説明

ケイ素化合物

本発明は、式(1)で示されるケイ素化合物、およびこれを用いて得られる重合体を提供するものであり、それによって、構造の明確な有機−無機複合材料が得られるだけでなく、この重合体の分子集合体としての構造を制御することも可能となる。


ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aはα−ハロエステル結合を有する基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、付加重合性単量体に対して重合開始能を有することを特徴とする新規なケイ素化合物、およびこれを用いて得られる重合体に関する。
【背景技術】
重合体は、汎用的な構造形成材料としてのみならず、高度な機能や性能を有する高付加価値型材料として様々な分野で利用されるようになってきた。それに伴い、高分子材料を精密な設計のもとに製造することの重要性が増している。シルセスキオキサンを無機成分として含む有機−無機複合材料の分野においても、新しい機能性高分子材料を創成することは極めて重要である。このような材料を得るためには、構造の明確な重合体を合成することが必要である。構造の明確な重合体でなければ、重合体の分子的な性質や分子集合体としての性質を精密に解析することができないので、高分子材料の機能を目的に合わせて最適化することができない。しかしながら、従来の有機−無機複合材料のほとんどは、構造制御された有機重合体を含んでいなかった。これらの多くはシルセスキオキサンと有機ポリマーとの機械的なブレンドにより得られているので、複合体の分子集合体としての構造を制御することは極めて困難であった。
そこで、重合開始剤を用いることによって重合体の構造を制御することが試みられるようになった。文献1には、α−ハロエステル基がスチレン系単量体およびメタアクリル酸系単量体に対する、リビングラジカル重合の良好な開始剤であることが開示されている。しかしながら、α−ハロエステル基を有するシルセスキオキサン誘導体は、現在まで知られていなかった。文献2には、クロロメチルフェネチル基を有するシルセスキオキサン誘導体が、スチレン系単量体に対する比較的良好なリビングラジカル重合の開始剤であることが開示されている。
文献1:Chem.Rev.,101,2921−2990(2001)
文献2:Chem.Mater.,13,3436−3448(2001)
本発明の目的は、広い範囲の付加重合性単量体に対してリビングラジカル重合開始能を有する新規なケイ素化合物、およびこれを用いて得られる重合体を提供することによって、従来の有機−無機複合材料に関する上記の問題点を解決することである。
【発明の開示】
本発明者らは、α−ハロエステル基を官能基として有する、新規なシルセスキオキサン誘導体を見いだした。そして、この化合物が上記の課題を解決する手段として有効であることを見出した。即ち、本発明は下記の構成を有する。
[1] 式(1)で示されるケイ素化合物。

ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aはα−ハロエステル結合を有する基である。
[2] Rが水素および炭素原子の数が1〜30であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基である、[1]項に記載のケイ素化合物。
[3] Rが炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニルおよび炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられるアルキルから独立して選択される基である、[1]項に記載のケイ素化合物。
[4] Rが非置換のナフチルおよび任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、[1]項に記載のケイ素化合物。
[5] Rが任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜12であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、[1]項に記載のケイ素化合物。
[6] Rが炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基である、[1]項に記載のケイ素化合物。
[7] すべてのRが炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、[1]項に記載のケイ素化合物。
[8] すべてのRが、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、[1]項に記載のケイ素化合物。
[9] すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基である、[1]項に記載のケイ素化合物。
[10] すべてのRが非置換のフェニルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される同一の基である、[1]項に記載のケイ素化合物。
[11] 式(1)において、Rが水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aが式(2)で示される基である、[1]項に記載のケイ素化合物:

式(2)において、Xはハロゲンであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Zは炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンであり、これらのアルキレンおよびアルケニレンにおいては、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。
[12] Rが水素および炭素原子の数が1〜30であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[13] Rが炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニルおよび炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられるアルキルから独立して選択される基である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[14] Rが非置換のナフチルおよび任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、[11]項に記載のケイ素化合物。
[15] Rが任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜12であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、[11]項に記載のケイ素化合物。
[16] Rが炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[17] すべてのRが炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[18] すべてのRが、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[19] すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[20] すべてのRが非置換のフェニルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される同一の基である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[21] Zが炭素原子の数が1〜20であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンである、[11]項に記載のケイ素化合物。
[22] Zが−C−O−C−、−C−または−C−であり;Rがメチルまたはエチルであり;Rが水素、メチルまたはエチルであり;そして、Xが臭素である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[23] Zが−C−または−C−であり;RおよびRが共にメチルであり;そして、Xが臭素である、[11]項に記載のケイ素化合物。
[24] 式(3)で示される化合物にハロゲン化アルキル基を有する酸ハロゲン化物を反応させることを特徴とする、[1]項に記載の式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法。

ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aは末端に水酸基を有する有機基である。
[25] 式(4)で示される化合物に式(5)で示される化合物を反応させることを特徴とする、式(6)で示されるケイ素化合物の製造方法:

ここに、すべてのR12は炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチルおよび任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基であり;Zは炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンであり、これらのアルキレンおよびアルケニレンにおいては、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい;

ここに、XおよびXは共にハロゲンであり、同一であっても異なっていてもよく;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルである;

ここに、R12およびZは式(4)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有し、R、RおよびXは式(5)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有する。
[26] [1]項に記載のケイ素化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として付加重合性単量体を重合することによって得られる重合体。
[27] [11]項に記載のケイ素化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として付加重合性単量体を重合することによって得られる重合体。
[28] 式(7)で示される重合体。

ここに、すべてのR12は炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチルおよび任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基であり;Zは炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンであり、これらのアルキレンおよびアルケニレンにおける任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、Pは付加重合性単量体の重合によって得られる構成単位の連鎖である。
[29] 付加重合性単量体が(メタ)アクリル酸誘導体およびスチレン誘導体から選択される少なくとも1つである、[27]項に記載の重合体。
[30] すべてのR12が任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基であり;Zが−C−または−C−であり;Rがメチルまたはエチルであり;Rが水素、メチルまたはエチルであり;Xが臭素であり;そして、Pが(メタ)アクリル酸誘導体およびスチレン誘導体から選択される少なくとも1つの化合物の重合によって得られる構成単位の連鎖である、[28]項に記載の重合体。
[31] すべてのR12がエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基であり;Zが−C−または−C−であり;RおよびRが共にメチルであり;Xが臭素であり;そして、Pが(メタ)アクリル酸誘導体およびスチレン誘導体から選択される少なくとも1つの化合物の重合によって得られる構成単位の連鎖である、[28]項に記載の重合体。
[32] Pがスチレン誘導体から選択される少なくとも1つの化合物の重合によって得られる構成単位の連鎖である、[31]項に記載の重合体。
はじめに、本発明で用いる用語について説明する。本発明において、アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルケニレンは、いずれも直鎖の基であってよいし分岐された基であってもよい。シクロアルキルおよびシクロアルケニルは、どちらも架橋環構造の基であってもよいし、そうでなくてもよい。
本発明で用いる「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意に選択できることを示す。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルは、アルキル、アルコキシアルキル、アルケニル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルおよびアルケニルオキシアルケニルのいずれかである。しかしながら本発明においては、エステル基に結合する−CH−が−O−で置き換えられる場合および連続する複数の−CH−が−O−で置き換えられる場合は含まない。
(メタ)アクリル酸はアクリル酸およびメタクリル酸の総称である。(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートの総称である。そして、(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタアクリロイルオキシの総称である。
式(1)で示される化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても、同様の簡略化法によって表記することがある。
本発明のケイ素化合物は式(1)で示される。

