説明

ケーブル保持構造

【課題】シールドケーブルから放射される電磁ノイズを低減することが可能なケーブル保持構造を提供する。
【解決手段】平板状の板部20に設けられた導電性を有する保持部21にシールドケーブル1A,1B,1Cを保持するケーブル保持構造は、保持部21に、板部20に交差する方向に延びる貫通孔211,212,213が形成され、シールドケーブル1A,1B,1Cは、その中心導体11が貫通孔211,212,213に収容されると共に、中心導体11の外周に配置されたシールド導体13が保持部21に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル保持構造に関し、特に、中心導体の外周側にシールド導体を有するシールドケーブルを保持するケーブル保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド導体を有するシールドケーブルを介して、モータに電流を供給するインバータ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のインバータ装置では、シールド導体によってシールドされた3本のシールドケーブルにより、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって周波数及び電流値が調整された三相交流電流(U,V,W相)をモータに供給するように構成されている。
【0004】
この三相交流電流は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を高速でオン又はオフさせることにより生成されるが、このスイッチングによって三相交流電流に高調波成分が重畳され、高周波の電磁ノイズが発生する。この電磁ノイズによってラジオに雑音が入ること等を抑制すべく、インバータ装置の電気回路は、接地された導電性の金属からなるケースに収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−115649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10(a)は、従来のインバータ装置のケース外面におけるシールドケーブルの接続構造の一例を示す図である。図10(b)は、シールドケーブルの構成を示す断面図である。
【0007】
図10に示すように、3本のシールドケーブル100は、インバータ装置のケース110に接続される端部において、絶縁性の樹脂からなるシース104が取り除かれて中心導体101を被覆する絶縁体102が露出している。絶縁体102とシース104との間の編組からなるシールド導体103は、一つに束ねられて束線103aとなり、ケース110に半田付け又はボルト締め等によって電気的に接続されている。
【0008】
シールドケーブル100のうち、中心導体101の外周がシールド導体103に覆われた部分から放射される電磁ノイズはシールド導体103によって減衰するが、絶縁体102が露出した部分はシールド導体103に覆われていないので、この部分から放射される電磁ノイズによってラジオに雑音が入る等の悪影響が発生するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シールドケーブルから放射される電磁ノイズを低減することが可能なケーブル保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、平板状の板部に設けられた導電性を有する保持部に、中心導体の外周側にシールド導体を有するシールドケーブルを保持するケーブル保持構造であって、前記保持部には、前記板部に交差する方向に延びる貫通孔が形成され、前記シールドケーブルは、少なくとも前記中心導体が前記貫通孔に収容されると共に、前記シールド導体が前記保持部に接続された、ケーブル保持構造を提供する。
【0011】
また、前記保持部には、前記貫通孔をその径方向外側に開口させる外周開口部が前記貫通孔に沿って形成され、前記シールド導体は、前記貫通孔の内面に接触すると共に、その一部が前記外周開口部から前記保持部の外部に露出し、前記露出したシールド導体が、前記貫通孔の内部に向かって押圧されているとよい。
【0012】
また、前記保持部は、その中心軸に沿って複数の前記貫通孔が形成された円柱状であり、前記保持部に複数の前記シールドケーブルが保持され、前記複数の貫通孔のそれぞれに、前記複数のシールドケーブルの少なくとも前記中心導体が収容されているとよい。
【0013】
また、前記保持部に保持された複数の前記シールドケーブルは、前記外周開口部から露出したシールド導体が、環状に形成された押圧部材によって一括して押圧されているとよい。
