説明

ケーブル収容管路の洗浄装置

【課題】簡単な機構を装着することにより、ケーブル収容管路の管内洗浄を効率的かつ容易に行うことが可能な洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄装置5の周胴部26に設けられたスクレーパー10は、千鳥に配列して設けられ、ボルト12で固定されている。ボルト12が固定された側の反対側である先端部は周胴部26に接触しておらず、その先端部が凸状に構成されている。この先端部と管路1内面との間の密着性を高めると共に、錆や堆積物等の異物を切削した後に生じる反発力を確保するため、バネ鋼材が用いられる。さらに、スクレーパー10には、当該スクレーパー10自体を補強するための補強リブ11が設けられている。洗浄装置5が進行方向に移動すると、噴出孔8から高圧水9を噴射しつつ、スクレーパー10の先端部が管路1内面に付着した錆や堆積物等の異物を切削する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルが布設された金属管路内に発生した錆や土砂、堆積物等の異物を除去する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されている管路には、水道管やガス管の他に、通信ケーブルを挿通するための通信用管路や送電ケーブルを挿通するための電力用管路がある。これらの管路のうち金属管は、地中埋設期間が長期に亘ると、管内面に錆が発生したり、管の継ぎ手部から土砂等が流入して堆積する場合がある。
【0003】
従来、地中に埋設された管等の内部を清掃するための管内洗浄装置には様々な工夫がされており(特許文献1,2を参照)、例えば、ホースを先端に取り付けた洗浄装置であって、ホースから送られる高圧水を、洗浄装置本体に設けた噴射孔から噴出させ、高圧水により管内を清掃するものがある。
【0004】
このような管内洗浄装置は、高水圧の水流とホースを引くカにより管路内を移動せしめると共に、噴出孔から噴出する高圧水により、管内の錆や堆積物等の異物を除去し、管路外へ排出する。管内洗浄装置には、ケーブル等の布設物を内部に収容していない管を対象としたもの、及び、ケーブル等の布設物を内部に収容している管を対象としたものがある。
【0005】
ところで、近年の光通信需要への即応を図り、かつ既存ストックの有効活用を図るため、ケーブルを収容した管の余裕空間を利用し、さらに新たなケーブルを布設するケースが増加している。この余裕空間に錆や堆積物等の異物が発生すると、新たなケーブルを布設することができない場合がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−61417号公報
【特許文献2】特開平6−193129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の管内洗浄装置において、比較的長い管路長にケーブルが収容された管路の洗浄を行う場合には、ホースを引く力は管路長に比例して大きな力が必要になり、さらには洗浄装置に高圧水を供給するホースと管内に収容されたケーブルとが絡み合う現象が生じることが、検証実験により確認されている。
【0008】
高圧水を供給するホースと管内に収容されたケーブルとが絡み合う現象は、洗浄装置自体の構造に起因するものであり、また、洗浄装置に設けられた噴出孔から噴出する高圧水が洗浄装置本体に対して浮力及び推進力を与えると同時に洗浄装置に旋回力を与えることに起因するものである。
【0009】
図3は、従来の洗浄装置の概略構成を説明するための概略図及び断面図である。この洗浄装置22は、当該洗浄装置22本体の中心より下方に、ケーブル4を通す空間であるケーブル収容部25を有し、ケーブル4を覆うためのカバー23を備えている。また、洗浄装置22は、当該洗浄装置22本体の中心より上方に、高水圧を供給するホースを取り付けるための給水ホース取り付け口24を備え、この給水ホース取り付け口24から供給される高圧水の水路18を備えている。
【0010】
このような洗浄装置22では、ケーブル4を通す空間が下方に位置し、供給ホース取り付け口24が中心より上方に位置することから、洗浄装置22は回転し易くなる。さらに、高圧水が洗浄装置22に設けられた噴出孔(図示せず)から斜め前方に噴出されることにより、洗浄装置22には旋回力が加わる。これにより、ホースがケーブル4の裏側に回り込み、ホースとケーブル4とが絡み合う現象が生じる。この場合、管内における洗浄装置22及びホースの移動が拘束されることになる。
