説明

ケーブル構造

【課題】部品点数の増加と外形の増大を抑えることが可能なケーブル構造を提供する。
【解決手段】駆動部と、この駆動部によって駆動される被動部とが、2本の第1インナーワイヤ(81)、第2インナーワイヤ(82)とで連結され、第1インナーワイヤ(81)を駆動部によって被動部に加えられた付勢力に抗して引くことで被動部を一方向に作動させ、第2インナーワイヤ(82)を駆動部によって付勢力の方向に引くことで被動部を他方向に作動させるケーブル構造において、ケーブル(83,83A)は、第1インナーワイヤ(81)が移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー(116)と、ライナー(116)を収容するスプリング(114)と、第2インナーワイヤ(82)が移動自在に挿入されたスプリング(115)と、これらのスプリング(114)及びスプリング(115)を被覆して束ねる被覆部材(112,112A)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部及びこの駆動部によって駆動される被動部の間に渡された2本のケールブが1本に束ねられたケーブル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のバーハンドルに設けられるスロットルグリップにスロットルケーブルの一端が連結され、このスロットルケーブルの他端がエンジンの吸気装置を構成するキャブレタ又はスロットルボディ内のスロットルバルブに連結されている。スロットルグリップを一方に回動させると、スロットルケーブル内に挿入されたインナーワイヤが一方向に引かれてスロットルバルブが開き、また、スロットルグリップを他方に回動させると、スロットルケーブル内のインナーワイヤがリターンスプリングの弾性力によって他方向に戻り、スロットルバルブが閉じる。
このようなスロットルグリップ側とスロットルバルブ側とを連結するケーブルを2本設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方のケーブルは、インナーワイヤを引くことでスロットルバルブを開き、他方のケーブルは、インナーワイヤを引くことでスロットルバルブを閉じる作用をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−193869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記2本のケーブルをバーハンドルとキャブレタ(又はスロットルボディ)との間に組付ける場合、車体フレームや車載部品、各種カバー等の隙間に通すのは、ケーブルが1本の場合よりも多くの工数が必要になる。
そこで、2本のケーブルをそのまま結束部材で1本に束ねることが考えられるが、それでは、部品点数が多くなってコストアップを招き、更に、束ねられた1本のケーブルの外形が、2本のケーブルの外形を単純に合わせた場合よりも結束部材の分だけ大きくなって狭い隙間などへの組付けが困難になる場合がある。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、部品点数の増加と外形の増大を抑えることが可能なケーブル構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、駆動部(74,203)と、この駆動部(74,203)によって駆動される被動部(92,202)とが、2本のインナーワイヤ(81,82)で連結され、一方のインナーワイヤを第1インナーワイヤ(81)、他方のインナーワイヤを第2インナーワイヤ(82)とするときに、前記第1インナーワイヤ(81)を前記駆動部(74,203)によって前記被動部(92,202)に加えられた付勢力に抗して引くことで前記被動部(92,202)を一方向に作動させ、前記第2インナーワイヤ(82)を前記駆動部(74,203)によって前記付勢力の方向に引くことで前記被動部(92,202)を他方向に作動させるケーブル構造において、前記ケーブル(83,83A,83B,131,131A,131B)は、前記第1インナーワイヤ(81)が移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー(116)と、該ライナー(116)を収容する第1アウターチューブ(114)と、前記第2インナーワイヤ(82)が移動自在に挿入された第2アウターチューブ(115,134)と、これらの第1アウターチューブ(114)及び第2アウターチューブ(115,134)を被覆して束ねる被覆部材(112,112A,132,135,136)とを備えることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、2本のアウターチューブを被覆部材で束ねて1本のケーブルとすることで、例えば、ケーブルを駆動部と被動部との間に存在する隙間等に通して駆動部と被動部とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてケーブルの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。また、2本のアウターチューブの被覆を一つの被覆部材で共用し、被覆のための被覆部材で2本のアウターチューブを束ねる部材を兼用するので、束ねるための特別な部材を設ける必要がなく、部品点数を減らすことができる。更に、第1インナーワイヤがライナー内に移動自在に挿入されているので、2本のインナーワイヤ同士が干渉することがないため、2本のインナーワイヤの摺動性及び耐久性を確保することができる。特に、駆動部で付勢力に抗して被動部を駆動させる場合に、大きな引張力が作用する第1インナーワイヤをライナー内に収容することで、樹脂製のライナーで第1インナーワイヤの摺動性を促すことができ、第1インナーワイヤの耐久性を確保することができる。また、付勢力の向きに引かれる第2インナーワイヤでは、小さな引張力しか作用しないため、ライナーを用いる必要がないので、ケーブル全体の外形をより小さくすることができる。
【0007】
また、上記構成において、前記第2アウターチューブ(134)は、前記第1アウターチューブ(114)よりも小径に形成されるようにしても良い。この構成によれば、第2アウターチューブの内側にライナーを設けず、第2アウターチューブを小径にすることで、ケーブル全体の外形を小さくすることができ、狭いスペースでもケーブルを容易に通すことができ、また、ケーブルの屈曲性も向上するので、ケーブルの組付性を向上させることができる。
また、上記構成において、前記被覆部材(112,112A)は、離間させた前記第1アウターチューブ(114)と前記第2アウターチューブ(115)とが連結部(112c,112e)で連結され、この連結部(112c,112e)に、前記ケーブル(83,83A)を固定する際に使用する取付穴(112g,112h)が設けられるようにしても良い。この構成によれば、取付穴にビス等を挿入して、ケーブルを容易に部材等に取付けることができる。
【0008】
また、本発明は、駆動部(74,203)と、この駆動部(74,203)によって駆動される被動部(92,202)とが、2本のインナーワイヤ(81,82)で連結され、一方のインナーワイヤを第1インナーワイヤ(81)、他方のインナーワイヤを第2インナーワイヤ(82)とするときに、前記第1インナーワイヤ(81)を前記駆動部(74,203)によって前記被動部(92,202)に加えられた付勢力に抗して引くことで前記被動部(92,202)を一方向に作動させ、前記第2インナーワイヤ(82)を前記駆動部(74,203)によって前記付勢力の方向に引くことで前記被動部(92,202)を他方向に作動させるケーブル構造において、前記ケーブル(141,141A,141B,141C,141D)は、前記第1インナーワイヤ(81)が移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー(116,145a)と、該ライナー(116,145a)を収容するとともに前記第2インナーケーブル(82)が移動自在に挿入されたアウターチューブ(142)とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、一つのアウターチューブ内に、2本のインナーワイヤを収容して1本のケーブルとするので、例えば、ケーブルを駆動部と被動部との間に存在する隙間等に通して駆動部と被動部とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてケーブルの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。
また、第1インナーワイヤがライナー内に移動自在に挿入されているので、2本のインナーワイヤ同士が干渉することがなく、2本のインナーワイヤの摺動性及び耐久性を確保することができる。
特に、駆動部で付勢力に抗して被動部を駆動させる場合に、大きな引張力が作用する第1インナーワイヤをライナー内に収容することで、樹脂製のライナーで第1インナーワイヤの摺動性を促すことができ、第1インナーワイヤの耐久性を確保することができる。また、付勢力の向きに引かれる第2インナーワイヤでは、小さな引張力しか作用しないため、ライナーを用いる必要がないので、ケーブル全体の外形をより小さくすることができる。
【0010】
上記構成において、前記ライナー(145a)の外周面に、該ライナー(145a)の長手方向に沿うように凹部(145e,146e,147e)を形成するための半径方向外側に延びる一対の突起部(145b,145c,146b,146c,147b,147c)が設けられ、該突起部(145b,145c,146b,146c,147b,147c)間の前記凹部(145e,146e,147e)に前記第2インナーケーブル(82)が配置されるようにしても良い。この構成によれば、ライナーの凹部内に第2インナーワイヤを容易に位置決めすることができる。また、ライナーと第2インナーワイヤとの接触面積が広くなり、第2インナーワイヤの摺動性を高めることができる。
