説明

ケーブル用ノイズフィルタ

【課題】今後予想される更なる高周波ノイズの対策として、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても効果的なケーブル用ノイズフィルタを得る。
【解決手段】シールド導体11が設けられたシールド付きケーブルに対し、このケーブルの長手方向の一部分をその周囲を全て覆うように筒状導体1を被せ、筒状導体1の一方の端をシールド導体11に短絡し、さらに、筒状導体1とシールド導体11との間に存在する空間に損失性材料2を挿入するように構成することで、筒状導体1の長さが波長λの1/4に相当する周波数を中心とする帯域のノイズを阻止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブル用ノイズフィルタに関し、特に、ケーブルに装着されて高周波ノイズを除去するためのケーブル用ノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケーブルを介して装置に進入または装置から放射されるノイズへの対策部品として、ケーブルをフェライト等の磁性体コアの中に通し、インピーダンスを上げてノイズを除去する方法が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ケーブルに対するノイズ対策ではないが、同軸線路などの不平衡回路に平衡伝送姿態のアンテナを接続する際に、同軸線路の外側に使用波長の1/4の長さの円筒導体を被せ、平衡回路との接点の反対側を同軸線路の外導体に短絡させることで、同軸線路の外導体の外側に流れようとする漏れ電流を阻止する機能をもつ、1/4波長スリーブ,バズーカと呼ばれる構成が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−155925号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「アンテナ工学ハンドブック(第2版)」、電子情報通信学会編集、オーム社、平成20年7月25日発行、P.64
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような従来の磁性体コアによるノイズ対策では磁性体の磁気特性により比較的低い周波数帯域では効果を発揮するが、一般的に数十〜数百MHz程度までで、それ以上の周波数帯域では磁気特性が低下し、ノイズを除去することができないという問題点があった。近年では材料の改良により1GHz程度まで効果を持つものも出てきているが、今後予想される更なる高周波ノイズの対策としては限界がある。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても効果的なケーブル用ノイズフィルタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーブルに装着されるケーブル用ノイズフィルタであって、ケーブルの長手方向の一部分に対してその周囲を覆うように被せられた筒状導体と、前記筒状導体と前記ケーブルとの間に挿入された損失性材料とを備え、前記筒状導体の一端を前記ケーブルを構成する導体に短絡させ、前記筒状導体の他端を開放端としたことを特徴とするケーブル用ノイズフィルタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ケーブルに装着されるケーブル用ノイズフィルタであって、ケーブルの長手方向の一部分に対してその周囲を覆うように被せられた筒状導体と、前記筒状導体と前記ケーブルとの間に挿入された損失性材料とを備え、前記筒状導体の一端を前記ケーブルを構成する導体に短絡させ、前記筒状導体の他端を開放端としたことを特徴とするケーブル用ノイズフィルタであるので、筒状導体1の長手方向の長さが波長λの1/4に相当する周波数を中心とする帯域のノイズを阻止することができ、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係るノイズフィルタの構成を示した構成図および断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係るノイズフィルタの構成を示した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係るノイズフィルタの構成を示した断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係るノイズフィルタの構成を示した断面図である。
