説明

ケトプロフェン外用製剤

【課題】 ケトプロフェンを含有する外用製剤は、ケトプロフェンが紫外線で安定ではなくなかなか安定な製剤を得ることができず、また製剤使用時に日光を浴びると光線過敏症が発生することがあった。そこで、オキシベンゾンなどの紫外線吸収剤をさらに配合した製剤が知られているが、十分ではなく、さらに優れた光線過敏症の副作用のないケトプロフェン外用製剤が望まれている。
【解決手段】 ケトプロフェンを含有する外用製剤に紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を配合することにより、ケトプロフェンの光安定性に優れ、細胞光毒性を防止することのできるケトプロフェン外用製剤を得ることができた。
本発明のケトプロフェン外用製剤は、液剤、軟膏剤、ゲル軟膏剤、クリーム剤、パップ剤、貼付剤、エアゾール剤などの剤型に応用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ケトプロフェンは優れた非ステロイド性鎮痛抗炎症剤として知られ、経口剤のほかに、液剤、軟膏剤、クリーム剤、パップ剤、貼付剤などの外用製剤が知られ、実際に医療に使用されている。
【0002】
本発明は非ステロイド性鎮痛抗炎症薬のケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を含む外用製剤で、安定性に優れ、ケトプロフェンの副作用の一つである光線過敏症の発現を少なくした外用製剤に関するものである。
【背景技術】
【0003】
非ステロイド性鎮痛抗炎症薬として知られたケトプロフェンを含有する外用製剤にオキシベンゾンなどの紫外線吸収剤を配合した安定な外用製剤については知られている。(特許文献1参照)
【0004】
種々知られた紫外線吸収剤のうちベンゾフェノン系の紫外線吸収剤は紅斑惹起に最も関与する305nm〜310nm付近の吸収能が低いこと、またアミノ安息香酸系の紫外線吸収剤には接触光過敏症など安全性上の問題点があり、それらを解決したフェルラ酸を配合した皮膚外用剤が記載されている。(特許文献3、従来技術および発明の解決しようとする問題点 参照)しかしながら、非ステロイド性鎮痛抗炎症薬のケトプロフェン外用製剤に配合したものについての記載はない。
【0005】
一方、ケトプロフェンを配合した外用製剤で、光接触皮膚炎があること、そしてケトプロフェンはオキシベンゾンと交叉感作があり、ケトプロフェン光接触皮膚炎患者はベンゾフェノン類を含有するサンスクリーンを避けなければならないこと、また、オキシベンゾンは時に接触皮膚炎を引起すことが記載されている。(非特許文献1、p.128−129参照;非特許文献2、p.32参照;非特許文献3、p.29参照)
また、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸は紫外線防御剤として知られ、紫外線吸収効果があり、化粧品組成物に使用されることはすでに知られている。(特許文献2、実施例19 参照)そして、その紫外線防御剤自身は光で分解されることなく、EZ型の異性化を起こすことにより効果を発現することが知られている。(非特許文献4、p.60−61参照)しかしながら、ケトプロフェン外用製剤にテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を配合した光安定性がよく、光毒性の少ない外用製剤については、まだ知られていない。
【0006】
【特許文献1】 特公平5−8169号公報
【特許文献2】 特公平3−42255号公報
【特許文献3】 特開昭64−13016号公報
【非特許文献1】 佐藤吉昭、市橋正光監修「光線過敏症」金原出版、第3版、2002年9月20日発行、p.127−131
【非特許文献2】 上出良一、「サンスクリーン剤の現状と未来」、J.JOCD誌(日本)、1998年1月、第55巻、p.29−33
【非特許文献3】 細川佳代 外4名、「非ステロイド系消炎鎮痛剤(セクターローション)による光接触皮膚炎と接触皮膚炎」、皮膚、平成5年2月、第35巻、第1号、p.26−32
【非特許文献4】 セルジュ・フォレスティエ外2名、「紫外線防御剤MexorylXLの開発と製品への応用」、フレグランス ジャーナル誌(日本)、2004年4月、p.59−64
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非ステロイド性鎮痛抗炎症薬のケトプロフェンは紫外線で安定ではなく、なかなか安定なケトプロフェン外用製剤を得ることができず、また製剤使用時に日光を浴びると光線過敏症が発生することがあった。そこで、オキシベンゾンなどの紫外線吸収剤をさらに配合した製剤が知られているが、効果が十分ではなく光線過敏症の発生が完全に防止できていないことが現状である。また、ケトプロフェンにベンゾフェノン系紫外線吸収剤のオキシベンゾンを一緒に配合した外用製剤が市販されているが、副作用の一つとして光線過敏症が問題となっている。ケトプロフェンが紫外線により分解して生じた分解物が、オキシベンゾンとの交叉感作反応によりさらに強い皮膚刺激を起こす一つの要因とも考えられている。そこで、さらに優れた光線過敏症のないケトプロフェン外用製剤が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明者らはケトプロフェン外用製剤に紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を配合することにより、ケトプロフェンの細胞光毒性を防止することのできるケトプロフェン外用製剤を得ることができ、また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤のオキシベンゾンを含まないことから、オキシベンゾンによるケトプロフェンとの交叉感作のない光安定性に優れたケトプロフェン外用製剤を得ることを見出した。
【0009】
従来のベンゾフェノン系紫外線吸収剤であるベンゾフェノンは、紫外線の照射によりオキシベンゾン自体が分解してできるラジカルが皮膚の内因性抗酸化能を傷害して光接触皮膚炎を起こすことが知られ、且つケトプロフェンと交叉感作反応があるとされている。
