説明

ケラチン繊維を処理する方法

本発明は、ケラチン繊維を処理する方法であって、
ケラチン繊維上に、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
該組成物が、還元剤も、式:


(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法に関する。本発明は、更に、前述の方法に使用するための組成物自体及びキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維(毛髪など)を処理する方法、ならびに、該方法に使用される組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチン繊維(毛髪など)が日常的に受けなければならない多くの物理的なストレス(UV、シャンプー、ブラッシングなど)および化学的なストレス[着色、パーマ、リラクシング(relaxing)、汚染など]があることから、損傷したケラチン繊維の有効な修復についての調査が、ケラチン繊維の美容処理において重要になっている。
【0003】
損傷したケラチン繊維の修復は、元の状態のケラチン繊維に戻ったという現実的な感覚が得られてこそ価値がある。さらに、そうした修復処理は、前述のような多様なストレスに対して有効であるべきである。
【0004】
これまでに提案されている、損傷したケラチン繊維を修復するための処理として公知の技術(組成物および/または方法)は、そうした技術が多くの場合は一時的でありケラチン繊維の元の状態の正しい回復を達成しないという点に限って言えば、未だに不十分である。
【0005】
カチオン性界面活性剤は、スキンケア製品に広く用いられる。例えば、US-A-2008-313820を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US-A-2008-313820
【特許文献2】米国特許第4,874,554号
【特許文献3】米国特許第4,137,180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カチオン性界面活性剤は、ケラチン繊維のための、より具体的には損傷した毛髪のための有効な材料であることが知られている。これらの陽イオン基は、ケラチン繊維の陰イオン性部分と容易に相互作用することができ、これらの疎水性尾部は、滑らかさ、柔軟性および疎水性の被覆(hydrophobic cover)を付与する。
【0008】
ところが、ケラチン繊維に対するこれらの利益は、ケラチン繊維上へのこれらの沈着率が低いことおよびケラチン繊維中への浸透性が低いことから、未だ不十分である。このことは、カチオン性界面活性剤を使用したケラチン繊維の美容処理の効率は低く、美容処理のために使用される製剤において多量のカチオン性界面活性剤が必要であるということを意味する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、良好な美容効果、とりわけ、優れた修復効果または回復効果をケラチン繊維にもたらし、長時間にわたり多様なストレスに対して有効であり得るカチオン性界面活性剤を、しかも比較的少量で使用した、ケラチン繊維(毛髪など)の新しい処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の本発明の目的は、ケラチン繊維を処理する方法であって、
該ケラチン繊維上に、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
該組成物が、還元剤も、式:
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法により達成できる。
【0013】
前述の方法は、該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後および/またはケラチン繊維を加熱するステップの後にケラチン繊維をすすぐステップをさらに含んでもよい。
【0014】
ケラチン繊維に機械的張力を与えてもよい。機械的張力は、カーラー、ローラー、プレートおよびアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再成形手段(reshaping means)を用いることにより与えてもよい。
【0015】
該閉塞空間は、少なくとも1つのコーティング手段により形成されてもよい。該コーティング手段は、硬質または軟質であってもよい。該コーティング手段は、フィルムおよびシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含んでもよい。
【0016】
前述の方法において、ケラチン繊維を加熱するステップの間、ケラチン繊維は45℃から250℃で加熱されてもよい。ケラチン繊維は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザーおよびフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器により加熱されてもよい。該コーティング手段および/または該再成形手段は、該加熱器を備えていてもよい。
【0017】
該カチオン性界面活性剤は、任意にポリオキシアルキレン化された一級、二級および三級脂肪アミン、四級アンモニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0018】
該四級アンモニウム塩は、
以下の一般式(V):
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、
R1、R2、R3およびR4は、同一であっても異なっていてもよく、1個から30個の炭素原子を含む直鎖状および分枝状の脂肪族基、および芳香族基から選ばれ;X-は、ハロゲン化物、ホスファート、アセタート、ラクタート、(C2〜C6)アルキルスルファート、およびアルキル-スルホナートまたはアルキルアリール-スルホナートから選ばれる]のもの;
イミダゾリンの四級アンモニウム塩;
式(VII):
【0021】
【化3】

【0022】
[式中、R9は、16個から30個の炭素原子を含む脂肪族基から選ばれ;R10、R11、R12、R13およびR14は、同一であっても異なっていてもよく、水素および1個から4個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ;X-は、ハロゲン化物、アセタート、ホスファート、ニトラート、エチルスルファートおよびメチルスルファートから選ばれる]のジ四級アンモニウム塩;および
少なくとも1つのエステル官能基を含む四級アンモニウム塩
から選ぶことができる。
【0023】
該イミダゾリンの四級アンモニウム塩が、以下の式(VI):
【0024】
【化4】

