン反応に用いる中間原料としても有用である。本発明により製造されるケイ素化合物を脂肪族または芳香族系のグリニヤール試薬と反応させることにより、種々の有機官能基や重合性官能基を有するシルセスキオキサン誘導体とすることも可能である。従って、α−ハロエステル基を有するケイ素化合物は、重合開始剤としてだけでなく、種々の有機合成に有用な中間体として利用することができる。
【0030】
本発明において、α−ハロエステル基を有するケイ素化合物の製造方法の好ましい態様は、式(2−1)で示されるハロシラン化合物を用い、これと化合物(3)とを反応させる工程を含む方法である。このとき、式(1−1)で示されるケイ素化合物が得られる。式(2−1)は、式(2)におけるAが式(7−1)で示される基である場合の式である。そして、化合物(2−1)は、式(4)におけるAが式(7−1)で示される基である化合物(4−1)と化合物(5)とのヒドロシリル化反応によって得られる。




【0031】
これらの式における記号の意味は次の通りである。Rは炭素数1〜4のアルキルであり、Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり、Xはハロゲンであり、そしてnは1〜3の整数である。Rの好ましい例は、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、および1,1−ジメチルエチルである。そして、Rのより好ましい例はメチルおよびエチルである。
【0032】
は炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルである。このアルキルの好ましい例は、炭素数1〜4のアルキルである。アリールの好ましい例はフェニルおよびメチルフェニルである。アリールアルキルの好ましい例はベンジルおよびフェネチルである。そして、Rの好ましい例はメチルおよびエチルである。Rの特に好ましい例はメチルである。
【0033】
はハロゲンであり、その好ましい例は臭素および塩素である。そして、nは1〜3の整数であり、2または3が好ましく、3がより好ましい。
【0034】
式(2−1)において、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり、Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルである。アルキルの好ましい例は、炭素数1〜4のアルキルである。アリールの好ましい例はフェニルおよびメチルフェニルである。アリールアルキルの好ましい例はベンジルおよびフェネチルである。そして、RまたはRの好ましい例はメチルおよびエチルである。RおよびRが共にメチルであることが特に好ましい。
【0035】
式(2−1)におけるXはハロゲンであり、その好ましい例は塩素および臭素である。Xのより好ましい例は臭素である。
【0036】
式(2−1)におけるZは炭素数1〜10のアルキレンである。このアルキレンにおいて、炭素数が3であるとき1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、炭素数が3を超えるとき1つのまたは隣り合わない複数の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。式(2−1)における−O−Z−CHCH−の好ましい例は、−O−C−、−O−C−、−O−C10−、−O−C12−、−O−CO−C−、−O−CO−C−、−O−CO−CO−C−、および−O−CO−CO−C−である。−O−Z−CHCH−のより好ましい例は、−O−C−、−O−C−、−O−C10−、−O−C12−、および−O−CO−C−である。
【0037】
ハロゲン化スルフォニルを有する基を重合の開始基とする重合方法として、原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization)法が知られている。この方法で用いられる重合触媒は、周期律表第8族、9族、10族または11族元素を中心の金属原子とする金属錯体である。この原子移動ラジカル重合において、ハロゲン化スルフォニルを有する基が優れた重合開始能を有することが知られている。この重合がリビング重合的であることもよく知られている。即ち、本発明により製造される化合物は、遷移金属錯体の存在下で優れた重合開始能を有し、リビング重合性を維持し続けることができる。そして本発明により製造されるケイ素化合物は、あらゆるラジカル重合性単量体に対して重合を開始させることが可能であり、特に(メタ)アクリル酸系誘導体に対して優れたリビング重合性を発現させることが可能である。
【0038】
ハロゲン化スルフォニル基は強い求電子性を有するので、本発明により製造されるハロゲン化スルフォニル基を有するケイ素化合物は、種々の求核試薬を用いて各種誘導体を合成することができる。たとえば、酸性条件化、加水分解によるスルフォン酸への変換、加水分解によるスルフォン酸への変換に続き水酸化ナトリウムにより処理することでスルフォン酸塩への変換、塩基性条件下、種々のアルコールを処理することによるスルフォン酸エステルへの変換、アンモニアまたはアミンで処理することでスルフォン酸アミドへの変換が可能である。即ち、本発明により製造されるケイ素化合物は保護基として利用することが可能であるし、また、スルフォン酸アミドの誘導体の一部はスルファ剤として、たとえば抗細菌薬としての利用も可能である。また、各種還元剤、たとえば水素化リチウムアルミニウムを用いて、メルカプト基への変換も可能であるし、各種芳香族系のグリニャール試薬によって、芳香族スルホンに誘導することもできる。従って、本発明により製造されるケイ素化合物は、重合開始剤としてだけでなく、種々の有機合成に有用な中間体として利用することができる。
【0039】
ハロゲン化スルフォニル基を有するケイ素化合物の製造方法の好ましい態様は、式(2−2)で示されるハロシラン化合物を用い、これと化合物(3)とを反応させる工程を含む方法である。このとき、式(1−2)で示されるケイ素化合物が得られる。式(2−2)は、式(2)におけるAが式(7−2)で示される基である場合の式である。そして、化合物(2−2)は、式(4)におけるAが式(7−2)で示される基である化合物(4−2)と化合物(5)とのヒドロシリル化反応によって得られる。




