説明

ゲノム領域の溶液系配列増大および分析のための方法およびシステム

本発明は、直接DNA配列決定、再配列決定またはSNPコーリングのようなさらなる分析のための、標的核酸、好ましくはゲノム試料の複雑性を減少させるための標的核酸の捕捉および増大のための新規方法およびシステムを提供する。特に、本発明は、溶液系形式における標的配列の増大を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、固体支持体上での核酸配列の捕捉による核酸配列の増大および分析の分野に関する。より正確には、本発明は、目的の領域が非常に大きすぎて1回だけまたは数回のPCR反応によっては増幅することができない場合に、次のさらなる分析のための特定のゲノム領域を捕捉するための新規方法を提供する。特に、本発明は、溶液系形式における標的配列の増大を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
核酸マイクロアレイ技術、例えばDNAマイクロアレイ技術の出現は、何百万の核酸配列、例えばDNA配列のアレイを、非常に小さい領域、例えば顕微鏡スライド上に構築することを可能にする(例えば、米国特許第6,375,903号および同第5,143,854号)。最初に、かかるアレイは、予め合成されたDNA配列をスライド上にスポッティングさせることによって作製された。しかし現在では、米国特許第6,375,903号に記載されるように、光を使用してDNA配列の合成を指示し、照明がデジタル微小鏡デバイス(DMD)を用いて行われるマスクレスアレイ合成器(MAS)の構築によって、スライド上で直接オリゴヌクレオチド配列をインサイチュで合成することができる。
【0003】
MAS機器を用いてマイクロアレイ上に構築されるオリゴヌクレオチド配列またはDNA配列の選択は、研究者の特定の要求に基づいて個別にカスタマイズされたアレイを作製することができるようにソフトウェア制御下にある。一般に、MAS系オリゴヌクレオチドまたはDNAマイクロアレイ合成技術は、標準顕微鏡スライドの非常に小さな領域において、何百万もの特有のオリゴヌクレオチド特徴の並行合成を可能にする。マイクロアレイは、一般に、どのオリゴヌクレオチドがアレイ上の特定の位置で合成されるかを指示する光を用いて合成され、これらの位置は特徴と呼ばれる。
【0004】
参照配列が一般に公共のデータベースに置かれた数百の生物の全ゲノムの利用可能性と共に、マイクロアレイは、多くの生物から単離された核酸またはDNAに関する配列分析を行うために使用されている。
【0005】
核酸またはDNAマイクロアレイ技術は、遺伝子発現および発見、変異検出、対立遺伝子および進化上の配列比較、ゲノムマッピング、創薬およびそれ以上のものなどの多くの領域の研究および診断に適用されている。多くの適用には、ヒト疾患の基礎となるヒトゲノム全体に及ぶ遺伝子バリアントおよび変異の調査が必要とされる。複合疾患の場合において、これらの調査によって、一般に、疾患および/または疾患リスクと関連する単一塩基多形(SNP)またはSNP組がもたらされる。罹患した個体または組織試料の、通常100キロベース(Kb)より大きな広い領域のゲノムDNAの再配列決定が単一塩基変化を見出すためまたは全ての配列バリアントを同定するために必要とされるために、かかるSNPの同定は困難でしばしば無益な仕事であると分かっている。他の適用には、癌、例えばリンパ腫(Martinez-Climent JAら、2003, Blood 101:3109-3117)、胃癌(Weiss MMら、2004, Cell. Oncol. 26:307-317)、乳癌(Callagy Gら、2005, J. Path. 205: 388-396)および前立腺癌(Paris, PLら、2004, Hum. Mol. Gen. 13:1303-1313)にも関連する場合がある染色体配列の増大および減少の同定を伴う。従って、マイクロアレイ技術は、疾患治療における疾患および治療計画効能を理解する点で科学研究者および臨床者のための非常に有用なツールである。
【0006】
ゲノムは、典型的に、非常に複雑すぎて全体として研究することができず、ゲノムの複雑性を減少させるために技術を使用する必要がある。この問題を取り扱うために、米国特許第6,013,440号に見られるように、1つの解決策は、ゲノム核酸またはDNA試料の特定の種類の余剰配列を減少させることである。代わりの解決策は、例えばAlbertら(2007, Nat. Meth., 4:903-5)、Okouら(2007, Nat. Meth. 4:907-9)、Olson M.(2007, Nat. Meth. 4:891-892)、Hodgesら(2007, Nat. Genet. 39:1522-1527)に記載されるようにおよび米国特許出願番号第11/638,004号、第11/970,949号、および第61/032,594号に見られるように、ゲノム配列を増大するための方法および組成物を使用することである。Albertらは、さらなる処理および分析を可能にするようなユーザーが定義した方法において、ゲノム試料の複雑性を有効的に減らす点で費用対効果が高く迅速な代替法を開示している。Lovettら(1991, Proc. Natl. Acad. Sci. 88:9628-9632)は、また、細菌人工染色体を用いたゲノム選択法を説明している。しかし、既存の方法は、例えば使用のし易さならびに材料および方法の融通がきかないことによって制限される。
【0007】
先行技術のマイクロアレイ技術は、増大技術または他の方法であろうと、典型的に、例えばマイクロアレイスライド、チップなどの固有の変動性を有する支持体関連技術である。変動性は、例えばバックグラウンドの変動性、プローブ/ハイブリダイゼーション反応速度、ガラス供給源などの多くの形態に関してとり得る。変動性は、実験解釈における重要な部分として働き、実験を成功または失敗させ得る。
【0008】
従って、必要なものは、典型的な支持体タイプのマイクロアレイ形式以外の形式で、標的配列の増大を提供するための方法、システムおよび組成物である。新しいマイクロアレイ形式の出現は、疾患および疾患状態の知識が進歩する点で研究者および臨床者のためのさらなるツールを提供する。
【発明の概要】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、標的核酸の捕捉および増大(enrichment)ならびに増大標的核酸の分析のための方法およびシステムを提供する。特に、本発明は、溶液系形式における標的配列の増大を提供する。本発明の方法およびシステムは、疾患および疾患状態と関連する治療計画を同定し、試験しかつこれに従う点で研究者および臨床者の補助に有用である。
【0010】
本発明は、大きな核酸試料、例えばさらなる処理および遺伝子分析を促進するゲノム試料、cDNAライブラリーまたはmRNAもしくはmRNAライブラリーの複雑性を減少させるための新規方法としてまとめられる。本発明の態様には、固体支持体上または溶液中で、プローブまたはプローブ由来アンプリコンに試料をハイブリダイズさせることによって例えばゲノム試料から標的核酸配列を捕捉するための(予め選択された)固定または非固定核酸プローブが含まれる。捕捉された標的核酸は、好ましくは洗浄され、プローブから溶出される。溶出されたゲノム配列は、本明細書に記載される方法に供されない試料よりも詳細な遺伝子分析に使用されやすい。本発明は、標的核酸の捕捉および増大ならびに増大標的核酸の分析のための方法およびシステムを提供する。いくつかの態様において、本発明は、溶液系形式における標的配列の増大を提供する。いくつかの態様において、本発明は、標的核酸(例えば、ゲノムDNA、RNA、cDNA、mRNAなど)の溶液系捕捉および増大のための方法およびシステムを提供する。
【0011】
開示された方法は、ゲノム試料の複雑性を減少させるための費用対効果が高く、柔軟で効率的なアプローチを提供する。ゲノム試料は、説明目的のために本明細書で使用されるが、他の非ゲノム試料、また大きな非ゲノム試料が同じ手順に供され得ることが理解される。本明細書に記載される方法およびシステムは、溶液系アプローチにおける標的配列の増大を提供し、癌(Durkinら、2008, Proc. Natl. Acad. Sci. 105:246-251; Natrajanら、2007, Genes, Chr. And Cancer 46:607-615; Kimら、2006, Cell 125:1269-1281; Stallingsら、2006 Can. Res. 66:3673-3680)、遺伝的障害(Balciunieneら、 Am. J. Hum. Genet. In press)、精神疾患(Walshら、2008, Science 320:539-543; Roohiら、2008, J. Med. Genet. Epub 18 March 2008; Sharpら、2008, Nat. Genet. 40:322-328; Kumarら、2008, Hum. Mol. Genet. 17:628-638; )ならびに進化および基礎研究(Leeら、2008, Hum. Mol. Gen. 17:1127-1136; Jonesら、2007, BMC Genomics 8:402; Eganら、2007, Nat. Genet. 39:1384-1389; Levyら、2007, PLoS Biol. 5:e254; Ballifら、2007, Nat. Genet. 39 :1071-1073 ; Schererら、2007, Nat. Genet. S7-S15; Feukら、2006, Nat. Rev. Genet. 7:85-97)などの疾患および疾患状態と関連する研究および治療に使用されるマイクロアレイ支持体系法に代わるものを提供し、いくつかを示す。
【0012】
一態様において、本発明は、ハイブリダイズする条件下で、核酸分子の集団の断片化され変性された核酸分子を複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブに接触(expose)させ、続いてハイブリダイズした分子の複合体を固体支持体に結合させ、前記プローブに特異的にハイブリダイズする核酸分子を捕捉する工程、ここで前記断片化され変性された核酸分子は約100〜1000ヌクレオチド残基、好ましくは約250〜約800ヌクレオチド残基、最も好ましくは約400〜約600ヌクレオチド残基の平均サイズを有する、結合していない核酸および非特異的にハイブリダイズした核酸を捕捉分子から分離する工程、捕捉分子を溶出する工程、ならびに溶出された捕捉分子について少なくとも1回のさらなるサイクルのための前記プロセスを任意に繰り返す工程を含む、核酸分子の集団の遺伝子複雑性を減少させる方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様において、溶液系捕捉法は、プローブ由来アンプリコンを含み、前記増幅用プローブは固体支持体に固定される。固体支持体は、例えばゲノム試料から特異的な核酸配列(例えば、標的核酸)を捕捉するための支持体固定核酸プローブを含む。プローブ増幅は、標的配列にハイブリダイズする溶液中のプローブアンプリコンを提供する。標的配列へのプローブアンプリコンのハイブリダイゼーション後に、試料中に存在する標的核酸配列は、(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニンなどのようなリンカー化学を介して)捕捉され、プローブが洗浄され、捕捉プローブからハイブリダイズした標的核酸が溶出されることによって増大される(図6)。(1つまたは複数の)標的核酸配列は、例えば、非特異的ライゲーション媒介PCR(LM-PCR)を用いてさらに増幅され、元の標的試料と比べて複雑性が低減したPCR産物の増幅プールがもたらされ得る。
【0014】
いくつかの態様において、プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーションは、好ましくは溶液系プローブアンプリコン間のハイブリダイゼーションを支持するのに十分なストリンジェント条件下で行われ、前記プローブは、リンカー化学および標的核酸試料の相補的領域を含み、プローブ/標的ハイブリダイゼーション複合体が提供される。複合体は、次にリンカー化学を介して捕捉され、非特異的に結合した核酸を除去するのに十分な条件下で洗浄され、ハイブリダイズした標的核酸配列が捕捉されたプローブ/標的複合体から溶出される。
【0015】
いくつかの態様において、複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブは、化学基またはリンカー化学、例えば、固体支持体に結合可能な結合部分、例えばビオチン、ジゴキシゲニンなどを含む。結合のための固体支持体には、対応の捕捉化学、例えばビオチンのためのストレプトアビジンおよびジゴキシゲニンのための抗ジゴキシゲニン抗体が含まれる。本発明は使用されるリンカー化学によって制限されず、代わりのリンカー化学が本発明の方法およびシステムに等しく使用できることを当業者は理解する。
【0016】
本発明の態様において、標的核酸分子の集団または複数の標的核酸分子は、好ましくは全ゲノムまたは生物の少なくとも1つの染色体または少なくとも約100kbを有する少なくとも1つの核酸分子を含む。特に、(1つまたは複数の)核酸分子の(1つまたは複数の)サイズは、少なくとも約200kb、少なくとも約500kb、少なくとも約1mb、少なくとも約2Mbまたは少なくとも約5mb、特に約100kb〜約5Mb、約200kb〜約5Mb、約500kb〜約5Mb、約1mb〜約2Mb、または約2Mb〜約5Mbのサイズである。
【0017】
いくつかの態様において、標的核酸分子は、動物、植物、または微生物から選択され、好ましい態様において、生物はヒトである。(例えば、ヒトゲノムの)限られた試料の核酸だけが利用可能である場合、核酸は、例えば本発明の方法を行なう前に、全ゲノム増幅によって増幅され得る。以前の増幅は、例えば(例えば、遺伝子同定目的のための科学捜査医学における)科学捜査目的のために、(1つまたは複数の)本発明の方法を行う必要があり得る。
【0018】
いくつかの態様において、標的核酸分子の集団または複数の標的核酸分子は、ゲノムDNA分子の集団である。プローブは、例えば複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロンまたは調節配列を規定する複数のプローブまたは配列、少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズ、または上記に特定される少なくとも1つのサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する複数のプローブ、単一塩基多形(SNP)を規定する複数のプローブ、あるいはアレイ、例えば少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブから選択され得る。
【0019】
いくつかの態様において、固体支持体は、核酸マイクロアレイまたはビーズの集団のいずれかである。
【0020】
いくつかの態様において、本発明は、ハイブリダイゼーションのために断片化された核酸試料をプローブに接触させる前後に、核酸分子の一方または両方、好ましくは両方の末端にアダプター分子を連結する工程を含む。
【0021】
いくつかの態様において、本発明の方法は、前記(1つまたは複数の)アダプター分子の配列に特異的にハイブリダイズする配列を含む少なくとも1つのプライマーを用いて、標的核酸分子を増幅する工程をさらに含む。
【0022】
いくつかの態様において、増幅された標的核酸配列が、配列決定され、再配列決定またはSNPコーリングアレイにハイブリダイズされ得、配列または遺伝子型がさらに分析され得る。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は、ゲノム試料中の標的核酸配列、例えばエキソンまたはバリアント、好ましくはSNP部位のための増大方法を提供する。これは、マイクロアレイ上で合成されるゲノム領域に特異的なゲノムプローブをプログラム化することによってまたは複合ゲノム試料に含まれる相補的標的核酸配列を捕捉するようなゲノム領域に特異的なゲノムプローブを合成することによって達成され得る。
【0024】
いくつかの態様において、本発明は、上記の(1つまたは複数の)方法を行う工程ならびに特に合成反応による配列決定を行うことによって捕捉された(および溶出された)分子の核酸配列を決定する工程を含む、具体的に試料中の、例えば上記に特定されるサイズを有する、(1つまたは複数の)核酸、特に(1つまたは複数の)ゲノム核酸、例えば全ゲノムまたは少なくとも1つの染色体の少なくとも1つの領域の核酸配列情報を決定する方法に関する。
【0025】
いくつかの態様において、本発明は、以前に記載されたように、特に合成反応による配列決定を行うことにより捕捉された(および溶出された)標的分子の核酸配列を決定する工程、ならびに決定された配列を、データベースの配列、特に参照ゲノムのバリアントを同定するための参照ゲノムの多形データベースの配列と比較する工程をさらに含む、参照ゲノム、特に断片化され変性されたゲノム核酸分子を含む参照ゲノムに対するコーディング領域変異を検出する方法に関する。
【0026】
いくつかの態様において、本発明は、本発明の方法を行うための固体支持体および試薬を含むキットに関する。かかるキットは二重鎖アダプター分子および複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを有する固体支持体を含み、プローブは複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロンまたは調節配列を規定する複数のプローブ、少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1mbのサイズ、または上記に特定される少なくとも1つのサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する複数のプローブ、SNPを含むことが公知の部位を規定する複数のプローブ、あるいは少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブから選択される。好ましくは、キットは、2つの異なる二重鎖アダプター分子(AおよびB)を含む。固体支持体は、また、複数のビーズまたはマイクロアレイのいずれかである。キットは、DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、T4 DNAリガーゼ、アレイハイブリダイゼーション溶液、アレイ洗浄溶液および/またはアレイ溶出溶液から選択される少なくとも1つ以上の他の成分をさらに含み得る。
【0027】
他の態様において、本発明は、本発明の方法を行うための組成物および試薬を含むキットに関する。かかるキットは、限定されないが、二重鎖アダプター分子、複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブ、前記プローブを捕捉するための固体支持体を含み得、プローブは、複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロンまたは調節配列を規定する複数の配列、少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1mbのサイズ、または上記に特定される少なくとも1つのサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する複数のプローブ、SNPを含むことが公知の部位を規定する複数のプローブ、あるいは少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブから選択される。いくつかの態様において、キットは複数のビースまたはマイクロアレイ支持体(例えば、スライド、チップなど)を含む。いくつかの態様において、キットは、2つの異なる二重鎖アダプター分子を含む。キットは、DNAポリメラーゼ、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ、T4 DNAリガーゼ、(1つまたは複数の)ハイブリダイゼーション溶液、(1つまたは複数の)洗浄溶液、および/または(1つまたは複数の)溶出溶液から選択される少なくとも1つ以上の他の成分をさらに含み得る。