式(1)において、Rは水素、アルキル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のアリールアルキルから、それぞれ独立して選択される基である。すべてのRが同じ1つの基であることが好ましいが、異なる2つ以上の基で構成されていてもよい。7個のRが異なる基で構成される場合の例は、2つ以上のアルキルで構成される場合、2つ以上のアリールで構成される場合、2つ以上のアラルキルで構成される場合、水素と少なくとも1つのアリールとで構成される場合、少なくとも1つのアルキルと少なくとも1つのアリールとで構成される場合、少なくとも1つのアルキルと少なくとも1つのアラルキルとで構成される場合、少なくとも1つのアリールと少なくとも1つのアラルキルとで構成される場合である。これらの例以外の組み合わせでもよい。少なくとも2つの異なるRを有する化合物(1)は、これを製造する際に2つ以上の原料を用いることにより得ることができる。この原料については後に述べる。
がアルキルであるとき、その炭素数は1〜40である。好ましい炭素数は1〜30である。より好ましい炭素数は1〜8である。そして、その任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。このようなアルキルの好ましい例は、炭素数1〜30の非置換のアルキル、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、炭素数1〜8のアルキルにおいて1つの−CH−がシクロアルキレンで置き換えられた基、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルケニルオキシアルキル、炭素数2〜20のアルキルオキシアルケニル、炭素数1〜8のアルキルにおいて1つの−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられた基、およびここに挙げたこれらの基において任意の水素がフッ素で置き換えられた基である。シクロアルキレンおよびシクロアルケニレンの好ましい炭素数は、3〜8である。
炭素数1〜30の非置換のアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、1,1,2−トリメチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2,4,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシルおよびトリアコンチルである。
炭素数1〜30のフッ素化アルキルの例は、3,3,3−トリフルオロプロピル、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナデカフルオロヘキシル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−ドデシルおよびパーフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシルである。
炭素数2〜29のアルコキシアルキルの例は、3−メトキシプロピル、メトキシエトキシウンデシルおよび3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルである。
炭素数1〜8のアルキルにおいて1つの−CH−がシクロアルキレンで置き換えられた基の例は、シクロヘキシルメチル、アダマンタンエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−ビシクロヘプチルおよびシクロオクチルである。シクロヘキシルは、メチルの−CH−がシクロヘキシレンで置き換えられた例である。シクロヘキシルメチルは、エチルのβ位の−CH−がシクロヘキシレンで置き換えられた例である。
炭素数2〜20のアルケニルの例は、ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、5−ヘキセニル、7−オクテニル、10−ウンデセニルおよび21−ドコセニルである。
炭素数2〜20のアルケニルオキシアルキルの例はアリルオキシウンデシルである。
炭素数1〜8のアルキルにおいて1つの−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられた基の例は、2−(3−シクロヘキセニル)エチル、5−(ビシクロヘプテニル)エチル、2−シクロペンテニル、3−シクロヘキセニル、5−ノルボルネン−2−イルおよび4−シクロオクテニルである。
式(1)中のRが置換もしくは非置換のアリールである場合の例は、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルおよび非置換のナフチルである。ハロゲンの好ましい例はフッ素原子、塩素原子および臭素である。炭素数1〜10のアルキルにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−またはフェニレンで置き換えられてもよい。即ち、Rが置換もしくは非置換のアリールである場合の好ましい例は、非置換のフェニル、非置換のナフチル、アルキルフェニル、アルキルオキシフェニル、アルケニルフェニル、炭素数1〜10のアルキルにおいて任意の−CH−がフェニレンで置き換えられた基を置換基として有するフェニル、およびこれらの基において任意の水素がハロゲンで置き換えられた基である。
ハロゲン化フェニルの例はペンタフルオロフェニル、4−クロロフェニルおよび4−ブロモフェニルである。
アルキルフェニルの例は4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−ペンチルフェニル、4−ヘプチルフェニル、4−オクチルフェニル、4−ノニルフェニル、4−デシルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリエチルフェニル、4−(1−メチルエチル)フェニル、4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニルおよび2,4,6−トリス(1−メチルエチル)フェニルである。
アルキルオキシフェニルの例は(4−メトキシ)フェニル、(4−エトキシ)フェニル、(4−プロポキシ)フェニル、(4−ブトキシ)フェニル、(4−ペンチルオキシ)フェニル、(4−ヘプチルオキシ)フェニル、(4−デシルオキシ)フェニル、(4−オクタデシルオキシ)フェニル、4−(1−メチルエトキシ)フェニル、4−(2−メチルプロポキシ)フェニルおよび4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニルである。アルケニルフェニルの例は4−ビニルフェニル、4−(1−メチルビニル)フェニルおよび4−(3−ブテニル)フェニルである。
炭素数1〜10のアルキルにおいて任意の−CH−がフェニレンで置き換えられた基を置換基として有するフェニルの例は、4−(2−フェニルビニル)フェニル、4−フェノキシフェニル、3−(フェニルメチル)フェニル、ビフェニルおよびターフェニルである。4−(2−フェニルビニル)フェニルは、エチルフェニルのエチル基において、1つの−CH−がフェニレンで置き換えられ、もう1つの−CH−が−CH=CH−で置き換えられた例である。
ベンゼン環の水素の一部がハロゲンで置き換えられ、さらに他の水素がアルキル、アルキルオキシまたはアルケニルで置き換えられたフェニルの例は、3−クロロ−4−メチルフェニル、2,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、2,3,5−トリクロロ−4−メチルフェニル、2,3,6−トリクロロ−4−メチルフェニル、3−ブロモ−4−メチルフェニル、2,5−ジブロモ−4−メチルフェニル、3,5−ジブロモ−4−メチルフェニル、2,3−ジフルオロ−4−メチルフェニル、3−クロロ−4−メトキシフェニル、3−ブロモ−4−メトキシフェニル、3,5−ジブロモ−4−メトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−プロポキシフェニルおよび4−ビニル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルである。
次に、式(1)中のRが置換もしくは非置換のアリールアルキルである場合の例を挙げる。アリールアルキルを構成するアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。アリールアルキルの好ましい例はフェニルアルキルである。このとき、アルキレンの好ましい炭素数は1〜12であり、より好ましい炭素数は1〜8である。非置換のフェニルアルキルの例は、フェニルメチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、11−フェニルウンデシル、1−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、1−メチル−2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、3−フェニルブチル、1−メチル−3−フェニルプロピル、2−フェニルブチル、2−メチル−2−フェニルプロピルおよび1−フェニルヘキシルである。
フェニルアルキルにおいて、ベンゼン環の任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキルで置き換えられてもよい。この炭素数1〜12のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはフェニレンで置き換えられてもよい。フェニルの任意の水素がフッ素で置き換えられたフェニルアルキルの例は、4−フルオロフェニルメチル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルメチル、2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)エチル、3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)プロピル、2−(2−フルオロフェニル)プロピルおよび2−(4−フルオロフェニル)プロピルである。
ベンゼン環の任意の水素が塩素で置き換えられたフェニルアルキルの例は、4−クロロフェニルメチル、2−クロロフェニルメチル、2,6−ジクロロフェニルメチル、2,4−ジクロロフェニルメチル、2,3,6−トリクロロフェニルメチル、2,4,6−トリクロロフェニルメチル、2,4,5−トリクロロフェニルメチル、2,3,4,6−テトラクロロフェニルメチル、2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニルメチル、2−(2−クロロフェニル)エチル、2−(4−クロロフェニル)エチル、2−(2,4,5−クロロフェニル)エチル、2−(2,3,6−クロロフェニル)エチル、3−(3−クロロフェニル)プロピル、3−(4−クロロフェニル)プロピル、3−(2,4,5−トリクロロフェニル)プロピル、3−(2,3,6−トリクロロフェニル)プロピル、4−(2−クロロフェニル)ブチル、4−(3−クロロフェニル)ブチル、4−(4−クロロフェニル)ブチル、4−(2,3,6−トリクロロフェニル)ブチル、4−(2,4,5−トリクロロフェニル)ブチル、1−(3−クロロフェニル)エチル、1−(4−クロロフェニル)エチル、2−(4−クロロフェニル)プロピル、2−(2−クロロフェニル)プロピルおよび1−(4−クロロフェニル)ブチルである。
フェニルの任意の水素が臭素で置き換えられたフェニルアルキルの例は、2−ブロモフェニルメチル、4−ブロモフェニルメチル、2,4−ジブロモフェニルメチル、2,4,6−トリブロモフェニルメチル、2,3,4,5−テトラブロモフェニルメチル、2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニルメチル、2−(4−ブロモフェニル)エチル、3−(4−ブロモフェニル)プロピル、3−(3−ブロモフェニル)プロピル、4−(4−ブロモフェニル)ブチル、1−(4−ブロモフェニル)エチル、2−(2−ブロモフェニル)プロピルおよび2−(4−ブロモフェニル)プロピルである。
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルの例は、2−メチルフェニルメチル、3−メチルフェニルメチル、4−メチルフェニルメチル、4−ドデシルフェニルメチル、3,5−ジメチルフェニルメチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−(3−メチルフェニル)エチル、2−(2,5ジメチルフェニル)エチル、2−(4−エチルフェニル)エチル、2−(3−エチルフェニル)エチル、1−(4−メチルフェニル)エチル、1−(3−メチルフェニル)エチル、1−(2−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)プロピル、2−(2−メチルフェニル)プロピル、2−(4−エチルフェニル)プロピル、2−(2−エチルフェニル)プロピル、2−(2,3−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,5−ジメチルフェニル)プロピル、2−(3,5−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,4−ジメチルフェニル)プロピル、2−(3,4−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,5−ジメチルフェニル)ブチル、(4−(1−メチルエチル)フェニル)メチル、2−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)エチル、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)プロピルおよび2−(3−(1−メチルエチル)フェニル)プロピルである。
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の水素がフッ素で置き換えられた場合の例は、3−(トリフルオロメチル)フェニルメチル、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、2−(4−ノナフルオロブチルフェニル)エチル、2−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)エチル、2−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)エチル、、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、1−(4−ノナフルオロブチルフェニル)エチル、1−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)エチル、1−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)エチル、2−(4−ノナフルオロブチルフェニル)プロピル、1−メチル−1−(4−ノナフルオロブチルフェニル)エチル、2−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)プロピル、1−メチル−1−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)エチル、2−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)プロピルおよび1−メチル−1−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)エチルである。
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−が−CH=CH−で置き換えられた場合の例は、2−(4−ビニルフェニル)エチル、1−(4−ビニルフェニル)エチルおよび1−(2−(2−プロペニル)フェニル)エチルである。
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−が−O−で置き換えられた場合の例は、4−メトキシフェニルメチル、3−メトキシフェニルメチル、4−エトキシフェニルメチル、2−(4−メトキシフェニル)エチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピル、3−(2−メトキシフェニル)プロピル、3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロピル、11−(4−メトキシフェニル)ウンデシル、1−(4−メトキシフェニル)エチル、2−(3−(メトキシメチル)フェニル)エチルおよび3−(2−ノナデカフルオロデセニルオキシフェニル)プロピルである。
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−の1つがシクロアルキレンで置き換えられた場合の例は、もう1つの−CH−が−O−で置き換えられた場合も含めて例示すると、シクロペンチルフェニルメチル、シクロペンチルオキシフェニルメチル、シクロヘキシルフェニルメチル、シクロヘキシルフェニルエチル、シクロヘキシルフェニルプロピルおよびシクロヘキシルオキシフェニルメチルである。
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−の1つがフェニレンで置き換えられた場合の例は、もう1つの−CH−が−O−で置き換えられた場合も含めて例示すると、2−(4−フェノキシフェニル)エチル、2−(4−フェノキシフェニル)プロピル、2−(2−フェノキシフェニル)プロピル、4−ビフェニリルメチル、3−ビフェニリルエチル、4−ビフェニリルエチル、4−ビフェニリルプロピル、2−(2−ビフェニリル)プロピルおよび2−(4−ビフェニリル)プロピルである。
ベンゼン環の少なくとも2つの水素が異なる基で置き換えられたフェニルアルキルの例は、3−(2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチルフェニル)プロピル、3−クロロ−2−メチルフェニルメチル、4−クロロ−2−メチルフェニルメチル、5−クロロ−2−メチルフェニルメチル、6−クロロ−2−メチルフェニルメチル、2−クロロ−4−メチルフェニルメチル、3−クロロ−4−メチルフェニルメチル、2,3−ジクロロ−4−メチルフェニルメチル、2,5−ジクロロ−4−メチルフェニルメチル、3,5−ジクロロ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5−トリクロロ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルフェニルメチル、(2,3,4,6−テトラクロロ−5−メチルフェニル)メチル、2,3,4,5−テトラクロロ−6−メチルフェニルメチル、4−クロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2−クロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2,6−ジクロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2,4,6−トリクロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、3−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、4−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、5−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、6−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、3−ブロモ−4−メチルフェニルメチル、2,3−ジブロモ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5−トリブロモ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5,6−テトラブロモ−4−メチルフェニルメチルおよび11−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)ウンデシルである。
そして、フェニルアルキルを構成するフェニルの最も好ましい例は、非置換のフェニル、並びに置換基としてフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルおよびメトキシの少なくとも1つを有するフェニルである。
アルキレンの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられたフェニルアルキルの例は、3−フェノキシプロピル、1−フェニルビニル、2−フェニルビニル、3−フェニル−2−プロペニル、4−フェニル−4−ペンテニルおよび13−フェニル−12−トリデセニルである。
ベンゼン環の水素がフッ素またはメチルで置き換えられたフェニルアルケニルの例は、4−フルオロフェニルビニル、2,3−ジフルオロフェニルビニル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルビニル、4−メチルフェニルビニルである。
の最も好ましい例は、炭素数2〜8のアルキル(エチル、イソブチル、イソオクチルなど)フェニル、ハロゲン化フェニル、少なくとも1つのメチルを有するフェニル、メトキシフェニル、ナフチル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルブチル、2−フェニルプロピル、1−メチル−2−フェニルエチル、ペンタフルオロフェニルプロピル、4−エチルフェニルエチル、3−エチルフェニルエチル、4−(1,1−ジメチルエチル)フェニルエチル、4−ビニルフェニルエチル、1−(4−ビニルフェニル)エチル、4−メトキシフェニルプロピルおよびフェノキシプロピルである。
式(1)中のAは、α−ハロエステル基を有する基である。α−ハロエステル基を有する基は、末端基としてα−ハロカルボニルオキシを有する基を意味する。このα−ハロカルボニルオキシをラジカル重合の開始基とする重合方法として、原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization)法が知られている。この方法で用いられる重合触媒は、周期律表第8族、9族、10族または11族元素を中心の金属原子とする金属錯体である。この原子移動ラジカル重合において、α−ハロカルボニルオキシを有する基が優れた重合開始能を有することが知られている。この重合がリビング重合的であることもよく知られている。即ち、化合物(1)は、遷移金属錯体の存在下で優れた重合開始能を有し、リビング重合性を維持し続けることができる。そして化合物(1)は、あらゆるラジカル重合性単量体に対して重合を開始させることが可能であり、特にスチレン系誘導体に対して優れたリビング重合性を発現させることが可能である。
本発明のケイ素化合物は、末端基としてα−ハロカルボニルオキシを有するので、各種の有機反応を適用して多数の誘導体に導くことが可能である。例えば、リチウム、マグネシウムまたは亜鉛などと化合物(1)とを反応させることにより、有機金属官能基を有するシルセスキオキサンに誘導することができる。具体的には、化合物(1)に亜鉛を反応させて、有機亜鉛官能基を有するシルセスキオキサンに誘導した後、アルデヒドやケトンを付加させることによって、アルコール類に変換させることができる。即ち、有機亜鉛官能基を有するシルセスキオキサンは、いわゆるリフォマッキー反応に用いる中間原料として有用である。
化合物(1)におけるα−ハロカルボニルオキシ基は強い求電子性を有するので、種々の求核試薬を用いてアミノ基、メルカプト基などに変換することが可能である。さらに、化合物(1)をエナミンで処理してイミン塩とし、このイミン塩を加水分解することによってケトンに変換させることができる。即ち、化合物(1)はストーク−エナミン反応に用いる中間原料としても有用である。化合物(1)を脂肪族または芳香族系のグリニヤール試薬と反応させることにより、種々の有機官能基や重合性官能基を有するシルセスキオキサン誘導体とすることも可能である。従って、本発明のケイ素化合物は、重合開始剤としてだけでなく、種々の有機合成に有用な中間体として利用することができる。
の好ましい例は、式(2)で示される基である。

式(2)において、Xはハロゲンである。Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアラルキルである。Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアラルキルである。Zは炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンである。これらのアルキレンおよびアルケニレンにおいては、任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい。Zの好ましい例は、−C−O−C−、−C−またはC−である。ハロゲンの例は、塩素、臭素、およびヨウ素である。原子移動ラジカル重合の開始基としては、塩素および臭素が最も好ましい。
次に、本発明のケイ素化合物の製造方法について説明する。好ましい原料は式(3)で示されるケイ素化合物である。

式(3)において、Rは式(1)中のRと同一の意味を有し、Aは末端に水酸基を有する有機基である。
この化合物(3)を原料とし、α位の炭素にハロゲンが結合している酸ハロゲン化物を反応させることにより、化合物(1)に誘導することができる。そして、本発明のより好ましい原料は、式(4)で示されるケイ素化合物である。

式(4)中のすべてのR12は、炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチルおよび任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である。そして、式(4)中のZは、炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンである。これらのアルキレンおよびアルケニレンにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。
次のスキーム1およびスキーム2に示す合成経路は、化合物(4)を製造する方法の具体例の1つである。即ち、トリエチルアミンの存在下、テトラヒドロフランを溶剤とし、室温において化合物(A−1)をアセトキシエチルトリクロロシランと反応させて化合物Bとする。そして、硫酸触媒の存在下、メタノール中において化合物Bをエステル交換反応させ、ヒドロキシアルキルを有する化合物Cとすることができる。スキーム1中の化合物(A−1)は、加水分解性基を3つ有するケイ素化合物を加水分解することによりポリシルセスキオキサンを得、次いでこれをテトラヒドロフラン中で1価のアルカリ金属水酸化物と反応させることにより得られる。化合物(A−1)は、加水分解性基を3つ有するケイ素化合物を、アルカリ金属水酸化物の存在下、含酸素有機溶剤中で加水分解し重縮合させることによっても得られる。化合物(A−1)の代わりに化合物(A−2)を用いてもよい。化合物(A−2)は、Organometallics,10,2526−(1991)に記載されている。なお、以下のスキームにおいて、Phはフェニルであり、THFはテトラヒドロフランであり、TEAはトリエチルアミンである。
<スキーム1>

<スキーム2>

化合物(4)は、Feherらの方法によって製造することができる。Feherらの方法は、Chemical Communications(Cambridge,United Kingdom),1289−1290(1999)に記載されている。化合物(4)は、Feherらの方法を合成経路の一部に利用することによっても製造することができる。その具体例の1つをスキーム3〜スキーム5に示す。
<スキーム3>

<スキーム4>

<スキーム5>

即ち、トリエチルアミンの存在下、テトラヒドロフランを溶剤とし、室温において化合物(A−1)をビニルトリクロロシランと反応させて化合物(D)とする。次いで、化合物(D)のビニル基に対して1当量のトリフルオロメタンスルフォン酸を付加させ、化合物(E)とする。そして、得られた化合物(E)を加水分解して化合物(C)得ることができる。この経路の場合も、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−2)を用いることができる。
このようにして得られる化合物(4)に、化合物(5)を反応させることによって、本発明の化合物の好ましい例である化合物(6)を得ることができる。

式(5)において、Xはハロゲンであり、その好ましい例は塩素、臭素およびヨウ素である。X、RおよびRは、式(2)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有する。XとXは同一であっても異なっていてもよい。