【0010】
一方、本発明のケトプロフェン外用性剤に配合される紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸は、メギゾリルSX(Mexoryl SX;商品名;ロレアル社)として知られているもので、オキシベンゾンとは紫外線の防御効果の機作が異なる。すなわち、紫外線の照射を受けることにより、E体が紫外線を吸収してZ体に異性化をおこす。この光異性化反応は可逆性であり、再び紫外線によりE体に異性化する。すなわち、紫外線によってテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸自体は分解せず、異性化することによって、紫外線からのケトプロフェンの分解を防止するとともに、オキシベンゾンにみられたケトプロフェンとの交叉感作反応の恐れのない、光安定性に優れたケトプロフェン外用製剤を得られることが考えられ、さらにケトプロフェンを含む外用製剤に、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を加えることにより、ケトプロフェンによる細胞光毒性を防止する効果があることを確認して、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
ケトプロフェンと紫外線防御剤のテレフタリリデン−3.3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を配合した本発明のケトプロフェン外用製剤は、ケトプロフェンを含有する製剤に既存の紫外線吸収剤のフェルラ酸を配合した製剤に比べて、紫外線を照射した際のケトプロフェンの光安定性にすぐれている。
【0012】
また、ケトプロフェンの引き起こす培養細胞の光毒性防止効果についても、既存のベンゾフェノン系紫外線吸収剤のオキシベンゾンを添加することによっては、ケトプロフェンに短波長紫外線UVA、長波長紫外線UVBを照射して引起される光毒性を防止する効果が殆んど認められなかったのに対し、紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10.10’−ジスルフォン酸を添加することにより、短波長紫外線UVA、長波長紫外線UVBを照射して引起されるケトプロフェンの光毒性を防止する効果がみとめられ、本発明のケトプロフェン外用製剤は光毒性が少ないことを確認した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のケトプロフェン外用製剤は、ケトプロフェンを含有する外用製剤に、さらに紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸をさらに配合することを特徴とするものである。紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸は、ケトプロフェン1モルあたり、好ましくは0.2〜5.0モル、さらに好ましくは0.2モル〜2.0モルを配合することが好ましい。紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸の配合量がケトプロフェン1モルあたり0.2モル未満であると効果が十分に得られない。また5.0モルを越えると経済的効果の面で好ましくない。
【0014】
本発明のケトプロフェン外用製剤は、液剤、軟膏剤、ゲル軟膏剤、クリーム剤、パップ剤、貼付剤、エアゾール剤などの剤型に応用することが可能である。次にそれらの剤型について主な剤型について説明する。
【0015】
本発明のケトプロフェン外用製剤の剤型が液剤である場合は、外用液剤として使用可能な溶媒を選択して作ることができる。溶媒としては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールなどの低級アルコール類、プロピレングリコールなどのグリコール類、および水から選ばれる1種又は2種以上の溶媒中にケトプロフェンと紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を、さらに必要に応じてケトプロフェンの溶解剤、pH調整剤、抗酸化剤、界面活性剤を加えて液剤とすることができる。
【0016】
本発明のケトプロフェン外用製剤の剤型が軟膏剤の場合には、ケトプロフェンと紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を軟膏基剤中に配合して製造するが、軟膏基剤は公知または通常使用されているものの中から適宜選択して使うことができるが、例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸;アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ラウリン酸エステルなどの高級脂肪酸エステル類;ロウ類;界面活性剤;セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、などの高級アルコール類;シリコン油、親水ワセリン、白色ワセリン、流動パラフィンなどの炭化水素類;グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトールなどの保湿剤;および水などがあげられるが、この中から適宜選択し、必要あればその他の添加剤をさらに配合することも可能である。
【0017】
本発明のケトプロフェン外用製剤の剤型がゲル軟膏剤の場合、ケトプロフェンと紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸とその他の添加剤をゲル軟膏基剤中に配合することにより製造するが、ゲル軟膏基剤は公知のもの、あるいは通常使われている各種基剤を選択して使うことができる。そのゲル軟膏基剤としては、例えば、溶媒としては、水と、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類またはエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類から選ばれる1種または2種以上の溶媒との混合溶媒に、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのゲル化剤を用いて、ゲル化させたゲル軟膏基剤を用い、このゲル軟膏基剤に、ケトプロフェンおよび紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸のほかに、必要に応じて、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウムなどの中和剤、界面活性剤、経皮吸収促進剤およびその他の添加剤を配合することも可能である。