【0025】
[式中、
R5は、8個から30個の炭素原子を含むアルケニル基およびアルキル基から選ばれ;R6は、水素、C1〜C4アルキル基、ならびに8個から30個の炭素原子を含むアルケニル基およびアルキル基から選ばれ;R7は、C1〜C4アルキル基から選ばれ;R8は、水素およびC1〜C4アルキル基から選ばれ;X-は、ハロゲン化物、ホスファート、アセタート、ラクタート、アルキルスルファート、アルキルスルホナート、およびアルキルアリールスルホナートから選ばれる]のものから選ぶことができる、請求項11に記載の方法。
【0026】
該カチオン性界面活性剤は、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、クオタニウム-83、クオタニウム-87、クオタニウム-22、ベヘニルアミドプロピル-2,3-ジ-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド、パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ならびにジアシルオキシエチル-ジメチルアンモニウムのクロリドおよびメチルスルファート、ジアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-メチルアンモニウムのクロリドおよびメチルスルファート、モノアシルオキシエチル-ジヒドロキシエチル-メチルアンモニウムのクロリドおよびメチルスルファート、トリアシルオキシエチル-メチルアンモニウムのクロリドおよびメチルスルファート、モノアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-ジメチル-アンモニウムのクロリドおよびメチルスルファート、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0027】
該組成物は、該カチオン性界面活性剤を、該組成物の総重量に対し、0.01重量%から15重量%の量で含んでもよい。
【0028】
該組成物のpHは、4から11の範囲となり得る。
【0029】
本発明の別の態様は、閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含み、
還元剤も、式:
【0030】
【化5】

【0031】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物である。
【0032】
本発明は、さらに、ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、および
該閉塞空間中でケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える装置と、
少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含み、
還元剤も、式:
【0033】
【化6】

【0034】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OHおよびO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
鋭意検討の結果、本発明者らは、カチオン性界面活性剤を含む組成物をケラチン繊維の特定の加熱方法と共に用いることにより、良好な美容効果を、とりわけ、長時間にわたり多様なストレスに対し有効であり得る優れた修復効果または回復効果を、カチオン性界面活性剤を用いることによりケラチン繊維(毛髪など)にもたらすことが可能であることを発見した。
【0036】
前述の特定の加熱方法は、ケラチン繊維からの水または水分の蒸発を制限し、ケラチン繊維を高温にて好ましくは湿った状態で維持する、閉鎖環境または閉塞環境において実施される。それにより、ケラチン繊維を均等に加熱することができ、カチオン性界面活性剤は、ケラチン繊維の中に容易に浸透しまたはその上に沈着することができることから、シャンプーなどの何らかのストレスの後でも、カチオン性界面活性剤は、ケラチン繊維の中または上に長時間にわたり残ることができる。
【0037】
カチオン性界面活性剤は、ケラチン繊維上またはその中に容易に留まることができることから、本発明による方法は、カチオン性界面活性剤がケラチン繊維上またはその中に留まることが難しい従来の方法と比較して、比較的少量であってもカチオン性界面活性剤を用いることにより、良好な美容効果を呈することができる。
【0038】
本発明において使用される組成物は、チオール化合物などの還元剤を含有してはならない。したがって、還元剤に由来する悪臭を防止できる。さらに、本発明において使用される組成物は、先に定義したように、炭酸イオン源を一切含有してはならない。したがって、ケラチン繊維上またはその中へのカチオン性界面活性剤の沈着または浸透を阻害しうる泡を形成する二酸化炭素を生じる可能性がないため、美容処理がより有効である。
【0039】
(組成物)
本発明に使用される組成物は、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含む。
【0040】
該カチオン性界面活性剤は、場合によりポリオキシアルキレン化された一級、二級および三級脂肪アミン塩、四級アンモニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0041】
挙げることができる四級アンモニウム塩の例には、それだけには限らないが、
以下の一般式(V):
【0042】
【化7】

【0043】
[式中、
R1、R2、R3およびR4は、同一であっても異なっていてもよく、1個から30個の炭素原子を含み、酸素、窒素、硫黄およびハロゲンなどのヘテロ原子を場合により含む直鎖状および分枝状の脂肪族基(該脂肪族基は、例えば、アルキル、アルコキシ、C2〜C6ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、(C12〜C22)アルキルアミド(C2〜C6)アルキル、(C12〜C22)アルキルアセタートおよびヒドロキシアルキル基から選ぶことができる);ならびにアリールおよびアルキルアリールなどの芳香族基から選ぶことができ;X-は、ハロゲン化物、ホスファート、アセタート、ラクタート、(C2〜C6)アルキルスルファートおよびアルキル-スルホナートまたはアルキルアリール-スルホナートから選ばれる]のもの;
イミダゾリンの四級アンモニウム塩、例えば、以下の式(VI):
【0044】
【化8】

【0045】
[式中、
R5は、8個から30個の炭素原子を含むアルケニル基およびアルキル基、例えば、獣脂もしくはココナツの脂肪酸誘導体から選ばれ;
R6は、水素、C1〜C4アルキル基、および8個から30個の炭素原子を含むアルケニル基およびアルキル基から選ばれ;
R7は、C1〜C4アルキル基から選ばれ;
R8は、水素およびC1〜C4アルキル基から選ばれ;
X-は、ハロゲン化物、ホスファート、アセタート、ラクタート、アルキルスルファート、アルキルスルホナートおよびアルキルアリールスルホナートから選ばれる]のもの
が含まれる。一実施形態では、R5およびR6は、例えば、獣脂の脂肪酸誘導体などの12個から21個の炭素原子を含むアルケニル基およびアルキル基から選ばれる基の混合物であり、R7はメチルであり、R8は水素である。かかる製品の例には、それだけには限らないが、Witco社によって「Rewoquat(登録商標)」W75、W90、W75PGおよびW75HPGという名で販売されているクオタニウム-27(CTFA 1997)およびクオタニウム-83(CTFA 1997);
式(VII):
【0046】
【化9】

