説明

ケーブル

【課題】げっ歯目の動物等による咬害を抑制することができるケーブル外被材料及びこれを用いたケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブルコア20の外周にケーブル外被40を形成した本ケーブル10と、本ケーブル10に隣接配置されたダミーケーブル50を備え、ダミーケーブル50の外被の引張強さ/中心線平均粗さが本ケーブル10のそれよりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、げっ歯目の動物等による咬害を抑制することができるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に布設される光ファイバケーブルや電力線ケーブル等のケーブルにおいては、鼠、モモンガのような、げっ歯目の動物等により外被がかじられる咬害が問題となっている。
【0003】
咬害を防ぐために、外被に忌避剤を含有させることが提案されている。また、曲げ弾性率が8000kg/cm以上、厚さ0.5〜1.5mmのポリアセタール樹脂を外被に用いることで、咬害を防ぐことも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−283849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本出願人が実施した鼠の咬害実験を行った結果、曲げ弾性率が8000kg/cm以上の材料を外被に用いた場合でも、鼠により外被が破られる場合があることが判明した。
【0006】
本発明の課題は、げっ歯目の動物等による咬害を抑制することができるケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、ケーブルであって、ケーブルコアの外周に外被を形成した本ケーブルと、前記本ケーブルに隣接配置されたダミーケーブルを備えたケーブルであって、前記ダミーケーブルの外被の引張強さ/中心線平均粗さが本ケーブルのそれよりも小さいことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルであって、前記ダミーケーブルの外被の引張強さが35MPa以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のケーブルであって、前記ダミーケーブルの外被の中心線平均粗さRaが2μm以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブルであって、前記ダミーケーブルに前記本ケーブルを巻きつけたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブルであって、前記本ケーブルに前記ダミーケーブルを巻きつけたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブルであって、前記本ケーブルと前記ダミーケーブルとを固定する固定材を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブルであって、前記本ケーブルと前記ダミーケーブルとを接着または融着したことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のケーブルであって、前記ダミーケーブルには抗張力体が配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のケーブルであって、前記ダミーケーブルには電気通信または光通信が可能なケーブルコアが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、げっ歯目の動物等による咬害を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図である。
【図7】(a)は本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図8】(a)は本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図であり、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るケーブル1を示す側面図であり、図2は図1のII−II矢視断面図である。ケーブル1は、本ケーブル10と、ダミーケーブル50と、固定材60とからなる。
【0019】
本ケーブル10は、ケーブルコア20の外周部に外被40を押出被覆してなる。ケーブルコア20としては、電力搬送用の電力線や、電気通信用または光通信用の通信線等が挙げられる。
【0020】
ケーブルコア20の外側には、外被40が設けられている。外被40には、熱可塑性樹脂を用いることができる。外被40の原材料としては、例えばLLDPE、HDPE、ポリアミド樹脂やポリウレタンエラストマー等を用いることができる。
【0021】
ダミーケーブル50は引張強さが35MPa以下であることが好ましく、本ケーブル10の外被40よりも小さいことがより好ましい。
また、ダミーケーブル50は中心線平均粗さ(Ra値)が2μm以上であることが好ましく、本ケーブル10の外被40よりも大きいことがより好ましい。
【0022】
なお、成形後の表面の中心線平均粗さ(Ra値)を大きくする方法としては、例えば、押出成形時の設定温度条件を調整することで成形後の表面を荒れた状態に(すなわち、中心線平均粗さを大きく)することが可能であり、たとえば、押出ダイス部の温度を通常設定より低めに設定することで、表面を荒れた状態にすることができる。この押出ダイス部の温度を低めに設定する手法は、ケーブルの長手方向に対しても最も安定して中心線平均粗さを大きくできる手法として推奨される。
【0023】
また、他の方法としては、外被を押出成形した後のケーブルを、仕上がり外径より若干小さい径であり、内面の表面が荒れたダイスを通過させることでも、中心線平均粗さを大きくすることができる。
さらに他の方法としては、外被を押出成形した後のケーブルの外表面全体をヤスリなどでかるく擦ることでも中心線平均粗さを大きくすることが可能である。
【0024】
このようなダミーケーブルの原材料としては、ポリアセタールや難燃性樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、ダミーケーブル50は樹脂のみで形成してもよいし、中心に金属線等の抗張力体を配置してもよい。抗張力体を配置することで、ケーブル1を自己支持型ケーブルとすることができる。
【0025】
このような原材料からなるダミーケーブル50は、本ケーブル10の外被40と比較して、げっ歯目の動物が好んで齧る傾向がある。したがって、本ケーブル10とダミーケーブル50とを隣接配置すると、げっ歯目の動物等はダミーケーブル50を好んで齧るため、本ケーブル10が咬害を受けるのを抑制することができる。なお、げっ歯目の動物等による咬害のみならず、クマゼミ等の産卵管による被害や、その他の虫、鳥獣による被害も同様に抑制することができると考えられる。
【0026】
また、ダミーケーブル50が咬害を受けたことを検知することができるように、ダミーケーブル50の内部に電気通信または光通信が可能なケーブルコアを設けてもよい。
【0027】
固定材60は、本ケーブル10とダミーケーブル50とを隣接配置するために束ねるものであり、例えば金属線や、樹脂材等を用いることができる。なお、図1においては、ケーブル1の長さ方向に間欠的に固定材60を設けているが、例えば図3に示すように、本ケーブル10及びダミーケーブル50に対し、線状の固定材60を螺旋状に巻きつけることで本ケーブル10とダミーケーブル50とを固定してもよい。
【0028】
また、固定材60を用いる代わりに、図4に示すように、ダミーケーブル50の周囲に螺旋状に本ケーブル10を巻きつけてもよいし、図5に示すように、本ケーブル10の周囲に螺旋状にダミーケーブル50を巻きつけてもよい。また、図6に示すように、本ケーブル10とダミーケーブル50とをツイストペア状にしてもよい。
【0029】
さらに、図7(a)、(b)に示すように、複数本の本ケーブル10の周囲に螺旋状にダミーケーブル50を巻きつけてもよい。
【0030】
また、図8(a)、(b)に示すように、本ケーブル10とダミーケーブル50とを接着剤70により接着してもよい。あるいは、外被40とダミーケーブル50とを融着してもよい。この場合、ケーブル1の全長にわたり接着または融着してもよいし、間欠的に接着または融着してもよい。
以下、本発明の効果について実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0031】
金属製丸棒に、L−LDPE、HDPE、ポリアセタール、難燃性樹脂、ポリアミド樹脂の5種類の異なる熱可塑性樹脂からなる外被を被覆したサンプルを作成し、クマネズミによる咬害の有無を比較した。外被の各材料の曲げ弾性率、デュロメータ硬さ、引張強さ、表面の中心線平均粗さ(Ra値)を表1に示す。なお、曲げ弾性率、デュロメータ硬さ、引張強さはプレス成形シートにて、表面の中心線平均粗さ(Ra値)は金属製丸棒に外被を被覆したサンプルにて、表1に示すJIS番号に規定する測定方法により測定した。
【表1】