【0040】
これらの式において、R、Rおよびnの意味は式(1−1)におけるこれらの記号と同じであり、これらの好ましい範囲も同様である。Xの意味は式(2−1)におけるXと同じであり、その好ましい範囲も同様である。Rは炭素数1〜3のアルキルであり、aは0〜2の整数であり、Xはハロゲンであり、そしてZは単結合または炭素数1〜10のアルキレンである。このアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。そして、ベンゼン環への−SOの結合位置は、Zの結合位置に対して、オルト位、メタ位またはパラ位である。Rの結合位置は−SOおよびZの結合位置を除く任意の位置である。
【0041】
の例はメチル、エチル、プロピルおよび1−メチルエチルである。Rの個数を表すaは0、1または2であるが、より好ましい例は0である。Xの好ましい例は塩素、臭素およびヨウ素である。Xのより好ましい例は塩素および臭素である。
【0042】
−Z−CHCH−の好ましい例は、炭素数2〜5のアルキレン、−OC−、−OC−、−CHOC−、−CHOC−、−COC−、および−COC−である。
【0043】
ハロアルキルフェニル基をラジカル重合の開始基とする重合方法として、原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization)法が知られている。この方法で用いられる重合触媒は、周期律表第8族、9族、10族または11族元素を中心の金属原子とする金属錯体である。この原子移動ラジカル重合において、ハロアルキルフェニル基を有する基が優れた重合開始能を有することが知られている。この重合がリビング重合的であることもよく知られている。即ち、本発明により製造される化合物は、遷移金属錯体の存在下で優れた重合開始能を有し、リビング重合性を維持し続けることができる。そして本発明により製造されるケイ素化合物は、あらゆるラジカル重合性単量体に対して重合を開始させることが可能であり、特にスチレン系誘導体に対して優れたリビング重合性を発現させることが可能である。
【0044】
ハロアルキルフェニル基は強い求電子性を有するので、本発明により製造されるハロアルキルフェニル基を有するケイ素化合物は、種々の求核試薬を用いてアミノ基、水酸基、メルカプト基等を導入することができる。従って、本発明により製造されるケイ素化合物は、重合開始剤としてだけでなく、種々の有機合成に有用な中間体として利用することができる。
【0045】
ハロアルキルフェニル基を有するケイ素化合物の製造方法の好ましい態様は、式(2−3)で示されるハロシラン化合物を用い、これと化合物(3)とを反応させる工程を含む方法である。このとき、式(1−3)で示されるケイ素化合物が得られる。式(2−3)は、式(2)においてAが式(7−3)で示される基である場合の式である。そして、化合物(2−3)は、式(4)においてAが式(7−3)で示される基である化合物(4−3)と化合物(5)とのヒドロシリル化反応によって得られる。




【0046】
これらの式において、R、Rおよびnの意味は式(1−1)におけるこれらの記号と同じであり、これらの好ましい範囲も同様である。Xの意味は式(2−1)におけるXと同じであり、その好ましい範囲も同様である。Rは炭素数1〜3のアルキルであり、aは0〜2の整数であり、Xはハロゲンであり、Zは炭素数が1〜3であって任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり、そしてZは単結合または炭素数1〜10のアルキレンである。この炭素数1〜10のアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。そして、ベンゼン環へのZの結合位置は、Zの結合位置に対してオルト位、メタ位またはパラ位である。Rの結合位置はZおよびZの結合位置を除く任意の位置である。
【0047】
の例はメチル、エチル、プロピルおよび1−メチルエチルである。Rの個数を表すaは0、1または2であるが、より好ましい例は0である。Xの好ましい例は塩素、臭素およびヨウ素である。Xのより好ましい例は塩素および臭素である。
【0048】
の好ましい例は−CH−および−CHCH−である。−Z−CHCH−の好ましい例は、炭素数2〜5のアルキレン、−OC−、−OC−、−CHOC−、−CHOC−、−COC−、および−COC−である。
【0049】
ジチオカルバメート基を重合の開始基とする重合方法として、フォトイニファタ(Photo Initiator-transfer agent-terminator)重合法が知られている。このフォトイニファター重合において、ジチオカルバメート基が光によってラジカル解離し、優れた重合開始能および増感能を有することはよく知られている。この光重合がリビング重合的であることもよく知られている。したがって、ジチオカルバメート基を有する、本発明により製造されるケイ素化合物は光照射されているかぎり、重合能を維持し続けることが可能であり、あらゆる重合性単量体に対して光重合開始能力を有する。特に(メタ)アクリル系誘導体に対して優れたリビング重合性を発現させることが可能である。なお、ジチオカルバメート基は重合開始能を有するとともに、耐放射線性、除草効果などの薬理活性、錯体形成能、親水性等を有するので、これらの特性を活用することもできる。
【0050】
ジチオカルバメート基を有するケイ素化合物の製造方法の好ましい態様は、式(2−4)で示されるハロシラン化合物を用い、これと化合物(3)とを反応させる工程を含む方法である。このとき、式(1−4)で示されるケイ素化合物が得られる。式(2−4)は、式(2)においてAが式(7−4)で示される基である場合の式である。そして、化合物(2−4)は、式(4)においてAが式(7−4)で示される基である化合物(4−4)と化合物(5)とのヒドロシリル化反応によって得られる。