【0047】
[式中、
R9は、16個から30個の炭素原子を含む脂肪族基から選ばれ;
R10、R11、R12、R13およびR14は、同一であっても異なっていてもよく、水素および1個から4個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ;
X-は、ハロゲン化物、アセタート、ホスファート、ニトラート、エチルスルファートおよびメチルスルファートから選ばれる]のジ四級アンモニウム塩
が含まれる。かかるジ四級アンモニウム塩の一例としては、プロパンタロウジアンモニウムジクロリド;および
以下の式(VIII):
【0048】
【化10】

【0049】
[式中、
R15は、C1〜C6アルキル基およびC1〜C6ヒドロキシアルキル基およびジヒドロキシアルキル基から選ばれ;
R16は、
以下の基
【0050】
【化11】

【0051】
直鎖状および分枝状の、飽和および不飽和のC1〜C22炭化水素系基R20、および水素から選ばれ;
R18は、
以下の基
【0052】
【化12】

【0053】
直鎖状および分枝状、飽和および不飽和のC1〜C6炭化水素系基R22、および水素から選ばれ、
R17、R19およびR21は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状および分枝状の、飽和および不飽和のC7〜C21炭化水素系基から選ばれ;
r、n、およびpは、同一であっても異なっていてもよく、2から6の範囲の整数から選ばれ;
yは、1から10の範囲の整数から選ばれ;
xおよびzは、同一であっても異なっていてもよく、0から10の範囲の整数から選ばれ;
X-は、有機および無機の単純および錯陰イオンから選ばれ;但し、x+y+zの和は1から15の範囲であり、但しxが0であるとき、R16はR20を表し、但し、zが0であるとき、R18は、R22を表す]のものなどの少なくとも1つのエステル官能基を含む四級アンモニウム塩である。R15は、直鎖および分枝アルキル基から選ぶことができる。一実施形態では、R15は、直鎖アルキル基から選ばれる。他の実施形態では、R15は、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基およびジヒドロキシプロピル基から選ばれ、例えば、メチル基およびエチル基から選ばれる。一実施形態では、x+y+zの和は、1から10の範囲である。R16が炭化水素系基R20であるとき、R16は、長鎖であり12個から22個の炭素原子を含むことができる、または短鎖であり1個から3個の炭素原子を含むことができる。R18が炭化水素系基R22であるとき、R18は、例えば、1個から3個の炭素原子を含むことができる。非限定的なとして、一実施形態では、R17、R19およびR21は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状および分枝状の、飽和および不飽和のC11〜C21炭化水素系基から選ばれ、例えば、直鎖状および分枝状の、飽和および不飽和のC11〜C21アルキル基およびアルケニル基から選ばれる。他の実施形態では、xおよびzは、同一であっても異なっていてもよく、0または1である。一実施形態では、yは1に等しい。他の実施形態では、r、nおよびpは、同一であっても異なっていてもよく、2または3に等しく、例えば、2に等しい。陰イオンX-は、例えば、塩化物イオン、臭化物イオンおよびヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオンから選ぶことができ;メチルスルファートなどのC1〜C4アルキルスルファートから選ぶことができる。しかし、メタンスルホナート、ホスファート、ニトラート、トシラート、アセタートおよびラクタートなどの有機酸に由来の陰イオン、ならびにエステル官能基を含むアンモニウムに適合する任意の他の陰イオンは、本発明に従って使用することができる陰イオンの他の非限定的な例である。一実施形態では、陰イオンX-は、塩化物イオンおよびメチルスルファートから選ばれる。
【0054】
他の実施形態では、上記式(VIII) [但し、式中、
R15は、メチル基およびエチル基から選ばれ、
xおよびyは、1に等しく;
zは、0または1に等しく;
r、nおよびpは、2に等しく;
R16は、
以下の基
【0055】
【化13】