式(6)におけるR12およびZは、式(4)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有し、R、RおよびXは、式(2)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有する。
化合物(4)は、化合物(5)と容易に反応してエステルとなる。反応に際して副生するハロゲン化水素は、脱水や二重結合部位への付加等の副反応を誘発するので、これを除去するために有機塩基を共存させて反応を行う。有機塩基の例は、ピリジン、ジメチルアニリン、トリエチルアミンおよびテトラメチル尿素である。副反応を抑制し、反応を速やかに進行させることができれば、他の有機塩基でもよい。そして、有機塩基の最も好ましい例はトリエチルアミンである。この反応は定量的に進行する求核置換反応であるが、化合物(5)の使用量は化合物(4)に対する当量比で1〜10倍であることが好ましい。化合物(5)の使用量を多くすることで、全ての化合物(4)を反応させることが可能であるし、反応時間を短くすることもできる。
この反応は通常、アルゴンガスや窒素ガスのような不活性気体雰囲気中で、原料に対して不活性な乾燥した有機溶剤を用いて行う。有機溶剤の例は、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環式エーテル類、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、四塩化炭素である。そして、有機溶剤の好ましい例はメチレンクロライドである。反応温度には特に制限はない。しかしながら、この反応は発熱を伴いながら激しく進行するため、通常は低温条件下で行う方がよい。好ましい反応温度は100℃以下であり、最も好ましい反応温度は35℃以下である。実際には、変則的な反応温度調節下で反応させてもよい。例えば、初期においては、ドライアイス−メタノール浴または氷浴を用いて反応系を冷却してから反応させ、その後室温付近まで昇温させて引き続き反応を行う方法である。反応時間には特に制限は無い。通常、1〜10時間で目的とするケイ素化合物を得ることができる。
以下の説明では、未反応の原料化合物および溶剤を総称して「不純物」と称することがある。この不純物を除去するために蒸留法を適用すると、長時間高温条件下に保持されるので、目的とする化合物が分解される恐れがある。従って、化合物(6)の純度を損ねることなく、不純物を効率的に除去するためには、再沈殿操作によって精製することが好ましい。この精製法は次のように行われる。まず、化合物(6)および不純物をともに溶解する溶剤に、反応液を溶解させる。このときの化合物(6)の好ましい濃度は、大まかに言えば1〜15重量%である。次に、化合物(6)は溶解しないけれども不純物は溶解するような溶剤、いわゆる沈殿剤をこの溶液に加えて化合物(6)のみを沈殿させる。沈殿剤の好ましい使用量は、化合物(6)および不純物をともに溶解するために用いた溶剤の重量に基づいて20〜50倍である。この使用量範囲も大まかな基準であり、前記の化合物(6)の濃度範囲とともに、必ずしもこれらの範囲内でなくてもよい。
化合物(6)を溶解させるための好ましい溶剤は、溶解力が大きく、沸点の比較的低い溶剤である。好ましい沈殿剤は、化合物(6)を溶解させるための溶剤と相溶し、化合物(6)を全く溶解せず、不純物のみを溶解し、沸点も比較的低い溶剤である。好ましい沈殿剤の例は低級アルコール類である。特に好ましい沈殿剤はメタノールまたはエタノールである。そして、さらに精製度をあげるためには、再沈殿操作の繰り返し回数を多くすればよい。
次に、化合物(1)の例を、表1で定義される記号を用いて具体的に示す。表2〜表9に示される例は、式(6)において、R12がエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,3,3−トリフルオロプロピルまたはフェニルであり、Zが−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、または−C−O−C−である場合の例である。なお、化合物(1)は、これらの例によって制限されない。

以下の表におけるT8は、下記のPSQ骨格を有する8価の基を意味する。










表2〜表9の例は、本発明のケイ素化合物の好ましい例である。これらに加えて、式(6)におけるR12がトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルであり、Zが−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−または−C−O−C−である化合物も同様に好ましい。そして、式(6)において、R12が3,3,3−トリフルオロプロピルまたは非置換のフェニルである化合物が最も好ましい。
次に、化合物(1)を重合開始剤として用いることができる付加重合性単量体について説明する。この付加重合性単量体は、付加重合性の二重結合を少なくとも1つ有する単量体である。付加重合性の二重結合を1つ有する単官能の単量体の例の1つは、(メタ)アクリル酸系単量体である。この具体例は(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリレート2−アミノエチル、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロキシ−2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)エタン、(1−(4−((4−(メタ)アクリロキシ)エトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチル−ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2−パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートである。
単官能の単量体のもう1つの例はスチレン系単量体である。その具体例は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−アミノスチレン、p−スチレンクロロスルホン酸、スチレンスルホン酸およびその塩、ビニルフェニルメチルジチオカルバメート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)スチレン、1−(2−((4−ビニルフェニル)メトキシ)−1−フェニルエトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,1]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,1]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンおよび3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンである。
その他の単官能性単量体の例は、フッ素含有ビニル単量体(パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなど)、ケイ素含有ビニル系単量体(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド系単量体(マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなど)、ニトリル基含有単量体(アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)、アミド基含有単量体(アクリルアミド、メタクリルアミドなど)、ビニルエステル系単量体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)、共役ジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなど)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニルなど)、ハロゲン化ビニリデン(塩化ビニリデンなど)、ハロゲン化アリル(塩化アリルなど)、アリルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、メチルビニルケトンおよびビニルイソシアナートである。さらに、重合性二重結合を1分子中に1つ有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサンなどから誘導されたマクロ単量体も挙げられる。
付加重合性二重結合を2つ有する多官能単量体の例は、1,3−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン ジ(メタ)アクリレート、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕ビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕テトラブロモビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクロキシポリエトキシ〕ビスフェノールA、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)5,5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオール ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール誘導体のジ(メタ)アクリレートおよびビス〔(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕テトラメチルジシロキサン等のジ(メタ)アクリレート系単量体、ジビニルベンゼンである。さらに、分子中に重合性二重結合を2つ有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサンなどから誘導されたマクロ単量体もあげられる。
付加重合性二重結合を3つ以上有する多官能単量体の例は、トリメチロールプロパン トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール モノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアネート) トリ(メタ)アクリレート、トリス(ジエチレングリコール)トリメレート トリ(メタ)アクリレート、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、オクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンおよびオクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)オクタシルセスキオキサンである。更に、分子中に重合性二重結合を2個以上を有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサンなどから誘導されたマクロ単量体も挙げられる。
これらの単量体は単独で用いてもよいし、複数を共重合させてもよい。共重合させる際にはランダム共重合でも、ブロック共重合でもよい。
次に、化合物(6)を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として、付加重合性単量体を原子移動ラジカル重合させる方法について説明する。本発明における原子移動ラジカル重合法は、リビングラジカル重合法の一つであり、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルフォニル化合物を開始剤として付加重合性単量体をラジカル重合する方法である。この方法は、J.Am.Chem.Soc.,1995,117,5614、Macromolecules,1995,28,7901、Science,1996,272,866などに開示されている。
重合触媒として用いられる遷移金属錯体の好ましい例は、周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましい触媒は、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケル錯体である。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物の例は、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅である。銅化合物を用いる場合には、触媒活性を高めるために、2,2’−ビピリジルもしくはその誘導体、1,10−フェナントロリンもしくはその誘導体、ポリアミン(テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミンなど)、またはL−(−)−スパルテイン等の多環式アルカロイドが配位子として添加される。2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合には、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)なども、触媒として好適である。
重合反応には溶剤を用いてもよい。用いられる溶剤の例は、炭化水素系溶剤(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶剤(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶剤(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶剤(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶剤(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶剤(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶剤(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶剤(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶剤(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、水である。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体COを媒体とする系においても重合を行うことができる。なお、用いることができる溶剤はこれらの例に制限されない。
原子移動ラジカル重合は、付加重合性単量体の種類、溶剤の種類に応じて、減圧、常圧または加圧下で行うことができる。併用される有機金属錯体、または生成ラジカルは、酸素と接触すると失活する恐れがある。そのような場合には重合速度が低下したり、良好なリビング重合体が得られなかったりするため、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で重合を行うことが肝要である。この反応では、あらかじめ、減圧下で重合系内の溶存酸素を除去する必要がある。そして、溶存酸素の除去工程の後、そのまま減圧下において重合工程へ移行することも可能である。原子移動ラジカル重合には慣用の方法を採用することができ、重合方法によって特に制限されない。例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、または塊状−懸濁重合法などを採用することができる。そして、重合温度は0〜200℃の範囲であり、好ましい重合温度は、室温〜150℃の範囲である。
上記の方法により、例えば化合物(6)を開始剤として得られる重合体は、式(7)で示すことができる。以下の説明では、式(7)で示される重合体を重合体(7)で表記する。

式(7)におけるPは、付加重合性単量体の重合によって得られる構成単位の連鎖であり、この他の記号は式(6)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有する。
用いる付加重合性単量体の種類を適当に選ぶことによって、重合体(7)の構造を制御することが可能である。例えば、単量体の単独重合を行えば、ホモポリマーが結合したシルセスキオキサンが得られる。複数の単量体を同時に添加して重合するとランダム共重合体が結合したシルセスキオキサンが得られる。単量体を逐次的に添加する方法、例えば、最初の単量体の重合が完結した後に、2番目の単量体を添加して重合を完結させる方法を採用すれば、ブロック共重合体が結合したシルセスキオキサンを得ることができる。この段階的な重合を複数の単量体を用いて繰り返し行うことで、マルチブロック共重合体が結合したシルセスキオキサンを得ることが可能である。そして、必要に応じて多官能単量体を共存させることで、三次元網目構造を有する架橋重合体とすることもできる。
通常の付加重合性単量体を重合させる時に、重合性官能基を有すると同時に開始剤としての機能をも有する化合物、例えば2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)スチレンなどを併用することにより、高分岐型ポリマーが結合したシルセスキオキサンを得ることができる。また、トリアルコキシシラン、ポリジメチルシロキサン、シルセスキオキサンなどであって、(メタ)アクリル基やスチリル基などの重合性官能基を有する化合物を併用することにより、重合体の構造中にケイ素原子を含む構成単位を導入することができる。原子移動ラジカル重合に関与しない開始基を有する付加重合性単量体、例えば1−(2−(4−ビニルフェニルメトキシ)−1−フェニルエトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)エタン、(1−(4−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、ビニルフェニルメチルジチオカルバメートなどを共重合させた後、得られた重合体を開始剤として、さらに他の重合様式(例えばニトロキシル重合や光イニファタ重合)で付加重合性単量体を重合させて、グラフト共重合体を形成させることもできる。
オキセタニル基を有する単量体、例えば3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどと共重合させた後、得られた重合体に開始剤としてジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、または(4−ペンタデシルオキシフェニル)フェニルアイオドニウムヘキサフルオロアンチモネートなどを添加すれば、光カチオン重合させることが可能になる。
次に重合体(7)の精製方法について説明する。この重合体の単離・精製は、未反応の付加重合性単量体を効率よく除去することによってなされる。種々の方法があるが、再沈殿操作による精製法が好ましい。この精製法は次のように行われる。まず、重合体(7)および未反応の単量体を含む重合反応液に、重合体(7)は溶解しないけれども未反応の単量体は溶解するような溶剤、いわゆる沈殿剤をこの溶液に加えて重合体(7)のみを沈殿させる。沈殿剤の好ましい使用量は、前記の重合反応液の重量に基づいて20〜50倍である。
好ましい沈殿剤は、重合時に用いる溶剤と相溶し、重合体(7)を全く溶解せず、未反応の単量体のみを溶解し、沸点も比較的低い溶剤である。好ましい沈殿剤の例は低級アルコール類および脂肪族炭化水素である。特に好ましい沈殿剤はメタノールおよびヘキサンである。そして、未反応単量体の除去効率をさらにあげるためには、再沈殿操作の繰り返し回数を多くすればよい。この方法により、重合体(7)のみを貧溶剤中で析出させることが可能であり、濾過操作によって容易に未反応単量体と重合体とを分離することができる。
上記の方法により単離した重合体(7)には重合触媒である遷移金属錯体が残存するため、重合体の着色、物性面への影響および環境安全性などの問題が生ずることがある。従って、重合反応終了時にこの触媒残渣を除去する必要がある。触媒残渣は、活性炭などを用いる吸着処理により除去することができる。活性炭以外の吸着剤の例は、イオン交換樹脂(酸性、塩基性またはキレート形)、および無機系吸着剤である。無機系吸着剤は、固体酸、固体塩基、または中性の性格を有する。そしてこれは、多孔質構造の粒子であるため、非常に高い吸着能を有する。低温から高温までの広い温度範囲で使用可能であることも、無機系吸着剤の特徴の1つである。
無機系吸着剤の代表例は、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート、活性アルミナ、酸性白土、活性白土等の粘土系吸着剤、ゼオライト(zeolite)系吸着剤、ドーソナイト(dawsonite)類化合物、およびハイドロタルサイト(hydrotalcite)類化合物である。ゼオライトには天然産と合成品があるが、いずれでもよい。二酸化ケイ素には結晶性、無定形、非晶質、ガラス状、合成品、天然品などの種類があるが、本発明においては、種類に関係なく、粉体状の二酸化ケイ素が使用可能である。天然アルミニウムシリケートの例は、軽石、フライアッシュ、カオリン、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土である。合成アルミニウムシリケートは、比表面積も大きく吸着能力が高いハイドロタルサイト類化合物は、アルミニウム・マグネシウム水酸化物の含水炭酸塩である。
酸性吸着剤および塩基性吸着剤は、活性炭と併用されることが好ましい。酸性吸着剤の例は、酸性白土、活性白土、アルミニウムシリケートである。塩基性吸着剤の例は、活性アルミナ、前記のゼオライト系吸着剤、ハイドロタルサイト類化合物である。これらの吸着剤は単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。そして、原子移動ラジカル重合により製造される重合体(7)は、活性アルミナと接触させることにより精製することができる。活性アルミナは、アルドリッチ社などからの市販品を用いることができる。活性アルミナをこれ以外の吸着剤と併用して吸着処理を行う場合は、吸着剤を混合して接触させることもできるが、それぞれ別々の工程で接触させてもよい。吸着剤と接触させる際は反応液そのままでもよく、反応液を溶剤で希釈しても構わない。希釈溶剤は、重合体の貧溶剤でないことのみを条件として、一般的な溶剤から選択されてよい。吸着剤処理の温度については特に制限はない。一般的には、0℃〜200℃で処理すればよい。好ましい温度範囲は室温〜180℃である。そして吸着剤の使用量は、重合体(7)の重量に基づいて、0.1〜500重量%の範囲である。経済性と操作面を考慮すると、好ましい範囲は0.5〜10重量%である。
吸着剤と重合体溶液の固液接触には、撹拌混合と固液分離を回分操作で行う回分式の方法が利用できる。この他に、吸着剤を容器に充填し重合体溶液を通液する固定層方式、吸着剤の移動層に液を通じる移動層式、吸着剤を液で流動化して吸着を行う流動層式などの連続式の方法も利用できる。さらに必要に応じて、撹拌による混合分散操作に、容器の振とうまたは超音波の利用などの、分散効率を向上させる操作を組み合わせることができる。重合体溶液を吸着剤に接触させた後、濾過、遠心分離、沈降分離等の方法で吸着剤を除去し、必要に応じて水洗処理を行い、精製された重合体溶液を得る。吸着剤による処理は、最終生成物である重合体(7)に対して行えばよいが、この重合体を製造するための中間生成物に対して行ってもよい。例えば、原子移動ラジカル重合により得られるブロック共重合体の各重合段階において、この重合体を単離し、吸着処理を行なうことも可能である。吸着剤による処理を行った重合体(7)は、貧溶剤中で析出させたり、溶剤などの揮発成分を減圧下で溜去することにより分離してもよい。
生成した重合体(7)の分子量および分子量分布の解析方法について説明する。通常、付加重合体の分子量は、ポリスチレンやポリ(メチル メタアクリレート)のような直鎖状のポリマーを標準試料とした校正曲線を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。重合体(7)の分子量および分子量分布も、GPCにより解析することが可能である。
重合体(7)は末端部分がシルセスキオキサンであるため、酸性条件下または塩基性条件下で、容易に分解することができる。すなわち、シルセスキオキサンから付加重合体を切り離した後に、その分子量を測定することによって、重合体部分の分子量解析の精度をさらに向上させることができる。酸性条件下で重合体(7)を分解する場合には、フッ化水素酸を用いることが好ましい。塩基性条件下で重合体(7)を分解する場合には、水酸化カリウムを用いることが好ましい。重合体(7)の分解は、均一系および不均一系のどちらでも行うことができる。例えば、重合体(7)を溶解できる有機溶剤(テトラヒドロフラン、アセトニトリルなど)とフッ化水素酸との均一混合系で、重合体(7)のシルセスキオキサン部分を切り離すことができる。トルエンとフッ化水素酸との不均一混合系においても、シルセスキオキサン部分の分解を行うことが可能である。この際には、相間移動触媒の併用が好ましい。相間移動触媒の例は、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン、ジメチルアニリンである。水酸化カリウムを用いる場合は、テトラヒドロフラン、エタノールおよび水の混合溶剤中で分解をすることも可能である。
これらの方法により切り離した付加重合体についてGPCにより測定すれば、重合体(7)中の付加重合体部分の分子量を求めることができる。粘度とGPCデータから得られる普遍校正曲線を用いることにより、重合体(7)の分子量を求めることも可能である。重合体(7)の絶対分子量は、末端基定量法、膜浸透圧法、超遠心法、光散乱法などによっても求めることができる。
重合体(7)の好ましい分子量は、ポリスチレン換算で、数平均分子量が500〜1,000,000の範囲である。さらに好ましい範囲は1000〜100,000である。ただ、この範囲の上限値および下限値に特別な意味があるわけではない。そして分子量分布は、分散度(Mw/Mn)で1.01〜2.0の範囲であることが好ましい。
重合体(7)の分子量は、付加重合性単量体と開始剤である化合物(6)との割合により調整することができる。すなわち、付加重合性単量体/化合物(6)のモル比および単量体の消費率から、次の計算式を用いて、重合体(7)の理論分子量を予測することができる。
Mn=(単量体の消費率(モル%)/100)×MW×モル比+MW
この計算式において、Mnは理論数平均分子量、MWは付加重合性単量体の分子量、MWは化合物(6)の分子量、モル比は化合物(6)に対する付加重合性単量体のモル倍率である。
前記の数平均分子量範囲を有する重合体を得ようとする場合には、化合物(6)に対する付加重合性単量体のモル倍率を、およそ2〜およそ40,000とする。このモル倍率の好ましい範囲は、およそ10〜およそ5,000である。数平均分子量は、重合時間を変化させることによっても調整することができる。単量体の消費率(以下、「転化率」と称することがある。)を求めるためには、GPC、H−NMR、ガスクロマトグラフィーのいずれの方法も採用することができる。
【実施例】
実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
実施例1〜100中の分子量のデータは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)によって求めたポリスチレン換算値であり、実施例101〜130中の分子量のデータは、GPCによって求めたポリ(メタクリル酸メチル)換算値である。以下に、GPCの測定条件を示す。
装置:日本分光株式会社製、JASCO GULLIVER 1500(インテリジェント示差屈折率計RI−1530)
溶剤:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
使用カラム:実施例1〜90:東ソー株式会社製、TSKguardcolumn HXL−L(GUARDCOLUMN)+TSKgel G1000HxL(排除限界分子量(ポリスチレン):1,000)+TSkgel G2000HxL(排除限界分子量(ポリスチレン):10,000)
較正曲線用標準試料:Polymer Laboratories社製、Polymer Standards(PL),Polystyrene
同:実施例91〜130:昭和電工株式会社製、Shodex KF−G(GUARDCOLUMN)+Shodex KF−804L(排除限界分子量(ポリスチレン):400,000)×2本
実施例で用いられる記号の意味は次の通りである。
Ph:フェニル
Ch:シクロヘキシル
Cp:シクロペンチル
Et:エチル
iBu:イソブチル
iOc:イソオクチル
TFPr:トリフルオロプロピル
TDFOc:トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル
TMS:トリメチルシリル
Mn:数平均分子量
Mw:重量平均分子量
【実施例1】
<ポリフェニルシルセスキオキサン(化合物A)の合成>
攪拌機、還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を取り付けた内容積2リットルのセパラブル4つ口フラスコに、氷水(640.7g)及びトルエン(200g)を仕込み、撹拌しながらフラスコ内を0℃に冷却した。次に、フェニルトリクロロシラン(211.5g)とモレキュラシーブスで1昼夜乾燥したトルエン(130g)との混合溶液を、フラスコ内の温度が2℃を超えないようにしながら1時間掛けて滴下した。その後、室温で30分間撹拌してから純水で水洗し、減圧下でトルエンを留去して、固体状の化合物A(120.7g)を得た。化合物Aの重量平均分子量は約3100であった。
【実施例2】
<ナトリウム結合フェニルシルセスキオキサン化合物(化合物B)の合成>
還流冷却器、温度計を取り付けた500mlの4つ口フラスコに、上記で得られた化合物A(12.9g)、モレキュラシーブスで1昼夜乾燥したテトラヒドロフラン(250ml)及び水酸化ナトリウム(4.0g)を仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、67℃に加熱して還流状態にした。約4時間後、微粉の析出により溶液が白濁し始め、そのまま1時間還流を続けて反応を終了させた。析出した固体をテトラヒドロフランで洗浄し、濾過によりテトラヒドロフランを分離した後、真空乾燥して化合物B(10.1g)を得た。

