説明

ケース開閉機構

【課題】安価で、十分なシール性を実現できるケース開閉機構を実現する。
【解決手段】ケース本体の開口部に平面状の蓋体が取り付けられ、蓋体の開時に蓋体が水平方向に平行に移動された後にケース本体の開口部の鉛直方向の一方の端縁側を支点としてヒンジ状に蓋体が開かれるケース開閉機構において、ケース本体の開口部の鉛直方向の一方の端縁に取り付けられたヒンジ軸支持手段とヒンジ軸支持手段に両端が支持されケース本体の一方の端縁に対して所定距離を隔てて平行に鉛直方向に配置されたヒンジ軸とを有するケース側ヒンジ部材と、蓋体に水平方向に平行に取り付けられヒンジ軸と直交する少なくとも2個のガイド板と、ガイド板に蓋体側より蓋体に直交する方向に溝状に切り欠き形成されヒンジ軸が係合されて蓋体がケース本体より水平方向に平行に移動され溝終端部分においてヒンジ軸を中心にしてガイド板が回動されるヒンジ軸ガイド溝とを有する蓋体側ヒンジ部材とを具備したケース開閉機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース開閉機構に関するものである。
更に詳述すれば、安価で、十分なシール性を実現できるケース開閉機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は従来例の内圧防爆ケースにより構成された屋外事務処理装置を用いたLPG充填スタンドの一実施例を示す図、図10は従来例の内圧防爆ケースを使用した屋外事務処理装置の正面図、図11は従来例の内圧防爆ケースの蓋体とケース本体の当接領域を拡大して示す断面図、図12の(イ)、(ロ)は、それぞれ軸受け部近傍の構造を、蓋体をケース本体から取り外して示す正面図と断面図である。
【0003】
図9は従来例の内圧防爆ケースを屋外事務処理装置に適用した液化天然ガス供給スタンドの一実施例を示すものであって、図中符号1は、従来例の内圧防爆ケースを用いた屋外事務処理装置で、液化天然ガス充填装置2に隣接して立てられた支柱3上に設置され、事務所4等の非危険領域に設置されたエアポンプ5からパイプ6によりエアの供給を受け、また事務所4のPOS7や充填装置2と信号の授受が可能となるように信号線8で接続されている。
【0004】
図10は、従来例の内圧防爆ケースを用いて構成された制御装置の一実施例を示すものであって、図中符号10は、ケース本体11に蝶番により取付けられた蓋体で、表面には窓10a、10bを形成して、ここにタッチキー12、表示器13が設けられており、また下方にはプリンタ14の排紙領域に対向するように伝票排出用のスリット15が形成されている。
【0005】
蓋体10は周囲にフランジ16が形成されていて、一辺を後述する蝶番によりケース本体11に回動可能に取付けられ、4辺を錠締めボルト17により後述するケース本体11に固定されている。
【0006】
図11は、同上ケースの蓋体10とケース本体11との当接面近傍の構造を示す図であって、ケース本体11は、その4辺が内側に折り曲げられてパッキン当接部20が形成され、また外周には外側に突出するようにフランジが設けられ、内部に制御装置30やプリンタ14が設置されている。
【0007】
また設置されたとき鉛直となる辺の少なくとも2箇所には、図12(イ)に示したようにフランジ21の一部に切欠部21aを設け、設置されたとき上側が開放領域となるように取付け基板22を介して蝶番を構成する軸23が固定されている。
【0008】
再び図11に戻って、蓋体10は、その外周を外側に折り曲げてフランジ16が形成され、また内縁に沿ってケース本体11のパッキン当接部20に対向する位置に固定枠24を介してゴム等の断面矩形のパッキン25が交換可能に取付けられており、前記基板22に一致する位置に蓋面に垂直な方向が長手方向となる蝶番を形成する長孔からなる軸受け26が固定枠24を延長して形成された固定部24aに固定されている。
【0009】
この実施例において、ケース本体11に制御装置30やプリンタ14を設置し、また蓋体10にタッチキー12や表示器13を取付け、蓋体10を持ち上げて軸受け26の長孔を、ケース本体11の軸23に挿通して手を放すと、軸受け26が基板22と軸23とに支持される。そして制御装置30とタッチキー12、表示器13とをケーブル31のコネクタ32、33により接続する。
【0010】
組立が終了した段階で、蓋体10を回動させると、軸受け26と軸23とからなる蝶番を介して蓋体10がケース本体11の開口を封止するので、錠締めボルト17により要所を締めると、蓋体10が軸受け26の奥方向に延びる長孔により軸23に係合しているから、回転運動を伴うことなくケース本体側に垂直に移動させることができ、パッキン24全体が開口部に垂直に押圧されて、均一に圧縮されて気密状態が確保できる。
【0011】
メンテナンスが必要となった時点で、錠締めボルト17を外すと、軸23を中心にして蓋体10を回動させて開放できる。そして長年月の使用によりパッキン25が損傷した場合には、コネクタ33を外して蓋体10を若干持ち上げて軸受け26を軸23から取り外すと、蓋体10がケース本体11から分離するから、蓋体10に取付けられているパッキン25を取り外して新しいものに取り替え、前述と同様の手順で蓋体10をケース本体11に取付けて、またケーブル31を制御装置30に接続してから、錠締めを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−272600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような装置においては、以下の問題点がある。