【0028】
本発明の態様において、核酸(予め選択された)捕捉プローブは、任意の数の認識される方法(例えば、スポッティング、フォトリトグラフィー、インサイチュ合成など)を用いて固体支持体(例えば、スライド、チップ、ビーズなど)上に固定される。好ましい態様において、プローブは、支持体上でのマスクレスアレイ合成によってインサイチュで合成され、次に例えばPCRによって増幅され、溶液中のプローブ由来アンプリコンがもたらされる。いくつかの態様において、合成されるプローブ配列は、プローブの3’末端および5’末端の1つまたは両方(例えば末端または末端近く)に増幅のためのプライマー結合部位を含む。いくつかの態様において、プローブ上でのプライマー結合部位の配列は、プローブの3’および5'側末端の両方と同じであるが、他の態様において、プライマー結合部位の配列は、5'側末端の配列よりも3’側で異なる。いくつかの態様において、プローブ増幅のための増幅プライマーは、制限エンドヌクレアーゼ部位、例えば最終捕捉標的からプライマー配列を容易に除去するためのMlyI部位をさらに含み、プライマー(例えば、フォワードプライマーまたはリバースプライマー)の1つは、結合部位または結合配列などのリンカー化学(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、HISタグなど)をさらに含み、指数関数的PCR増幅(例えば、当業者に公知な標的の指数関数的増幅のためのPCR法)に必要な試薬と共に固定プローブを有する支持体上に配置される。PCRを行ない、鎖の1つがリンカー化学、例えば結合部分または配列を含むようにプローブ捕捉配列のアンプリコンが作製される。アンプリコンを含む溶液は、容器(例えば、チューブ、96ウェルプレートのウェルなど)に移され、いくつかの態様において、反応成分から精製される。さらなる回数の増幅が、非対称的PCRを用いて、プローブ由来アンプリコンに対して優先的に行われ、リンカー化学標識プライマーは非標識プライマーと比べて余剰であり、優先的に単鎖結合部分/配列標識アンプリコンが合成される。アンプリコンが、反応成分から精製され、容器に移され、変性された核酸試料が添加されて、ハイブリダイゼーションを生じることができる。
【0029】
ハイブリダイゼーションの後に、標識されたアンプリコン/標的核酸複合体が捕捉される。例えば、ビオチンが結合部分である場合、ストレプトアビジン(SA)被覆支持体、例えばSA被覆ビーズ(例えば常磁性ビーズ/粒子)がビオチン標識アンプリコン/標的複合体を捕捉するために使用される。SA結合複合体を洗浄し、ハイブリダイズした標的核酸を複合体から溶出し、下流適用、例えば配列決定適用に利用する。
【0030】
いくつかの態様において、本発明は、標的核酸配列にハイブリダイズ可能なハイブリダイゼーションプローブを含む固体支持体を提供する工程、および標的核酸配列を含む断片化された核酸試料を提供する工程、ハイブリダイゼーションプローブを増幅する工程、ここで増幅産物が結合部分を含み、かつ溶液中に存在する、増幅産物と標的核酸配列との間のハイブリダイゼーションを生じることができるような条件下で、溶液中で核酸試料を増幅産物にハイブリダイズさせる工程、前記結合部分によりハイブリダイズした標的核酸配列/増幅産物複合体を非特異的にハイブリダイズした核酸から分離する工程、ならびにハイブリダイズした標的核酸配列を複合体から溶出し、それによって複数の核酸配列を単離し、複数の核酸配列の複雑性を減少させる工程を含む、複数の核酸配列を単離し、複数の核酸配列の複雑性を減少させる方法(methods for isolating and reducing the complexity of a plurality of nucleic acid sequences)を提供する。いくつかの態様において、溶出された標的核酸配列を配列決定する。いくつかの態様において、固体支持体がマイクロアレイスライドである。いくつかの態様において、標的核酸試料は、断片の一方または両方の末端にアダプター分子の有り無しでの断片化されたゲノムDNAである。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーションプローブは、制限エンドヌクレアーゼ部位、例えばMlyI部位を含む。いくつかの態様において、プローブ増幅は、指数関数的ポリメラーゼ連鎖反応を含み、非対称的で指数関数的でない増幅をさらに含み得る。いくつかの態様において、結合部分がビオチンであり、捕捉支持体、例えばビーズ、例えば常磁性粒子が、非特異的にハイブリダイズした標的核酸から標的核酸/増幅産物複合体を分離するためのストレプトアビジンで被覆される。いくつかの態様において、捕捉された標的核酸/増幅産物複合体は、結合した標的核酸の溶出前に洗浄される。
【0031】
いくつかの態様において、本発明は、結合部分および制限酵素部位を含み、1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズするために設計され、溶液中に存在するハイブリダイゼーションプローブ配列、前記結合部分に結合するための結合パートナーを含む支持体、および本発明の方法を行うための説明書を含むキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、(1つまたは複数の)ハイブリダイゼーション溶液、洗浄溶液および溶出溶液のような1つ以上の溶液をさらに含む。いくつかの態様において、キットは磁石を含む。いくつかの態様において、キットは、1つ以上の酵素および対応する試薬、バッファなど、例えばMlyIなどの制限酵素ならびにMlyIを用いる制限酵素反応を行うためのバッファ/試薬を含む。
【0032】
本発明の他の目的、利点および特徴は、添付の図面と共に取り扱われる以下の明細書から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、マイクロアレイを用いた直接ゲノム選択法のフロー図の一般的な図式である。
【図2】図2は、マイクロアレイを用いた直接ゲノム選択法のフロー図の別の図式である。
【図3】図3(a〜b)は、実施例2のマイクロアレイを用いた直接ゲノム選択法の結果を示す。(a)配列読み取りマップは3つのマイクロアレイゲノム選択複製からの約190Kbの第16染色体を詳しく説明し、標的配列決定の再現性を示す。ゲノムDNAは、バーキットリンパ細胞株由来であり、精製され、断片化された。腫瘍配列決定プログラムエキソン(500bpのサイズの6726ゲノム領域)が、NimbleGenオリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて捕捉され、454シークエンサーを用いて配列決定された。(1)染色体位置、(2、3、4)3つの独立したマイクロアレイ選択および配列決定実験からの454読み取りのための最大BLASTスコアの読み取りマップ (5)マイクロアレイプローブによって標的とされた領域。(b)配列読み取りマップは、BRCA1遺伝子を含む2Mbの連続領域のマイクロアレイ選択からの第17染色体の約2000塩基を詳しく説明する。(1)染色体位置、(2)マイクロアレイ選択プローブ。プローブは10pb毎に間を空けて、y軸に沿って互い違いにした。(3)塩基あたりの配列カバー倍数。カバー倍数は0〜100倍である。(4)454配列決定読み取りのための最大ブラストスコアの読み取りマップ。
【図4−1】図4(a〜b)は、マイクロアレイ上でのプローブの合成、マイクロアレイからプローブの放出、目的の標的ポリヌクレオチドを捕捉するための方法に使用される支持体上でのプローブの固定の結果を示す。(a) 「エキソン」および「座」選択のためのカバー倍数の程度(coverage depth)比較および実施例2に開示される配列決定。プロットは,各凝集標的領域の塩基の部分および1回のFLX運転後の配列カバー倍数の対応する累積程度を示す。「エキソン」試料は、6726エキソンサイズ領域を表す。2MbのBRCA1領域は、ヒト第17染色体上の位置37,490,417〜39,490,417を標的とした。選択プローブによって特有の部分だけを標的とした。(b)実施例2に開示されるエキソンexuero,emtのための塩基配列あたりのカバー倍数の程度の図。
【図4−2】図4(c)は、マイクロアレイ上でのプローブの合成、マイクロアレイからプローブの放出、目的の標的ポリヌクレオチドを捕捉するための方法に使用される支持体上でのプローブの固定の結果を示す。(c)実施例3の2Mbの座を例とする塩基あたりのカバー倍数の程度の図。
【図5】図5は、3つのゲノム試料からの第16染色体に関する座の読み取りマッピングの詳細を示す。データは、溶液中で捕捉された6726エキソンの標的配列決定によって生じた。実施例4に記載されるプロトコールを用いて、捕捉オリゴヌクレオチドを切断し、マイクロアレイで増幅した。提示されたデータは、第3染色体3の例示遺伝子マップを表す。(1)染色体位置、(2)1回の454-FLX配列決定運転からの配列決定読み取りのマップおよび(3)標的領域。溶液相捕捉データの分析は、83.8%の読み取りマップが標的領域に戻ることを示し、アレイ系捕捉プロトコルに類似する性能を示す。
【図6】図6は、本発明の一態様を例示する; 水溶液中の複数の核酸配列を分離および増大するために使用される増大法の一般化フロー図。マイクロアレイ支持体に固定されたハイブリダイゼーションプローブは、溶液中で結合部分を含むプローブ由来アンプリコンを作製するためにインサイチュで増幅される。(例えば、検出部分で標識された)断片化された核酸は、溶液中で標識プローブアンプリコンにハイブリダイズし、複合体が次に(例えば、常磁性捕捉粒子により)捕捉される。捕捉および固定されたハイブリダイズ複合体を、洗浄し、特異的に結合した標的を、結合した固定プローブアンプリコンから溶出する。溶出される(例えば、分離および増大された)標的配列は、下流適用、例えば配列決定に利用される。
【図7】図7は、本発明の溶液捕捉法を用いた再配列決定の一致を示す。再配列決定アッセイは、一部の標的捕捉領域から構成される。x軸は大きな標的領域からの任意の組の領域を表し、全体としての標的捕捉領域の表示として機能する。y軸は、公知標的配列と一致する配列%を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書で使用される場合、用語「試料」は、最も広い意味で使用される。一つの意味において、試料は、任意の供給源、優先的に生物学的供給源から得られた標本または培養物を含むことを意図する。生物学的試料には、(ヒトなどの)動物から得られ得、液体、固体、組織、および気体が含まれる。生物学的試料としては、血液、例えば血漿、血清などが挙げられる。従って、「核酸の試料」または「核酸試料」、「標的試料」には、任意の供給源からの核酸(例えば、DNA、RNA、cDNA、mRNA、tRNA、miRNAなど)が含まれる。本願において、核酸試料は、好ましくはヒトまたは非ヒトの細胞、組織などのような生物学的供給源に由来する。用語「非ヒト」とは、非ヒト動物および実体全てのことをいい、限定されないが、げっ歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類などのような脊椎動物が挙げられる。また、非ヒトとしては、無脊椎動物および原核生物、例えば細菌、植物、酵母、細菌などが挙げられる。従って、本発明の方法およびシステムに使用される核酸試料は、任意の生物、真核生物または原核生物いずれかに由来する核酸試料である。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸の対形成の参照に使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(例えば、核酸間の結合強度)は、核酸間の相補性の程度、含まれる条件のストリンジェンシー、形成ハイブリッドの融解温度(Tm)および核酸のg:c比のような要因によって影響を受ける。本発明は特定の組のハイブリダイゼーション条件に限定されないが、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件が好ましくは使用される。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、配列依存的であり、変化する環境パラメーター(例えば、塩濃度、有機物の存在など)によって異なる。一般的に、「ストリンジェント」条件は、規定されたイオン強度およびpH での特定の核酸配列のTmより約50℃〜約20℃低いように選択される。好ましくは、ストリンジェント条件は、相補的核酸に結合した特定の核酸の熱融点よりも約5℃〜10℃低い。Tmは、50%の核酸(例えば標的核酸)が完全に適合したプローブにハイブリダイズする(規定されたイオン強度およびpH下での)温度である。
【0036】
「ストリンジェント条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、例えば、42℃での50%ホルムアミド、5x SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xデンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50mg/ml)、0.1% SDS、および10%硫酸デキストランにおけるハイブリダイゼーション、42℃での0.2% SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃での50%ホルムアミド、その後55℃でのEDTAを含む0.1xSSCでの洗浄であり得る。限定されないが、実施例では、35%ホルムアミド、5xSSC、および0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むバッファが45℃で16〜72時間の温和なストリンジェントでない条件下でのハイブリダイゼーションに適切であると考えられる。
【0037】
さらに、ホルムアミド濃度は、プローブ長および所望されるストリンジェンシーのレベルに応じて20〜45%の範囲で適切に調節され得ることが考えられる。ハイブリダイゼーション条件のさらなる例が、いくつかの出典、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, Eds. Sambrook et al., Cold Spring Harbour Press (全体が参照によって本明細書に援用される)に提供される。
【0038】
同様に、「ストリンジェント」洗浄条件は、通常、プローブまたは本発明におけるプローブ由来アンプリコンへの標的のハイブリダイゼーションについて実験で決定される。アンプリコン/標的は、(例えば、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で)ハイブリダイズし、連続的に低い濃度の塩、または高濃度の界面活性剤を含むバッファで、あるいは非特異的なハイブリダイゼーションに特異的なシグナル対ノイズ比が特異的なハイブリダイゼーションの検出を容易にするほど十分高くなるまで増大した温度で洗浄される。ストリンジェント温度条件としては、通常約30℃を超える温度、より通常約37℃を超える温度、時折約45℃を超える温度が挙げられる。ストリンジェント塩条件は、通常約1000mM未満、通常約500mM未満、より通常約150mM未満である(Wetmur et al., 1966, J. Mol. Biol., 31:349-370; Wetmur, 1991, Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology, 26:227-259、全体が参照によって本明細書に援用される)。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「プライマー」は、精製された制限消化として天然で生じようとまたは合成製造されようと、(例えば、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの誘導剤の存在下ならびに適切な温度およびpHで)核酸鎖に相補的なプライマー伸張産物の合成が誘導される条件下に置かれた場合に合成の開始点として機能することができるオリゴヌクレオチドのことをいう。プライマーは、好ましくは最大効率の増幅のための単鎖である。プライマーは、好ましくはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下での伸張産物の合成の単量体となるほど十分に長いことが必要である。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、および方法の使用などの多くの要因に依存する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「プローブ」は、精製された制限消化として天然で生じようとまたは合成、組み換えもしくはPCR増幅によって製造されようとも、目的の別のオリゴヌクレオチド、例えば標的核酸配列の少なくとも一部分にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド配列)のことをいう。プローブは、単鎖または二重鎖であり得る。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定および分離に有用である。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「標的核酸分子」および「標的核酸配列」は、互換的に使用され、研究される標的ゲノム領域の分子または配列のことをいう。予め選択されたプローブは、標的とされた核酸分子の範囲を決定する。従って、「標的」は、他の核酸配列から区別されることが求められる。「セグメント」は、核酸配列の「断片」または「部分」と同様に、標的配列内の核酸の領域として規定される。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「単離する」は、「核酸を単離する」と同様に核酸に関して使用される場合、通常天然供給源において関連する少なくとも1つの成分または汚染物から同定および分離される核酸配列のことをいう。単離された核酸は、天然で見られるものとは異なる形態または設定で存在する。対照的に、単離されない核酸は、天然で存在する状態で見られるDNAおよびRNAなどの核酸である。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、単鎖形態または二重鎖形態で存在し得る。
【0043】
(発明の詳細な説明)
本発明は、広く、目的の標的核酸を増大するためならびに配列決定、再配列決定およびSNPコーリングなどのさらなる処理および分析を容易にするための、核酸試料の複雑性を減少させるための費用対効果が高く、柔軟で迅速な方法に関する。捕捉された標的核酸配列は、さらに規定された複雑でないゲノム集団であるが、詳細な遺伝子分析、例えば疾患および疾患状態(例えば、癌、遺伝子変異、遺伝子疾患など)の遺伝子分析に使用されやすい。本発明は、例えばヒト疾患の基礎にある単一塩基多形(SNP)、SNP組、ゲノム挿入、欠失などのような遺伝子バリアントおよび変異の探索に有用な方法およびシステムを提供する。従って、本発明は、複合核酸試料中の標的核酸を増大するための方法を提供する。
【0044】
一態様において、本発明は、ハイブリダイズする条件下で、核酸分子の集団の断片化され変性された核酸分子を固体支持体上に結合した複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブに接触させ、前記プローブに特異的にハイブリダイズする核酸分子を捕捉する工程、またはハイブリダイズする条件下で、断片化され変性された核酸分子の集団を複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブに接触させ、続いて固体支持体上にハイブリダイズした分子の複合体を結合させ、前記プローブに特異的にハイブリダイズする核酸分子を捕捉する工程、ここで前記断片化され変性された核酸分子は、約100〜約1000ヌクレオチド残基、好ましくは約250〜約800ヌクレオチド残基、最も好ましくは約400〜約600ヌクレオチド残基の平均サイズを有する、結合していない核酸および非特異的にハイブリダイズした核酸を捕捉分子から分離する工程;捕捉分子を固体支持体から溶出する工程、ならびに溶出された捕捉分子について少なくとも1回のさらなるサイクルのための工程(a)〜(c)を任意に繰り返す工程を含む、核酸分子の集団の遺伝子複雑性を減少させる方法に関する。