【0014】
また、前記保持部には、前記貫通孔をその径方向外側に開口させる外周開口部が前記貫通孔に沿って形成され、前記シールドケーブルは、前記シールド導体が筒状導電部材によってかしめられて前記貫通孔に収容され、前記外周開口部から前記保持部の外部に露出した前記筒状導電部材が、前記貫通孔の内部に向かって押圧されているとよい。
【0015】
また、前記保持部は、その中心軸に沿って複数の前記貫通孔が形成された円柱状であり、前記保持部に複数の前記シールドケーブルが保持され、前記複数の貫通孔のそれぞれに、前記複数のシールドケーブルの前記シールド導体が前記筒状導電部材によってかしめられて収容され、
前記外周開口部から露出した複数の前記筒状導電部材が、環状に形成された押圧部材によって一括して押圧されているとよい。
【0016】
また、前記保持部は、前記貫通孔が中心部に形成された筒状体であり、前記シールドケーブルは、前記シールド導体が前記筒状体の外周面に接触するように押圧されているとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るケーブル保持構造によれば、シールド付きケーブルから放射される電磁ノイズを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係るケーブル保持構造を示し、(a)はケーブル保持前の状態を示す斜視図、(b)はシールドケーブルが保持された状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1(a)のA−A線断面図、(b)は図1(b)のB−B線断面図である。
【図3】第1の実施の形態における放射電界強度を示すグラフである。
【図4】第2の実施の形態に係るケーブル保持構造を示し、(a)は分解斜視図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る接続用パネルを示す斜視図である。
【図6】(a)は図5のD−D線断面図、(b)は保持部にシールドケーブルが収容された状態を示す説明図、(c)は保持部及びシールドケーブルが圧接用パイプによりかしめられた状態を示す説明図である。
【図7】第4の実施の形態に係るケーブル保持構造を示し、(a)はケーブル保持前の状態を示す斜視図、(b)はシールドケーブルが保持された状態を、それぞれ示す。
【図8】図7(b)のE−E線断面図である。
【図9】第4の実施の形態における放射電界強度を示すグラフである。
【図10】(a)は、従来のインバータ装置のケース外面におけるシールド付きケーブルの接続構造の一例を示す図である。(b)は、シールド付きケーブルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るケーブル保持構造を示し、(a)は3本のシールドケーブル1A,1B,1Cが接続用パネル2に保持される前の状態を、(b)は接続用パネル2に3本のシールドケーブル1A,1B,1Cが保持された状態を、それぞれ示す。図2(a)は図1(a)のA−A線断面図、図2(b)は図1(b)のB−B線断面図である。
【0020】
接続用パネル2は、平板状に形成された板部20に、円柱状に形成された保持部21を設けて構成されている。この接続用パネル2は、接続用パネル2に形成された挿通孔(図示せず)にボルト(図示せず)を挿通し、機器(例えばインバータ装置)側のケース(図示せず)に形成されたボルト孔に当該ボルトを螺合させることにより、機器側のケースに接続されて接地される(第2、3、及び4の実施の形態においても同様)。なお、接続用パネル2は、機器側のケースの一部であってもよい(第2、3、及び4の実施の形態においても同様)。板部20及び保持部21は、共に導電性を有する金属からなる。本実施の形態では、板部20と保持部21とが別体であり、板部20に形成された円形の開口20aに、円柱状に形成された保持部21が圧入により固定されている。ただし、板部20と保持部21とを一体に形成してもよい。この板部20は、本発明の板状部材の一例である。
【0021】
シールドケーブル1A,1B,1Cは、保持部21に保持され、環状に形成された導電性を有する金属からなる圧接用パイプ3によってかしめ固定されている。なお、圧接用パイプ3を樹脂から形成してもよい。
【0022】
板部20は、例えば自動車の駆動源としてのモータに三相交流電流を供給するインバータ装置のケースに取り付けられ、電気的に接地されている。また、シールドケーブル1A,1B,1Cは、例えばインバータ装置の内部において端子台に接続され、PWM制御により生成された三相交流電流をモータに供給する。
【0023】
