コアシェル粒子の製造方法
【課題】 様々な種類のコアシェル粒子を効率良く製造することができるコアシェル粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 第一金属イオンが含有される第一金属イオン溶液に、0.3W/cm2以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程と、前記コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、当該混合溶液に前記第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、前記第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程とを含むことを特徴とする。
【解決手段】 第一金属イオンが含有される第一金属イオン溶液に、0.3W/cm2以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程と、前記コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、当該混合溶液に前記第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、前記第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程とを含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題が大きくクローズアップされてきている。燃料電池は、高いエネルギー変換効率を有する上に、CO2の排出削減に寄与するだけでなく、酸性雨の原因や大気汚染の原因となるNOx、SOx、塵埃等の排出がほとんどないクリーンな電池である。さらに、静粛性も高いという利点がある。そのため、燃料電池は、21世紀に最適なエネルギー変換装置として一部実用化されつつある。特に、燃料電池の中でも固体高分子形燃料電池(PEFC)は、作動温度が低くかつ出力密度が高いため、小型化が可能であるという長所を持っている。
【0003】
図5は、固体高分子形燃料電池の一例を示す断面図である。
固体高分子形燃料電池は、高分子固体電解質膜1を中心として酸素極2と水素極3とで挟んだ構成を有する。高分子固体電解質膜1は、例えば、炭素繊維性の多孔性クロス基材上に、高分子固体電解質を含むスラリーを塗布し、次いで焼成することにより得られたイオン交換膜である。
そして、酸素極2の外側の中央部は、集電体6に担持されるとともに、水素極3の外側の中央部は、集電体7に担持されている。集電体6は、良電導性かつ耐食性を有する材料からなり、通常、黒鉛、チタン、ステンレス等で形成されている。
【0004】
酸素極2の外側の周縁部には、枠形状のガスケット4の内側が接触し、さらにガスケット4の外側には、複数の凹部を内側の中央部に有するフレーム8の内側の突出周縁部が接触している。これにより、フレーム8の内側と酸素極2の外側との間に、複数の凹部に対応するように複数の酸素極室9が形成されている。また、フレーム8は、内側と外側とを貫通するように酸素極室9に連結する酸素ガス供給口12と、内側と外側とを貫通するように酸素極室9に連結する未反応酸素ガス及び生成水取出口13とを有する。
一方、水素極3の外側の周縁部には、枠形状のガスケット5の内側が接触し、さらにガスケット5の外側には、複数の凹部を内側の中央部に有するフレーム10の内側の突出周縁部が接触している。これにより、フレーム10の内側と水素極3の外側との間に、複数の凹部に対応するように複数の水素極室11が形成されている。また、フレーム10は、内側と外側とを貫通するように水素極室11に連結する水素ガス供給口14と、内側と外側とを貫通するように水素極室11に連結する未反応水素ガス取出口15とを有する。
【0005】
このような酸素極2と水素極3とには、高い触媒活性を示す白金微粒子を担体に担持した触媒が通常使用される。そして、白金微粒子の製造方法としては、例えば、電着法、スパッタ法、白金錯体含浸−還元熱分解法、アルコール還元法、ホウ化水素還元法、酸化物気相還元法等の種々の方法が挙げられる。
ところで、このような固体高分子形燃料電池の普及を妨げる一因として、価格が高いことが挙げられている。特に、酸素極2と水素極3とに使用される白金は、極めて高価である。
【0006】
そこで、固体高分子形燃料電池の酸素極2と水素極3とにおいて、平均粒径3nmの白金微粒子が使用されているが、反応に寄与する白金は、表面層のみであることが知られているので、粒径を小さくすることにより比表面積を増大させることが行われている。
しかしながら、粒径が小さい白金微粒子は分散させることが難しく、非常に凝集しやすいため、粒径をさらに小さくしても表面積を効果的に大きくすることは困難である。
よって、コア粒子の表面のみを白金で構成したコアシェル粒子も注目されており、コアシェル粒子及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、超微粒子の製造方法の一つとして、金属イオンを含む水溶液に超音波を照射して超微粒子を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このような超微粒子の製造方法では、0.3W/cm2以上の超音波は、気体を溶存した液体中で空洞現象によって気泡(キャビテーションバブル)を発生し、キャビテーションバブルが圧壊するときは局部的に高温高圧になるため、音ルミネセンス或いはNo2−、No3−、H2O2等を生ずる化学反応をおこしたり、その他乳化作用等を生じさせたりするという特性を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−289208号公報
【特許文献2】特許第3725743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような超音波を照射する超微粒子の製造方法で得られる超微粒子は、Ag,Pt,Pd,Au,Rh等の単一粒子であるか、若しくは、中心部(コア)がAuであり外周部(シェル)がPdであるコアシェル粒子であるかのごく限られたものであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子以外の様々な種類のコアシェル粒子を効率良く製造することができるコアシェル粒子の製造方法について検討を行った。
