説明

ケーブルを取り付けるための装置及び方法

【課題】取付け作業の費用対効果及び時間対効果を高め、かつより安全にするような、ケーブル取付けのための改良された装置及び改良された方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのケーブル1,2が縦長構造4に取り付けられており、縦長構造4が、ケーブル1,2の引張荷重を吸収するように構成されている形式のものにおいて、縦長構造4が、構造物に関して位置決めされる際に、構造物の障害物のところでケーブル1,2とともに曲げられるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを取り付けるための配列、及び配列に固定されたケーブルを取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途のためのケーブルは、立て坑、トンネル、ダクト、塔又は風車タワーのような長い範囲を有する構造物に取り付けられる。ケーブルは、構造物の一方の端部から他方の端部まで、例えば風車のナセルから風車タワーの基部まで延びている。
【0003】
ケーブルは、電気エネルギの伝達又はデータ伝送、例えば測定値の伝達又は制御信号又は調節信号の伝達のために使用される。ケーブルは、銅ケーブル、アルミニウムケーブル、光ファイバケーブル、又は同様のものである。
【0004】
このような構造物にケーブルを取り付けるための様々な方法が知られている。
【0005】
ケーブルクランプによってケーブルを固定することが知られている。ケーブルクランプは好適には横方向支持バーに配置されている。支持バーは、構造物壁部、又は構造物における適切な構造体に取り付けられる。
【0006】
支持バーは、構造物の長手方向範囲に沿って、多かれ少なかれ互いに等しい間隔を置いて、構造物に結合されている。
【0007】
縄ばしご又はケーブルトレーをこの目的のために使用することもできる。
【0008】
構造物が構築若しくは建設された後、支持バー、縄ばしご、ケーブルトレー、又は同様の物が、構造物と結合される。
【0009】
取付けの間、一つのケーブル又はケーブルの束が、例えばタワーの開口を通じて風車タワー内へ搬入される。一つのケーブル又はケーブルの束は、巻上げ装置又は同様のものを用いることによってタワー内へ引き上げられる。
【0010】
その後、それぞれのケーブルを一つずつ、その長さに沿って固定する必要があり、これにより、取付けは時間がかかるものである。
【0011】
ケーブルは、タワー内に引き上げられる時に自重を支持しなければならない。ケーブルが長く、ケーブルが、作業中に所定の距離に亘って自由に吊り下げられるならば、取付け作業の間のケーブル損傷を防止する必要がある。つまり、ケーブルの自由な全長が制限される。
【0012】
1つ又は複数のケーブルは、タワー内の支持構造に1つずつ又はグループごとに固定される。ケーブルは、干渉を防止するために所定の場所に固定される。ケーブルは、固定手段を用いて、例えばケーブルクランプ又はケーブルストリップを使用することによって固定される。ケーブルは、25cm〜50cmおきに位置決めされる必要があり、これにより、多くの高価な取付け材料が必要とされる。付加的に、ケーブル及び取付け材料を取り付けるために多くの取付け時間が必要とされる。
【0013】
固定作業は、タワーの全長に沿って様々な高さにおいて行われなければならない。これにより、作業は作業員にとって危険である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の課題は、固定作業の費用対効果及び時間対効果を高め、かつより安全にするような、ケーブル取付けのための改良された配列及び改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、独立請求項に係る装置及び方法によって達成される。発明の好適な構成は、従属請求項の対象である。
【0016】
本発明によれば、少なくとも1つのケーブルは縦長構造に固定される。縦長構造はケーブルの引張荷重を吸収するように構成されている。縦長構造は、縦長構造及びケーブルが構造物に関して位置決めされながら構造物の障害物のところでケーブルと共に曲がるように構成されている。