複雑な機構、部品を有し、非常に高価になる。
部品数が多く、管理費や組立コストが上昇する。
ケース本体と蓋体とが分離する構造だと、現場での部品落下などの障害がある。また、タッチパネルなどの構造を持たせることができない。
【0014】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、安価で、十分なシール性を実現できるケース開閉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1のケース開閉機構においては、
ケース本体の開口部に平面状の蓋体が取り付けられ、蓋体の開時に、蓋体が水平方向に平行に移動された後に、前記ケース本体の開口部の鉛直方向の一方の端縁側を支点としてヒンジ状に蓋体が開かれるケース開閉機構において、前記ケース本体の開口部の鉛直方向の一方の端縁に取り付けられたヒンジ軸支持手段とこのヒンジ軸支持手段に両端が支持され前記ケース本体の前記一方の端縁に対して所定距離を隔てて平行に鉛直方向に配置されたヒンジ軸とを有するケース側ヒンジ部材と、前記蓋体に水平方向に平行に取り付けられ前記ヒンジ軸と直交する少なくとも2個のガイド板と、このガイド板に前記蓋体側より前記蓋体に直交する方向に溝状に切り欠き形成され前記ヒンジ軸が係合されて前記蓋体が前記ケース本体より水平方向に平行に移動され溝終端部分において前記ヒンジ軸を中心にして前記ガイド板が回動されるヒンジ軸ガイド溝とを有する蓋体側ヒンジ部材と、を具備したことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項2のケース開閉機構においては、請求項1記載のケース開閉機構において、
前記ヒンジ軸支持手段は、前記ケース本体に前記蓋体に平行に鉛直方向に取り付けられた板状の底部と、この底部の両端にそれぞれ一方の端縁が接続され前記蓋体に直交し水平方向に平行に設けられた板状の側部とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項3のケース開閉機構においては、請求項1又は請求項2記載のケース開閉機構において、
前記ガイド板の前記ケース本体側の端縁を互いに接続する接続板を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
複雑な機構が無く、簡潔に構成されているので、部品点数の削減など、コストが低減できて安価なケース開閉機構が得られる。
水平運動の可動幅が容易に得られるので、ケース本体と蓋体との間のガスケットの縮み量が確保でき、十分なシール性を実現できるケース開閉機構が得られる。
【0019】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
ヒンジ軸支持手段は、ケース本体に蓋体に平行に鉛直方向に取り付けられた板状の底部と、この底部の両端にそれぞれ一方の端縁が接続され蓋体に直交し水平方向に平行に設けられた板状の側部とを有するので、板金プレス工程により、安価容易に製作出来、安価なケース開閉機構が得られる。
【0020】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
ガイド板のケース本体側の端縁を互いに接続する接続板が設けられたので、蓋体のヒンジ状の回動動作時に負荷が掛かる部分が強化できるので、動作の信頼性が向上できるケース開閉機構が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の蓋体を開いた状態を示す斜視説明図である。
【図3】図2の分解説明図である。
【図4】図2の部品説明図である。
【図5】図2の部品説明図である。
【図6】蓋体がケース本体に取り付けられた状態の要部詳細説明図である
【図7】図1の動作説明図である。
【図8】図1の動作説明図である。
【図9】従来例の内圧防爆ケースにより構成された屋外事務処理装置を用いたLPG充填スタンドの一実施例を示す図である。
【図10】従来例の内圧防爆ケースを使用した屋外事務処理装置の正面図である。
【図11】従来例の内圧防爆ケースの蓋体とケース本体の当接領域を拡大して示す断面図である。
【図12】図(イ)、(ロ)は、それぞれ軸受け部近傍の構造を、蓋体をケース本体から取り外して示す正面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は蓋体を開いた状態を示す斜視説明図、図3は図2の分解説明図、図4,図5は図2の部品説明図、図6は蓋体がケース本体に取り付けられた状態の要部詳細説明図、図7,図8は図1の動作説明図である。
【0023】
図1において蓋体42は、ケース本体41の四隅に、ねじ43を締め込むことでシール性を保っている。
この動作をするには、特に、例えば、耐圧防爆ケース等においては、シール性を十分に確保できるようにするために、ケース本体41と蓋体42とのシール面に対し蓋体42が5mm〜10mm程度、矢印Aに示す如く、水平方向に動くことが出来る必要がある。
【0024】
図2に蓋を開けた状態の図を示す。本発明のケース開閉機構により図1に示すような水平運動と、蓋体のヒンジ状の開閉運動を実現する。