まず、Au3+イオンとPd2+イオンとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とが含有される水溶液に、4.2W/cm2(140W)の超音波を照射した。その結果、特許文献2に記載されたとおり、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子(比較例1)を得た。
なお、図6は、比較例に係るコアシェル粒子のTEM写真である。図6では中心部と周辺部とのコントラストが異なっている。
次に、Au3+イオンとドデシル硫酸ナトリウムとが含有される水溶液に、4.2W/cm2(140W)の超音波を照射することにより、コア粒子とするAu粒子が分散されたAu粒子分散液を得た後、Au粒子分散液にPd2+イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に4.2W/cm2(140W)の超音波を照射した。その結果、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子を得られると当初考えていたが、予想に反してAuPd合金粒子(比較例2)を得た。
【0011】
さらに、Au3+イオンとポリエチレングリコールモノステアレート(PEG−MS)とが含有される水溶液に、4.2W/cm2(140W)の超音波を照射することにより、コア粒子とするAu粒子が分散されたAu粒子分散液を得た後、Au粒子分散液にPd2+イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に4.2W/cm2(140W)の超音波を照射した。その結果、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子を得られると当初考えていたが、コアのAuをPdが完全には覆わなかった。(比較例3)
【0012】
よって、コア粒子とするAu粒子が再溶解しないように、超音波の出力を変化させることにした。そこで、Au3+イオンとポリエチレングリコールモノステアレート(PEG−MS)とが含有される水溶液に4.2W/cm2(140W)の超音波を照射することにより、コア粒子とするAu粒子が分散されたAu粒子分散液を得た後、Au粒子分散液にPd2+イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に1.2W/cm2(40W)の超音波を照射した。その結果、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子(実施例1)を得ることができた。
なお、図1は、実施例1に係るコアシェル粒子のTEM写真である。図1では中心部と周辺部とのコントラストが異なっている。また、図2は、EDSによる実施例1に係るコアシェル粒子の分析結果である。粒子の中心部付近にはAu元素が多く存在する。一方、粒子の外周部にはAu元素が存在せず、Pd元素のみが存在する。
【0013】
さらに、コア粒子を作製した後、シェルを形成する際には、超音波の出力を種々に変化させてみた。具体的には、混合溶液に1.2W/cm2(40W)の超音波を照射する代わりに、1.8W/cm2(60W)の超音波を照射したもの(実施例2)や、2.4W/cm2(80W)の超音波を照射したもの(実施例3)や、3.6W/cm2(120W)の超音波を照射したもの(実施例4)等を得た。
図3は、吸光度スペクトルを示すグラフである。図3に示すように、超音波の出力を下げれば下げるほど、Au元素を示すピークがなくなった。
これにより、コア粒子を作製した後、シェルを形成する際には、Au粒子を作製する際に照射した超音波の出力より低い出力で、超音波を照射することにより、Au粒子が再溶解しないで、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子を作製することができることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明のコアシェル粒子の製造方法は、第一金属イオンが含有される第一金属イオン溶液に、0.3W/cm2以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程と、前記コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、当該混合溶液に前記第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、前記第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程とを含むようにしている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のコアシェル粒子の製造方法によれば、コア粒子が再溶解しないので、様々な種類のコアシェル粒子を効率良く製造することができる。
【0016】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明のコアシェル粒子の製造方法は、前記第一金属イオン溶液は、ノニオン系界面活性剤を含有するようにしている。
さらに、本発明のコアシェル粒子の製造方法は、前記第一金属イオン溶液の溶媒は、水であるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係るコアシェル粒子のTEM写真。
【図2】EDSによる実施例1に係るコアシェル粒子の分析結果を示す図。
【図3】実施例1〜実施例4に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図4】実施例5及び実施例6に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図5】固体高分子形燃料電池の一例を示す断面図。
【図6】比較例1に係るコアシェル粒子のTEM写真。
【図7】比較例1に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図8】比較例2に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図9】比較例3に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0019】
実施形態に係るコアシェル粒子の製造方法は、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程(A)と、コアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程(B)とを含む。
【0020】
(A)コア粒子作製工程
