説明

ケーブル保持構造、それを備えた電子・電気装置及びケーブル保持方法

【課題】 単一の部材で、複数のケーブルを任意の位置で位置固定することができ、装置全体の厚みを増加させないケーブル保持構造を提供する。
【解決手段】 フィルム27に穴41,51,52と該穴に連続するスリット42,53とを設け、前記スリットを利用して前記穴にケーブル25を通すことにより前記ケーブルを位置固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気装置に用いられるケーブル保持構造及びケーブル保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部品間をケーブルで接続する電子・電気装置では、ケーブルが周囲の部品(例えば、板金)のエッジに接触したり、組立時にケースに挟まれたりして断線してしまうことがある。このようなケーブルの断線を防止するため、ケーブルを整形し保持するケーブルホルダ(クランプ)が用いられる。
【0003】
従来のケーブルホルダは、図8に示すように、複数のスリット81及び挿通孔82が形成されたホルダ本体83と、その両端部に突出形成されたつまみ部84及び係止部85とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このケーブルホルダは、可撓性を有しており、一対の係止部85を互いに近づけるよう変形させることで、一対のつまみ部84の間隔を広げることができる。これにより、スリット81が開き、図示しないケーブルを挿通孔82に容易に挿通させることができる。
【0005】
また、一対のつまみ部84を互いに近づけるように変形させることで、一対の係止部85の間隔を広げることができる。広げた一対の係止部85の間に回路基板に搭載されたDIP型IC等の回路素子を位置させた後、ケーブルホルダを変形させた力を取り除くと、一対の係止部85の爪が回路素子をつかむ。これにより、ケーブルホルダは、層通孔82を通るケーブルを回路基板に対して位置固定する。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−115279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のケーブルホルダは、回路基板に搭載された回路素子を利用してケーブルを位置固定するため、任意の位置でケーブルを位置固定することができないという問題点がある。
【0008】
また、複数箇所でケーブルを位置固定する場合には、各箇所にケーブルホルダを設ける必要があり、部品点数が多くコスト高であるという問題点がある。
【0009】
さらに、従来のケーブルホルダの形状は、利用する回路素子の形状に基づいて決まるため、形状の異なる複数の回路素子を利用する場合には、各回路素子の形状に応じた形状のケーブルホルダが必要となるため、部品の種類が多く、コスト高であるという問題点もある。
【0010】
また、従来のケーブルホルダは、回路基板に対して垂直に設けられるため、装置全体の厚みを増加させるという問題点もある。
【0011】
そこで、本発明は、単一の部材を用いて、複数のケーブルを任意の位置で保持することができ、装置全体の厚みを増加させることのないケーブル保持構造、それを備えた電子・電気装置及びケーブル保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のケーブル保持構造は、上記目的を達成するため、フィルムに穴と該穴に連続するスリットとを設け、前記スリットを利用して前記穴にケーブルを通すことにより前記ケーブルを位置固定するようにしたことを特徴とする。
【0013】
前記スリットは、前記フィルムの縁に連続するよう設けられてよい。また、前記スリットは、前記穴が2個設けられている場合に、これら2個の穴を接続するように設けられてよい。
【0014】
また、本発明の電子・電気装置は、上記ケーブル保持構造を備えていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明のケーブル保持方法は、フィルムに穴と該穴に連続するスリットとを設け、前記スリットを利用して前記穴にケーブルを通すことにより前記ケーブルを位置固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルムに穴とスリットを設け、スリットを利用して穴にケーブルを通し、これによりケーブルを保持するようにしたことで、単一の部材で、回路基板の縁に沿った任意の位置で、複数のケーブルを保持することができる。また、本発明は単一のフィルムを用いるので安価であり、回路全体の厚み増加もほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1に、本発明の一実施の形態に係る電子・電気装置の外観図を示す。この電子・電気装置10は、互いに組み合わされる上部カバー11及び下部カバー12を有している。
【0019】
図2に、上部カバー11を取り外した状態の電子・電気装置10の平面図を示す。また、図3にそのA−A線断面図を示す。
【0020】
図2及び図3に示すように、電子・電気装置10は、板金21と、第1〜第3の部品(例えば、回路基板)22〜24と、第1、第2のケーブル25,26と、保護フィルム(絶縁フィルム)27とを有している。
【0021】
板金21及び第1の部品22は、それぞれ下部カバー12の異なる位置に固定されている。また、第2、第3の部品23,24は、板金21に固定されている。
【0022】
第1のケーブル25は、第1の部品22と第2の部品23との間を電気的に接続している。また、第2のケーブル26は、第2の部品23と第3の部品24との間を電気的に接続している。
【0023】
保護フィルム27は、板金21と第2の部品23との間に設けられており、例えば、板金21に貼り付けられている。保護フィルム27には、後述するように穴及びスリットが形成されている。保護フィルム27は、これら穴及びスリットを利用して、第1、第2のケーブル25,26を第1、第2のケーブルを整形し、位置固定する。