【0017】
本発明は、タワー、トンネル、風車、立て坑、ダクト、塔のような全ての構造物に関する。
【0018】
本発明は、好適には風車のタワーに関するが、これは、請求の範囲に記載された発明の範囲を制限しない。
【0019】
本発明によれば、縦長構造は、縦長構造に固定された少なくとも1つのケーブルの引張荷重を引き受けることができる。それと同時に、縦長構造は柔軟である。つまり、ケーブルが縦長構造に固定された後に、配列を構造体内へ搬入することができる。必要であれば、配列を曲り目のところで湾曲させることができる。
【0020】
好適には、配列は、例えばタワーの上端部の近くで構造体に固定される。これにより、配列は、配列がケーブルの引張荷重を引き受けながら、構造体に固定される。
【0021】
少なくとも1つのケーブル及び縦長構造は、必要であればほぼ同じ曲げ半径で湾曲させられるように構成及び配置されている。つまり、ケーブルと縦長構造との間の移動補償は不要である。
【0022】
好適には、ワイヤロープが縦長構造として使用される。これにより、ワイヤロープは、ワイヤロープの構造が曲げ移動を許容しながら、ケーブルの自重を引き受ける。
【0023】
好適には、縦長構造は縄ばしごである。これにより、配列の全体的な安定性が高められる。配列の構造的な幅は、必要とされるケーブルの数に応じて変更することができる。
【0024】
好適には、ケーブルは、ケーブルクランプ又はケーブルストリップによってはしごの横木又ははしごの横桁と結合されている。そのおかげで、人員は作業中にはしごを登り、自分をはしごに固定することができる。
【0025】
好適には、固定手段は、支持構造の一部分である。支持構造は、ケーブルを縦長構造に結合するように構成されている。支持構造は、縦長構造を構造物に結合するように構成されている。
【0026】
好適には、配列は、構造物、例えば壁部への縦長構造の固定のための付加的なブラケット又は締結具を含んでいる。これにより、配列の振動又は自由移動が防止される。
【0027】
縦長構造は、ケーブルがタワーの上端部へ巻き上げられた後に、構造物に固定される。これにより、縦長構造は、縦長構造に取り付けられたケーブルの重量を支持する。
【0028】
配列は、構造体内の所定の箇所、すなわちタワー壁部に、及び必要であれば長手方向の延びに沿った1つ又は2つの箇所において固定される。これにより、ケーブルが取り付けられた縦長構造の望ましくない振動又は移動が防止される。
【0029】
配列を固定するために、僅か数カ所の取付けが必要とされる。これにより、取付け時間が短縮される。取付け材料の量も減じられる。
【0030】
好適には、縦長構造及びケーブルは、構造体の移動、例えば回転移動又は熱膨張を補償するために、ループ、円、又は半円として配置されている。
【0031】
ループは、好適には、風車のナセルの上部に又はその近くに配置されている。これにより、ループは、そこにケーブルが結合されているにもかかわらず、ナセルの移動又は揺動を許容する。ケーブルにおける応力を緩和するために配列がケーブルの重量を支持している間、ケーブルは損傷されない。
【0032】
好適には、発明された配列は、ケーブルを風車タワーに取り付けるために使用される。
【0033】
好適には、配列全体が構造体、すなわち風車タワーに位置決めされる前にケーブルが縦長構造に固定される。
【0034】
縦長構造へのケーブルの固定は、好適には地上で行われる。これにより、作業は、従来技術と比べてより安全で、より迅速で、より安価であることができる。
【0035】
好適には、ケーブルは、タワーの基部領域に近くで縦長構造に固定されている。これにより、潜在的な危険な高さでの作業が回避される。
【0036】
好適には、ケーブルは、タワーの外部で縦長構造に固定される。これにより、ケーブルの固定作業はタワーの制限された空間に制限されない。
【0037】
好適には、ケーブルは、現場外で、すなわち工場で縦長構造に固定される。全体配列は、予め組み立てられた配列として風車現場へ搬送される。つまり、現場での取付け時間が短縮される。
【0038】
好適には、配列全体は、ケーブルドラムに巻き取られる。縦長構造及び縦長構造に固定されたケーブルは、出入口のような開口を通じて、主として水平にタワー内へ引き込まれる。