【実施例3】
<フェニルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合フェニルシルセスキオキサン化合物(化合物B)の合成>
還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を取り付けた内容積1リットルの4つ口フラスコに、フェニルトリメトキシシラン(99g)、水酸化ナトリウム(10g)及び2−プロパノール(500ml)を仕込み撹拌子を投入した。室温にてマグネチックスターラーで攪拌しながら滴下漏斗より脱イオン水11gを約2分間で滴下し、その後、2−プロパノールが還流する温度までオイルバスにて加熱した。還流が開始してから1.5時間撹拌を継続し反応を完結させた。その後、フラスコをオイルバスより引き上げ、室温で1晩静置して生成した固体を完全に析出させた。析出した固体は孔径0.1マイクロメートルのメンブランフィルターを具備した加圧濾過器により濾過した。次いで得られた固体を2−プロパノールで1回洗浄し、減圧乾燥機にて70℃、4時間乾燥を行い、白色固体の化合物B(66g)を得た。
【実施例4】
<フェニルトリメトキシシランを原料として得られた化合物Bへのトリメチルシリル基の導入(化合物C)>
滴下漏斗、還流冷却器及び温度計を取り付けた内容積50ミリリットルの4つ口フラスコに、撹拌子、実施例3で得られた化合物B(1.2g)、テトラヒドロフラン(12g)、トリエチルアミン(1.8g)を仕込み、乾燥窒素にてシールした。マグネチックスターラーで撹拌しながら室温で滴下漏斗よりクロロトリメチルシラン(2.3g)を約1分間で滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌を継続し反応を完結させた。ついで純水10g投入し、生成した塩化ナトリウム及び未反応のクロロトリメチルシランを加水分解した。このようにして得られた反応混合物を分液漏斗に移し有機相と水相とに分離し、得られた有機相を脱イオン水により洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して白色固体の化合物C(1.2g)を得た。
化合物Cについて、H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR、質量分析、X線結晶構造解析及びIR分析により構造解析を行った。H−NMRチャート及び13C−NMRチャートから、フェニル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRから、トリメチルシリル基を示唆する11.547ppm、フェニル基を有しT構造を示唆する−77.574ppm、−78.137ppm、−78.424ppm(いずれもテトラメチルシランを基準)のピークが1:3:3の比で3種類存在することが確認された。質量分析スペクトルの測定結果から、絶対分子量は前記式(8)に示す構造体の理論分子量と一致した。X線結晶構造解析による結晶構造解析の結果から、前記式(8)に示す構造体であることが確認された。IR分析スペクトルの測定結果から、1430,1590cm−1にSi−Phの変角振動、1960〜1760cm−1に置換ベンゼン環の倍振動、1200〜950cm−1にSi−O−Siの伸縮振動、1250cm−1にSi−CHの振動にそれぞれ帰属される吸収が確認された。これらの結果は、トリメチルシリル基で置換した化合物(化合物C)が前記式(8)で表される構造であることを支持しており、このことから、得られたナトリウム結合フェニルシルセスキオキサン化合物(化合物B)は前記式(9)で表される構造を有していることが分かった。なお、T構造はSi原子に3個の酸素原子が結合している構造のことである。
【実施例5】
<シクロヘキシルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合シクロヘキシルシルセスキオキサン化合物の合成>
フェニルトリメトキシシランの代わりにシクロヘキシルトリメトキシシランを用いる以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、式(10)で示されるナトリウム結合シクロヘキシルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。

【実施例6】
<化合物(10)へのトリメチルシリル基の導入>
化合物(9)の代わりに化合物(10)を用いる以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより、式(11)で示されるトリメチルシリル基を有するシクロヘキシルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。さらに、実施例4と同様の操作により化合物(11)の構造解析を行うことで、前記化合物(10)の生成を確認することができる。

【実施例7】
<シクロペンチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合シクロペンチルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を取り付けた内容積200mlの4つ口フラスコに、シクロペンチルトリメトキシシラン(19.0g)、THF(100ml)、水酸化ナトリウム(1.7g)及び脱イオン水(2.3g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら加熱した。67℃で還流が開始してから10時間撹拌を続けて、反応を終了させた。その後、フラスコをオイルバスから引き上げ、室温で1晩静置して生成した固体を完全に析出させた。析出した固体を濾過、真空乾燥して粉末状固体の化合物(4.2g)を得た。
【実施例8】
<トリメチルシリル基の導入>
環流冷却器を取り付けた内容積100mlの4つ口フラスコに、実施例7で得られた化合物(1.0g)、THF(30ml)、トリエチルアミン(0.5g)及びトリメチルクロロシラン(0.7g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら室温で2時間撹拌した。反応終了後、実施例4の構造確認における場合と同様に処理して、粉末状固体の化合物(0.9g)を得た。
得られた化合物を、H−NMR、29Si−NMR及びX線結晶構造解析により分析した。H−NMRから、シクロペンチル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRから、トリメチルシリル基を示唆する8.43ppm、シクロペンチル基を有しT構造を示唆する−66.37ppm、−67.97ppm、−67.99ppmの3種類のピークが確認された。−67.97ppm、−67.99ppmのピーク強度の和と、−66.37ppmのピーク強度の比は6:1であった。これらの結果とX線結晶構造解析による結晶構造とから、分析の対象である粉末状固体の化合物は式(12)で示されるケイ素化合物であると確認された。従って、実施例7で得られた化合物は、式(13)で示される構造を有すると示唆された。

【実施例9】
<エチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合エチルシルセスキオキサン化合物の合成>
フェニルトリメトキシシランの代わりにエチルトリメトキシシランを用いる以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、式(14)で示されるナトリウム結合エチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。

【実施例10】
<化合物(14)へのトリメチルシリル基の導入>
化合物(9)の代わりに化合物(14)を用いる以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより、式(15)で示されるトリメチルシリル基を有するエチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。さらに、実施例4と同様の操作により化合物(15)の構造解析を行うことで、前記化合物(14)の生成を確認することができる。

【実施例11】
<イソブチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合イソブチルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を取り付けた内容積200mlの4つ口フラスコに、イソブチルトリメトキシシラン(18.7g)、THF(100ml)、水酸化ナトリウム(1.8g)及び脱イオン水(2.4g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら加熱した。67℃で還流が開始してから10時間撹拌を続けて、反応を終了させた。定圧下で固体が析出するまで反応液を濃縮した後、得られた濃縮液を室温で1晩静置して、固体を完全に析出させた。これを濾過し、真空乾燥して粉末状固体の化合物(5.1g)を得た。
【実施例12】
<トリメチルシリル基の導入>
環流冷却器を取り付けた内容積200mlの4つ口フラスコに、実施例11で得られた粉末状固体の化合物(1.0g)、THF(20ml)、トリエチルアミン(0.5g)及びトリメチルクロロシラン(0.8g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら室温で2時間撹拌した。反応終了後、実施例4の構造確認における場合と同様に処理して、粉末状固体の化合物(0.9g)を得た。
上記の粉末状固体について、H−NMR及び29Si−NMRにより構造解析を行った。H−NMRチャートから、イソブチル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRから、トリメチルシリル基を示唆する8.72ppm、イソブチル基を有しT構造を示唆する−67.38ppm、−68.01ppm、−68.37ppmのピークが1:3:3の比で3種類存在することが確認された。これらの結果から、分析の対象である粉末状固体の化合物は、式(16)で示されるケイ素化合物であると確認された。従って、実施例11で得られた化合物は、式(17)で示される構造を有すると示唆された。

【実施例13】
<イソオクチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合イソオクチルシルセスキオキサン化合物の合成>
フェニルトリメトキシシランの代わりにイソオクチルトリメトキシシランを用いる以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、式(18)で示されるナトリウム結合イソオクチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。

【実施例14】
<化合物(18)へのトリメチルシリル基の導入>
化合物(9)の代わりに化合物(18)を用いる以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより、式(19)で示されるトリメチルシリル基を有するイソオクチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。さらに、実施例4と同様の操作により化合物(19)の構造解析を行うことで、前記化合物(18)の生成を確認することができる。