【0056】
メチル、エチル、およびC14〜C22炭化水素系基、水素から選ばれ;
R18は、
以下の基
【0057】
【化14】

【0058】
水素から選ばれ;
R17、R19およびR21は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状および分枝状の、飽和および不飽和のC13〜C17炭化水素系基から選ばれ、例えば、直鎖状および分枝状の、飽和および不飽和のC13〜C17アルキル基およびアルケニル基から選ばれる]のアンモニウム塩を使用することができる。
【0059】
一実施形態では、炭化水素系基は、直鎖である。
【0060】
挙げることができる式(VIII)の化合物の非限定的な例には、塩、例えば、ジアシルオキシエチル-ジメチルアンモニウムのクロリド及びメチルスルファート、ジアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-メチルアンモニウムのクロリド及びメチルスルファート、モノアシルオキシエチル-ジヒドロキシエチル-メチルアンモニウムのクロリド及びメチルスルファート、トリアシルオキシエチル-メチルアンモニウムのクロリド及びメチルスルファート、モノアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-ジメチル-アンモニウムのクロリド及びメチルスルファート、及びそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、アシル基は、14個から18個の炭素原子を含むことができ、例えば、植物油、例えば、パーム油及びヒマワリ油等に由来し得る。化合物がいくつかのアシル基を含むとき、これらの基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0061】
これらの生成物は、例えば、場合によりオキシアルキレン化されたトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルキルジエタノールアミン又はアルキルジイソプロパノールアミンを脂肪酸に又は植物若しくは動物起源の脂肪酸の混合物に直接エステル化することによりあるいはそれらのメチルエステルをエステル交換することにより得ることができる。このエステル化は、その後、例えば、ハロゲン化メチル及びハロゲン化エチル等のハロゲン化アルキル;例えば、硫酸ジメチル及び硫酸ジエチル等の硫酸ジアルキル;メタンスルホン酸メチル;p-トルエンスルホン酸メチル;グリコールクロロヒドリン;及びグリセロールクロロヒドリンから選ばれるアルキル化剤を用いて四級化することができる。
【0062】
かかる化合物は、例えば、Cognis社によってDehyquart(登録商標)という名称で、Stepan社によってStepanquat(登録商標)という名称で、Ceca社によってNoxamium(登録商標)という名称で、Rewo-Goldschmidt社によって「Rewoquat(登録商標)WE 18」によって販売されている。
【0063】
本発明による組成物は、例えば、四級アンモニウムモノ-、ジ-及びトリエステル塩の、重量の大部分のジエステル塩との混合物を含むことができる。
【0064】
本発明による組成物に用いることができるアンモニウム塩の混合物の非限定的な例は、アシルオキシエチル-ジヒドロキシエチル-メチルアンモニウムメチルスルファート15重量%から30重量%、ジアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-メチルアンモニウムメチルスルファート45重量%から60重量%、トリアシルオキシエチル-メチルアンモニウムメチルスルファート15重量%から30重量%を含むものであり、これらの全ての化合物のアシル基は、14個から18個の炭素原子を含み、場合により部分的に水素化されたパーム油に由来する。
【0065】
本発明による組成物に用いることができるアンモニウム塩の他の非限定的な例には、米国特許第4,874,554号及び米国特許第4,137,180号に記載されている少なくとも1つのエステル官能基を含むアンモニウム塩が含まれる。
【0066】
本発明による組成物に使用することができる上記の四級アンモニウム塩のうち、それだけには限らないが、式(V)に対応するもの、例えば、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド及びベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド等、ジアルキルジメチルアンモニウム及びアルキルトリメチルアンモニウムクロリド(アルキル基は、約12個から22個の炭素原子を含む)等の、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロリド;パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド;及びVan Dyk社によって「Ceraphyl(登録商標)70」という名で販売されているステアラミドプロピルジメチル(ミリスチルアセタート)アンモニウムクロリドを含む。
【0067】
一実施形態によれば、本発明の組成物に使用することができる少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、四級アンモニウム塩から選ばれ、例えば、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、クオタニウム-83、クオタニウム-87、クオタニウム-22、ベヘニルアミドプロピル-2,3-ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド、パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及びステアラミドプロピルジメチルアミンから選ばれる。
【0068】
本発明による組成物は、組成物の総重量に対して0.01重量%から15重量%の量で、例えば、組成物の総重量に対して0.1重量%から10重量%の量で、組成物の総重量に対して0.2重量%から5重量%の量で少なくとも1種のカチオン性界面活性剤を含むことができる。
【0069】
本発明に使用される組成物は、還元剤も、式:
【0070】
【化15】

【0071】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない。
【0072】
該組成物のpHは、4から11の範囲、好ましくは4.0から9.0との間、より好ましくは6.0から8.0の間であってもよい。該組成物のpHは比較的高くも低くもないことから、該組成物によるケラチン繊維への損傷を減らすことができる。
【0073】
pHを調節するために、本発明のイオン源以外の酸性又はアルカリ性化剤を、単独で、又は組み合わせて使用してもよい。酸性又はアルカリ性化剤の量は制限されないが、該組成物の総重量に対し0.1重量%から5重量%であってもよい。酸性化剤としては、化粧品中で一般に使用される任意の無機酸又は有機酸[クエン酸、乳酸、リン酸又は塩酸(HCl)等]を挙げることができる。HClが好ましい。アルカリ性化剤としては、化粧品中で一般に使用される、以下等の任意の無機塩基性又は有機塩基性化剤を挙げることができる:アンモニア;アルカノールアミン(alcanolamine)(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等);水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム;尿素、グアニジン及びその誘導体;塩基性のアミノ酸(リシン又はアルギニン等);並びに、以下の構造:
【0074】
【化16】