また、上記構成において、前記突起部(145b,145c,146b,146c,147b,147c)は、前記ライナー(145a)の長手方向全域に亘って延びるリブであっても良い。この構成によれば、例えば、引抜き成形により容易にリブ付きのライナーを成形することができ、生産性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、駆動部(74,203)と、この駆動部(74,203)によって駆動される被動部(92,202)とが、2本のインナーワイヤ(81,82)で連結され、一方のインナーワイヤを第1インナーワイヤ(81)、他方のインナーワイヤを第2インナーワイヤ(82)とするときに、前記第1インナーワイヤ(81)を前記駆動部(74,203)によって引くことで前記被動部(92,202)を一方向に作動させ、前記第2インナーワイヤ(82)を前記駆動部(74,203)によって引くことで前記被動部(92,202)を他方向に作動させるケーブル構造において、前記ケーブル(151,151A,151B)は、前記第1インナーワイヤ(81)が移動自在に挿入された第1ライナー(116,158a)と、前記第2インナーワイヤ(82)が移動自在に挿入された第2ライナー(117,158b)と、これらの第1ライナー(116,158a)及び第2ライナー(117,158b)を収容するアウターチューブ(142,152)と、該アウターチューブ(142,152)の内壁と前記第1ライナー(116)及び前記第2ライナー(117)との隙間に配置された可撓性を有するスペーサー(153,154,155)とから構成され、前記第1ライナー(116)及び前記第2ライナー(117)は樹脂製のチューブからなることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、一つのアウターチューブ内に、2本のインナーワイヤを収容して1本のケーブルとするので、例えば、ケーブルを駆動部と被動部との間に存在する隙間等に通して駆動部と被動部とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてケーブルの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。
また、第1インナーワイヤは第1ライナー内に挿入され、第2インナーワイヤは第2ライナーに挿入されているので、2本のインナーワイヤ同士が干渉することがなく、2本のインナーワイヤの摺動性及び耐久性を確保することができる。更に、第1ライナー及び第2ライナーをチューブ状の簡単な形状にしてコストを低減することができる。
また、アウターチューブの内壁と第1ライナー及び第2ライナーとの隙間に、アウターチューブ、第1ライナー、第2ライナーとは別体のスペーサーを配置したので、ケーブルとしての屈曲性を確保した上でスペーサーによってアウターチューブ内での第1ライナー及び第2ライナーのがたつきを抑えることができる。
【0013】
また、上記構成において、前記第1ライナー(116)と前記第2ライナー(117)とは別体に構成され、前記スペーサー(153,154,155)は、第1ライナー(116)と第2ライナー(117)との境界部分に出来る凹部(157)に入り込むように配置されるようにしても良い。この構成によれば、第1ライナーと第2ライナーとを別体にすることで、ケーブル全体の屈曲性を確保しやすなり、更に、第1ライナーと第2ライナーとの境界部分に形成される凹部に入り込むようにスペーサーを配置することで、スペーサーをアウターチューブ内に容易に位置決めすることができる。
また、上記構成において、前記第1ライナー(158a)と前記第2ライナー(158b)とは一体に構成され、前記スペーサー(154,155)は、第1ライナー(158a)と第2ライナー(158b)との境界部分に出来る凹部(159)に入り込むように配置されるようにしても良い。この構成によれば、部品点数を削減できる上に、第1ライナーと第2ライナーとの境界部分に形成される凹部に入り込むようにスペーサーを配置することで、スペーサーをアウターチューブ内に容易に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ケーブルが、第1インナーワイヤが移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナーと、該ライナーを収容する第1アウターチューブと、第2インナーワイヤが移動自在に挿入された第2アウターチューブと、これらの第1アウターチューブ及び第2アウターチューブを被覆して束ねる被覆部材とを備えるので、2本のアウターチューブを被覆部材で束ねて1本のケーブルとすることで、例えば、ケーブルを駆動部と被動部との間に存在する隙間等に通して駆動部と被動部とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてケーブルの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。また、2本のアウターチューブの被覆を一つの被覆部材で共用し、被覆のための被覆部材で2本のアウターチューブを束ねる部材を兼用するので、束ねるための特別な部材を設ける必要がなく、部品点数を減らすことができる。更に、第1インナーワイヤがライナー内に移動自在に挿入されているので、2本のインナーワイヤ同士が干渉することがないため、2本のインナーワイヤの摺動性及び耐久性を確保することができる。特に、駆動部で付勢力に抗して被動部を駆動させる場合に、大きな引張力が作用する第1インナーワイヤをライナー内に収容することで、樹脂製のライナーで第1インナーワイヤの摺動性を促すことができ、第1インナーワイヤの耐久性を確保することができる。また、付勢力の向きに引かれる第2インナーワイヤでは、小さな荷重しか作用しないため、ライナーを用いる必要がないので、ケーブル全体の外形をより小さくすることができる。
【0015】
また、第2アウターチューブは、第1アウターチューブよりも小径に形成されているので、第2アウターチューブの内側にライナーを設けず、第2アウターチューブを小径にすることで、ケーブル全体の外形を小さくすることができ、狭いスペースでもケーブルを容易に通すことができ、また、ケーブルの屈曲性も向上するので、ケーブルの組付性を向上させることができる。
また、被覆部材は、離間させた第1アウターチューブと第2アウターチューブとが連結部で連結され、この連結部に、ケーブルを固定する際に使用する取付穴を設けたので、取付穴にビス等を挿入して、ケーブルを容易に部材等に取付けることができる。
【0016】
また、ケーブルが、第1インナーワイヤが移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナーと、該ライナーを収容するとともに第2インナーケーブルが移動自在に挿入されたアウターチューブとを備えるので、一つのアウターチューブ内に、2本のインナーワイヤを収容して1本のケーブルとするため、例えば、ケーブルを駆動部と被動部との間に存在する隙間等に通して駆動部と被動部とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてケーブルの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。
また、第1インナーワイヤがライナー内に移動自在に挿入されているので、2本のインナーワイヤ同士が干渉することがなく、2本のインナーワイヤの摺動性及び耐久性を確保することができる。
特に、駆動部で付勢力に抗して被動部を駆動させる場合に、大きな引張力が作用する第1インナーワイヤをライナー内に収容することで、樹脂製のライナーで第1インナーワイヤの摺動性を促すことができ、第1インナーワイヤの耐久性を確保することができる。また、付勢力の向きに引かれる第2インナーワイヤでは、小さな引張力しか作用しないため、ライナーを用いる必要がないので、ケーブル全体の外形をより小さくすることができる。
【0017】
また、ライナーの外周面に、該ライナーの長手方向に沿うように凹部を形成するための半径方向外側に延びる一対の突起部が設けられ、該突起部間の凹部に第2インナーケーブルが配置されるので、ライナーの凹部内に第2インナーワイヤを容易に位置決めすることができる。また、ライナーと第2インナーワイヤとの接触面積が広くなり、第2インナーワイヤの摺動性を高めることができる。
また、突起部は、ライナーの長手方向全域に亘って延びるリブなので、例えば、引抜き成形により容易にリブ付きのライナーを成形することができ、生産性を向上させることができる。
【0018】
また、ケーブルは、第1インナーワイヤが移動自在に挿入された第1ライナーと、第2インナーワイヤが移動自在に挿入された第2ライナーと、これらの第1ライナー及び第2ライナーを収容するアウターチューブと、該アウターチューブの内壁と第1ライナー及び第2ライナーとの隙間に配置された可撓性を有するスペーサーとから構成され、第1ライナー及び第2ライナーは樹脂製のチューブからなるので、一つのアウターチューブ内に、2本のインナーワイヤを収容して1本のケーブルとするため、例えば、ケーブルを駆動部と被動部との間に存在する隙間等に通して駆動部と被動部とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてケーブルの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。
【0019】
また、第1インナーワイヤは第1ライナー内に挿入され、第2インナーワイヤは第2ライナーに挿入されているので、2本のインナーワイヤ同士が干渉することがなく、2本のインナーワイヤの摺動性及び耐久性を確保することができる。更に、第1ライナー及び第2ライナーをチューブ状の簡単な形状にしてコストを低減することができる。
また、アウターチューブの内壁と第1ライナー及び第2ライナーとの隙間に、アウターチューブ、第1ライナー、第2ライナーとは別体のスペーサーを配置したので、ケーブルとしての屈曲性を確保した上でスペーサーによってアウターチューブ内での第1ライナー及び第2ライナーのがたつきを抑えることができる。
【0020】
また、第1ライナーと第2ライナーとは別体に構成され、スペーサーは、第1ライナーと第2ライナーとの境界部分に出来る凹部に入り込むように配置されるので、第1ライナーと第2ライナーとを別体にすることで、ケーブル全体の屈曲性を確保しやすなり、更に、第1ライナーと第2ライナーとの境界部分に形成される凹部に入り込むようにスペーサーを配置することで、スペーサーをアウターチューブ内に容易に位置決めすることができる。