第一金属イオンと界面活性剤とが含有される第一金属イオン溶液に、不活性ガスにより脱気した後、0.3W/cm2(10W)以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得る。
上記第一金属としては、例えば、Pt,Pd,Ir,Rh,Au,Ru,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Re,Os等が挙げられ、各々の金属元素の無機塩或いは錯塩等であってよい。例えば、NaAuCl4、PdCl2、H2PtCl6等が挙げられる。そして、第一金属イオン溶液における第一金属イオンの濃度は、0.1mmol/L以上1mmol/L以下であることが好ましい。
上記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等が挙げられる。例えば、アニオン系界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等であり、アノニオン系界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)等である。そして、第一金属イオン溶液における界面活性剤の濃度は、0.1mmol/L以上であることが好ましい。
【0021】
上記第一金属イオン溶液の溶媒は、第一金属を溶解し第一金属イオンを生成することができれば、特に限定されず、また、1種のみでも2種以上の混合物でもよい。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、アミルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0022】
上記不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス等が挙げられる。
上記超音波の第一出力は、0.3W/cm2(10W)以上であることが好ましく、3W/cm2(100W)以上であることがより好ましい。また、上記超音波の周波数は、200kHz程度であることが好ましく、上記超音波の照射時間は、10分以上であることが好ましい。そして、超音波発生器としては、例えば、チタンサンバリウムを振動子として用いたもの等が利用できる。なお、超音波照射による温度の上昇を防ぐために、系は水冷としてもよい。
【0023】
このようなコア粒子作製工程を実行すると、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得ることができる。このとき、第一金属の粒子の粒子径は、特に限定されないが、0.3nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上20nm以下であることがより好ましい。
【0024】
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に不活性ガスで脱気した後、第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得る。
上記第二金属としては、例えば、Pt,Pd,Ir,Rh,Au,Ru,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Re,Os等が挙げられ、各々の金属元素の無機塩或いは錯塩等であってよい。例えば、NaAuCl4、PdCl2、H2PtCl6等が挙げられる。そして、混合溶液における第二金属イオンの濃度は、1mmol/L以下であることが好ましい。
【0025】
上記超音波の第二出力は、第一出力より低くなればよいが、0.3W/cm2以上第一出力未満であることが好ましく、0.3W/cm2以上2.4W/cm2(80W)以下であることがより好ましく、0.3W/cm2以上1.2W/cm2(40W)以下であることが特に好ましい。また、上記超音波の周波数は、200kHz程度であることが好ましく、上記超音波の照射時間は、出来るだけ低出力で時間をかけた方がよく、数10分以上であることが好ましい。そして、超音波発生器としては、例えば、チタンサンバリウムを振動子として用いたもの等が利用できる。なお、超音波照射による温度の上昇を防ぐために、系は水冷としてもよい。
【0026】
このようなコアシェル粒子作製工程を実行すると、第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得ることができる。このとき、コア粒子に形成される第二金属の厚さは、特に限定されないが、0.3nm以上50nm以下であることが好ましく、20nm以上30nm以下であることがより好ましい。
そして、得られたコアシェル粒子分散液は、そのまま用いることもできるし、或いは、ウルトラフィルター等を用いてコアシェル粒子をろ過し、必要に応じて洗浄、溶媒置換した分散液とした後、用いることもできるし、或いは、溶媒を除去、乾燥することによって粉末状のコアシェル粒子として用いることもできる。
【0027】
以上のように、本発明のコアシェル粒子の製造方法によれば、様々な種類のコアシェル粒子を効率良く製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0029】
<実施例1>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
(A)コア粒子作製工程
0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oと0.4mmolのPEG−MS(分子量2044.98)とが含有される60mlの第一金属イオン水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を10分照射することにより、Au粒子が分散されたコア粒子分散液を得た。
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に10mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oが含有される3mlの水溶液を混合して混合溶液とし、混合溶液にArガスで脱気した後、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を75分照射することにより、実施例1に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0030】
<実施例2>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、1.8W/cm2(60W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るコアシェル粒子分散液を得た。