【0075】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1〜C4アルキル基により場合により置換されているプロピレン等のアルキレンを表し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基又はC1〜C4ヒドロキシアルキル基を表す)に記載されているもの等のジアミン(1,3-プロパンジアミン及びその誘導体を例に挙げることができる)。アルギニン及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0076】
本発明に使用される組成物は、1つ又は複数の追加的な化粧品用添加剤(cosmetic agent)を含むこともできる。追加的な化粧品用添加剤の量は制限されないが、該組成物の総重量に対し0.1重量%から10重量%であってもよい。化粧品用添加剤は、以下からなる群から選択してもよい:揮発性又は不揮発性、直鎖状又は環状の、アミン型又はそうではない、シリコーン、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性又は両性のポリマー、ペプチド及びその誘導体、タンパク質加水分解物、合成又は天然の蝋、及び特に脂肪アルコール、膨張剤及び浸透剤、並びに、以下等他の活性化合物:陰イオン性、非イオン性、両性又は双性イオン性の界面活性剤、抜け毛防止剤、抗フケ剤、会合型又はそうではない天然又は合成の増粘剤、懸濁化剤、金属イオン封鎖剤、不透明化剤(opacifying agent)、色素、日焼け止め剤、充填剤、ビタミン又はプロビタミン、ミネラル、植物油又は合成油、並びに、香料、保存剤、安定化剤、並びにそれらの混合物。
【0077】
本発明に使用される組成物のためのビヒクルは、好ましくは、水からなる水性媒体であり、有利には、化粧品として許容される1つ又はいくつかの有機溶媒を含有してもよく、そのような有機溶媒としては、とりわけ以下が挙げられる:アルコール(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール等)、又はポリオール若しくはポリオールエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコール又はそのエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、並びにジエチレングリコールアルキルエーテル(ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノブチルエーテル等)。水は、該組成物の総重量に対し10重量%から90重量%の濃度で存在してもよい。したがって、有機溶媒は、該組成物の総重量に対し0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から10重量%の濃度で存在してもよい。
【0078】
本発明において使用される組成物は、ローション、濃厚若しくはそうではないゲル、又はクリーム等の任意の形態で存在してもよい。
【0079】
(ケラチン繊維処理方法)
本発明によるケラチン繊維を処理する方法は、
前述のように、ケラチン繊維上に、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含む組成物を適用するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、該ケラチン繊維を加熱するステップと
により実施できる。
【0080】
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維(毛髪等)は、閉塞空間中で実施する特定の加熱方法に供される。
【0081】
加熱方法は、自由に制御して該方法にとって望ましい温度を実現できる任意の加熱手段により、実施できる。
【0082】
加熱方法は、好ましくは、閉塞空間を形成して、前述の組成物中で蒸発性成分(水等)がケラチン繊維から蒸発するのを制限し、該方法を通じて加熱装置中で既定の温度を保つことができる、特別な加熱装置を使用することにより、実施してもよい。
【0083】
前述の組成物中の蒸発性成分(水等)がケラチン繊維から蒸発する場合、ケラチン繊維に加えられる熱エネルギーの大部分は蒸発により消費されることになると考えられ、したがって、ケラチン繊維の温度は、該組成物中の全ての蒸発性成分が蒸発するまでは、既定の温度まで上昇できない。
【0084】
前述の加熱装置は、ケラチン繊維と接触しているか、又はケラチン繊維から離れている、そのいずれかの熱エネルギー源と、ケラチン繊維を取り巻く閉塞空間を形成するための少なくとも1つの手段とを含んでもよい。
【0085】
熱エネルギー源は、ケラチン繊維を加熱するために使用される。熱エネルギー源は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザー及びフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器であってもよい。
【0086】
閉塞空間は、少なくとも1つのコーティング手段により形成されてもよい。複数のコーティング手段を使用してもよい。コーティング手段は、硬質又は軟質であってもよい。
【0087】
コーティング手段は、フィルム及びシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含んでもよい。フィルム又はシートの材料は限定されない。例えば、フィルム又はシートは、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂、紙、織物材料、覆い(bonnet)、金属箔(アルミニウム箔等)を含んでもよい。