また、第1ライナーと第2ライナーとは一体に構成され、スペーサーは、第1ライナーと第2ライナーとの境界部分に出来る凹部に入り込むように配置されるので、部品点数を削減できる上に、第1ライナーと第2ライナーとの境界部分に形成される凹部に入り込むようにスペーサーを配置することで、スペーサーをアウターチューブ内に容易に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を適用した自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】自動二輪車のバーハンドル端部を示す要部説明図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】自動二輪車のスロットルボディを示す正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のケーブル構造を示す説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態のケーブル構造における端部の外観を示す外観図である。
【図7】本発明の第2実施形態のケーブル構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態のケーブル構造を示す断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態のケーブル構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態のケーブル構造を示す断面図である。
【図11】本発明の第6実施形態のケーブル構造を示す説明図である。
【図12】本発明の第7実施形態のケーブル構造における端部の外観を示す外観図である。
【図13】本発明の第8実施形態のケーブル構造における端部の外観を示す外観図である。
【図14】本発明の第9実施形態のケーブル構造を排気制御弁駆動機構に適用した例を示す説明図である。
【図15】図14のXV−XV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号Lは車体左方を示している。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態を適用した自動二輪車を示す左側面図である。
自動二輪車10は、骨格となる車体フレーム11と、この車体フレーム11の前端部に備えるヘッドパイプ12に操舵自在に取付けられたフロントフォーク13と、このフロントフォーク13の下端部に車軸14を介して回転自在に支持された前輪16と、フロントフォーク13の上端部に取付けられたバーハンドル17と、車体フレーム11の後部上部に備えるリヤフレーム18にピボット軸21を介して上下搖動自在に支持されたパワーユニット22と、このパワーユニット22を構成する無段変速機23の後端部に車軸24を介して取付けられた後輪25と、リヤフレーム18及び無段変速機23のそれぞれの後端に渡されたリヤクッションユニット26と、リヤフレーム18の上部に取付けられたタンデム式のシート27と、車体フレーム11の前部に取付けられた燃料タンク28と、車体を覆う車体カバー31とを備えるスクータ型車両である。上記したバーハンドル17の右端部には、本発明のケーブルであるスロットルケーブル83(図3参照)の一端側に連結されるスロットルグリップ74(図2参照)が設けられている。
ここで、符号33は前輪16の上方を覆うフロントフェンダ、34は運転者の風よけとなるウインドスクリーン、36はバーハンドル17の前方に配置されたメータ、37はエアクリーナ、38は同乗者が体を支えるために手で掴むグラブレール、42は後輪25の上方を覆うリヤフェンダ、43は起立させた状態で車体を支えるように車体フレーム11に収納可能に設けられたスタンドである。
【0023】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方斜め下方に延びるダウンフレーム51と、このダウンフレーム51の上部からダウンフレーム51よりも緩やかな傾斜角度で後方斜め下方に延びるアッパフレーム52と、このアッパフレーム52の後端部に連結されて後方斜め上方に延びるともに後端が連結された左右一対のリヤフレーム18,18(手前側の符号18のみ図示)と、ダウンチューブ51の下端部に連結されて後方及び後方斜め上方に延び且つリヤフレーム18,18の中間部下部に接続された左右一対のロアフレーム53,53(手前側の符号53のみ図示)とを備え、ロアフレーム53,53に燃料タンク28及びスタンド43が取付けられている。
【0024】
パワーユニット22は、その前部に備えるシリンダ部55の軸線が前上がりに傾斜したエンジン56と、このエンジン56の後部に一体に設けられた無段変速機23とから構成されている。エンジン56は、シリンダ部55に設けられたシリンダヘッド57の上部に吸気装置58が接続され、シリンダヘッド57の下部に排気装置(不図示)が接続されている。吸気装置58は、シリンダヘッド57に取付けられた吸気管61と、この吸気管61に接続されたスロットルボディ62と、このスロットルボディ62にコネクティングチューブ63を介して接続されたエアクリーナ37とからなる。上記のスロットルボディ62は、本発明のケーブル(スロットルケーブル83(図3参照))の他端側に連結されている。
【0025】
車体カバー31は、ヘッドパイプ12及びフロントフォーク13の前方を覆うフロントカバー64と、このフロントカバー64の後方に配置された左右一対のレッグシールド65,65(手前側の符号65のみ図示)と、これらのレッグシールド65,65の下端にそれぞれ連なるステップフロア66,66(手前側の符号66のみ図示)と、左右のステップフロア66,66間で上方に膨出して燃料タンク28の上方を覆うフロアトンネル67と、左右のステップフロア66,66のそれぞれの外側縁から下方に延びるスカート68,68(手前側の符号67のみ図示)と、これらのステップフロア66,66、フロアトンネル67及びスカート68,68に連続するように設けられるとともに車体フレーム11の後部を覆うリヤカバー69とからなる。
【0026】
図2は、自動二輪車のバーハンドル端部を示す要部説明図である。
バーハンドル17の右端部には、二つ割りのアッパケース71及びロアケース72が合わされたスイッチケース73と、このスイッチケース73の外側方に近接して配置されたスロットルグリップ74とが取付けられている。
スイッチケース73は、エンジン56(図2参照)を強制的に停止させるためにアッパケース71に取付けられたエンジンストップスイッチ75と、ヘッドランプ(不図示)の光軸を切り換えるためにアッパケース71とロアケース72との合わせ面近傍に取付けられたライティングスイッチ76と、エンジン56を始動させるためにロアケース72に取付けられたスタータスイッチ77とを備える。
スロットルグリップ74は、運転者がバーハンドル17の軸心回りに回動操作するためにバーハンドル17に回動自在に取付けられている。
【0027】
図3は、図2のIII−III線断面図である。
スイッチケース73内には、バーハンドル17回りに回動自在に設けられてスロットルグリップ74(図2参照)と一体的に回動するスロットル回動部材80が設けられ、このスロットル回動部材80に2本のインナーワイヤとしての第1インナーワイヤ81と第2インナーワイヤ82とを有するスロットルケーブル83が連結されている。
スロットルケーブル83は、ロアケース72の下部に取付けられた車体後方に湾曲する2本のパイプ部材85,86を介してスロットル回動部材80に連結されている。
第1インナーワイヤ81は、先端に円柱状の端部部材87を備え、スロットル回動部材80の前側に設けられたスリット部80aに第1インナーワイヤ81を通した後に穴部80bに端部部材87を挿入することで第1インナーワイヤ81がスロットル回動部材80に連結され、第1インナーワイヤ81は、スロットル回動部材80の外周面の周方向に形成された凹部80c内に入り込みながらパイプ部材85内に延びている。
第2インナーワイヤ82は、第2インナーワイヤ82と同様に、先端に円柱状の端部部材87を備え、スロットル回動部材80の後側に設けられたスリット部80dに第2インナーワイヤ82を通した後に穴部80eに端部部材87を挿入することで第2インナーワイヤ82がスロットル回動部材80に連結され、第2インナーワイヤ82は、スロットル回動部材80の凹部80c内に入り込みながらパイプ部材86内に延びている。
【0028】
図4は、自動二輪車のスロットルボディの正面図である。
スロットルボディ62は、エアクリーナ37(図1参照)側からエンジン56(図1参照)側に流れる吸気の通路となる吸気通路62aが形成されたボディ62bと、吸気通路62aを貫通するようにボディ62bに回動自在に取付けられたスロットル軸91と、このスロットル軸91に吸気通路62aを開閉させるために取付けられたスロットルバルブ92と、スロットル軸91のボディ62bから外部に突出した部分に取付けられたスロットルドラム93とを備え、スロットルドラム93にスロットルケーブル83が連結されている。なお、符号62dはコネクティングチューブ63と接続するためにボディ62bに形成された上流側接続部、62eは吸気管61側と接続するためにボディ62bに形成された下流側接続部である。
【0029】
第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82は、それぞれの端部に円柱状の端部部材96,97が設けられ、スロットルドラム93は、外周部近傍に、第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82を通すスリット部93a,93bと、これらのスリット部93a,93bに連通する穴部93c,93dとが形成され、スリット部93a,93bを通じて穴部93c,93dに端部部材96,97が挿入されて、スロットルドラム93に第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82が連結される。
また、ボディ62bとスロットルドラム93との間にはリターンスプリング98が設けられ、このリターンスプリング98によってスロットルバルブ92が閉じる方向(図の反時計方向)に付勢されている。即ち、リターンスプリング98は、第1インナーワイヤ81を引張る方向に付勢している。
【0030】
スロットルケーブル83は、ケーブル本体100の端部に第1インナーワイヤ81側の取付部101と、第2インナーワイヤ82側の取付部102とが設けられ、これらの取付部101,102がスロットルボディ62の側面に設けられたブラケット104に取付けられている。