【0011】
また、同様に、ケーブル収容管を対象とした管内洗浄において、洗浄装置22に設けた噴出孔から高圧水を噴出させる際に、高圧力を洗浄装置22本体の内部から外部に向かって負荷することから、洗浄装置22本体を形成する構造体に亀裂を生じせしめ、洗浄装置22本体に通したケーブル4に高圧水が直接作用し、ケーブル4の外皮に損傷を与える事象が検証実験において明らかとなっている。
【0012】
そこで、本発明の目的は、従来のケーブルを収容した管路の洗浄における問題に鑑み、簡単な機構を装着することにより、ケーブル収容管路の管内洗浄を効率的かつ容易に行うことが可能な洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ケーブルが布設された管路内にて、前端部に取り付けられたホースから送られる高圧水を、周胴部に設けられた噴出孔から噴出させて、前記管路内を洗浄する装置であって、管路内面に付着した異物を切削するためのスクレーパーを前記周胴部に備えていることを特徴とする洗浄装置である。これにより、噴出孔による高圧水の噴射とスクレーパーによる切削とを併用することができるから、高圧水の噴射のみの場合に比べて、管路内面に付着した異物を効率的かつ容易に除去することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記スクレーパーが、該洗浄装置の移動方向に対して、高圧水が噴出する噴出孔よりも前側に備えていることを特徴とする洗浄装置である。これにより、スクレーパーによる異物の切削は高圧水の噴射の前に行われるから、異物を容易に切削及び排出することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記スクレーパーが、該洗浄装置の移動方向に対して千鳥掛けに2列に配置され、該スクレーパーの先端に設けられた凸部が弾性力により管内面に密着することを特徴とする洗浄装置である。スクレーパーが千鳥掛けに2列に配置されているから、管路内面の付着した異物を全周に亘って切削することができる。また、スクレーパーの先端に設けられた凸部が弾性力により管路内面に密着するようにしたから、管路内面をスクレーパーの弾性反力により押さえ、洗浄装置本体の回転を抑制することができる。したがって、ホースとケーブルとが絡み合う現象を防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記管内に布設されたケーブルを該洗浄装置の中央部に通すための中空円筒形2分割体による構造を成し、該2分割体のそれぞれに、前記高圧水を送るためのホース取り付け口を備えていることを特徴とする洗浄装置である。これにより、ケーブルは洗浄装置の中央部に通すことができる。また、高圧水は、ホース取り付け口から2分割体のそれぞれの空洞部を水路として給水され、噴出孔から噴出される。
【0017】
請求項5に記載の発明は、該洗浄装置の中央部に通されるケーブルを覆い、前記高圧水のケーブルへの作用を防止するための保護管を備えたことを特徴とする洗浄装置である。これにより、洗浄装置の噴出孔から噴出する高圧水が、管内に布設されたケーブルに作用することがないから、ケーブルの外皮に損傷を与えることがない。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、高圧水洗浄とスクレーパーによる洗浄とを併用することにより、管内洗浄を効率的かつ容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る管内洗浄装置の実施の形態の一例について説明する。図1は、本発明の実施例による洗浄装置を用いて管内洗浄を行う場合の全体構成を説明するための模式図であり、図2は、本発明の実施例による洗浄装置の概略構成を説明するための図である。
【0020】
まず、管内洗浄方法について説明する。図1において、洗浄の対象となる管路1には、マンホール2,3を繋ぐケーブル4が収容されており、マンホール2,3は管路1の延長方向両端に設けられている。本発明の実施例による洗浄装置を用いる管内洗浄方法は、洗浄装置5を牽引するための牽引ロープ7を引き通すことから始める。牽引ロープ7の引き通しは、予め管路1に通線した通線紐を利用して行う。
【0021】