【0088】
例えば、フィルム又はシートは、ケラチン繊維により覆われた加熱用ロッド、加熱用バー又は加熱用プレート上にセットしてもよい。
【0089】
本発明によれば、コーティング手段は、熱エネルギー源を含んでもよい。したがって、例えば、加熱器を含むフィルム又はシートは、ケラチン繊維により覆われたロッド、バー又はプレート上にセットしてもよい。
【0090】
閉塞状態は、ケラチン繊維に適用された前述の組成物中での蒸発性成分(水等)の蒸発を制限でき、したがって、ケラチン繊維の温度は、開放状態におけるケラチン繊維の従来の加熱方法又は装置により得ることができる温度より高く上昇させることができる。更に、ケラチン繊維を有効に加熱でき、ケラチン繊維を均等に加熱できる。
【0091】
本発明の一変形形態によれば、閉塞空間は開口部を含んでもよく、その表面積は、コーティング手段の合計表面積の5%未満、好ましくは3%未満、より特定すれば0.5%未満である。この変形形態によれば、コーティング手段の合計表面積は、コーティング手段のための開放手段(存在する場合)の表面積を含む。
【0092】
開口部は、通路、穴又は孔であってもよく、それにより、特に、反応(閉塞空間の内側で蒸気を形成する等)が大きすぎる際は、閉塞空間とその外部との間の空気の交換が可能になると考えられる。逆に言えば、当業者であれば、閉塞空間中での熱の拡散が障害されないように開口部を形成できる。
【0093】
ケラチン繊維は、45℃から250℃、好ましくは60℃から200℃、より好ましくは60℃から150℃、より好ましくは60℃から90℃で、該ケラチン繊維を加熱するステップの間、加熱できる。
【0094】
加熱方法は、ケラチン繊維を処理するのに必要な適切な時間にわたり実施してもよい。加熱方法のための時間の長さは制限されないが、1分から2時間、好ましくは1分から1時間、より好ましくは1分から30分であってもよい。例えば、加熱のための時間は、5から20分、好ましくは10から15分であってもよい。
【0095】
ケラチン繊維は、該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後及び/又は該ケラチン繊維を加熱するステップの後にすすいでもよい。
【0096】
[ケラチン繊維のパーマネント変形(Permanent Deformation)方法]
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維に、パーマネント変形に典型的に使用される機械的張力をかけてもよい。
【0097】
ケラチン繊維のためのパーマネント変形方法は、ケラチン繊維に機械的張力を加える際は、次のように実施してもよい。
【0098】
まず、ケラチン繊維に、変形のために機械的張力をかける。機械的張力は、意図した形状にケラチン繊維を変形するための任意の手段によりケラチン繊維に加えることができる。例えば、機械的張力は、カーラー、ローラー、クリップ、プレート及びアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再成形手段により与えてもよい。再成形手段は、前述のように、少なくとも1つの加熱器を含んでもよい。ケラチン繊維をカーラーに巻き付ける場合は、この巻上げは、ケラチン繊維の全長に対して、又は、例えば、ケラチン繊維の長さの半分に対して実施してもよい。例えば所望の髪型形状及びカールの量によっては、巻上げは、多少厚い束で実施してもよい。
【0099】
次に、前述の組成物をケラチン繊維に適用する。該組成物の適用は、ブラシ及び櫛等の任意の手段により実施してもよい。機械的張力を加えておいたケラチン繊維を、該組成物で処理すべきである。ケラチン繊維は、必要に応じ、一定の長さの時間にわたり、そのままの状態で放置することが可能であると考えられる。
【0100】
最後に、前述の加熱方法を実施する。熱エネルギーは、前述のように、閉塞条件下でケラチン繊維に加えられる。
【0101】
ケラチン繊維のパーマネント変形のためのこの方法は、ケラチン繊維を酸化させるステップを一切用いずに実施できる。したがって、本発明による方法に要する時間は、酸化ステップを必要とする従来の方法に要する時間より短くすることができる。更に、酸化ステップによりケラチン繊維に与えられる損傷を回避できる。
【0102】
該組成物をケラチン繊維上に適用するステップの後及び/又は該ケラチン繊維を加熱するステップの後に、ケラチン繊維をすすいでもよい。
【0103】
本発明による美容処理方法の一実施形態は、ケラチン繊維、とりわけ毛髪を再成形又はパーマネント変形するための方法であって、
a)カールを形成するために少なくとも1つの再成形手段又は機械的張力付与手段(mechanically tensioning means)上に巻き上げることにより、ケラチン繊維を機械的張力下に置くステップ、
b)前述の組成物を該ケラチン繊維に適用するステップ、
c)該ケラチン繊維をすすぐ任意選択的なステップ、
d)少なくとも1つのコーティング手段を該再成形手段又は機械的張力付与手段上に(又はその逆に)配置して、1つ又は複数の閉塞空間を形成するステップ、並びに
e)該ケラチン繊維を45±2又は3℃から250±2又は3℃の間の温度で1分間から2時間加熱するステップ
を含む方法であってもよい。
【0104】