【0039】
縦長構造及び結合されたケーブルは、主として鉛直方向にタワー内で引き上げられる。これにより、縦長構造及びケーブルは、引き上げられる間に、曲り目又はあらゆるその他の障害物のところで連続的に湾曲させられることができる。
【0040】
好適には、配列は、トンネル又は同様のものに取り付けられる。配列の構成部材は、上述のように、開口を通じてトンネルに運び込まれる。配列は、トンネルの内部に沿って、すなわち水平に引っ張られる一方で、縦長構造及びケーブルは、存在する曲り目又はその他の障害物のところで連続的に湾曲させられることができる。
【0041】
好適には、配列は、配列の長手方向に沿って50cmおきに固定されている。間隔は、50cm〜3mで変化してよい。
【0042】
好適には、縦長構造は、その端部の近くで、構造体(壁部)に固定される。
【0043】
好適には、縦長構造は、長手方向で所定の張力を生じるように取り付けられている。これにより、縦長構造の横断方向若しくは横方向の移動が制限される。
【0044】
本発明によれば、縦長構造は、縦長構造に固定された少なくとも1つのケーブルの引張荷重を支持することができ、これにより、縦長構造は、配列の取付けの間、ケーブルからその自重を軽減している。
【0045】
好適には、ケーブルは、縦長構造に、複数の箇所で、好適にはケーブルに沿って25cm〜50cmの間隔で固定されている。
【0046】
本発明の利点の一つは、タワー壁部に沿って、タワー壁部のフランジを超えて延びた、ケーブルトレー又は同様のもののタワーにおける取付けが不要であるということである。時間、ひいては取付けコストは、最小限に抑えられる。取付け作業も最小限に抑えられるので、危険な高さにおける作業の危険性が減じられる。
【0047】
配列は、一回のステップにおいてタワー内で引き上げることができる。これは、建設時間を節約し、取付けコストの低減につながる。
【0048】
発明は、図面を用いてより詳細に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】鉛直方向に互いに並んで延びた複数のケーブルを示す図である。
【図2】図1に示された配列を示す側面図である。
【図3】配列の取付けの間の状況を示す図である。
【図4】配列がタワーの中に取り付けられた最終的な状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、鉛直方向で互いに並んで延びた複数のケーブルを示している。ケーブルは、電力のためのケーブル1、及び例えばデータ通信のためのその他のケーブル2である。ケーブルは、規則的な間隔で支持構造3若しくは支持バー3に取り付けられている。前記間隔は、例えば25cm〜50cmで変化することができる。支持バーがワイヤロープ4に取り付けられている。ワイヤロープ4は、1つの支持バーから次の支持バーへ延びており、これによって、支持バーはそのワイヤロープを介して結合されている。
【0051】
支持バーのうちの1つには、ブラケット又はストラップ5が設けられている。ブラケット又はストラップ5は、構造体内での、例えば風車タワー内におけるタワー壁部への水平の固定のために使用される。
【0052】
図2は、図1に示した配列の側面図を示している。図2は、支持構造3に固定されたケーブル1,2、及び支持構造を互いに結合するワイヤロープ4を示している。タワー6の壁部が配列に隣接して示されている。支持構造のうちの1つには、配列と風車タワーの壁部との間の結合のための手段としてブラケット若しくはストラップ5が設けられている。
【0053】
図3は、配列7の取付けの間の状況を示している。ケーブルは縦長構造に予め取り付けられ、配列は次いでケーブルドラム8に保管される。図は、タワー9の外部におけるケーブルドラムを示している。配列を備えたケーブルは、出入口を通じてタワー内へ案内され、タワーの底部における曲り目のところで湾曲させられ、タワー内を上部まで上方へ導かれる。上部にはプーリ10が示されている。プーリ10は、タワー内での配列7の引上げを補助する。縦長構造がタワー内で引き上げられる時、配列は、ケーブルドラムから繰り出され、出入口11を通じて引き込まれ、曲り目のところで湾曲させられ、タワー内で引き上げられる。この時、縦長構造は、ケーブルの自重を支持する。次いで、配列は、ブラケット又はストラップを用いて、長手方向に沿った幾つかの箇所において、タワーの壁部に固定される。
