説明

ゲートバルブ装置

【課題】ラジカルの攻撃によるシール部材の劣化を防止すると同時に、かつ電磁波(マイクロ波)の漏洩を防止することができるゲートバルブ装置を提供する。
【解決手段】第1弁座36と第2弁座38とを有し、開口部28が形成された弁箱26と、開口部28を閉塞したときに、第1弁座36に接触して開口部28をシールするシール部材46を有する弁体30と、を備えたゲートバルブ装置10であって、弁体30に、当該弁体30が開口部28を閉塞したときに、第2弁座38に接触して撓み変形し、開口部28とシール部材46との間の空間を遮断する遮蔽部材58を設け、常温環境下及び高温環境下において、弁体30が開口部を閉塞している状態で遮蔽部材58が撓み変形しており、遮蔽部材58と第2弁座38との接触状態を維持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被処理体に対して所定の処理を行う処理チャンバに用いられるゲートバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体製造装置等の処理チャンバ内では、成膜、エッチング、洗浄等の各処理のために、プラズマによって化合物を分解する方法が多用されている。そして、プラズマによって化合物を分解すると、ラジカル(遊離基。不対電子を持った原子)が生成する。ラジカルは、熱エネルギを持ち、非常に反応性が高く、真空チャンバの壁面に数回衝突しても、その熱エネルギを失う傾向がなく、パッキン等のシール部材の重合状態を分解させ、シール部材を劣化させる。
【0003】
ここで、従来のゲートバルブ装置の一例として、弁体の同一面上に複数のシール部材を備えたものが知られている(下記特許文献1参照)。シール部材は、外側に位置するシールリングと、内側に位置する補助リングと、で構成されており、弁体が閉塞するときに、弁座からシールリングに作用する押圧力を補助リングが調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−228043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のゲートバルブ装置は、フッ素樹脂製の補助リングは弾性や柔軟性がないため、弁座面へ当接して荷重が加わると、補助リングが磨耗してパーティクルが発生する問題が生じていた。また、補助リングが摩耗すると、補助リングの本来の機能を発揮することができなくなるため、シールリングの一部が開口部内部に露出することになる。それにより、露出したシールリングの一部がラジカルにより攻撃されて劣化する。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、ラジカルの攻撃によるシール部材の劣化を防止すると同時に、かつ電磁波(マイクロ波)の漏洩を防止することができるゲートバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1発明は、第1弁座と第2弁座とを有し、開口部が形成された弁箱と、前記開口部を閉塞する弁体と、前記弁体に装着され、当該弁体が前記開口部を閉塞したときに、前記第1弁座に接触して前記開口部をシールするシール部材と、前記弁体に装着され、当該弁体が前記開口部を閉塞したときに、前記第2弁座に接触して前記開口部と前記シール部材との間の空間を遮断する遮蔽部材と、を備えたゲートバルブ装置であって、前記遮蔽部材は、金属製の薄板にフッ素系樹脂が被覆されていることを特徴とする。
【0008】
本願第1発明によれば、弁体が第1弁座及び第2弁座に着座して開口部を閉塞したときに、シール部材が第1弁座に接触し、遮蔽部材が第2弁座に接触して撓み変形する。これにより、遮蔽部材により弁箱の開口部とシール部材との間の空間が遮断される。このため、弁箱の外部から開口部を通って進入したラジカルが遮蔽部材により遮断されるため、シール部材に到達することができなくなり、シール部材に対するラジカルの攻撃を防止できる。この結果、ラジカルの攻撃によるシール部材の劣化を防止できる。
【0009】
特に、遮蔽部材が撓み変形しながら第2弁座に接触することにより、弁体に作用する押圧力の誤差や、弁体(シール部材や遮蔽部材も含む)及び弁箱などの寸法の誤差が生じた場合でも、その誤差を吸収することができる。この結果、遮蔽部材と第2弁座との接触状態が確実になるため、シール部材の劣化を防止できる。
