説明

ケーブル等保護管

【課題】衝撃性に優れ、フレキシブル保護管と混在させて配管する場合にも作業性よく配管することができる非フレキシブル性のケーブル保護管を提供する。
【解決手段】難燃性を有するポリオレフィン系樹脂を主成分とし、外周に谷部11と、谷部よりも幅が広く中実の山部10とが交互に形成された内径14.34〜35.72mm,外径22.83〜45.30mmの波付管であり、谷部中心における管の内径が山部中心における管の内径よりも小さく管の内側に向けて僅かに円弧状に盛り上っており、且つ中実の山部内径が谷部外径より小さく形成され、谷部の平均肉厚t1が1.40mm以上2.06mm以下であって山部の平均肉厚tが3.3mm以上3.76mm以下であって、曲げ剛性が2.50〜5.00N・mであり、圧縮荷重を1250N以上とした場合のJIS C 8411に基づく圧縮荷重試験の圧縮減少率を10%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には通信ケーブルや電気配線(以下「ケーブル等」と言う。)の保護管に関するものであり、さらに具体的には、フレキシブル性がないかあるいはフレキシブル性に乏しい(例えば、通常人の腕力のみでは容易に曲げることができない程度)ケーブル等保護管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
また本発明は、工場、倉庫、屋内駐車場、各種地下構造物その他の構造物の内部や外壁及び屋上等において、埋設配管(床スラブ、壁、柱、梁などの鉄筋コンクリート内へ埋設される配管)を除く次のような配管構造に用いられるケーブル等保護管に関するものである。
露出配管:壁面や天井面その他構造物のない外面において露出状態で設置される配管。
隠蔽配管:二重天井内、軽量間仕切(中空間仕切)内、パイプシャフト内その他隠蔽された状態で設置される配管。
【0003】
この種のケーブル等保護管の配管構造では、例えば地中に埋設されるケーブル保護管等の場合と比較して、配管領域に曲げ配管部(配管現場の客観的条件や配管上の都合により曲げ配管が必要な部分)がはるかに多い。
このような場合、一般的には熱可塑性合成樹脂製のフレキシブル波付管を用い、直線配管部ではフレキシブル波付管を直線状に伸ばした状態で(フレキシブル波付管は、押出し形成後コイル状に巻かれて出荷されるので、延ばして使用する。)壁面や床面へ止め金具により固定し、曲げ配管部ではこれを曲げた状態で止め金具により固定する。
【0004】
しかし、直線配線部が所定量以上長いとフレキシブル波付管の巻きぐせが残ってS字状やくの字状等に曲り、その曲がった部分へフレキシブルなケーブルを通線する際に摩擦によりケーブル保護管が動き、通線抵抗の増大に伴い通線に時間がかかる。直線配管部の距離が長いなどの事情がある場合、フレキシブル波付管を壁面や床面へ止める際に止め金具を密に設置すると曲り癖の残存部分は少なくなるが、止め金具の使用数が多くなるので配管費用が増大し、外観も悪くなる。
このような理由から、発明者らが既に提案したように(特願2007−011595号)、直線配管部では直線状の非フレキシブル性の(フレキシブル性を有しないか、あるいはフレキシブル性の乏しい性質)保護管を必要長さに切断して配管するとともに、曲げ配管部ではフレキシブル保護管を切断して配管し、前記非フレキシブル保護管とフレキシブル保護管相互の端部を連結する配管構造であるのが好ましい。
【0005】
フレキシブル保護管と非フレキシブル保護管とを前記のように混在させて配管する場合、非フレキシブル保護管として、例えば鋼管その他の金属管などを用いるのは、配管現場で切断する際に丸鋸カッタを使用するので切断作業に時間が掛かるほか、衝撃に対して変形し易いという問題がある。
また、非フレキシブル保護管として例えば硬質の塩化ビニル管を用いるのは、切断の際に丸鋸カッタが必要で切断に手間取るほか、接続には接着剤が使用され接着完了を待って管を固定するので手間が掛かるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、フレキシブル保護管と混在させて配管する非フレキシブル管の改善にある。
本発明の目的は、耐衝撃性に優れており、しかもフレキシブル保護管と混在させて配管する場合により作業性よく配管することができる非フレキシブル性のケーブル保護管を提供することにある。
本発明の他の目的は、配管後ケーブル等を通線する場合により通線作業性の良いケーブル保護管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るケーブル保護管は、前記課題を解決するため、難燃性を有するポリオレフィン系樹脂を主成分とし、外周に谷部と当該谷部よりも幅が広く中実の山部とが交互に形成された内径14.34〜35.72mm,外径22.83〜45.30mmの波付管であり、谷部中心における管の内径が山部中心における管の内径よりも小さく管の内側に向けて僅かに円弧状に盛り上っており且つ前記中実の山部内径が谷部外径より小さく形成され、谷部の平均肉厚が1.40mm以上2.06mm以下であって山部の平均肉厚が3.3mm以上3.76mm以下であって、曲げ剛性が2.50N・以上5.00N・m以下であり、