保持部21には、その中心軸Cに沿って3つの貫通孔211,212,213が形成されている。本実施の形態では、中心軸Cが板部20の表面20bに直交して交差するように、保持部21が固定されている。これにより、貫通孔211,212,213は、板部20の表面20bに対して直交して交差する方向に延びるように形成されている。
【0024】
3つの貫通孔211,212,213は、保持部21の中心軸Cを中心とする周方向に等間隔に形成されている。3つの貫通孔211,212,213は、その延伸方向の一端部が板部20の表面20b側に開口し、他端部が板部20の裏面20c側に開口している。
【0025】
また、保持部21には、貫通孔211をその径方向外側に開口させる外周開口部211a、貫通孔212をその径方向外側に開口させる外周開口部212a、及び貫通孔213をその径方向外側に開口させる外周開口部213aが形成されている。外周開口部211a,212a,213aは、貫通孔211,212,213の全長に亘り、貫通孔211,212,213に沿って形成されている。換言すれば、保持部21には、外周面21aに形成された外周開口部211a,212a,213aから中心軸Cに向かう径方向に深さを有する3つの溝部(貫通孔211,212,213に相当する)が、中心軸Cに対して平行に形成されている。
【0026】
シールドケーブル1A,1B,1Cは、中心導体11と、中心導体11を被覆する絶縁体12と、中心導体11及び絶縁体12の外周側に配置された編組からなるシールド導体13と、シールド導体13の外周側を覆うシース14とを有する。中心導体11及びシールド導体13は、銅やアルミニウム等の導電性の金属からなる。絶縁体12及びシース14は、絶縁性の樹脂からなる。
【0027】
シールドケーブル1A,1B,1Cの一端部は、保持部21の中心軸C方向の長さ以上の長さに亘って、シース14が剥ぎ取られ、このシース14が剥ぎ取られた部分が保持部21の貫通孔211,212,213にそれぞれ収容されている。
【0028】
より具体的には、図2(b)に示すように、シールドケーブル1Aの中心導体11,絶縁体12,及びシールド導体13が保持部21の貫通孔211に収容され、シールドケーブル1Aのシールド導体13は、貫通孔211の内面211bに接触している。また、シールドケーブル1Bの中心導体11,絶縁体12,及びシールド導体13が保持部21の貫通孔212に収容され、シールドケーブル1Bのシールド導体13は、貫通孔212の内面212bに接触している。また、シールドケーブル1Cの中心導体11,絶縁体12,及びシールド導体13が保持部21の貫通孔213に収容され、シールドケーブル1Cのシールド導体13は、貫通孔213の内面213bに接触している。
【0029】
この貫通孔211,212,213の内面211b,212b,213bとの接触により、シールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13が保持部21に電気的に接続されて接地されている。
【0030】
図1(b)及び図2(b)に示すように、保持部21に保持された範囲におけるシールドケーブル1A,1B,1Cは、シールド導体13の一部が外周開口部211a,212a,213aから保持部21の外部に露出し、この露出した部分のシールド導体13が圧接用パイプ3によって貫通孔211,212,213の内部に向かって(すなわち、中心軸Cに向かって)押圧されている。
【0031】
すなわち、圧接用パイプ3は、外周開口部211a,212a,213aから貫通孔211,212,213の外部に突出したシールド導体13を貫通孔211,212,213の内部に押し込むように一括して押圧している。これにより、シールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13が、保持部21及び圧接用パイプ3に圧接されている。また、圧接用パイプ3は、シールド導体13及び保持部の外周面21aとの接触により、電気的に接地されている。
【0032】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0033】
(1)板部20の表面20b側において、中心導体11が保持部21の貫通孔211,212,213に収容されているので、中心導体11から放射される電磁ノイズが保持部21によって吸収される。特に、本実施の形態では、中心導体11の径方向外側の領域の全体が、接地された導電部材(シールド導体13,保持部21,圧接用パイプ3)によって囲まれているので、シールドケーブル1A,1B,1Cの保持部21に保持された領域から放射される電磁ノイズが大きく低減される。
【0034】