【図5】本発明の実施の形態5に係るノイズフィルタの構成を示した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態6に係るノイズフィルタの構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係るケーブル用ノイズフィルタの構成を示す構成図である。図1(b)は、図1(a)の構成のケーブルの長手方向を断面とした断面図である。
【0012】
図1(a)および(b)において、10は、ケーブルの芯線導体である。本実施の形態では、2本の芯線導体10を図示しているが、その場合に限らず、芯線導体10の数は、1本でもよく、あるいは、3本以上でもよい。11は、芯線導体10を覆うためのケーブルのシールド導体である。芯線導体10とシールド導体11とをまとめてケーブルと呼ぶ。1は、ケーブルの長手方向に沿ってケーブルの一部分を筒状に覆う筒状導体であり、筒状導体1の一端は開放されているが、他方の一端は、シールド導体11に短絡するよう塞がれている。2は、筒状導体1とシールド導体11との間に存在する空間に挿入された損失性のある材料(以下、損失性材料とする。)である。
【0013】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
いま、ケーブルのシールド導体11には外来のノイズにより、図面左手より、シールド導体11の外面に沿ってノイズが伝播してくるものとしたとき、筒状導体1は、シールド導体11の外面を内導体とし、筒状導体1の内面を外導体とした、同軸線路を構成しており、また、筒状導体1の一方の端で内導体と外導体とが短絡されているため、片端短絡線路となり、筒状導体1の長手方向の長さを1/4波長とする周波数のノイズに対して無限大のインピーダンスとなり、当該ノイズを阻止する。
【0014】
なお、上記の説明は、ノイズがケーブルの図面左手から伝播してくる場合で説明したが、図面右手から伝播してくる場合も、まず筒状導体1の外側に沿って伝播し、その後、筒状導体1の内側に入りこむため、以降は上記と同様の動作となり、この場合も同様にノイズを阻止することができる。
【0015】
従って、阻止したいノイズの周波数に応じた長さの筒状導体1を、シールド導体11が設けられたシールド付きケーブルに取り付けることで、その周波数のノイズを阻止するフィルタとなる。すなわち、筒状導体1の長さは、阻止したいノイズの波長をλとするとき、当該波長λの1/4の長さとなるように設計する。しかしながら、筒状導体1だけでは阻止できるノイズ周波数の帯域幅が狭帯域となる。筒状導体1の太さを大きくすることで阻止帯域の幅を広くすることもできるが、本実施の形態においては、筒状導体1の内部に損失性材料2を入れることにより、筒状導体1内部に入ったノイズのエネルギーが熱に変わり放出される効果が得られるため、細く小型の形状のまま、より広い帯域のノイズに対して阻止効果を得ることが可能となる。
【0016】
なお、本実施の形態では、ケーブルの芯線導体10を覆うシールド導体11と筒状導体1とを短絡する構成としたが、その場合に限らず、例えば、シールド導体11ではなく、信号に対するGNDレベルを伝えるGND導体線が芯線導体10と同様に平行配線されたようなケーブルに対しては、GND導体線と筒状導体1とを短絡する構成としてもよい。
【0017】
真空における波長は、100MHzで3m,1GHzで30cm、10GHzで3cmであり、1/4波長ではそれぞれ75cm,7.5cm,7.5mmとなる。実際には損失性材料2の誘電率および透磁率により波長が短縮するため、これらの長さよりさらに短くなり、MHz帯に対しては使用しづらいが、GHz帯に対しては実用的なサイズとなり、安価な材料と簡単な構成で高い周波数帯域のノイズを阻止することが可能となる。
【0018】
また、損失性材料2の代わりに、GHz帯で損失が増加するような磁性体コアが使えれば、磁性体コアによる低い帯域の阻止効果と本発明の高い帯域の阻止効果とを同時に得ることが可能となり、広帯域のノイズに対して効果的なケーブル用フィルタとすることもできる。
【0019】