<実施例3>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、2.4W/cm2(80W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係るコアシェル粒子分散液を得た。
<実施例4>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、3.6W/cm2(120W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0031】
<比較例1>AuをコアとしPdをシェルとした粒子
0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oと0.4mmolのSDSと10mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oとが含有される63mlの水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を85分照射することにより、比較例1に係る粒子分散液を得た。
【0032】
<比較例2>AuPd粒子
(A)コア粒子作製工程
0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oと0.4mmolのSDSとが含有される60mlの第一金属イオン水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を10分照射することにより、Au粒子が分散されたコア粒子分散液を得た。
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に10mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oが含有される3mlの水溶液を混合して混合溶液とし、混合溶液にArガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を75分照射することにより、比較例2に係る粒子分散液を得た。
<比較例3>AuPd粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る粒子分散液を得た。
【0033】
<実施例5>PdをコアとしAuをシェルとしたコアシェル粒子
(A)コア粒子作製工程
0.5mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oと0.4mmolのPEG−MS(分子量2044.98)とが含有される60mlの第一金属イオン水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を10分照射することにより、Pd粒子が分散されたコア粒子分散液を得た。
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oが含有される3mlの水溶液を混合して混合溶液とし、混合溶液にArガスで脱気した後、0.6W/cm2(20W)、周波数200kHzの超音波を75分照射することにより、実施例5に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0034】
<実施例6>PdをコアとしAuをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oが含有される水溶液を混合する代わりに、1.0mmolのNaAuCl4・2H2Oが含有される水溶液を混合したこと以外は実施例5と同様にして、実施例6に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0035】
<物性評価>
吸光度測定装置(島津製作所製)を用いて、実施例1〜6及び比較例1〜3に係る粒子分散液の吸光度スペクトルを測定した。その結果を図3、図4、図7、図8及び図9に示す。なお、図3は、実施例1〜実施例4に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図4は、実施例5及び実施例6に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図7は、比較例1に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図8は、比較例2に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図9は、比較例3に係る吸光度スペクトルを示すグラフである。
以上のように、本発明のコアシェル粒子の製造方法によれば、実施例1〜実施例4のようにAuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子や、実施例5及び実施例6のようにPdをコアとしAuをシェルとしたコアシェル粒子を効率良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、コアシェル粒子の製造等に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 高分子固体電解質膜
2 酸素極
3 水素極
4、5 ガスケット
6、7 集電体
8、10 フレーム
9 酸素極室
11 水素極室
12 酸素ガス供給口
13 未反応酸素ガス及び生成水取出口
14 水素ガス供給口
15 未反応水素ガス取出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題が大きくクローズアップされてきている。燃料電池は、高いエネルギー変換効率を有する上に、CO2の排出削減に寄与するだけでなく、酸性雨の原因や大気汚染の原因となるNOx、SOx、塵埃等の排出がほとんどないクリーンな電池である。さらに、静粛性も高いという利点がある。そのため、燃料電池は、21世紀に最適なエネルギー変換装置として一部実用化されつつある。特に、燃料電池の中でも固体高分子形燃料電池(PEFC)は、作動温度が低くかつ出力密度が高いため、小型化が可能であるという長所を持っている。
【0003】
図5は、固体高分子形燃料電池の一例を示す断面図である。
固体高分子形燃料電池は、高分子固体電解質膜1を中心として酸素極2と水素極3とで挟んだ構成を有する。高分子固体電解質膜1は、例えば、炭素繊維性の多孔性クロス基材上に、高分子固体電解質を含むスラリーを塗布し、次いで焼成することにより得られたイオン交換膜である。