【0024】
図4に、保護フィルム27に形成される穴とスリットの一例を示す。図4の穴41は、保護フィルム27の縁の近くに形成され、スリット42は穴41と保護フィルム27の縁とに連続するように形成されている。
【0025】
また、図5に保護フィルム27に形成される穴とスリットの他の例を示す。図5の穴51,52は、保護フィルム27の縁の近くに形成され、スリット53はこれら穴51と穴52とを接続するように形成されている。
【0026】
第1の部品22と第2の部品23との間を電気的に接続する第1のケーブル25は、図4に示す穴41及びスリット42と、図5に示す穴51,52及びスリット53との組み合わせを用いて、図6に示すように整形され、保持されて位置固定される。スリット42,53の存在により、保護フィルム27が下部ケース12に取り付けられた状態であっても、容易に第1のケーブル25を各穴41,51,52に通すことができる。
【0027】
第2の部品23と第3の部品24との間を電気的に接続する第2のケーブル26は、図4に示す穴41及びスリット42を用いて、図7に示すように整形され、保持されて位置固定される。ここでも、スリット42の存在により、保護フィルム27が下部ケース12に取り付けられた状態であっても、容易に第2のケーブル25を穴41に通すことができる。
【0028】
以上のように、第1及び第2のケーブル25,26は、保護フィルム27によって位置固定され、他の部品との接触やケース組立時の挟み込みによる断線を防止することができる。
【0029】
なお、図6及び図7に示す各例では、穴41,51,52の内径を第1、第2のケーブル25,26の外径よりも大きくしているが、これらを実質的に等しくして、より強固に第1、第2のケーブル25,26を保持することもできる。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、単一の保護フィルムを用いて複数のケーブルの整形及び位置固定することができ、部品点数及びコストの低減を実現することができる。また、各部品から外部へ引き出されるケーブルを部品周囲の任意の位置で固定することができる。さらに、装置全体の厚みをほとんど増加させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子・電気装置の外観図である。
【図2】図1の電子・電気装置の上部カバーを取り除いた状態を示す平面図である。
【図3】(a)は図2におけるA−A線断面図であり、(b)は(a)におけるb線内拡大図である。
【図4】図1乃至図3に示される電子・電気装置に用いられる保護シートに形成される穴及びスリットの一例を示す図である。
【図5】図1乃至図3に示される電子・電気装置に用いられる保護シートに形成される穴及びスリットの他の例を示す図である。
【図6】図1乃至図3に示される電子・電気装置の第1のケーブル周辺を示す斜視図である。
【図7】図1乃至図3に示される電子・電気装置の第2のケーブル周辺を示す斜視図である。
【図8】従来のケーブルホルダの斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10 電子・電気装置
11 上部カバー
12 下部カバー
21 板金
22 第1の部品
23 第2の部品
24 第3の部品
25 第1のケーブル
26 第2のケーブル
27 保護フィルム
41 穴
42 スリット
51,52 穴
53 スリット
81 スリット
82 挿通孔
83 ホルダ本体
84 つまみ部
85 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムに穴と該穴に連続するスリットとを設け、前記スリットを利用して前記穴にケーブルを通すことにより前記ケーブルを位置固定するようにしたことを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル保持構造において、前記スリットが前記フィルムの縁に連続するよう設けられていることを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項3】
請求項1に記載のケーブル保持構造において、前記穴が2個設けられ、前記スリットがこれら2個の穴を接続するように設けられていることを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項4】
請求項1に記載のケーブル保持構造において、前記穴が複数個設けられ、前記スリットがこれら複数個の穴のそれぞれに連続するとともに、前記フィルムの縁又は他の穴に連続するように設けられていることを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のケーブル保持構造において、前記フィルムがベースに固定された状態で、前記ケーブルの装脱を可能にしたことを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つのケーブル保持構造を備えていることを特徴とする電子・電気装置。
【請求項7】
フィルムに穴と該穴に連続するスリットとを設け、前記スリットを利用して前記穴にケーブルを通すことにより前記ケーブルを位置固定することを特徴とするケーブル保持方法。
【請求項8】
請求項7に記載のケーブル保持方法において、前記フィルムがベースに固定された状態で、前記穴に前記ケーブルを通すようにしたことを特徴とするケーブル保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−282854(P2008−282854A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123345(P2007−123345)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】