説明

ケーブル用コネクタ

【課題】ケーブルの損傷を抑制する。
【解決手段】ケーブル12の端部13周辺を覆うハウジング26と、ハウジング26の内周側に固定されてケーブル12を保持する保持部42を有するバックリテーナ40と、を備えるものにおいて、バックリテーナ40に、保持部42と一体に形成されて保持部42側とは反対側に凸の曲面状となり且つ保持部42がハウジング26に固定されたときにハウジング26外に突出する曲面部43を設ける。これにより、ケーブル12が曲がったときには、ケーブル12が曲面部43に接触することになり、ケーブル12に局所的に大きな力が作用する(応力集中が生じる)のを抑制することができ、ケーブル12の損傷を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル用コネクタに関し、詳しくは、ケーブルの端部周辺を覆うハウジングと、ハウジングの内周側に固定されてケーブルを保持する保持部を有するリテーナと、を備えるケーブル用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器側ケースに固定されるケーブル用コネクタとしては、電線の端部に取り付けられて機器側ケースの内側に配設された端子台に接続される端子と、電線を包囲しつつ機器側ケースにシールド接続される編組線と、電線と一体に成形された本体部を有するモールド部と、を備え、モールド部は端子と別体で機器側ケースに固定される構成とするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このケーブル用コネクタでは、こうした構成とすることにより、電線が引っ張られることによって端子台が破損するのを抑制している。なお、このケーブル用コネクタでは、さらに、モールド部とシールドシェルとに介在するハウジングとモールド部から引き出された電線との間を防水するゴム栓をバックリテーナによって抜け止めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−9108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたケーブル用コネクタを用いて電線と機器とを接続して車載した場合、車両の衝突時など、機器が移動して電線がその機器と他の機器とによって挟まれて曲がったときには、電線がハウジングの端部などに接触して電線に局所的に大きな力が作用し、電線が損傷するおそれがあった。
【0005】
本発明のケーブル用コネクタは、ケーブルの損傷を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のケーブル用コネクタは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のケーブル用コネクタは、
ケーブルの端部周辺を覆うハウジングと、前記ハウジングの内周側に固定されて前記ケーブルを保持する保持部を有するリテーナと、を備えるケーブル用コネクタであって、
前記リテーナは、前記保持部における前記ケーブルの端部側とは反対側の端部から前記ハウジングの端部より突出して該保持部側とは反対側の表面が曲面状に形成された曲面部を有する、
ことを特徴とする。
【0008】
このケーブル用コネクタでは、ケーブルの端部周辺を覆うハウジングと、そのハウジングの内周側に固定されてケーブルを保持する保持部を有するリテーナと、を備えるものにおいて、リテーナを、保持部におけるケーブルの端部側とは反対側の端部からハウジングの端部より突出して保持部側とは反対側の表面が曲面状に形成された曲面部を有するもののとする。これにより、このケーブル用コネクタを用いてケーブルと機器とを接続した場合において、ケーブルが曲がったときには、ケーブルがリテーナの曲面部に接触することになり、ケーブルに局所的に大きな力が作用するのを抑制することができる。この結果、ケーブルの損傷を抑制することができる。
【0009】
こうした本発明のケーブル用コネクタにおいて、前記曲面部は、前記保持部から該保持部に対して略垂直に延出するよう形成された脚部と、該脚部における前記保持部側とは反対側から延出して湾曲するよう形成された湾曲部と、からなる、ものとすることもできる。この態様のケーブル用コネクタにおいて、前記湾曲部は、前記ケーブルの半径以上の曲率半径で湾曲するよう形成されてなる、ものとすることもできる。
【0010】
さらに、本発明のケーブル用コネクタにおいて、前記ケーブルの端部に取り付けられた端子と、前記ハウジングの内周側で前記リテーナより前記ケーブルの端部側に配置されて前記ハウジング内を防水する防水部材と、を備える、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としてのケーブル用コネクタ20を用いてケーブル12がモータMGやインバータINVに接続されて車載されたハイブリッド自動車10の様子を説明する説明図である。