【0045】
さらなる態様において、本発明は、二重鎖アダプター分子、および複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを有する固体支持体を含み、前記プローブが複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロンまたは調節配列を規定する複数のプローブ、少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズまたは上記に特定される少なくとも1つのサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する複数のプローブ、SNPを含むことが公知の部位を規定する複数のプローブ、あるいは少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブから選択されるキットに関する。
【0046】
一態様において、ハイブリダイズする条件下で、断片化された分子であり得る変性(すなわち単鎖)核酸分子、好ましくはゲノム核酸分子を含む試料を、複数のオリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションの前後で固体支持体上に固定された複数のオリゴヌクレオチドプローブに接触させて、固定プローブにハイブリダイズする標的核酸分子を試料から捕捉する。ゲノムのハイブリダイズしない領域または任意の他の試料核酸が溶液中に残る。
【0047】
核酸は、典型的に、デオキシリボ核酸またはリボ核酸であり、1つの核酸分子型(例えば、DNA、RNAおよびcDNA)を別のものに変換してインビトロ合成される生成物ならびにPNAなどのヌクレオチドアナログを含む合成分子を含む。変性されたゲノムDNA分子は、特に天然ゲノム核酸分子よりも短いゲノム由来分子である。当業者は、周知プロトコールを用いた化学、物理または酵素断片化または切断によって大きな分子からランダムまたは非ランダムサイズの分子を作製し得る。化学断片化は、第一鉄金属(例えば、Fe-EDTA)を使用し得る。物理方法としては、音波破砕、水力学的力または噴霧が挙げられ得る(欧州特許出願EP 0 552 290参照)。酵素プロトコールは、ヌクレアーゼ、例えば、ミクロコッカルヌクレアーゼ(Mナーゼ)またはエキソヌクレアーゼ(例えばExoIまたはBa131)あるいは制限エンドヌクレアーゼを使用し得る。断片が生じるプロトコールは、方法における断片の使用に影響を及ぼすべきではない。増大断片が使用される増大後技術と適合するサイズ範囲の断片を使用することが増大中に有利であり得る。適切な断片サイズは、約100〜約1000ヌクレオチド残基または塩基対、または約250〜約800ヌクレオチド残基または塩基対の範囲であり得、約400〜約600ヌクレオチド残基または塩基対、特に約500ヌクレオチド残基または塩基対であり得る。
【0048】
プローブは、配列中の、ゲノムの少なくとも1つの領域に対応し、マスクレスアレイ合成技術を用いて並行して固体支持体上に提供され得る。あるいは、プローブは、標準DNA合成器を用いて連続的に得ることができ次に固体支持体に利用され得るか、または生物から得ることができ次に固体支持体に固定される。ハイブリダイゼーションの後、ハイブリダイズしない核酸またはプローブに非特異的にハイブリダイズする核酸は、洗浄によって支持体結合プローブから分離される。プローブに特異的に結合した残りの核酸は、例えば熱水中または例えばTRISバッファおよび/またはEDTAを含む核酸溶出バッファ中で固体支持体から溶出され、標的核酸分子が増大された溶出液を生じる。
【0049】
いくつかの態様において、二重鎖リンカーは、断片が変性されかつ固定プローブにハイブリダイズさせる前に、(ゲノム)核酸分子の少なくとも1つの末端に提供される。かかる態様において、標的核酸分子は、溶出後に増幅され、元の試料に対して減少した複雑性を有する増幅産物のプールを生じ得る。標的核酸分子は、例えば複数回の熱サイクルによる非特異的LM-PCRを用いて増幅され得る。任意に、増幅産物は、プローブに対する第二選択によってさらに増大され得る。第二選択の生成物は、記載されるように使用前に再度増幅され得る。このアプローチを図1で図におよび図2でフローチャートにまとめる。リンカーは、複雑性減少工程後の下流の分析適用に必要とされるものに応じて任意のサイズおよび任意の核酸配列で提供され得る。リンカーは、約12〜約100塩基対、例えば約18〜100塩基対、好ましくは約20〜24塩基対の範囲であり得る。
【0050】
あるいは、標的分子のための核酸プローブは、固体支持体上で合成され、プローブのプールとして固体支持体から放出され、記載されるように増幅され得る。放出されるプローブの増幅プールは、ガラス、金属、セラミックまたはポリマー性ビーズなどの支持体、あるいは他の固体支持体上に共有的または非共有的に固定され得る。例えば低いpHまたは高いpHのそれぞれの条件下でプローブを放出する酸またはアルカリに不安定な核酸配列を、支持体近傍のプローブ末端にまたは該プローブ末端近くに提供することによって、プローブは固体支持体からの都合のよい放出のために設計され得る。様々な切断可能なリンカー化学が当該技術分野で公知である。支持体は、例えば液体流入および流出を有するカラム中に提供され得る。例えば被覆支持体がプール中のプローブを非共有的に誘引して固定するように、プローブにビオチン化ヌクレオチドを組み込み、支持体をストレプトアビジンで被覆することにより支持体上に核酸を固定する方法は、先行技術でよく知られている。(1つまたは複数の)試料は、ハイブリダイズする条件下でプローブを含む支持体を通過し、固定支持体にハイブリダイズする標的核酸分子が次の分析または他の用途のために溶出され得る。
【0051】
一局面において、本発明は、直接ゲノム選択による複合生物学的試料からの標的核酸分子または(1つもしくは複数の)標的ゲノム領域の捕捉および増大を可能にする。また、本発明は、ヒト疾患の基礎にある単一塩基多形(SNP)またはSNP組などの遺伝子バリアントおよび変異の探索に有用である。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術を用いた捕捉および増大は、ゲノム増大の分野で現在利用可能な他の方法、例えば直接ゲノム選択のためのBAC(細菌人工染色体)の使用よりも非常に柔軟であると考えられる(Lovettら、1991参照)。
【0052】
本発明は、当該技術分野に公知の標的アレイ系法、ショットガン法、キャピラリー法、または他の配列決定法を可能にする。一般に、ランダムに生じた断片のショットガン配列決定の戦略は、費用対効果が高く容易にパイプラインに統合されるが、本発明は、配列決定のための目的の1つ以上のゲノム領域の断片だけを提示することによってショットガンアプローチの効率を高める。本発明は、医療の配列決定目的のための個々の染色体またはエキソンなどの特定のゲノム領域に関する配列決定戦略に焦点を当てる可能性を提供する。
【0053】
標的核酸分子は、任意の供給源からの核酸を含む1つ以上の試料から、精製形態または未精製形態で増大され得る。供給源は、生物の完全な補完物のゲノム核酸分子を含む必要はない。好ましくは生物学的供給源からの試料としては、限定されないが、個々の患者、組織試料、または細胞培養物からのプールされた分離物が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「標的核酸分子」とは、研究される標的ゲノム領域の分子のことをいう。予め選択されたプローブは標的とされた核酸分子の範囲を決定する。この開示を所有している当業者は、完全な範囲の可能な標的および関連標的を理解する。
【0054】
標的領域は、数メガベース(Mb)の1つ以上の連続ブロック、または1つ以上の染色体のエキソン全てなどのいくつかの小さな連続または非連続領域、またはSNPを含むことが公知の部位であり得る。例えば、固体支持体は、1つ以上の完全な染色体、1つ以上の染色体の一部、全てのエキソン、1つ以上の染色体からの全てのエキソン、選択されたエキソン、1つ以上の遺伝子のイントロンおよびエキソン、遺伝子調節領域などを捕捉するために設計されたタイリングアレイを支持し得る。あるいは、所望の特有でないまたは捕捉が困難な標的を増大する可能性を高めるために、プローブは、実際の標的配列と(例えば同じ断片であるが別の)関連する配列に指向され得、この場合に所望の標的配列および関連配列の両方を含むゲノム断片が捕捉および増大される。関連配列は、標的配列と隣接してまたは離れて存在し得るが、当業者は、2つの部位が互いに近いほど、ゲノム断片が両方の部分を含む可能性が高くなることを理解する。なおさらに、標的でない分子によるクロスハイブリダイゼーションの限定された影響をさらに減らし、それによって増大の完全性を高めるために、標的領域に対する個別であるが関連する捕捉プローブ組を用いた連続回の捕捉が行われ得る。関連するプローブは、同じゲノムDNA断片にハイブリダイズし得るゲノム中で互いに近傍の領域に相当するプローブである。
【0055】
マイクロアレイオリゴヌクレオチドは、ゲノムの(1つまたは複数の)標的領域を標的とするように設計される。個々のプローブの長さは、典型的に、50〜200塩基である。これらのプローブは、隣接するプローブの開始ヌクレオチドがプローブの長さ未満であることを意味する重複プローブ、または隣接プローブ間の距離がプローブの長さより大きい非重複プローブのいずれかであるように設計され得る。隣接プローブ間の距離は、一般的に重複しており、2つのプローブの開始ヌクレオチド間の間隔が1〜100塩基で変化する。この距離は、いくつかのゲノム領域が他のものの多数のプローブによって標的とされるように変化し得る。この変化は、個々のゲノム領域の捕捉効率、標準化捕捉を調節するために使用され得る。プローブは、ゲノムにおける一意性について試験され得る。ゲノム要素の捕捉アレイへの非特異的な結合を回避するために、ゲノムの高度に繰り返される要素は、これらの領域を同定しプローブ選択からこれらを排除するMorgolis (2006)が開発したWindowMaskerプログラムに類似した戦略を利用する新規方法を用いて、選択マイクロアレイ設計から排除される。そのプロセスは、プローブ組を、ヒトゲノム中の全て可能な15量体プローブについて予め計算した頻度ヒストグラムに対して比較するものであった。各プローブについて、プローブを含む15量体の頻度は、次にプローブの平均15量体の頻度を計算するために使用される。平均15量体の頻度が高くなれば、プローブがゲノムの繰り返し領域内にある可能性が高くなる。100未満の平均15量体の頻度を有するプローブだけが使用される。
【0056】
プローブの性質および性能は、方法によって捕捉および増大された標的分子の分配を有利に標準化または調節するために変化し得る。かかる標準化の目標は、読み取りあたりに1つの発現遺伝子を送達することである(Soares,ら、1994参照)。集団中の分子の分布はcDNA分子集団を生じる発現遺伝子の異なる発現レベルを反映するために、標準化が例えばライブラリー構築前のcDNA分子の集団に適用され得る。例えば、各標的領域を効率的に分析するのに必要な配列決定の反応数が、増大集団中の各標的配列のコピー数を標準化することによって減らされ得、プローブ組に対して、個別のプローブの捕捉性能が適合性および他のプローブ属性の組み合わせに基づいて標準化される。「捕捉測定」を特徴とする適合性は、情報または実験のいずれかで確かめられ得る。一つのアプローチにおいて、標的分子が結合する能力は、米国公開特許出願第US-2005/0282209号(NimbleGen Systems, Madison, WI)に記載されるように、いわゆる等温(Tm平衡)オリゴヌクレオチドプローブを提供することによって調整され得、これは均一なプローブ性能を可能にし、ハイブリダイゼーション人工物を排除するおよび/または高品質出力を偏向させかつ提供する。プローブ長は、設定全体で溶解温度(例えばTm=76℃、典型的に約55℃〜約76℃、特に約72℃〜約76℃)を等しくするように調節される(典型的に、約20〜約100ヌクレオチド、好ましくは約40〜約85ヌクレオチド、特に約45〜約75ヌクレオチド、例えば45ヌクレオチドであるが任意に約250ヌクレオチドまでの100よりも大きいヌクレオチドである)。従って、プローブは、ATリッチ領域およびGCリッチ領域などの目的のゲノム領域において、所定のストリンジェンシーで等価に行うように最適化される。関連して、個々のプローブの配列は、イノシトールなどの天然塩基または合成塩基アナログあるいはその組み合わせを用いて調節され、これらプローブの所望の捕捉適合性を達し得る。同様に、所望の捕捉性能を生じる構造を有するロックド核酸プローブ、ペプチド核酸プローブなどが使用され得る。本開示を所有している当業者は、プローブ長、融解温度および配列が任意の所定のプローブについて協調的に調節され得、プローブのための所望の捕捉性能に到達し得ることを理解する。都合のよいことに、プローブの融解温度(Tm)は、式: Tm=5x(Gn+Cn)+1x(An+Tn)(式中、nはプローブに存在する各特異的塩基(A、T、 GまたはC)の数である)を用いて計算され得る。
【0057】
捕捉性能は、また、プローブ組中のプローブの捕捉適合性を確かめて、次に結果的に固体支持体上で個々のプローブの量を調節することによって標準化され得る。例えば、第一プローブは、第二プローブよりも20倍も多く核酸を捕捉する場合、両方のプローブの捕捉性能は、第二プローブの多くのコピー数を20倍提供することによって、例えば第二プローブを表す特徴(feature)の数を20倍増大させることによって、等しくされ得る。プローブが連続して調製され固体支持体に適用される場合、プール中の個々のプローブの濃度は、同じように変化し得る。
【0058】
なおさらに、標的核酸の捕捉を標準化するための別の戦略は、一回目のハイブリダイゼーションに使用されたストリンジェントでない条件下で、プローブに対して溶出された標的分子を二回目のハイブリダイゼーションに供するものである。元のゲノム核酸に対して複雑性を減少させる一回目のハイブリダイゼーションにおける実質的な増大とは別に、二回目のハイブリダイゼーションは、全ての捕捉プローブを飽和にするハイブリダイゼーション条件下で行われ得る。実質的に等量の捕捉プローブが固体支持体上に提供されると仮定すると、プローブの飽和によって実質的に等量の各標的が二回目のハイブリダイゼーションおよび洗浄後に溶出されることが確実になる。
【0059】
別の標準化戦略は、固体支持体の捕捉された標的分子の溶出および増幅に従うものである。溶出液中の標的分子は、例えば化学または熱変性プロセスを用いて単鎖状態に変性され、再アニーリングされる。反応速度の考慮によって、余剰種が余剰でない種の前に再アニーリングすることが示される。従って、再アニーリングした種の最初の部分を除去することによって、残存する単鎖種は、溶出液中の最初の集団に対して釣り合う。余剰種の最適な除去に必要なタイミングは実験で決定される。
【0060】
まとめると、本発明の態様は、核酸分子の集団の遺伝子複雑性を減少させる新規方法を提供する。該方法は、
(a)ハイブリダイズする条件下で、前記集団の断片化され変性された核酸分子を固体支持体に結合した複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブに接触させ、前記プローブに特異的にハイブリダイズする核酸分子を捕捉する工程、または
ハイブリダイズする条件下で、断片化され変性された核酸分子の前記集団を複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブに接触させ、続いて固体支持体上にハイブリダイズした分子の複合体を結合させ、前記プローブに特異的にハイブリダイズする核酸分子を捕捉する工程のいずれか、ここで
(両方の場合の)前記断片化され変性された核酸分子は、約100〜約1000ヌクレオチド残基、好ましくは約250〜約800ヌクレオチド残基、最も好ましくは約 400〜約600ヌクレオチド残基の平均サイズを有する、
(b)結合してない核酸および非特異的にハイブリダイズした核酸を捕捉分子から分離する工程;
(c)好ましくは元の試料に対して減少した遺伝子複雑性を有する溶出液プール中で、捕捉分子を固体支持体から溶出する工程、ならびに
(d)溶出された捕捉分子について少なくとも1回のさらなるサイクルのための工程(a)〜(c)を任意に繰り返す工程
を含むものである。
【0061】
ほとんどの場合、核酸分子の集団は、ゲノムDNA(ゲノム核酸分子)の試料に由来する分子である。しかし、cDNAまたはさらにRNAの試料で開始することも可能である。断片化は、原則として、既に上記したように当該技術分野で公知の任意の方法によって行われ得る。しかし、断片化され変性された核酸分子は、約100〜約1000ヌクレオチド残基、好ましくは約250〜約800ヌクレオチド残基、最も好ましくは約400〜約600ヌクレオチド残基の平均サイズを有する。例えば、これは、ゲノムDNAの噴霧によって達成され得る(例えば、欧州特許出願EP 0 552 290参照)。
【0062】
遺伝子複雑性の減少についてのパラメーターは、配列選択についてのユーザーの要望に応じてほとんど任意に選択され得、複数のオリゴヌクレオチドプローブの配列によって規定される。一態様において、前記複数のプローブは、複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロンまたは調節配列を規定する。別の態様において、前記複数のプローブは、少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズまたは上記に特定されるサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する。さらに別の態様において、前記複数のプローブは、SNPを含むことが公知の部位を規定する。さらなる態様において、前記複数のプローブは、タイリングアレイを規定する。本発明の状況でかかるタイリングアレイは、少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために設計されるものとして規定される。この状況において、用語「規定する」は、複数のプローブの集団が増大される各標的配列のための少なくとも1つのプローブを含むような方法で理解される。好ましくは、複数のプローブの集団は、増大される各標的配列のための少なくとも1つの第二プローブをさらに含み、前記第二プローブが前記第一配列に相補的である配列を有することを特徴とする。
【0063】
本発明の固体支持体は、核酸マイクロアレイまたはビーズの集団のいずれかである。前記ビーズは、ガラス、金属、セラミックおよびポリマー性ビーズであり得る。前記固体支持体がマイクロアレイである場合、前記固体支持体上で直接オリゴヌクレオチド捕捉プローブをインサイチュで合成することが可能である。例えば、プローブは、マスクレスアレイ合成機を用いてマイクロアレイ上で合成され得る(US 6,375,903)。複数のオリゴヌクレオチドプローブの長さは、変化し得、実験デザインに依存し、かかるプローブを合成する能力によってのみ制限される。好ましくは、複数のプローブの集団の平均長は、約20〜約100ヌクレオチド、好ましくは約40〜約85ヌクレオチド、特に約45〜約75ヌクレオチド、例えば 45ヌクレオチドである。
【0064】
固体支持体がビーズの集団である場合、捕捉プローブがマスクレスアレイ合成器を用いてマイクロアレイ上で最初に合成され得、次に公知の標準方法によって放出または切断され、任意に増幅され次に当該技術分野で公知の方法によって前記集団のビーズ上に固定される。ビーズをカラムに充填し得、試料を負荷し、遺伝子複雑性を減少させるためにカラムを通過させる。あるいは、ハイブリダイゼーション反応速度を改善するために、ハイブリダイゼーションは、懸濁液中で固定された複数のオリゴヌクレオチド分子を有するビーズを含む水溶液中で生じ得る。