図2〜図6において、ケース側ヒンジ部材44は、ヒンジ軸支持手段45とヒンジ軸46とを有する。
【0025】
ヒンジ軸支持手段45は、ケース本体41の開口部の鉛直方向の一方の端縁に取り付けられている。
この場合は、ヒンジ軸支持手段45は、板状の底部451と板状の側部452とを有しコの字状をなす。
【0026】
底部451は、ケース本体41に、蓋体42に平行に鉛直方向に取り付けられ板状をなす。
側部452は、の底部451の両端に、それぞれ一方の端縁が接続され、蓋体42に直交し水平方向に平行に設けられている。
ヒンジ軸46は、ヒンジ軸支持手段45に両端が支持され、ケース本体41の一方の端縁に対して、所定距離を隔てて平行に鉛直方向に配置されている。
【0027】
蓋体側ヒンジ部材47は、ガイド板48とヒンジ軸ガイド溝49とを有する。
ガイド板48は、蓋体42に水平方向に平行に取り付けられ、ヒンジ軸46と直交するし、少なくとも2個を有する。
この場合は、ガイド板48のケース本体41の側の端縁を互いに接続する接続板51を有する。
【0028】
ヒンジ軸ガイド溝49は、ガイド板48に、蓋体42の側より、蓋体42に直交する方向に溝状に切り欠き形成され、ヒンジ軸46が係合されて、蓋体42がケース本体41より水平方向に平行に移動され、溝終端部分491においてヒンジ軸46を中心にしてガイド板48が回動できる。
52は、ガイド板48を蓋体42に取付ける取付部である。
【0029】
61は、ケース本体41と蓋体42とのシール面をシールするシールガスケットである。
この場合は、蓋体42に取り付けられている。
シールガスケット61とケース本体41のシール面とが、ねじ43の締め込みにより密着し、ケース本体41と蓋体42との間のシール性を確保する。
【0030】
以上の構成において、ケース本体41から蓋体42を開くには、蓋体42を図7の矢印Bに示す如く、水平方向に移動し、図8の矢印Cに示す如く、回動する。
【0031】
この結果、
複雑な機構が無く、簡潔に構成されているので、部品点数の削減など、コストが低減できて安価なケース開閉機構が得られる。
水平運動の可動幅が容易に得られるので、ケース本体41と蓋体42との間のガスケット61の縮み量が確保でき、十分なシール性を実現できるケース開閉機構が得られる。
【0032】
ヒンジ軸支持手段45は、ケース本体41に、蓋体42に平行に、鉛直方向に取り付けられた板状の底部451と、この底部451の両端にそれぞれ一方の端縁が接続され蓋体42に直交し、水平方向に平行に設けられた板状の側部452とを有するので、板金プレス工程により、安価容易に製作出来、安価なケース開閉機構が得られる。
【0033】
ガイド板48のケース本体41側の端縁を互いに接続する接続板51が設けられたので、蓋体42のヒンジ状の回動動作時に、負荷が掛かる部分が強化できるので、動作の信頼性が向上できるケース開閉機構が得られる。
【0034】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【符号の説明】
【0035】
41 ケース本体
42 蓋体
43 ねじ
44 ケース側ヒンジ部材
45 ヒンジ軸支持手段
451 底部
452 側部
46 ヒンジ軸
47 蓋体側ヒンジ部材
48 ガイド板
49 ヒンジ軸ガイド溝
491 終端部分
51 接続板
52 取付部
61 シールガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体の開口部に平面状の蓋体が取り付けられ、蓋体の開時に、蓋体が水平方向に平行に移動された後に、前記ケース本体の開口部の鉛直方向の一方の端縁側を支点としてヒンジ状に蓋体が開かれるケース開閉機構において、
前記ケース本体の開口部の鉛直方向の一方の端縁に取り付けられたヒンジ軸支持手段と
このヒンジ軸支持手段に両端が支持され前記ケース本体の前記一方の端縁に対して所定距離を隔てて平行に鉛直方向に配置されたヒンジ軸と
を有するケース側ヒンジ部材と、
前記蓋体に水平方向に平行に取り付けられ前記ヒンジ軸と直交する少なくとも2個のガイド板と、
このガイド板に前記蓋体側より前記蓋体に直交する方向に溝状に切り欠き形成され前記ヒンジ軸が係合されて前記蓋体が前記ケース本体より水平方向に平行に移動され溝終端部分において前記ヒンジ軸を中心にして前記ガイド板が回動されるヒンジ軸ガイド溝と
を有する蓋体側ヒンジ部材と、
を具備したことを特徴とするケース開閉機構。
【請求項2】
前記ヒンジ軸支持手段は、前記ケース本体に前記蓋体に平行に鉛直方向に取り付けられた板状の底部と、
この底部の両端にそれぞれ一方の端縁が接続され前記蓋体に直交し水平方向に平行に設けられた板状の側部と
を有すること
を特徴とする請求項1記載のケース開閉機構。
【請求項3】
前記ガイド板の前記ケース本体側の端縁を互いに接続する接続板
を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項2の何れかに記載のケース開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−249638(P2011−249638A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122444(P2010−122444)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】