【0010】
さらに、常温環境下及び高温環境下において、弁体が開口部を閉塞している状態で、遮蔽部材の撓み変形が生じている。これにより、高温環境下でゲートバルブ装置を使用する場合に、シール部材の熱膨張により弁体が移動した場合でも、遮蔽部材と第2弁座とが離間することがなく、両者が接触している状態を維持できる。この結果、高温環境下においても、遮蔽部材によりラジカルを遮断でき、ラジカルの攻撃からシール部材を保護することができる。
【0011】
なお、本明細書において、「常温環境下」とは、5℃以上35℃以下の範囲を示すものであり、特に、20℃以上30℃以下の温度を想定している。また、「高温環境下」とは、150℃以上250℃以下の範囲を示すものであり、特に、180℃以上220℃以下の温度を想定している。
【0012】
そして、遮蔽部材は金属製の薄板にフッ素系樹脂が被覆されているため、遮蔽部材がラジカルから攻撃を受けた場合でも劣化することを防止できる。
【0013】
また、弁箱及び遮蔽部材は、導電性部材で構成されているため、導電性を有することになる。このため、遮蔽部材が弁箱の弁座に接触すると、導電性の部材同士が電気的に接続された状態になる。この結果、処理チャンバ内で発生した電磁波が処理チャンバから外部へ漏洩することを防止できる。
【0014】
さらに、この遮蔽部材は熱伝導性に優れるため、弁箱から弁体へ熱が伝導され、弁箱と弁体との温度差を小さくする事ができる。この結果、反応性生物が弁体へ付着しやすくなることを防止でき、弁体開閉時の摩擦や振動により、付着した反応性生物が剥離飛散し、パーティクルの発生原因を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ラジカルの攻撃によるシール部材の劣化を防止すると同時に、かつ電磁波(マイクロ波)の漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るゲートバルブ装置の取り付け状態を示す拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るゲートバルブ装置の要部を示す部分拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るゲートバルブ装置の弁体の正面図である。
【図4】OPEN状態における本発明の一実施形態に係るゲートバルブ装置の弁体の位置を示す断面図である。
【図5】図4の状態から90度回転した状態(開口部に対向した状態)における本発明の一実施形態に係るゲートバルブ装置の弁体の位置を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るゲートバルブ装置の弁体により開口部を閉塞した状態の弁体の位置を示す断面図である。
【図7】(A)は、常温環境下においてゲートバルブ装置の弁体が弁箱の弁座に着座して開口部を閉塞した状態の部分的な断面図であり、(B)は、高温環境下においてゲートバルブ装置の弁体が弁箱の弁座に着座して開口部を閉塞した状態の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態に係るゲートバルブ装置について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1乃至図4に示すように、処理チャンバ12を区画する側壁16には、半導体ウエーハを通過させて搬出入させる細長い処理チャンバ側開口部18が形成され、また、処理チャンバ12と連通可能な搬送室14を区画する側壁20にも搬送室側開口部24が形成されている。そして、ゲートバルブ装置10は、例えば、アルミニウム、鉄、銅などの良導電性の材質(伝導性)よりなる略直方体状の弁箱26を有している。
【0019】
弁箱26の一の側壁には、処理チャンバ12内に連通する細長い開口部28が形成されている。弁箱26の開口部28の近傍には、弁体30に装着されたシール部材46が着座する第1弁座36と、弁体30に装着された遮断部材58が着座する第2弁座38と、が形成されている。具体的には、第2弁座38は、第1弁座36の内側(開口部28側)の位置であって第1弁座36よりも処理チャンバ側開口部18側に突出した位置に形成されている。第1弁座36及び第2弁座38は、平面状に形成されており、第2弁座38と第1弁座36との境界には側壁としての段差部40が形成されている。なお、弁箱26と上記処理チャンバ12及び搬送室14との接合面には、Oリング42、44がそれぞれ介在されて気密性を保持できるようになっている。