【0065】
一態様において、複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、化学基またはリンカー、即ち固体支持体上での固定を可能にする部分、固定可能な基とも称されるものを保有する。ハイブリダイズする条件下で、断片化され変性された核酸分子の試料を複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブに接触させる工程は、水溶液中で行われ、適切な固体支持体上での固定が後に生じる。例えば、かかる部分は、ストレプトアビジン被覆固体支持体上での固定のために使用され得るビオチンであり得る。別の態様において、かかる部分は、ジゴキシゲニンなどのハプテンであり得、ハプテン認識抗体、例えばジゴキシゲニン結合抗体を被覆した固体支持体上での固定のために使用され得る。
【0066】
特定の態様において、複数の固定プローブは、標準化された捕捉性能を特徴とする。標準化された捕捉性能は、一般的に、上記の方法によって達成され、典型的にa)プローブ組中のプローブの捕捉適合性を確かめる工程; およびb)固体支持体上の少なくとも1つのプローブの量を調節する工程を含む。あるいは、標準化された捕捉性能は、a)プローブ組中のプローブの捕捉適合性を確かめる工程;およびb)固体担体上の少なくとも1つのプローブの配列、融解温度およびプローブ長の少なくとも1つを調節する工程を含む方法によって達成される。なおあるいは、標準化された捕捉性能は、a)少なくとも1つのプローブが飽和になるように第一接触工程よりもストリンジェントでない条件下で固体支持体上の少なくとも1つの固定プローブに捕捉分子を接触させる工程、b)結合していない核酸および非特異的に結合した核酸を固体支持体から洗浄する工程; ならびにc)結合した標的核酸を固体支持体から溶出する工程を含む方法によって達成される。なおあるいは、標準化された捕捉性能は、a)溶出された捕捉分子を単鎖状態に変性させる工程; b)分子の一部が二重鎖になるまで単鎖分子を再アニーリングする工程; および二重鎖分子を廃棄する工程ならびにc)単鎖分子を保持する工程を含む方法によって達成される。
【0067】
通常、少なくとも1つの固定プローブは、試料中の核酸断片上の目的のゲノム領域にハイブリダイズする。あるいは、少なくとも1つの固定プローブが、目的のゲノム領域を含む標的核酸断片上の配列にハイブリダイズし得、ハイブリダイズする配列は、目的のゲノム領域とは離れている。さらに、最初のハイブリダイゼーションで使用された少なくとも1つのプローブに関連するが個別の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを用いた二回目のハイブリダイゼーション工程が少なくとも行われることも本発明の範囲内である。
【0068】
特に、また、本発明は、
- 本明細書に開示される任意の方法により核酸分子の集団の遺伝子複雑性を減少させる工程、および
- 例えば配列決定反応を行うことにより捕捉分子の核酸配列を決定する工程
を含む、試料中のゲノム核酸の少なくとも1つの領域の核酸配列情報を決定する方法に関する。好ましくはかかる配列決定反応は、合成反応による配列決定である。
【0069】
本態様によれば、ゲノムDNAは、好ましくは機械的ストレスによって断片化される。DNA断片の所望される平均サイズは、小さく(<=1000bp)、適用される配列決定方法に依存する。
【0070】
当該技術分野の文献の合成による配列決定(例えば、Hyman, E. D., 1988参照)は、配列決定反応中に特定のデオキシヌクレオシド三リン酸の取り込み時に副産物の生成をモニターする任意の配列決定法として定義される(例えば、Rhonaghiら、1998参照)。合成反応による配列決定の特定のおよび最も卓越した一態様は、ピロリン酸配列決定法である。この場合において、ヌクレオチド取り込み中のピロリン酸の生成は、酵素カスケードによってモニターされ、最終的に化学発光シグナルの生成がもたらされる。例えば、454ゲノムシークエンサーシステム(Roche Applied Science cat. No. 04 760 085 001)は、ピロリン酸配列決定技術に基づいている。454 GS20または454 FLX装置での配列決定のために、平均ゲノムDNA断片サイズは、それぞれ200bpまたは600bpの範囲である。
【0071】
あるいは、合成反応による配列決定は、ターミネーター色素タイプ配列決定反応である。この場合において、取り込まれたdNTP基礎単位は、検出可能な標識、好ましくは生じたDNA鎖のさらなる伸長を妨げる蛍光標識を含む。次に標識は、除去され、例えば3’〜5’エキソヌクレアーゼまたはプルーフリーディング活性を含むDNAポリメラーゼを用いて、鋳型/プライマー伸長ハイブリッドにdNTP基礎単位が取り込まれる際に検出される。
【0072】
有利にも、最初にゲノム複雑性を減少させ、次に複数の配列を決定する本発明の方法は、断片化された核酸分子の一方または両方、好ましくは両方の末端にアダプター分子を連結する工程をさらに含む。本発明の状況でアダプター分子は、好ましくは平滑末端二重鎖オリゴヌクレオチドとして規定される。また、本発明の方法は、前記アダプター分子の配列に相当するまたは特異的にハイブリダイズする配列を含む少なくとも1つのプライマーを用いて前記核酸分子を増幅する工程をさらに含む。
【0073】
二重鎖標的分子にアダプター分子を連結するために、この標的分子自体が平滑末端であることが好ましい。これを達成するために、二重鎖標的分子が、デオキシヌクレオシド三リン酸の存在下でT4 DNAポリメラーゼまたはKlenowポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼを用いた代用反応に供され、平滑末端標的分子がもたらされる。また、例えば、次のライゲーション工程のために5'末端にリン酸基を付加するために、T4ポリヌクレオチドキナーゼがライゲーション前に添加される。仕上げられた標的DNA上でのアダプター(約3〜20塩基対を有する短二重鎖平滑末端DNAオリゴヌクレオチド)の次のライゲーションは、当該技術分野で公知の任意の方法、好ましくはT4 DNAリガーゼ反応によって行われ得る。
【0074】
前記ライゲーションは、ハイブリダイズする条件下で、断片化され変性されたゲノム核酸分子を含む試料を複数のオリゴヌクレオチドプローブに接触させ、前記プローブにハイブリダイズする標的核酸分子を捕捉する工程の前後に行われ得る。ライゲーションが次に行われる場合、単鎖形態で固体支持体から放出される増大核酸は、最初に再アニーリングされ、次にプライマー伸長反応および当該技術分野で公知の標準方法による代用反応を続ける。
【0075】
前記アダプター分子のライゲーションによって、捕捉分子の次の増幅工程が可能になる。ライゲーションが捕捉工程の前後に起こるか否かとは独立して、2つの代替態様が存在する。第一態様において、1つの種類のアダプター分子が使用される。これによって、断片の両方の末端に同じ末端配列を有する断片の集団がもたらされる。結果として、後の指数関数的な増幅工程において1つのプライマーだけを使用することで十分である。代替的な態様において、2つ種類のアダプター分子AおよびBが使用される。これによって、3つの異なる種類: (i) 一方の末端に1つのアダプター(A)および他方の末端に別のアダプター(B)を有する断片、(ii) 両方の末端にアダプターAを有する断片、ならびに(iii)両方の末端にアダプターBを有する断片から構成される増大分子の集団がもたらされる。
【0076】
増幅および配列決定が例えば454 life science corporation GS20およびGSFLX装置で行われる場合(GS20 Library Prep Manual, Dec 2006, WO 2004/070007参照)、タイプ(i)の増大分子の生成が顕著に有利である。前記アダプターの1つ、例えばアダプターBがビオチン修飾を保有する場合、分子 (i)および(iii)は、さらなる分離のためのストレプトアビジン(SA)被覆磁気粒子に結合され得、(ii)の生成物は洗浄される。増大されかつSA固定されたDNAは、捕捉アレイ/固体支持体から溶出された後に単鎖にされる場合、DNAを二重鎖にすることが有利である。この場合に、アダプターAに相補的なプライマーが洗浄されたSA プルダウン生成物に添加され得る。B-B(上記iii)である部分は、Aまたは利用可能な相補物を有さないので、A-B適合およびSA捕捉生成物のみがA補完プライマーからのプライマー伸長後に二重鎖にされる。次に、前記磁気粒子に結合した二重鎖DNA分子は、新たに合成された鎖が溶液中に放出されるような方法で熱または化学(例えばNaOH)変性される。密なビオチン/ストレプトアビジン結合のために、例えば、2つのアダプターBのみを有する分子は溶液中に放出されない。放出に利用可能な鎖はA補完対B補完プライマー伸張合成鎖のみである。一方の末端にアダプターAおよび他方の末端にアダプターBを有する単鎖標的分子を含む前記溶液は、次に例えばさらなる処理のためのアダプターAまたはB配列に十分相補的である捕捉配列を含むさらなる種類のビーズに結合され得る。
【0077】
ゲノムシークエンサーワークフロー(Roche Applied Science Catalog No. 04 896 548 001)の場合において、第一工程で、(クローナル)増幅がエマルションPCRによって行われる。従って、また、増幅工程がエマルションPCRの形態で行われることは本発明の範囲内である。クローン増幅された標的核酸を有するビーズは、次に製造業者のプロトコルによってピコタイタープレートに任意に移され得、配列決定のためのピロリン酸配列決定反応に供される。
【0078】
従って、本発明の方法は、様々な種類の用途のための配列決定を可能にする。例えば、また、本発明は、
- 上記の(1つまたは複数の)方法を行う工程、
- 捕捉分子の核酸配列を決定する工程、および
- 決定された配列を、データベース、特に参照ゲノムのバリアントを同定するための参照ゲノムの多形データベースと比較する工程
を含む、好ましくは断片化され変性されたゲノム核酸分子を含む試料における、参照ゲノムに対するコーディング領域変異を検出する方法を提供する。
【0079】
さらに主要な局面において、また、本発明は、本明細書に開示される本発明の方法または方法の一部を行うためのキットを提供する。従って、本発明は、また
- (第一)二重鎖アダプター分子、および
- 複数のプローブを有する固体支持体
を含み、
前記プローブが
- 複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロンまたは調節配列を規定する複数のプロープ、
- 少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズ、または本明細書に特定されるサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する複数のプローブ、
- SNPを含むことが公知の部位を規定する複数のプローブ、および
- アレイ、特に少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために特別に設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブ
から選択される、キットに関する。
【0080】
好ましくは、キットは、2つの異なる二重鎖アダプター分子を含む。固体支持体は、本明細書に開示される複数のビーズまたはマイクロアレイのいずれかであり得る。
【0081】
一態様において、かかるキットは、DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、T4 DNAリガーゼ、アレイハイブリダイゼーション溶液、例えば本明細書に開示されるアレイ洗浄溶液、特にSSC、DTTおよび任意にSDSを有する洗浄溶液、例えば洗浄バッファI(0.2x SSC, 0.2% (v/v) SDS, 0.1mM DTT)、洗浄バッファII(0.2x SSC, 0.1mM DTT)および/または洗浄バッファIII(0.05x SSC, 0.1mM DTT)、および/またはアレイ溶出溶液、例えば水またはTRISバッファおよび/またはEDTAを含む溶液からなる群からの少なくとも1つ以上の化合物をさらに含む。
【0082】
さらなる特定の態様において、本明細書に開示される態様を相互に限定しないが、キットは第二アダプター分子を含む。前記第一または第二アダプター分子の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド鎖は、修飾を有し得、固体支持体上での固定を可能にする。例えば、かかる修飾は、ストレプトアビジン被覆固体支持体上での固定に使用され得るビオチン標識であり得る。あるいは、かかる修飾は、ジゴキシゲニンなどのハプテンであり得、ハプテン認識抗体を被覆した固体支持体上での固定に使用され得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的な核酸の対形成の参照に使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(即ち、核酸間の結合強度)は、核酸間の相補性の程度、含まれる条件のストリンジェンシー、形成ハイブリッドのTm、および核酸のG:C比などの要因によって影響を受ける。本発明は、特定の組のハイブリダイゼーション条件に限定されないが、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件が好ましくは使用される。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、配列依存的であり、変化する環境パラメーター(例えば塩濃度、および有機物の存在)によって異なる。一般的に、「ストリンジェント」条件は、規定されるイオン強度およびpH で特定の核酸配列の熱融点(Tm)よりも約5℃〜20℃低いように選択される。好ましくは、ストリンジェント条件は、相補的核酸に結合する特定の核酸の熱融解温度より約 5℃〜10℃低い。Tmは、50%の核酸(例えば、タグ核酸)が完全に適合したプローブにハイブリダイズする(規定されたイオン強度およびpH下での)温度である。
【0084】
同様に、「ストリンジェント」洗浄条件は、通常、各組のタグの対応するプローブアレイへのハイブリダイゼーションについて実験で決定される。アレイは、最初にハイブリダイズし(典型的にストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で)、次に、連続的に低濃度の塩、または高濃度の界面活性剤を含むバッファ、または非特異的ハイブリダイゼーションに特異的なシグナル対ノイズ比が特定のハイブリダイゼーションの検出を容易にするほど十分高くなるまで増大する温度で洗浄される。ストリンジェント温度条件は、通常、約30℃を超える温度、より通常約37℃を超える温度、時折約45℃を超える温度を含む。ストリンジェント塩条件は、通常約1000mM未満、通常約500mM未満、より通常約150mM未満である。さらなる情報について例えばWetmur et al.(1966)およびWetmur (1991)を参照。
【0085】
「ストリンジェント条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、本明細書で使用される場合、42℃での50%ホルムアミド、5x SSC(0.75M NaCl, 0.075M クエン酸ナトリウム)、50 mM リン酸ナトリウム(pH 6.8)、0.1% ピロリン酸ナトリウム、5xデンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50mg/ml)、0.1% SDS、および10%硫酸デキストランにおけるハイブリダイゼーション、42℃での0.2x SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃での50%ホルムアミド、続いて55℃でのEDTAを含む0.1x SSCを用いた洗浄であり得る。
【0086】
一例として、限定されないが、35%ホルムアミド、5×SSC、および0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウムを含有するバッファーが、45℃で中程度に非ストリンジェント条件下での16〜72時間のハイブリダイズに適当であることが企図される。さらに、ホルムアミド濃度は、所望のプローブ長さおよびストリンジェンシーレベルに応じて20〜45%の範囲に適当に調整され得ることが構想される。また、プローブ最適化が、プローブ長さの変化を補うようにハイブリダイゼーション温度またはホルムアミド濃度を増大させることによって、より長いプローブ(>>50量体)に対して得られ得ることは本発明の範囲に包含される。ハイブリダイゼーション条件のさらなる例は、いくつかの情報源、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manualの"Direct selection of cDNAs with large genomic DNA clones"(2001)に提供されている。
【0087】
別の態様において、本発明は、固相支持体および標的核酸配列を含む断片化核酸試料を提供する工程、ここで、前記固相支持体は、標的核酸配列にハイブリダイズ可能なハイブリダイゼーションプローブを含む、前記ハイブリダイゼーションプローブを増幅する工程、ここで、増幅産物は結合部分を含み、前記増幅産物は溶液中に維持される、前記増幅産物と標的核酸配列との間のハイブリダイゼーションが起こるように前記核酸試料を前記増幅産物に溶液中でハイブリダイズさせる工程、非特異的にハイブリダイズされた核酸から標的核酸/増幅産物ハイブリダイゼーション複合体を前記結合部分によって分離する工程、ならびに複合体からハイブリダイズされた標的核酸配列を溶出し、それにより複数の核酸配列を単離し、複数の核酸配列の複雑性を低下させる工程を含む、複数の核酸配列を単離し、複数の核酸配列の複雑性を低下させるための方法に関する。
【0088】
別の態様において、本発明は、さらに、溶出された標的核酸配列を配列決定する工程を含む上記の方法を含む。
【0089】
さらなる態様において、本発明は、結合部分を含むハイブリダイゼーションプローブ配列、ここで、前記プローブ配列は1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズするように設計され、前記プローブ配列溶液中にある、前記結合部分に結合するための結合パートナーを含む支持体、および上記の方法を行なうための使用説明書を備えるキットに関する。
【0090】
本発明のある態様において、断片化分子であり得る変性(例えば、単鎖)核酸分子、好ましくはゲノム核酸分子を含む試料が、ハイブリダイズ条件下で複数のオリゴヌクレオチドプローブに曝露され(ここで、該複数のオリゴヌクレオチドプローブまたは前記プローブ由来のアンプリコンは溶液中にある)、試料核酸分子から標的核酸配列を捕捉し、ハイブリダイズされた標的配列からゲノムの非ハイブリダイズ領域または任意の他の試料核酸を分離し、ここで、前記分離は、(例えば、プローブまたはプローブ由来アンプリコンと結合した)結合部分による、溶液中にあるハイブリダイゼーション複合体の捕捉ならびに結合複合体の洗浄、それによる非特異的非標的ハイブリダイズ配列からのハイブリダイズされた標的配列の分離を含む(図6)。
【0091】
本発明は、さらなる処理および遺伝子解析を容易にするために、複数の核酸配列を分離し、ゲノムDNAまたはRNA試料、cDNAライブラリーまたはmRNAライブラリーなどの大きな核酸試料の複雑性を低下させるための方法および系を提供する。本発明のいくつかの態様において、該方法および系は、(予備選択した)固定核酸プローブのインサイチュ増幅を含み、ここで、プローブ由来アンプリコンは結合部分を含む。標識されたアンプリコンは、溶液系の方法において、溶液中で、試料をアンプリコンにハイブリダイズさせることにより試料の標的核酸配列を捕捉する。標識されたアンプリコン/標的核酸ハイブリッド複合体は、結合部分によって捕捉され、好ましくは洗浄され、標的核酸が溶出される。溶出されたゲノム配列は、この富化手順に供されていないゲノム試料よりも詳細に遺伝子解析しやすい。したがって、開示された方法は、ゲノム試料の複雑性を低下させるための費用効果が高く、柔軟性で効率的なアプローチを提供する。本記載の残りの部分全体において、ゲノム試料は、説明目的のために使用されるが、他の非ゲノム試料が同じ手順に供され得ることを理解されたい。