各取付部101,102は、筒状の取付金具106と、この取付金具106の外周面に形成されたおねじ106aにねじ結合する2つのナット107,107とからなり、ブラケット104に設けられた取付穴(不図示)に取付金具106が挿入され、2つのナット107,107でブラケット104を挟むように締め込むことで、ブラケット104に2つの取付部101,102が取付けられる。
【0031】
図5は、本発明の第1実施形態のケーブル構造を示す説明図であり、図5(A)はケーブル構造を示す斜視図、図5(B)はケーブル構造を示す断面図、図5(C)は図5(B)のケーブル構造の変形例を示す断面図である。
図5(A)に示すように、スロットルケーブル83は、2本のインナーワイヤ(第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82)が被覆部材112で1本に束ねられ、第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82間に車体へ固定するための固定部112cが設けられ、この固定部112cに取付用のビス113を通す取付用丸穴112gと取付用長穴112hとが交互に開けられた部品である。
このように、スロットルケーブル83に取付用丸穴112g及び取付用長穴112hを設けることで、車体側へスロットルケーブル83を取付ける場合に、ビスのみで容易に取付けることができ、特別に取付部材を準備する必要がなく、コストを低減することができる。また、取付用長穴112hを設けることで、取付用長穴112hに挿入したビスをねじ込む車体側の位置に許容範囲を設定することができ、スロットルケーブル83の取付自由度を増すことができる。
【0032】
図5(B)に示すように、スロットルケーブル83は、コイル状に巻かれた鋼製のスプリング114,115(スプリング114は第1アウターチューブ、スプリング115は第2アウターチューブを構成する。)と、一方のスプリング114内に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー116と、このライナー116内に移動自在に挿入された鋼製の第1インナーワイヤ81と、他方のスプリング115内に移動自在に挿入された鋼製の第2インナーワイヤ82と、スプリング114,115をそれぞれ覆う第1チューブ112a、第2チューブ112bが形成されるとともにこれらの第1チューブ112a及び第2チューブ112bを連結するように一体成形された固定部112cを備える樹脂製の被覆部材112とからなる。上記した「チューブ状」とは、ここでは、「可撓性を有するとともにチューブのような筒形状」のことである(以下同じ。)。
第1インナーワイヤ81と第2インナーワイヤ82とは、材質及び外径が同一の部品であり、材質としては、ステンレス鋼が好適である。
【0033】
被覆部材112としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレンが好適である。
固定部112cは、第1チューブ112aと第2チューブ112bとのそれぞれの断面の中心を結ぶ直線118上に直線118に沿って形成されている。
スプリング114とスプリング115とは、識別のために異なる符号を付けているが、同一形状の部品であり、外径は同一である。
ライナー116は、可撓性を有する部材であり、樹脂製とすることで内部に挿入された第1インナーワイヤ81の摺動性を高める。ライナー116の材質としては、ポリエチレン、ポリアセタールが好適である。
【0034】
図5(C)には、図5(B)に示したスロットルケーブル83の変形例であるスロットルケーブル83Aを示している。
スロットルケーブル83Aは、スロットルケーブル83(図5(B)参照)に対して固定部112eの位置のみが異なっている。即ち、スロットルケーブル83Aは、第1チューブ112aと第2チューブ112bとのそれぞれの断面の中心を結ぶ直線118を外れた位置、好ましくは、第1チューブ112a及び第2チューブ112bの外周面の接線119を含み、この接線119に沿って形成されている。
上記した固定部112eを備えることで、固定部112eの接線119側を車体に当ててスロットルケーブル83Aを車体に密着させて取付けることができる。
【0035】
図6は、本発明の第1実施形態のケーブル構造における端部の外観を示す外観図であり、図6(A)は第1実施形態のケーブル構造の端部を示す正面図、図6(B)は図6(A)のケーブル構造の変形例の端部を示す正面図である。
図6(A)に示すように、スロットルケーブル83は、端部では、第1チューブ112aと第2チューブ112bとが先端にいくにつれて次第に大きく離間するように配置され、これに伴って固定部112cも次第に幅が広くなり、固定部112cの縁部112dは内側に凸に湾曲している。
このように、縁部112dを内側に凸に湾曲させることで、第1チューブ112aと第2チューブ112bとの間隔が広げられる方向に外力が作用した場合に、固定部112cに作用する外力を分散させることができる。
図6(B)に示すスロットルケーブル83の変形例であるスロットルケーブル83Bは、スロットルケーブル83(図6(A)参照)と固定部112fの縁部の形状が異なっている。即ち、スロットルケーブル83Bは、端部では、第1チューブ112aと第2チューブ112bとが先端にいくにつれて次第に大きく離間するように配置され、これに伴って固定部112fも次第に幅が広くなり、固定部112cの縁部112jはほぼ直線的に形成されている。
【0036】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態のケーブル構造を示す断面図であり、図7(A)は外形が長円形のケーブル構造を示す断面図、図7(B)は外形が略三角形状のケーブル構造(第1変形例)を示す断面図、図7(C)は被覆部材が中間部で繋がったケーブル構造(第2変形例)を示す断面図である。図5に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図7(A)に示すように、スロットルケーブル131は、スプリング114,115と、ライナー116と、第1インナーワイヤ81と、スプリング115内に移動自在に挿入された第2インナーワイヤ82と、スプリング114,115を束ねて覆う樹脂製の被覆部材132とからなる。
【0037】
図7(B)において、スロットルケーブル131(図7(A)参照)の変形例であるスロットルケーブル131Aは、スロットルケーブル131に対してスプリング134及び被覆部材135のみ異なっている。即ち、スロットルケーブル131Aは、スプリング114と、スプリング115(図7(A)参照)よりも外径を小径としたスプリング134と、ライナー116と、第1インナーワイヤ81と、スプリング134内に移動自在に挿入された第2インナーワイヤ82と、スプリング114,134(スプリング114は第1アウターチューブ、スプリング134は第2アウターチューブを構成する。)を束ねて覆う樹脂製の被覆部材135とからなる。
このように、スプリング134内にライナーを設けず、スプリング134を小径にすることで、スプリング134の外形をより小さくすることができて、スロットルケーブル131Aの外形を小さくすることができる。従って、スロットルケーブル131Aを車体の狭い隙間に通しやすくすることができ、組付性を向上させることができる。
【0038】
図7(C)において、スロットルケーブル131(図7(A)参照)の変形例であるスロットルケーブル131Bは、スプリング114,115と、ライナー116と、第1インナーワイヤ81と、第2インナーワイヤ82と、スプリング114,115をそれぞれ覆う第1チューブ112a、第2チューブ112b同士が中間部で繋がれるように一体成形された被覆部材136とからなる。
このように、スプリング114,115をそれぞれ第1チューブ112a、第2112bで被覆することで、スプリング114,115間の干渉を防止することができ、耐久性をより高めることができる。また、をスプリング114,115を第1チューブ112a、第2チューブ112bで確実に保持することができる。
【0039】
以上の図2、図4、図5、図7に示したように、スロットルグリップ74と、このスロットルグリップ74によって駆動されるスロットルバルブ92とが、2本の第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82で連結され、第1インナーワイヤ81をスロットルグリップ74によってスロットルバルブ92に加えられた付勢力に抗して引くことでスロットルバルブ92を一方向に作動させ、第2インナーワイヤ82をスロットルグリップ74によって付勢力の方向に引くことでスロットルバルブ92を他方向に作動させるケーブル構造において、ケーブル83,83A,131,131A,131Bは、第1インナーワイヤ81が移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー116と、該ライナー116を収容する第1アウターチューブとしてのスプリング114と、第2インナーワイヤ82が移動自在に挿入された第2アウターチューブとしてのスプリング115,134と、これらのスプリング114及びスプリング115,134を被覆して束ねる被覆部材112,112A,132,135,136とを備えるので、2本のスプリング114とスプリング115(又はスプリング134)を被覆部材112,112A,132,135,136で束ねて1本のケーブルとすることで、例えば、ケーブル83,83A,131,131A,131Bをスロットルグリップ74とスロットルバルブ92との間に存在する隙間等に通してスロットルグリップ74とスロットルバルブ92とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてケーブル83,83A,131,131A,131Bの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。また、2本のスプリング114とスプリング115(又はスプリング134)の被覆を一つの被覆部材112,112A,132,135,136で共用し、被覆のための被覆部材112,112A,132,135,136で2本のスプリング114とスプリング115(又はスプリング134)を束ねる部材を兼用するので、束ねるための特別な部材を設ける必要がなく、部品点数を減らすことができる。更に、第1インナーワイヤ81がライナー116内に移動自在に挿入されているので、2本の第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82同士が干渉することがないため、2本の第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82の摺動性及び耐久性を確保することができる。特に、スロットルグリップ74で付勢力に抗してスロットルバルブ92を駆動させる場合に、大きな引張力が作用する第1インナーワイヤ81をライナー116内に収容することで、樹脂製のライナー116で第1インナーワイヤ81の摺動性を促すことができ、第1インナーワイヤ81の耐久性を確保することができる。また、付勢力の向きに引かれる第2インナーワイヤ82では、小さな引張力しか作用しないため、ライナーを用いる必要がないので、スロットルケーブル83,83A,131,131A,131B全体の外形をより小さくすることができる。
