説明

ケーブル加工装置およびケーブル加工方法

【課題】 簡易な構造で、ケーブル先端部分15aにおいて絶縁外皮15bの切断を良好に行うことを可能とする。
【解決手段】 ケーブル15の絶縁外皮15bを切断して除去する切断刃13eから突出するケーブル先端部分15aを切断刃13eよりも先端寄りの位置において支持するケーブル先端保持部13fを設け、そのケーブル先端部分15aの絶縁外皮15bを切断刃13eにより切断する際に、切断刃13eから突出して従来不安定になっていたケーブル先端部分15aをケーブル先端保持部13fにより安定的に支持することによって絶縁外皮15bの切断を安定的に行うように構成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル先端部分の絶縁外皮を切断刃により切断し除去するケーブル加工装置およびケーブル加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種電気機器には多種多様なケーブルが用いられているが、線状導体(中心導体)の外周を絶縁外皮により覆ったケーブルを使用する場合には、ケーブル先端部分の絶縁外皮を切断して除去する必要がある。そして、そのケーブル先端部分の絶縁外皮を除去するにあたって、下記の特許文献1に開示されているようなケーブル加工装置が用いられている。
【0003】
ケーブル加工装置は、一般に皮剥き機と呼ばれるものであって、例えば図4に示されているような構成を有している。すなわち同図に示されているように、ケーブル1の端末部分をケーブル保持部2に挿通することにより把持してから、切断刃3にケーブル先端部分1aを案内し、その切断刃3から所望の長さだけ突出させられたケーブル先端部分1aの絶縁外皮を切断刃3により切断した後、その切断されたケーブル先端部分1aの絶縁外皮をケーブル方向に引き抜いて除去するようにしている。
【0004】
ところが、このような従来のケーブル加工装置では、ケーブル1の端末部分を把持するケーブル保持部2が切断刃3より手前側、すなわちケーブル1の反先端側のみをケーブル保持部2により把持している構造になされており、切断刃3から突出しているケーブル先端部分1aがフリー状態になされている。そのため、当該ケーブル先端部分1aの絶縁外皮を切断刃3により切断する際に、ケーブル先端部分1aに振れを生じることがあり、絶縁外皮の切断工程が不安定な加工状態になりやすく、加工精度が低下する等の不具合を起こしてしまうことがある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−100047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、ケーブル先端部分における絶縁外皮の切断加工を簡易な構造で良好に行うことができるようにしたケーブル加工装置およびケーブル加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1にかかる発明では、線状導体の外周を絶縁外皮により覆ったケーブルの端末部分をケーブル保持部により把持した状態で切断刃に案内し、その切断刃から所望の長さだけ突出させられたケーブル先端部分の絶縁外皮を前記切断刃により切断して除去するように構成されたケーブル加工装置において、前記ケーブル保持部は、前記ケーブル先端部分を前記切断刃よりも先端寄りの位置で支持するケーブル先端保持部を備えている。
【0008】
また請求項3にかかる発明では、線状導体の外周を絶縁外皮により覆ったケーブルの端末部分を把持して切断刃に案内し、その切断刃から所望の長さだけ突出させたケーブル先端部分の絶縁外皮を前記切断刃により切断して除去するようにしたケーブル加工方法において、前記ケーブル先端部分を前記切断刃により切断するにあたって、前記ケーブル先端部分を前記切断刃よりも先端寄りの位置で支持するようにしている。
【0009】
このような構成を有する請求項1にかかるケーブル加工装置、または請求項3にかかるケーブル加工方法によれば、ケーブル先端部分における絶縁外皮を切断刃により切断する際に、切断刃から突出して従来不安定になっていたケーブル先端部分がケーブル先端保持部により支持されるため、そのケーブル先端部分の絶縁外皮に対する切断加工が極めて安定した状態で実行されるようになっている。
【0010】
さらに請求項2にかかる発明では、上述した請求項1におけるケーブル保持部が、ケーブル先端保持部に加えて、ケーブルの端末部分を前記切断刃よりも反先端寄りの位置で把持する主保持部と、その主保持部により把持した前記ケーブルの端末部分を前記切断刃まで案内するケーブルガイドとを備えている。
【0011】