【0092】
いくつかの態様において、本発明は、好ましくはプローブアンプリコンと核酸試料の相補領域間のハイブリダイゼーションを補助するのに充分なストリンジェント条件下で、溶液中で試料を核酸プローブアンプリコンにハイブリダイズさせることにより複数の核酸配列を単離し、核酸試料の複雑性を低下させる方法を提供する。プローブアンプリコン/標的核酸複合体は、非特異的結合核酸の除去に充分な条件下で洗浄される。ハイブリダイズされた標的核酸配列は、プローブ由来アンプリコンから溶出され、例えば、再配列決定などの下流適用のために任意にさらに(例えば、LM-PCRにより)増幅され得る。
【0093】
本発明は、ハイブリダイズ条件下で、標的集団の断片化変性核酸分子を多数の異なるオリゴヌクレオチドプローブ由来アンプリコンに曝露し、プローブアンプリコンに特異的にハイブリダイズする核酸分子を捕捉する工程、ここで、アンプリコンは溶液中にあり、さらに結合部分を含む、プローブアンプリコン上に見られる結合部分をその結合パートナー(例えば、ビオチン/SA、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン、6HIS/ニッケルなど)に結合させることによりハイブリダイズされた分子の複合体を結合または捕捉する工程、ここで、断片化変性核酸分子は、約100〜約1000ヌクレオチド残基、好ましくは約250〜約800ヌクレオチド残基、最も好ましくは約400〜約600ヌクレオチド残基の平均サイズを有する、結合プローブアンプリコンから非結合核酸および非特異的ハイブリダイズ核酸を分離する工程、アンプリコンからハイブリダイズされた標的分子を溶出する工程、ならびに任意に標的分子を配列決定する工程を含む、複数の核酸配列を単離し、核酸分子の集団の遺伝子の複雑性を低下させるための方法を提供する。
【0094】
そのため、本発明のある態様は、複数の核酸配列を単離し、核酸分子の集団の遺伝子の複雑性を低下させるための溶液系の方法および系を提供する。本発明の方法および系は、溶液中で、変性前の断片化核酸試料の一方または両方の末端に1つ以上のライゲーションアダプターを含んでいても含んでいなくてもよい断片化変性核酸試料配列を、多数の異なるハイブリダイゼーションプローブアンプリコンに、変性核酸標的配列がプローブ由来アンプリコンにハイブリダイズするのに充分なハイブリダイゼーション条件下(例えば、溶液中)で曝露する工程、ここで、前記アンプリコンは、予備設計された多数の異なるハイブリダイゼーションプローブに由来し、結合部分または配列および任意に制限エンドヌクレアーゼ(RE)部位を含み、断片化変性核酸配列は、約100〜約1000ヌクレオチド残基、好ましくは約250〜約800ヌクレオチド残基、最も好ましくは約400〜約600ヌクレオチド残基の平均サイズを有する、結合部分によってアンプリコン/標的複合体を結合させ、結合複合体を洗浄することによりプローブ由来アンプリコンから非結合核酸および非特異的ハイブリダイズ核酸を分離する工程、結合複合体から標的核酸配列を溶出する工程、ここで、配列決定された標的は、元の試料と比べて低下した遺伝子の複雑性を示す、ならびに最初に溶出された富化標的核酸配列を用いて該標的核酸配列のさらなる富化のためにハイブリダイゼーション、洗浄および溶出工程を任意に繰返す工程を含む。
【0095】
本発明のある態様において、標的核酸の捕捉のためのプローブを種々の方法によって支持体上に固定する。一態様において、プローブはスライド上にスポットされ得る(例えば、米国特許第6,375,903号および同第5,143,854号)。好ましい態様において、プローブは、米国特許第6,375,903号、同第7,037,659号、同第7,083,975号、同第7,157,229号に記載のような、その後のインサイチュポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のためのスライド上でのオリゴヌクレオチド配列の直接のインサイチュ合成を可能にするマスクレスアレイ合成装置(MAS)を使用することにより支持体上でインサイチュで合成される。
【0096】
いくつかの態様において、固相支持体はビーズまたは粒子の集団である。捕捉プローブは、標準的な方法に従ってマスクレスアレイ合成装置を用いてマイクロアレイスライド上で最初に合成され、増幅され、放出または切断され、任意に前記のビーズ集団上で増幅および固定される。ビーズは、例えばカラムに充填され得、標的試料が負荷され、カラムを通過し、カラム内でプローブ/標的試料のハイブリダイゼーションが起こり、その後、洗浄し、標的試料配列を溶出し、遺伝子の複雑性が低下され得る。いくつかの態様において、カラムは液体流入および流出ポートを有する。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーション反応速度を高めるため、水性環境中で、固定された多数のプローブを有するビーズを懸濁液に含む水溶液中でハイブリダイゼーションを行なう。
【0097】
いくつかの態様において、標的分子の核酸プローブは固相支持体上で合成され、固相支持体からプローブのプールとして放出され、増幅される。放出されたプローブの増幅されたプールは共有結合または非共有結合により支持体(例えば、ガラス、金属、セラミック、ポリマービーズ、常磁性粒子など)上に固定される。プローブは、例えば、支持体近位のプローブ末端にまたはその付近にそれぞれ低または高pH条件下でプローブを放出する酸またはアルカリ不安定性核酸配列を提供することによる固相支持体からの簡便な放出のために設計される。当該技術分野では、例えば、ビオチン化ヌクレオチドをプローブに組み込み、支持体をストレプトアビジンでコーティングすることにより、コーティングされた支持体がプール中のプローブを引きつけて固定するように支持体上に核酸を固定するための方法がよく知られている。試料(1つまたは複数)は、固定された支持体にハイブリダイズする標的核酸分子がその後の解析または他の使用のために溶出され得るようなハイブリダイズ条件下でプローブ含有支持体(例えば、スライド、カラムなど)を通過する。
【0098】
本発明のある態様において、本明細書に記載の溶液系捕捉方法における使用のためのその後の増幅のために設計された最初のハイブリダイゼーションプローブは、マイクロアレイスライド、チップ、マイクロウェル、カラム、チューブ、ビーズまたは粒子などの固相支持体上に印刷または置かれる。支持体は、例えば、ガラス、金属、セラミック、ポリマービーズなどであり得る。好ましい態様において、固相支持体はマイクロアレイ(例えば、ガラススライド)であり、ここで、プローブは、マスクレスアレイ合成装置を用いてマイクロアレイ上で合成される。多数のオリゴヌクレオチドプローブの長さは異なり得、実験設計に依存し、かかるプローブを合成する可能性によってのみ制限される。好ましい態様において、インサイチュ増幅前の多数のプローブの集団の平均長さは、約20〜約100ヌクレオチド、好ましくは約40〜約85ヌクレオチド、特に約45〜約75ヌクレオチドである。固定されたハイブリダイゼーションプローブは、続いて、インサイチュPCR増幅および任意に非対称PCR増幅の鋳型として使用され、それにより溶液系ハイブリダイゼーションおよび複雑な試料からの標的核酸分子の増大のためのプローブ由来アンプリコンが提供される。
【0099】
本発明のある態様において、ハイブリダイゼーションプローブは、配列内でゲノムの少なくとも1つの領域に対応し、例えばマスクレスアレイ合成(MAS)技術を用いて固相支持体上に平行して提供され得る。代替的に、プローブは、標準的なDNA合成装置を用いて連続して得られ、次いで固相支持体に適用され得るか、または有機体から得られ、次いで固相支持体に固定され得る。本発明のある態様において、ハイブリダイゼーションプローブは、合成方法とは無関係に、増幅技術における使用のための増幅プライマー配列を含むことが企図される。本発明のある態様において、ハイブリダイゼーションプローブ配列に組み込まれた増幅プライマー配列は、さらに、制限エンドヌクレアーゼ(RE)配列を含む。本発明のある態様において、マイクロアレイ支持体上に見られるハイブリダイゼーションプローブは、プライマー配列に相補的なプライマーを用いてインサイチュで増幅され、ここで、プライマーの一方または両方は、さらに、結合部分(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニンなど)などのリンカー化学部分を含み、それによりハイブリダイゼーションプローブ由来のPCRアンプリコンは溶液中にある。
【0100】
プローブ由来アンプリコンを含む溶液は、例えば、チューブ、ウェル、または他の容器に移され、溶液中に維持される。例えば非対称PCRによる結合部分を含むアンプリコン鎖の生成を増やすためのさらに1回以上の増幅がさらに行なわれることが企図される。断片化単鎖標的配列をもたらすための好ましくは断片化され変性された核酸試料が溶液中でアンプリコンに添加され、プローブ由来アンプリコンと断片化単鎖標的核酸試料間でハイブリダイゼーションさせる。ハイブリダイゼーション後、ハイブリダイズしていない核酸、または非特異的にハイブリダイズする核酸を、結合部分によってアンプリコン/標的複合体を捕捉し、アンプリコン/標的複合体を洗浄することによりアンプリコン/標的複合体から分離する。例えば、結合部分がビオチンである場合、複合体を捕捉するためにストレプトアビジンコーティング支持体が使用される。結合された複合体は、例えば1つ以上の洗浄溶液で洗浄される。残留核酸(例えば、アンプリコンに特異的に結合)は、例えば、水または溶出バッファー(例えば、TRISバッファーおよび/またはEDTAを含む)を使用することにより複合体から溶出され、標的核酸配列が増大された溶出液がもたらされる。
【0101】
本明細書に記載の溶液系捕捉方法および系での増幅のために提供されるマイクロアレイ系オリゴヌクレオチドは、ゲノムの領域(1つまたは複数)を標的化するように設計される。個々のプローブの長さは典型的に50〜200塩基である。これらのプローブは、隣接するプローブの出発ヌクレオチドがゲノム内でプローブの長さ未満分離されていることを意味する重複プローブ、または隣接するプローブ間の距離がプローブの長さより大きい非重複プローブのいずれかとなるように設計され得る。隣接するプローブ間の距離は一般的に重複しており、2つのプローブの出発ヌクレオチドの間隔は1〜100塩基の間で異なる。この距離は、いくつかのゲノム領域が他のものではなく多数のプローブによって標的化されるように変更される。この変更は、例えば、個々のゲノム領域の捕捉効率を調節して捕捉を標準化するために使用される。プローブはゲノムの独自性について試験され得る。本発明の好ましい態様において、プローブ由来アンプリコンへのゲノムエレメントの非特異的結合を回避するため、ゲノムの高頻度反復エレメントは、これらの領域を同定し、プローブ設計から除外するための、例えば、Morgolis(2006、Bioinformatics 15:134-141、参照によりその全体が本明細書に援用される)によって開発されたWindowMaskerプログラムと類似したストラテジーを利用する方法を用いて選択プローブ設計から除外される。
【0102】
本発明の溶液系捕捉方法のための増幅のための設計されたプローブの性質および性能は、本発明の方法により捕捉および増大された標的分子の分布を有利に標準化または調整するために変更され得る。かかる標準化の目的は1回の読み取りあたり発現遺伝子1つを送達することである(例えば、Soares,et al.,1994,Proc. Natl. Acad. Sci. 91:9228-9232)。標準化は、一般的に集団内の分子の分布はcDNA分子集団が作製された発現遺伝子の異なる発現レベルを反映するため、例えばライブラリー構築前のcDNA分子の集団に適用される。例えば、各標的領域を有効に解析するのに必要とされる配列決定反応の回数は、増大された集団内の各標的配列のコピー数を標準化することにより減少され、それによりプローブの組間で異なるプローブの捕捉性能が、適合性と他のプローブ属性の組合せに基づいて標準化される。
【0103】
捕捉測定規準を特徴とする適合性は、情報科学的または経験的のいずれかで確認される。アプローチの1つにおいて、標的分子の結合能力は、米国特許出願公開公報第2005/10282209号に記載の、均一なプローブ性能を可能にし、ハイブリダイゼーション人工物および/または偏りを排除し、高品質出力を提供する、いわゆる等温的(Tm-均衡)オリゴヌクレオチドプローブを提供することにより調整される。プローブの長さは、増幅前のプローブの組全体において融解温度(例えば、Tm = 76℃、典型的に約55℃〜約76℃、特に約72℃〜約76℃)が等しくなるように調整される(典型的に、約20〜約100ヌクレオチド、好ましくは約40〜約85ヌクレオチド、特に約45〜約75ヌクレオチドだが、任意に100ヌクレオチドより多く約250ヌクレオチドまで)。したがって、プローブは、所定のストリンジェンシーで、AT-およびGC-リッチ領域などの目的のゲノム領域内で等価な性能となるように最適化される。当業者には、プローブ長さ、融解温度および配列は、プローブアンプリコンの所望のハイブリダイゼーション性能が得られるように任意の所定のプローブ由来アンプリコンに対して協調的に調整され得ることが認識されよう。例えば、プローブ由来アンプリコンの融解温度(Tm)は、式: Tm=Sx(Gn+Cn)+lx(An+Tn)(式中、nはプローブアンプリコン上に存在する具体的な各塩基(A、T、GまたはC)の数である)を用いて計算され得る。
【0104】
捕捉性能はまた、プローブセット内のプローブアンプリコンの捕捉適合性を確認し、次いで、それに応じて増幅目的のために固相支持体上の個々のプローブの量を調整することにより標準化され得る。例えば、第1プローブ由来のプローブアンプリコンが、第2の組のプローブ由来アンプリコンの20倍の核酸を捕捉することが予測される場合、両方のプローブアンプリコンセットの捕捉性能は、例えば、増幅前に第2プローブを示すマイクロアレイプローブの数を20倍に増加することにより、増幅目的で20倍多くの第2プローブコピーを提供することにより等しくすることができる。
【0105】
他の態様において、標的核酸の捕捉を標準化するためのさらなるストラテジーは、溶出された標的分子を第1回のハイブリダイゼーションで使用したものよりも低いストリンジェント条件下で、プローブ由来アンプリコンに対する第2回の溶液系ハイブリダイゼーションに供することである。元のゲノム核酸と比べて複雑性が低下される最初のハイブリダイゼーションにおける実質的な富化以外、2回目のハイブリダイゼーションは、すべての捕捉プローブが飽和されるハイブリダイゼーション条件で行なわれ得る。実質的に等しい量のプローブ由来アンプリコンが溶液中に提供されると仮定すると、アンプリコンの飽和により、2回目のハイブリダイゼーションおよび洗浄後、実質的に等しい量の各標的が溶出されることが確実になる。
【0106】
本発明のある態様において、本明細書に記載のその後の溶液系捕捉および増大方法および系のためのハイブリダイゼーションプローブのインサイチュ増幅に使用される増幅プライマーは結合部分などのリンカー化学部分を含む。結合部分は、プローブアンプリコン/標的核酸ハイブリダイゼーション複合体のその後の捕捉に有用な増幅プライマーの5’末端に結合したまたは組み込まれた任意の部分を含む。結合部分は、プライマー配列の5’に遺伝子工学で作った捕捉可能な6ヒスチジン(6HIS)配列などの任意の配列である。例えば、6HIS 配列を含むプライマーは、例えばニッケルでコーティングされた、またはニッケルコーティングされたビーズ、粒子などを含むチューブ、マイクロウェルまたは精製カラム内でニッケルによって捕捉可能であり、ここで、ビーズはカラムに充填され、試料は、複雑性の低下のための複合体の捕捉のために(および例えばその後の標的溶出のために)カラムに負荷して通過させる。本発明のある態様に有用な結合部分の別の例としては、例えば増幅プライマーの5’末端に結合したハプテン、例えばジゴキシゲニンが挙げられる。ジゴキシゲニンは、ジゴキシゲニンに対する抗体の使用、例えば、抗ジゴキシゲニン抗体でコーティングされた、または抗ジゴキシゲニン抗体を含む支持体によって捕捉可能である。
【0107】
好ましい態様において、本発明の方法および系に使用される増幅プライマーは、プライマーの5’末端に結合されたビオチン部分、続いてプローブ由来アンプリコンを含む。ビオチンはストレプトアビジン(SA)によって捕捉可能であり、そのため、ビオチン標識されたアンプリコンは、SAでコーティングされた、またはSAを含む支持体またはカラム上で捕捉され得る。好ましい態様において、ストレプトアビジンは、常磁性粒子上にコーティングされ、これが磁気的に捕捉され、標的増大核酸の洗浄および溶出が容易になる。本発明は、使用されるリンカー化学の種類によって制限されず、当業者には、本発明の方法および系に等しく従う他の選択肢が公知である。
【0108】
本発明のある態様において、方法および系は、試料中の核酸(1つまたは複数)、特にゲノム核酸(1つまたは複数)、(ゲノム全体または少なくとも1つの完全もしくは部分染色体)の少なくとも1つの領域の核酸配列情報の決定を含み、該方法は、上記に記載の方法を実施した後、特に合成反応による配列決定を行なうことにより捕捉された分子の核酸配列を決定する工程を含む。
【0109】
本発明のある態様において、標的核酸は、典型的にデオキシリボ核酸またはリボ核酸であり、1つの核酸分子型(例えば、DNA、RNAおよびcDNA)を別の型に変換することによりインビトロで合成される生成物ならびにヌクレオチドアナログを含有する合成分子が挙げられる。変性ゲノムDNA分子は、特に、天然のゲノム核酸分子より短い分子である。当業者は、周知のプロトコルを使用し、化学的、物理的または酵素的断片化または切断によって大きな分子からランダム-または非ランダムサイズの分子を作製することができる。例えば、化学的断片化では第一鉄の金属(例えば、Fe-EDTA)が使用され得、物理的方法としては、超音波処理、流体力学力または噴霧(例えば、欧州特許出願EP 0 552 290参照)が挙げられ得、酵素的プロトコルでは、小球菌ヌクレアーゼ(Mnase)またはエキソヌクレアーゼ(Exo1もしくはBal31など)または制限エンドヌクレアーゼなどのヌクレアーゼが使用され得る。
【0110】
本発明は、断片が作製される方法に限定されず、核酸の断片化に有用な任意の方法が企図される。本発明のある態様において、増大断片を使用する増大後技術に適合するサイズ範囲の断片が好ましい。例えば、本発明のある態様は、約100〜約1000ヌクレオチド残基もしくは塩基対、または約250〜約800ヌクレオチド残基もしくは塩基対、または約400〜約600ヌクレオチド残基もしくは塩基対、特に約500ヌクレオチド残基もしくは塩基対の範囲の核酸断片サイズを想定する。
【0111】
標的核酸配列を含み得る核酸分子の集団は、好ましくは、有機体の全ゲノムもしくは少なくとも1つの染色体または少なくとも約100kbを有する少なくとも1つの核酸分子を含む。特に、核酸分子(1つまたは複数)のサイズ(1つまたは複数)は少なくとも約200kb、少なくとも約500kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mbまたは少なくとも約5Mb、特に、約100kb〜約5Mb、約200kb〜約5Mb、約500kb〜約5Mb、約1Mb〜約2Mbまたは約2Mb〜約5Mbのサイズである。いくつかの態様において、核酸分子はゲノムDNAであるが、他の態様では核酸分子はcDNAまたはRNA種(例えば、tRNA、mRNA、miRNA)である。
【0112】