【0020】
なお、第1弁座36及び第2弁座38は、所定の表面処理(アルマイト処理)が施されていることが好ましい。これにより、弁体30が第1弁座36及び第2弁座38に着座することによる磨耗を防止することができる。なお、第1弁座36及び第2弁座38を研磨処理することにより対応してもよい。
【0021】
弁箱26内には、弁体30とこの弁体30を駆動する弁体駆動機構74が設けられており、必要に応じて弁体30が開口部28を閉塞して気密にシールできるようになっている。なお、上記開口部28と処理チャンバ側開口部18とは一体的に連通されているので、上記開口部28を開閉することにより処理チャンバ側開口部18も開閉されることになる。
【0022】
ここで、弁体30には、開口部28を閉塞したときに弁箱26の第1弁座36に対向する第1面32と、第1面32の中央部から突出するように形成され、開口部28を閉塞したときに第2弁座38に対向する第2面34と、がそれぞれ形成されている。第1面32には、シール部材46を装着するための装着溝48が形成されている。この装着溝48には、弾性体であるシール部材46が装着されている。
【0023】
なお、シール部材46は、フッ素ゴム(FKM)や、パーフルオロエラストマ(FFKM)など、で構成されている。シール部材46がフッ素ゴム(FKM)で構成されていることにより、耐熱性及び耐油性の機能を持たせることができる。また、シール部材46がパーフルオロエラストマ(FFKM)で構成されていることにより、耐熱性と耐薬品性の機能を持たせ、ラジカルに強い性質(耐ラジカル性)にすることができる。
【0024】
弁体30の第2面34の中央部には、穴部50が形成されている。この穴部50には、スペーサ52が装着されている。スペーサ52が穴部50に装着された状態では、スペーサ52の先端部が第2面34から突出した状態になっている。スペーサ52の中央部には、ネジ68の軸部72(図1では図示省略、図4参照)が貫通する貫通孔54が形成されている。また、穴部50には、ネジ68の軸部72が螺合する螺合溝56が連通して形成されている。
【0025】
スペーサ52の上部には、遮断部材58が配置されている。遮断部材58は、導電性を有する金属(例えば、アルミニウム、鉄、銅など)からなり、所定の圧力を受けることにより撓み変形する。なお、遮断部材58は、薄い板状の部材が好ましく、薄い板状の部材が波型形状のものでもよい。遮断部材58には、ネジ68の軸部72が貫通する貫通孔60(図1では図示省略、図4参照)が形成されている。また、遮断部材58の上面には、固定部材62が配置されている。換言すれば、遮断部材58は、スペーサ52と固定部材62とにより挟持(所謂、サンドイッチ構造)されている。固定部材62には、ネジ68の軸部72が貫通する貫通孔64(図1では図示省略、図4参照)と、貫通孔64に連通しネジ68のヘッド部70(図1では図示省略、図4参照)が着座する凹部66(図1では図示省略、図4参照)と、が形成されている。
【0026】
なお、遮断部材58の表面には、フッ素系樹脂が塗布又は融着されている。このように、遮断部材58がフッ素系樹脂により表面を被覆されることにより、遮断部材58がプラズマやラジカルの作用を受けて劣化することを防止できる。
【0027】
図4に示すように、固定部材62の貫通孔64には、ネジ68が挿入される。ネジ68は、良導電性である金属で構成されており、ヘッド部70と、軸部72と、を有している。ネジ68が固定部材62の貫通孔64に挿入して螺合溝56と螺合した状態では、ネジ68のヘッド部70が固定部材62の凹部66に着座して、軸部72が固定部材62の貫通孔64を貫通した状態になる。また、ネジ68の軸部72は、遮断部材58の貫通孔60とスペーサ52の貫通孔54を通って、螺合溝56に螺合している。このようにして、遮断部材58は、弁体30のシール部材46よりも弁体中心側(内側)に位置する部位に、強固に取り付けられている。
【0028】