【実施例15】
<トリフルオロプロピルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合トリフルオロプロピルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を取り付けた内容積1リットルの4つ口フラスコに、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(100g)、THF(500ml)、脱イオン水(10.5g)及び水酸化ナトリウム(7.9g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら、室温からTHFが還流する温度までオイルバスにより加熱した。還流開始から5時間撹拌を継続して反応を完結させた。その後、フラスコをオイルバスから引き上げ、室温で1晩静置した後、再度オイルバスにセットし固体が析出するまで定圧下で加熱濃縮した。析出した生成物は孔径0.5μmのメンブランフィルターを備えた加圧濾過器を用いて濾過した。次いで、得られた固形物をTHFで1回洗浄し、減圧乾燥機にて80℃、3時間乾燥を行い、74gの無色粉末状の固形物を得た。
【実施例16】
<トリメチルシリル基の導入>
滴下漏斗、還流冷却器及び温度計を取り付けた内容積50mlの4つ口フラスコに、実施例15で得られた無色粉末状の固形物(1.0g)、THF(10g)及びトリエチルアミン(1.0g)を仕込み、乾燥窒素にてシールした。マグネチックスターラーで撹拌しながら、室温でクロロトリメチルシラン(3.3g)を約1分間で滴下した。滴下終了後、室温で、さらに3時間撹拌を継続して反応を完結させた。ついで純水10g投入し生成した塩化ナトリウム及び未反応のクロロトリメチルシランを加水分解した。このようにして得られた反応混合物を分液漏斗に移し有機相と水相とに分離し、得られた有機相を脱イオン水により洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して白色固体の化合物(0.9g)を得た。
得られた白色粉末状の固形物について、GPC、H−NMR、29Si−NMR及び13C−NMRにより構造解析を行った。GPCチャートから白色粉末状の固形物は単分散性を示し、その分子量はポリスチレン換算で重量平均分子量1570であり、純度98重量%であることが確認された。H−NMRチャートから、トリフルオロプロピル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRチャートから、トリフルオロプロピル基を有しT構造を示唆するピークが1:3:3の比で3つ、トリメチルシリル基を示唆するピークが12.11ppmに1つ存在することが確認された。13C−NMRチャートでも131〜123ppm、28〜27ppm、6〜5ppmにトリフルオロプロピル基を示唆するピークが存在し、1.4ppmにトリメチルシリル基を示唆するピークが存在することが確認された。質量分析スペクトルの測定結果から、絶対分子量は式(20)に示す構造体の理論分子量と一致した。X線構造解析による結晶構造解析の結果から、式(20)に示す構造体であることが確認された。これらの結果は、構造解析の対象である無色粉末状の固形物が式(20)の構造を有することを示している。従って、トリメチルシリル化される前の化合物は、式(21)の構造であると判断される。

【実施例17】
<化合物(9)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
還流冷却器、温度計及び攪拌子を備えた500mlの4つ口フラスコに、実施例1で得られた化合物(9)10g及びテトラヒドロフラン(200ml)を導入した。次いで化合物(9)/テトラヒドロフラン溶液にアセトキシエチルトリクロロシラン(3.3g、化合物(9)に対して1.5当量)を速やかに加え、室温下で2時間撹拌させた。その後、反応液をヘキサン(1000g)に投入した。析出した固体成分を吸引濾過により回収し、トルエン(90g)に再溶解させた後、水(330ml)により有機層を洗浄した。水洗を3回行った後、有機層を分離し、無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥を行った。次いでフィルター濾過による固−液分離を行った。その後、有機層を濃縮して得られた固体成分にエタノール(90g)を加え、室温条件下、撹拌に付した。さらに加圧濾過装置を用いて、固−液分離を行なった後、得られた固体成分を減圧乾燥(80℃、3時間)し、無色の固体を得た(6.88g、収率:65.9%)。
得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すIR、H−、13C−及び29Si−NMRの結果から、得られた無色の固体が式(22)で示される構造を有していることがわかった。
IR(KBr法):ν=1740(C=O),1430(Si−Ph),1240(C−O),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82〜7.72,7.46〜7.31(m,35H,Ph−Si),4.32〜4.28(t,2H,−O−CH−),1.84(s,3H,CH−(C=O)−),1.37〜1.33(t,2H,−CH−Si)
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):171.15(C=O),134.4〜134.3,131.1〜131.0,130.2,128.12(Ph−Si),60.6(−O−CH−),20.8(CH−(C=O)−),13.2(−CH−Si)
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−67.97(−CH−SiO1.5),−78.36,−78.67(Ph−SiO1.5

【実施例18】
<化合物(10)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例5で得られる化合物(10)を用いる以外は、実施例17と同様の操作を行うことにより、式(23)で示される化合物を得ることができる。

【実施例19】
<化合物(13)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例7で得られる化合物(13)を用いる以外は、実施例17と同様の操作を行うことにより、式(24)で示される化合物を得ることができる。

【実施例20】
<化合物(14)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例9で得られる化合物(14)を用いる以外は、実施例17と同様の操作を行うことにより、式(25)で示される化合物を得ることができる。

【実施例21】
<化合物(17)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例11で得られる化合物(17)を用いる以外は、実施例17と同様の操作を行うことにより、式(26)で示される化合物を得ることができる。

【実施例22】
<化合物(18)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例13で得られる化合物(18)を用いる以外は、実施例17と同様の操作を行うことにより、式(27)で示される化合物を得ることができる。

【実施例23】
<化合物(21)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
還流冷却器、温度計及び攪拌子を備えた500mlの4つ口フラスコに、実施例15で得られた化合物(21)22.71g及びテトラヒドロフラン(400g)を導入した。次いで化合物(21)/テトラヒドロフラン溶液にアセトキシエチルトリクロロシラン(3.21g、化合物(21)に対して1.6当量)を速やかに加え、室温下で4時間撹拌させた。その後、フィルター濾過による固−液分離を行った後、ロータリーエバポレータを用いて濾液を濃縮した。濃縮物にメタノール(100ml)を加え、フィルター濾過により固−液分離を行った。さらに得られた固体成分にテトラヒドロフラン(200ml)を加え、無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥を行った。次いでフィルター濾過による固−液分離を行った。その後、有機層を濃縮して得られた固体成分にメタノール(100g)を加え、室温条件下、撹拌に付した。さらにフィルター濾過により固−液分離を行なった後、得られた固体成分を減圧乾燥(75℃、5時間)し、無色の固体を得た(12.2g、収率:51.6%)。
得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示す、H−、13C−及び29Si−NMRの結果から、得られた無色の固体が式(28)で示される構造を有していることがわかった。
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):4.18(t,2H,−O−CH−),2.14(m,14H,−[CH]−CF),2.04(s,3H,CH−(C=O)−),1.19(t,2H,−CH−Si),0.95(m,14H,Si−[CH]−CH−CF
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):171.11(C=O),131.41,128.68,125.92,123.20(−CF),60.01(−O−CH−),28.17,27.85,27.55,27.25(−[CH]−CF),20.92(CH−(C=O)−),12.81(−CH−Si),4.03(Si−[CH]−CH−CF
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−68.66(−CH−SiO1.5),−67.62,−67.72(CF−CH−CH−SiO1.5

【実施例24】
<化合物(29)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
滴下ロート、還流冷却器、温度計及び攪拌子を備えた500mlの4つ口フラスコに、氷浴中、式(29)で示される化合物(10g、トリシラノールフェニルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)、トリエチルアミン(4.24g、シラノールに対して1.3当量)及びテトラヒドロフラン(200ml)を導入した。次いで化合物(29)/テトラヒドロフラン溶液にアセトキシエチルトリクロロシラン(3.32g、化合物(29)に対して1.5当量)を速やかに加え、室温下で2時間撹拌させた。その後、反応液をヘキサン(1000g)に投入した。析出した固体成分を吸引濾過により回収し、トルエン(90g)に再溶解させた後、水(330ml)により有機層を洗浄した。水洗を3回行った後、有機層を分離し、無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥を行った。次いでフィルター濾過による固−液分離を行った。その後、得られた固体成分にエタノール(90g)を加え、室温条件下、撹拌した。さらに加圧濾過装置を用いて、固−液分離を行なった後、得られた固体成分を減圧乾燥(80℃、3時間)し、無色の固体を得た(5.25g、収率:47.0%)。
得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すIR、H−、13C−及び29Si−NMRの結果から、得られた無色の固体が式(22)で示される構造を有していることがわかった。
IR(KBr法):ν=1740(C=O),1430(Si−Ph),1240(C−O),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82〜7.72,7.46〜7.31(m,35H,Ph−Si),4.32〜4.28(t,2H,−O−CH−),1.84(s,3H,CH−(C=O)−),1.37〜1.33(t,2H,−CH−Si)
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):171.15(C=O),134.4〜134.3,131.1〜131.0,130.2,128.12(Ph−Si),60.6(−O−CH−),20.8(CH−(C=O)−),13.2(−CH−Si)
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−67.97(−CH−SiO1.5),−78.36,−78.67(Ph−SiO1.5

【実施例25】
<化合物(30)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(30)で示される化合物(トリシラノールシクロヘキシルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例24と同様の操作を行うことにより、実施例18に記載の化合物(23)を得ることができる。

【実施例26】
<化合物(31)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(31)で示される化合物(トリシラノールシクロペンチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例24と同様の操作を行うことにより、実施例19に記載の化合物(24)を得ることができる。

【実施例27】
<化合物(32)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(32)で示される化合物(トリシラノールエチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例24と同様の操作を行うことにより、実施例20に記載の化合物(25)を得ることができる。

【実施例28】
<化合物(33)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(33)で示される化合物(トリシラノールイソブチルPOSS、米国Hybrid Plasties社製)を用いる以外は、実施例24と同様の操作を行うことにより、実施例21に記載の化合物(26)を得ることができる。

【実施例29】
<化合物(34)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(34)で示される化合物(トリシラノールイソオクチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例24と同様の操作を行うことにより、実施例22に記載の化合物(27)を得ることができる。

【実施例30】
<化合物(21)を原料としたシラノール含有ヘプタトリフルオロプロピルシルセスキオキサン化合物の合成>
滴下ロート、還流冷却器、温度計及び攪拌子を備えた300mlの4つ口フラスコを氷浴中に設置した。この4つ口フラスコに実施例15で得られた化合物(21)5gを入れ、酢酸ブチル(50g)に溶解させた後、酢酸(0.5g)を滴下した。氷浴のまま1時間撹拌した。室温に戻した後、反応液を脱イオン水(100ml)にて洗浄(3回)した。ロータリーエバポレータを用いて溶媒を留去し、そのまま減圧乾燥(50℃、1時間)を行なって、粘ちょう性の液体を得た(4.3g)。得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを示し、不純物等の存在は確認されなかった。さらにIRを用いて解析した結果、化合物(21)では観測されなかったシラノール基の存在を示唆する吸収(3400cm−1付近)を確認した。従って、得られた化合物は式(35)で示される構造を有することが示唆された。

上記の化合物(35)を出発原料とし、前記実施例24〜29に記載の方法に準じて、トリエチルアミンの存在下アセトキシエチルトリクロロシランを反応させることで、化合物(28)を誘導することができる。
【実施例31】
<化合物(9)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサン原料の合成>
還流冷却器、温度計及び攪拌子を備えた500mlの4つ口フラスコに、実施例1で得られた化合物(9)10g、トリエチルアミン(1.5g)及びテトラヒドロフラン(200ml)を導入した。次いで化合物(9)/トリエチルアミン/テトラヒドロフラン溶液にアセトキシプロピルトリクロロシラン(3.5g、化合物(9)に対して1.5当量)を速やかに加え、室温下で2時間撹拌させた。その後、反応液をヘキサン(1000g)に投入した。析出した固体成分を吸引濾過により回収し、トルエン(90g)に再溶解させた後、水(330ml)により有機層を洗浄した。水洗を3回行った後、有機層を分離し、無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥を行った。次いでフィルター濾過による固−液分離を行った。その後、有機層を濃縮して得られた固体成分にエタノール(90g)を加え、室温条件下、撹拌した。さらに加圧濾過装置を用いて、固−液分離を行なった後、得られた固体成分を減圧乾燥(80℃、3時間)し、無色の固体を得た(7.15g、収率:67.6%)。
得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すIR、H−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRの結果から、得られた白色の固体が式(36)で示される構造を有していることがわかった。
IR(KBr法):ν=1740(C=O),1430(Si−Ph),1240(C−O),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82−7.72,7.46−7.31(m,35H,[Ph]−Si),4.07−4.04(t,2H,−O−[CH]−),1.94(s,3H,[CH]−(C=O)−),1.84−1.88(tt,2H,−CH−[CH]−CH−),1.37−1.33(t,2H,−[CH]−Si)
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):171.10(C=O),134.4−134.3,131.1−131.0,130.2,128.12(Ph−Si),66.2(−O−CH−),22.2(−CH−[CH]−CH−),20.9([CH]−(C=O)−),8.26(−[CH]−Si)
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−65.30(−CH−SiO1.5),−78.26,−78.62(Ph−SiO1.5

【実施例32】
<化合物(10)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例5で得られる化合物(10)を用いる以外は、実施例31と同様の操作を行うことにより、式(37)で示される化合物を得ることができる。

【実施例33】
<化合物(13)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例7で得られる化合物(13)を用いる以外は、実施例31と同様の操作を行うことにより、式(38)で示される化合物を得ることができる。

【実施例34】
<化合物(14)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例9で得られる化合物(14)を用いる以外は、実施例31と同様の操作を行うことにより、式(39)で示される化合物を得ることができる。

【実施例35】
<化合物(17)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例11で得られる化合物(17)を用いる以外は、実施例31と同様の操作を行うことにより、式(40)で示される化合物を得ることができる。

【実施例36】
<化合物(18)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例13で得られる化合物(18)を用いる以外は、実施例31と同様の操作を行うことにより、式(41)で示される化合物を得ることができる。

【実施例37】
<化合物(21)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(9)の代わりに実施例15で得られる化合物(21)を用いる以外は、実施例31に記載の反応条件及び実施例23に記載の精製条件と同様の操作を行うことにより、式(42)で示される化合物を得ることができる。

