説明

ケタール又はアセタールの分解抑制方法

【課題】 ケタール又はアセタールの分解抑制方法、及び分解を抑制しながら製造する方法の提供。
【解決手段】 α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールを塩基の存在下で分解を抑制する方法、及び、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールの製造において、反応後の後処理工程を塩基存在下で行うケタール又はアセタールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケタール又はアセタールの分解を抑制する方法、及びケタール又はアセタールの分解を抑制しつつケタール又はアセタールを製造する方法に関し、詳しくはα-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールの分解抑制方法、又は分解を抑制しながら製造する方法に関するものである。ケタール類又はアセタール類は医薬、農薬、機能性材料などの有機化合物及びその合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類のケタール又はアセタールはその製造例は少なく(例えば非特許文献1〜3)、加えてその安定性に関する知見は殆ど知られていない。ここでα-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールは、分解すると原料であるα-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類となるが、これらがさらに分解すると酢酸などの酸性物質となるため、微量のアセタール又はケタールの分解が起こると悪循環的に分解が促進されてしまう。また、原料となるα-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類は(1,2−)ジオールの部分酸化、例えばα−ヒドロキシアセトンはプロピレングリコールの気相酸化により製造されているが、その製造工程においてカルボン酸などの副生物が生成し、これがケタール又はアセタールの製造工程において分離されないまま残存するため、ケタール又はアセタールの分解を促進する不具合があった。さらに、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類が目的物であるケタールやアセタールとさらなる反応を行い、高沸点生成物を形成する不具合があった。
【非特許文献1】Tetrahedron Lett.,Vol37.3881(1996)
【非特許文献2】Bull.Chem.Soc.Jpn.,Vol.70.2561(1997)
【非特許文献3】J.Fluorine.Chem.,Vol.112.109(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の目的は、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアセトン類から誘導されるケタール又はアセタールの分解を抑制する方法を提供することにある。
【0004】
本発明のさらに他の目的は、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールの製造において、該ケタール又はアセタールの分解を抑制しながら製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、塩基の添加を行うことで特定の構造を有するケタール又はアセタールの分解が抑制されること、及び、該ケタール又はアセタールの分解を抑制しながら製造が行えることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち、本発明は、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールに塩基の存在下で分解を抑制する方法を提供する。
さらに本発明は、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールの製造において、ケタール化又はアセタール化後の後処理工程を塩基の存在下で行うケタール又はアセタールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、不安定な構造を有するケタール又はアセタールである、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されたケタール又はアセタールの分解を抑制することができる。さらに本発明では、該ケタール又はアセタールの分解を抑制しながら製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
〔ケタール又はアセタール〕
本発明の対象となるα-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールは、下記式(1)
【0008】
【化3】

で表される骨格を1つまたは複数個有するものであればよい。式(1)で表される骨格を1つ有するアセタール又はケタールとしては、例えば下記式(2)又は(3)
【0009】
【化4】

(式中R、Rは同一又は異なって有機基を示し、R〜Rは同一又は異なって水素原子、有機基を示す)で表される。
【0010】
式(2)中R1又はR2で表される有機基としては、炭化水素基や複素環式基などが挙げられる。
式(2)又は(3)中R3〜R9で表される有機基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基(ハロスルホニル基、トリハロメタンスルホニル基を含む)、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基など)、置換オキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1-6アルコキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基などのアルケニルオキシ基;シクロヘキシルオキシ基などのシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;アセトキシ基などのアシルオキシ基など)、ヒドロキシル基、置換又は無置換アミノ基(アミノ基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基などのモノ又はジC1-6アルキル置換アミノ基;1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基などの環状アミノ基)など、及びこれらが2以上結合した基などが挙げられる。前記ヒドロキシル基、アミノ基などは有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよく、金属で置換されていてもよい。
【0011】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0012】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0013】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0014】
好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が含まれる。
【0015】
R1〜R9で表される有機基が炭化水素基である場合には、炭化水素基は種々の置換基を有しても良く、置換基としては例えば、ハロゲン原子、ハロアルキル基、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホニル基(ハロスルホニル基、トリハロアルキルスルホニル基を含む)、複素環式基などが挙げられる。ヒドロキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0016】
前記R1等における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
【0017】
式(2)又は(3)においては、R1及びR2、R3からR5、又はR6からR9は互いに結合を形成して環を形成してもよい。このような環として、炭化水素環及び複素環が挙げられる。炭化水素環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環などの3〜20員程度のシクロアルカン環;シクロペンテン環、シクロヘキセン環などの3〜20員程度のシクロアルケン環;アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環などの橋かけ炭化水素環などが例示される。複素環としては、ペルヒドロアゾール環、ペルヒドロアジン環、ペルヒドロアゼピン環、オキソラン環、オキサン環、オキセパン環、チオラン環、チアン環、チエパン環などの4〜20員程度の複素環(窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環)が挙げられる。
【0018】
本発明が適用される具体的化合物としては、例えば下記式(4)〜(16)などが例示される。
【0019】
【化5】