このような構成を有する請求項2にかかるケーブル加工装置によれば、上述した作用に加えて、主保持部によってケーブル端末部分がより安定的に保持されるとともに、ケーブルガイドの案内作用によってケーブル端末部分が切断刃に対して正確に案内されるようになっている。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように本発明にかかるケーブル加工装置およびケーブル加工方法は、ケーブルの絶縁外皮を切断して除去する切断刃から突出するケーブル先端部分を切断刃よりも先端寄りの位置で支持するケーブル先端保持部を設け、ケーブル先端部分における絶縁外皮を切断刃により切断する際に、切断刃から突出して従来不安定になっていたケーブル先端部分をケーブル先端保持部により安定的に支持した状態で絶縁外皮の切断を行うように構成したものであるから、ケーブル先端部分における絶縁外皮の切断加工を簡易な構造で良好に実行させることができ、ケーブル加工装置およびケーブル加工方法の信頼性を低コストにて大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかるケーブル加工装置およびケーブル加工方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1および図2に示されている本発明の一実施形態にかかるケーブル加工装置10は、装置基台11上に配置された加工機本体12を備えているとともに、その加工機本体12の前面には、略円筒状をなすように形成された端末加工シリンダ部13が略水平に突出するように設けられている。この端末加工シリンダ部13の全体は、図示を省略した往復駆動機構により軸方向(水平方向)に往復移動される構成になされていて、図1および図2に示されているケーブル加工位置と、当該ケーブル加工位置から上述した加工機本体12の前面側に向かって適宜の距離だけ軸方向に引き込まれたケーブル引抜位置との間で往復移動されるようになっている。
【0015】
上記端末加工シリンダ部13の前方位置(図2の左方位置)には、当該端末加工シリンダ部13の前端面に対向するようにしてケーブル保持部の主保持部14が配置されている。この主保持部14は、前記装置基台11から略垂直に立ち上がる支持脚14aを備えており、その支持脚14aの上端部分には、被加工部材としてのケーブル15の端末部分を挟持することにより把持する把持部14bが取り付けられている。なお、上述したケーブル15は、周知のように線状導体(中心導体)の外周を絶縁外皮により覆った構造を有している。
【0016】
一方、前述した端末加工シリンダ部13は、特に図2に示されているように、略中空円筒状の加工ケーシング13aを備えており、その加工ケーシング13aの軸方向先端側に形成された開口部には、リング状をなす固定板13bが同心状に取り付けられている。さらにその固定板13bの軸方向外側(図2の左方側)には、円盤状のケーブルガイド13cが、上記固定板13bとともに前記端末加工シリンダ部13の開口端面にネジ止めされている。
【0017】
上述したケーブルガイド13cの中心部分には、被加工部材としてのケーブル15が挿入されるガイド穴13dが軸方向に貫通するように形成されている。このガイド穴13dの内周壁面は、軸方向の外方側(図2の左方側)に向かって内径が連続的に拡大するテーパ面をなすように形成されており、このテーパ面からなるガイド穴13dの内周壁面に対して、上述した被加工部材としてのケーブル15の先端部分が突き当たることによって当該ケーブル15が正規の中心位置に向かって強制的に案内されるようになっている。
【0018】
また、このケーブルガイド13cの軸方向内方側(図2の右方側)に隣接して、一対の切断刃13e,13eが配置されている。これら一対の切断刃13e,13eは、前記ケーブル15を構成している線状導体の外周を覆う絶縁外皮を切断するように設けられたものであって、互いに半径方向に対向して対称的に往復移動可能に設けられており、図示を省略した駆動機構によって半径方向外方側の待機位置と、半径方向内方側の切断位置との間で移動されるように構成されている。そして、これら一対の切断刃13e,13eが、互いに近接した切断位置に移動されることによって前記ケーブル15の絶縁外皮が径方向に一部切断されるとともに、その一部切断状態から、一対の切断刃13e,13eが一体となってケーブル15の中心軸回りに一回転されることによってケーブル15の絶縁外皮が全周にわたって切断されるようになっている。
【0019】
さらに、上述した切断刃13e,13eの軸方向奥側(図2の右側)に隣接するようにして、ケーブル保持部を構成するケーブル先端保持部13fが配置されている。このケーブル先端保持部13fは、略円盤状の部材から構成されており、前述した固定板13bに形成された中心穴の内周面に取り付けられている。そして、このケーブル先端保持部13fの中心部分には、被加工部材としてのケーブル15の外径に略等しい内径を有する支持穴13gが軸方向に貫通するように形成されており、その支持穴13gに対して被加工部材としてのケーブル15の先端部分15aが挿通されることによって、当該ケーブル先端部分15aが径方向に保持されるようになっている。
【0020】
このような構成を有する本実施形態におけるケーブル15加工装置を用いたケーブル加工方法によれば、まず図3(a)に示されているように、切断刃13e,13eを待機位置に移動しておいてから、被加工部材としてのケーブル15の端末部分を、ケーブル保持部14の把持部14bに挿通して把持する。次いで、ケーブル15の端末部分を端末加工シリンダ部13のケーブルガイド13cに設けられたガイド穴13d内に挿通し、さらに切断刃13e,13eの間を軸方向に通して、その切断刃13e,13eから所望の長さだけ突出するケーブル先端部分15aを、ケーブル先端保持部13fの支持穴13g内に挿通させて支持する。