(2)3つのシールドケーブル1A,1B,1Cが、円柱状の保持部21に、周方向に等間隔で保持されるので、例えばシールドケーブル1A,1B,1Cを直線状に配置した場合に比較して、3つのシールドケーブル1A,1B,1Cが互いに近接して配置される。これにより、各シールドケーブル1A,1B,1Cから放射される電磁ノイズが互いに打ち消し合うため、さらに電磁ノイズが低減される。また、保持部21の小型化及び軽量化にも寄与できる。
【0035】
(3)3つのシールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13が圧接用パイプ3により一括して押圧されているので、部品点数の増加が抑制される。
【0036】
図3は、シールドケーブル1A,1B,1Cの端部(保持部21)から1m離れた位置における放射電界強度を従来例(図10に示す)との比較により示すグラフである。このグラフの横軸は、シールドケーブル1A,1B,1Cに流す電流の周波数を示し、縦軸は従来例との放射電界強度差をデシベル値で示している。
【0037】
図3に示すように、300kHz以上の周波数領域では30dB以上の減衰がみられ、1MHz以上の周波数領域では40dB以上、10MHz以上の周波数領域では60dB以上の減衰がみられる。
【0038】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係るケーブル保持構造を示し、(a)は分解斜視図、(b)は(a)のC−C線断面図である。図4において、第1の実施の形態について説明したものと同様の機能を有する部材については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
第1の実施の形態では、貫通孔211,212,213の内面211b,212b,213bにシールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13を直接接触させたが、本実施の形態では、シールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13が、圧接用パイプ3よりも小径に形成された筒状の小径圧接用パイプ31〜33によりかしめられ、貫通孔211,212,213に保持される。小径圧接用パイプ31〜33は、銅等の導電性を有する金属からなる。小径圧接用パイプ31〜33は、本発明の筒状導電部材の一例である。
【0040】
より具体的には、シールドケーブル1Aのシールド導体13が小径圧接用パイプ31によりかしめられ、保持部21の貫通孔211に保持される。また、シールドケーブル1Bのシールド導体13が小径圧接用パイプ32によりかしめられ、保持部21の貫通孔213に保持される。同様に、シールドケーブル1Cのシールド導体13が小径圧接用パイプ33によりかしめられ、保持部21の貫通孔213に保持される。
【0041】
保持部21の貫通孔211,212,213には、外周開口部211a,212a,213aが形成され、この外周開口部211a,212a,213aから保持部21の外部に露出した小径圧接用パイプ31〜33が、圧接用パイプ3によって貫通孔211,212,213の内部に向かって押圧されている。
【0042】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)及び(2)の作用及び効果に加え、シールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13が小径圧接用パイプ31〜33に個々にかしめられて圧接し、かつ小径圧接用パイプ31〜33が圧接用パイプ3によって保持部21に圧接されているので、シールドケーブル1A,1B,1Cと保持部21と接続部における機械的強度が向上すると共に、シールド導体13と保持部21との接触電気抵抗が小さくなる。
【0043】
なお、貫通孔211,212,213を小径圧接用パイプ31〜33のかしめ後の形状に対応する形状に形成しておけば、さらに機械的強度が向上し、接触電気抵抗を小さくすることが可能となる。
【0044】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6において、第1の実施の形態について説明したものと同様の機能を有する部材については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0045】
図5は、本実施の形態に係る接続用パネル4を示す斜視図である。
【0046】
本実施の形態に係る接続用パネル4は、平板状の板部40に形成された角丸長方形状の開口40aに、保持部41が圧入により固定されている。