次に、マンホール2から3の間に引き通した牽引ロープ7の先端を、マンホール3において、洗浄装置5の前端部に接続する。続けて、ホース6及び洗浄装置5を牽引するための他の牽引ロープを洗浄装置5の後端部に接続する。尚、図1では、後端部に接続された他の牽引ロープの記載は省略してある。そして、洗浄装置5にケーブル4を抱き込ませた後、洗浄装置5は、ホース6を介して送られる高圧水9を、当該洗浄装置5本体に設けられた噴出孔8から噴出しながら、牽引ロープ7によりマンホール3の側からマンホール2の側へ引き戻される。このときに、管路1内面に付着した錆や堆積物等の異物が除去される。尚、前述した他の牽引ロープは、洗浄装置5の牽引に異常が生じた場合に、マンホール3の側へ引き戻すために用いられる。
【0022】
この場合、給水車16は、給水ホース6を介して高圧水9を洗浄装置5に送る。反力受台19に設けられた電動ウィンチ17は、牽引ロープ7により洗浄装置5を、マンホール3の側からマンホール2の側へ引き戻す。また、マンホール2に設けられた水中ポンプ20は、除去した錆や堆積物等の異物を含んだ排水を沈殿槽21へ送る。
【0023】
次に、洗浄装置5について説明する。図2は、洗浄装置5を説明するための図であり、(1)は概略図を、(2)は断面図及び側面図を、(3)はスクレーパー10の詳細図をそれぞれ示している。図2(1)及び(2)において、洗浄装置5本体は、中空円筒形状の2分割構造を成しており、分割体27−1,27−2により構成され、ボルト接合にて一体化されている。分割体27−1,27−2は、(2)において中央横に分割され、上部の分割体27−1及び下部の分割体27−2により構成される。また、分割体27−1,27−2それぞれの前端部には、牽引ロープ取り付け部15が設けられており、後端部には、ホース6を取り付けるためのホース取り付け部14及び牽引ロープ取り付け部15が設けられている。牽引ロープ取り付け部15は、その中央に牽引ロープ7のフックが掛かるように輪型を成している。このような構造にすることにより、ケーブル4を洗浄装置5本体の中央に配置することが可能となるから、洗浄装置5本体にケーブル4を抱き込んで通すためのケーブル収容部28を中央に設けることができる。
【0024】
これにより、洗浄装置5の重心は、図3に示した従来の洗浄装置22の重心に比べて洗浄装置5の中心部に移る。この重心の移動により、高圧水9の噴出時に洗浄装置5付近で発生する旋回力によってホース6がケーブル4の裏側へ回り込む現象を防止することができる。
【0025】
図1に示した給水車16から送られる高圧水9は、組み合わせにより中空円筒形を成す分割体27に接続されている給水ホース6から分割体27の内部に設けられた空胴部を水路18として通り、後端部に設けられた噴出孔8から噴出される。この噴出孔8は、洗浄装置5本体の円周上に等間隔で複数個配置されている。水路18を通った高圧水9は、噴出孔8から斜め前方に向かって噴出され、管路1内面に付着した錆や堆積物等の異物を除去する。
【0026】
また、分割体27には複数個のスクレーパー10が設けられている。このスクレーパー10は、(1)及び(3)に示すように、洗浄装置5の周胴部26に、千鳥に配列して設けられ、ボルト12で固定されている。ボルト12が固定された側の反対側である先端部は周胴部26に接触しておらず、その先端部が凸状に構成されている。この先端部と管路1内面との間の密着性を高めると共に、管路1内面に付着した錆や堆積物等の異物を切削した後に生じる反発力を確保するため、例えば、一般構造用鋼材に比べて機械的性質に優れるバネ鋼材が用いられる。さらに、スクレーパー10には、当該スクレーパー10自体を補強するための補強リブ11が設けられている。スクレーパー10の先端部と管路1内面との間の密着性を高めることにより、異物を容易に切削することができ、さらに先端部から管路1内面への押力(管路1外へ向かう力)が生じるから、洗浄装置22本体の回転を抑制することができる。これにより、ホースとケーブル4とが絡み合う現象を防止することができ、管路1内洗浄を効率的かつ容易に行うことができる。
【0027】
(1)を参照して、洗浄装置5が進行方向である左へ移動すると、噴出孔8から高圧水9を噴射しつつ、スクレーパー10の先端部が管路1内面に付着した錆や堆積物等の異物を切削する。この場合、スクレーパー10はバネ鋼材が用いられているから、異物からの反発力を吸収することができる。
【0028】
このように、スクレーパー10は、洗浄装置5の進行方向に対し、管路1内面全周に亘り、互い違いの2列に千鳥掛けに隙間無く配列するようにしたから、錆や堆積物等の異物を除去することが可能となり、高圧水9の噴出による洗浄を補完することが可能となる。
【0029】