【0032】
長さ400mm、直径6mmの真鍮棒の外周に、上記の7種類の熱可塑性樹脂を押出被覆し、厚さ1mmとなるように外被を形成したサンプルを各材料ごとに形成した。その後、表2に示す組み合わせで本ケーブル相当とダミーケーブル相当のサンプル2本を平行に添わせ、クマネズミ50匹の飼育部屋において、サンプルの両端50mmずつを約2kgの金属固定台に挿入し、各ケーブル中心の床面からの高さがおよそ30mmとなるように配置した。各サンプルは、鼠の巣穴入口付近から餌箱に向って放射状に配置し、1週間ごとに乱数表に従ってランダムに配列を変更した。このような環境において、クマネズミの咬害により真鍮棒が露出するか否かの観察を行った。試験期間は合計4週間とした。
【0033】
〔結果〕
結果を表2に示す。
【表2】

真鍮棒が露出したものを×、露出しなかったものを○とした。
【0034】
本ケーブル相当及びダミーケーブル相当の両方にLLDPEを用いた場合、本ケーブル相当にHDPE、ダミーケーブル相当にポリアミド樹脂を用いた場合には、1週間で本ケーブル相当の真鍮棒が露出した。一方、本ケーブル相当をLLDPE、ダミーケーブルをポリアセタールとした場合には、4週間を経過しても本ケーブル相当の真鍮棒は露出しなかった。本ケーブル相当をLLDPE、ダミーケーブルを難燃性樹脂とした場合にも、4週間を経過しても本ケーブル相当の真鍮棒は露出しなかった。また、本ケーブル相当をHDPE、ダミーケーブルを難燃性樹脂とした場合にも、4週間を経過しても本ケーブル相当の真鍮棒は露出しなかった。
【0035】
このように、本ケーブルの外被よりも表面の引張強さ/中心線平均粗さ(Ra値)が小さい材料をダミーケーブルに用いることで、本ケーブルの咬害を抑制することができる。
【0036】
なお、このうように引張強さが小さく、表面の粗さが大きいサンプルをげっ歯目の動物が好んで齧る理由は、以下のように推定される。
【0037】
げっ歯目の動物は、成長し続ける門歯を研磨する目的や餌を食べる目的で様々な物を噛む。噛む動作としては、上の歯で噛む対象を固定し、下の歯を上下させることで対象を噛み切る(または砕く)。したがって、対象物を噛む場合、上の歯でしっかり固定し下の歯で強く噛む必要があるが、対象物の引張強さが大きく、且つ中心線平均粗さ(Ra値)小さい場合は、表面が滑り、また歯傷も付き難いために、噛み切る(または、引きちぎる)ことが困難であると考えられる。
【0038】
一方、対象物の引張強さが小さく、且つ中心線平均粗さ(Ra値)が大きい場合は、対象物を上の歯で固定し易く、且つ下の歯で引きちぎり易い。したがって、ちぎれた外被が研磨材として作用し、歯を研磨(磨耗)する目的が達成できることから、噛み易いと考えられる。
【符号の説明】
【0039】
1 ケーブル
10 本ケーブル
20 ケーブルコア
40 外被
50 ダミーケーブル
60 固定材
70 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアの外周に外被を形成した本ケーブルと、
前記本ケーブルに隣接配置されたダミーケーブルを備えたケーブルであって、前記ダミーケーブルの外被の引張強さ/中心線平均粗さが本ケーブルのそれよりも小さいことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記ダミーケーブルの外被の引張強さが35MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記ダミーケーブルの外被の中心線平均粗さRaが2μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記ダミーケーブルに前記本ケーブルを巻きつけたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記本ケーブルに前記ダミーケーブルを巻きつけたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記本ケーブルと前記ダミーケーブルとを固定する固定材を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項7】
前記本ケーブルと前記ダミーケーブルとを接着または融着したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項8】
前記ダミーケーブルには抗張力体が配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項9】
前記ダミーケーブルには電気通信または光通信が可能なケーブルコアが設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−160918(P2010−160918A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−894(P2009−894)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】