【0047】
保持部41には、板部40に交差する方向に延びる3つの貫通孔411,412,413が一方向に並列して形成されている。本実施の形態では、貫通孔411,412,413が板部40に直交する方向に沿って互いに平行に形成されている。
【0048】
また、保持部41には、貫通孔411をその径方向外側に開口させる外周開口部411a、貫通孔412をその径方向外側に開口させる外周開口部412a、及び貫通孔413をその径方向外側に開口させる外周開口部413aが形成されている。外周開口部411a,412a,413aは、貫通孔411,412,413の全長に亘り、貫通孔411,412,413に沿って形成されている。
【0049】
図6は、保持部41及びシールドケーブル1A,1B,1Cを示し、(a)は図5のD−D線断面図、(b)は保持部41にシールドケーブル1A,1B,1Cが収容された状態を示す説明図、(c)は保持部41及びシールドケーブル1A,1B,1Cが圧接用パイプ42によりかしめられた状態を示す説明図である。
【0050】
図6(b)に示すように、保持部41の貫通孔411,412,413にシールドケーブル1A,1B,1Cが収容された状態では、シールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13の一部が貫通孔411,412,413の内面411b,412b,413bに接触し、シールド導体13の他の一部が外周開口部411a,412a,413aから貫通孔411,412,413の外部に突出している。
【0051】
図6(c)に示すように、シールドケーブル1A,1B,1Cは、圧接用パイプ42によってかしめられ、保持部41に固定される。つまり、圧接用パイプ42は、外周開口部411a,412a,413aから貫通孔411,412,413の外部に突出したシールド導体13を貫通孔411,412,413の内部に押し込むように一括して押圧している。これにより、シールドケーブル1A,1B,1Cのシールド導体13が、保持部41及び圧接用パイプ42に圧接されている。
【0052】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)と同様の作用及び効果がある。また、保持部41の厚さ方向(図5及び図6の上下方向)の寸法を小さくすることができる。
【0053】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8において、第1の実施の形態について説明したものと同様の機能を有する部材については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図7は、本発明の第4の実施の形態に係るケーブル保持構造を示し、(a)はシールドケーブル1A,1B,1Cが接続用パネル5に保持される前の状態を、(b)は接続用パネル5にシールドケーブル1A,1B,1Cが保持された状態を、それぞれ示す。図8は図7(b)のE−E線断面図である。
【0055】
接続用パネル5は、平板状の板部50に3つの円筒状の筒状体51〜53が設けられて構成されている。板部50及び筒状体51〜53は、導電性を有する金属からなる。筒状体51〜53は、シールドケーブル1A,1B,1Cを保持する保持部として機能する。
【0056】
筒状体51〜53の中心部には、板部50に直交して交差する方向に延びる貫通孔511,512,513がそれぞれ形成されている。
【0057】
図8に示すように、筒状体51の貫通孔511には、シールドケーブル1Aの中心導体11及び絶縁体12が収容される。シールドケーブル1Aのシールド導体13は、その内径を拡大するように押し広げられ、筒状体51の外周面51aに接するように配置されている。シールド導体13は、環状に形成された導電性を有する金属からなる圧接用パイプ6によって、筒状体51の外周面51aに向かって押圧されている。なお、圧接用パイプ6を樹脂から形成してもよい。
【0058】
同様に、シールドケーブル1Bは、中心導体11及び絶縁体12が筒状体52の貫通孔512に収容され、シールド導体13が筒状体52の外周面52aに接触するように、圧接用パイプ6によって押圧されている。
【0059】
また同様に、シールドケーブル1Cは、中心導体11及び絶縁体12が筒状体53の貫通孔513に収容され、シールド導体13が筒状体53の外周面53aに接触するように、圧接用パイプ6によって押圧されている。
【0060】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)と同様の作用及び効果がある。また、シールド導体13が筒状体51と圧接用パイプ6との間に挟まれてかしめられるので、シールド導体13と筒状体51〜53との接触電気抵抗が小さくなる。