そして、酸素極2の外側の中央部は、集電体6に担持されるとともに、水素極3の外側の中央部は、集電体7に担持されている。集電体6は、良電導性かつ耐食性を有する材料からなり、通常、黒鉛、チタン、ステンレス等で形成されている。
【0004】
酸素極2の外側の周縁部には、枠形状のガスケット4の内側が接触し、さらにガスケット4の外側には、複数の凹部を内側の中央部に有するフレーム8の内側の突出周縁部が接触している。これにより、フレーム8の内側と酸素極2の外側との間に、複数の凹部に対応するように複数の酸素極室9が形成されている。また、フレーム8は、内側と外側とを貫通するように酸素極室9に連結する酸素ガス供給口12と、内側と外側とを貫通するように酸素極室9に連結する未反応酸素ガス及び生成水取出口13とを有する。
一方、水素極3の外側の周縁部には、枠形状のガスケット5の内側が接触し、さらにガスケット5の外側には、複数の凹部を内側の中央部に有するフレーム10の内側の突出周縁部が接触している。これにより、フレーム10の内側と水素極3の外側との間に、複数の凹部に対応するように複数の水素極室11が形成されている。また、フレーム10は、内側と外側とを貫通するように水素極室11に連結する水素ガス供給口14と、内側と外側とを貫通するように水素極室11に連結する未反応水素ガス取出口15とを有する。
【0005】
このような酸素極2と水素極3とには、高い触媒活性を示す白金微粒子を担体に担持した触媒が通常使用される。そして、白金微粒子の製造方法としては、例えば、電着法、スパッタ法、白金錯体含浸−還元熱分解法、アルコール還元法、ホウ化水素還元法、酸化物気相還元法等の種々の方法が挙げられる。
ところで、このような固体高分子形燃料電池の普及を妨げる一因として、価格が高いことが挙げられている。特に、酸素極2と水素極3とに使用される白金は、極めて高価である。
【0006】
そこで、固体高分子形燃料電池の酸素極2と水素極3とにおいて、平均粒径3nmの白金微粒子が使用されているが、反応に寄与する白金は、表面層のみであることが知られているので、粒径を小さくすることにより比表面積を増大させることが行われている。
しかしながら、粒径が小さい白金微粒子は分散させることが難しく、非常に凝集しやすいため、粒径をさらに小さくしても表面積を効果的に大きくすることは困難である。
よって、コア粒子の表面のみを白金で構成したコアシェル粒子も注目されており、コアシェル粒子及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、超微粒子の製造方法の一つとして、金属イオンを含む水溶液に超音波を照射して超微粒子を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このような超微粒子の製造方法では、0.3W/cm2以上の超音波は、気体を溶存した液体中で空洞現象によって気泡(キャビテーションバブル)を発生し、キャビテーションバブルが圧壊するときは局部的に高温高圧になるため、音ルミネセンス或いはNo2−、No3−、H2O2等を生ずる化学反応をおこしたり、その他乳化作用等を生じさせたりするという特性を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−289208号公報
【特許文献2】特許第3725743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような超音波を照射する超微粒子の製造方法で得られる超微粒子は、Ag,Pt,Pd,Au,Rh等の単一粒子であるか、若しくは、中心部(コア)がAuであり外周部(シェル)がPdであるコアシェル粒子であるかのごく限られたものであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子以外の様々な種類のコアシェル粒子を効率良く製造することができるコアシェル粒子の製造方法について検討を行った。
まず、Au3+イオンとPd2+イオンとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とが含有される水溶液に、4.2W/cm2(140W)の超音波を照射した。その結果、特許文献2に記載されたとおり、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子(比較例1)を得た。
なお、図6は、比較例に係るコアシェル粒子のTEM写真である。図6では中心部と周辺部とのコントラストが異なっている。
次に、Au3+イオンとドデシル硫酸ナトリウムとが含有される水溶液に、4.2W/cm2(140W)の超音波を照射することにより、コア粒子とするAu粒子が分散されたAu粒子分散液を得た後、Au粒子分散液にPd2+イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に4.2W/cm2(140W)の超音波を照射した。その結果、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子を得られると当初考えていたが、予想に反してAuPd合金粒子(比較例2)を得た。
【0011】
さらに、Au3+イオンとポリエチレングリコールモノステアレート(PEG−MS)とが含有される水溶液に、4.2W/cm2(140W)の超音波を照射することにより、コア粒子とするAu粒子が分散されたAu粒子分散液を得た後、Au粒子分散液にPd2+イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に4.2W/cm2(140W)の超音波を照射した。その結果、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子を得られると当初考えていたが、コアのAuをPdが完全には覆わなかった。(比較例3)
【0012】
よって、コア粒子とするAu粒子が再溶解しないように、超音波の出力を変化させることにした。そこで、Au3+イオンとポリエチレングリコールモノステアレート(PEG−MS)とが含有される水溶液に4.2W/cm2(140W)の超音波を照射することにより、コア粒子とするAu粒子が分散されたAu粒子分散液を得た後、Au粒子分散液にPd2+イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に1.2W/cm2(40W)の超音波を照射した。その結果、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子(実施例1)を得ることができた。