【0051】
これらの式において、R、Rおよびnの意味は式(1−1)におけるこれらの記号と同じであり、これらの好ましい範囲も同様である。Xの意味は式(2−1)におけるXと同じであり、その好ましい範囲も同様である。RおよびRは独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数6〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜10のアリールであり、そしてRおよびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよい。Rは炭素数1〜3のアルキルであり、その個数を示すaは0〜2の整数である。Zは炭素数が1〜3であって任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり、そしてZは単結合または炭素数1〜10のアルキレンである。この炭素数1〜10のアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。そして、ベンゼン環へのZの結合位置は、Zの結合位置に対してメタ位またはパラ位である。Rの結合位置はZおよびZの結合位置を除く任意の位置である。
【0052】
またはRの好ましい例は、水素、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、2−メチルプロピル、ペンチル、2−メチルブチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、ヘプチル、オクチル、デシル、フェニル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。RおよびRがともにこれらの基の1つであってよいし、片方がこれらの基の1つであり、もう一方が水素であってもよい。
【0053】
およびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよい。このようなジチオカルバメート基の例は、N−シクロトリメチレンジチオカルバメート基、N−シクロテトラメチレンジチオカルバメート基、N−シクロペンタメチレンジチオカルバメート基、N−シクロヘキサメチレンジチオカルバメート基、N−シクロヘプタメチレンジチオカルバメート基、およびN−シクロオクタメチレンジチオカルバメート基である。好ましいジチオカルバメート基の例は、N,N−ジメチルジチオカルバメート基、およびN,N−ジエチルジチオカルバメート基であり、N,N−ジエチルジチオカルバメート基がもっとも好ましい。
【0054】
の例はメチル、エチル、プロピルおよび1−メチルエチルである。Rの個数を表すaは0、1または2であるが、より好ましい例は0である。Zの好ましい例は−CH−および−CHCH−である。−Z−CHCH−の好ましい例は、炭素数2〜5のアルキレン、−OC−、−OC−、−CHOC−、−CHOC−、−COC−、および−COC−である。
【0055】
上記の好ましい態様のうちの更に好ましい態様は、−O−Z−が−O−CH−、−O−C−、−O−C−、または−O−(CO)−CH−である化合物(4−1)を出発原料とする、化合物(1−1)の製造方法である。hは1〜6の整数である。
【0056】
次に、本発明の製造方法について、α−ハロエステル基を有する化合物を例に、更に詳しく説明する。末端に水酸基を有し、もう一方の端に付加重合性二重結合を有する化合物に、α位の炭素にハロゲンが結合している酸ハロゲン化物を反応させると化合物(4−1)が得られる。そして、この化合物とハロゲン化シランとをヒドロシリル化反応させることによって、化合物(2−1)が得られる。


これらの式における記号の意味は前記の通りである。
【0057】
化合物(2−1)の製造法について具体例で説明する。RおよびRが共にメチルであり、XがClであり、XがBrであり、そしてnが3である化合物(2−1−1)は、スキーム3に示される合成経路によって製造することができる。スキーム3において、TEA、DCCおよびDMAPは、それぞれトリエチルアミン、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび4−ジメチルアミノピリジンである。
<スキーム3>


【0058】
まず、トリエチルアミンの存在下、2−ブロモイソブチリルブロマイドとアリルアルコールとの反応により、化合物(4−1−1)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸アリルエステル)を合成する。2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸とアリルアルコールとをDCC−DMAPの存在下で脱水縮合させても、2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸アリルエステルに誘導することができる。さらに、これを原料とし、Pt触媒の存在下、化合物(5−1)(Si−H官能のトリクロロシラン)とヒドロシリル化反応させることにより、目的とする化合物(2−1−1)を容易に得ることができる。スキーム3と同様の方法によって得られる化合物(2−1)の例を次に示す。


式(2−1−4)において、hは1〜6である。
【0059】
次に、化合物(2−1)に化合物(3)を反応させて化合物(1−1)を製造する方法について説明する。この反応は通常、アルゴンガスや窒素ガスのような不活性気体雰囲気中で、原料に対して不活性な乾燥した有機溶剤を用いて行う。この反応に用いる溶剤の選択条件は、化合物(1−1)および化合物(2−1)と反応しないこと、並びに充分脱水されていることである。溶剤の例は、テトラヒドロフラン、トルエン、およびメチレンクロライドである。特に好ましい溶剤は、よく脱水されたメチレンクロライドである。溶剤は特に用いずとも良い。化合物(3)も十分脱水されていることが必要である。化合物(3)の使用量は、化合物(2−1)が有するハロゲンに対する当量比で0.5〜5.0の範囲である。この当量比の好ましい範囲は1.0〜1.5である。反応温度は、副反応が併発せず、定量的な反応を進行させることができる温度である。具体的には、反応温度は0℃〜160℃の間が好ましく、15℃〜80℃の間がより好ましい。通常、化合物(2−1)に化合物(3)を加えると強発熱するため、水浴中で行うことが最も好ましい。反応時間は、定量的な反応が進行するに充分な時間であれば特に制限はなく、通常、自発熱が収まった時点で目的のケイ素化合物を得ることができる。
【0060】
反応に際して副生するハロゲン化水素は、副反応を誘発するので、これを除去するために加熱により系外に排出させるか、または有機塩基を共存させて反応を行う。有機塩基の例は、ピリジン、ジメチルアニリン、トリエチルアミンおよびテトラメチル尿素である。副反応を抑制し、反応を速やかに進行させることができれば、他の有機塩基でもよい。そして、有機塩基の最も好ましい例はトリエチルアミンである。
【0061】
化合物(1−1)から未反応の原料化合物や溶剤を分離するには、減圧蒸留を採用することが好ましい。この方法により、長時間高温条件下に保持されることによる化合物(1−1)の分解を防ぐことができる。化合物(1−1)が高沸点であり、溜出させることが困難である場合は、未反応の原料化合物、副生成物、溶剤などを減圧下で溜去させるだけでもよい。
【0062】
化合物(2−1)に化合物(3)を反応させて化合物(1−1)を製造する方法を具体例で示す。Rがメチルであり、XがBrであり、nが3である化合物(1−1−1)は、スキーム4に示される合成経路によって化合物(2−1−1)から製造することができる。
<スキーム4>


この際、副生するハロゲン化水素は、その他の低沸点成分とともに減圧下で溜去させてもよいし、有機塩基を共存させて反応を行い、生成した塩をろ別してから、濃縮してもよい。いずれにしても、高純度の化合物(1−1−1)を得ることができる。
【0063】
スキーム4と同様の方法で製造できる化合物(1−1)の例を以下に示す。