【0018】
本発明のケトプロフェン外用製剤の剤型がクリーム剤である場合には、ケトプロフェンと紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を水性クリーム基剤中に乳化配合することにより製造することができる。使用するクリーム基剤としては、公知のあるいは既存のものを選択して用いることができる。例えば、親油性化合物を界面活性剤を用いて水性基剤中に乳化させた基剤であり、親油性化合物としては、例えばミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、セバチン酸エステル、ラウリン酸エステルなどの高級脂肪酸類;ステアリルアルコール、2−ヘキシルデカノール、セタノール、2−オクチルデカノールなどの高級アルコール類;および白色ワセリン、黄色ワセリン、流動パラフィンなどの炭化水素類などをあげることができ、水性基剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類と、水との混合溶媒などがあげられる。乳化に用いる界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類;モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリンなどの脂肪酸グリセリンエステル類;またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤をあげることができる。クリーム剤は、ケトプロフェン、紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸、および親油性化合物、必要あれば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、またはパラオキシ安息香酸ブチルなどから選ばれる1種または2種以上の防腐剤、あるいは抗酸化剤などのその他の添加剤とともに、界面活性剤を用いて、水性基剤と混合乳化することによってクリーム剤を製造することができる。
【0019】
本発明のケトプロフェン外用製剤の剤型がパップ剤の場合には、その製剤は、(a)支持体、(b)水性パップ剤基剤層、(c)剥離ライナーの順に積層した構造を有するパップ剤であり、水性パップ剤基剤中にケトプロフェン、紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸、およびその他の添加剤を配合したパップ剤である。支持体としては、公知の支持体または通常使われている支持体を選択することができるが、支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨンなどの不織布または編布があげられる。また剥離ライナーとしてはポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムがあげられる。水性パップ剤基剤は、パップ剤に用いることのできる水性パップ剤基剤であればいずれも使うことができるが、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム部分中和物、ポバール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、アラビヤゴムなどから選択される1種または2種以上の水性パップ剤基剤を用いることができ、この基剤はアルミニウム、亜鉛、マグネシウムなどの水溶性金属塩で架橋したものも使うことができる。水性パップ剤基剤層には、さらに必要に応じて、尿素、グリセリン、プロピレングリコールなどの湿潤剤や、カオリン、タルク、酸化チタンなどの充填剤、クエン酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸類、および1−メントール、ハッカ油、トウガラシエキス、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミドなどのその他の添加剤を配合することもできる。
【0020】
次に本発明のケトプロフェン外用製剤の剤型が貼付剤である場合について説明する。本発明の貼付剤は、(a)支持体、(b)ケトプロフェンと紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を感圧性粘着剤中に含む粘着剤層、(c)剥離ライナー、の順に順次積層された構造を有する貼付剤である。貼付剤に用いられる支持体は、公知の、あるいは既存の貼付剤の支持体であれば使用することができるが、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンの単層フィルム、または単層フィルムの外層面に、他の素材を積層させたラミネートフィルムも使用することができる。粘着剤層を形成する感圧性粘着剤は、医療用の粘着剤として使用することのできるものであれば適宜選択して使用することができるが、具体的には、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他のビニル化合物との共重合体のアクリル系感圧性粘着剤;あるいは、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリイソブチレンなどのゴム系感圧性粘着剤をあげることができ、必要に応じて、エステルガムなどの粘着付与剤、あるいはミリスチン酸イソプロピル、セバチン酸エステルなどの可塑剤も使用することが可能である。