なお、図1は、実施例1に係るコアシェル粒子のTEM写真である。図1では中心部と周辺部とのコントラストが異なっている。また、図2は、EDSによる実施例1に係るコアシェル粒子の分析結果である。粒子の中心部付近にはAu元素が多く存在する。一方、粒子の外周部にはAu元素が存在せず、Pd元素のみが存在する。
【0013】
さらに、コア粒子を作製した後、シェルを形成する際には、超音波の出力を種々に変化させてみた。具体的には、混合溶液に1.2W/cm2(40W)の超音波を照射する代わりに、1.8W/cm2(60W)の超音波を照射したもの(実施例2)や、2.4W/cm2(80W)の超音波を照射したもの(実施例3)や、3.6W/cm2(120W)の超音波を照射したもの(実施例4)等を得た。
図3は、吸光度スペクトルを示すグラフである。図3に示すように、超音波の出力を下げれば下げるほど、Au元素を示すピークがなくなった。
これにより、コア粒子を作製した後、シェルを形成する際には、Au粒子を作製する際に照射した超音波の出力より低い出力で、超音波を照射することにより、Au粒子が再溶解しないで、AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子を作製することができることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明のコアシェル粒子の製造方法は、第一金属イオンが含有される第一金属イオン溶液に、0.3W/cm2以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程と、前記コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、当該混合溶液に前記第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、前記第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程とを含むようにしている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のコアシェル粒子の製造方法によれば、コア粒子が再溶解しないので、様々な種類のコアシェル粒子を効率良く製造することができる。
【0016】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明のコアシェル粒子の製造方法は、前記第一金属イオン溶液は、ノニオン系界面活性剤を含有するようにしている。
さらに、本発明のコアシェル粒子の製造方法は、前記第一金属イオン溶液の溶媒は、水であるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係るコアシェル粒子のTEM写真。
【図2】EDSによる実施例1に係るコアシェル粒子の分析結果を示す図。
【図3】実施例1〜実施例4に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図4】実施例5及び実施例6に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図5】固体高分子形燃料電池の一例を示す断面図。
【図6】比較例1に係るコアシェル粒子のTEM写真。
【図7】比較例1に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図8】比較例2に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【図9】比較例3に係る吸光度スペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0019】
実施形態に係るコアシェル粒子の製造方法は、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程(A)と、コアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程(B)とを含む。
【0020】
(A)コア粒子作製工程
第一金属イオンと界面活性剤とが含有される第一金属イオン溶液に、不活性ガスにより脱気した後、0.3W/cm2(10W)以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得る。
上記第一金属としては、例えば、Pt,Pd,Ir,Rh,Au,Ru,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Re,Os等が挙げられ、各々の金属元素の無機塩或いは錯塩等であってよい。例えば、NaAuCl4、PdCl2、H2PtCl6等が挙げられる。そして、第一金属イオン溶液における第一金属イオンの濃度は、0.1mmol/L以上1mmol/L以下であることが好ましい。
上記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等が挙げられる。例えば、アニオン系界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等であり、アノニオン系界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)等である。そして、第一金属イオン溶液における界面活性剤の濃度は、0.1mmol/L以上であることが好ましい。
【0021】
上記第一金属イオン溶液の溶媒は、第一金属を溶解し第一金属イオンを生成することができれば、特に限定されず、また、1種のみでも2種以上の混合物でもよい。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、アミルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0022】
上記不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス等が挙げられる。
上記超音波の第一出力は、0.3W/cm2(10W)以上であることが好ましく、3W/cm2(100W)以上であることがより好ましい。また、上記超音波の周波数は、200kHz程度であることが好ましく、上記超音波の照射時間は、10分以上であることが好ましい。そして、超音波発生器としては、例えば、チタンサンバリウムを振動子として用いたもの等が利用できる。なお、超音波照射による温度の上昇を防ぐために、系は水冷としてもよい。
【0023】
