説明

コア巻線用治具およびコア巻線方法

【課題】小型化、省スペース化を図り、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現するコア巻線用治具を得ることを目的とする。
【解決手段】コア巻線用治具10は、T型部21に導電線40を巻回する際に用いる治具である。コア巻線用治具10は、T型部21を着脱自在に支持するコア挿入穴11aと、コア挿入穴11aの周囲に設けられ導電線40の端が接続される端子ピンを着脱自在に支持する複数の端子挿入穴11bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子のコアに導電線を巻回する際に用いるコア巻線用治具、およびこのコア巻線用治具を用いて行うコア巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子のコアに巻線する方法においては、例えば、端子台付ボビンを用いて行い、まず端子台付ボビンに導電線を巻回してボビン組立体を作製し、このボビン組立体をコアに装着するという方法にて行っていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3665585号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子においては、小型化、省スペース化が要求されるとともに、部品点数の削減やコスト削減の要求も高い。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化、省スペース化を図り、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現するコア巻線用治具およびコア巻線方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のコア巻線用治具は、コアに導電線を巻回する際に用いるコア巻線用治具であって、コアを着脱自在に支持するコア支持部と、コア支持部の周囲に設けられ導電線の端が接続される端子ピンを着脱自在に支持する複数の端子支持部とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコア巻線方法は、コアを着脱自在に支持するコア支持部と、コア支持部の周囲に設けられ導電線の端が接続される端子ピンを着脱自在に支持する複数の端子支持部とを有するコア巻線用治具を用いたコア巻線方法であって、コア支持部にコアを挿入するコア挿入工程と、端子支持部に端子ピンを挿入するピン挿入工程と、コアに導電線を巻回する巻回工程と、導電線の端を端子ピンに接続する端子接続工程と、導電線が巻装されたコアをコア巻線用治具から取り外す取外工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコア巻線用治具およびコア巻線方法によれば、ボビン等を使用することなく、導電線をコアに直接容易に巻回することができるので、小型化、省スペース化を図り、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明にかかるコア巻線用治具およびコア巻線方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態)
図1は本発明にかかるコア巻線用治具の実施の形態を示す斜視図である。図1において、概略矩形平板状のコア巻線用治具10は、中央部に設けられたコア挿入穴(コア支持部)11aと、コア挿入穴11aの周囲に設けられた端子挿入穴(端子支持部)11bとを有している。本実施の形態においては、コア挿入穴(コア支持部)11aは、平板状の治具本体11の第一面(上面)に矩形凹部として形成されている。また、端子挿入穴(端子支持部)11bは、治具本体11の第一面のコア挿入穴11aの周囲に小穴として形成され、矩形のコア挿入穴11aの長辺沿って概略等間隔に整列している。
【0011】
図2は本実施の形態において対象とするコアの斜視図である。図2において、本実施の形態において対象とするコア20は、分割された2つの部分である概略T字型を成すT型部21と概略C型を成すC型部22とから構成され、フェライトや圧粉磁芯等の磁性部材で形成されている。T型部21は、巻線が巻回される被巻回部である円柱状の中脚部21aと、この中脚部21aを中央部に立設する長尺平板状の延長部21bとから成る。C型部22は、矩形状の一対の側脚部22a,22aと、この2つの側脚部22a,22aを繋ぐ連結部22bとから成る。そしてこのT型部21とC型部22とを対向させて合わせることで、側脚部22a,22aと延長部21bと連結部22bとで構成される矩形枠状部の内側に中脚部21aを有するコア20が構成されている。つまり、コア20は、中脚部(被巻回部)21aが、覆われるものがないように且つ外方に向かって突出するように、2つに分割されている。
【0012】
図3はコア巻線用治具10にコア20のT型部21および最初の2本の端子ピンを挿入しようとする様子を示す斜視である。図4はコア巻線用治具10へのT型部21および端子ピンの挿入が完了した様子を示す斜視である。コア巻線用治具10のコア挿入穴11aに、分割されたコア20のT型部21が挿入される。また、端子挿入穴11bには、巻線の両端部が絡げられる端子ピン31,32が挿入される。端子ピン31,32は、実装基板に実装される端子ピンが使用される。端子挿入穴11bは、巻線の両端部を絡げやすいように、端子ピン31,32を中脚部21aの軸線と平行に支持する。コア巻線用治具10の端子挿入穴11bの設けられる位置は、コア20が搭載される図示しない実装基板における端子ピンが配置される位置(端子ピン穴位置)と対応するようにされている。そして、端子挿入穴11bは、種々のタイプの実装基板の端子ピン穴位置に対応可能なように、これら対象とする実装基板の端子ピン穴位置を網羅するよう多数個が形成されており、この中から任意の端子挿入穴11bが選択されて端子ピン31,32が挿入される。
【0013】