【0040】
また、スプリング134は、スプリング114よりも小径に形成されるので、スプリング134の内側にライナーを設けず、スプリング134を小径にすることで、スロットルケーブル131A全体の外形を小さくすることができ、狭いスペースでもスロットルケーブル131Aを容易に通すことができ、また、スロットルケーブル131Aの屈曲性も向上するので、スロットルケーブル131Aの組付性を向上させることができる。
また、被覆部材112,112Aは、離間させたスプリング114とスプリング115とが連結部としての固定部112c,112eで連結され、この固定部112c,112eに、スロットルケーブル83,83Aを固定する際に使用する取付用丸穴112g、取付用長穴112hが設けられるので、取付用丸穴112g、取付用長穴112hにビス113等を挿入して、スロットルケーブル83,83Aを容易に部材等に取付けることができる。
【0041】
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態のケーブル構造を示す断面図であり、図8(A)は筒状のライナーを備えるケーブル構造を示す断面図、図8(B)は外周面に一対の突起を有する筒状のライナーを備えるケーブル構造(第1変形例)を示す断面図、図8(C)は図8(B)に対して一対の突起の挟角を狭くした筒状のライナーを備えるケーブル構造(第2変形例)を示す断面図、図8(D)は一対の突起を平行に配置した筒状のライナーを備えるケーブル構造(第3変形例)を示す断面図、図8(E)は図8(A)に対してスプリングを長円状としたケーブル構造を示す断面図(第4変形例)である。図5に示した第1実施形態、図7に示した第2実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図8(A)において、スロットルケーブル141は、コイル状に巻かれた鋼製のスプリング142(アウターチューブを構成する。)と、このスプリング142内に挿入されたライナー116と、第1インナーワイヤ81と、スプリング142内に移動自在に挿入された第2インナーワイヤ82と、スプリング142を覆う樹脂製の被覆部材143とからなる。
【0042】
図8(B)において、スロットルケーブル141(図8(A)参照)の変形例(第1変形例)であるスロットルケーブル141Aは、スロットルケーブル141に対してライナー145のみが異なる。即ち、スロットルケーブル141Aは、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された樹脂製で可撓性を有するライナー145と、このライナー145内に移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81と、第2インナーワイヤ82と、被覆部材143とからなる。
ライナー145は、チューブ状の筒部145aと、この筒部145aの外周面から放射状に半径方向外側に突出するように筒部145aに一体成形された一対の突起部145b,145cとからなり、例えば、引抜き成形により成形される。
突起部145b,145cは、ライナー145の長手方向の全域に亘って形成されたリブであり、これらの突起部145b,145c間に凹部(溝部)145eが形成され、この凹部145e内に第2インナーワイヤ82が収容されている。なお、符号θ1は、2つの突起部145b,145cのなす角度である。
【0043】
図8(C)において、スロットルケーブル141(図8(A)参照)の変形例(第2変形例)であるスロットルケーブル141Bは、スロットルケーブル141に対してライナー146のみが異なる。即ち、スロットルケーブル141Bは、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された樹脂製で可撓性を有するライナー146と、このライナー146内に移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81と、第2インナーワイヤ82と、被覆部材143とからなる。
ライナー146は、筒部145aと、この筒部145aの外周面から放射状に半径方向外側に突出するように筒部145aに一体成形された一対の突起部146b,146cとからなり、例えば、引抜き成形により成形される。
突起部146b,146cは、ライナー145の長手方向の全域に亘って形成されたリブであり、これらの突起部146b,146c間に凹部(溝部)146eが形成され、この凹部146e内に第2インナーワイヤ82が収容されている。2つの突起部146b,146cのなす角度をθ2とすると、角度θ2は角度θ1よりも小さい(θ2<θ1)。
このように、角度θ2を小さくすることで、凹部146e内での第2インナーワイヤ82の振れを小さくすることができる。
【0044】
図8(D)において、スロットルケーブル141(図8(A)参照)の変形例(第3変形例)であるスロットルケーブル141Cは、スロットルケーブル141に対してライナー147のみが異なる。即ち、スロットルケーブル141Cは、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された樹脂製で可撓性を有するライナー147と、このライナー147内に移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81と、第2インナーワイヤ82と、被覆部材143とからなる。
ライナー147は、筒部145aと、この筒部145aの外周面から平行に延びるように一体成形された一対の突起部147b,147cとからなり、例えば、引抜き成形により成形される。
突起部147b,147cは、ライナー145の長手方向の全域に亘って形成されたリブであり、これらの突起部146b,146c間に凹部(溝部)147eが形成され、この凹部147e内に第2インナーワイヤ82が収容されている。
【0045】
図8(B)〜図8(D)において、第2インナーワイヤ82を凹部145e、146e、147e内に配置することで、第2インナーワイヤ82が突起部145b,145c,146b,146c,147b,147cに接触する接触面積を増やすことができ、第2インナーワイヤ82の摺動性を向上させることができる。
図8(E)において、スロットルケーブル141(図8(A)参照)の変形例(第4変形例)であるスロットルケーブル141Dは、スロットルケーブル141に対してスプリング148及び被覆部材149が異なる。即ち、スロットルケーブル141Dは、断面が長円形でコイル状に巻かれた鋼製のスプリング148(アウターチューブを構成する。)と、このスプリング148内に挿入されたライナー116と、第1インナーワイヤ81と、スプリング148内に移動自在に挿入された第2インナーワイヤ82と、スプリング148を覆う樹脂製の被覆部材149とからなる。
このように、スプリング148の外形を長円形とすることで、外形の一部の寸法が小さくなって、車体の隙間にスロットルケーブル141Dを通す場合に、通しやすくすることができ、スロットルケーブル141Dの車体への組付性を向上させることができる。
【0046】
以上の図2、図4、図8(A)〜(E)に示したように、駆動部としてのスロットルグリップ74と、このスロットルグリップ74によって駆動される被動部としてのスロットルバルブ92とが、2本の第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82で連結され、第1インナーワイヤ81をスロットルグリップ74によってスロットルバルブ92に加えられた付勢力に抗して引くことでスロットルバルブ92を一方向に作動させ、第2インナーワイヤ82をスロットルグリップ74によって付勢力の方向に引くことでスロットルバルブ92を他方向に作動させるケーブル構造において、スロットルケーブル141,141A,141B,141C,141Dは、第1インナーワイヤ81が移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー116,145,146,147と、該ライナー116,145,146,147を収容するとともに第2インナーケーブル82が移動自在に挿入されたアウターチューブとしてのスプリング142,148とを備えるので、一つのスプリング142,148内に、2本の第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82を収容して1本のスロットルケーブル141,141A,141B,141C,141Dとするため、例えば、スロットルケーブル141,141A,141B,141C,141Dをスロットルグリップ74とスロットルバルブ92との間に存在する隙間等に通してスロットルグリップ74とスロットルバルブ92とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてスロットルケーブル141,141A,141B,141C,141Dの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。
【0047】
また、第1インナーワイヤ81がライナー116,145,146,147内に移動自在に挿入されているので、2本の第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82同士が干渉することがなく、2本の第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82の摺動性及び耐久性を確保することができる。