圧縮荷重を1250N以上とした場合のJIS C 8411 に基づく圧縮荷重試験の圧縮減少率が10%以下であることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るケーブル保護管によれば、第1に、外周に谷部と当該谷部よりも幅が広く中実の山部とが交互に形成された波付管であり、曲げ剛性が2.50N・以上5.00N・m以下であるので、非フレキシブル性(フレキシブル性を有しないか、通常人の腕力のみでは曲がらない程度にフレキシブル性に乏しい。)を有する。また、鋼管等と比較しても耐衝撃性に優れている。
第2に、難燃性を有するポリオレフィン系樹脂を主成分としているので難燃性(炎がなくなると一定時間内に自然消火する性質。)を有する。
第3に、谷部中心における管の内径が山部中心における管の内径よりも小さく管の内側に向けて僅かに円弧状に盛り上っているので、管内面の滑りがよく通線性に富んでいる。
第4に、前記のような波付管であるので、同様な形態及びサイズのフレキシブル波付管と併用することにより、それらの波付管用の継手具を用いてフレキシブル波付管に対して簡単に連結することができる。
また、押出し成形によって製造することにより直線性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明に係るケーブル保護管の一実施形態を示す部分断面図である。
ケーブル保護管1は、難燃性を有するポリオレフィン系樹脂を主成分とし、外周に谷部11と当該谷部11の幅w1よりも幅wが広く中実(むく)の山部10とが交互に形成された波付管であって、曲げ剛性は2.50N・以上5.00N・m以下である。
谷部11の中心における管1の内径は山部10の中心における管1の内径よりも管1の内側に向けて僅かに円弧状に盛り上っている。
【0010】
この実施形態において、ケーブル保護管1は、高密度ポリエチレンやEVA樹脂に適量の難燃剤(例えばハロゲン化物)を加えた樹脂を用い、JIS C 8411 フレキシブル波付管用の金型により押出成形したものであるが、他のポリオレフィン系樹脂をベースとして用いることができる。
また、圧縮荷重を1250N以上(JIS C 8430 の塩化ビニル管対応)とした場合のJIS C 8411に基づく圧縮荷重試験の圧縮減少率が10%以下であるのが好ましい。
【0011】
前記実施形態のケーブル保護管1によれば、外周に谷部11と当該谷部11の幅w1よりも幅wが広く中実の山部10とが交互に形成された波付管であり、曲げ剛性が2.50N・以上5.00N・m以下であるので、前述のような非フレキシブル性を有するほか、耐衝撃性に優れている。
難燃性を有するポリオレフィン系樹脂を主成分としているので難燃性を有する。
谷部11の中心における管1の内径が山部10の中心における管1の内径よりも小さく管1の内側に向けて僅かに円弧状に盛り上っているので、管内面の滑りがよく配管後の通線性に富んでいる。
また、前記のような波付管であるので、同様な形態及びサイズのフレキシブル波付管と併用することにより、それらの波付管用の継手具を用いてフレキシブル波付管に対して簡単に連結することができる。
さらに、押出し成形によって製造されているので直線性を有する。
【0012】
前記実施形態のケーブル保護管は、曲げ剛性を2.50〜5.00N・の範囲とすることにより、一般的な曲げ工具を用いてある程度曲げ加工することができる。また、例えば一端を接続ボックスへ接続したケーブル保護管をサドル等の止め具を用いて壁や天井へ固定する際に、壁面や天井面における接続ボックスのレベルと前記止め具の固定レベルとの差を利用して、当該保護管を固定すると同時に当該保護管へ若干の曲げを付与することができる。
さらに、ポリエチレン樹脂にEVA樹脂をブレンドしたり、あるいはベース樹脂に合成ゴムを添加するなどの手段により、低温下においても曲げ工具や機器による若干の曲げ加工性を保護管に付与することができる。
このように、前記実施形態のケーブル保護管へ若干の曲げ加工性を付与することにより、配管領域へある程度曲げ工具等により曲げた状態で配管することが可能となる。
【0013】
実施例
高密度ポリエチレンをベースとして難燃剤を添加した樹脂を用い、表1で示すように JIS C 8411による各呼び径φ16(金型No.1),φ22(金型No.2),φ28(金型No.3),φ36(金型No.4)のフレキシブル保護管(波付管)成形用の金型により、各実施例のケーブル保護管サンプルを押出成形により試作した。
表1の表示中、内径,外径,波ピッチp,谷部肉厚t1及び山部肉厚tはそれぞれ平均値である。また、内径は谷部11の中心部における管1の内径(最小内径部)であり、外径は山部10の中心における管1の外径である。また、「標準目付」は管1のm当たりの樹脂の重量である。
各実施例について、それぞれ曲げ剛性を測定するとともに、各実施例サンプルにつきそれぞれ記載した圧縮荷重を付与し、JIS C 8411に準じて圧縮減少率を測定し、それらを表1に記載した。
【0014】
表1で示されているように、各実施例のケーブル保護管サンプルは、JIS C 8430 による硬質塩化ビニル管対応に相当するか又はそれ以上の圧縮減少率を示した。
【0015】
表1