以上のように、本実施の形態1においては、シールド導体11が設けられたシールド付きケーブルに対し、このケーブルにおける長手方向の一部分を、その周囲を全て覆うように筒状導体1を被せ、筒状導体1の一方の端を塞いで、ケーブルのシールド導体11に短絡させ、さらに、筒状導体1とシールド導体11との間に存在する空間に損失性材料2を挿入するように構成したので、筒状導体1の長手方向の長さが波長λの1/4に相当する周波数を中心とする帯域のノイズを阻止することができる。以上により、筒状導体1の長さを阻止したいノイズの波長に応じて適宜設計すれば、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタを実現することができる。
【0020】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2に係るケーブル用ノイズフィルタの構成を示すケーブルの長手方向を断面とした断面図である。
【0021】
図2において、10はケーブルの芯線導体であり、本実施の形態では、2本の芯線導体10を図示しているが、芯線導体10の数は、1本でもよく、あるいは、3本以上でもよい。11は、芯線導体10を覆うためのケーブルのシールド導体である。芯線導体10とシールド導体11とをまとめてケーブルと呼ぶ。1は、ケーブルの長手方向に沿って、ケーブルの一部分を筒状に覆う筒状導体である。ただし、本実施の形態においては、筒状導体1の両端は塞がれておらず、両端とも開放端となっている。2は、筒状導体1とケーブルのシールド導体11との間に存在する空間に挿入された損失性材料である。
【0022】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
いま、ケーブルのシールド導体11に、外来のノイズが伝播してくるものとしたとき、筒状導体1は、シールド導体11の外面を内導体とし、筒状導体1の内面を外導体とした、同軸線路を構成しており、また、それらの内導体と外導体との間は両端とも開放状態のため、両端開放線路となり、筒状導体1の長さを1/2波長とする周波数のノイズに対して無限大のインピーダンスとなり、当該ノイズを阻止する。
【0023】
従って、阻止したいノイズの周波数に応じた長さの筒状導体1をシールド付きケーブルに取り付けることで、その周波数のノイズを阻止するフィルタとなる。すなわち、筒状導体1の長さは、阻止したいノイズの波長をλとするとき、当該波長λの1/2の長さとなるように設計する。しかしながら、筒状導体1だけでは阻止できるノイズ周波数の帯域幅が狭帯域となる。筒状導体の太さを大きくすることで阻止帯域の幅を広くすることもできるが、本実施の形態においては、筒状導体1の内部に損失性材料2を入れることにより、筒状導体1内部に入ったノイズのエネルギーが熱に変わり放出される効果が得られるため、細く小型の形状のまま、より広い帯域のノイズに対して阻止効果を得ることが可能となる。
【0024】
上述の実施の形態1の構成では、対象とするケーブルがシールド付ケーブルである必要があるが、本実施の形態2の構成では、シールド付きのケーブルでも、シールドのないケーブルでも効果が得られ、ケーブルを構成する導体の一部と短絡を取る必要がない。シールドのない場合には、芯線導体10が同軸構造の内導体となり、芯線導体10を伝播するノイズを阻止することができる。
【0025】
このように、本実施の形態においては、GHz帯に対しては実用的なサイズとなり、安価な材料と簡単な構成で高い周波数帯域のノイズを阻止することが可能となる。また、損失性材料2の代わりに、GHz帯で損失が増加するような磁性体コアが使えれば、磁性体コアによる低い帯域の阻止効果と、本発明の高い帯域の阻止効果とを、同時に得ることが可能となり、広帯域のノイズに対して効果的なケーブル用フィルタとすることもできる。
【0026】
以上のように、本実施の形態によれば、ケーブルに対し、このケーブルの長手方向の一部分に、その周囲を覆うよう筒状導体1を被せ、筒状導体1とケーブルとの間の空間に損失性材料2を入れるように構成することで、筒状導体1の長さが波長λの1/2に相当する周波数を中心とする帯域のノイズを阻止することができる。以上により、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタが実現できる。
【0027】
実施の形態3.