【実施例38】
<化合物(29)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
実施例24に記載の式(29)で示される化合物(トリシラノールフェニルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を原料とし、トリエチルアミン(シラノールに対して1.3当量)の存在下、テトラヒドロフラン中において、アセトキシプロピルトリクロロシラン(化合物(29)に対して1.5当量)を反応させる方法により、実施例31に記載の化合物(36)を得ることができる。
【実施例39】
<化合物(30)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(30)で示される化合物(トリシラノールシクロヘキシルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例38と同様の操作を行うことにより、実施例32に記載の化合物(37)を得ることができる。
【実施例40】
<化合物(31)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(31)で示される化合物(トリシラノールシクロペンチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例38と同様の操作を行うことにより、実施例33に記載の化合物(38)を得ることができる。
【実施例41】
<化合物(32)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(32)で示される化合物(トリシラノールエチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例38と同様の操作を行うことにより、実施例34に記載の化合物(39)を得ることができる。
【実施例42】
<化合物(33)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(33)で示される化合物(トリシラノールイソブチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例38と同様の操作を行うことにより、実施例35に記載の化合物(40)を得ることができる。
【実施例43】
<化合物(34)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(34)で示される化合物(トリシラノールイソオクチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用いる以外は、実施例38と同様の操作を行うことにより、実施例36に記載の化合物(41)を得ることができる。
【実施例44】
<化合物(35)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに式(35)で示される化合物を用いる以外は、前記実施例31〜43に記載の方法に準じて、トリエチルアミンの存在下アセトキシエチルトリクロロシランを反応させることで、実施例37に記載の化合物(42)を得ることができる。
【実施例45】
<化合物(22)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
攪拌子を備えた500mLのなす型フラスコに、実施例17で得られた化合物(22)2.58gを導入し、メタノール(174.7ml)、クロロホルム(174.3ml)及び硫酸(36N、0.7ml)の混合溶液(300ml)を導入し、室温条件下、72時間撹拌させた。次いでロータリーエバポレータにて濃縮し、濃縮物を酢酸エチル(500ml)に再溶解させた。その後、分液ロートにて水(500ml)よる有機層の洗浄を行ない、さらに無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥を行った。フィルター濾過による固−液分離を行った後、有機層をロータリーエバポレータにて濃縮、乾燥に付し、無色の固体を得た(2.37g、収率:91.7%)。その無色の固体(1.09g)をトルエンで再結晶にし、トルエンを減圧留去し、無色の固体を得た(0.48g、収率:43.7%)。
得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すIR、H−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRの結果から、式(43)で示される構造を有していることがわかった。
IR(KBr法):ν=3600〜3200(OH),1420(Si−Ph),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82〜7.72,7.46〜7.31(m,35H,Ph−Si),3.85〜3.87(t,2H,−CH−O−),1.42〜1.62(broad,1H,−OH),1.26〜1.31(t,2H,Si−CH−)
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):134.5〜134.1,131.1〜131.0,130.3,128.11〜127.9(Ph−Si),58.6(−CH−OH),17.5(Si−CH−)
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−67.31(−CH−SiO1.5),−78.42,−78.79(Ph−SiO1.5

実施例24で得られた化合物(22)も上記と同様の操作を行うことにより、化合物(43)へ誘導できる。
【実施例46】
<化合物(22)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
実施例17で得られた化合物(22)0.1g、メタノール(66.6ml)、クロロホルム(100ml)及び硫酸(36N、0.3ml)の条件に変えた以外は実施例45に準拠して反応を行い、無色の固体を得た(0.09g、収率:94.7%)。下記に示すIR、H−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRの結果から、式(43)で示される構造を有していることがわかった。
IR(KBr法):ν=3600〜3200(OH),1420(Si−Ph),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82〜7.72,7.46〜7.31(m,35H,Ph−Si),3.85〜3.87(t,2H,−CH−O−),1.42〜1.62(broad,1H,−OH),1.26〜1.31(t,2H,Si−CH−)
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):134.5〜134.1,131.1〜131.0,130.3,128.11〜127.9(Ph−Si),58.6(−CH−OH),17.5(Si−CH−)
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−67.31(−CH−SiO1.5),−78.42,−78.79(Ph−SiO1.5
実施例24で得られた化合物(22)も上記と同様の操作を行うことにより、化合物(43)へ誘導できる。
【実施例47】
<クロロホルム/メタノール/硫酸混合溶媒系による化合物(22)のエステル交換反応>
実施例17で得られた化合物(22)0.1g、エタノール(83.3ml)、クロロホルム(83.3ml)及び硫酸(36N、0.3ml)の条件に変えた以外は実施例2に準拠して反応を行い、無色の固体を得た(0.064g、収率:67.4%)。IR測定を行った結果、1740cm−1にアセトキシ基の存在に基づくカルボニルの吸収が観測された。H−NMRの結果から、化合物(43)と化合物(22)との混合物(化合物(43)含有量:66.3mol%)であることがわかった。
【実施例48】
<クロロホルム/メタノール/硫酸混合溶媒系による化合物(22)のエステル交換反応>
実施例17で得られた化合物(22)0.1g、エタノール(66.6ml)、クロロホルム(100ml)、硫酸(36N、0.3ml)及び反応時間:96時間の条件に変えた以外は実施例2に準拠して反応を行い、無色の固体を得た(0.078g、収率:82.1%)。IR測定を行った結果、1740cmにアセトキシ基の存在に基づくカルボニルの吸収が観測された。H−NMRの結果から、化合物(43)と化合物(22)との混合物(化合物(43)含有量:90.1mol%)であることが分かった。
【実施例49】
<化合物(23)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例18または実施例25で得られる化合物(23)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(44)で示される化合物を得ることができる。

【実施例50】
<化合物(24)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例19または実施例26で得られる化合物(24)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(45)で示される化合物を得ることができる。

【実施例51】
<化合物(25)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例20または実施例27で得られる化合物(25)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(46)で示される化合物を得ることができる。

【実施例52】
<化合物(26)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例21または実施例28で得られる化合物(26)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(47)で示される化合物を得ることができる。

【実施例53】
<化合物(27)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例22または実施例29で得られる化合物(27)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(48)で示される化合物を得ることができる。

【実施例54】
<化合物(28)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
還流冷却器、温度計及び攪拌子を備えた1000mLの3つ口フラスコに、実施例23で得られた化合物(28)3.5gを導入し、メタノール(359.5ml)、AK−225(HCFC−225:CFCFCHCl/CClFCFCHClF混合物、旭硝子(株)製、239.6ml)及び硫酸(36N、0.9ml)の混合溶液(600ml)を導入し、室温下、12時間撹拌させた。その後45℃まで昇温させ、さらに9時間撹拌させた。次いでロータリーエバポレータにて濃縮し、濃縮物をAK−225(200ml)に再溶解させた。その後、分液ロートにて水(500ml)よる有機層の洗浄を行ない、さらに無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥を行った。フィルター濾過による固−液分離を行った後、有機層をロータリーエバポレータにて濃縮、乾燥に付し、無色の固体を得た(3.04g、収率:89.9%)。
得られた化合物ののGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すH−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRの結果から、式(49)で示される構造を有していることがわかった。
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):3.81(t,2H,−CH−O−),2.14(m,14H,−[CH]−CF),1.39(broad,1H,−OH),1.13(t,2H,Si−[CH]−CH−OH),0.93(m,14H,Si−[CH]−CH−CF
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):131.31,128.58,125.83,123.11(−CF),58.08(−CH−OH),28.12,27.83,27.52,27.22(−[CH]−CF),19.74(−CH−Si),4.02(Si−[CH]−CH−CF
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−67.84(−CH−SiO1.5),−67.65,−67.66,−67.84(CF−CH−CH−SiO1.5

実施例30で得られた化合物(28)も上記と同様の操作を行うことにより、化合物(49)へ誘導できる。
【実施例55】
<クロロホルム/メタノール/硫酸混合溶媒系による化合物(28)のエステル交換反応>
実施例23で得られた化合物(28)0.5g、メタノール(42.7ml)、AK−225(42.7ml)及び硫酸(36N、0.26ml)の条件に変えた以外は実施例54に準拠して反応を行い、無色の固体を得た(収率:93.1%)。H−NMRの結果から、化合物(49)と化合物(28)との混合物(化合物(49)含有量:89.4mol%)であることがわかった。
【実施例56】
<クロロホルム/メタノール/硫酸混合溶媒系による化合物(28)のエステル交換反応>
実施例23で得られた化合物(28)0.5g、メタノール(42.7ml)、AK−225(42.7ml)、硫酸(36N、0.26ml)及び反応温度を室温、反応時間を72時間の条件に変えた以外は実施例54に準拠して反応を行い、白色の固体を得た(収率:92.2%)。H−NMRの結果から、化合物(49)と化合物(28)との混合物(化合物(49)含有量:91.3mol%)であることがわかった。
【実施例57】
<クロロホルム/メタノール/硫酸混合溶媒系による化合物(28)のエステル交換反応>
実施例23で得られた化合物(28)0.5g、メタノール(42.7ml)、クロロホルム(42.7ml)、硫酸(36N、0.26ml)及び反応温度を室温、反応時間を72時間の条件に変えた以外は実施例54に準拠して反応を行い、無色の固体を得た(収率:91.0%)。H−NMRの結果から、化合物(49)と化合物(28)との混合物(化合物(49)含有量:81.5mol%)であることがわかった。
【実施例58】
<クロロホルム/メタノール/硫酸混合溶媒系による化合物(28)のエステル交換反応>
実施例23で得られた化合物(28)0.5g、メタノール(42.7ml)、クロロホルム(42.7ml)、p−トルエンスルホン酸(4.43g)及び反応温度を室温、反応時間を72時間の条件に変えた以外は実施例54に準拠して反応を行い、無色の固体を得た(収率:90.9%)。H−NMRの結果から、化合物(49)と化合物(28)との混合物(化合物(49)含有量:89.0mol%)であることがわかった。
【実施例59】
<化合物(36)を原料としたヒドロキシプロピル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
攪拌子を備えた500mLのなす型フラスコに、実施例31で得られた化合物(36)2.5gを導入し、メタノール(208.3ml)、クロロホルム(208.3ml)及び硫酸(36N、0.75ml)の混合溶液(417.4ml)を導入し、室温条件下、72時間撹拌させた。次いでロータリーエバポレータにて濃縮し、濃縮物を酢酸エチル(500ml)に再溶解させた。その後、分液ロートにて水(500ml)よる有機層の洗浄を行ない、さらに無水硫酸マグネシウム(5.0g)にて乾燥を行った。フィルター濾過による固−液分離を行った後、有機層をロータリーエバポレータにて濃縮、乾燥し、無色の固体を得た(2.35g、収率:97.9%)。その無色の固体をエタノール洗浄し、吸引濾過により無色の固体を得た(1.26g、収率:52.5%)。
化合物GのGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すIR、H−、13C−及び29Si−NMRの結果から、式(50)で示される構造を有していることがわかった。
IR(KBr法):ν=3600〜3200(OH),1420(Si−Ph),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82〜7.72,7.48〜7.32(m,35H,[Ph]−Si),3.62〜3.57(t,2H,−[CH]−O−),1.2(broad,1H,−[OH]),1.78〜1.74(tt,2H,−CH−[CH]−CH−),0.90〜0.86(t,2H,Si−[CH]−)
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):134.5〜134.4,131.1〜131.0,130.6〜130.4,128.2〜128.1([Ph]−Si),65.0(−[CH]−OH),26.1(−CH−[CH]−CH−),7.9(Si−[CH]−)
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−65.08(−CH−SiO1.5),−78.55,−78.94(Ph−SiO1.5

実施例38で得られた化合物(36)も上記と同様の操作を行うことにより、化合物(50)へ誘導できる。
【実施例60】
<化合物(37)を原料としたヒドロキシプロピル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(36)の代わりに実施例32または実施例39で得られる化合物(37)を用いる以外は、実施例59と同様の操作を行うことにより、式(51)で示される化合物を得ることができる。

【実施例61】
<化合物(38)を原料としたヒドロキシプロピル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(36)の代わりに実施例33または実施例40で得られる化合物(38)を用いる以外は、実施例59と同様の操作を行うことにより、式(52)で示される化合物を得ることができる。

【実施例62】
<化合物(39)を原料としたヒドロキシプロピル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(36)の代わりに実施例34または実施例41で得られる化合物(39)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(53)で示される化合物を得ることができる。

【実施例63】
<化合物(40)を原料としたヒドロキシプロピル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(36)の代わりに実施例35または実施例42で得られる化合物(40)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(54)で示される化合物を得ることができる。

【実施例64】
<化合物(41)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(36)の代わりに実施例36または実施例43で得られる化合物(41)を用いる以外は、実施例45と同様の操作を行うことにより、式(55)で示される化合物を得ることができる。

【実施例65】
<化合物(42)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(36)の代わりに実施例37または実施例44で得られる化合物(42)を用いる以外は、実施例54と同様の操作を行うことにより、式(56)で示される化合物を得ることができる。

【実施例66】
<トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン原料としたナトリウム結合トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計及び滴下漏斗を取り付けた内容積50mlの4つ口フラスコに、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(4.9g)、THF(15ml)、水酸化ナトリウム(0.2g)、イオン交換水(0.2g)と仕込み撹拌子を投入し、75℃で加熱還流した。還流開始から5時間撹拌を継続して反応を完結させた。その後、定圧下で加熱濃縮し、減圧乾燥機にて80℃、3時間乾燥を行い、4.0gの粘ちょう性液体を得た。
【実施例67】
<トリメチルシリル基の導入>
内容積50mlの3つ口フラスコに、上記の粉末状固体(2.6g)、THF(10g)、トリエチルアミン(1.0g)及びトリメチルクロロシラン(3.3g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら室温で3時間撹拌した。反応終了後、実施例16の構造確認における場合と同様に処理して、1.3gの粘ちょう性液体を得た。
得られた化合物を、GPCにより分析した。測定を行った結果、粘ちょう性液体は単分散であり、その分子量はポリスチレン換算で重量平均分子量3650で純度100%であることが確認された。この結果と実施例3〜16の結果とから総合的に判断して、分析の対象である粘ちょう性液体は式(57)で示されるケイ素化合物であると推定された。従って、実施例66で得られた化合物は、式(58)で示される構造を有することが示唆される。

【実施例68】
<化合物(58)を原料としたシラノール含有トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシルセスキオキサン化合物の合成>
化合物(58)を原料とし、反応に用いる溶媒を酢酸ブチルの代わりにAK−225を用いる以外は実施例30と同様の操作を行うことにより、式(59)で示される化合物を得ることができる。

【実施例69】
<化合物(58)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタトリデカフルオロ−11,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(58)を原料とし、反応に用いる溶媒をテトラヒドロフランの代わりにAK−225を用いる以外は実施例23と同様の操作を行うことにより、式(60)で示される化合物を得ることができる。

【実施例70】
<化合物(58)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(58)を原料とし、反応に用いる溶媒をテトラヒドロフランの代わりにAK−225を用いる以外は実施例31と同様の操作を行うことにより、式(61)で示される化合物を得ることができる。

【実施例71】
<化合物(59)を原料としたアセトキシエチル−ヘプタトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(59)を出発原料とし、反応に用いる溶媒をAK−225とする以外は、前記実施例24〜30に記載の方法に準じて、トリエチルアミンの存在下、アセトキシエチルトリクロロシランを反応させることで、化合物(60)を誘導することができる。
【実施例72】
<化合物(59)を原料としたアセトキシプロピル−ヘプタトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(59)を出発原料とし、反応に用いる溶媒をAK−225とする以外は、前記実施例38〜44に記載の方法に準じて、トリエチルアミンの存在下、アセトキシプロピルトリクロロシランを反応させることで、化合物(61)を誘導することができる。
【実施例73】
<化合物(60)を原料としたヒドロキシエチル−ヘプタトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
実施例69または実施例71で得られる化合物(66)を用いる以外は、実施例54〜58と同様の操作を行うことにより、式(62)で示される化合物を得ることができる。