この方法において、温度は1つ又は複数の加熱手段を使用することにより設定、調節及び調整でき、ケラチン繊維上にセットしたDigital Surface Sensor Module、参照番号MT-144[坂口電熱株式会社(日本)により販売されている]等の温度測定プローブを用いて測定してもよい。通常、プローブは、単一のケラチン繊維上にセットする。しかし、プローブを、閉塞空間と直接接触するケラチン繊維の一部の上にセットし、より好ましくは、プローブを、閉塞空間と直接接触しケラチン繊維のカールの末端を形成する(カーラーを使用する場合)ケラチン繊維の一部の上にセットすることは有利である。
【0105】
好ましくは、温度は、気圧101325Paで測定する。
【0106】
本発明によれば、ケラチン繊維の温度は、個体の頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)にわたり一定(変動は±2又は3℃)であってもよく、プローブは、任意の種類のケラチン繊維上にセットしてもよい。
【0107】
ケラチン繊維が毛髪である場合、本発明によれば、一定の温度(変動は±2又は3℃)は、任意の種類の毛髪について得ることができ、毛髪の温度は、毛髪を特定の温度で加熱する間、一定±2又は3℃であるように制御できる。こうして、髪型は毛髪の全体にわたり均一かつ均質になり、より優れた髪型を最終的に得ることができる。
【0108】
有利には、コーティング手段は1つ又は複数の断熱材を含んでもよく、より有利には、コーティング手段は、そうした材料からなっていてもよい。
【0109】
用語「断熱材」は、熱伝導率が0から1W/m℃(PVC:0.17W/m℃)である任意の材料を意味する。
【0110】
好ましくは、加熱手段は、ケラチン繊維上で測定される温度が50℃以上、より好ましくは55℃から150℃未満、更により好ましくは100℃未満であるように調節してもよい。加熱は、電気抵抗による加熱により実施することが好ましい。
【0111】
有利には、コーティング手段は、ステップb)において使用される組成物に関しては不浸透性である。
【0112】
前述の実施形態では、再成形手段又は機械的張力付与手段のうち少なくとも1つ、及び、カバー手段のうち少なくとも1つは、加熱器を含んでもよい。
【0113】
前述の実施形態では、「閉塞空間」は、コーティング手段を再成形手段又は機械的張力付与手段上に(又はその逆に)配置した際、それらの手段が一緒になって閉鎖構造(その中では熱は拡散できるが、熱は該閉鎖構造の外へ拡散できないか、又は該構造の外へ拡散することが難しい)を形成することを意味する。コーティング手段及び再成形手段又は機械的張力付与手段は、頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)の上にセットした際に閉塞空間を形成できることが好ましい。
【0114】
閉塞空間は、その中で、水、及び、ステップb)において使用される組成物中の成分がケラチン繊維から蒸発し、コーティング手段の壁面に付着し、ケラチン繊維上に落ちることができる凝結ケージ(condensation cage)を形成してもよい。このサイクルは、ケラチン繊維の加熱の間、繰り返されると考えられる。こうして、ケラチン繊維を湿った状態で常に保つことができ、ケラチン繊維の乾燥及び劣化が防止される。
【0115】
閉塞空間中のケラチン繊維を湿った状態で保つことができ、ケラチン繊維の温度を一定にできるため、閉塞空間の形成は本発明の重要な特徴である。
【0116】
好ましくは、本発明の方法は、弾力性のあるコード、伸展性のバンド又は伸縮性材料(stretch)により、個体の頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)上でコーティング手段を締め付ける追加的なステップを含んでもよい。
【0117】
本発明の方法によれば、該組成物がケラチン繊維上で継続的に凝結できる閉塞空間があるために、該組成物中の化粧品成分の量は、先行技術における方法と比較して有利に減少する。化粧品成分の量は、該組成物の0.3重量%から3重量%であってもよい。
【0118】
好ましい一実施形態では、コーティング手段は、再成形手段又は機械的張力付与手段としての各ヘアカーラー(ケラチン繊維が毛髪である場合)上に配置してもよい。言い換えれば、ヘアカーラーのそれぞれ(2つ以上のヘアカーラーを使用する場合)を、コーティング手段により個々に覆ってもよい。ステップb)においてケラチン繊維上に適用してある組成物の頭皮への漏出を防止できるため、各ヘアカーラーを覆うことは有利である。
【0119】
別の好ましい実施形態では、コーティング手段は、全てのヘアカーラー(2つ以上のヘアカーラーを使用する場合)を覆ってもよい。言い換えれば、コーティング手段は、頭部(ケラチン繊維が毛髪である場合)の全体を覆ってもよい。
【0120】
有利には、ステップd)において形成される閉塞空間は、ステップe)の間、維持されてもよい。言い換えれば、コーティング手段は、ステップe)の後、又は、ステップe)における加熱を中止した後にのみ取り外してもよい。
【0121】
必要に応じ、本組成物は、機械的張力をケラチン繊維に加える前にケラチン繊維に適用してもよい。ケラチン繊維は、必要に応じ、機械的張力をケラチン繊維に加える前及び/又は後、前述の組成物をケラチン繊維に適用する前及び/又は後、並びに、ケラチン繊維を加熱する前及び/又は後に、特定の長さの時間にわたり、そのままの状態で放置することができると考えられる。
【0122】
前述のステップe)の後、必要に応じ、ケラチン繊維は、コーティング手段から取り出した後で酸化により固定させてもよい。
【0123】
(製品)
本発明は、更に、閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含み、
還元剤も、式:
【0124】
【化17】