本発明のある態様において、標的核酸配列を含んでいても含んでいなくてもよい核酸分子は動物、植物または微生物から選択され得、特定の態様において、核酸分子は霊長類、好ましくはヒト由来のものである。いくつかの態様において、限られた試料の核酸分子である場合、核酸は本発明の方法を実施する前に(例えば、全ゲノム増幅によって)増幅される。例えば、法医学的目的のために(例えば、法医学的医療などにおいて)本発明のある態様を実施するために、事前の増幅が必要であり得る。
【0113】
好ましい態様において、核酸分子の集団はゲノムDNA分子の集団であることが企図される。ハイブリダイゼーションプローブおよびその後のアンプリコンは、複数のエキソン、イントロンもしくは複数の遺伝子座に由来する調節配列を標的化する1つ以上の配列、少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズもしくは上記指定のサイズの少なくとも1つを有する少なくとも1つの単一の遺伝子座の完全配列、SNPを含むことが公知の部位、または少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するように設計されたアレイ、特にタイリング(tiling)アレイを規定する配列を含み得る。
【0114】
標的核酸配列は、任意の供給源由来の核酸を精製形態または非精製形態で含む1つ以上の試料から富化されることが企図される。供給源は、有機体由来のゲノム核酸分子の完全補完物を含んでいる必要はない。好ましくは生物学的供給源由来の試料としては、限定されないが、個々の患者由来のプールされた単離物、組織試料、または細胞培養物が挙げられる。標的領域は、数メガ塩基の1つ以上の連続ブロック、または1つ以上の染色体のすべてのエキソンなどのいくつかのより小さい連続もしくは不連続の領域、またはSNPを含むことが公知の部位であり得る。例えば、ハイブリダイゼーションプローブおよびその後のプローブ由来アンプリコンは、1つ以上の完全染色体、1つ以上の染色体の一部分、すべてのエキソン、1つ以上の染色体のすべてのエキソン、選択されたエキソン、1つ以上の遺伝子のイントロンおよびエキソン、遺伝子調節領域などを捕捉するように設計されたタイリングアレイを支持し得る。
【0115】
代替的に、所望の非特有または捕捉困難な標的が富化される尤度を増大させるため、プローブは実際の標的配列と関連する(例えば、実際の標的配列と同じ断片上だが、離れている)配列に指向され、この場合、所望の標的および関連配列の両方を含むゲノム断片が捕捉され、増大される。関連配列は標的配列と隣接していても離れていてもよいが、当業者には、2つの部分が互いに近いほど、ゲノム断片が両方の部分を含みやすいことが認識されよう。オフターゲット分子による交差ハイブリダイゼーションによる有限の影響を低下させ、それにより増大の完全性を増強するため、標的領域に対する異なるが関連する捕捉プローブセット、したがってプローブ由来アンプリコンを用いた連続回の捕捉が行なわれる。関連プローブは、ゲノム内で互いに近接した領域に対応し、同じゲノムDNA断片にハイブリダイズするプローブである。
【0116】
本発明のいくつかの態様において、該方法は、溶液中での変性およびプローブアンプリコンへのハイブリダイゼーション前に、アダプターまたはリンカー分子を核酸分子の一方または両方の末端に連結する工程を含む。
【0117】
本発明のいくつかの態様において、該方法は、さらに、少なくとも1つのプライマーを用いて前記アダプター修飾核酸分子を増幅する工程を含み、前記プライマーは、前記アダプター分子(1つまたは複数)の配列に特異的にハイブリダイズする配列を含む。
【0118】
本発明のいくつかの態様において、溶液中での試料変性およびプローブ由来アンプリコンへのハイブリダイゼーション前に、断片化された核酸分子の一方または両方の末端に二本鎖リンカーが提供される。かかる態様において、標的核酸分子は、溶出後に増幅され、元の試料と比べて複雑性がさらに低下された増幅産物のプールを作製する。標的核酸分子は、例えば、非特異的ライゲーション媒介PCR(LM-PCR)を用いて多数回の増幅により増幅され得、産物は、必要な場合は、プローブ由来アンプリコンに対する1回以上の選択によってさらに増大され得る。リンカーまたはアダプターは、例えば、複雑性低減工程後の下流の解析適用で所望されることに応じて任意のサイズおよび任意の核酸配列で提供される。リンカーは、約12〜約100塩基対の範囲、例えば、約18〜100塩基対、好ましくは約20〜24塩基対の範囲であり得る。本発明と関連するアダプター分子は、好ましくは平滑末端二本鎖オリゴヌクレオチドと規定される。
【0119】
アダプター分子を二本鎖標的分子に連結するため、この標的分子自体が平滑末端であることが好ましい。これを達成するため、二本鎖標的分子は、dNTPの存在下で、例えば、T4 DNAポリメラーゼまたはクレノウポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼを用いた代用反応に供され、これにより平滑末端標的分子がもたらされる。さらに、アダプターのライゲーション前に断片の5'末端にリン酸基を付加するために、T4 ポリヌクレオチドキナーゼおよび当業者に公知の方法(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Sambrook et al.編,Cold Spring Harbour Press参照; 参照によりその全体が本明細書に援用される)を用いて断片の末端をリン酸化する。仕上げを施したリン酸化標的DNAへのアダプター(例えば、約3〜20塩基対を有する短い二本鎖平滑端DNAオリゴヌクレオチド)のその後のライゲーションは、当該技術分野で公知の任意の方法に従って、例えばT4 DNAリガーゼ反応によって行なわれ得る。
【0120】
断片化標的核酸分子へのアダプターのライゲーションは、断片化変性ゲノム核酸分子を含む試料を、溶液中で、標的核酸分子を捕捉するハイブリダイズ条件下で多数のオリゴヌクレオチドプローブアンプリコンに曝露する前または後に行なわれ得る。ライゲーションがハイブリダイゼーション後に行なわれる場合、当該技術分野で公知の標準的な方法に従って、アンプリコンから単鎖形態で放出された増大された核酸を最初に再度アニーリングさせた後、プライマー伸長反応および代用反応を行なう。
【0121】
アダプター分子のライゲーションにより、捕捉された分子のその後の増幅工程が可能になる。ライゲーションを捕捉工程の前に行なうか後に行なうかとは独立して、いくつかの代替的な態様が存在する。一態様において、アダプター分子(例えば、アダプター分子A)の1つの型が断片の両端に連結され、同一の末端配列を有する断片の集団がもたらされる。その結果、その後の潜在的増幅工程において1つのプライマーのみを使用することで充分である。代替的な態様において、2つ型のアダプター分子AおよびBを使用する。これにより、3つの異なる型:(i)一方の末端に1つのアダプター(A)および他方の末端に別のアダプター(B)を有する断片、(ii)両方の末端にアダプターAを有する断片、ならびに(iii)両方の末端にアダプターBを有する断片から構成される増大された分子の集団がもたらされる。アダプターを有する増大された分子の作製は、増幅および配列決定が、例えば、454 Life Sciences Corporation GS20およびGSFLX装置(例えば、GS20 Library Prep Manual、Dec 2006、WO 2004/070007参照; 参照によりその全体が本明細書に援用される)を用いて行なわれる場合、著しく有利である。
【0122】
本発明は、試験ゲノムおよび参照ゲノムの両方に関して上記記載の工程、さらに、配列をデータベースの配列、特に参照ゲノム試料の多型のデータベースの配列と比較し、試験ゲノム試料からバリアントを同定する工程を含む、参照ゲノム試料と比べた、特に断片化変性ゲノム核酸分子を含む参照ゲノムと比べた試験ゲノム試料のコード領域の変化(1つまたは複数)を検出するための方法に関する。したがって、本発明は、ヒト疾患の根底に存在し得る単一塩基多型(SNP)、またはSNPの組、ゲノム挿入および/または欠失、転座などのような遺伝子バリアントおよび変異の検索に有用である。本明細書に記載の溶液系ハイブリダイゼーション技術を用いた捕捉および増大は、ゲノム増大の分野で現在利用可能な他の方法よりも柔軟性であることが企図される。
【0123】
本発明のいくつかの態様において、溶出された標的核酸配列は配列決定され、再配列決定アレイまたはSNPコーリングアレイにハイブリダイズされ得、配列または遺伝子型がさらに解析され得る。本発明の態様によって提供される溶液系増大により、標的化アレイ系-、ショットガン-、キャピラリー-、または当該技術分野で公知の他の配列決定法が可能になる。一般に、ランダムに生じた断片のショットガン配列決定のためのストラテジーは費用効果があり、容易にパイプラインに組み込まれる。本発明により、配列決定のための目的の1つ以上のゲノム領域由来の断片のみが提示されることによってショットガンアプローチの効率が高められる。本発明は、医学的配列決定目的のために個々の染色体またはエキソンなどの特定のゲノム領域に配列決定ストラテジーを集中させる能力を提供する。そのため、疾患の発見のためのより集中的なアプローチが実現される。
【0124】
本発明のある態様において、本明細書に記載の溶液系増大方法から得られた溶出された標的核酸配列は、続いて配列決定される。配列決定は、合成技術による配列決定の使用などの多数の異なる方法によって行なわれ得る。先行技術による合成による配列決定は、配列決定反応中の特定のデオキシヌクレオシド三リン酸の取り込み時の副産物の生成をモニターする任意の配列決定方法と規定する(Hyman、1988、Anal. Biochem. 174:423-436; Rhonaghi et al.,1998、Science 281:363-365)。合成反応による配列決定の卓越した一態様はピロリン酸配列決定方法である。この場合、化学発光シグナルの生成をもたらす酵素的カスケードによって、ヌクレオチド組込み中のピロリン酸の生成がモニターされる。合成による配列決定の一例である454 Genome Sequencer System(Roche Applied Science カタログ番号04 760 085 001)は、ピロリン酸配列決定技術に基づくものである。454 GS20または454 FLX装置での配列決定のためには、平均ゲノムDNA断片サイズは、生成物の文献に記載のようにそれぞれ200または600bpの範囲である。
【0125】
合成反応による配列決定は、代替的に、配列決定反応の末端色素の型に基づくものであり得る。この場合、組み込まれた色素デオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)構成ブロックは検出可能な標識を含み、これは、好ましくは発生期のDNA鎖のさらなる伸長を阻止する蛍光標識である。次いで、標識は、例えば、3'-5'エキソヌクレアーゼまたはプルーフリーディング活性を含むDNAポリメラーゼを使用することにより、鋳型/プライマー伸長ハイブリッド内へのddNTP構成ブロックの組込み時に除去され、検出される。
【0126】
Genome Sequencer ワークフロー(Roche Applied Science カタログ番号04 896 548 001)の場合、第1の工程において、エマルジョンPCRによって(クローンの)増幅が行なわれる。したがって、増幅工程がエマルジョンPCR方法によって行なわれることも本発明の範囲内にある。クローン的に増幅された標的核酸を有するビーズは、次いで、製造業者のプロトコルに従って、任意にピコタイタープレートに移され、配列決定のためにピロリン酸配列決定反応に供され得る。
【0127】
いくつかの態様において、本発明は、本発明による方法を行なうための試薬および物質を備えるキットを含む。かかるキットは、1つ以上の標的遺伝子座由来の1つ以上の標的核酸配列に特異的な(例えば、エキソン、イントロン、SNP 配列などに特異的な)複数のハイブリダイゼーションプローブが上面に固定されたマイクロアレイ支持体、少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するように設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブ、増幅プライマー、ポリメラーゼ連鎖反応法を行なうための試薬(例えば、塩溶液、ポリメラーゼ、dNTP、増幅バッファーなど)、ライゲーション反応を行なうための試薬(例えば、ライゲーションアダプター、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、リガーゼ、バッファーなど)、結合パートナー部分を含む支持体、チューブ、ハイブリダイゼーション溶液、洗浄溶液、溶出溶液、磁石(1つまたは複数)、およびチューブホルダーの1つ以上を含み得る。
【0128】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に開示される本方法または該方法の一部を行なうための系(例えば、キット)を提供する。したがって、本発明は、溶液中に(第1の)二本鎖アダプター分子および多数のプローブ由来アンプリコンを備えるキットであり、ここで、プローブ由来アンプリコンは、複数のエキソン、イントロンおよび/または複数の遺伝子座に由来する調節配列を規定する複数のプローブ、および/または少なくとも1つの単一の遺伝子座の完全配列を規定する溶液中の複数のプローブ由来アンプリコン(前記遺伝子座は、少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズまたは本明細書において特定したサイズを有する)、および/またはSNPを含むことが公知の部位を規定する複数のプローブ由来アンプリコン、および/またはアレイ、特に少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するように特別に設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブ由来アンプリコンから増幅される。いくつかの態様において、キットは、さらに、2つの異なる二本鎖アダプター分子を備える。
【0129】
いくつかの態様において、キットは1つ以上の捕捉分子または化合物を備える。例えば、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブは、固相支持体上への固定化を可能にする修飾を含む。例えば、プローブは、ストレプトアビジンコーティング常磁性粒子上への固定化のためのビオチン部分を含む。別の例は、ハプテン認識抗体(例えば、抗ジゴキシゲニン)を用いて固相支持体上への固定化のためにプローブと結合させたジゴキシゲニンなどのハプテンである。
【0130】
いくつかの態様において、キットは、さらに、DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、T4 DNAリガーゼ、1つ以上のアレイハイブリダイゼーション溶液、および/または1つ以上のアレイ洗浄溶液からなる群からの少なくとも1つ以上の化合物を備える。好ましい態様において、3つの洗浄溶液が本発明のキットに含まれ、洗浄溶液はSSC、DTTおよび任意にSDSを含む。例えば、本発明のキットは、洗浄バッファーI(0.2%SSC、0.2%(v/v)SDS、0.1mM DTT)、洗浄バッファーII(0.2%SSC、0.1mM、DTT)および/または洗浄バッファーIII(0.05%SSC、0.1mM DTT)を含む。いくつかの態様において、本発明の系は、さらに、溶出溶液、例えば水またはTRISバッファーおよび/またはEDTAを含有する溶液を含む。
【0131】
本発明の特定の態様のさらなる非限定的な例として以下の実施例を提供する。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を実証し、さらに例示するために提供され、本発明の範囲の限定と解釈されるべきでない。
【0133】
値の範囲が提供される場合、本文中に明白にそうでないことが記載されていない限り、その範囲の上限と下限の間の各介在値も下限の単位の10分の1まで具体的に開示されているものと理解されたい。記載の範囲内の任意の記載の値または介在値と該記載の範囲内の任意の他の記載の値または介在値との間の各小範囲が本発明に包含される。これらの小範囲の上限および下限は、独立して、該範囲に含まれてもよく、除外されてもよく、限界値のいずれかが該小範囲に含まれる場合、どちらも含まれない場合、または両方とも含まれる場合の各範囲も本発明に包含され、記載の範囲の任意の具体的に排除される限界値に供される。記載の範囲が一方または両方の限界値を含む場合、限界値に含まれるもののいずれまたは両方が除外された範囲も本発明に含まれる。
【0134】
実施例1 - 大きなゲノム領域における新たな多型および変異の発見
この一般的実施例は、大きなゲノム領域における新たな多型および変異の迅速で効率的な発見を可能にする選択をどのようにして行なうかを記載する。固定されたプローブを有するマイクロアレイを全ゲノムDNAの標的を用いた1回または多数回のハイブリダイゼーション選択に使用し、選択された配列をLM-PCRによって増幅する(図1および2参照)。
【0135】
a)ゲノムDNAおよび二本鎖リンカーの調製
超音波処理を用いてDNAを約500塩基対の平均サイズに断片化する。超音波処理DNA断片の末端の仕上げのための反応物を準備する。
DNA断片 41μl
T4 DNAポリメラーゼ 20μl
T4 DNAポリメラーゼ反応混合物 20μl
水 10μl
【0136】
反応物を11℃で30分間インキュベートする。次いで、反応物をフェノール/クロロホルム抽出手順に供し、エタノール沈殿によってDNAを回収する。沈殿したペレットを10μlの水に溶解する(2μg/μlの最終濃度にする)。
【0137】
以下のもの:
オリゴヌクレオチド1(1μg/μl) 22.5μl
(5'-CTCGAGAATTCTGGATCCTC-3')(配列番号:1)
オリゴヌクレオチド2(1μg/μl) 22.5μlの
(5'-GAGGATCCAGAATTCTCGAGTT-3')(配列番号:2)
10×アニーリングバッファー 5μl
水 50μlまで
を混合することにより2つの相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングし、二本鎖リンカーを作製する。
【0138】
反応物を65℃で10分間で加熱し、次いで15〜25℃で2時間冷却する。2つの相補的オリゴヌクレオチド1および2の長さは12〜24ヌクレオチドであり、配列は、ユーザーによる所望の機能性に応じて選択する。次いで、二本鎖リンカーをSephadex G-50スピンカラムによるカラムクロマトグラフィーによって精製する。精製されたリンカー溶液を、次いで、2μg/μlの濃度までの凍結乾燥によって濃縮する。
【0139】
b)ゲノムDNA断片へのリンカーのライゲーション
リンカーをゲノムDNA断片に連結するための以下の反応物を準備する。反応物を14℃で一晩インキュベートする。
【0140】
工程a)でアニーリングしたリンカー(20μg) 10μl
工程a)のゲノムDNA (10μl) 5μl
T4 DNAリガーゼ 10 U
10×ライゲーションバッファー 2μl
水 20μlまで
【0141】
水で反応容量を500μlに調整し、連結されたゲノムDNAを、QIAquick PCR精製キットを用いて精製する。精製されたDNAを1μg/μlの濃度で保存する。
【0142】
c)ハイブリッドの一次選択および捕捉
マイクロアレイへのハイブリダイゼーションのためのゲノムDNA試料を調製するため、リンカー修飾ゲノムDNA(10μg)を3.5μlの無ヌクレアーゼ水に再懸濁し、31.5μlのNimbleGenハイブリダイゼーションバッファー(Roche NimbleGen,Inc.,Madison、WI)、9μlハイブリダイゼーション添加剤(Roche NimbleGen,Inc)と最終容量の45μlで合わせる。95℃で5分間試料を熱変性し、42℃のヒートブロックに移す。
【0143】