【図2】ケーブル用コネクタ20の構成の概略を示す構成図である。
【図3】ハウジング26とバックリテーナ40とを図2の右側から見た外観図である。
【図4】インバータINVとケーブル12とが電気的に接続されたときの様子を示す説明図である。
【図5】実施例のケーブル用コネクタ20を用いたときにケーブル12がバックリテーナ40近傍で曲がったときの様子を示す説明図である。
【図6】比較例のケーブル用コネクタ20Bを用いたときにケーブル12がバックリテーナ40近傍で曲がったときの様子を示す説明図である。
【図7】変形例のケーブル用コネクタ120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としてのケーブル用コネクタ20を用いてケーブル12がモータMGやインバータINVに接続されて車載されたハイブリッド自動車10の様子を説明する説明図である。図1に示すように、ハイブリッド自動車10の車両前部のエンジンルームには、走行用の動力を出力可能なエンジンEGや、三相の交流電動機として構成されて走行用の動力を出力可能なモータMG,ケーブル12を介してモータMGに電気的に接続されてモータMGの駆動に用いられるインバータINV,モータMGやインバータINVを冷却するための冷却水を貯留するリザーブタンクRTなどが搭載されており、車両後部(例えば、リヤシート後方や下方など)には、ケーブル18を介してインバータINVに電気的に接続されたバッテリBTが搭載されている。なお、モータMGとインバータINVとは、3本のケーブル(三相ケーブル)12によって電気的に接続されている。また、以下の説明では、ケーブル12の軸方向で見たときに後述の端子22側を前方と称すると共にそれとは反対側を後方と称することがある。
【0014】
図2は、ケーブル用コネクタ20の構成の概略を示す構成図であり、図3は、ハウジング26とバックリテーナ40とを図2の右側から見た外観図であり、図4は、インバータINV(インバータ本体)とケーブル12とが電気的に接続されたときの様子を示す説明図である。図3では、見易さを考慮して、バックリテーナ40にハッチングを付した。なお、3本のケーブル12は、図2に示すように、それぞれ銅などによる素線(芯線)14がエナメル剤などによる絶縁体15によって被覆されたものとして構成されており、まとめて編組線16によって覆われている。また、インバータINVは、複数のスイッチング素子が基盤に取り付けられて構成されたインバータ本体が金属製のケース60(図4参照)に収納されたものとして構成されており、このケース60はハイブリッド自動車10のボディに固定されている。
【0015】
ケーブル用コネクタ20は、図2に示すように、3本のケーブル12のそれぞれの端部13に取り付けられた3つの端子22と、3本のケーブル12の端部13周辺を覆うハウジング26と、ハウジング26内を防水するための防水部材30と、防水部材30がハウジング26の外側(図2中右側)に移動するの防止するためのバックリテーナ40と、ケーブル用コネクタ20をケース60に固定するためのシールドシェル50と、編組線16をシールドシェル50に固定するためのかしめリング52と、を備える。
【0016】
端子22は、金属によって形成されており、その一部(かしめ部23)がかしめられることによってケーブル12の端部13に取り付けられている。ケーブル12とインバータ本体とは、図4に示すように、この端子22とインバータ本体からの電気的接続部(例えばバスバーなど)62とがボルト64によって締結されることによって電気的に接続されている。
【0017】
ハウジング26は、樹脂によって形成されており、図3に示すように、略扁平形状で且つケーブル12を通すための貫通孔27が形成されていると共に、図2に示すように、ケーブル12の軸方向で見たときの後方側(図2中右側)の端部が前方側(図2中左側)の端部に比して大きく開口するよう形成されている。以下、ハウジング26において、図2中右側の端部を大開口端部といい、図2中左側の端部を小開口端部という。このハウジング26は、図2に示すように、ケーブル12の端部13周辺を覆っている状態で、内周面に形成された突起部(ランス)28が端子22に形成された孔24に嵌合することによって端子22やケーブル12の端部13に対して位置決めされている。
【0018】
防水部材30は、略O字状のゴム栓として形成されており、図2に示すように、ハウジング26の大開口端部より若干小開口端部側(図2中左側)でハウジング26の内周面およびケーブル18の外周面と接するよう配置されている。これにより、ハウジング26内(図2中、防水部材30より左側)を防水できるようになっている。なお、この防水部材30は、ハウジング26の内周面に形成された突起部29によって小開口端部側(図2中左側)に移動しない(ずれない)ようになっている。