次ぎにコア巻線用治具10を用いたコア巻線方法について説明する。図3および図4に示すように、まず、コア20の分割された片方であるT型部21を、コア巻線用治具10のコア挿入穴11aに載置する(コア挿入工程)。同様して、所定の端子挿入穴11bに最初の2本の端子ピン31,32を挿入する(端子挿入工程)。なお、コア挿入工程と端子挿入工程とはどちらが先でもよい。
【0014】
図5はT型部21の中脚部21aに第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。図6はT型部21の中脚部21aに第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。次ぎに、図5に示されるように、導電線40(40a)の一方の端を端子ピン31に電気的に接続するように絡げ(端子接続工程)、その後、図中矢印で示すようにコア巻線用治具10を回転させて中脚部21aに導電線40(40a)を巻回することにより巻線を形成する(巻回工程)。そして、所定回数巻回した後に導電線40(40a)の反対側の端を端子ピン32に絡げる(端子接続工程)。次いで、図6に示されるように、所定の端子挿入穴11bに次の2本の端子ピン33,34を挿入して(端子挿入工程)、端子ピン33に別の導電線40(40b)の一方の端を絡げ(端子接続工程)、矢印で示すようにコア巻線用治具10を回転させて中脚部21aに導電線40(40b)を巻回して巻線を形成し(巻回工程)、所定回数巻回した後に、導電線40(40b)の反対側の端を、端子ピン34に絡げる(端子接続工程)。このように、端子挿入工程と端子接続工程と巻回工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成する。
【0015】
なお、上記コア巻線方法においては、導電線40の端を端子ピンに絡げた後、導電線40を中脚部21aに巻回しているが、この限りではなく、例えば、所定の固定位置に導電線40の端を固定しておき、中脚部21aに巻回した後、固定位置から外して端子ピンに接続し直してもよいし、さらには、すべての巻線を中脚部21aに巻回した後、各導電線40の端を端子ピンに接続するようにしてもよい。すなわち、端子挿入工程と端子接続工程と巻回工程とは、順序が互いに入れ替わってもよい。また、上記巻回工程においては、自動巻線機を用いて導電線40を巻回してもよいし、手作業により巻回してもよい。
【0016】
また、本実施の形態のコア巻線方法においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、各巻線間の絶縁は、導電線40に被覆された例えばエナメル等の被覆材により確保している。
【0017】
図7はT型部21の中脚部21aに第三コイルが巻回された後、C型部22が固着される様子を示す斜視図である。上記端子挿入工程と端子接続工程と巻回工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成した後、接着剤等でT型部21にC型部22を固着する(コア合体工程)。このようにして、コア20に巻線が巻装された中間組立体が作製される。
【0018】
図8は上記のようにして作製された中間組立体が実装基板に搭載される様子を示す斜視図である。T型部21にC型部22が固着されて完成した中間組立体50は、各巻線の端を端子ピン31〜36に絡げたままの状態でコア巻線用治具10から取り外され(取外工程)、その後、取り外されたときの状態を保ったまま実装基板60のコア固定位置60aに搭載される(搭載工程)。このとき、端子ピン31〜36の各位置は、上記のように予め実装基板に固定される端子ピン立設位置60bと対応付けされているので、引き出された導電線40が短すぎたり弛んでしまったりすることなく、容易に中間組立体50を実装基板60に搭載することができる。
【0019】
なお、本実施の形態においては、対象としたコア20が、T型部21とC型部22から構成されるものであったが、図9に示すような一対のE型部21B,22Bを突き合わせるようないわゆるEE型のコア20Bや、図10に示すようなE型部21CとI型部22Cとを組み合わせるいわゆるEI型のコア20Cであっても適用することができる。
【0020】
また、本実施の形態においては、コア支持部は、T型部21が挿入される凹部として形成されたコア挿入穴11aであるが、コア支持部は、T型部21を所定の位置に固定できるものであればよく、このような凹部に限定されず、例えば、T型部21の四辺を拘束する突部等であってもよい。また、本実施の形態の端子支持部は、所定の深さの小穴として形成された端子挿入穴11bであるが、端子支持部は、このような小穴に限らず、例えば、コア巻線用治具10の側面に形成されて端子ピンが圧入される溝等であってもよい。
【0021】
図11は中脚部21aに嵌める筒状治具の様子を示す斜視図である。上記実施の形態においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、巻線構造の耐圧をさらに向上させたい場合には、例えば以下のようにする。すなわち、図11に示すように、中脚部21aに円筒状の筒状治具45を嵌め、上記と同じ方法にて筒状治具45の周囲に導電線40を巻回し、コア合体工程の前に筒状治具45を引き抜くことにより、中脚部21aと巻線との間に空間を形成する。このように構成することにより、巻線構造の耐圧、ひいてはこの巻線構造を用いたトランス等の装置の耐圧を向上させることができる。
【0022】