マイクロアレイ上の標的ゲノムDNAを捕捉するため、試料を、US6,375,903に記載のようにして製造されたNimbleGen CGHアレイ(Roche NimbleGen,Inc.)にハイブリダイズさせる。マスクレスアレイ合成装置によって行なうようにして、Singh-Gasson et al.(1999、Nat. Biotech. 17:974-978、参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載のデジタルマイクロミラーを使用した光指示オリゴヌクレオチド合成によってマイクロアレイ上の捕捉オリゴヌクレオチドのマスクレス製造を行なう。マスクレスフォトリソグラフィーによって作製されるオリゴヌクレオチドアレイを用いた遺伝子発現解析は、Nuwaysir et al.(2002、Genome Res. 12:1749-1755、参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている。ハイブリダイゼーションは、MAUIハイブリダイゼーション系(BioMicro Systems,Inc.,Salt Lake City、UT)中で、製造業者の使用説明書に従い、混合モードBを使用し、42℃で16時間行なう。ハイブリダイゼーション後、洗浄バッファーI(0.2×SSC、0.2%(v/v)SDS、0.1mM DTT、NimbleGen Systems)でアレイを2回合計2.5分間洗浄する。次いで、アレイを洗浄バッファーII(0.2×SSC、0.1mM DTT、NimbleGen Systems)中で1分間洗浄した後、洗浄バッファーIII(0.05×SSC、0.1mM DTT、Roche NimbleGen,Inc.)中で15秒間洗浄する。
【0144】
マイクロアレイにハイブリダイズされたゲノムDNAを溶出するため、アレイを95℃の水中で2回5分間インキュベートする。溶出されたDNAを、真空遠心分離を用いて乾燥する。
【0145】
d)一次選択されたDNAの増幅
一次選択されたゲノムDNAを以下に記載するようにして増幅する。10個の別々の複製増幅反応物を200μlのPCRチューブ内で構成する。各断片が、各末端に連結された同じリンカーを有するため、1つのオリゴヌクレオチドプライマーのみが必要とされる。
反応試薬:
鋳型: 一次選択
物質 5μl
オリゴヌクレオチド1(200 ng/μl) 1μl
(5'-CTCGAGAATTCTGGATCCTC-3')(配列番号:1)
dNTP(各25mM) 0.4μl
10×PfuUltra HF DNAポリメラーゼ
反応バッファー 5μl
PfuUltra HF DNAポリメラーゼ 2.5 U
水 50μlまで
【0146】
反応物を以下のプログラムに従って増幅する。
サイクル回数 変性 アニーリング 重合
1 95℃で2分間
2〜31 95℃で30秒間 55℃で30秒間 72℃で1分間
【0147】
反応生成物をアガロースゲル電気泳動によって解析する。QIAquick PCR精製キットを用いて増幅産物を精製する。溶出された試料をプールし、増幅された一次選択DNAの濃度を分光測光法によって測定する。高速真空濃縮器内で1μgに相当するプール内のDNAの容量を5μlに減少させる。1μl(少なくとも200ng)の一次選択物質を二次選択生成物との比較のために取っておく。必要に応じて、さらなる回の溶出試料のアレイハイブリダイゼーションおよび増幅によって、その後の回の増大を行なう。
【0148】
e)マイクロアレイからの放出および支持体上への固定化のための標的オリゴヌクレオチドプローブの調製
プローブをマイクロアレイ上で合成し、次いで、塩基不安定性Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)基を用いて放出する。プローブをビオチンで標識し、次いで、共有結合または非共有結合のための公知の方法を用いてストレプトアビジン固相支持体の表面上に固定する。
【0149】
任意に、固相支持体上への固定化の前に、LM-PCR、Phi29または増幅が助長される挿入配列によって合成プローブの量を増加させる他の増幅ストラテジーを用いて合成プローブを増幅する。次に、この物質は、直接配列決定、アレイ系再配列決定、遺伝子型決定、または液相ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション産物のSA媒介捕捉を使用することによりゲノムの増大領域を標的化する任意の他の遺伝子解析に使用され得る。
【0150】
実施例2 - アレイ標的化再配列決定
ヒトゲノム(配列構築物HG17)(ほぼ5Mbの全配列)に分布する660個の遺伝子から選択した少なくとも500塩基対の6,726個の個々の遺伝子エキソン領域に相当する短セグメントを捕捉する一連の高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを、標準的なRoche NimbleGen,Inc. マイクロアレイ製造プロトコルに従って合成した。アレイ上で各々60塩基を超える重複マイクロアレイプローブが各標的ゲノム領域に存在し、プローブは、ゲノムのフォワード鎖の各10塩基に位置した。
【0151】
高頻度反復ゲノム領域は、捕捉マイクロアレイからの設計によって除外し、マイクロアレイとゲノム核酸分子間の非特異的結合の尤度を減じた。高頻度反復ゲノム領域を同定および排除するためのストラテジーは、WindowMasker プログラム(Morgulis et al.)のものと類似していた。プローブ中に存在するすべての15量体の頻度を、ヒトゲノムにおけるすべての可能な15量体プローブの予備コンピュータ計算頻度ヒストグラムと比較することにより各プローブの平均15量体頻度を計算した。プローブがゲノムの反復性領域を示す尤度は、平均15量体頻度が増加するにつれて増大する。100未満の平均15量体頻度を有するプローブのみが捕捉マイクロアレイ上に含まれた。
【0152】
捕捉系の再現性を試験するため、図2に概略的に示した方法を使用し、まずエキソン設計を用いてヒト細胞株から断片化ゲノムDNAを捕捉した(バーキットリンパ腫、NA04671(Coriell))。簡単に、ゲノムDNA(20μg)をゲノム全体増幅(WGA; Qiagen service(Hilden、Germany)使用)に供した。20μgのゲノム全体増幅(WGA)産物をDNAポリメラーゼI(NEB、Beverly MA)のクレノウ断片で処理し、平滑末端を生成させた。平滑端断片を超音波処理して約500塩基対の断片を生成させ、次いでポリヌクレオチドキナーゼ(NEB)により5’リン酸化した。オリゴヌクレオチドリンカー5’-Pi-GAGGATCCAGAATTCTCGAGTT-3’(配列番号:2)と5’-CTCGAGAATTCTGGATCCTC-3’(配列番号:1)をアニーリングし、5'リン酸化断片の末端に連結した。
【0153】
リンカーが末端にある断片を変性させて単鎖産物を生成し、これを、MAUIハイブリダイゼーションステーション(Roche NimbleGen,Inc.)を用いて活発に混合しながら、1×ハイブリダイゼーションバッファー(Roche NimbleGen,Inc.)の存在下で、42℃でほぼ65時間のハイブリダイゼーション条件下で、捕捉マイクロアレイに曝露した。ハイブリダイズしなかった単鎖分子を、ストリンジェント洗浄条件下、ストリンジェント洗浄バッファー(Roche NimbleGen,Inc.)の3×5分間でマイクロアレイから洗浄し、洗浄バッファーI、II、およびIII(Roche NimbleGen,Inc.)で濯いだ。マイクロアレイ上に捕捉された断片を、2×250μlの95℃の水を用いて直ちに溶出し、乾燥し、事前に連結したリンカーオリゴヌクレオチドに相補的なプライマーを使用するLM-PCRによる増幅のために再懸濁した。
【0154】
エキソン領域の増大を定量するため、8つのランダム領域を定量的PCR(qPCR)のために選択した。これらの領域を以下のプライマー:
領域1 F: 5’-CTACCACGGCCCTTTCATAAAG-3’ (配列番号:3)
R: 5’-AGGGAGCATTCCAGGAGAGAA-3’(配列番号:4)
領域2 F: 5’-GGCCAGGGCTGTGTACAGTT-3’(配列番号:5)
R: 5’-CCGTATAGAAGAGAAGACTCAATGGA-3’(配列番号:6)
領域3 F: 5’-TGCCCCACGGTAACAGATG-3’ (配列番号:7)
R: 5’-CCACGCTGGTGATGAAGATG-3’(配列番号:8)
領域4 F: 5’-TGCAGGGCCTGGGTTCT-3’(配列番号:9)
R: 5’-GCGGAGGGAGAGCTCCTT-3’(配列番号:10)
領域5 F: 5’-GTCTCTTTCTCTCTCTTGTCCAGTTTT-3’(配列番号:11)
R: 5’-CACTGTCTTCTCCCGGACATG-3’(配列番号:12)
領域6 F: 5’-AGCCAGAAGATGGAGGAAGCT-3’(配列番号:13)
R: 5’-TTAAAGCGCTTGGCTTGGA-3’(配列番号:14)
領域7 F: 5’-TCTTTTGAGAAGGTATAGGTGTGGAA-3’(配列番号:15)
R: 5’-CAGGCCCAGGCCACACT-3’(配列番号:16)
領域8 F: 5’-CGAGGCCTGCACAGTATGC-3’(配列番号:17)
R: 5’-GCGGGCTCAGCTTCTTAGTG-3’(配列番号:18)
を用いて増幅した。
【0155】
1回のマイクロアレイ捕捉後、増大増幅試料および断片し、リンカー連結しLM-PCR増幅したが捕捉アレイにハイブリダイズしなかった対照ゲノムDNAを、製造業者のプロトコルに従ってSYBR緑蛍光を測定するABI 7300リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem、Foster City、CA)を用いて比較した。3回複製エキソン捕捉産物で平均378倍増大が達成された。理論最大増大レベルは600倍(ゲノム内3,000Mbおよび5Mbの全配列)であった。
【0156】
捕捉マイクロアレイから溶出された試料を454配列決定適合性リンカーに連結し、ビーズ上でのエマルジョンPCRを用いて増幅し、454 FLX配列決定装置(454、Branford CT)を用いて配列決定した。各配列決定断片もまたマイクロアレイ溶出直後に使用された20bp LM-PCRリンカーを含むため、454の配列決定の読み取りのほとんどが該リンカー配列を含んだ。454 FLX装置での3回反復DNA配列決定により、63Mb、115Mb、および93Mbの全配列が生成した。リンカー配列のインシリコ(in silico)除去後、特有ヒット数が最大となるように調整したe=10-48のカットオフスコアを使用し、BLAST解析(Altschul,et al.,1990、J. Mol. Biol. 215:403-410; 参照によりその全体が本明細書に援用される)を用いて各配列決定の読み取りを適切な型のヒトゲノム全体と比較した。特有の形でゲノムにマッピングし戻されなかった読み取り(10〜20%)を廃棄した。残りを捕捉配列とみなした。元のBLAST比較に従い、標的領域内の領域内マッピングに特有に戻された捕捉配列を配列決定ヒットとみなした。次いで、これらを用いて、標的領域がヒットする読み取りの%、および標的領域全体の配列決定カバー倍数の倍率を計算した。SignalMapソフトウェア(Roche NimbleGen,Inc.)を用いてデータを可視化した。
【0157】
BLAST解析は、読み取りの91%、89%および91%がそれぞれ特有の形でゲノムマッピングに戻され; 75%、65%および77%が標的化領域由来であり、標的配列の96%、93%および95%が、約400倍の平均増大を示す少なくとも1つの配列の読み取りを含む(表1、上側3列)ことを示した。各試料のメジアン塩基あたりのカバー倍数は、それぞれ、5倍、7倍および7倍のカバー倍数であった。
【0158】

【0159】
実施例3 - ゲノム増大および再配列決定によって捕捉された配列の変化
ヒトゲノム内の変化を識別する能力を確認するため、ヒトHapMapコレクション(CEPH/ NA11839、CHB/NA18573、JPT/NA18942、YRI/NA18861、Coriell)の4つの細胞型のゲノムDNA試料を、ゲノムDNAが捕捉前に増幅させたゲノム全体でないこと以外は本明細書に開示したようにして、先の実施例のエキソンアレイ上で捕捉し、溶出し、配列決定した。捕捉の結果(表1の4〜7列目に示す)は、配列カバー倍数が先のものより一貫してより均一であり、WGA中に偏向が導入されたことを示すこと以外、上記のものと同様であった。
【0160】
4つのHapMap試料由来の配列を整理し、変異を同定し、各試料のHapMap SNPデータと比較した(表1および2)。のHapMapプロジェクトにおいて遺伝子型決定された標的領域内位置の総数は、4つのゲノムのそれぞれについて8103(CEU)、8134(CHB)、8134(JPT)、8071(YRI)であった。これらのうち、ほとんど(約6000)の部位は、参照ゲノム対立遺伝子に対してホモ接合性であった。公知のバリアント対立遺伝子(ホモ接合性またはヘテロ接合性)の数を表2の2列目に示す。これらの位置をカバー倍数について、および対立遺伝子(1つまたは複数)が捕捉DNA内に見られるかどうかを決定するために解析した。
【0161】

【0162】
HapMap試料において公知のバリアント位置の94%〜79%が少なくとも1つの配列の読み取りで同定され、これは、全体の配列カバー倍数に基づいて予測された。0、1または>1個の公知のバリアントを含む標的のカバー倍数を比較した場合(それぞれ7.95、8.48および8.82倍のカバー倍数)、捕捉アレイ上に存在しない対立遺伝子に対する明白な偏向はなかった。
【0163】
連続する大きなゲノム領域の解析はかなり興味深い。ヒトBRCA1遺伝子周囲の200kb〜5Mbの単一の長いセグメントを標的化する捕捉マイクロアレイシリーズを、NA04671 DNAを用いて試験した。BRCA1遺伝子座を捕捉するのに使用されるためのアレイシリーズには、BRCA1遺伝子座周囲のサイズが大きくなる5つのゲノム領域(200kb、500kb、1Mb、2Mb、および5Mb)をヒトゲノム配列(構築HG18)から選択した。遺伝子座捕捉アレイの属性を表3に示す。平均プローブタイリング密度は、あるプローブの最初と次のプローブの最初間の平均距離である。
【0164】

【0165】
表4は、すべての捕捉標的が良好に行なわれ、1回の配列決定装置の運転で140Mbまでの未処理配列が生成し、5Mbの捕捉領域で約18倍のカバー倍数が得られたことを示す。図4bは、遺伝子座特異的捕捉および配列決定に関する配列の読み取りマップの詳細を提供する。ライン1はヒト第17染色体上の2000塩基の染色体位置を示し、ライン2は、10塩基対ごとに間隔をあけ、Y軸に沿って交互のプローブの位置を示し、3のチャートは、0〜100パーセントの範囲で示した塩基ごとの配列カバー倍数の倍数を示し、項目4は、454の配列決定の読み取りの最高BLASTスコアの読み取りのマップを示す。図5は、BRCA1 2Mb領域の塩基あたりの累積配列カバー倍数(図5a)および配列カバー倍数ヒストグラム(図4c)を示す。標的配列にマッピングされた読み取りのパーセンテージは、標的領域のサイズとともに増大した。
【0166】

【0167】
これらのデータは、標的化配列を増大するためのマイクロアレイ系直接選択方法の能力を示す。本発明者らは、少なくとも5Mbの全配列を容易に捕捉することができる385,000個のプローブを有するプログラム可能な高密度アレイプラットフォームを使用した。アッセイの特異性に加え、下流のDNA配列決定工程の高収量は、非捕捉DNA供給源を使用する通常の平均性能よりも一貫して優れている。これは、反復配列および混在し得る他の不純物から離れた特有配列の有用な精製を提供する捕捉増大プロセス、例えば、454の配列決定プロセスの最初のエマルジョンPCR工程のためである。
【0168】
実施例4 - 液相捕捉および再配列決定
液相中で増大が有利に行なわれるような固相支持体上で合成され次いで放出される捕捉プローブを用いて実施例2および3の試料を試験した。標準的なマイクロアレイ設計(例えば、BRCA1 200Kタイリングアレイおよび先の実施例のヒトエキソン捕捉アレイ)を、MlyI認識部位を含有する末端15量体プライマー配列を付加することにより変更し、捕捉オリゴヌクレオチド配列はそのままで酵素的プライマー除去を容易にする。
【0169】
最初のT5リンカーの後ろで3’プライマー配列の前に化学的リン酸化試薬(Glen Research)を付加することによりアレイを合成した。アレイからの捕捉プローブのその後の切断が最大となるように3回の個々のカップリングを行なった。
【0170】
アレイに固定された捕捉プローブを30%水酸化アンモニウム(NH4OH、Aldrich)で処理した。合成後、アレイを加湿チャンバ内に配置し、ほぼ700μlのNH4OHを合成領域に周囲の室温で20分間適用し、アレイからプローブを切断した。反応領域と周囲ガラス間の疎水性の差のため、NH4OHは合成領域の範囲内に主に残留した。溶液をピペットを用いて除去し、保持した。さらに700μlの新鮮NH4OHを表面に適用した。このプロセスを合計3回繰り返した(60分間および合計2.1ml)。切断されたオリゴヌクレオチド捕捉プローブを、次いで、当該技術分野で公知の標準的な条件下で真空下、遠心分離によって乾燥した。
【0171】
切断された捕捉プローブを標準的な条件下で増幅した。乾燥プローブを30μlの脱イオン水(diH2O)中に再懸濁し、以下のとおりに30回の個々のPCRの実施に等分した。
【0172】
反応試薬:
10×バッファー 2.5μl
25mM dNTP 0.125μl
20μMプライマー1a 1.25μl
20μMプライマー1b(ビオチン化) 1.25μl
HotStart Taq 0.25μl
MgCl 1μl
試料 1μl
H2O 17.625μl
総容量 25μl
【0173】
プライマー1a:
5’-TGCCGGAGTCAGCGT-3’(配列番号:19)
プライマー1b:
5’-ビオチン-AGTCAGAGTCGCCAC-3’(配列番号:20)
【0174】
反応物を以下のプログラムに従って増幅する。
サイクル回数 変性 アニーリング 重合
1 95℃で15分間
2〜31 95℃で20秒間 48℃で45秒間 72℃で20秒間
【0175】
QiaQuick ヌクレオチド除去キット(Qiagen)を用いて反応成分からPCR産物を精製し、乾燥し、20μlのdiH2O中に再懸濁した。精製後の典型的な収量は、Nanodropによりほぼ400〜700ng/rxnであった。アンプリコンは3%アガロースゲル上で確認され得る。捕捉プローブの量の要件に応じて、さらなる回のPCRを上記のようにして行ない、反応あたりほぼ200ngの試料を生成させた。アンプリコンを上記のようにして精製し、特徴付けした。
【0176】
捕捉プローブの最終回の増幅は、非対称PCRを用いて行なった。プロトコルは、ビオチン化プライマー濃度は同じままで、非ビオチン化プライマー濃度を元の濃度の0.001倍に低下させたこと以外は上記のとおりであった。プロトコルを35サイクルに拡張し、非指数的増幅を可能にした。アンプリコンを乾燥し、20μlのDIH2O中に再懸濁し、特徴付けした。
【0177】
ゲノムDNA試料を標準的なプロトコルに従って調製した。20μgのWGAリンカーを含む試料を100μgのCot-1 DNAと共に乾燥し、7.5μlのハイブリダイゼーションバッファーおよび3μlのホルムアミド中に再懸濁した。捕捉プローブの2μgの等分量を乾燥し、4.5μlのdiH2O中に再懸濁した。試料溶液を捕捉プローブ溶液と混合し、95℃で10分間インキュベートした。混合物を次いでPCRチューブに移し、二本鎖を形成させるためのハイブリダイゼーションのためにサーマルサイクラー内に42℃で3日間配置した。
【0178】
ハイブリダイゼーション後、二本鎖を常磁性ビーズ(Dynal)に結合した。25μlのビーズを2×BWバッファー(10mM TrisHCl、1mM EDTA、2M NaCl)中で3回洗浄し、ビーズをハイブリダイゼーション混合物中に再懸濁した。時々穏やかに混合しながら、42℃で45分間にわたって結合を行なった。
【0179】
結合したビーズを磁石を用いて単離し、40μlの洗浄バッファーIで簡単に洗浄し、47℃のストリンジェント洗浄バッファー中で2×5分間インキュベートし、洗浄バッファーIで周囲の室温でほぼ2分間、洗浄バッファーIIでほぼ1分間、および洗浄バッファーIIIでほぼ30秒間洗浄した。