【0061】
図9は、本実施の形態におけるシールドケーブル1A,1B,1Cの端部から1m離れた位置における放射電界強度を従来例(図10に示す)との比較により示すグラフである。このグラフの横軸は、シールドケーブル1A,1B,1Cに流す電流の周波数を示し、縦軸は従来例との放射電界強度差をデシベル値で示している。
【0062】
図9に示すように、300kHz以上の周波数領域では28dB以上の減衰がみられ、1MHz以上の周波数領域では30dB以上、10MHz以上の周波数領域では50dB以上の減衰がみられる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1A,1B,1C…シールドケーブル、2,4,5…接続用パネル、3,6…圧接用パイプ(押圧部材)、11…中心導体、12…絶縁体、13…シールド導体、14…シース、20…板部、20a…開口、20b…表面、20c…裏面、21…保持部、21a…外周面、31〜33…小径圧接用パイプ(筒状導電部材)、40…板部、40a…開口、41…保持部、42…圧接用パイプ、50…板部、51〜53…筒状体、51a,52a,53a…外周面、100…ケーブル、101…中心導体、102…絶縁体、103…シールド導体、103a…束線、104…シース、110…ケース、211,212,213…貫通孔、211a,212a,213a…外周開口部、211b,212b,213b…内面、411,412,413…貫通孔、411a,412a,413a…外周開口部、411a,412a,421a…外周開口部、411b,412b,413b…内面、511,512,513…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の板部に設けられた導電性を有する保持部に、中心導体の外周側にシールド導体を有するシールドケーブルを保持するケーブル保持構造であって、
前記保持部には、前記板部に交差する方向に延びる貫通孔が形成され、
前記シールドケーブルは、少なくとも前記中心導体が前記貫通孔に収容され、前記シールド導体が前記保持部に接続された、ケーブル保持構造。
【請求項2】
前記保持部には、前記貫通孔をその径方向外側に開口させる外周開口部が前記貫通孔に沿って形成され、
前記シールド導体は、前記貫通孔の内面に接触すると共に、その一部が前記外周開口部から前記保持部の外部に露出し、
前記露出したシールド導体が、前記貫通孔の内部に向かって押圧されている、
請求項1に記載のケーブル保持構造。
【請求項3】
前記保持部は、その中心軸に沿って複数の前記貫通孔が形成された円柱状であり、
前記保持部に複数の前記シールドケーブルが保持され、
前記複数の貫通孔のそれぞれに、前記複数のシールドケーブルの少なくとも前記中心導体が収容されいる、
請求項2に記載のケーブル保持構造。
【請求項4】
前記保持部に保持された前記複数のシールドケーブルは、前記外周開口部から露出したシールド導体が、環状に形成された押圧部材によって一括して押圧されている、
請求項3に記載のケーブル保持構造。
【請求項5】
前記保持部には、前記貫通孔をその径方向外側に開口させる外周開口部が前記貫通孔に沿って形成され、
前記シールドケーブルは、前記シールド導体が筒状導電部材によってかしめられて前記貫通孔に収容され、
前記外周開口部から前記保持部の外部に露出した前記筒状導電部材が、前記貫通孔の内部に向かって押圧されている、
請求項1に記載のケーブル保持構造。
【請求項6】
前記保持部は、その中心軸に沿って複数の前記貫通孔が形成された円柱状であり、
前記保持部に複数の前記シールドケーブルが保持され、
前記複数の貫通孔のそれぞれに、前記複数のシールドケーブルの前記シールド導体が前記筒状導電部材によってかしめられて収容され、
前記外周開口部から露出した複数の前記筒状導電部材が、環状に形成された押圧部材によって一括して押圧されている、
請求項5に記載のケーブル保持構造。
【請求項7】
前記保持部は、前記貫通孔が中心部に形成された筒状体であり、
前記シールドケーブルは、前記シールド導体が前記筒状体の外周面に接触するように押圧されている、
請求項1に記載のケーブル保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−41743(P2013−41743A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177679(P2011−177679)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】