ここで、遮断部材58が弁体30に取り付けられた状態では、遮断部材58の上面は、固定部材62の下面と接触しており、遮断部材58の下面は、第2面34と所定の距離だけ離間している。すなわち、常温環境下において弁体30が開口部28を閉塞したときに、遮断部材58は第1弁座36から圧力を受けて第2面34側に撓み変形するが、このときの遮断部材58の撓み変形を干渉せず、かつ撓み変形量を吸収することができるように、遮断部材58と弁体30の第2面34との間は所定の距離だけ離れた状態になっている。
【0029】
なお、スペーサ52及び固定部材62は、遮断部材58と同様に、良伝導性となる金属(例えば、アルミニウム、鉄、銅など)で構成されている。
【0030】
シール部材46は、弁箱26の第1弁座36に対して所定の圧力で押圧した状態で接触することにより、この反作用として第1弁座36から受ける反作用力(シール反力)により弾性変形(圧縮変形)する。このため、シール部材46によって開口部28を気密にシールすることができる。
【0031】
また、同時に、遮断部材58は、弁箱26の第2弁座38に対して所定の圧力で押圧した状態で接触することにより、この反作用として第2弁座38から受ける反作用力(シール反力)により撓み変形(弾性変形)する。
【0032】
図1に示すように、弁体30の長手方向両端部近傍には、弁体30を弁箱26に対して回動させ又は径方向に移動させるための弁体駆動機構74が取り付けられている。ここで、弁体30を駆動させる弁体駆動機構74の構成について説明する。
【0033】
図1及び図2に示すように、弁体駆動機構74は、弁体30の長手方向両端部に取り付けられた支持部76を備えている。この支持部76は、中空状に形成されている。支持部76は、弁箱26の軸受部90により回動可能となるように支持されている。また、支持部76の内側には、軸受部を介して偏心シャフト78が回動可能となるように配置されている。この偏心シャフト78は、シャフト本体部78Aと、シャフト本体部78Aの中心(軸心)から所定の距離だけ離れた部位に中心が位置する偏心軸部78Bと、で構成されている。この偏心軸部78Bの外周には、すべり軸受けを介してローラ80が配置されており、径方向に延びる支持片82が取り付けられている。すなわち、この支持片82には、ローラ80が挿入される挿入部84が形成されており、このローラ80を介して偏心軸部78Bが回動可能に接続された構成となっている。上記した支持片82の径方向外側端部は、弁体30と接続されている。なお、支持片82と弁体30とは、ビスやネジなどの固着具により接続されている。また、支持部76には、支持片82の外周を囲むと共に、弁体30が径方向外側に移動する際に伸び、弁体30が径方向内側に移動する際に縮むベローズ86が取り付けられている。
【0034】
さらに、弁箱26には、駆動モータ88が取り付けられている。この駆動モータ88は、正方向及び逆方向に回転するモータ回転軸88Aを備えている。このモータ回転軸88Aは偏心シャフト78のシャフト本体部78Aに接続されており、モータ回転軸88Aの回転により偏心シャフト78を一方向又は逆方向に回動することができるようになっている。
【0035】
次に、本実施形態のゲートバルブ装置10の作用について説明する。図1及び図4に示すように、本実施形態の作用では、常温環境下(例えば、25℃)において、弁体30が開口部28と90度対向する面にある弁箱26の側壁92と対向する位置にある状態(OPEN状態)を基準に説明する。
【0036】
図1及び図4に示すように、弁体30が側壁92と対向する位置にある状態(OPEN状態)では、偏心シャフト78の偏心軸部78Bは、回動中心を基準として側壁92側と反対側(径方向内側)に位置している。
【0037】
次に、図5に示すように、駆動モータ88が駆動されると、支持部76が偏心シャフト78とともに略90度回動し、弁体30は、開口部28に対向する位置に移動する。
【0038】
図6に示すように、図5に示す略90度の位置から駆動モータ88のモータ回転軸88Aが正方向にさらに回転されると、偏心シャフト78は駆動モータ88の回転駆動力を受けることになるため、偏心シャフト78のみが回動する。偏心シャフト78が図5に示す90度の位置から180度だけ回転すると、偏心シャフト78の偏心軸部78Bは、その偏心量×2倍の距離(偏心軸部78Bの直径寸法に相当)だけ開口部28側に移動する。これにより、弁体30の第1面32が開口部28近傍の第1弁座36に着座し、弁体30の第2面34が開口部28近傍の第2弁座38に着座して、開口部28が閉塞される(CLOSE時状態)。
