説明

ゲル状組成物および該ゲル状組成物を含む化粧品

【課題】 キサンタンガムとローカストビーンガムとの併用により得られるゲル強度と高い透明性を維持しつつ、指へのトレが良好で、ソフトな使用感があり肌への伸びもよく、尚且つ温度安定性に優れるゲル状組成物、並びに該ゲル状組成物を含む化粧品等を提供すること。
【解決手段】 キサンタンガム、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラヤガムを含有することを特徴とするゲル状組成物、並びに該ゲル状組成物を含有する化粧品、医薬品及び医薬部外品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品等に好適に使用され得るゲル状組成物に関し、詳しくは、指へのトレが良好で使用感もソフトであり、尚且つ温度安定性に優れるゲル状組成物、並びに該ゲル状組成物を含む化粧品等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、増粘性天然高分子であるキサンタンガムとローカストビーンガムとを併用すると、少量の配合で高い強度と透明度を有するゲル状物質が得られることが知られており(例えば、特許文献1を参照)、ゲル化剤・増粘剤として化粧品をはじめ医薬品、医薬部外品、食品等の分野でよく使用されている。
【0003】
しかしながら、キサンタンガムとローカストビーンガムとの併用は、その高いゲル強度が原因となり得られる組成物がゼリー状になりやすい。その結果、使用の際における指へのトレが悪く、適量を取るのが困難となり、また肌に塗布した時の伸びや広がりも悪くなるといった問題点があった。
【0004】
かかる問題点に対し、例えば特許文献2では、キサンタンガム及び/又はローカストビーンガムに更にペクチンを組合せることによりゲル状化粧料の指へのトレ感の改善を図っているが、本発明者等が実験した結果、かかる技術により得られる効果は必ずしも十分なものではなく、特に指へのトレ感の向上によいとされる組成比においては高温保存性に問題があり、分離しやすいという結果が得られた。
【特許文献1】WO 03/000787A1
【特許文献2】特開2004−137225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑み開発されたものであり、キサンタンガムとローカストビーンガムとの併用により得られるゲル強度と高い透明性を維持しつつ、指へのトレが良好で、ソフトな使用感があり肌への伸びもよく、尚且つ温度安定性に優れるゲル状組成物、並びに該ゲル状組成物を含む化粧品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等がかかる実情に鑑み鋭意検討した結果、キサンタンガムとローカストビーンガムの併用系に更に特定の増粘性天然高分子を組合せることにより、上記問題点が解決され、使用時における指へのトレが良好でソフトな使用感があり、且つ温度安定性にも優れる化粧品等の提供が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明により、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びカラヤガムを含有することを特徴とするゲル状組成物が提供される。
【0008】
本発明の一態様において、前記キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びカラヤガムの配合率は、組成物全質量に対して、各々0.1〜3.0質量%、0.05〜2.0質量%、0.05〜3.0質量%である。
【0009】
また、本発明の他の態様において、前記キサンタンガム及びローカストビーンガムの合計配合量と、カラヤガムの配合量との質量比は、1:0.03〜0.05:1である。
【0010】
また、本発明の他の態様において、前記キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びカラヤガムの配合率の合計は、組成物全質量に対して0.3〜5.0質量%である。
【0011】
更に、本発明により、前記本発明のゲル状組成物を含む化粧品、医薬品又は医薬部外品が提供される。
【0012】
なお、本発明において「ゲル状」とはゲル化の前段階である増粘状態も含む広い意味において用いられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によりローカストビーンガムとキサンタンガム併用系における利点を生かしつつ問題点が解決された結果、適度なゲル強度を有して指へのトレ感が良好であり、ソフトな使用感を有し、更に温度安定性にも優れた化粧品、医薬品、医薬部外品の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ローカストビーンガム、キサンタンガム、及びカラヤガムを含有するゲル状組成物であり、粘性を付与するために増粘性天然高分子であるローカストビーンガムおよびキサンタンガムの公知の併用系に、更にカラヤガムを組み合わせたことを特徴とする。かかる3成分の併用により、キサンタンガムとローカストビーンガムとの併用により得られるゲル強度と高い透明性を維持しつつ、使用時における指へのトレが良好となり、更にソフトな使用感が得られることが本発明者等により見出された。また、後掲の実施例で実証している通り、本発明のゲル状組成物は高温での保存安定性にも優れる。このような本発明のゲル状組成物は、優れた使用感と保存安定性が求められる化粧品、医薬品及び医薬部外品として好適に利用することができる。
【0015】
以下、本発明において用いられる増粘性天然高分子について説明する。
まず、(A)キサンタンガムは、キサントモナス属菌を炭水化物で培養したときに菌体外に産生される鎖状多糖類であり、市販品としては、例えばケルザン(三晶社製)、エコーガム(大日本製薬社製)等を使用することができる。その好適な配合率は、ゲル特性及び指へのトレ感、温度安定性等の観点より、好ましくは組成物全質量に対して0.1〜3.0質量%であり、より好ましくは0.2〜2.0質量%である。配合率が0.1質量%未満では安定したゲルを得ることが困難となり、一方3.0質量%を超えるとソフトな使用感が得にくくなり好ましくない。
【0016】