ケトプロフェンと紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸は、これらの感圧性粘着剤中に溶解状態または分散状態の形態で含まれていればよく、必要に応じて、抗酸化剤、l−メントール、ハッカ油、トウガラシチンキ、カプサイシン、ノニル酸ワニルアミドなどのその他の添加剤を一緒に配合することも可能である。剥離ライナーは使用時に剥離するものであり、外用製剤の使用時まで粘着剤層を保護する目的のもので、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレンなどのフィルムが好適に使用することができるが、粘着剤層と接する面にシリコーン処理などを施したフィルムであっても好適に用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例および試験例に基づいて、本発明のケトプロフェン外用製剤について、さらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0022】
実施例1 液剤1
1)ケトプロフェン 3g
2)テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸 7g
3)トリエタノールアミン 0.5g
4)ジブチルヒドロキシトルエン 1g
5)エタノール 50ml
6)精製水 適量(全量を100mlとする)
エタノール50mlにケトプロフェン3g、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸 7g、トリエタノールアミン0.5gおよびジブチルヒドロキシトルエン1gを加え溶解し、精製水を加えて全量を100mlとして実施例1の液剤1を得る。
【0023】
実施例2 液剤2
1)ケトプロフェン 0.2g(0.78mM)
2)L−アルギニン 0.144g
3)ベンジルアルコール 0.1g
4)テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸 0.11g(0.19mM)
5)精製水 適量(全量を100mlとする)
ケトプロフェン0.2gとL−アルギニン0.144gをベンジルアルコール0.1gに溶かし、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸0.11gを加え、精製水で希釈して全量を100mlとして実施例2の液剤2を得る。
【0024】
実施例3 液剤3
実施例2のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を0.22g(0.39mM)にする以外は、実施例2と同様にして行ない実施例3の液剤3を得る。
【0025】
実施例4 液剤4
実施例2のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を0.44g(0.78mM)とする以外は、実施例2と同様にして行ない実施例4の液剤4を得る。
【0026】
実施例5 液剤5
実施例2のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を0.88g(1.56mM)とする以外は、実施例2と同様にして行ない実施例5の液剤5を得る。
【0027】
比較例1 比較液剤1
実施例2のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸に換えて、フェルラ酸0.24gを用いて、実施例2と同様にして行ない比較例1の比較液剤1を得る。
【0028】
実施例6 ゲル軟膏剤
1)ケトプロフェン 3g
2)テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸 7g
3)カルボキシビニルポリマー 0.75g
4)ジイソプロパノールアミン 0.5g
5)ジブチルヒドロキシトルエン 1g
6)プロピレングリコール 33.3ml
7)エタノール 16.7ml
8)精製水 適量(全量を100gとする)
容器にプロピレングリコール33.3mlとエタノール16.7mlを混合し、ケトプロフェン3gとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸7gを加えて溶解させる。溶解後カルボキシビニルポリマーを攪拌しつつすこしづつ加えた後、精製水37.8gを加えてよく攪拌して均一とし、ジイソプロパノールアミン0.5gを加えてさらに攪拌して実施例6のゲル軟膏剤を得る。
【0029】
実施例7 クリーム剤
1)ケトプロフェン 3g
2)テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸 7g
3)白色ワセリン 25g
4)ステアリルアルコール 20g
5)プロピレングリコール 12g
6)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 4g
7)モノステアリン酸グリセリン 1g
8)ジブチルヒドロキシトルエン 1.7g
9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1g
10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1g
11)精製水 適量(全量を100gとする)
ケトプロフェン3gとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸7gをプロピレングリコール12gに加え溶かし、その他の成分を混合したものに十分攪拌しつつ加え、混和して実施例7のクリーム剤を得る。
【0030】
実施例8 パップ剤
1)ケトプロフェン 0.3g
2)テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸 0.7g
3)N−メチル−2−ピロリドン 0.5g
4)トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.3g
5)ポリアクリル酸部分中和物 6g