図3(a)は、本発明の実施の形態3に係るケーブル用ノイズフィルタの構成を示すケーブルの長手方向を断面とした断面図である。
【0028】
図3(a)において、10は、ケーブルの芯線導体であり、本実施の形態では2本の芯線導体を図示しているが、芯線導体の数は、1本でも、あるいは、3本以上でもよい。11は、芯線導体10を覆うためのケーブルのシールド導体である。芯線導体10とシールド導体11とをまとめてケーブルと呼ぶ。1は、ケーブルの長手方向に沿ってケーブルの一部分を覆う2重の筒状導体である。すなわち、本実施の形態においては、筒状導体1が、外側の筒状導体1aと内側の筒状導体1bとから構成された2重構造となっている。また、それらの2重の筒状導体1の一端は、外側の筒状導体1aと内側の筒状導体1bとが互いに短絡するよう塞がれている。2は、2重の筒状導体1の外側の筒状導体1aと内側の筒状導体1bとの間に存在する空間に挿入された損失性材料である。
【0029】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
いま、ケーブルのシールド導体11には外来のノイズにより、図面左手よりシールド導体11の外面に沿ってノイズが伝播してくるものとしたとき、筒状導体1を構成している内側の筒状導体1bの中心側の面(シールド導体11側の面)とシールド導体11の外側の面との容量性の結合により、高い周波数に対してはこれらは短絡状態となる。これにより、シールド導体11の外側の面と内側の筒状導体1bの外面とを一体としたものを内導体とし、外側の筒状導体1aの内側の面を外導体とした、同軸線路が構成され、また、一方の端で、これらの内導体と外導体とが短絡されているため、片端短絡線路となり、筒状導体1の長さを1/4波長とする周波数のノイズに対して無限大のインピーダンスとなり、当該ノイズを阻止する。
【0030】
従って、阻止したいノイズの周波数に応じた長さの2重構造の筒状導体1をシールド付きケーブルに取り付けることで、その周波数のノイズを阻止するフィルタとなる。すなわち、筒状導体1の長さは、阻止したいノイズの波長をλとするとき、当該波長λの1/4の長さとなるように設計する。しかしながら、筒状導体1だけでは阻止できるノイズ周波数の帯域幅が狭帯域となる。筒状導体1の太さを大きくすることで阻止帯域の幅を広くすることもできるが、本実施の形態においては、2重の筒状導体1の間に損失性材料2を入れることにより、2重の筒状導体内部に入ったノイズのエネルギーが熱に変わり、放出される効果が得られるため、細く小型の形状のまま、より広い帯域のノイズに対して阻止効果を得ることが可能となる。
【0031】
なお、図3(a)では、外側の筒状導体1aと内側の筒状導体1bの長さを同じ長さで示しているが、その場合に限らず、図3(b)のように、異なる長さとしても良く、この場合は、外側の筒状導体1aの長さによって、阻止できる周波数帯域が決まる。従って、内側の筒状導体1bの長さは任意の長さでよく、外側の筒状導体1aの長さより長くても、あるいは、短くてもよい。また、外側の筒状導体1aの長さは、阻止したいノイズの波長をλとするとき、当該波長λの1/4の長さとなるように設計する。
【0032】
また、図3(c)や図3(d)のように、内側の筒状導体1bと外側の筒状導体1aの両端とも短絡しない構成としてもよく、その場合も、筒状導体1の内側の筒状導体1bの中心側の面(シールド導体11側の面)とシールド導体11の外側の面との容量性の結合により、高い周波数に対してはこれらは短絡状態となり、実施の形態2と同様な動作により、外側の筒状導体1aの長さを1/2波長とする周波数のノイズを阻止することができる。なお、図3(c)と図3(d)との構成の違いは、図3(c)においては、外側の筒状導体1aと内側の筒状導体1bの長さが同じであるが、図3(d)においては、それらの長さが異なる長さとなっている点のみが異なり、他の構成については同じである。なお、この場合も、外側の筒状導体1aの長さによって、阻止できる周波数帯域が決まる。従って、筒状導体1の長さは、阻止したいノイズの波長をλとするとき、当該波長λの1/2の長さとなるように設計する。
【0033】
上述の実施の形態1の構成では、対象とするケーブルがシールド付ケーブルである必要があるが、本実施の形態3の構成では、シールド付きのケーブルでも、シールドのないケーブルでも効果が得られ、ケーブルを構成する導体の一部と短絡を取る必要がない。また、シールドのない場合には、芯線導体10が同軸構造の内導体となり、芯線導体を伝播するノイズを阻止することができる。