【0180】
捕捉断片を溶出するため、洗浄バッファーIII中にビーズを含む溶液を1.5mlエッペンドルフチューブに移した。磁石でビーズを単離した。洗浄バッファーを除去し、約100ulの95℃のdiH2Oを添加する。溶液を95℃で5分間インキュベートした後、ビーズを磁石と結合させ、95℃のdiH2Oで穏やかに洗浄した。次いで、洗浄液を除去し、保持し、新鮮な95℃のdiH2Oで置換した。インキュベーションおよび洗浄を合計3回繰り返した(15分間、ほぼ300μlの溶出液)。最後の洗浄後、溶出液を含むエッペンドルフチューブをマグネチックスタンド上にほぼ5分間配置し、溶出中に吸引された全てのビーズを単離する。新たなエッペンドルフチューブ内で高熱で溶液を乾燥した。標準的なLM-PCRの前に、溶出された捕捉断片を263μlのdiH2O中に再懸濁した。
【0181】
LM-PCR後、上記の454 FLX プラットフォームを使用し、捕捉断片を標準的な超深度配列決定に供した。代替的に、454配列決定アダプター配列を増大前試料に連結することによりLM-PCRは回避され得る。その場合、溶出された増大配列は超深度配列決定のためのエマルジョンPCRに直接供給され得る。
【0182】
データにより、読み取りの83.8%が標的領域のマッピングに戻されたことが示され、これは、アレイ系捕捉プロトコルを用いて得られた結果と同等であり、区別がつかない。
【0183】
実施例5-捕捉プローブのインサイチュ増幅を用いた液相捕捉
MlyI(GAGTC(5/5))認識部位を含む末端15量体プライマー配列を付加することにより、標準的なマイクロアレイ設計を変更した。プライマー配列内へのMlyI部位の組み込みにより、捕捉オリゴヌクレオチド配列はそのままで酵素的プライマー除去が容易になる。アレイは、当業者に公知の標準的なマスクレスアレイ合成方法によって合成した。
【0184】
密閉ハイブリダイゼーションチャンバ(Grace Bio-Labs,Inc.,Bend、OR)およびSlide Griddle Adaptor(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用し、サーマルサイクラー内のアレイ上でインサイチュポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて捕捉プローブを増幅した。PCR反応構成成分(25ulの10×ポリメラーゼバッファー、1.25ulの25mM dNTP、各12.5ulの20uM プライマー1aおよび1b、2.5ulのHotstart Taqポリメラーゼ、10ulの25mM MgCl2ならびに176.5ulのdiH2O、250ulの総反応容量)を、マイクロアレイハイブリダイゼーションチャンバに添加し、条件; 100℃で30秒間、97℃で15分間、30サイクルの100℃で30秒間、47.5℃で45秒間、78℃で30秒間を用いてPCRを行なった後、1℃で30秒間反応物を冷却させ、3.5℃で保持した。プライマー配列は、プローブ配列に組み込まれたプライマー結合部位を反映するプライマー1a 5’-TGCCGGAGTCAGCGT-3’(配列番号:19)およびプライマー1b 5’-ビオチン-AGTCAGAGTCGCCAC-3’(配列番号:20)であった。
【0185】
QIAquick(登録商標)ヌクレオチド除去キット(Qiagen,Inc.,Valencia、CA)を用いてポリメラーゼ連鎖反応捕捉プローブアンプリコンを反応成分から精製し、乾燥し、20ulのdiH2O中に再懸濁した。増幅収率は、NanoDrop(登録商標)分光測光法(Thermo Fisher Scientific)によって測定した場合、合計ほぼ5ugであった。上記のプロトコル後、さらなるアンプリコン量が必要である(例えば、上記のプロトコルおよび反応あたり100ngの試料を使用する)場合は、さらなる回数の増幅が行なわれ得る。
【0186】
最終回の捕捉プローブ増幅は、非対称PCR; 2.5ulの10×ポリメラーゼバッファー、0.125ulの25mM dNTP、0.0125ulの20uM プライマー1a、1.25ulの20uM プライマー1b、0.25ulのHotstart Taq、1ulの25mM MgCl2および18.86ulのdiH2O(25ulの全反応容量)を用いて行なった。Qiagen MinEluteTMカラムを用いて反応成分からアンプリコンを精製し、前述のように定量した。
【0187】
ゲノムDNA試料は標準的なプロトコルに従って調製した。リンカーが結合された20ugの試料を100ug Cot-1 DNAとともに乾燥し、7.5ulのハイブリダイゼーションバッファー(Roche NimbleGen、Madison、WI)および3ulのホルムアミド中に再懸濁した。捕捉プローブの1ug等分量を乾燥し、4.5ulのdiH2O中に再懸濁した。試料溶液を95℃で10分間インキュベートしてDNAを変性させ、捕捉プローブ溶液に添加した。混合物をPCRチューブに移し、42℃で3日間サーマルサイクラー内に配置し、二本鎖の形成を行なった。
【0188】
ハイブリダイゼーション後、二本鎖をストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズ(Dynal(登録商標)、Invitrogen、Carlsbad、CA)に結合した。100マイクロリットルのビーズを2×BWバッファー(10mM TrisHCl、1mM EDTA、2M NaCl)で3回洗浄し、ハイブリダイゼーション二本鎖混合物中に再懸濁した。時々穏やかに混合しながら、ビーズと二本鎖間の結合を42℃で45分間にわたって行なった。結合されたビーズを、磁石を用いて単離し、室温で洗浄バッファーI(0.2×SSC、0.2%(v/v)SDS、0.1mM DTT)中で簡単に洗浄した後、200ulのストリンジェント洗浄バッファー(0.1M MES pH 6.65、0.1M NaCl、0.1%Tween 20)中で2回の洗浄(各洗浄は47℃で5分間)、洗浄バッファーI中でのさらなる洗浄を室温で2分間、洗浄バッファーII(0.2×SSC、0.1mM DTT)中、室温で1分間を1回、最後に洗浄バッファーIII(0.05×SSC、0.1mM DTT)中で室温で30秒間洗浄した。
【0189】
捕捉断片をビーズから溶出した。洗浄バッファーIII中の洗浄したビーズの溶液を1.5mlエッペンドルフチューブに移し、磁石でビーズを単離し、洗浄バッファーを除去し、100ulの95℃のdiH2Oで置換し、磁石からビーズを放出させた。懸濁したビーズを95℃で5分間インキュベートした後、ビーズを捕捉し、95℃のdiH2Oで穏やかに洗浄して捕捉断片を溶出した。溶出液を除去し、合計3回の水洗浄で合計10分間ビーズを再度洗浄し、プールされた溶出液の最終容量はほぼ300ulであった。最終の洗浄後、さらなる磁石捕捉および溶出液を新たなチューブに移すことによってプールされた溶出液から残留磁性ビーズを除去した。溶液を乾燥し、捕捉し、その後のLM-PCRに備えて溶出断片を263ulのdiH2O中に再懸濁した。配列5’-CTCGAGAATTCTGGATCC-3’(配列番号:21)のライゲーション物質を使用し、当業者に公知の確立されたプロトコルによってライゲーションを行なった。
【0190】
LM-PCR後、捕捉断片を、454 FLX プラットフォーム(454 Life Sciences、Branford、CT)を使用する超深度配列決定に供した。代替的に、454配列決定アダプター配列を増大前試料に連結することによりLM-PCRは回避され得る。後者の場合、溶出された増大配列は、454 FLXプラットフォームワークフローのエマルジョンPCRに直接添加され得る。
【0191】
図7は、上記の方法を用いて溶液中で捕捉された断片の再配列決定実験を示す。PCR対照プライマー配列を使用するqPCR対照は、4つの対照遺伝子座に対して平均2600倍の増大を示す。qPCR対照プライマー配列:
【0192】
qPCR gSel-0210F GACCCTCTTACCTTGGCATTCTC(配列番号:22)
qPCR gSel-0210R GCTGGTACCCATTGGCAACT(配列番号:23)
qPCR gSel-0271F GGAGTGAGTGGTTTTTCTTCATTTTT(配列番号:24)
qPCR gSel-0271R GCGCCACAAAGAGACATTCA(配列番号:25)
qPCR gSel-0266F AAGGCCATACTTGGGTGAACTG(配列番号:26)
qPCR gSel-0266R GCTCTGATTGGTGGCTTCGT(配列番号:27)
qPCR gSel-0283F TGCTTGCAGGTGTCTCTCAGA(配列番号:28)
qPCR gSel-0283R CAGTGAGATATTTGGTACCATGGTGTA(配列番号:29)
【0193】
実際、再配列決定時に予測されるパーセンテージと、再配列決定時の実際のパーセンテージの一致は、再配列決定したほぼすべての領域でほぼ100%である。
【0194】
本出願において記載したすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に援用される。本発明の記載の方法および組成物の種々の修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に自明である。本発明を特定の好ましい態様に関して記載したが、特許請求の範囲に記載の発明は、かかる特定の態様に不当に限定されるべきでないことを理解されたい。実際、当該関連分野の当業者に自明の本発明を実施するための記載の様式の種々の修正が、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0195】
参考文献




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハイブリダイズする条件下で、核酸分子の集団の断片化され変性された核酸分子を複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブに接触させ、続いてハイブリダイズした分子の複合体を固体支持体に結合させ、前記プローブに特異的にハイブリダイズする核酸分子を捕捉する工程、ここで
前記断片化され変性された核酸分子は約100〜約1000ヌクレオチド残基、好ましくは約250〜約800ヌクレオチド残基、最も好ましくは約400〜約600ヌクレオチド残基の平均サイズを有する、
(b)結合していない核酸および非特異的にハイブリダイズした核酸を捕捉分子から分離する工程、
(c)捕捉分子を固体支持体から溶出する工程、ならびに
(d)溶出された捕捉分子について少なくとも1回のさらなるサイクルのための工程(a)〜(c)を任意に繰り返す工程
を含む、核酸分子の集団の遺伝子複雑性を減少させる方法。
【請求項2】
複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、固体支持体に結合可能な化学基またはリンカーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の前後に、核酸分子の一方または両方、好ましくは両方の末端にアダプター分子を連結する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記(1つまたは複数の)アダプター分子の配列に特異的にハイブリダイズする配列を含む少なくとも1つのプライマーを用いて、前記核酸分子を増幅する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記核酸分子の集団がゲノムDNA分子の集団である、請求項1〜4いずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記固体支持体が核酸マイクロアレイまたはビーズの集団のいずれかである、請求項1〜5いずれかに記載の方法。
【請求項7】
a) i)標的核酸配列にハイブリダイズ可能なハイブリダイゼーションプローブを含む固体支持体、
ii)標的核酸配列を含む核酸試料
を提供する工程、
b) 前記ハイブリダイゼーションプローブを増幅する工程、ここで増幅産物が結合部分を含み、かつ溶液中に維持される、
c) 前記増幅産物と標的核酸配列との間のハイブリダイゼーションが生じることができるように、溶液中で前記核酸試料を前記増幅産物にハイブリダイズさせる工程、
d) 前記結合部分により標的核酸/増幅産物ハイブリダイゼーション複合体を非特異的にハイブリダイズした核酸から分離する工程、ならびに
e)ハイブリダイズした標的核酸配列を複合体から溶出し、それによって複数の核酸配列を単離し、複数の核酸配列の複雑性を減少させる工程
を含む、複数の核酸配列を単離し、複数の核酸配列の複雑性を減少させる方法。
【請求項8】
溶出された標的核酸配列を配列決定する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記固体支持体がマイクロアレイスライドである、請求項7または8いずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記核酸試料が断片化されたゲノムDNA試料である、請求項7〜9いずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記断片化されたゲノムDNA試料がゲノムDNA試料の断片の一方または両方の末端にアダプター分子をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ハイブリダイゼーションプローブが前記プローブの一方または両方の末端にプライマー結合配列をさらに含む、請求項7〜11いずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記プライマー結合配列が、プローブの両方の末端に存在する場合に同一である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記プライマー結合配列が、プローブの両方の末端に存在する場合に異なる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記増幅が指数関数的ポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項7〜14いずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記増幅が非対称的ポリメラーゼ連鎖反応をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記結合部分がビオチン結合部分である、請求項7〜16いずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記分離がストレプトアビジン被覆支持体への前記ビオチン結合部分の結合を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ストレプトアビジン被覆支持体がストレプトアビジン被覆常磁性粒子である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
溶出前に、前記分離された標的核酸/増幅産物ハイブリダイゼーション複合体を洗浄する工程をさらに含む、請求項7〜19いずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記核酸分子の集団または前記複数の核酸配列が、全ゲノムまたは生物の少なくとも1つの染色体または少なくとも約200kb、少なくとも約500kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mb、もしくは少なくとも約5Mbのサイズ、特に約100kb〜約5Mb、約200kb〜約5Mb、約500kb〜約5Mb、約1Mb〜約2Mb、もしくは2Mb〜約5Mbのサイズを有する少なくとも1つの核酸分子を含む、請求項1〜20いずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記プローブが、
-複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロンまたは調節配列を規定する複数のプローブ、
-少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズ、または請求項3に特定される少なくとも1つのサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する複数のプローブ、
-単一塩基多形(SNP)を含むことが公知の部位を規定する複数のプローブ、あるいは
-少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために設計されたアレイ、特にタイリングアレイを規定する複数のプローブ
から選択される、請求項5、6または10〜21いずれかに記載の方法。
【請求項23】
1.請求項1〜22いずれかに記載の方法により核酸分子の集団の遺伝子複雑性を減少させる工程、および
2.特に合成反応による配列決定を行うことにより捕捉分子の核酸配列を決定する工程
を含む、(1つまたは複数の)核酸、特に(1つまたは複数の)ゲノム核酸の少なくとも1つの領域の核酸配列情報を決定する方法。
【請求項24】
1.請求項1〜22いずれかに記載の方法により核酸分子の集団の遺伝子複雑性を減少させる工程、
2.捕捉分子の核酸配列を決定する工程、および
3.決定された配列を、参照ゲノムのデータベースの配列、特に参照ゲノムのバリアントを同定するための参照ゲノムの多形データベースの配列と比較する工程
を含む、参照ゲノムに対するコーディング領域変異を検出する方法。
【請求項25】
-二重鎖アダプター分子、および
-複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを有する固体支持体
を含み、
前記プローブが
-複数の遺伝子座の複数のエキソン、イントロン、または調節配列を規定する複数のプローブ、
-少なくとも100kb、好ましくは少なくとも1Mbのサイズ、または請求項21に特定される少なくとも1つのサイズを有する少なくとも1つの単一遺伝子座の完全配列を規定する複数のプローブ、
-SNPを含むことが公知の部位を規定する複数のプローブ、あるいは
-少なくとも1つの完全染色体の完全配列を捕捉するために設計されたタイリングアレイを規定する複数のプローブ
から選択される、キット。
【請求項26】
2つの異なる二重鎖アダプター分子を含む、請求項25記載のキット。
【請求項27】
前記固体支持体が複数のビーズまたはマイクロアレイのいずれかである、請求項25または26記載のキット。
【請求項28】
DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、T4 DNAリガーゼ、アレイハイブリダイゼーション溶液、アレイ洗浄溶液、および/またはアレイ溶出溶液から選択される少なくとも1つ以上の成分をさらに含む、請求項25〜27いずれかに記載のキット。
【請求項29】
a)結合部分を含み、1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズするために設計され、かつ溶液中に存在する、ハイブリダイゼーションプローブ配列、
b)前記結合部分に結合するための結合パートナーを含む基材、および
c)請求項7記載の方法を行うための説明書
を含む、キット。
【請求項30】
ハイブリダイゼーション溶液、洗浄溶液および溶出溶液の1つ以上をさらに含む、請求項29記載のキット。
【請求項31】
磁石をさらに含む、請求項30記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−500069(P2011−500069A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530331(P2010−530331)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008920
【国際公開番号】WO2009/053039
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】