管路1に収容されているケーブル4は、マンホール3において洗浄装置5本体に予め抱き込ませて通しておく必要がある。この場合、高圧水9が影響して洗浄装置22本体に亀裂を生ぜしめ、ケーブル4の外皮に高圧水9が直接作用しないように、半割り構造の防護管13にてケーブル4を覆った後、洗浄装置5の2つの分割体27−1,27−2で抱き込み、ボルト接合にて2つの分割体27−1,27−2を一体化する。尚、半割り構造の防護管13は、分割体27−1,27−2を一体化した洗浄装置5にボルト等で接合する。また、この半割り構造の防護管13の先端は折り返し形状を成している。これにより、ケーブル4の外皮への高圧水9の作用を確実に防止することができる。
【0030】
以上説明したように、本発明の実施例による洗浄装置5によれば、噴出孔8による高圧水9の噴射とスクレーパー10による切削とを併用することにより、一層効果的な洗浄を実現することができる。また、洗浄装置5を中空円筒形2分割構造としたことから、ケーブル4を洗浄装置5本体の中央に位置させることができ、さらに、本体周胴部26へスクレーパー10を装着するようにしたことから、スクレーパー10の先端部を管路1内面に密着させることができる。これにより、洗浄装置5本体の回転を抑制し、高圧水9を供給するためのホース6及び牽引ロープ7が既設ケーブル4の裏側に回り込むことがなくなる。
【0031】
また、半割り構造の防護管13にケーブル4を通すことにより、噴出孔8から噴出される高圧水9によって、洗浄装置5本体に亀裂が入り、その亀裂から高圧水9が噴出したとしても、ケーブル4の外皮が傷つけられることはない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例による洗浄装置を用いて管内洗浄を行う場合の全体構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施例による洗浄装置の概略構成を説明するための図である。
【図3】従来の洗浄装置の概略構成を説明するための概略図及び断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 管路
2,3 マンホール
4 ケーブル
5,22 洗浄装置
6 給水ホース
7 牽引ロープ
8 噴出孔
9 高圧水
10 スクレーパー
11 補強リブ
12 ボルト
13 半割り構造の防護管
14 ホース取り付け部
15 牽引ロープ取り付け部
16 給水車
17 電動ウィンチ
18 水路
19 反力受台
20 水中ポンプ
21 沈殿槽
23 カバー
24 給水ホース取り付けロ
25,28 ケーブル収容部
26 周胴部
27 分割体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルが布設された管路内にて、前端部に取り付けられたホースから送られる高圧水を、周胴部に設けられた噴出孔から噴出させて、前記管路内を洗浄する装置であって、
管路内面に付着した異物を切削するためのスクレーパーを前記周胴部に備えていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記スクレーパーは、該洗浄装置の移動方向に対して、高圧水が噴出する噴出孔よりも前側に備えていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
前記スクレーパーは、該洗浄装置の移動方向に対して千鳥掛けに2列に配置され、該スクレーパーの先端に設けられた凸部が弾性力により管内面に密着することを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記管内に布設されたケーブルを該洗浄装置の中央部に通すための中空円筒形2分割体による構造を成し、該2分割体のそれぞれに、前記高圧水を送るためのホース取り付け口を備えていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
該洗浄装置の中央部に通されるケーブルを覆い、前記高圧水のケーブルへの作用を防止するための保護管を備えたことを特徴とする請求項4に記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−325470(P2007−325470A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155984(P2006−155984)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(506136195)株式会社キャプティ (6)
【Fターム(参考)】