【0034】
GHz帯に対しては実用的なサイズとなり、安価な材料と簡単な構成で高い周波数帯域のノイズを阻止することが可能となる。また、損失性材料2の代わりに、GHz帯で損失が増加するような磁性体コアが使えれば、磁性体コアによる低い帯域の阻止効果と、本発明の高い帯域の阻止効果とを、同時に得ることが可能となり、広帯域のノイズに対して効果的なケーブル用フィルタとすることもできる。
【0035】
以上のように、本実施の形態においては、図3(a)または図3(b)に示すように、ケーブルに対し、このケーブルの長手方向の一部分の周囲を全て覆うよう筒状導体1を2重に被せ、2重の筒状導体1の一端の、外側および内側の筒状導体1a、1bどうしを短絡し、さらに、2重の筒状導体1の外側および内側の筒状導体1a、1b間の空間に損失性材料2を入れるように構成するようにしたので、筒状導体1の長さが波長λの1/4に相当する周波数を中心とする帯域のノイズを阻止することができる。以上により、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタが実現できる。
【0036】
また、本実施の形態においては、図3(c)または図3(d)に示すように、ケーブルに対し、このケーブルの長手方向の一部分の周囲を全て覆うよう筒状導体1を2重に被せ、2重の筒状導体1の両端の外側および内側の筒状導体1a、1bどうしを短絡させずに、両端とも開放端とし、さらに、2重の筒状導体1の外側および内側の筒状導体1a、1b間の空間に損失性材料2を入れるように構成するようにしたので、筒状導体1の長さが波長λの1/2に相当する周波数を中心とする帯域のノイズを阻止することができる。以上により、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタが実現できる。
【0037】
実施の形態4.
図4(a)は、本発明の実施の形態4に係るケーブル用ノイズフィルタの構成を示すケーブルの長手方向を断面とした断面図である。
【0038】
図4(a)において、10はケーブルの芯線導体であり、本実施の形態では、2本の芯線導体10を図示しているが、芯線導体10の数は、1本でもよく、あるいは、3本以上でもよい。11は、芯線導体10を覆うためのケーブルのシールド導体である。芯線導体10とシールド導体11とをまとめてケーブルと呼ぶ。1は、ケーブルの長手方向に沿ってケーブルの一部分を覆う多重の筒状導体であり、多重の筒状導体1の一端は、それらのすべてが互いに短絡するよう塞がれている。2は、多重の筒状導体1を構成している筒状導体の互いの間に存在する空間、および、最も内側の筒状導体1dとシールド導体11との間の空間に入れた損失性材料である。
【0039】
なお、図4(a)の構成は、最も外側の筒状導体1aの長さが最も長く、それ以外の筒状導体1b〜1dについては、内側になるにつれて、徐々にステップ状に筒状導体の長さが短くなっている。従って、最も内側の(シールド導体11に最寄りの)筒状導体1dの長さが最も短い。なお、図4(a)においては、4重になっている筒状導体1を例に挙げているが、この場合に限らず、何重でもよく、何重にするかは適宜決定すればよい。
【0040】
次に、本実施の形態の動作を図4(a)を用いて説明する。
いま、ケーブルのシールド導体11には、外来のノイズにより、図面左手よりシールド導体11の外面に沿って、ノイズが伝播してくるものとしたとき、筒状導体1はシールド導体11の外面を内導体とし、多重の筒状導体1のそれぞれの内面を外導体とした、多重の同軸線路を構成しており、一方の端で内導体と外導体とが短絡されているため、片端短絡線路となり、多重の筒状導体1を構成している各筒状導体1a〜1dのそれぞれの長さを1/4波長とする周波数のノイズに対して高インピーダンスとなり、同時に複数の周波数のノイズを阻止する。
【0041】
上記の説明は、ノイズがケーブルの図面左手から伝播してくる場合で説明したが、図面右手から伝播してくる場合も、まず、多重の筒状導体1の外側に沿って伝播し、その後、多重の筒状導体1の内側に入りこむため、同様にノイズを阻止することができる。
【0042】