次に、(B)ローカストビーンガムは、マメ科植物カロブ樹の種子の胚乳部分等から得られる水溶性の多糖類であり、D−グルコースとD−マンノースを主成分としたものが一般的である。市販品としては、例えばネオソフトL−16(太陽化学社製)、メイプロLBG(三晶社製)等を使用することができる。その好適な配合率は、ゲル特性及び指へのトレ感、温度安定性等の観点より、好ましくは組成物全質量に対して0.05〜2.0質量%であり、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。ソフトな使用感を得る上で配合率が0.05質量%以上であることが好ましく、一方2.0質量%を超えると安定したゲルを得ることが困難となり好ましくない。
【0017】
そして、(C)カラヤガムは、カラヤの幹から得られる水溶性高分子である。市販品としては、例えば、カラヤガムA粉末(五協産業社製)等を使用することができる。その好適な配合率は、ゲル特性及び指へのトレ感、温度安定性等の観点より、好ましくは組成物全質量に対して0.05〜3.0質量%であり、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
【0018】
更に、本発明において、(A)キサンタンガム及び(B)ローカストビーンガムの合計配合量と、(C)カラヤガムの配合量との質量比、すなわち(A)+(B):(C)は、1:0.03〜0.05:1であることが好ましい。上述したように、本発明は、キサンタンガム及びローカストビーンガムの併用系に更にカラヤガムを組合せて使用したことにより、キサンタンガム及びローカストビーンガムの併用による利点を維持しつつ、高いゲル強度による指へのトレ感の問題点を改善したことを特徴とするものであるところ、3成分に関する質量比(A)+(B):(C)を上記範囲とすることにより、指へのトレが一層良好となると共に高温安定性の観点からも好ましいことが本発明者等により見出された。
【0019】
また、本発明において、(A)キサンタンガム、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラヤガムの配合率の合計は、ゲル特性及び指へのトレ感、温度安定性等の観点より、組成物全質量に対して0.3〜5.0質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明のゲル状組成物は、上記水溶性天然高分子成分(A)、(B)及び(C)に加え、安定性を損なわない範囲において更に公知の増粘性合成高分子を用いることも可能である。また、本発明のゲル状組成物は化粧品、医薬品、医薬部外品等に用いられ、通常化粧品や医薬品等の分野で配合され得る他の成分をその用途に応じ本発明の効果が損なわれない範囲で配合して用いることができる。更に、形態や剤型は特に限定されるものではなく、例えば化粧品においては化粧水、乳液、クリーム、パック等に利用することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す組成物の配合率はすべて質量%である。
【0022】
(実施例1〜4及び比較例1〜6)
表1に示す組成を有するゲル状組成物を下記手順に従い製造し、これらについて指へのトレ、使用感及び高温での保存安定性について評価した。結果を表1に併せて示す。
【0023】
(製法)
1.実施例1〜3及び比較例1〜4
表1に示す配合率において全成分を加熱溶解後、冷却することによりゲル状組成物を得た。
【0024】
2.比較例5及び6
表1に示す配合率において、
(i) 成分(1)、(2)、(4)及び(6)を(7)で湿潤させた。
【0025】
(ii) (i)で得られた混合物に(8)を加えて加熱溶解後、冷却した。
【0026】
(iii) (ii)で得られた混合物に(5)を加えてホモミキサーにかけ、ゲル状組成物を得た。
【0027】
(評価方法)
[指へのトレ、ソフトな使用感](製造1日後)
非常に良好:◎
良好 :○
やや不良 :△
不良 :×
[高温での保存安定性]
1ヶ月間50℃で放置した後の保存安定性を、目視と指へのトレについて判断した。指へのトレについては上記と同様の評価方法に従い、目視については下記の評価方法に従い行った。
【0028】
良好 :○
粘度が変化(低下又は上昇):△
分離 :×
【表1】

【0029】
表1より、本発明のゲル状組成物は、指へのトレが良好で、ソフトな使用感を有し、更に高温での保存安定性にも優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガム、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラヤガムを含有することを特徴とするゲル状組成物。
【請求項2】
(A)キサンタンガム、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラヤガムの配合率が、組成物全質量に対して下記範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のゲル状組成物:
(A)キサンタンガム 0.1〜3.0質量%
(B)ローカストビーンガム 0.05〜2.0質量%
(C)カラヤガム 0.05〜3.0質量%。
【請求項3】
(A)キサンタンガム及び(B)ローカストビーンガムの合計配合量と、(C)カラヤガムの配合量との質量比、(A)+(B):(C)が、1:0.03〜0.05:1であることを特徴とする、請求項1に記載のゲル状組成物。
【請求項4】
(A)キサンタンガム、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラヤガムの配合率の合計が、組成物全質量に対して0.3〜5.0質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゲル状組成物を含む化粧品、医薬品又は医薬部外品。

【公開番号】特開2008−106000(P2008−106000A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290297(P2006−290297)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(505443160)株式会社 サティス製薬 (5)
【出願人】(594095958)
【Fターム(参考)】