式(1−1−4)において、hは1〜6である。
【0064】
以上のようにしてα−ハロエステル基を有するケイ素化合物を製造することができるが、化合物(1−2)〜化合物(1−4)も同様にして製造することができる。
【0065】
本発明により製造されるケイ素化合物は、ケイ素原子上にアルコキシ基を有する。このアルコキシ基は高い加水分解性を有しており、加水分解等により容易に無機化合物との良好な結合を形成するシランカップリング剤として作用する。このため、有機化合物と無機化合物とからなる複合化材料の原料として有用である。
【0066】
本発明により製造されるケイ素化合物はシランカップリング剤として、SiO2、Al23、MgO等の無機微粒子、金属シリコン(シリコンウエハなど)、マイカ、ステンレス、アルミニウム、セラミックス、セメント、紙、ガラス、プラスチック、無機窯業系基板、布帛などの表面処理に用いることが可能である。この表面処理は、通常の方法に従って行うことができる。
【0067】
本発明により製造されるケイ素化合物を用いて処理した固体表面は付加重合性単量体の開始剤にすることができる。たとえば本発明により製造されるケイ素化合物を用いて処理した無機微粒子から付加重合性単量体を重合することにより、構造の明確な重合体が高密度に表面グラフトされた無機微粒子を得ることができる。この高分子グラフト鎖層が表面に配設された無機微粒子は、高分子グラフト鎖層を介して2次元または3次元に配列させ、この微粒子の秩序構造体を形成させることが可能である。さらに高分子グラフト鎖の分子量を変化させることにより、微粒子間距離を制御することも可能であり、秩序構造体における無機微粒子の配列制御も可能である。また、この方法によって得られた無機微粒子は、高分子グラフト鎖が微粒子表面とシロキサン結合によって強固に固定化されているため、高分子グラフト鎖の無機表面からの脱離が著しく抑制されるといった利点もさらに有する。無機微粒子以外の表面、例えばシリコンウエハやガラスなどに本発明のケイ素化合物を処理することで、構造の明確な重合体が高密度に表面グラフトされたシリコンウエハやガラスを得ることができる。この方法により、シリコンウエハやガラスとは全く異なる表面特性、たとえば屈折率、誘電率、表面自由エネルギーなどの特性を付与することが可能である。また本発明のケイ素化合物を、マイクロパターンプリンティングといった方法によって、シリコンウエハやガラス表面へ転写させ、その後、付加重合性単量体を重合することにより、構造の明確な重合体がパターニングされた表面構造を形成させることも可能である。この方法は、従来のレジスト材料とは全く異なるプロセスにより高分子のパターニングさせる方法であり、半導体分野において活発な研究が進められており、この分野への適用も可能である。
【0068】
本発明により製造されるケイ素化合物は、リビングラジカル重合開始基を有することから、そのまま開始剤として用いてもよい。このときは、末端にシラン化合物が結合した重合体を得ることができるし、これを高分子カップリング剤として利用することもできる。
【0069】
実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【実施例1】
【0070】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−トリメトキシシラニル−プロピルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−1)の合成


Ar雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積500mLの4つ口フラスコに、2−プロペン−1−オール(10.7g)、メチレンクロライド(240g)およびトリエチルアミン(21.7g)を仕込み、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を約−55℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(40.6g、2−プロペン−1−オールに対して0.96当量)を速やかに加え、−37℃にて1時間撹拌した後、室温下で更に4時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた反応液にメチレンクロライド(20ml)を加え、炭酸水素ナトリウム水溶液(3%、400ml)による3回の洗浄、水(400ml)による2回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(15g)にて乾燥した。その後、ロータリーエバポレータを用い、この溶液を濃縮した。得られた液体成分を減圧蒸留(74℃、520Pa)して、透明な液体を得た(29.6g、収率:81%)。
【0071】
得られた液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在はほとんど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、得られた透明な液体が化合物(4−1−1)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸 アリルエステル)であることがわかった。
GC純度:99.7%
IR (KBr法):ν=3010(H2C=C-)、2980(-CH3)、2936(-CH2-)、1738(C=O)、1651(C=C-)、1464(-CH2-)、1390(-CH3)、1373(-CH3)、1276(C-O-C)、1164(C-O-C)、640(C-Br).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 5.94(tt、1H、CH2=CH-CH2-)、5.39(dd、1H、CH2=CH-CH2-)、5.33(dd、1H、CH2=CH-CH2-)、4.67(d、2H、CH2=CH-CH2-)、1.95(s、6H、-C(CH3)2).
13C NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.2(C=O)、131.4(C=C-CH2-)、118.5(C=C-CH2-)、66.4(C=C-CH2-)、55.7(-C(Br))、30.8(-C(CH3)2).
【0072】
(工程2)化合物(2−1−1)の合成


雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積200mLの4つ口フラスコに、上記の化合物(4−1−1)(27.0g)およびトリクロロシラン(TCS,34ml、化合物(4−1−1)に対するモル比=2.6)を仕込み、溶液を氷浴を用いて冷却した。これに、Pt触媒/キシレン溶液(123μl,Pt含有量:3wt.-%,Pt/Si−Hモル比=5.6×10−5)を添加し、氷浴温度で約35分攪拌を行った後、室温まで温度を上昇させた。反応は発熱を伴って進行し、ガスクロマトグラフィーにおけるTCSに対する生成物のピーク強度比が飽和に達したところで、反応終点とした(約20時間)。その後、真空ポンプを用いて、反応液中に残留する未反応のTCSおよび化合物(4−1−1)を減圧留去し、無色透明の液体(42.2g,収率:98.1%)を得た。
【0073】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在はほとんど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、得られた透明な液体が化合物(2−1−1)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−トリクロロシラニル−プロピルエステル)であることがわかった。
GC純度:98.1%
IR (KBr法):ν=2980(-CH3)、2936(-CH2-)、2900(-CH2-)、1738(C=O)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1282(Si-CH2-)、1164(C-O-C)、1110(C-O-C)、698(C-Br)、590(Si-Cl)、567(Si-Cl).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 4.24 (t, 2H, -CH2-O-)、 2.00 (m, 2H, -CH2-CH2-CH2-)、 1.95 (s, 6H, -C(Br)(CH3)2)、1.52 (t, 2H, -CH2-Si).
13C NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.7 (C=O)、 66.2 (-CH2-O-)、55.6 (-C(Br))、 30.7 ((-CH3)2)、21.7 (Si-CH2-CH2-)、20.7 (Si-CH2-)
【0074】
(工程3)化合物(1−1−1)の合成