【0019】
バックリテーナ40は、樹脂によって形成されており、図2や図3に示すように、ハウジング26の大開口端部(近傍)の内周側に固定されてケーブル12を保持する保持部42と、保持部42におけるハウジング26の大開口端部側(図2中右側)の端部からハウジング26の大開口端部より突出して保持部42側とは反対側(図2中右側)の表面が曲面状に形成された曲面部43と、を備える。曲面部43は、図2に示すように、ケーブル12の外周面側や図2中右側に凸の曲面状となるよう表面が形成されており、保持部42におけるハウジング26の大開口端部側(図2中右側)の端部から保持部42に対して略垂直に延出するよう形成された脚部44と、脚部44における保持部42側とは反対側(図2中右側)から延出してケーブル12の外周面側や図2中右側に凸で湾曲するよう形成された湾曲部46と、を備える。脚部44は、短手方向(図2中、上下方向)の厚みが薄く形成されている。湾曲部46は、ケーブル12の自己径の曲率半径(ケーブル12の半径)以上の曲率半径で湾曲するよう形成されている。このバックリテーナ40は、本体の外周面に設けられた突起部(図示せず)がハウジング26の内周面に形成された溝(図示せず)に嵌合することによってハウジング26に固定されている。こうして構成されたバックリテーナ40は、ケーブル12を保持すると共に防水部材30のハウジング26外への移動を防止する機能を有する。
【0020】
シールドシェル50は、金属によって形成されており、ハウジング26と一体成形された金属製の接続部(図示せず)とボルトによって締結されることによってハウジング26に固定されている。このシールドシェル50は、インバータINVと3本のケーブル12とが電気的に接続されるときには、図4に示すように、ボルト51によってケース60に固定される。
【0021】
かしめリング52は、金属によって形成されており、このかしめリング52とシールドシェル50の外周面とで編組線16が挟み込まれた状態でかしめられることによってシールドシェル50に取り付けられている。このようにして、編組線16,シールドシェル50,インバータINVのケース60によって3本のケーブル12がシールドされるようにしている。
【0022】
図5は、車両の衝突時などにインバータINVのケース60が移動してケーブル12がケース60とリザーブタンクRTなどの他の機器とに挟まれてバックリテーナ40近傍で曲がったときの様子を示す説明図であり、図6は、バックリテーナ40に代えて曲面部43(脚部44および湾曲部46)を有しないバックリテーナ40Bを備えるケーブル用コネクタ20Bを用いる比較例において図5と同様の状況のときの様子を示す説明図である。比較例では、図6に示すように、ケーブル12がバックリテーナ40B近傍で曲がったときに、ケーブル12がハウジング26の大開口端部などに接触してケーブル12に局所的に大きな力が作用して(応力集中が生じて)ケーブル12が損傷してしまうおそれがある。一方、実施例では、バックリテーナ40に湾曲部46を設けたことにより、図5に示すように、ケーブル12がバックリテーナ40近傍で曲がったときには、ケーブル12が曲面部43の湾曲部46に接触することになり、ケーブル12に応力集中が生じるのを抑制することができ、ケーブル12の損傷を抑制することができる。しかも、短手方向の厚みが薄い脚部44によってバックリテーナ40の保持部42と湾曲部46とを連結するから、ケーブル12が湾曲部46に接触した後には、ケーブル12から湾曲部46を介して脚部44に作用する力によって脚部44がケーブル12の外周面から離れる方向に向かって倒れることにより、ケーブル12に作用する力を緩和することができ、ケーブル12の損傷をより抑制することができる。さらに、ケーブル12の自己径の曲率半径(ケーブル12の半径)以上の曲率半径で湾曲するよう湾曲部46を形成するから、ケーブル12への応力集中をより抑制することができる。なお、実施例では、図3に示すように、3本のケーブルを横方向に配列するものとしたから、ケーブル12が曲がるときには、図2や図3の上下方向に曲がることが多く、図2の手前側や奥側(図3の横方向)に曲がることは少ないと考えられる。このため、図2や図3に示すように、リテーナ40における3本のケーブル12の上下側に曲面部43を設けるものとした。
【0023】
以上説明した実施例のケーブル用コネクタ20によれば、ケーブル12の端部13周辺を覆うハウジング26と、ハウジング26の内周側に固定されてケーブル12を保持する保持部42を有するバックリテーナ40と、を備えるものにおいて、バックリテーナ40に、保持部42におけるケーブル12の端部13側とは反対側の端部からハウジング26の大開口端部より突出して保持部42側とは反対側の表面が曲面状に形成された曲面部43を設けるから、ケーブル12が曲がったときには、ケーブル12が曲面部43に接触することになり、ケーブル12に局所的に大きな力が作用する(応力集中が生じる)のを抑制することができ、ケーブル12の損傷を抑制することができる。