図9に示すEE型コア20Bや図10に示すEI型コア20Cにおいては、被巻回部である中脚部の周囲に側脚部が突出しているので、自動巻線機を用いて導電線を巻回する場合、側脚部と導電線とが干渉して巻回しづらいことがある。このような場合には、図11に示す筒状治具45よりさらに長い(中脚部より所定量長い)筒状治具を用いて、これを中脚部に嵌め、側脚部より高さの高くなった部分に導電線を巻回し、その後、巻線を中脚部に移動(スライド)させるようにしながら筒状治具を引き抜くことにより、中脚部の周囲に側脚部が突出している場合であっても自動巻線機を用いて中脚部に容易に導電線を巻回することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明は、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子のコアに導電線を巻回する際に用いる治具、およびこの治具を用いて行うコア巻線方法に適用されて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるコア巻線用治具の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態において対象とするコアの斜視図である。
【図3】コア巻線用治具にコアのT型部および最初の2本の端子ピンを挿入しようとする様子を示す斜視図である。
【図4】コア巻線用治具へのT型部および端子ピンの挿入が完了した様子を示す斜視図である。
【図5】T型部の中脚部に第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図6】T型部の中脚部に第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図7】T型部の中脚部に第三コイルが巻回された後、C型部が固着される様子を示す斜視図である。
【図8】中間組立体が実装基板に搭載される様子を示す斜視図である。
【図9】本実施の形態において対象とする他の形状のコアであるEE型コアの斜視図である。
【図10】本実施の形態において対象とする他の形状のコアであるEI型コアの斜視図である。
【図11】中脚部と巻線との間に空間を形成する目的で中脚部に筒状治具を嵌める様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
10 コア巻線用治具
11 治具本体
11a コア挿入穴(コア支持部)
11b 端子挿入穴(端子支持部)
20 コア
21 T型部
21a 中脚部(被巻回部)
21b 延長部
22 C型部
22a 側脚部
22b 連結部
31〜36 端子ピン
40 導電線
45 筒状治具
50 中間組立体
60 実装基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアに導電線を巻回する際に用いるコア巻線用治具であって、
前記コアを着脱自在に支持するコア支持部と、
前記コア支持部の周囲に設けられ前記導電線の端が接続される端子ピンを着脱自在に支持する複数の端子支持部と
を有することを特徴とするコア巻線用治具。
【請求項2】
前記コアは、被巻回部が突出するように少なくとも2つに分割されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載のコア巻線用治具。
【請求項3】
前記コア支持部は、前記コアが挿入される凹部であり、前記端子支持部は、前記端子ピンが挿入される小穴である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコア巻線用治具。
【請求項4】
前記端子支持部は、前記端子ピンを前記コアの軸線と平行に支持する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコア巻線用治具。
【請求項5】
前記端子ピンは、前記複数の端子支持部の中から選択された端子支持部に支持される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコア巻線用治具。
【請求項6】
前記端子支持部の設けられる位置は、前記コアが搭載される実装基板における端子ピンの配置される位置と同様となるようにされている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のコア巻線用治具。
【請求項7】
前記コアに着脱自在に嵌められ前記導電線の巻回の後に外されて、前記コアと前記導電線との間に空間を形成する筒状治具をさらに含む
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のコア巻線用治具。
【請求項8】
コアを着脱自在に支持するコア支持部と、コア支持部の周囲に設けられ導電線の端が接続される端子ピンを着脱自在に支持する複数の端子支持部とを有するコア巻線用治具を用いたコア巻線方法であって、
前記コア支持部に前記コアを挿入するコア挿入工程と、
前記端子支持部に前記端子ピンを挿入するピン挿入工程と、
前記コアに前記導電線を巻回する巻回工程と、
前記導電線の端を前記端子ピンに接続する端子接続工程と、
前記導電線が巻装された前記コアを前記コア巻線用治具から取り外す取外工程と
を有することを特徴とするコア巻線方法。
【請求項9】
前記コア挿入工程にて、前記コア支持部に挿入される前記コアは、被巻回部が突出するように少なくとも2つに分割されたものである
ことを特徴とする請求項8に記載のコア巻線方法。
【請求項10】
前記導電線が巻装された前記コアを実装基板に搭載する搭載工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項8または9に記載のコア巻線方法。
【請求項11】
前記巻回工程においては、前記コア巻線用治具を回転させることにより、前記コアに前記導電線を巻回する
ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載のコア巻線方法。
【請求項12】
前記コアに着脱自在に嵌められる筒状治具をさらに用いて、
前記巻回工程においては、前記コアに前記筒状治具を嵌めて該筒状治具の周囲に前記導電線を巻回した後、当該筒状治具を外して、前記コアと前記導電線を巻回する
ことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載のコア巻線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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