特に、スロットルグリップ74で付勢力に抗してスロットルバルブ92を駆動させる場合に、大きな引張力が作用する第1インナーワイヤ81をライナー116,145,146,147内に収容することで、樹脂製のライナー116,145,146,147で第1インナーワイヤ81の摺動性を促すことができ、第1インナーワイヤ81の耐久性を確保することができる。また、付勢力の向きに引かれる第2インナーワイヤ82では、小さな引張力しか作用しないため、ライナーを用いる必要がないので、ケーブル全体の外形をより小さくすることができる。
【0048】
上記構成において、前記ライナー145aの外周面に、該ライナー145aの長手方向に沿うように凹部145e,146e,147eを形成するための半径方向外側に延びる一対の突起部145b,145c,146b,146c,147b,147cが設けられ、該突起部145b,145c,146b,146c,147b,147c間の凹部145e,146e,147eに第2インナーケーブル82が配置されるようにしても良い。この構成によれば、ライナー145,146,147の凹部145e,146e,147e内に第2インナーワイヤ82を容易に位置決めすることができる。また、ライナー145,146,147と第2インナーワイヤ82との接触面積が広くなり、第2インナーワイヤ82の摺動性を高めることができる。
また、上記構成において、突起部145b,145c,146b,146c,147b,147cは、ライナー145,146,147の長手方向全域に亘って延びるリブであっても良い。この構成によれば、例えば、引抜き成形により容易にリブ付きのライナー145,146,147を成形することができ、生産性を向上させることができる。
【0049】
<第4実施形態>
図9は、本発明の第4実施形態のケーブル構造を示す断面図であり、図9(A)は内部に2本の別体のライナーと2本のスペーサーとを備えるケーブル構造を示す断面図、図9(B)は内部に2本の別体のライナーと1本のスペーサーとを備えるケーブル構造を示す断面図、図9(C)は内部に2本分が一体成形されて1本とされたライナーと2本のスペーサーとを備えるケーブル構造を示す断面図である。図5に示した第1実施形態、図7に示した第2実施形態、図8に示した第3実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図9(A)に示すように、スロットルケーブル151は、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された樹脂製で可撓性を有するチューブ状のライナー116,117及びこれらのライナー116,117をスプリング142内で位置決めする2本の樹脂製で可撓性を有するスペーサー154,155と、ライナー116,117内にそれぞれ移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82と、スプリング142をそれぞれ覆う樹脂製の被覆部材143とからなる。
ライナー116,117は、内径、外径及び材質が同一の部品である。スペーサー154,155は、内径、外径及び材質が同一の部品であり、スペーサー154,155の外径はライナー116,117の外径よりも小さい。
別体に隣接して設けられたライナー116,117の境界部分には、ほぼ三角形状の凹部157,157が形成され、これらの凹部157,157内に入り込むように2本のスペーサー154,155がそれぞれ配置されている。
2本のライナー116,117の外径の和にスプリング142の内径を一致させたので、スプリング142の径を最小限にすることができ、スロットルケーブル151の車体への組付性を向上させることができる。
【0050】
図9(B)において、スロットルケーブル151(図9(A)参照)の変形例(第1変形例)であるスロットルケーブル151Aは、スロットルケーブル151に対して鋼製のスプリング152、スペーサー153及び被覆部材156が異なる。即ち、スロットルケーブル151Aは、スプリング142(図9(A)参照)より内径が大径にされたコイル状に巻かれた鋼製のスプリング152(アウターチューブを構成している。)と、このスプリング152内に挿入された2本のライナー116,117及び1本の樹脂製で可撓性を有するスペーサー153と、ライナー116,117内にそれぞれそれぞれ移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82と、スプリング152を覆う被覆部材156とからなる。
別体に隣接して設けられたライナー116,117の境界部分には、ほぼ三角形状の凹部157が形成され、この凹部157内に入り込むように1本のスペーサー153が配置されている。
スペーサー153の外径は、ライナー116,117の外径とほぼ同一である。このように、スペーサー153とライナー116,117の外径をほぼ同一とすることで、スペーサー153、ライナー116,117を正三角形状に配置することができ、スペーサー153、ライナー116,117の位置を安定させることができる。また、1本のスペーサー153とすることで、部品数を減らすことができ、組立工数、コストを削減することができる。
【0051】
図9(C)において、スロットルケーブル151(図9(A)参照)の変形例(第2変形例)であるスロットルケーブル151Bは、スロットルケーブル151に対してライナー158のみが異なる。即ち、スロットルケーブル151Aは、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された2本のチューブを合体させた樹脂製で可撓性を有するライナー158及び2本のスペーサー154,155と、ライナー158に形成されたチューブ状の第1ライナー部158a及びチューブ状の第2ライナー部158bにそれぞれ移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82と、被覆部材143とからなる。
一体に隣接して設けられた第1ライナー部158aと第2ライナー部158bとの境界部分には、ほぼ三角形状の凹部159,159が形成され、これらの凹部159,159内に入り込むように2本のスペーサー154,155が配置されている。
【0052】
以上の図2、図4、図9に示したように、スロットルグリップ74と、このスロットルグリップ74によって駆動されるスロットルバルブ92とが、2本の第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82で連結され、第1インナーワイヤ81をスロットルグリップ74によって引くことでスロットルバルブ92を一方向に作動させ、第2インナーワイヤ82をスロットルグリップ74によって引くことでスロットルバルブ92を他方向に作動させるケーブル構造において、スロットルケーブル151,151A,151Bは、第1インナーワイヤ81が移動自在に挿入されたライナー116,158aと、第2インナーワイヤ82が移動自在に挿入されたライナー117,158bと、これらのライナー116,158a及びライナー117,158bを収容するスプリング142,152と、スプリング142,152の内壁とライナー116,158a及びライナー117,158bとの隙間に配置された可撓性を有するスペーサー153,154,155とから構成され、ライナー(116,158a及びライナー117,158bは樹脂製のチューブからなるので、一つのスプリング142,152内に、2本の第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82を収容して1本のスロットルケーブル151,151A,151Bとするので、例えば、スロットルケーブル151,151A,151Bをスロットルグリップ74とスロットルバルブ92との間に存在する隙間等に通してスロットルグリップ74とスロットルバルブ92とに組付ける際に、2本のケーブルをそれぞれ通す場合に比べてスロットルケーブル151,151A,151Bの組付工数を減らすことができ、組付性を向上させることができる。
また、第1インナーワイヤ81はライナー116,158a内に挿入され、第2インナーワイヤ82はライナー117,158bに挿入されているので、2本の第1インナーワイヤ81、第2インナーワイヤ82同士が干渉することがなく、2本の第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82の摺動性及び耐久性を確保することができる。更に、ライナー116,158a及びライナー117,158bをチューブ状の簡単な形状にしてコストを低減することができる。
【0053】
また、スプリング142,152の内壁とライナー116,158a及びライナー117,158bとの隙間に、スプリング142,152、ライナー116,158a、ライナー117,158bとは別体のスペーサー153,154,155を配置したので、ケーブル151,151A,151Bとしての屈曲性を確保した上でスペーサー153,154,155によってスプリング142,152内でのライナー116,117,158のがたつきを抑えることができる。
また、ライナー116ライナー117とは別体に構成され、スペーサー153,154,155は、ライナー116とライナー117との境界部分に出来る凹部157に入り込むように配置されるので、ライナー116とライナー117とを別体にすることで、ケーブル151,151A全体の屈曲性を確保しやすなり、更に、ライナー116とライナー117との境界部分に形成される凹部に入り込むようにスペーサー153,154,155を配置することで、スペーサー153,154,155をスプリング142,152内に容易に位置決めすることができる。
また、第1ライナー158aと第2ライナー158bとは一体に構成され、スペーサー154,155は、第1ライナー158aと第2ライナー158bとの境界部分に出来る凹部159に入り込むように配置されるので、部品点数を削減できる上に、第1ライナー158aと第2ライナー158bとの境界部分に形成される凹部159に入り込むようにスペーサー154,155を配置することで、スペーサー154,155をスプリング142内に容易に位置決めすることができる。
【0054】
<第5実施形態>
図10は、本発明の第5実施形態のケーブル構造を示す断面図であり、図10(A)は別体の2本のチューブ状(円筒状)のライナーがスプリング内に収容されて強制的に潰されたケーブル構造を示す断面図、図10(B)は2つの円筒形のライナー部を一体に有するライナーがスプリング内に収容されて強制的に潰されたケーブル構造を示す断面図(図10(A)の変形例)である。