6)ゼラチン 2g
7)カルボキメチルセルロースナトリウム 2g
8)軽質無水ケイ酸 1g
9)濃グリセリン 30g
10)乾燥水酸化アルミニウムゲル 0.05g
11)硫酸アルミニウム 0.002g
12)エデト酸ナトリウム 0.1g
13)酒石酸 0.92g
14)l−メントール 0.2g
15)精製水 適量(全量を100gとする)
テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸、軽質無水ケイ酸、エデト酸ナトリウム、およびゼラチンを精製水に加え、40℃〜50℃に加温して溶解させる。次にこの液に、カルボキシメチルセルロースナトリウムと乾燥水酸化アルミニウムゲルを濃グリセリンと混和した液を加える。次いで、ケトプロフェンとl−メントールをトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンとN−メチル−2−ピロリドンの混液に溶解した溶液を加える。次いで、硫酸アルミニウムと酒石酸の精製水中に溶かした液を加え、最後に、ポリアクリル酸部分中和物と濃グリセリンの混液を加え十分に練合してパップ剤基剤とする。得られたパップ剤基剤を、支持体上に展延し、さらにその上に剥離ライナーを積層させて実施例8のパップ剤を得る。
【0031】
実施例9 貼付剤
1)ケトプロフェン 2g
2)テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸 5g
3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 27g
4)水素添加ロジングリセリンエステル(商品名 エステルガムH;荒川化学工業株式会社製) 11g
5)流動パラフィン 1.7g
6)ジブチルヒドロキシトルエン 1.7g
7)パルミチン酸イソプロピル 5g
8)l−メントール 1g
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素添加ロジングリセリンエステル、流動パラフィン、およびジブチルヒドロキシトルエンを混合し、窒素ガス雰囲気に150℃に加熱して、溶融させたあと、110℃まで温度を下げ、ケトプロフェン、l−メントール、およびテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸をパルミチン酸イソプロピルに溶かした溶液を攪拌しつつ加え、十分に混和した後、得られた混合物を、剥離ライナー上に塗膏し、さらにその上に支持体を積層して、実施例9の貼付剤を得る。
【0032】
試験例1 光安定性試験
実施例2〜5の液剤と、比較例1の液剤を用いてケトプロフェンの安定化試験を以下に記載する方法で行なった。
【0033】
試験液剤を透明ガラスサンプル瓶に封入し、光安定性試験機(LT−120D3AJ、ナガノ科学機械製作所製)を用い、D25ランプ、2500Luxを、20日間照射し、10日目(60万Lux・hr)との20日目(120万Lux・hr)にサンプリングし、ケトプロフェンの残存量の測定をHPLCを用いて測定して、光暴露後の残存率を求めた。その試験結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
上記のケトプロフェン外用製剤の安定性試験結果から、ケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を含有する液剤の実施例2〜5の液剤の光照射後10日目、および20日目のケトプロフェン残存率は、ケトプロフェンとフェルラ酸を含有する比較例1の比較液剤1の光照射後10日目、および20日目のケトプロフェン残存率と比較して、それぞれ著しく優れていた。
【0036】
試験例2 テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸の抗細胞光毒性試験。
ヒト正常皮膚繊維芽細胞(NHDF)を用いて、紫外線(UVA,UVB)を照射したときのケトプロフェンの細胞光毒性の抑制効果を、細胞生存率を測定することにより検討した。
【0037】
(被検溶液の調整)
対照液の調整:ケトプロフェン0.19gを少量のメチルアルコールに溶解して、PBSリン酸緩衝液で希釈して1000mlとし、そのうち6mlを正確にはかりとり、対照液(ケトプロフェン0.75mM溶液)とした。
試験溶液1の調整:ケトプロフェン0.19gを少量のメチルアルコールに溶解し、さらにMexoryl SX 0.5627gを加え、さらにPBSリン酸緩衝液を加えて希釈して1000mlとし、そのうち6mlを正確にはかりとり、試験溶液(テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸1mM溶液)とした。
【0038】
ヒト正常皮膚繊維芽細胞(NHDF)を96ウェルプレート(96 well microtiter plate)にそれぞれ5×10(cells/well)植え、10%牛胎児血清(FBS)含有DMEM培地(FBS−Dulbecco’s Modified Eagle Medium(FBS−DMEM培地):Gibco BRL社製)で90%飽和密度まで培養する。その後1回、PBSリン酸緩衝液で培養細胞を洗い、対照液および被検溶液1を、それぞれ加えて10分間インキュベーションした後、短波長紫外線UVA(照射密度UVA:650mJ/cm)で照射する。照射終了後、PBSリン酸緩衝液を捨て、PBSリン酸緩衝液を用いて1回洗浄する。10%FBS−DMEM培地0.18mlを加えて、37℃で18時間培養した。その後、培養液を捨て、DMSO0.15mlを加えて、5分間インキュベーションした後、Multi−spectrophotometerを用いて、570nmの吸光度を測定して細胞光毒性を評価する。
【0039】
上記細胞光毒性試験の短波長紫外線UVAに換えて長波長紫外線UVB(照射密度UVB:30mJ/cm)を用いる以外は同様に行い、細胞光毒性を評価する。
【0040】