【0039】
ここで、図7(A)に示すように、弁体30の第1面32が開口部28近傍の第1弁座36に着座し、弁体30の第2面34が開口部28近傍の第2弁座38に着座して、開口部28が閉塞された状態では、弁体30の各面32、34から各弁座36、38に対して所定の圧力が作用している。このため、第1面32に設けられたシール部材46は、第1弁座36からの反作用力を受けて弾性変形(圧縮変形)する。また同時に、遮断部材58の外側端部には、第2弁座38から反作用力を受ける。このため、遮断部材58には、いわゆる両端支持梁において中央部から開口部28側に向けて圧力を作用させ、両端部には第2弁座38から反作用力を受ける力学状態が成立する。このため、遮断部材58の端部は、第2面34側に撓み変形(曲げ変形)し、第2面34側に近づくように変形する。このとき、遮断部材58は、撓み変形しつつも、遮断部材58の端部と第2弁座38とが確実に接触した状態になっている。
【0040】
一方、図7(B)に示すように、高温環境下(例えば、200℃)において、シール部材46は、熱膨張により体積が増大しているため、第1弁座36から作用するシール反力が大きくなり、弾性変形量が大きくなる。このため、弁体30は、径方向内側(弁箱26の内側)に向かって僅かに移動する。このとき、遮断部材58は、弁体30と共に径方向内側に向かって移動する。これにより、遮断部材58の撓み変形が解消する方向へ向かうが、わずかに歪み変形を残しているため、遮断部材58の端部と第2弁座38との接触状態が維持される。このようにして、高温環境下(例えば、200℃)においても、シール部材46が第1弁座36と接触し、遮断部材58が第2弁座38と接触した状態になる。
【0041】
次に、弁体30が開口部28に着座して開口部28が閉塞された状態から開口部28を開放する場合には、駆動モータ88のモータ回転軸88Aを逆方向に回転させて偏心シャフト78を逆方向に回転させる。偏心シャフト78を逆方向に180度回転させると、偏心シャフト78の偏心軸部78Bは、その偏心量×2倍の距離(偏心軸部78Bの直径寸法に相当)だけ開口部28側と反対側(径方向内側)に移動して、図5に示す90度の位置に戻る。これにより、開口部28は開放される。
【0042】
図5に示す90度の位置から駆動モータ88のモータ回転軸88Aをさらに逆方向にさらに回転させると、偏心シャフト78は支持部76とともに所定の方向に回動する。そして、支持部76は、偏心シャフト78とともに90度だけ回動して、図4に示す位置に戻る。これにより、弁体30は、側壁92と対向する位置に移動する。
【0043】
次に、本発明の一実施形態のゲートバルブ装置10の作用及び効果について説明する。
【0044】
図7(A)に示すように、常温環境下(例えば、25℃)では、弁体30のシール部材46が弁箱26の第1弁座36に対して所定の圧力を作用させ、遮断部材58が第2弁座38に対して所定の圧力を作用させる形で接触する。そして、遮断部材58は、第2弁座38からの反作用力を受けて撓み変形し、遮断部材58と第2弁座38とは確実に接触した状態になっている。このため、処理チャンバ12で発生したラジカルが開口部28から弁箱26の内部に進入しようとした場合でも、遮断部材58により行く手を遮られるため、遮断部材58から弁箱26内部への進入が阻止される。このように、シール部材46と開口部28との間の空間が遮断部材58により完全に遮断され、シール部材46と開口部28との連通状態が阻止されるため、遮断部材58よりも弁箱26の内部側に配置されているシール部材46にラジカルが到達せず、シール部材46に対するラジカルの攻撃を阻止することができる。この結果、シール部材46がラジカルからの攻撃を受けて劣化することを未然に防止できる。
【0045】
特に、遮断部材58の表面は、フッ素系樹脂により被覆(コーティング)されているため、プラズマやラジカルの作用を受けて腐食することを防止できる。また、弁箱26の第1弁座36及び第2弁座38は、所定の表面処理(アルマイト処理)が施されているため、弁体30が第1弁座36及び第2弁座38に着座することによる磨耗を防止することができる。
【0046】