【0021】
次いで、このようにしてケーブル15を保持した状態から、切断刃13e,13eを半径方向内方側の切断位置に移動させ、ケーブル先端部分15aの絶縁外皮の一部を切断する、そして、その一部切断状態から図3(b)の矢印で示されているように、ケーブル15の中心軸回りに切断刃13e,13eを一回転させることによってケーブル先端部分15aの絶縁外皮の全周を切断する。
【0022】
絶縁外皮の切断後、図3(c)に示されているように、端末加工シリンダ部13の全体を図示矢印方向、すなわち加工機本体12の前端面側に向かって適宜の距離だけ軸方向に引き込んでケーブル引抜位置まで後退させる。それによって、切断したケーブル先端部分15aの絶縁外皮15bが引き抜くようにして除去され、当該ケーブル先端部分15aの線状導体(中心導体)15cが必要な長さにわって外部に露出されることとなる。この線状導体(中心導体)15cの外部露出長さは、端末加工シリンダ部13に対するケーブル先端部分15aの挿通長さによって適宜に調整される。
【0023】
このように本実施形態によれば、ケーブル先端部分15aの絶縁外皮15bを切断刃13e,13eにより切断する際に、切断刃13e,13eから突出して従来不安定になっていたケーブル先端部分15aがケーブル先端保持部13fにより安定的に支持されることとなり、それによってケーブル先端部分15aが極めて安定した状態で絶縁外皮15bの切断が実行される。
【0024】
特に本実施形態では、主保持部14によってケーブル15の端末部分がより安定的に保持されるとともに、ケーブルガイド13cの案内作用によってケーブル15の端末部分が切断刃13e,13eに対して正確に案内されることから、より安定した切断加工が行われる。
【0025】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上述べた本発明にかかるケーブル加工装置およびケーブル加工方法は、多種多様なケーブルに対して広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用したケーブル加工装置の全体構造を表した外観斜視説明図である。
【図2】本発明の一実施形態における端末加工シリンダ部の要部構造を拡大して表した部分縦断面説明図である。
【図3】端末加工シリンダ部に対して被加工部材としてのケーブルを装着して加工する各工程を表した縦断面説明図であって、(a)はケーブルを挿入してセットした状態を示し、(b)は切断刃によりケーブル先端部分を切断している状態を示し、(c)は端末加工シリンダ部を後退させて絶縁外皮を除去した状態をそれぞれ示したものである。
【図4】従来のケーブル加工装置における要部構造を概略的に表した部分縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ケーブル加工装置
11 装置基台
12 加工機本体
13 端末加工シリンダ部
13a 加工ケーシング
13b 固定板
13c ケーブルガイド
13d ガイド穴
13e 切断刃
13f ケーブル先端保持部(ケーブル保持部)
13g 支持穴
14 主保持部(ケーブル保持部)
14a 支持脚
14b 把持部
15 ケーブル
15a ケーブル先端部分
15b 絶縁外皮
15c 線状導体(中心導体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状導体の外周を絶縁外皮により覆ったケーブルの端末部分をケーブル保持部により把持した状態で切断刃に案内し、その切断刃から所望の長さだけ突出させたケーブル先端部分の絶縁外皮を前記切断刃により切断して除去するように構成されたケーブル加工装置において、
前記ケーブル保持部は、前記ケーブル先端部分を前記切断刃よりも先端寄りの位置で支持するケーブル先端保持部を備えていることを特徴とするケーブル加工装置。
【請求項2】
前記ケーブル保持部は、前記ケーブル先端保持部に加えて、前記ケーブルの端末部分を前記切断刃よりも反先端寄りの位置で把持する主保持部と、その主保持部により把持した前記ケーブルの端末部分を前記切断刃まで案内するケーブルガイドと、を備えていることを特徴とする請求項1記載のケーブル加工装置。
【請求項3】
線状導体の外周を絶縁外皮により覆ったケーブルの端末部分を把持して切断刃に案内し、その切断刃から所望の長さだけ突出させたケーブル先端部分の絶縁外皮を前記切断刃により切断して除去するようにしたケーブル加工方法において、
前記ケーブル先端部分を前記切断刃により切断するにあたって、前記ケーブル先端部分を前記切断刃よりも先端寄りの位置で支持するようにしたことを特徴とするケーブル加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−197716(P2006−197716A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6241(P2005−6241)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(394009278)株式会社アイペックス (148)
【出願人】(503035615)株式会社シーアールティ (3)
【Fターム(参考)】