【0125】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物に関する。
【0126】
この組成物は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形において使用される酸化剤と組み合わせて使用する必要はないと考えられる。したがって、ケラチン繊維をパーマネント変形する場合には、該組成物は1ステップで使用してもよいが、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形においては、2ステップ(還元ステップ及び酸化ステップ)が必要である。
【0127】
この組成物は、前述の組成物と同じ技術的特徴を有してもよい。
【0128】
本発明は、更に、ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
ケラチン繊維に機械的張力を与えるための少なくとも1つの再成形手段、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、及び
該閉塞空間中で該ケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器
を備える装置と、
少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含み、
還元剤も、式:
【0129】
【化18】

【0130】
(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キットに関する。
【0131】
キット中のコーティング手段及び加熱器並びに組成物は、前述したものと同じであってもよい。
【0132】
(実施例)
本発明を、実施例により、更に詳細に記載することとするが、この実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0133】
組成物1
表1に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物1」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【0134】
【表1】

【0135】
(実施例1)
組成物1を、1.7cmの加熱パーマローラーに予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1g上に5分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムによって覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法の後、毛髪をすすぎ、パーマローラーから外して、乾燥させた。
【0136】
毛髪は、柔軟で、もつれがなく、滑らかであった(比較例1における毛髪よりも滑らかであった)。
【0137】
(比較例1)
組成物1を、1gの天然の日本人の毛髪束(実施例1で使用したものと同じであった)上に5分間適用した。この毛髪を、加熱せずに5分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【0138】
毛髪は、処理前よりもわずかに滑らかであった。しかし、このわずかな美容上の改善は、初回のシャンプー後に消失した。
【0139】
組成物2
表2に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物2」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
【0140】
【表2】

【0141】
(実施例2)
組成物2を、日本人の毛髪束1gに10分間適用した。次いで、毛髪を、プラスチックフィルムに包み、軟質の加熱フィルム(FTH-050、株式会社東京技術研究所製)により覆った。毛髪を閉塞条件下で90℃にて10分間加熱した。加熱ステップ後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【0142】
毛髪は、非常に柔軟で滑らかであった。
【0143】
(比較例2)
組成物2を、1gの日本人の毛髪束(実施例2で使用したものと同じであった)上に10分間適用した。毛髪を、加熱せずに10分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
【0144】
処理後に毛髪において特定の変化は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を処理する方法であって、
前記ケラチン繊維上に、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含む組成物を適用するステップと、
次いで、前記ケラチン繊維を閉塞空間中に配置するステップと、
次いで、前記ケラチン繊維を加熱するステップと
を含み、
前記組成物が、還元剤も、式:
【化1】

(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法。
【請求項2】
前記組成物を前記ケラチン繊維上に適用する前記ステップの後及び/又は前記ケラチン繊維を加熱する前記ステップの後に前記ケラチン繊維をすすぐステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケラチン繊維に機械的張力を与えるステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記閉塞空間が、少なくとも1つのコーティング手段により形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング手段が、硬質又は軟質である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング手段が、フィルム及びシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ケラチン繊維を加熱する前記ステップの間、前記ケラチン繊維が45℃から250℃で加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ケラチン繊維が、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザー及びフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを供給する少なくとも1つの加熱器により加熱される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング手段が前記加熱器を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カチオン性界面活性剤は、任意にポリオキシアルキレン化された一級、二級及び三級脂肪アミン、四級アンモニウム塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記四級アンモニウム塩は、
以下の一般式(V):
【化2】

[式中、
R1、R2、R3及びR4は、同一であっても異なっていてもよく、1個から30個の炭素原子を含む直鎖状及び分枝状の脂肪族基、及び芳香族基から選ばれ;X-は、ハロゲン化物、ホスファート、アセタート、ラクタート、(C2〜C6)アルキルスルファート、及びアルキル-スルホナート又はアルキルアリール-スルホナートから選ばれる]のもの;
イミダゾリンの四級アンモニウム塩;
式(VII):
【化3】

[式中、R9は、16個から30個の炭素原子を含む脂肪族基から選ばれ;R10、R11、R12、R13及びR14は、同一であっても異なっていてもよく、水素及び1個から4個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ;X-は、ハロゲン化物、アセタート、ホスファート、ニトラート、エチルスルファート及びメチルスルファートから選ばれる]のジ四級アンモニウム塩;及び
少なくとも1つのエステル官能基を含む四級アンモニウム塩
から選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イミダゾリンの四級アンモニウム塩が、以下の式(VI):
【化4】

[式中、
R5は、8個から30個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基から選ばれ;R6は、水素、C1〜C4アルキル基、並びに8個から30個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基から選ばれ;R7は、C1〜C4アルキル基から選ばれ;R8は、水素及びC1〜C4アルキル基から選ばれ;X-は、ハロゲン化物、ホスファート、アセタート、ラクタート、アルキルスルファート、アルキルスルホナート、及びアルキルアリールスルホナートから選ばれる]のものから選ばれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カチオン性界面活性剤が、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、クオタニウム-83、クオタニウム-87、クオタニウム-22、ベヘニルアミドプロピル-2,3-ジ-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド、パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及びステアラミドプロピルジメチルアミンからなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
閉塞空間中で加熱されるケラチン繊維を処理するための組成物であって、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含み、
還元剤も、式:
【化5】

(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物。
【請求項15】
ケラチン繊維を処理するためのキットであって、
閉塞空間を形成するための少なくとも1つのコーティング手段、及び
前記閉塞空間中で前記ケラチン繊維を加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える装置と、
少なくとも1つのカチオン性界面活性剤を含み、
還元剤も、式:
【化6】

(式中、
Xは、O-、OH、NH2、O-OH及びO-COO-からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、組成物と
を含む、キット。

【公表番号】特表2013−514267(P2013−514267A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528141(P2012−528141)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/JP2009/071727
【国際公開番号】WO2011/074137
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】