本発明に用いられるケタール又はアセタールは、骨格内に水酸基を有するために、水との親和性の高い物質が多く、水との親和性の高いこともケタール又はアセタールの分解(すなわち加水分解)を促進する1つの要因となる場合がある。とりわけ、Frdrosの方法による溶解度パラメーター(以下、SP値として表示する)が21.8以上のケタール又はアセタールは加水分解されやすい場合が多く、本発明の方法の使用に適している。SP値が21.8以上の化合物としては、例えば、上記例示の化合物のうち(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(12)、(13)、(15)、(16)などが挙げられる。なお、SP値の算出は、塗装技術1987年3月号および、ポリマーハンドブック第4版VII/675記載の方法に従った。
【0020】
本発明に用いられるケタール又はアセタールは、酸触媒の存在下、対応するアルコール類と対応するヒドロキシケトン類又はヒドロキシアルデヒド類とを反応させることで合成することができ、例えば前記化合物(5)は下記合成経路により合成可能である。
【0021】
【化6】

〔塩基〕
本発明で用いられる塩基は、ケタール又はアセタールの分解抑制効果が得られる限り特に限定されないが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウムカリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水素化物等の無機塩基、塩基性イオン交換樹脂等の担体に塩基を担持したもの、酸吸着剤(例えばハイドロタルサイト系の酸吸着剤など)、又はメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン等の有機アミンなどが例示される。これら塩基は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機塩基を使用する場合、固体のまま用いても水溶液として用いてもよい。ケタール又はアセタール骨格中に塩基により加水分解される置換基(例えばハロゲン基、エステル基、ハロスルホニル基など)を有する場合には、上記塩基のうち、一般に弱塩基とされるものが好ましく、特に炭酸塩や炭酸水素塩などが好ましく、また、酸吸着剤のうちアニオンとカチオンを同時に除去できるもの[例えば商品名「キョーワード2000」、協和化学工業株式会社製など]を用いるのも好適である。
【0022】
塩基の使用量は、特に限定されないが、ケタール又はアセタール100重量部に対して0.01〜50重量部で効果がある。好ましくは0.1〜10重量部でよりこのましくは0.5〜5重量部である。塩基量が0.01重量部より少ないと、微量混在不純酸成分が残存している場合に中和により塩基が消費されてしまい、安定化効果が持続せず好ましくはない。また50重量部より多い場合は取扱い上煩雑になり、また、安定剤である塩基の除去の際にケタール、アセタールがロスしてしまうため好ましくない。
〔後処理工程〕
本発明では、α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールの製造において、ケタール化又はアセタール化後の後処理工程を塩基の存在下で行うことで分解を抑制しつつ該ケタール又はアセタールを製造することができるが、ここでいう後処理工程とは、ケタール化又はアセタール化後に中和により反応を停止させ、反応粗液から汎用溶媒により該ケタール又はアセタールを抽出した後の、濃縮工程や精製工程等をいう。
【0023】
中和は前記にて例示した塩基を用いて行うことができる。特にケタール又はアセタール骨格中に塩基により加水分解される置換基(例えばハロゲン基、エステル基、ハロスルホニル基など)を有する場合には、一般に弱塩基とされるものが好ましい。中和をpH値にて制御する際には、反応の停止を行うことができかつ目的物を分解しない範囲であればよいが、例えばpH5からpH11、好ましくはpH6からpH9程度である。
【0024】
抽出は汎用の溶媒を用いて行うことが出来るが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、ノルマル又はイソプロパノール、第3級ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、鎖状又は環状エーテル類(エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、オクタン等)、脂環式炭化水素類(シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等)、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物、リン化合物(リン酸エステル等)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン、二塩化エチレン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)が例示される。抽出溶媒は目的物との親和性を考慮して選定すればよい。
【0025】
中和後の抽出工程により目的物が分配された溶媒層に塩基が同時に分配されることがあるが、この際に、同時に分配された塩基の量がケタール又はアセタールの分配抑制に十分であれば、そのまま濃縮工程又は精製工程を、塩基の量が不十分であればさらに塩基を添加して濃縮工程又は精製工程を行えばよい。
〔保存工程〕
後処理工程により得られたケタール又はアセタールは、保存工程においても分解する場合があり、塩基存在下で保存すると長期間安定して保存することができる。なお、後処理工程の塩基が残存しており、塩基の添加が不必要であれば、そのまま保存することができ、塩基が不十分であれば更なる塩基の添加にて保存することが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、化合物の定量はガスクロマトグラフィー(GC)による内部標準法により行った。