【0016】
耐衝撃性試験
表1のJIS C 8411による呼び径φ22(金型No.2)フレキシブル波付管成形用の金型を用いて押出成形した実施例試験片No.1〜10、及び内径25mm,肉厚1mmの鋼管による比較例試験片No.1〜10それぞれについて、以下の要領で耐衝撃試験を行い、それらの結果を表2と表3に示した。
試験要領
JIS C 8411:1999 8.3耐衝撃試験にて用いる装置のハンマ質量を19.6Nから117.6Nに変更。
管に荷重を加える当て金をR300からR15〜18に変更。
各試験片の外径を測定。
100mmの高さから各試験片へ衝撃を加える(衝撃の加え方は、JIS C 8411:1999 8.3耐衝撃試験と同様)。
約30分後再度各試験片の外径を測定した。(比較例試験片は鋼管凹のため、ノギスに突起をつけて外径を測定した。)
【0017】
表2

【0018】
表3

【0019】
表2,表3で示されているように、比較例の試験片サンプルの30分後減少率が平均7.96であるのに対し、実施例の試験片サンプルの30分後減少率は平均6.54であって、比較例サンプルに対する実施例サンプルの優位性を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るケーブル保護管の一実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ケーブル保護管
10 山部
11 谷部
t 山部肉厚
t1 谷部肉厚
w 山部幅
w1 谷部幅
p 波ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性を有するポリオレフィン系樹脂を主成分とし、外周に谷部と当該谷部よりも幅が広く中実の山部とが交互に形成された内径14.34〜35.72mm,外径22.83〜45.30mmの波付管であり、谷部中心における管の内径が山部中心における管の内径よりも小さく管の内側に向けて僅かに円弧状に盛り上っており且つ前記中実の山部内径が谷部外径より小さく形成され、谷部の平均肉厚が1.40mm以上2.06mm以下であって山部の平均肉厚が3.3mm以上3.76mm以下であって、曲げ剛性が2.50N・以上5.00N・m以下であり、
圧縮荷重を1250N以上とした場合のJIS C 8411 に基づく圧縮荷重試験の圧縮減少率が10%以下であることを特徴とする曲げ剛性と圧縮復元性に優れ非フレキシブル性を有するケーブル等保護管。

【図1】
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【公開番号】特開2012−23954(P2012−23954A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180444(P2011−180444)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2007−108763(P2007−108763)の分割
【原出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(592091529)東光電気工事株式会社 (10)
【出願人】(501314396)古河樹脂加工株式会社 (26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】