雰囲気下、還流冷却器、温度計を取り付けた内容積50mLの3つ口フラスコに、上記の化合物(2−1−1)(5.86g)およびジクロロメタン(20mL)を仕込んだ。ここに滴下ロートからメタノール(0.58g、化合物(2−1−1)に対して3.2当量)およびトリエチルアミン(5.10g、化合物(2−1−1)に対して2.9当量)を水浴を用いて系内温を保ちながら滴下し撹拌した。反応は発熱を伴って進行し、ガスクロマトグラフィーにおける化合物(2−1−1)に対する生成物のピーク強度比が飽和に達したところで終了とした(約1時間)。反応終了後、ロータリーエバポレータを用い、この溶液を濃縮した。得られた液体成分を減圧蒸留(113℃、130Pa)して、透明な液体を得た(4.82g、収率:86%)。
【0075】
得られた液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在はほとんど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、得られた透明な液体が化合物(1−1−1)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−トリメトキシシラニル−プロピルエステル)であることがわかった。
GC純度:99.7%
IR(KBr法) ν=2948(-CH3)、2844(Si-OCH)、1738(C=O)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1282(C-O-C)、1166(C-O-C)、1089(Si-OCH)、646(C-Br)
H−NMR(400MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):4.15(t、2H、-CH2-CH2-O-)、3.58(s、9H、Si-(OCH33)、1.93(s、6H、-C(CH3)2)、1.80(q、2H、-Si-CH2-CH2-CH2-)、0.71(t、2H、-Si-CH2-CH2-CH2-)
13C−NMR(100MHz、TMS標準:δ=0.0ppm): 171.2(C=O)、68.5(-Si-CH2-CH2-CH2-O-)、56.7(-C(CH3)2)、51.3(Si-(OCH33)、31.6(-C(CH3)2)、22.6(-Si-CH2-CH2-CH2-O-)、5.96(-Si-CH2-CH2-CH2-O-)
【実施例2】
【0076】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−トリメトキシシラニル−ブチルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−2)の合成


Ar雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積500mLの4つ口フラスコに、3−ブテン−1−オール(12.0g)、メチレンクロライド(240ml)およびトリエチルアミン(19.5g)を仕込み、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を約−45℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(37.3g、3−ブテン−1−オールに対して0.98当量)を速やかに加え、−40℃にて30分間撹拌した後、室温下で更に60分間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた反応液にメチレンクロライド(20ml)を加え、炭酸水素ナトリウム水溶液(3%、400ml)による2回の洗浄、水(400ml)による3回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(15g)にて乾燥した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、この溶液を濃縮した。得られた液体成分を減圧蒸留(79℃、100Pa)して、透明な液体を得た(30.0g、収率:82%)。
【0077】
得られた液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在はほとんど確認されなかった。下記に示すIRおよびH−NMRの結果から、得られた透明な液体が化合物(4−1−2)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ブテニルエステル)であることがわかった。
IR (KBr法):ν=3008(H2C=C-)、2982(-CH3)、2934(-CH2-)、1738(C=O)、1644(C=C-)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1280(C-O-C)、1168(C-O-C)、652(C-Br).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 5.85-5.75(m、1H、CH2=CH-CH2-)、5.16-5.07(m、2H、CH2=CH-CH2-)、4.22(t、2H、CH2=CH-CH2-CH2-)、2.44(q、2H、CH2=CH-CH2-)、1.92(s、6H、-C(CH3)2).
【0078】
(工程2)化合物(2−1−2)の合成


雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積100mLの4つ口フラスコに、化合物(4−1−2)(27.2g)およびトリクロロシラン(TCS,15.0ml、化合物(4−1−2)に対するモル比=1.2)を仕込み、溶液を氷浴を用いて冷却した。これに、Pt触媒/キシレン溶液(200μl,Pt含有量:3wt.-%,Pt/Si−Hモル比=2.1×10−4)を発熱を確認しながら30分かけて氷浴温度で添加した後、室温まで温度を上昇させた。反応は発熱を伴って進行し、ガスクロマトグラフィーにおけるTCSに対する生成物のピーク強度比が飽和に達したところで、反応終点とした(約2.5時間)。その後、真空ポンプを用いて、反応液中に残留する未反応のTCSを減圧留去し、得られた液体成分を減圧蒸留(120℃、400Pa)して、透明な液体を得た(37.7g、収率:86%)。
【0079】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、不純物等の存在はほとんど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、得られた透明な液体が化合物(2−1−2)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−トリクロロシラニル−ブチルエステル)であることがわかった。
IR (KBr法):ν=2980(-CH3)、2938(-CH2-)、2874(-CH2-)、1738(C=O)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1280(Si-CH2-)、1166(C-O-C)、1110(C-O-C)、694(C-Br)、588(Si-Cl)、565(Si-Cl).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 4.22 (t, 2H, -CH2-O-)、 1.94 (s, 6H, -C(Br)(CH3)2)、1.83 (q, 2H, Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、 1.73(q, 2H, Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、 1.47 (t, 2H, -CH2-Si).
13C NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.2 (C=O)、 64.7 (-CH2-O-)、55.6 (-C(Br))、 30.6 ((-CH3)2)、30.2 (Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、23.6 (Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、18.7 (Si-CH2-).
【0080】
(工程3)化合物(1−1−2)の合成
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−トリメトキシシラニル−ブチルエステルの合成>


化合物(2−1−1)に替えて上記の化合物(2−1−2)を用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−2)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−トリメトキシシラニル−ブチルエステル)を得ることができる。
【実施例3】
【0081】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−5−トリメトキシシラニル−ペンチルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−3)の合成


2−プロペン−1−オールに替えて4−ペンテン−1−オールを用いる以外は、実施例1の工程1と同様の操作を行うことにより、化合物(4−1−3)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−ペンテニルエステル)を得ることができる。
【0082】
(工程2)化合物(2−1−3)の合成