このようなコア粒子作製工程を実行すると、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得ることができる。このとき、第一金属の粒子の粒子径は、特に限定されないが、0.3nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上20nm以下であることがより好ましい。
【0024】
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、混合溶液に不活性ガスで脱気した後、第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得る。
上記第二金属としては、例えば、Pt,Pd,Ir,Rh,Au,Ru,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ag,W,Re,Os等が挙げられ、各々の金属元素の無機塩或いは錯塩等であってよい。例えば、NaAuCl4、PdCl2、H2PtCl6等が挙げられる。そして、混合溶液における第二金属イオンの濃度は、1mmol/L以下であることが好ましい。
【0025】
上記超音波の第二出力は、第一出力より低くなればよいが、0.3W/cm2以上第一出力未満であることが好ましく、0.3W/cm2以上2.4W/cm2(80W)以下であることがより好ましく、0.3W/cm2以上1.2W/cm2(40W)以下であることが特に好ましい。また、上記超音波の周波数は、200kHz程度であることが好ましく、上記超音波の照射時間は、出来るだけ低出力で時間をかけた方がよく、数10分以上であることが好ましい。そして、超音波発生器としては、例えば、チタンサンバリウムを振動子として用いたもの等が利用できる。なお、超音波照射による温度の上昇を防ぐために、系は水冷としてもよい。
【0026】
このようなコアシェル粒子作製工程を実行すると、第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得ることができる。このとき、コア粒子に形成される第二金属の厚さは、特に限定されないが、0.3nm以上50nm以下であることが好ましく、20nm以上30nm以下であることがより好ましい。
そして、得られたコアシェル粒子分散液は、そのまま用いることもできるし、或いは、ウルトラフィルター等を用いてコアシェル粒子をろ過し、必要に応じて洗浄、溶媒置換した分散液とした後、用いることもできるし、或いは、溶媒を除去、乾燥することによって粉末状のコアシェル粒子として用いることもできる。
【0027】
以上のように、本発明のコアシェル粒子の製造方法によれば、様々な種類のコアシェル粒子を効率良く製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0029】
<実施例1>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
(A)コア粒子作製工程
0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oと0.4mmolのPEG−MS(分子量2044.98)とが含有される60mlの第一金属イオン水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を10分照射することにより、Au粒子が分散されたコア粒子分散液を得た。
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に10mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oが含有される3mlの水溶液を混合して混合溶液とし、混合溶液にArガスで脱気した後、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を75分照射することにより、実施例1に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0030】
<実施例2>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、1.8W/cm2(60W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係るコアシェル粒子分散液を得た。
<実施例3>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、2.4W/cm2(80W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係るコアシェル粒子分散液を得た。
<実施例4>AuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、3.6W/cm2(120W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0031】
<比較例1>AuをコアとしPdをシェルとした粒子
0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oと0.4mmolのSDSと10mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oとが含有される63mlの水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を85分照射することにより、比較例1に係る粒子分散液を得た。
【0032】
<比較例2>AuPd粒子
(A)コア粒子作製工程
0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oと0.4mmolのSDSとが含有される60mlの第一金属イオン水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を10分照射することにより、Au粒子が分散されたコア粒子分散液を得た。
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に10mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oが含有される3mlの水溶液を混合して混合溶液とし、混合溶液にArガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を75分照射することにより、比較例2に係る粒子分散液を得た。