【実施例74】
<化合物(61)を原料としたヒドロキシプロピル−ヘプタトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
実施例70または実施例72で得られる化合物(61)を用いる以外は、実施例54〜58と同様の操作を行うことにより、式(63)で示される化合物を得ることができる。

【実施例75】
<化合物(64):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
アルゴン雰囲気下、25ml−なす型フラスコに、化合物(43)(1.21g)、モレキュラーシーブス(4A)により乾燥したトリエチルアミン(0.12g)および乾燥メチレンクロライド(6.41g)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で撹拌しながら化合物Cを溶解させた後、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を−78℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(0.30g、化合物(43)に対して1.1当量)を速やかに加え、−78℃にて1時間撹拌した後、室温下で更に2時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた反応液にメチレンクロライド(100ml)を加え、水(300ml)による1回の洗浄、炭酸水素ナトリウム水溶液(1%、300ml)による2回の洗浄、および水(300ml)よる2回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥した。その後、ロータリーエバポレータを用い、室温下でこの溶液を濃縮して液量を約20mlとした。この濃縮液(20ml)にメタノール(400ml)を加えて、固体成分を析出させた。その後、−35℃の冷凍庫に静置し、固体成分を十分析出させた後、濾過によって固−液分離を行なった。得られた固体成分を減圧乾燥(40℃、6時間)して、白色の固体を得た(1.13g、収率:81.4%)。
得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。質量分析スペクトルの測定結果から、絶対分子量は、式(64)に示す構造体の理論分子量と一致した。下記に示すIR、H−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRの結果から、得られた白色の固体が式(64)で示される構造を有することがわかった。
IR(KBr法):ν=1740(C=O),1430(Si−Ph),1270(C−O),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82〜7.72,7.46〜7.31(m,35H,Ph−Si),4.41〜4.37(t,2H,−O−CH−),1.79(s,6H,−C(Br)(CH),1.43〜1.39(t,2H,−CH−Si).
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):171.7(C=O),134.3,131.1〜131.1,131.2〜130.1,128.1〜128.0(Ph−Si),62.5(−CH−O−),55.8(−C(Br)),30.6((−CH),12.9(Si−CH−).
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−68.27(−CH−SiO1.5),−78.4,−78.7(Ph−SiO1.5).

【実施例76】
<化合物(65):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(43)の代わりに実施例49で得られる化合物(44)を用いる以外は、実施例75と同様の操作を行うことにより、式(65)で示される化合物を得ることができる。

【実施例77】
<化合物(66):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(43)の代わりに実施例50で得られる化合物(45)を用いる以外は、実施例75と同様の操作を行うことにより、式(66)で示される化合物を得ることができる。

【実施例78】
<化合物(67):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(43)の代わりに実施例51で得られる化合物(46)を用いる以外は、実施例75と同様の操作を行うことにより、式(67)で示される化合物を得ることができる。

【実施例79】
<化合物(68):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(43)の代わりに実施例52で得られる化合物(47)を用いる以外は、実施例75と同様の操作を行うことにより、式(68)で示される化合物を得ることができる。

【実施例80】
<化合物(69):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(43)の代わりに実施例53で得られる化合物(48)を用いる以外は、実施例75と同様の操作を行うことにより、式(69)で示される化合物を得ることができる。

【実施例81】
<化合物(70):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
アルゴン雰囲気下、25ml−なす型フラスコに、化合物(49)(0.29g)、モレキュラーシーブス(4A)により乾燥したトリエチルアミン(0.05g)および乾燥メチレンクロライド(6.66g)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で撹拌しながら化合物(49)を溶解させた後、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を−78℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(0.12g、化合物(49)に対して2.0当量)を速やかに加え、−78℃にて1時間撹拌した後、室温下で更に2時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた反応液にメチレンクロライド(100ml)を加え、水(300ml)による1回の洗浄、炭酸水素ナトリウム水溶液(1%、300ml)による2回の洗浄、および水(300ml)よる2回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥した。その後、ロータリーエバポレータを用い、室温下でこの溶液を濃縮して液量を約20mlとした。この濃縮液(20ml)にトルエン(400ml)を加えて、固体成分を析出させた。その後、−35℃の冷凍庫に静置し、固体成分を十分析出させた後、濾過によって固−液分離を行なった。得られた固体成分を減圧乾燥(40℃、6時間)して、白色の固体を得た(0.17g、収率:60%)。
得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すH−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRの結果から、得られた白色の固体が式(70)で示される構造を有することがわかった。
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):4.28(t,2H,−O−CH−),2.15(m,14H,−[CH]−CF),1.93(s,6H,−C(Br)(CH),1.25(t,2H,Si−[CH]−CH−O−),0.94(m,14H,Si−[CH]−CH−CF
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):171.23(C=O),131.32,128.57,125.79,123.07(−CF),61.83(−CH−O−),55.80(−C(Br)),30.70((−CH),28.13,27.83,27.52,27.23(−[CH]−CF),12.45(Si−[CH]−CH−O−),4.00(Si−[CH]−CH−CF
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−69.02(−CH−SiO1.5),−67.67,−67.73(CF−CH−CH−SiO1.5

【実施例82】
<化合物(71):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシエチル)−ヒドロキシエチル−ヘプタトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(43)の代わりに実施例73で得られる化合物(62)を用い、メチレンクロライドをAK−225に変更する以外は、実施例81と同様の操作を行うことにより、式(71)で示される化合物を得ることができる。

【実施例83】
<化合物(72):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
アルゴン雰囲気下、100ml−なす型フラスコに、実施例59の方法によって得られる化合物(50)(2.0g)、モレキュラーシーブス(4A)により乾燥したトリエチルアミン(0.3g)および乾燥メチレンクロライド(38g)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で撹拌しながら化合物(50)を溶解させた後、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を−78℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(0.68g、化合物(50)に対して1.5当量)を速やかに加え、−78℃にて1時間撹拌した後、室温下で更に2時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた反応液にメチレンクロライド(100ml)を加え、水(300ml)による1回の洗浄、炭酸水素ナトリウム水溶液(1%、300ml)による2回の洗浄、および水(300ml)よる2回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(5g)にて乾燥した。その後、ロータリーエバポレータを用い、室温下でこの溶液を濃縮して液量を約20mlとした。この濃縮液(20ml)にメタノール(400ml)を加えて、固体成分を析出させた。そして、−35℃の冷凍庫に静置することによって固体成分を十分析出させた後、濾過によって固−液分離を行なった。得られた固体成分を減圧乾燥(40℃、6時間)して、白色の固体を得た(1.1g、収率:48.0%)。
得られた白色の固体のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。下記に示すIR、H−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRの結果から、得られた白色の固体が式(72)で示される構造を有することがわかった。
IR(KBr法):ν=1740(C=O),1430(Si−Ph),1270(C−O),1135〜1090(Si−Ph),1090〜1000(Si−O−Si)cm−1
H NMR(400MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):7.82〜7.72,7.49〜7.33(m,35H,Ph−Si),4.17〜4.14(t,2H,−O−CH−),1.92〜1.88(t,2H,−CH−[CH]−CH−),1.79(s,6H,−C(Br)(CH),0.96〜0.91(t,2H,−CH−Si).
13C NMR(100MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):172.1(C=O),134.7〜134.6,131.3,130.7〜130.6,128.4〜128.3(Ph−Si),68.0(−CH−O−),56.3(−C(Br)),31.1((−CH),22.4(−CH−[CH]−CH−),8.4(Si−CH−).
29Si NMR(79MHz,TMS標準:δ=0.0ppm):−65.58(−CH−SiO1.5),−78.46,−78.80(Ph−SiO1.5).

【実施例84】
<化合物(73):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(50)の代わりに実施例60で得られる化合物(51)を用いる以外は、実施例83と同様の操作を行うことにより、式(73)で示される化合物を得ることができる。

【実施例85】
<化合物(74):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(50)の代わりに実施例61で得られる化合物(52)を用いる以外は、実施例83と同様の操作を行うことにより、式(74)で示される化合物を得ることができる。

【実施例86】
<化合物(75):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(50)の代わりに実施例62で得られる化合物(53)を用いる以外は、実施例83と同様の操作を行うことにより、式(75)で示される化合物を得ることができる。

【実施例87】
<化合物(76):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(50)の代わりに実施例63で得られる化合物(54)を用いる以外は、実施例83と同様の操作を行うことにより、式(76)で示される化合物を得ることができる。

【実施例88】
<化合物(77):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(50)の代わりに実施例64で得られる化合物(55)を用いる以外は、実施例83と同様の操作を行うことにより、式(77)で示される化合物を得ることができる。

【実施例89】
<化合物(78):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(50)の代わりに実施例65で得られる化合物(56)を用いる以外は、実施例83と同様の操作を行うことにより、式(78)で示される化合物を得ることができる。

【実施例90】
<化合物(79):(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシプロピル)−ヘプタトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(50)の代わりに実施例74で得られる化合物(63)を用い、メチレンクロライドをAK−225に変更する以外は、実施例81と同様の操作を行うことにより、式(79)で示される化合物を得ることができる。

【実施例91】
<重合用溶液の調製>
紫外線がカットされたドラフト内において、耐熱ガラス製アンプルに臭化第一銅を導入し、さらに化合物(64)/スチレン/L−(−)−スパルテイン/ジフェニルエーテル溶液を加え、液体窒素を用いて速やかに冷却した。その後、油回転ポンプが装着された真空装置にて凍結真空脱気(圧力:1.0Pa)を3回行ない、真空の状態を保持したまま、ハンドバーナーを用いて速やかにアンプルを封じた。このとき、この重合用溶液における化合物(64)、スチレン、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:1:2とし、ジフェニルエーテルの使用量をスチレンの濃度が50wt%となる量とした。
<重合>
封管された耐熱ガラス製アンプルを恒温振とう浴中にセットして重合させ、重合体(1a)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は110℃であり、重合時間は1.0時間であった。その後、重合体(1a)の溶液を所定量サンプリングし、テトラヒドロフランで希釈した後GPC測定を行った。なお、この重合反応系におけるモノマー転化率は、既知濃度のポリスチレン溶液のGPC測定値から得られたピーク面積を基準として解析した。得られた重合体をメタノールを用いて再沈殿精製した。次いでこの重合体のテトラヒドロフラン溶液(1wt.%)とし、これを活性アルミナが充填されたカラムを通過させることによって銅錯体の吸着除去を行った。さらにこの溶液をメタノールに滴下して重合体を再沈殿させ、これを減圧乾燥(80℃、6時間)した。モノマー転化率、重合体(1a)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表10に示す通りであった。
【実施例92〜100】
重合時間を表10に示すように変更した以外は、実施例91と同様にして重合を行い、重合体(1b)〜重合体(1j)のそれぞれの褐色で粘ちょうな溶液を得た。そして、実施例91の場合と同様にモノマー転化率、それぞれの重合体について、実施例91の場合と同様にして精製を行い、数平均分子量および分子量分布を求め、結果を表10に示した。

化合物(64)の代わりに化合物(65)〜(69)を用いて、上記実施例に準じた方法で重合物を得ることができる。
【実施例101】
<重合用溶液の調製>
紫外線がカットされたドラフト内において、耐熱ガラス製アンプルに臭化第一銅を導入し、さらに化合物(64)/メタクリル酸メチル/L−(−)−スパルテイン/アニソール溶液を加え、液体窒素を用いて速やかに冷却した。その後、油回転ポンプが装着された真空装置にて凍結真空脱気(圧力:1.0Pa)を3回行ない、真空の状態を保持したまま、ハンドバーナーを用いて速やかにアンプルを封じた。このとき、この重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:0.5:1とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が25wt%となる量とした。
<重合>
封管された耐熱ガラス製アンプルを恒温振とう浴中にセットして重合させ、重合体(2a)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.5時間であった。その後、重合体(2a)の溶液を所定量サンプリングし、テトラヒドロフランで希釈した後GPC測定を行った。なお、この重合反応系におけるモノマー転化率は、既知濃度のポリスチレン溶液のGPC測定値から得られたピーク面積を基準として解析した。得られた重合体を、ヘキサンを用いて再沈殿精製した。次いでこの重合体のテトラヒドロフラン溶液(1wt.%)とし、これを活性アルミナが充填されたカラムを通過させることによって銅錯体の吸着除去を行った。さらにこの溶液をヘキサンに滴下して重合体を再沈殿させ、これを減圧乾燥(80℃、6時間)した。転化率、重合体(2a)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。
【実施例102】
重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、銅(臭化第一銅:臭化第二銅=85:15(モル比))およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:0.5:1とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした以外は、実施例101の場合と同様にして重合を行い、重合体(2b)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は1.0時間であった。そして、実施例101の場合と同様に、重合体(2b)の溶液を所定量サンプリングし、GPC測定を行った。得られた重合体は、実施例101の場合と同様に精製した。転化率、重合体(2b)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。
【実施例103】
重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、銅(臭化第一銅:臭化第二銅=90:10(モル比))およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:0.5:1とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした以外は、実施例101の場合と同様にして重合を行い、重合体(2c)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は1.0時間であった。そして、実施例101の場合と同様に、重合体(2c)の溶液を所定量サンプリングし、GPC測定を行った。得られた重合体は、実施例101の場合と同様に精製した。転化率、重合体(2c)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。
【実施例104】
重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:2:4とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした以外は、実施例101の場合と同様にして重合を行い、重合体(2d)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.5時間であった。そして、実施例101の場合と同様に、重合体(2d)の溶液を所定量サンプリングし、GPC測定を行った。得られた重合体は、実施例101の場合と同様に精製した。転化率、重合体(2d)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。
【実施例105】
重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:1:2とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした以外は、実施例101の場合と同様にして重合を行い、重合体(2e)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.5時間であった。そして、実施例101の場合と同様に、それぞれの重合体について精製を行った。重合体(2e)の数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。なおここでは、転化率の値が得られなかったため、重合体(2d)の理論数平均分子量の値を得ることができなかった。
【実施例106】
重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:0.5:1とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした以外は、実施例101の場合と同様にして重合を行い、重合体(2f)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.5時間であった。そして、実施例101の場合と同様に、重合体(2f)の溶液を所定量サンプリングし、GPC測定を行った。得られた重合体は、実施例101の場合と同様に精製した。転化率、重合体(2f)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。
【実施例107】
重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:0.25:0.50とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした以外は、実施例101の場合と同様にして重合を行い、重合体(2g)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.6時間であった。そして、実施例101の場合と同様に、重合体(2g)の溶液を所定量サンプリングし、GPC測定を行った。得られた重合体は、実施例101の場合と同様に精製した。転化率、重合体(2g)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。
【実施例108】
重合用溶液における化合物(64)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:500:1:2とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした以外は、実施例101の場合と同様にして重合を行い、重合体(2h)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は3.0時間であった。そして、実施例101の場合と同様に、重合体(2h)の溶液を所定量サンプリングし、GPC測定を行った。得られた重合体は、実施例101の場合と同様に精製した。転化率、重合体(2h)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表11に示す通りであった。

