説明

ケーブルコネクタの実装構造

【課題】ケーブルコネクタの装着方向を任意に設定可能とする。
【解決手段】ピンヘッダー3から突出するピンコンタクト4とケーブル5に装着されたソケットコンタクト2とがピンヘッダー3の上部に配設されるハウジング1に形成された勘合口(貫通部)1aに両側から挿入されて接続される。勘合口1aはソケットコンタクト2が挿入されるソケットコンタクト挿入部8と、ピンコンタクト4が挿入されるピンコンタクト挿入部8とを備えている。ピンコンタクト挿入部8には、水平方向に伸びてハウジング1の側方に連通する開口部8aが形成されている。この開口部8aはハウジング1の側方から連続して下方にも連通していて、ハウジング1の底部1cと側部1dが開口されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルコネクタの実装構造に関するものであり、特に複数の方向に実装可能なケーブルコネクタの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の電気部品,電気装置あるいは電子機器間の電気的な接続にケーブル配線が用いられており、この接続にケーブルコネクタが用いられている。
ケーブルコネクタには、電気部品,電気装置あるいは電子機器の実装形態や、配線ルーティングによって、任意のピンヘッダーを選択されている。
例えば、図7に示すようなピン13aが直線状のストレートピンヘッダー13を使用することで、ハウジング12をストレートピンヘッダー13の上方から装着することができ、また、図8に示すようなピン14aが所定の角度で曲がったアングルピンヘッダー14を使用することでハウジング12をアングルピンヘッダー14の側方から装着することができる。
また、特許文献1には、一つの方向に突出する出力端子(ピン)とその方向に直交する方向に突出する出力端子とを備えるコネクタ(ピンヘッダー)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−136889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のケーブルコネクタの実装では、採用するピンヘッダーによってその装着方向が限定されてしまい、電気部品,電気装置あるいは電子機器の実装形態や配線ルーティング等によって装着方向を任意に設定することはできなかった。特に、共通の電子機器ユニットやボードを実装方式の異なる複数の電子機器に実装する場合において、ケーブルコネクタの装着方向が限定されることは共通設計の妨げとなっていた。
また、特許文献1によるピンヘッダーでは、装着されているケーブルコネクタの装着方向を変更する場合には、ケーブルを一方のピンからそのピンに直交する方向のピンに付け替える作業が必要となり、容易に行うことができなかった。また、2方向のピンを備えるため、使用されないピンが生じることになり不経済である。
【0005】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたもので、ケーブルコネクタの装着方向を任意に設定可能なケーブルコネクタの実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るケーブルコネクタの実装構造は、ピンヘッダーから突出するピンコンタクトとケーブルに装着されたソケットコンタクトとが前記ピンヘッダーの上部に配設されるハウジングに形成された貫通部に両側から挿入されて接続されるケーブルコネクタの実装構造であって、前記貫通部は前記ピンコンタクトが挿入されるピンコンタクト挿入部を備え、前記ピンコンタクト挿入部は、互いに直交する2方向に連続する空間であって前記ハウジングの外部に連通しており、前記ピンコンタクトは前記2方向間のいずれの方向からでも前記ハウジングに挿入可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハウジングに設けられた貫通部のピンコンタクト挿入部は、互いに直交する2方向に連続する空間であってハウジングの外部に連通しており、ピンコンタクトは2方向間のいずれの方向からでもハウジングに挿入可能であることことにより、ハウジングとピンコンタクトとの設置方向が限定されないので、電気部品,電気装置あるいは電子機器の実装形態や配線ルーティング等によって装着方向を任意に設定することができるケーブルコネクタの実装構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態によるケーブルコネクタの実装構造の一例を示す分解斜視図である。
【図2】ハウジングが鉛直状態のケーブルコネクタの実装構造を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】ハウジングが水平状態のケーブルコネクタの実装構造を示す斜視図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】突起部と凹部との関係を示す図で、図2のC−C線断面図である。
【図7】従来のケーブルコネクタの実装構造を示す図である。
【図8】従来の他のケーブルコネクタの実装構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態によるケーブルコネクタの実装構造について、図1乃至図6に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施の形態によるケーブルコネクタの実装構造では、ピンヘッダー3から突出するピンコンタクト4とケーブル5に装着されたソケットコンタクト2とがピンヘッダー3の上部に配設されるハウジング1に形成された勘合口(貫通部)1aに両側から挿入されて電気的に接続されている。本実施の形態では、図における矢印Aの方向を上下方向または鉛直方向とし、これに直交する方向を水平方向として以下説明する。