従って、複数のノイズの周波数に応じた長さの多重の筒状導体1をシールド付きケーブルに取り付けることで、それぞれの周波数ノイズを阻止するフィルタとなる。しかしながら筒状導体1だけでは阻止できるノイズ周波数の帯域幅が狭帯域となる。筒状導体の太さを大きくすることで阻止帯域の幅を広くすることもできるが、本実施の形態においては、筒状導体1の内部に損失性材料2を入れることにより筒状導体1内部に入ったノイズのエネルギーが熱に変わり放出される効果が得られるため、より広い帯域のノイズに対して阻止効果を得ることが可能となる。
【0043】
図4(a)ではシールド付のケーブルである必要があるが、多重の筒状導体を図4(b)のように構成すれば、シールド付きのケーブルでも、シールドのないケーブルでも効果が得られる。なお、図4(b)の構成は、最も外側と最も内側の筒状導体1a、1eの長さが最も長く、それらの長さは同じであり、それ以外の筒状導体1b〜1dについては、内側になるにつれて、徐々にステップ状に筒状導体の長さが短くなっている。従って、最も内側の(シールド導体11に最寄りの)筒状導体1eよりも1つだけ外側の筒状導体1dの長さが最も短い。また、図4(b)においては、最も内側の筒状導体とシールド導体11との間には、損失性材料2は挿入されていない点が、図4(a)と異なる。
【0044】
図4(b)の構成において、シールド導体11がある場合には、多重の筒状導体1の最も内側の筒状導体1eの中心側の面とシールド導体11の外側の面が容量性の結合により高い周波数に対しては短絡となり、これによりシールド導体11の外面と多重の筒状導体1の最も内側の筒状導体1eの外面とを一体としたものを内導体とし、最も内側以外の多重の筒状導体1a〜1dの内面を外導体とした、同軸線路を構成し、図4(a)の場合と同様に動作させることができる。
【0045】
また、図4(b)の構成において、シールド導体11のない場合には、多重の筒状導体1の最も内側の筒状導体1eの中心側の面(シールド導体11側の面)と芯線導体10とが容量性の結合により高い周波数に対しては短絡となり、芯線導体10と多重の筒状導体1の最も内側の筒状導体1eの外面を一体としたものを内導体とし、最も内側以外の多重の筒状導体1a〜1dの内面を外導体とした、同軸線路を構成し、この場合も、図4(a)の場合と同様に動作させることができる。
【0046】
さらに、図4(c)や図4(d)のように、多重の筒状導体の両端とも短絡しない構成としてもよい。その場合も、筒状導体1の最も内側の筒状導体1dの中心側の面とシールド導体11の外側の面の容量性の結合により高い周波数に対しては短絡となり、実施の形態2と同様な動作により、外側の筒状導体1a〜1cのそれぞれの長さを1/2波長とする複数の周波数のノイズを阻止することができる。なお、図4(c)および図4(d)においては、筒状導体1の一端を短絡させる構造ではないため、図4(a)および図4(b)に示すように、各筒状導体の端部の位置を揃えて配置させる必要はない。他の構成については、図4(a)または図4(b)と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
このように、実施の形態4の構成では、シールド付きのケーブルでも、シールドのないケーブルでも効果が得られ、ケーブルを構成する導体の一部と短絡を取らずに構成することも可能である。シールド導体11のない場合には芯線導体10が同軸構造の内導体となり、芯線導体10を伝播するノイズを阻止することができる。また、筒状導体1を多重の構造にすることで、複数の周波数のノイズを阻止することができる。
【0048】
GHz帯に対しては実用的なサイズとなり、安価な材料と簡単な構成で高い周波数帯域のノイズを阻止することが可能となる。また、損失性材料2の代わりに、GHz帯で損失が増加するような磁性体コアが使えれば、磁性体コアによる低い帯域の阻止効果と、本発明の高い帯域の阻止効果とを同時に得ることが可能であり、広帯域のノイズに対して効果的なケーブル用フィルタとすることもできる。
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、ケーブルに対し、このケーブルの長手方向の一部分を、その周囲を全て覆うように筒状導体を多重に被せ、各筒状導体の長さをそれぞれ異なる長さとすることを特徴とすることで、それぞれ異なる複数の周波数を中心とした複数の帯域のノイズを阻止することができる。以上により、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタが実現できる。
【0050】
実施の形態5.