化合物(4−1−1)に替えて上記の化合物(4−1−3)を用いること以外は、実施例1の工程2と同様の操作を行うことにより、目的の化合物(2−1−3)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−5−トリクロロシラニルペンチルエステル)を得ることができる。
【0083】
(工程3)化合物(1−1−3)の合成


化合物(2−1−1)に替えて上記の化合物(2−1−3)を用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−3)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−5−トリメトキシシラニル−ペンチルエステル)を得ることができる。
【実施例4】
【0084】
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−トリメトキシシラニルプロピルオキシ)エチルエステルの合成>
(工程1)化合物(4−1−5)の合成


Ar雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積500mLの4つ口フラスコに、2−(アリルオキシ)エタノール(21.0g)、メチレンクロライド(250ml)およびトリエチルアミン(22.5g)を仕込み、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を約−37℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(41.5g、2−(アリルオキシ)エタノールに対して0.88当量)を速やかに加え、−10℃にて1時間撹拌した後、室温下で更に1.5時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液(3%、300ml)による3回の洗浄、水(300ml)による3回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(15g)にて乾燥した。得られた液体成分を、シリカゲルカラムを用いて精製を行った後、その後、ロータリーエバポレータを用い、この溶液を濃縮し、透明な液体を得た(36.7g、収率:85%)。
【0085】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は殆ど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRの結果から、得られた透明な液体が化合物(4−1−5)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(アリルオキシ)エチルエステル)であることがわかった。
GC純度:98.8%
IR (KBr法):ν=3008(H2C=C-)、2980(-CH3)、2936(-CH2-)、2866(-CH2-O-)、1738(C=O)、1649(C=C-)、1464(-CH2-)、1408(-CH3)、1390(-CH3)、1278(C-O-C)、1170(C-O-C)、1110(C-O-C)、646(C-Br).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 5.90(tt、1H、CH2=CH-CH2-)、5.31(dd、1H、CH2=CH-CH2-)、5.27(dd、1H、CH2=CH-CH2-)、4.33(t、2H、-O-CH2-CH2-O-C=O)、4.04(d、2H、CH2=CH-CH2-)、3.70(t、2H、-O-CH2-CH2-O-C=O)、1.95(s、6H、-C(CH3)2).
【0086】
(工程2)化合物(2−1−5)の合成
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−トリクロロシラニルプロピルオキシ)エチルエステルの合成>


雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積100mLの4つ口フラスコに、上記の化合物(4−1−5)(24.3g)およびトリクロロシラン(TCS;20ml、化合物(4−1−5)に対するモル比=1.95)を仕込んだ。これに、Pt触媒/キシレン溶液(630μl,Pt含有量:3wt.-%,Pt/Si−Hモル比=4.9x10−4)を添加した。反応は発熱を伴って進行し、ガスクロマトグラフィーにおけるTCSに対する生成物のピーク強度比が飽和に達したところで、反応終点とした(約4時間)。その後、真空ポンプを用いて、反応液中に残留する未反応のTCSを減圧留去した後、ロータリーエバポレータを用いて、低沸点化合物を減圧留去し、粘ちょう性液体(34.9g,収率:92%)を得た。
【0087】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、純度:94.0%であった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、粘ちょう性液体が化合物(2−1−5)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−トリクロロシラニルプロピルオキシ)エチルエステル)であることがわかった。
IR (KBr法):ν=2938(-CH3)、2878(-CH2-)、1738(C=O)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1278(Si-CH2-)、1168(C-O-C)、1110(C-O-C)、696(C-Br)、646、588(Si-Cl)、565(Si-Cl).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 4.32 (t, 2H, -CH2-O-C=O-)、 3.69 (t, 2H, -CH2-O-CH2-CH2-C=O-)、3.55 (t, 2H, -CH2-O-CH2-CH2-C=O-)、1.95 (s, 6H, -C(Br)(CH3)2)、1.85 (m, 2H, -CH2-CH2-CH2-)、 1.52 (t, 2H, -CH2-Si).
13C NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.4 (C=O)、 71.4(-CH2-O-CH2-CH2-C=O-)、68.2 (-CH2-O-C=O-)、 64.9(-CH2-O-CH2-CH2-C=O-)、55.5 (-C(Br))、 30.7 ((-CH3)2)、22.6 (Si-CH2-CH2-)、20.9 (Si-CH2-).
【0088】
(工程3)化合物(1−1−5)の合成


化合物(2−1−1)に替えて上記の化合物(2−1−5)を用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−5)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−トリメトキシシラニルプロピルオキシ)エチルエステル)を得ることができる。
【実施例5】
【0089】
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−((3−トリメトキシシラニルプロピルオキシ)−ポリ(エチレンオキシ))エチルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−6)の合成
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−2−(アリルオキシ−ポリ(エチレンオキシ))エチルエステルの合成>


2−(アリルオキシ)エタノールに替えて下記の式で示される化合物を用いること以外は、実施例4の工程1と同様の操作を行うことにより、重量平均分子量が350の化合物(4−1−6)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−2−(アリルオキシ−ポリ(エチレンオキシ))エチルエステル)を得ることができる。


(この化合物は日本油脂株式会社製のユニオックスPKA−5001であり、その重量平均分子量は200である。すなわち、この式中のpの計算による値は3.2である。)
【0090】
(工程2)化合物(2−1−6)の合成


化合物(4−1−5)に替えて化合物(4−1−6)を用いること以外は、実施例4の工程2と同様の操作を行うことにより、重量平均分子量が486の化合物(2−1−6)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−((3−トリクロロシラニルプロピルオキシ)−ポリ(エチレンオキシ))エチルエステル)を得ることができる。
【0091】
(工程3)化合物(1−1−6)の合成


化合物(2−1−1)に替えて化合物(2−1−6)を用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−6)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−((3−トリメトキシシラニルプロピルオキシ)−ポリ(エチレンオキシ))エチルエステル)を得ることができる。
【実施例6】
【0092】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−トリエトキシシラニルプロピルエステルの製造>


メタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−1b)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−トリエトキシシラニルプロピルエステル)を得ることができる。
【実施例7】
【0093】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−トリエトキシシラニル−ブチルエステルの製造>


雰囲気下、還流冷却器、温度計を取り付けた内容積50mLの3つ口フラスコに、実施例2の工程2で得られた化合物(2−1−2)(4.77g)およびジクロロメタン(19mL)を仕込んだ。ここに滴下ロートからエタノール(2.38g、化合物(2−1−2)に対して3.9当量)およびトリエチルアミン(4.67g、化合物(2−1−2)に対して3.5当量)を水浴を用いて系内温を保ちながら滴下し撹拌した。反応は発熱を伴って進行し、ガスクロマトグラフィーにおける化合物(2−1−2)に対する生成物のピーク強度比が飽和に達したところで終了とした(約1時間)。反応終了後、ろ過によりアミン塩を除去し、ロータリーエバポレータを用い、この溶液を濃縮した。得られた液体成分を減圧濃縮(80℃、130Pa)して、透明な液体を得た(5.08g、収率:98%)。
【0094】
得られた液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すIR、H−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRの結果から、得られた透明な液体が化合物(1−1−2b)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−トリエトキシシラニル−ブチルエステル)であることがわかった。
GC純度:97.0%
IR(KBr法) ν=2978(-CH3)、2930(‐CH2‐)、2888(Si-OCH2CH)、1738(C=O)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1280(C-O-C)、1166(C-O-C)、1081(Si-OCH)、650(C-Br)
H−NMR(400MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):4.18(t、2H、-CH2-CH2-O-)、3.82(q、6H、Si-(OCH2CH33)、1.93(s、6H、-C(CH3)2)、1.74(q、2H、-Si-CH2-CH2-CH2-CH2-)、1.54(q、2H、-Si-CH2-CH2-CH2-CH2-)、1.22(t、9H、Si-(OCH2CH33)、0.67(t、2H、-Si-CH2-CH2-CH2-CH2-)
13C−NMR(100MHz、TMS標準:δ=0.0ppm): 171.3(C=O)、65.4(-Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O-)、58.2(Si-(OCH2CH33)、55.8(-C(CH3)2)、31.4(-Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O-)、30.7(-C(CH3)2)、19.2(Si-(OCH2CH33)、18.3(-Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O-)、9.95(-Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O-)
29Si−NMR(79MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):-45.5
【実施例8】
【0095】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−5−トリエトキシシラニル−ペンチルエステルの製造>


メタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例3の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−3b)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−5−トリエトキシシラニルペンチルエステル)を得ることができる。
【実施例9】
【0096】
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−トリエトキシシラニルプロピルオキシ)エチルエステルの製造>


メタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例4の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−5b)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−トリエトキシシラニルプロピルオキシ)エチルエステル)を得ることができる。
【実施例10】
【0097】
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−((3−トリエトキシシラニルプロピルオキシ)−ポリ(エチレンオキシ))エチルエステルの製造>


メタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例5の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−6b)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−((3−トリエトキシシラニルプロピルオキシ)−ポリ(エチレンオキシ))エチルエステル)を得ることができる。
【実施例11】
【0098】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジメトキシメチルシラニル−プロピルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−1)の合成
この工程は実施例1の工程1と同じである。
【0099】
(工程2)化合物(2−1−1c)の合成


トリクロロシランに替えてメチルジクロロシランを用いること以外は、実施例1の工程2と同様の操作を行うことにより、化合物(2−1−1c)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−メチルジクロロシラニル−プロピルエステル)を得ることができる。
【0100】
(工程3)化合物(1−1−1c)の合成


化合物(2−1−1)に替えて化合物(2−1−1c)を用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−1c)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジメトキシメチルシラニル−プロピルエステル)を得ることができる。
【実施例12】
【0101】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジエトキシメチルシラニル−プロピルエステルの製造>


化合物(2−1−1)に替えて化合物(2−1−1c)を用いることとメタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−1d)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジエトキシメチルシラニル−プロピルエステル)を得ることができる。
【実施例13】
【0102】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−ジメトキシメチルシラニル−ブチルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−2)の合成
この工程は実施例2の工程1と同じである。
【0103】
(工程2)化合物(2−1−2c)の合成
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−メチルジクロロシラニル−ブチルエステルの合成>


トリクロロシランに替えてメチルジクロロシランを用いること以外は、実施例2の工程2と同様の操作を行うことにより、化合物(2−1−2c)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−メチルジクロロシラニル−ブチルエステル)を得ることができる。
【0104】
(工程3)化合物(1−1−2c)の合成
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−ジメトキシメチルシラニル−ブチルエステルの合成>


化合物(2−1−1)に替えて化合物(2−1−2c)を用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−2c)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジメトキシメチルシラニル−ブチルエステル)を得ることができる。
【実施例14】
【0105】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−4−ジエトキシメチルシラニル−ブチルエステルの合成>


化合物(2−1−1)に替えて化合物(2−1−2c)を用いることとメタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−2d)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジエトキシメチルシラニル−ブチルエステル)を得ることができる。
【実施例15】
【0106】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−5−ジメトキシメチルシラニル−ペンチルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−3)の合成
この工程は実施例3の工程1と同じである。
【0107】
(工程2)化合物(2−1−3c)の合成


化合物(4−1−1)に替えて化合物(4−1−3)を用いることとトリクロロシランに替えてメチルジクロロシランを用いること以外は、実施例1の工程2と同様の操作を行うことにより、化合物(2−1−3c)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−メチルジクロロシラニル−ペンチルエステル)を得ることができる。
【0108】
(工程3)化合物(1−1−3c)の合成


化合物(2−1−1)に替えて化合物(2−1−3c)を用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−3c)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジメトキシメチルシラニル−ペンチルエステル)を得ることができる。
【実施例16】
【0109】
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−5−ジエトキシメチルシラニル−ペンチルエステルの製造>