【0010】
ハウジング1は、底部1cが下側に凸に湾曲する半円筒面状に形成されていて、勘合口1aが上下方向に貫通している。勘合口1aは、上部側のソケットコンタクト2が挿入されるソケットコンタクト挿入部7と下部側のピンコンタクト4が挿入されるピンコンタクト挿入部8とから構成される。
ピンコンタクト挿入部8には、水平方向に伸びてハウジング1の側方に連通する開口部8aが形成されている。この開口部8aはハウジング1の側方から連続して下方にも連通していて、ハウジング1の底部1cと側部1dが開口されている。
【0011】
ソケットコンタクト2は、ピンコンタクト4を挟持する二枚バネの摺動バネ構造をしており、二枚バネを構成する二枚の板部材2bにはそれぞればねの変形方向に突出する突起部2aが設けられている。
【0012】
ピンヘッダー3は、上面が平面状である平板部3aと部分円筒面状である湾曲部3bとからなる。平板部3aおよび湾曲部3bの上面は連続している。
湾曲部3bはハウジング1の底部1cの半円筒面と同じまたは略同じ半径の円弧状に形成されており、下側に凹に湾曲している。
【0013】
ピンコンタクト4は、ピンヘッダー3の上部から突出しており平板状に形成されている。ピンコンタクト4とソケットコンタクト2とが電気的に接続される際には、ピンコンタクト4の両面をソケットコンタクト2が挟持している。
ピンコンタクト4には、両面にそれぞれ第一の凹部4aおよび第二の凹部4bが形成されている。この第一の凹部4a、第二の凹部4bのいずれかに、ソケットコンタクト2の突起部2aが挿入される。
【0014】
本実施の形態によるケーブルコネクタの実装構造では、図2および図3に示すように、ハウジング1は、ソケットコンタクト挿入部7がピンコンタクト挿入部8(図3参照)の上側となる向きで、ピンヘッダー3の上面に配設することができる。
また、図2および図3に示す向き配設されたハウジング1を90°回転させ、図4および図5に示すように、ピンコンタクト挿入部8の開口部8a(図5参照)が下側となる向きでピンヘッダー3の上面に配設することもできる。
ここで、ハウジング1は、図2および図3のように配設された状態を鉛直状態とし、図4および図5のように配設された状態を水平状態として以下説明する。
【0015】
図3に示すように、ハウジング1が鉛直状態のケーブルコネクタの実装構造では、ソケットコンタクト挿入部7に上方からソケットコンタクト2が挿入されて、ピンコンタクト挿入部8に下方からピンコンタクト4が挿入されている。
ハウジング1は、底部1cの一部がピンヘッダー3の湾曲部3bと接している。
このとき、図6に示すように、ソケットコンタクト2はピンコンタクト4を挟持しており、突起部2aは第一の凹部4aに挿入されている。第一の凹部4aに突起部2aが挿入されると、ソケットコンタクト2とピンコンタクト4とは、ロックされた状態となり相対的に変位することが抑制される。
【0016】
また、図5に示すように、ハウジング1が水平状態のケーブルコネクタの実装構造では、ソケットコンタクト挿入部7に側方からソケットコンタクト2が挿入されて、ピンコンタクト挿入部8にハウジング1の下部側に位置する開口部8aを通してピンコンタクト4が挿入されている。
ハウジング1は、鉛直状態において下側に位置していた底部1cが側方に位置し、この底部1cの一部がピンヘッダー3の湾曲部3bと接し、側部1dがピンヘッダー3の平板部3aと接している。
ている。
このとき、ソケットコンタクト2はピンコンタクト4を挟持しており、突起部2aは第二の凹部4bに挿入されている。第二の凹部4bに突起部2aが挿入された場合も同様にソケットコンタクト2とピンコンタクト4とは相対的に変位することが抑制される。
【0017】
次に、鉛直状態のハウジング1を水平状態とする動作について説明する。
図2および図3に示す鉛直状態のハウジング1を仮想回転軸6を中心として矢印Dの方向に90°回転させる。このときハウジング1の底部1cはピンヘッダー3の湾曲部3bに沿って回転する。
ハウジング1の底部1cとピンヘッダー3の湾曲部3bとは接触していて、互いに回転可能な同じまたは略同じ半径の円弧状に形成されていることにより、ピンヘッダー3上でハウジング1の回転が行い易い。
そして、図4および図5に示すように、水平状態となったハウジング1は、側部1dがピンヘッダー3の上面に接し、開口部8a(図5参照)が下部側となる。ピンコンタクト4は、開口部8aからピンコンタクト挿入部8に挿入されソケットコンタクト2と接続される。
【0018】
このとき、ソケットコンタクト2はハウジング1と共に回転することにより、突起部2aがピンコンタクト4の第一の凹部4aから第二の凹部4bに移動する。
そして、突起部2aおよび第一、第二の凹部4a、4bを仮想回転軸6上に設けないことにより、ソケットコンタクト2とピンコンタクト4とが接続された状態で矢印Dの方向に互いに回転することを防ぐことができる。
水平状態のハウジング1を鉛直状態にする場合には、矢印Dと逆方向に回転させることで鉛直状態とすることができる。
【0019】
次に、上述した実装構造のケーブルコネクタの設置方法について図面を用いて説明する。
図2および図3に示すように、ハウジング1が鉛直状態となるように実装する場合には、まず、ソケットコンタクト挿入部7にソケットコンタクト2を挿入する。
そして、ハウジング1を底部1cが下側となる向きでピンヘッダー3の上部に配設し、ピンコンタクト挿入部8にハウジング1の底部1c側からピンコンタクト4を挿入させ、ソケットコンタクト2がピンコンタクト4を挟持する状態とする。