【0054】
図4は、配列7がタワー内に取り付けられた最終的な状況を示している。ケーブルは、タワー内で底部から上部へ主として鉛直方向に導かれ、上部12においては例えばナセルに、底部13においては例えば発電ユニット、変圧器ユニット、又は送電網に接続される。
【符号の説明】
【0055】
1,2 ケーブル、 3 支持構造、 4 ワイヤロープ、 5 ブラケット又はストラップ、 6 タワー、 7 配列、 8 ケーブルドラム、 9 タワー、 10 プーリ、 11 出入口、 12 上部、 13 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを取り付けるための配列(7)であって、
少なくとも1つのケーブル(1,2)が縦長構造(4)に固定されており、
該縦長構造(4)が、ケーブル(1,2)の引張荷重を吸収するように構成されている形式のものにおいて、
縦長構造(4)が、該縦長構造及びケーブルが構造物に関して位置決めされながら、構造物の障害物のところでケーブル(1,2)と共に曲げられるように構成されていることを特徴とする、ケーブルとを取り付けるための配列。
【請求項2】
前記縦長構造(4)が、ケーブルを縦長構造に結合するための固定手段を有する、請求項1記載の配列。
【請求項3】
前記縦長構造(4)が、縦長構造を構造物(6)に結合するための固定手段(5)を有する、請求項1又は2記載の配列。
【請求項4】
前記固定手段が、クランプ、ストリップ、ケーブルファスナ、ロープ、ストラップ、又はブラケットである、請求項2又は3記載の配列。
【請求項5】
前記縦長構造(4)が、ワイヤロープである、請求項1記載の配列。
【請求項6】
前記縦長構造が、縄ばしごであり、
前記ケーブルが、前記縄ばしごの横木(3)若しくは前記縄ばしごの横桁に結合されている、請求項1記載の配列。
【請求項7】
前記固定手段が、支持構造の一部分であり、
該支持構造が、ケーブルを縦長構造(4)に結合するように構成されており、かつ/又は
前記支持構造が、縦長構造を構造物(6)に結合するように構成されている、請求項2記載の配列。
【請求項8】
前記固定手段が、支持構造(3)の一体化された部分である、請求項7記載の配列。
【請求項9】
前記縦長構造(4)及び前記ケーブルが、構造物の運動を吸収するために、ループ、円、又は半円として配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の配列。
【請求項10】
前記構造物が、タワー、トンネル、塔、又は立て坑である、請求項1から9までのいずれか1項記載の配列。
【請求項11】
前記構造物が、風車タワーである、請求項1から10までのいずれか1項記載の配列。
【請求項12】
前記縦長構造及び前記ケーブルが、構造物(6)の内壁に位置決めされている、請求項1から11までのいずれか1項記載の配列。
【請求項13】
前記縦長構造及び前記ケーブルが、前記構造物(6)の外壁に位置決めされている、請求項1から12までのいずれか1項記載の配列。
【請求項14】
風車タワーにケーブルを取り付けるための、請求項1から13までのいずれか1項記載の配列の使用。
【請求項15】
ケーブルを取り付ける方法において、
少なくとも1つのケーブルを、該ケーブルの引張荷重を吸収するように構成された縦長構造に固定し、
縦長構造及びケーブルを構造物に関して位置決めしながら、縦長構造を、ケーブルと共に、構造物の障害物のところで曲げることを特徴とする、ケーブルを取り付ける方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−239374(P2012−239374A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−101598(P2012−101598)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】