図5は、本発明の実施の形態5に係るケーブル用ノイズフィルタの構成を示すケーブルの長手方向を断面とした断面図である。
【0051】
図5において、10はケーブルの芯線導体であり、本実施の形態では、2本の芯線導体10を図示しているが、芯線導体10の数は、1本でも、あるいは、3本以上でもよい。11は、芯線導体10を覆うためのケーブルのシールド導体である。芯線導体10とシールド導体11とをまとめてケーブルと呼ぶ。1は、ケーブルの長手方向に沿ってケーブルの一部分を覆う筒状導体であり、ケーブルのシールド導体11に短絡するよう塞がれている。2は、筒状導体1とケーブルのシールド導体11との間に存在する空間に入れた損失性材料である。実施の形態1との違いは、筒状導体1の内部の損失性材料2の厚みを一定とせず周期的に厚みを変えたことである。すなわち、損失性材料2の厚みが薄い部分と厚い部分とが交互に設けられている。なお、薄い部分は、その分だけ、図5に示すように、筒状導体1とケーブルのシールド導体11との間に空間が存在している。
【0052】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
筒状導体1とシールド導体11が片端短絡の同軸線路を構成し、筒状導体1の長さを1/4波長とする周波数のノイズを阻止する動作は実施の形態1と同じである。実施の形態4の構成ではこれに加え、損失性材料2の厚みを一定とせずに、周期的に厚みを変えたことにより、筒状導体1とシールド導体11で構成される同軸線路のインピーダンスも周期的に変化する。このため、この変化周期の長さに応じた周波数のノイズも阻止されることになる。
【0053】
このような損失性材料2の周期的な厚みの変化をもたせる構造は、図5のような、実施の形態1で示した筒状導体の内部に入れた損失性材料2への適用だけでなく、実施の形態2〜4に示したような筒状導体の内部に入れた損失性材料2に対しても同様に適用することができる。
【0054】
本実施の形態の構成により、安価な材料と簡単な構成で高い周波数帯域のノイズを筒状導体1の長さ、および、損失性材料2の厚みを変化させる変化周期の長さの2つの周波数に対して阻止することが可能となる。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、筒状導体1の中にいれる損失性材料2の厚みを一定とせず周期的に厚みを変えるようにしたので、筒状導体1の長さに応じた周波数に加え、損失性材料2の厚みを周期的に変えた周期構造の長さに応じた周波数を中心とする帯域のノイズも阻止することができる。以上により、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタが実現できる。
【0056】
実施の形態6.