【0024】
実施例のケーブル用コネクタ20では、バックリテーナ40は、保持部42に加えて、脚部44および湾曲部46からなる曲面部43を備えるものとしたが、ハウジング26の端部より突出して保持部42側とは反対側の表面が曲面状に形成された曲面部を備えるものであればよいから、図7の変形例のケーブル用コネクタ120に示すように、バックリテーナ142は、保持部42側とは反対側の表面が曲面状に形成されると共に保持部42側の表面が略平面状に形成された曲面部143を備えるものとしてもよい。即ち、脚部を有しないものとしてもよい。この場合でも、実施例と同様に、ケーブル12が曲がったときに、ケーブル12に局所的に大きな力が作用する(応力集中が生じる)のを抑制することができ、ケーブル12の損傷を抑制することができる。
【0025】
実施例のケーブル用コネクタ20では、バックリテーナ40の湾曲部46は、ケーブル12の自己径の曲率半径(ケーブル12の半径)以上の曲率半径で湾曲するよう形成するものとしたが、ケーブル12の自己径の曲率半径と同程度やそれより若干小さな曲率半径で湾曲するよう形成するものとしてもよい。
【0026】
実施例のケーブル用コネクタ20では、3本のケーブル12の端部13周辺に取り付けられるものとしたが、ケーブル12の数は3つに限られず、1つや2つ,4つ以上であってもよい。なお、ケーブル12の数が1つの場合、ケーブル12が曲がる方向は図2や図3の上下方向だけとは限らないため、ケーブル12の外周側の4方向や6方向,8方向などや、各機器の配置などによってケーブル12が曲がると想定される方向にリテーナの曲面部が位置するようリテーナ42をハウジング26に固定するのが好ましい。
【0027】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、ハウジング26が「ハウジング」に相当し、バックリテーナ40が「リテーナ」に相当する。
【0028】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0029】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ケーブル用コネクタの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 ハイブリッド自動車、12 ケーブル、13 端部、14 素線、15 絶縁体、16 編組線、18 ケーブル、20,20B,120 ケーブル用コネクタ、22 端子、23 かしめ部、24 孔、26 ハウジング、27 貫通孔、28,29 突起部、30 防水部材、40,40B,140 バックリテーナ、42 保持部、43,143 曲面部、44 脚部、46 湾曲部、50 シールドシェル、52 かしめリング、60 ケース、62 接続部、64 ボルト、BT バッテリ、EG エンジン、INV インバータ、MG モータ、RT リザーブタンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの端部周辺を覆うハウジングと、前記ハウジングの内周側に固定されて前記ケーブルを保持する保持部を有するリテーナと、を備えるケーブル用コネクタであって、
前記リテーナは、前記保持部における前記ケーブルの端部側とは反対側の端部から前記ハウジングの端部より突出して該保持部側とは反対側の表面が曲面状に形成された曲面部を有する、
ことを特徴とするケーブル用コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル用コネクタであって、
前記曲面部は、前記保持部から該保持部に対して略垂直に延出するよう形成された脚部と、該脚部における前記保持部側とは反対側から延出して湾曲するよう形成された湾曲部と、からなる、
ケーブル用コネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のケーブル用コネクタであって、
前記湾曲部は、前記ケーブルの半径以上の曲率半径で湾曲するよう形成されてなる、
ケーブル用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−80633(P2013−80633A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220384(P2011−220384)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】