図10(A)に示すように、スロットルケーブル161は、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー162,163と、これらのライナー162,163内にそれぞれ移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82と、被覆部材143とからなる。
ライナー162,163は、スプリング142内に挿入する前のそれぞれの外径が、等しく且つスプリング142の内径の半分よりも大きく、ライナー162,163をスプリング142内に挿入することでライナー162,163の外形が強制的にほぼ楕円状に潰されている。従って、ライナー162,163にはスプリング142の内壁を押圧する反力が発生しているため、ライナー162,163はスプリング142内で周方向に移動しにくく、また、ライナー162,163同士が捩れにくい。
別体に隣接して設けられたライナー162,163の境界部分に出来たほぼ三角形状の凹部165,165内には、それぞれスペーサーを配置しても良い。
【0055】
図10(B)において、スロットルケーブル161(図10(A)参照)の変形例であるスロットルケーブル161Aは、スロットルケーブル161に対してライナー167のみが異なる。即ち、スロットルケーブル161Aは、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された樹脂製のライナー167と、ライナー167に形成されたチューブ状の第1ライナー部167a及びチューブ状の第2ライナー部167bにそれぞれ移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82と、被覆部材143とからなる。
ライナー167は、スプリング142内に挿入する前は、それぞれ円筒状の第1ライナー部167aと第2ライナー部167bとが一体に隣接して設けられた部品であり、スプリング142内に挿入する前の外形の最も大きな外寸法は、スプリング142の内径よりも大きく、スプリング142内に挿入されることで、ライナー167の最も大きな外寸法が強制的に潰され、円筒状の第1ライナー部167a及び第2ライナー部167bがほぼ楕円状になる。
第1ライナー部167aと第2ライナー部167bとの境界部分に出来たほぼ三角形状の凹部168,168内には、スペーサーを配置しても良い。
【0056】
<第6実施形態>
図11は、本発明の第6実施形態のケーブル構造を示す説明図であり、図11(A)はケーブル構造を示す断面図、図11(B)は一方向から見たケーブル構造の要部を示す斜視図、図11(C)は図11(B)とは別方向から見たケーブル構造の要部を示す斜視図である。
図11(A)において、スロットルケーブル171は、スプリング142と、このスプリング142内に挿入された樹脂製で可撓性を有するライナー172と、このライナー172内に移動自在に挿入された第1インナーワイヤ81及び第2インナーワイヤ82と、被覆部材143とからなる。
図11(B)及び図11(C)において、ライナー172は、断面U字形状のトンネル部172aと、このトンネル部172aの2つの縁部172b,172cの延長線の延びる方向に一体成形された平板部172dとが交互に配置されるとともに隣り合うトンネル部172a,172aがライナー172の延びる方向と直交する方向で互いに反対方向に配置されている。従って、第1インナーワイヤ81と第2インナーワイヤ82とは複数の平板部172dによって部分的に隔離されている。
ライナー172を型で成形する場合、図の上下方向が型抜き方向になる。
【0057】
<第7実施形態>
図12は、本発明の第7実施形態のケーブル構造における端部の外観を示す外観図であり、図12(A)は第7実施形態のケーブル構造の端部を示す正面図、図12(B)は図12(A)に示したケーブル構造の要部を示す斜視図、図12(C)は図12(A)のケーブル構造の変形例を示す正面図、図12(D)は図12(C)に示したケーブル構造の要部を示す斜視図である。
図12(A)及び図12(B)に示すように、スロットルケーブル175は、端部では、第1チューブ112aと第2チューブ112bとが先端にいくにつれて次第に大きく離間するように配置され、これらの第1チューブ112aと第2チューブ112bとが固定部112mで一体に接続され、第1チューブ112aと第2チューブ112bとの分岐部112nに第1チューブ112a、第2チューブ112b間を一体に連結する2つの連結部112p,112qが設けられている。これらの連結部112p,112qは、固定部112mから離れた位置に設けられている。
【0058】
以上のように、スロットルケーブル175の分岐部分に連結部112p,112qを設けることで、第1チューブ112aと第2チューブ112bとを広げる方向に外力が作用した場合に、その外力を固定部111mだけで受ける場合よりも連結部112p,112qで受けることで、より大きな外力に耐えることができ、破損を防止することができる。
図12(C)及び図12(D)に示すように、スロットルケーブル177は、スロットルケーブル175(図12(A)参照)に対して連結部112rのみ異なる。即ち、スロットルケーブル177は、3つの連結部112p,112q,112rを備える。連結部112p,112qは、固定部112mから離れた位置に設けられ、連結部112rは、固定部112m上に一体に設けられている。
【0059】
<第8実施形態>
図13は、本発明の第8実施形態のケーブル構造における端部の外観を示す外観図であり、図13(A)は第8実施形態のケーブル構造の端部を示す正面図、図13(B)は図13(A)に示したケーブル構造の要部を示す斜視図、図13(C)は図13(A)のケーブル構造の変形例を示す正面図、図13(D)は図13(C)に示したケーブル構造の要部を示す斜視図である。
図13(A)、図13(B)に示すように、スロットルケーブル181は、端部では、第1チューブ112aと第2チューブ112bとが先端にいくにつれて次第に大きく離間するように配置され、これらの第1チューブ112aと第2チューブ112bとを一体に接続する固定部112tも次第に幅が広くなり、固定部112tの縁部は、内側に凹むように湾曲するとともに鍵穴形状の切欠き112uが形成されている。
図13(C)、図13(D)に示すように、スロットルケーブル181(図13(A))の変形例であるスロットルケーブル183は、端部では、第1チューブ112aと第2チューブ112bとが先端にいくにつれて次第に大きく離間するように配置され、これらの第1チューブ112aと第2チューブ112bとが固定部112vで一体に接続され、固定部112vの縁部に、内側に凹むように半円形状の切欠き112wが形成されている。
上記図13(A)及び図13(C)に示した切欠き112u,112wを設けることで、固定部112t,112vに作用する外力を分散させることができる。
【0060】
<第9実施形態>
図14は、本発明の第9実施形態のケーブル構造を排気制御弁駆動機構に適用した例を示す説明図である。
排気制御弁駆動機構200は、車両のエンジンに接続された排気管201内の脈動を制御する排気制御弁202をアクチュエータ203の動力で駆動するシステムであり、アクチュエータ203を備える駆動部205と、排気制御弁202を備える被動部206と、駆動部205から被動部206へ動力を伝達するケーブル207とからなる。
駆動部205は、アクチュエータ203と、このアクチュエータ203の出力軸211に取付けられた駆動プーリ212と、アクチュエータ203をエンジン回転数に基づいて制御する制御装置213とからなる。なお、符号214はケーブル207の一端を支持するためにアクチュエータ203に設けられたケーブル支持部である。
アクチュエータ203は、正転及び逆転が可能な電動モータと、この電動モータの出力を減速する減速機構とからなり、減速機構は出力軸211を備える。駆動プーリ212は、外周面に2本のワイヤ溝212a,212bを備え、これらのワイヤ溝212a,212bに、ケーブル207に備える第1インナーワイヤ217、第2インナーワイヤ218の先端がそれぞれ固定されるとともに巻かれている。
【0061】
被動部206は、排気管201の拡径部201aに排気管201の長手方向と直交するように貫通して回動自在に取付けられた弁軸221と、排気管201内の排気通路を開閉する、或いは排気通路の通路断面積を変更するために弁軸221に取付けられた排気制御弁202と、拡径部201aの外側に突出する弁軸221の突出部に取付けられた被動プーリ222と、この被動プーリ222を覆うとともにケーブル207の他端を支持するために拡径部201aに取付けられたケース223とを備える。
被動プーリ222は、外周部に、第1インナーワイヤ217及び第2インナーワイヤ218を通すスリット部222a,222bと、これらのスリット部222a,222bに連通する穴部222c,222dと、第1インナーワイヤ217及び第2インナーワイヤ218を掛けるワイヤ溝222fが形成されている。
ケース223は、弁軸221に一体的に取付けられた規制アーム225の位置を規制して排気制御弁202の閉じ側及び開き側の開度を規制する閉じ側ストッパ223a及び開き側ストッパ223bが形成されている。
【0062】
ケーブル207は、コイル状に巻かれた鋼製のスプリング231,232(スプリング231は第1アウターチューブ、スプリング232は第2アウターチューブを構成している。)と、一方のスプリング231内に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー233と、このライナー233内に移動自在に挿入された鋼製の第1インナーワイヤ217と、他方のスプリング232内に移動自在に挿入された鋼製の第2インナーワイヤ218と、スプリング231,232をそれぞれ覆う第1チューブ236a、第2チューブ236bが形成されるとともにこれらの第1チューブ236a及び第2チューブ236bを連結するように一体成形された固定部236cを備える樹脂製の被覆部材236とからなる。なお、符号237,238はケーブル207の第1チューブ236a及び第2チューブ236bの各端部をケース223に取付けるためのケーブル端部取付部である。
【0063】
第1インナーワイヤ217及び第2インナーワイヤ218は、端部に被動プーリ222と連結するための端部部材241,242が設けられている。