図6は、本発明の実施の形態6に係るケーブル用ノイズフィルタの構成を示すケーブルの長手方向を断面とした断面図である。
【0057】
図6において、10はケーブルの芯線導体であり、本実施の形態では、2本の芯線導体10を図示しているが、芯線導体10の数は、1本でも、あるいは、3本以上でもよい。11は、芯線導体10を覆うためのケーブルのシールド導体である。芯線導体10とシールド導体11とをまとめてケーブルと呼ぶ。1a、1b、1cはそれぞれケーブルの長手方向に沿ってケーブルの一部分を覆う筒状導体であり、それらの一端は、ケーブルのシールド導体11に短絡するよう塞がれている。2a、2b、2cは、それぞれ、筒状導体1a、1b、1cとケーブルのシールド導体11との間の空間に入れた損失性材料である。
【0058】
次に本実施の形態の動作について説明する。
筒状導体1a、1b、1cとシールド導体11とが、それぞれ、片端短絡の同軸線路を構成し、それぞれの筒状導体1a、1b、1cの長さを1/4波長とする周波数のノイズを阻止する動作は実施の形態1と同じである。また、実施の形態5の構成では、これら複数の筒状導体1a、1b、1cを直列にケーブルに設置し、さらに、図6のように、それぞれ長さの異なる筒状導体とすれば、異なる複数の周波数ノイズを阻止することができる。また、複数の筒状導体1a、1b、1cの長さが同じであっても、特定の周波数のノイズの阻止性能を高めることができる。
【0059】
なお、このように、複数の筒状導体1a、1b、1cを直列にケーブルに設置する特徴については、個々の筒状導体1a、1b、1cの構造が実施の形態1の構造に限らず、実施の形態2〜5までのいずれかの構造のものに対しても同様に適用することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態によれば、異なる長さの筒状導体1a、1b、1cで構成されたノイズフィルタを複数直列並べて構成することを特徴とすることで、それぞれ異なる複数の周波数を中心とした複数の帯域のノイズを阻止することができる。以上により、1GHz以上の高い周波数のノイズに対しても有効なケーブル用ノイズフィルタが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のケーブル用ノイズフィルタは安価な材料と簡単な構成で高い周波数帯域のノイズを阻止することが可能であり、ケーブル伝送におけるノイズ対策として多様な装置、システムに利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1,1a,1b,1c,1d,1e 筒状導体、2 損失性材料、10 芯線導体、11 シールド導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルに装着されるケーブル用ノイズフィルタであって、
ケーブルの長手方向の一部分に対してその周囲を覆うように被せられた筒状導体と、
前記筒状導体と前記ケーブルとの間に挿入された損失性材料と
を備え、
前記筒状導体の一端を前記ケーブルを構成する導体に短絡させ、前記筒状導体の他端を開放端としたことを特徴とするケーブル用ノイズフィルタ。
【請求項2】
ケーブルに装着されるケーブル用ノイズフィルタであって、
ケーブルの長手方向の一部分に対してその周囲を覆うように被せられた筒状導体と、
前記筒状導体と前記ケーブルとの間に挿入された損失性材料と
を備え、
前記筒状導体の両端を開放端としたことを特徴とするケーブル用ノイズフィルタ。
【請求項3】
ケーブルに装着されるケーブル用ノイズフィルタであって、
ケーブルの長手方向の一部分に対してその周囲を覆うように被せられた筒状導体
を備え、
前記筒状導体は、複数の筒状の導体から構成された多重構造であって、
前記複数の筒状の導体どうしの間には、損失性材料が挿入され、
前記複数の筒状の導体は、それらの一端どうしが短絡され、他端がそれぞれ開放端であることを特徴とするケーブル用ノイズフィルタ。
【請求項4】
ケーブルに装着されるケーブル用ノイズフィルタであって、
ケーブルの長手方向の一部分に対してその周囲を覆うように被せられた筒状導体
を備え、
前記筒状導体は、複数の筒状の導体から構成された多重構造であって、
前記複数の筒状の導体どうしの間には、損失性材料が挿入され、
前記複数の筒状の導体は、両端がそれぞれ開放端であることを特徴とするケーブル用ノイズフィルタ。
【請求項5】
前記複数の筒状の導体は、互いに異なる長さを有することを特徴とする請求項3または4に記載のケーブル用ノイズフィルタ。
【請求項6】
前記損失性材料は、その厚さを一定とせずに、周期的に厚さが変わることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のケーブル用ノイズフィルタ。
【請求項7】
前記ケーブルに対して、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のケーブル用ノイズフィルタを、複数個長手方向に並べて配置し、
それらの複数個のケーブル用ノイズフィルタの筒状導体が互いに異なる長さを有していることを特徴とするケーブル用ノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−3982(P2011−3982A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143410(P2009−143410)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】