化合物(2−1−1)に替えて化合物(2−1−3c)を用いることとメタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例1の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−3d)(2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−ジエトキシメチルシラニル−ペンチルエステル)を得ることができる。
【実施例17】
【0110】
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−ジメトキシメチルシラニルプロピルオキシ)エチルエステルの製造>
(工程1)化合物(4−1−5)の合成
この工程は実施例4の工程1と同じである。
【0111】
(工程2)化合物(2−1−5c)の合成
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−メチルジクロロシラニルプロピルオキシ)エチルエステルの合成>


トリクロロシランに替えてメチルジクロロシランを用いること以外は、実施例4の工程2と同様の操作を行うことにより、化合物(2−1−5c)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−メチルジクロロシラニルプロピルオキシ)エチルエステル)を得ることができる。
【0112】
(工程3)化合物(1−1−5c)の合成


化合物(2−1−5)に替えて上記の化合物(2−1−5c)を用いること以外は、実施例4の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−5c)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−ジメトキシメチルシラニルプロピルオキシ)エチルエステル)を得ることができる。
【実施例18】
【0113】
<2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−ジエトキシメチルシラニルプロピルオキシ)エチルエステルの製造>


化合物(2−1−5)に替えて上記の化合物(2−1−5c)を用いることとメタノールに替えてエタノールを用いること以外は、実施例4の工程3と同様の操作を行うことにより、化合物(1−1−5d)(2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−2−(3−ジエトキシメチルシラニルプロピルオキシ)エチルエステル)を得ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)で示される化合物に式(3)で示される化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Aは重合開始基であり;Rは炭素数1〜4のアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、nは1〜3の整数である。
【請求項2】
式(4)で示される化合物に式(5)で示される化合物をヒドロシリル化反応させて式(2)で示される化合物を得る工程と、この式(2)で示される化合物に式(3)で示される化合物を反応させる工程とを含むことを特徴とする、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Aは重合開始基であり;Rは炭素数1〜4のアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;そしてnは1〜3の整数である。
【請求項3】
Aがリビングラジカル重合開始基である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
Aが式(6−1)、式(6−2)、式(6−3)および式(6−4)のいずれか1つで示される基を有するリビングラジカル重合開始基である、請求項1または2に記載の製造方法:


式(6−1)において、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;そして、Xはハロゲンである:


式(6−2)において、Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;そして、−SOの結合位置は不対電子を有する炭素に対してオルト位、メタ位またはパラ位であって、Rの結合位置は−SOの結合位置を除く任意の位置である:


式(6−3)において、Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;そして、Zの結合位置は不対電子を有する炭素に対してメタ位またはパラ位であって、Rの置換位置はZの結合位置を除く任意の位置である:


式(6−4)において、RおよびRは独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数6〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、そしてRおよびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよく;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;aは0〜2の整数であり;そして、Zの結合位置は不対電子を有する炭素に対してメタ位またはパラ位であり、Rの結合位置はZの結合位置を除く任意の位置である。
【請求項5】
Aが式(7−1)、式(7−2)、式(7−3)および式(7−4)のいずれか1つで示される基である、請求項1または2に記載の製造方法:


式(7−1)において、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;Zは炭素数1〜10のアルキレンであり;そして、このアルキレンにおいて、炭素数が3であるとき1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、炭素数が3を超えるとき1つの−CH−または隣り合わない複数の−CH−は−O−で置き換えられてもよい:


式(7−2)において、Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、−SOの結合位置はZの結合位置に対してオルト位、メタ位またはパラ位であって、Rの結合位置は−SOの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−3)において、Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であって、Rの置換位置はZの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−4)において、RおよびRは独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数6〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜10のアリールであり、そしてRおよびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよく;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;aは0〜2の整数であり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であり、Rの結合位置はZの結合位置を除く任意の位置である。
【請求項6】
がメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、または1,1−ジメチルエチルであり;nが2または3であり、そしてAが式(7−1)、式(7−2)、式(7−3)および式(7−4)のいずれか1つで示される基である、請求項1または2に記載の製造方法:


式(7−1)において、Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、Zは炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、炭素数が3であるとき1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、炭素数が3を超えるとき1つの−CH−または隣り合わない複数の−CH−は−O−で置き換えられてもよい:


式(7−2)において、Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、−SOの結合位置はZの結合位置に対してオルト位、メタ位またはパラ位であって、Rの結合位置は−SOの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−3)において、Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;aは0〜2の整数であり;Xはハロゲンであり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であって、Rの置換位置はZの結合位置を除く任意の位置である:


式(7−4)において、RおよびRは独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数6〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜10のアリールであり、そしてRおよびRは互いに結合してNとともに環を形成してもよく;Rは炭素数1〜3のアルキルであり;Zは炭素数1〜3であって任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいアルキレンであり;aは0〜2の整数であり;Zは単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレンにおいて、炭素数が2以上であるとき任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Zの結合位置はZの結合位置に対してメタ位またはパラ位であり、Rの結合位置はZの結合位置を除く任意の位置である。
【請求項7】
Aが式(7−1)、式(7−2)または式(7−3)で示される基である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
Aが式(7−1)、式(7−2)または式(7−3)で示される基である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
Aが式(7−1)で示される基である、請求項5に記載の製造方法:
【請求項10】
Aが式(7−1)で示される基である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
Aが式(7−1)で示され;Rが水素、メチルまたはエチルであり;Rがメチルまたはエチルであり;そして、Xが塩素または臭素である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項12】
がメチルまたはエチルであり;nが3であり;Aが式(7−1)で表され;式(7−1)において、Xが臭素であり、RおよびRが共にメチルであり、そしてZが−C−、−C−または−C−O−C−である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項13】
式(2)で示される化合物とこの化合物に対するモル比で1〜10倍量の式(3)で示される化合物とを反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。


【公開番号】特開2007−8859(P2007−8859A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191269(P2005−191269)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】