化合物(64)の代わりに化合物(65)〜(69)を用いて、上記実施例に準じた方法で重合物を得ることができる。
【実施例109】
<重合用溶液の調製>
紫外線がカットされたドラフト内において、耐熱ガラス製アンプルに臭化第一銅を導入し、さらに化合物(72)/メタクリル酸メチル/L−(−)−スパルテイン/アニソール溶液を加え、液体窒素を用いて速やかに冷却した。その後、油回転ポンプが装着された真空装置にて凍結真空脱気(圧力:1.0Pa)を3回行ない、真空の状態を保持したまま、ハンドバーナーを用いて速やかにアンプルを封じた。このとき、この重合用溶液における化合物(72)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:300:1:2とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした。
<重合>
封管された耐熱ガラス製アンプルを恒温振とう浴中にセットして重合させ、重合体(3a)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.5時間であった。この重合反応系におけるモノマー転化率は、重合体(3a)の溶液を重水素化クロロホルムにて希釈した後、H−NMR測定を行って、モノマーおよびポリマーのそれぞれにおける置換基のプロトン比の関係から求めた。得られた重合体を、ヘキサンを用いて再沈殿精製した。次いでこの重合体のテトラヒドロフラン溶液(1wt.%)とし、これを活性アルミナが充填されたカラムを通過させることによって銅錯体の吸着除去を行った。さらにこの溶液をヘキサンに滴下して重合体を再沈殿させ、これを減圧乾燥(80℃、6時間)した。転化率、重合体(3a)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表12に示す通りであった。
【実施例110〜115】
重合時間を表12に示すように変更した以外は、実施例109と同様にして重合を行い、重合体(3b)〜重合体(3g)のそれぞれの褐色で粘ちょうな溶液を得た。そして、実施例109の場合と同様にモノマー転化率を測定し、それぞれの重合体について、実施例109の場合と同様にして精製を行った。それぞれの重合体に対応する転化率、重合体(3b)〜重合体(3g)のそれぞれの理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表12に示す通りであった。

化合物(72)の代わりに化合物(73)〜(77)を用いて、上記実施例に準じた方法で重合物を得ることができる。
【実施例116】
<重合用溶液の調製>
紫外線がカットされたドラフト内において、耐熱ガラス製アンプルに臭化第一銅を導入し、さらに化合物(72)/メタクリル酸メチル/L−(−)−スパルテイン/アニソール溶液を加え、液体窒素を用いて速やかに冷却した。その後、油回転ポンプが装着された真空装置にて凍結真空脱気(圧力:1.0Pa)を3回行ない、真空の状態を保持したまま、ハンドバーナーを用いて速やかにアンプルを封じた。このとき、この重合用溶液における化合物(72)、メタクリル酸メチル、臭化第一銅およびL−(−)−スパルテインの割合を、この順のモル比で1:150:1:2とし、アニソールの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした。
<重合>
封管された耐熱ガラス製アンプルを恒温振とう浴中にセットして重合させ、重合体(4a)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.5時間であった。この重合反応系におけるモノマー転化率は、重合体(4a)の溶液を重水素化クロロホルムにて希釈した後、H−NMR測定を行って、モノマーおよびポリマーのそれぞれにおける置換基のプロトン比の関係から求めた。得られた重合体を、ヘキサンを用いて再沈殿精製した。次いでこの重合体のテトラヒドロフラン溶液(1wt.%)とし、これを活性アルミナが充填されたカラムを通過させることによって銅錯体の吸着除去を行った。さらにこの溶液をヘキサンに滴下して重合体を再沈殿させ、これを減圧乾燥(80℃、6時間)した。転化率、重合体(4a)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表13に示す通りであった。
【実施例117〜122】
重合時間を表13に示すように変更した以外は、実施例116と同様にして重合を行い、重合体(4b)〜重合体(4g)のそれぞれの褐色で粘ちょうな溶液を得た。そして、実施例116の場合と同様にモノマー転化率を測定し、それぞれの重合体について、実施例116の場合と同様にして精製を行った。それぞれの重合体に対応する転化率、重合体(4b)〜重合体(4g)のそれぞれの理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表13に示す通りであった。

化合物(72)の代わりに化合物(73)〜(77)を用いて、上記実施例に準じた方法で重合物を得ることができる。
【実施例123】
<重合用溶液の調製>
紫外線がカットされたドラフト内において、アルゴン置換されたシュレンク管に塩化第一銅を導入し、さらに化合物(70)/メタクリル酸メチル/4,4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン/ジメチルホルムアミド溶液を加え、液体窒素を用いて速やかに冷却した。その後、油回転ポンプが装着された真空装置にて凍結真空脱気(圧力:1.0Pa)を3回行ない、最終的にアルゴンを導入した。このとき、この重合用溶液における化合物(70)、メタクリル酸メチル、塩化第一銅および4,4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジンの割合を、この順のモル比で1:399:1:2とし、ジメチルホルムアミドの使用量をメタクリル酸メチルの濃度が50wt%となる量とした。
<重合>
上記のシュレンク管をオイルバス中にセットして重合させ、重合体(5a)の褐色で粘ちょうな溶液を得た。このとき、重合温度は70℃であり、重合時間は0.5時間であった。その後、重合体(5a)の溶液を所定量サンプリングし、テトラヒドロフランで希釈した後GPC測定を行った。この重合反応系におけるモノマー転化率は、重合体(5a)の溶液を重水素化クロロホルムにて希釈した後、H−NMR測定を行って、モノマーおよびポリマーのそれぞれにおける置換基のプロトン比の関係から求めた。得られた重合体を、ヘキサンを用いて再沈殿精製した。次いでこの重合体のテトラヒドロフラン溶液(1wt.%)とし、これを活性アルミナが充填されたカラムを通過させることによって銅錯体の吸着除去を行った。さらにこの溶液をヘキサンに滴下して重合体を再沈殿させ、これを減圧乾燥(80℃、6時間)した。重合体(5a)の理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布の解析結果は、表14−1に示す通りであり、明らかに数平均分子量の理論値と実測値との間に差が見られた。
<グラフト鎖の理論数平均分子量解析>
グラフト鎖の理論数平均分子量は、重合の開始末端であるエステル結合がフッ化水素酸処理による加水分解によって切断され、重合の停止末端がすべてBrとなっていると仮定し、下記式により計算した結果は、表14−2に示す通りであった。
<計算式>
グラフト鎖の理論Mn=(単量体消費率(モル%)/100)×MW×(α−ブロモエステル基に対するビニル系単量体のモル比)+MW
<計算に用いたパラメータ>
MW=100(メタクリル酸メチル)
α−ブロモエステル基に対するビニル系単量体のモル比=300
MW=167.01(BrC(CHCOH)
<グラフト鎖の分子量測定>
撹拌子を導入したポリプロピレン製マイクロチューブ(10ml)内において、トルエン(2.0ml)に重合体(5a)(15.5mg)を溶解させた。相関移動触媒(トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、20mg)、フッ化水素酸(1.0ml)および水(3.0ml)の混合物を加え、マグネティックスターラーを用いて25℃、12時間撹拌した。反応終了後、炭酸水素ナトリウムによる中和処理を行った後、上澄の有機層を所定量サンプリングし、テトラヒドロフランで希釈した後GPC測定を行った。
この重合体のGPC測定を行った結果は、表14−2に示す通りであり、上記計算式より誘導されたグラフト鎖の理論Mnとほぼ一致していることが分かった。よって、ふっ化水素酸処理を行う前の重合体は、テトラヒドロフラン中において、シルセスキオキサン同士の強い相互作用によって、重合体同士が会合していたことが示唆された。
【実施例124〜130】
重合時間を表14−1に示すように変更した以外は、実施例123と同様にして重合を行い、重合体(5b)〜重合体(5h)のそれぞれの褐色で粘ちょうな溶液を得た。そして、それぞれの重合体について、実施例123の場合と同様にしてモノマー転化率、理論数平均分子量、数平均分子量および分子量分布を求め、こられの結果を表14−1に示した。いずれの重合体にあっても、明らかに数平均分子量の理論値と実測値との間に差が見られた。
そして、それぞれの重合体について実施例123の場合と同様にして、グラフト鎖の理論数平均分子量計算、重合体のフッ化水素酸処理、GPC測定によるグラフト鎖の数平均分子量および分子量分布解析を行い、その結果を表14−2に示した。いずれの重合体にあっても、実測されたグラフト鎖のMnは、理論Mnとほぼ一致していることが分かった。よって、実施例123の場合と同様に、本実施例により得られた重合体は、テトラヒドロフラン中において、シルセスキオキサン同士の強い相互作用によって、重合体同士が会合していたことが示唆された。


[発明の利用可能性]
本発明が提供するケイ素化合物は、優れたリビング重合性のラジカル重合開始機能を有するシルセスキオキサン誘導体である。本発明のケイ素化合物は特にスチレン系誘導体に優れたリビングラジカル重合性を示す。例えば、本発明のケイ素化合物によりスチレン系単量体の重合を開始させて、本発明のシルセスキオキサン構造の1点を起点にしてスチレン系ポリマーを形成させることが可能である。このようにして得られた末端にシルセスキオキサン構造の有機基を有する重合体については、そのシルセスキオキサン構造の有機基同士の相互作用を積極的に利用することも可能である。これにより構造の明確な有機−無機複合材料が得られるだけでなく、この重合体の分子集合体としての構造を制御することも可能である。そして、本発明のケイ素化合物は、重合開始剤としての機能以外の特性をも更に有する。例えば、α−ハロエステルが強い求電子性を有するため、本発明のケイ素化合物に求核試薬を反応させることにより、求核試薬に応じた種々のシルセスキオキサン誘導体を合成することが可能である。従って、本発明のケイ素化合物は、有機合成における中間体としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるケイ素化合物。

ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aはα−ハロエステル結合を有する基である。
【請求項2】
が水素および炭素原子の数が1〜30であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基である、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項3】
が炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニルおよび炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられるアルキルから独立して選択される基である、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項4】
が非置換のナフチルおよび任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項5】
が任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜12であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項6】
が炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基である、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項7】
すべてのRが炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項8】
すべてのRが、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項9】
すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基である、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項10】
すべてのRが非置換のフェニルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される同一の基である、請求項1に記載のケイ素化合物。
【請求項11】
式(1)において、Rが水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aが式(2)で示される基である、請求項1に記載のケイ素化合物:

式(2)において、Xはハロゲンであり;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Zは炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンであり、これらのアルキレンおよびアルケニレンにおいては、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。
【請求項12】
が水素および炭素原子の数が1〜30であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項13】
が炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニルおよび炭素原子の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられるアルキルから独立して選択される基である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項14】
が非置換のナフチルおよび任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項15】
が任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜12であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基であり;フェニルの置換基であるアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項16】
が炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから独立して選択される基である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項17】
すべてのRが炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項18】
すべてのRが、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項19】
すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項20】
すべてのRが非置換のフェニルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される同一の基である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項21】
が炭素原子の数が1〜20であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンである、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項22】
が−C−O−C−、−C−または−C−であり;Rがメチルまたはエチルであり;Rが水素、メチルまたはエチルであり;そして、Xが臭素である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項23】
が−C−または−C−であり;RおよびRが共にメチルであり;そして、Xが臭素である、請求項11に記載のケイ素化合物。
【請求項24】
式(3)で示される化合物にハロゲン化アルキル基を有する酸ハロゲン化物を反応させることを特徴とする、請求項1に記載の式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法。

ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aは末端に水酸基を有する有機基である。
【請求項25】
式(4)で示される化合物に式(5)で示される化合物を反応させることを特徴とする、式(6)で示されるケイ素化合物の製造方法:

ここに、すべてのR12は炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチルおよび任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基であり;Zは炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンであり、これらのアルキレンおよびアルケニレンにおいては、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい;

ここに、XおよびXは共にハロゲンであり、同一であっても異なっていてもよく;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルである;

ここに、R12およびZは式(4)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有し、R、RおよびXは式(5)におけるこれらの記号とそれぞれ同一の意味を有する。
【請求項26】
請求項1に記載のケイ素化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として付加重合性単量体を重合することによって得られる重合体。
【請求項27】
請求項11に記載のケイ素化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として付加重合性単量体を重合することによって得られる重合体。
【請求項28】
式(7)で示される重合体。

ここに、すべてのR12は炭素原子の数が1〜8であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチルおよび任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8でありそして任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基であり;Zは炭素数1〜20のアルキレンまたは炭素数3〜8のアルケニレンであり、これらのアルキレンおよびアルケニレンにおける任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Rは炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Rは水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアラルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、Pは付加重合性単量体の重合によって得られる構成単位の連鎖である。
【請求項29】
付加重合性単量体が(メタ)アクリル酸誘導体およびスチレン誘導体から選択される少なくとも1つである、請求項27に記載の重合体。
【請求項30】
すべてのR12が任意の水素がハロゲン、メチルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニル、非置換のナフチル、および任意の水素がフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルまたはメトキシで置き換えられてもよいフェニルと炭素原子の数が1〜8であり、そして任意の−CH−が−O−で置き換えられてよいアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される同一の基であり;Zが−C−または−C−であり;Rがメチルまたはエチルであり;Rが水素、メチルまたはエチルであり;Xが臭素であり;そして、Pが(メタ)アクリル酸誘導体およびスチレン誘導体から選択される少なくとも1つの化合物の重合によって得られる構成単位の連鎖である、請求項28に記載の重合体。
【請求項31】
すべてのR12がエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基であり;Zが−C−または−C−であり;RおよびRが共にメチルであり;Xが臭素であり;そして、Pが(メタ)アクリル酸誘導体およびスチレン誘導体から選択される少なくとも1つの化合物の重合によって得られる構成単位の連鎖である、請求項28に記載の重合体。
【請求項32】
がスチレン誘導体から選択される少なくとも1つの化合物の重合によって得られる構成単位の連鎖である、請求項31に記載の重合体。

【国際公開番号】WO2004/078767
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503118(P2005−503118)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002809
【国際出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】