このとき、ソケットコンタクト2の突起部2aをピンコンタクト4の第一の凹部4aに挿入させて、ソケットコンタクト2とピンコンタクト4とを電気的に接続させる。また、ハウジング1の底部1cの一部をピンヘッダー3の湾曲部3bに接触させる。
【0020】
また、図3および図4に示すように、ハウジング1が水平状態となるように実装する場合には、まず、ソケットコンタクト挿入部7からソケットコンタクト2を挿入する。
そして、ハウジング1を側部1dが下側となる向きでピンヘッダー3の上部に配設し、ピンコンタクト挿入部8に開口部8aからピンコンタクト4を挿入させ、ソケットコンタクト2がピンコンタクト4を挟持する状態とする。
このとき、ソケットコンタクト2の突起部2aをピンコンタクト4の第二の凹部4bに挿入させて、ソケットコンタクト2とピンコンタクト4とを電気的に接続させる。また、ハウジング1の底部1cの一部をピンヘッダー3の湾曲部3bに接触させ、ハウジング1の側部1dをピンヘッダー3の平板部3aに接触させる。
【0021】
本実施の形態によるケーブルコネクタの実装構造によれば、ハウジング1には、ハウジング1の側方から連続して下方にも連通していて、ハウジング1の底部1c側と側部1d側とに開口された開口部8aを備えるピンコンタクト挿入部8が設けられているので、ハウジング1をピンヘッダー3上に鉛直状態および水平状態に配設することができる。
また、ソケットコンタクト2に突起部2aが設けられていると共に、ピンコンタクト4に第一および第二の凹部4a、4bが設けられていて、ハウジング1が水平状態および鉛直状態の各状態の場合に、突起部2aが第一の凹部4aまたは第二の凹部4bに択一的にはめ込まれることにより、ソケットコンタクト2とピンコンタクト4とを確実に電気的に接続できると共に、ソケットコンタクト2とピンコンタクト4とがロックされ互いに変位しにくい構造とすることができる。
【0022】
上述した本実施の形態によるケーブルコネクタの実装構造では、ハウジング1をピンヘッダー3上に鉛直状態および水平状態に配設することができ、ハウジング1とピンコンタクト4との設置方向が限定されないので、電気部品,電気装置あるいは電子機器の実装形態や配線ルーティング等によって装着方向を任意に設定することができる効果を奏する。
【0023】
以上、本発明によるケーブルコネクタの実装構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、ソケットコンタクト2に突起部2aが設けられて、ピンコンタクト4に第一及び第二の凹部4a、4bが設けられているが、突起部2aを備えないソケットコンタクトと、第一および第二の凹部4a、4bを備えないピンコンタクトとを接続する構成としてもよい。
また、例えば、ピンコンタクト4に第一及び第二の凹部4a、4bに代わって第一及び第二の孔部を設けて、突起部2aがこの第一および第二の孔部に択一的に挿入される構成としてもよい。
また、例えば、突起部2aを仮想回転軸6上に形成し、第一及び第二の凹部4a、4bが同一の凹部となるようにしてもよい。
また、例えば、ピンコンタクト4に3以上の凹部を設けて、突起部2aをこれらの凹部に択一的に挿入し、3以上の方向からソケットコンタクト2を接続できる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 ハウジング
1a 勘合口(貫通部)
1c 底部
2 ソケットコンタクト
2a 突起部
3 ピンヘッダー
4 ピンコンタクト
4a 第一の凹部
4b 第二の凹部
5 ケーブル
8 ピンコンタクト挿入部
8a 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンヘッダーから突出するピンコンタクトとケーブルに装着されたソケットコンタクトとが前記ピンヘッダーの上部に配設されるハウジングに形成された貫通部に両側から挿入されて接続されるケーブルコネクタの実装構造であって、
前記貫通部は前記ピンコンタクトが挿入されるピンコンタクト挿入部を備え、前記ピンコンタクト挿入部は、互いに直交する2方向に連続する空間であって前記ハウジングの外部に連通しており、前記ピンコンタクトは前記2方向間のいずれの方向からでも前記ハウジングに挿入可能であることを特徴とするケーブルコネクタの実装構造。
【請求項2】
前記ソケットコンタクトは、前記ピンコンタクトを挟持する二枚バネ部材を備えており、前記二枚バネ部材は前記ピンコンタクトとの接触面からバネの変形方向へ突出する突起部を備え、前記ピンコンタクトは前記突起部が択一的に挿入される複数の凹部または孔部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のケーブルコネクタの実装構造。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記ピンヘッダーとの接触面が円弧状の凸部に形成されていて、前記ハウジングと前記ピンヘッダーとは前記接触面に沿って互いに回転可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブルコネクタの実装構造。
【請求項4】
前記ピンヘッダーは、前記ハウジングが接触して回転する円弧状の凹部を備えていることを特徴とする請求項3に記載のケーブルコネクタの実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−49099(P2011−49099A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198386(P2009−198386)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】