前記の細胞光毒性試験1を、対照液1と試験溶液1を用いて行い、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸の抗光毒性試験を評価した。ケトプロフェンにより紫外線を照射することにより、吸光度の著しい低下がおこった。一方、細胞の生存率が低下したが、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を添加した試験溶液1では、吸光度の低下が見られず、殆んど細胞の生存率の低下は認めなかった。その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
細胞光毒性試験2(比較例)
上記細胞光毒性試験1のヒト正常皮膚繊維芽細胞をネズミ角質細胞(PAM細胞)を用い、またケトプロフェンの濃度を0.5mMに、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸1mMを紫外線吸収剤のオキシベンゾン1mMに換えて調整した比較試験液2を用いて、細胞の生存率の防止効果を検討した。その結果、紫外線吸収剤のオキシベンゾンはケトプロフェンによる細胞生存率の低下の防止効果は殆んど認められなかった。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
上記の細胞光毒性試験1および2で、ケトプロフェン溶液に短波長紫外線UVAまたは長波長紫外線UVBを照射した際の細胞生存率の低下を、紫外線吸収剤のオキシベンゾンを加えることにより、細胞生存率の低下防止効果が殆んど認められないが、紫外線防御剤のテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を加えることにより、細胞生存率の低下は殆んどみられず、優れた細胞光毒性防止効果が認めれれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を含むことを特徴とするケトプロフェン外用製剤。
【請求項2】
ケトプロフェン外用製剤の剤型が、(a)支持体、(b)ケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を水性粘着基剤中に含む水性粘着基剤層、(c)剥離ライナーからなるパップ剤であることを特徴とする請求項1記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項3】
前記の水性粘着性基剤が、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、およびポリアクリル酸ナトリウム部分中和物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の水性粘着性基剤であることを特徴とする請求項2に記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項4】
ケトプロフェン外用製剤の剤型が、(a)支持体、(b)ケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を感圧性粘着基剤中に含む粘着剤層、及び(c)剥離ライナーからなる貼付剤であることを特徴とする請求項1に記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項5】
前記の感圧性粘着基剤が、アクリル系感圧性粘着基剤であることを特徴とする請求項4に記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項6】
前記の感圧性粘着剤が、炭素数が3個〜10個のアルキル基の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む共重合体であるアクリル系感圧性粘着基剤であることを特徴とする請求項4または5に記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項7】
前記の感圧性粘着剤基剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体と粘着付与剤を含むゴム系感圧性粘着基剤であることを特徴とする請求項4に記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項8】
ケトプロフェン外用製剤の剤型が、薬剤のケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸をゲル軟膏基剤中に含みゲル軟膏剤であることを特徴とする請求項1に記載のケトプロフェン外用経皮吸収製剤。
【請求項9】
ケトプロフェン外用製剤の剤型が、薬剤のケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸をクリーム基剤中に含むクリーム剤であることを特徴とする請求項1に記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項10】
ケトプロフェン外用製剤の剤型が、薬剤のケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−l0,10’−ジスルフォン酸を含水アルコール中に含む液剤であることを特徴とする請求項1に記載のケトプロフェン外用製剤。
【請求項11】
ケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を含むケトプロフェン外用製剤であって、ケトプロフェン1モルあたり、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を0.2モル〜5.0モル含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかの1項に記載のケトプロフェン外用製剤。

【公開番号】特開2006−137735(P2006−137735A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354645(P2004−354645)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000174622)埼玉第一製薬株式会社 (31)
【Fターム(参考)】