さらに、シール部材46をフッ素ゴム(FKM)やパーフルオロエラストマ(FFKM)で構成することにより、より高いラジカル耐性を持たせ、長寿命化を実現できる。
【0047】
また、遮断部材58、弁箱26、スペーサ52及び固定部材62は、良伝導性となる金属(例えば、アルミニウム、鉄、銅など)で構成されていると、遮断部材58が弁箱26の第2弁座38に接触すると、導電性の部材同士が電気的に接続された状態(良好な電気的接続)になる。このため、ウエーハ処理中に処理チャンバ内で発生した電磁波(マイクロ波)が処理チャンバから外部へ漏洩することを防止できる。さらに、遮断部材58が良伝導性となる金属(例えば、アルミニウム、鉄、銅など)で構成されていると、熱伝導性にも優れるため、弁箱26から弁体30へ熱が伝導され、弁箱26と弁体30との温度差を小さくすることができる。この結果、反応性生物が弁体30へ付着しやすくなることを防止でき、弁体開閉時の摩擦や振動により、付着した反応性生物が剥離飛散し、パーティクルの発生原因を抑制できる。
【0048】
一方、図7(B)に示すように、高温環境下(例えば、200℃)では、上述したように、第1弁座36からシール部材46に対する反力が大きくなり、弁体30が弁箱26の内部側に向かって僅かに移動する。この環境下では、遮断部材58の撓み変形が解消する方向に向かう。しかしながら、遮断部材58の端部と第2弁座38とは依然として接触状態が維持されているため、プラズマやラジカルからシール部材46に対する攻撃を阻止することができる。また同時に、遮断部材58と弁箱26とは、電気的に接続された状態が維持されているため、電磁波が処理チャンバから外部へ漏洩することを防止できる。
【0049】
このように、常温環境下(例えば、25℃)においても、高温環境下(例えば、200℃)においても、遮蔽部材58を撓み変形させておくことができる。これにより、高温環境下でゲートバルブ装置10を使用する場合に、シール部材46の熱膨張により弁体30が弁箱26内部側に移動した場合でも、遮断部材58と第2弁座38とが離間することがなく、両者が接触している状態を維持できる。この結果、高温環境下においても、遮断部材58によりラジカルを遮断することができ、ラジカルの攻撃からシール部材46を保護することができる。また、遮断部材58と弁箱26との電気的接続状態を維持することができるため、電磁波の漏洩を防止できる。
【0050】
以上のように、本実施形態のゲートバルブ装置10によれば、ラジカルの攻撃が原因となるシール部材46の劣化を防止できる。これにより、シール部材46のメンテナンス頻度や交換頻度を少なくすることができる。この結果、ゲートバルブ装置10のメンテナンスに割く時間を大幅に短縮でき、ゲートバルブ装置10の使用効率を高めることができる。
【0051】
また、電磁波の漏洩を防止できるため、処理チャンバ12の出力幅を広げることができる。これにより、処理チャンバ12内部において製膜処理を効率的に行うことができ、処理効率及び歩留まりを向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 ゲートバルブ装置
26 弁箱
28 開口部
30 弁体
36 第1弁座
38 第2弁座
46 シール部材
58 遮断部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1弁座と第2弁座とを有し、開口部が形成された弁箱と、
前記開口部を閉塞する弁体と、
前記弁体に装着され、当該弁体が前記開口部を閉塞したときに、前記第1弁座に接触して前記開口部をシールするシール部材と、
前記弁体に装着され、当該弁体が前記開口部を閉塞したときに、前記第2弁座に接触して前記開口部と前記シール部材との間の空間を遮断する遮蔽部材と、
を備えたゲートバルブ装置であって、
前記遮蔽部材は、金属製の薄板にフッ素系樹脂が被覆されていることを特徴とするゲートバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−236661(P2010−236661A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87140(P2009−87140)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】