ライナー233は、可撓性を有する部材であり、樹脂製とすることで内部に挿入された第1インナーワイヤ217の摺動性を高める。
第1インナーワイヤ217及び第2インナーワイヤ218と被動プーリ222との連結は、被動プーリ222のスリット部222a,222bを通じて穴部222c,222dに第1インナーワイヤ217及び第2インナーワイヤ218の端部部材241,242をそれぞれ挿入することで行われる。
【0064】
図15は、図14のXV−XV線断面図である。
弁軸221には、支持部材245が取付けられて弁軸221と支持部材245とが一体的に回動する。支持部材245とケース223との間には、弁軸221を囲むように配置されたリターンスプリング246が取付けられ、このリターンスプリング246によって、弁軸221を介して排気制御弁202が開く側に付勢されている。従って、図14において、排気制御弁202を閉じる場合には、アクチュエータ203を作動させてリターンスプリング246の付勢力に抗して第1インナーワイヤ217を引く。また、排気制御弁202を開く場合には、アクチュエータ203を作動させてリターンスプリング246の付勢力の方向に第1インナーワイヤ217を引く。このことから、大きな引張力が作用する第1インナーワイヤ217をライナー233内に挿入することで、第1インナーワイヤ217の摺動性及び耐久性を高めることができる。また、第2インナーワイヤ218には小さな引張力しか作用しないので、ライナーを必要としない。
【0065】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
図5、図7、図8(A)に示した実施形態では、第1インナーワイヤのみライナー内に移動自在に挿入したが、これに限らず、第1インナーワイヤ及び第2インナーワイヤをそれぞれを別々のライナー内に移動自在に挿入しても良く、これによって、アウターチューブ、ライナー、インナーワイヤ、被覆部材からなるケーブル2本を別体の結束部材で1本にするよりも部品数を減らすことができる。
また、図5、図7、図8、図9、図10、図14に示した第1インナーワイヤと第2インナーワイヤの外径を同一としたが、これに限らず、大きな引張力が作用しない第2インナーワイヤの外径を第1インナーワイヤの外径よりも小径にしても良い。
更に、図9に示した実施形態において、スペーサー153,154,155を中実としたが、これに限らず、中空の部材としても良い。
また、上記実施形態の各ケーブルは、スロットルグリップでスロットルバルブを開閉するスロットル開閉機構、アクチュエータで排気制御弁を開閉する排気制御弁駆動機構に適用したが、この他に、車両用又は建築物用ドアの開閉機構、開閉式の橋などの開閉構造など、一方に付勢された被動部を2本のインナーワイヤで一方、他方に操作するものであれば適用しても良い。
【符号の説明】
【0066】
74 スロットルグリップ(駆動部)
81,217 第1インナーワイヤ(インナーワイヤ)
82,218 第2インナーワイヤ(インナーワイヤ)
83,83A,83B,141,141A,141B,141C,151,151A,151B スロットルケーブル(ケーブル)
92 スロットルバルブ(被動部)
112,112A,132,135,136 被覆部材
112c,112e 固定部(連結部)
112g,112h 取付用丸穴(取付穴)
114,231 スプリング(第1アウターチューブ)
115,134,232 スプリング(第2アウターチューブ)
116 ライナー(第1ライナー)
117 ライナー(第2ライナー)
142,148,152 スプリング(アウターチューブ)
145,146,147,233 ライナー
145a 筒部(ライナー)
145b,145c,146b,146c,147b,147c 突起部
145e,146e,147e,157,159 凹部
153,154,155 スペーサー
158a 第1ライナー部(第1ライナー)
158b 第2ライナー部(第2ライナー)
202 排気制御弁(被動部)
203 アクチュエータ(駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部(74,203)と、この駆動部(74,203)によって駆動される被動部(92,202)とが、2本のインナーワイヤ(81,82)で連結され、一方のインナーワイヤを第1インナーワイヤ(81)、他方のインナーワイヤを第2インナーワイヤ(82)とするときに、前記第1インナーワイヤ(81)を前記駆動部(74,203)によって前記被動部(92,202)に加えられた付勢力に抗して引くことで前記被動部(92,202)を一方向に作動させ、前記第2インナーワイヤ(82)を前記駆動部(74,203)によって前記付勢力の方向に引くことで前記被動部(92,202)を他方向に作動させるケーブル構造において、
前記ケーブル(83,83A,83B,131,131A,131B)は、前記第1インナーワイヤ(81)が移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー(116)と、該ライナー(116)を収容する第1アウターチューブ(114)と、前記第2インナーワイヤ(82)が移動自在に挿入された第2アウターチューブ(115,134)と、これらの第1アウターチューブ(114)及び第2アウターチューブ(115,134)を被覆して束ねる被覆部材(112,112A,132,135,136)とを備えることを特徴とするケーブル構造。
【請求項2】
前記第2アウターチューブ(134)は、前記第1アウターチューブ(114)よりも小径に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル構造。
【請求項3】
前記被覆部材(112,112A)は、離間させた前記第1アウターチューブ(114)と前記第2アウターチューブ(115)とが連結部(112c,112e)で連結され、この連結部(112c,112e)に、前記ケーブル(83,83A)を固定する際に使用する取付穴(112g,112h)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル構造。
【請求項4】
駆動部(74,203)と、この駆動部(74,203)によって駆動される被動部(92,202)とが、2本のインナーワイヤ(81,82)で連結され、一方のインナーワイヤを第1インナーワイヤ(81)、他方のインナーワイヤを第2インナーワイヤ(82)とするときに、前記第1インナーワイヤ(81)を前記駆動部(74,203)によって前記被動部(92,202)に加えられた付勢力に抗して引くことで前記被動部(92,202)を一方向に作動させ、前記第2インナーワイヤ(82)を前記駆動部(74,203)によって前記付勢力の方向に引くことで前記被動部(92,202)を他方向に作動させるケーブル構造において、
前記ケーブル(141,141A,141B,141C,141D)は、前記第1インナーワイヤ(81)が移動自在に挿入された樹脂製でチューブ状のライナー(116,145a)と、該ライナー(116,145a)を収容するとともに前記第2インナーケーブル(82)が移動自在に挿入されたアウターチューブ(142)とを備えることを特徴とするケーブル構造。
【請求項5】
前記ライナー(145a)の外周面に、該ライナー(145a)の長手方向に沿うように凹部(145e,146e,147e)を形成するための半径方向外側に延びる一対の突起部(145b,145c,146b,146c,147b,147c)が設けられ、該突起部(145b,145c,146b,146c,147b,147c)間の前記凹部(145e,146e,147e)に前記第2インナーケーブル(82)が配置されていることを特徴とする請求項4に記載のケーブル構造。
【請求項6】
前記突起部(145b,145c,146b,146c,147b,147c)は、前記ライナー(145a)の長手方向全域に亘って延びるリブであることを特徴とする請求項5に記載のケーブル構造。
【請求項7】
駆動部(74,203)と、この駆動部(74,203)によって駆動される被動部(92,202)とが、2本のインナーワイヤ(81,82)で連結され、一方のインナーワイヤを第1インナーワイヤ(81)、他方のインナーワイヤを第2インナーワイヤ(82)とするときに、前記第1インナーワイヤ(81)を前記駆動部(74,203)によって引くことで前記被動部(92,202)を一方向に作動させ、前記第2インナーワイヤ(82)を前記駆動部(74,203)によって引くことで前記被動部(92,202)を他方向に作動させるケーブル構造において、
前記ケーブル(151,151A,151B)は、前記第1インナーワイヤ(81)が移動自在に挿入された第1ライナー(116,158a)と、前記第2インナーワイヤ(82)が移動自在に挿入された第2ライナー(117,158b)と、これらの第1ライナー(116,158a)及び第2ライナー(117,158b)を収容するアウターチューブ(142,152)と、該アウターチューブ(142,152)の内壁と前記第1ライナー(116)及び前記第2ライナー(117)との隙間に配置された可撓性を有するスペーサー(153,154,155)とから構成され、前記第1ライナー(116)及び前記第2ライナー(117)は樹脂製のチューブからなることを特徴とするケーブル構造。
【請求項8】
前記第1ライナー(116)と前記第2ライナー(117)とは別体に構成され、前記スペーサー(153,154,155)は、第1ライナー(116)と第2ライナー(117)との境界部分に出来る凹部(157)に入り込むように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のケーブル構造。
【請求項9】
前記第1ライナー(158a)と前記第2ライナー(158b)とは一体に構成され、前記スペーサー(154,155)は、第1ライナー(158a)と第2ライナー(158b)との境界部分に出来る凹部(159)に入り込むように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のケーブル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−113342(P2013−113342A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258091(P2011−258091)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】