<比較例3>AuPd粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、1.2W/cm2(40W)、周波数200kHzの超音波を照射する代わりに、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を照射したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る粒子分散液を得た。
【0033】
<実施例5>PdをコアとしAuをシェルとしたコアシェル粒子
(A)コア粒子作製工程
0.5mmolのPdCl2・2NaCl・3H2Oと0.4mmolのPEG−MS(分子量2044.98)とが含有される60mlの第一金属イオン水溶液に、Arガスで脱気した後、4.2W/cm2(140W)、周波数200kHzの超音波を10分照射することにより、Pd粒子が分散されたコア粒子分散液を得た。
(B)コアシェル粒子作製工程
コア粒子分散液に0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oが含有される3mlの水溶液を混合して混合溶液とし、混合溶液にArガスで脱気した後、0.6W/cm2(20W)、周波数200kHzの超音波を75分照射することにより、実施例5に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0034】
<実施例6>PdをコアとしAuをシェルとしたコアシェル粒子
コアシェル粒子作製工程(B)で、0.5mmolのNaAuCl4・2H2Oが含有される水溶液を混合する代わりに、1.0mmolのNaAuCl4・2H2Oが含有される水溶液を混合したこと以外は実施例5と同様にして、実施例6に係るコアシェル粒子分散液を得た。
【0035】
<物性評価>
吸光度測定装置(島津製作所製)を用いて、実施例1〜6及び比較例1〜3に係る粒子分散液の吸光度スペクトルを測定した。その結果を図3、図4、図7、図8及び図9に示す。なお、図3は、実施例1〜実施例4に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図4は、実施例5及び実施例6に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図7は、比較例1に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図8は、比較例2に係る吸光度スペクトルを示すグラフであり、図9は、比較例3に係る吸光度スペクトルを示すグラフである。
以上のように、本発明のコアシェル粒子の製造方法によれば、実施例1〜実施例4のようにAuをコアとしPdをシェルとしたコアシェル粒子や、実施例5及び実施例6のようにPdをコアとしAuをシェルとしたコアシェル粒子を効率良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、コアシェル粒子の製造等に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 高分子固体電解質膜
2 酸素極
3 水素極
4、5 ガスケット
6、7 集電体
8、10 フレーム
9 酸素極室
11 水素極室
12 酸素ガス供給口
13 未反応酸素ガス及び生成水取出口
14 水素ガス供給口
15 未反応水素ガス取出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一金属イオンが含有される第一金属イオン溶液に、0.3W/cm2以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程と、
前記コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、当該混合溶液に前記第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、前記第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程とを含むことを特徴とするコアシェル粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第一金属イオン溶液は、ノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第一金属イオン溶液の溶媒は、水であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項1】
第一金属イオンが含有される第一金属イオン溶液に、0.3W/cm2以上となる第一出力の超音波を照射することにより、第一金属の粒子が分散されたコア粒子分散液を得るコア粒子作製工程と、
前記コア粒子分散液に第二金属イオンを混合して混合溶液とし、当該混合溶液に前記第一出力より低くなる第二出力の超音波を照射することにより、前記第一金属をコアとし第二金属をシェルとしたコアシェル粒子が分散されたコアシェル粒子分散液を得るコアシェル粒子作製工程とを含むことを特徴とするコアシェル粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第一金属イオン溶液は、ノニオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第一金属イオン溶液の溶媒は、水であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【図2】
【図5】
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図5】
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−184478(P2012−184478A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49108(P2011−49108)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.刊行物に発表 発行者名 社団法人日本金属学会 刊行物名 「日本金属学会2010年秋期(第147回)大会 講演概要」 発行年月日 平成22年 9月25日
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.刊行物に発表 発行者名 社団法人日本金属学会 刊行物名 「日本金属学会2010年秋期(第147回)大会 講演概要」 発行年月日 平成22年 9月25日
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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