【0027】
実施例1
2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール50.7g、プロピレングリコール0.5g、及びヒドロキシアセトン1.0gの塩化メチレン300ml溶液に、塩基として2.5gの炭酸ナトリウムをスラリーの状態で添加し、ロータリーエバポレーターにて温度40℃、200torrの条件下、塩化メチレンを1時間かけて留去した。濃縮された残渣をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール、プロピレングリコール、及びヒドロキシアセトンのいずれも分解が全く起こっていないことを確認した。
実施例2
塩基を炭酸水素ナトリウムに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、分解が全く起こっていないことを確認した。
実施例3
塩基をトリエチルアミンに代えた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、分解が全く起こっていないことを確認した。
【0028】
比較例1
2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール48.0g、プロピレングリコール0.9g、及びヒドロキシアセトン1.5gの塩化メチレン300ml溶液に、塩基を添加せずに、ロータリーエバポレーターにて温度40℃、200torrの条件下、塩化メチレンを1時間かけて留去した。濃縮された残渣をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール44.3g、プロピレングリコール2.3g、及びヒドロキシアセトン2.0gが定量され、さらに高沸点側に複数のピークが確認された。これらの高沸点物質は、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノールとヒドロキシアセトンがアセタール化したものであった。
【0029】
実施例4
2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール97.1wt%、プロピレングリコール0.7wt%、及びヒドロキシアセトン0.2wt%が含有する混合物に、塩基として炭酸ナトリウムを2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノールに対して5重量部添加し、25℃、窒素雰囲気下で3ヶ月間保存した。保存後の混合物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール、プロピレングリコール、及びヒドロキシアセトンのいずれも分解が全く起こっていないことを確認した。
【0030】
実施例5
塩基を炭酸水素ナトリウムに代えた以外は実施例4と同様の操作を行った。その結果、分解が全く起こっていないことを確認した。
【0031】
実施例6
塩基をトリエチルアミンに代えた以外は実施例4と同様の操作を行った。その結果、分解が全く起こっていないことを確認した。
【0032】
比較例2
2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール97.1wt%、プロピレングリコール0.7wt%、及びヒドロキシアセトン0.2wt%が含有する混合物に、塩基を添加せずに、25℃、窒素雰囲気下で3ヶ月間保存した。保存後の混合物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノール84.1wt%、プロピレングリコール4.5wt%、及びヒドロキシアセトン0.9wt%が定量され、さらに高沸点側に複数のピークが確認された。これらの高沸点物質は、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−メタノールとヒドロキシアセトンがアセタール化したものであった。
【0033】
実施例7〜12、比較例3〜7
実施例1の操作に従って数種の化合物について実験を行った結果を表1に示す。なお、表1中の保持率とは、濃縮前のアセタールを100%とした時の、濃縮後のアセタールの割合を示す。また、塩基の重量部はアセタール100重量部に対する数値を示す。
【0034】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールを塩基の存在下で分解を抑制する方法。
【請求項2】
α-ヒドロキシケトン類又はα-ヒドロキシアルデヒド類から誘導されるケタール又はアセタールの製造において、ケタール化又はアセタール化後の後処理工程を塩基の存在下で行うケタール又はアセタールの製造方法。
【請求項3】
ケタール又はアセタールが下記式(1)
【化1】

で表される骨格を1つまたは複数個有するケタール又はアセタールである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ケタール又はアセタールが下記式(2)又は(3)
【化2】

(式中R1、R2は同一又は異なって有機基を示し、R3〜R9は同一又は異なって水素原子、有機基を示す)である請求項3記載の方法。
【請求項5】
ケタール又はアセタールが、Fedorosの方法による溶解度パラメーターが21.8以上である請求項3又は4記載の方法。

【公開番号】特開2006−104085(P2006−104085A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290139(P2004−290139)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】