説明

コイル内蔵基板および電子装置

【課題】コイル内蔵基板において低背化を図ること。
【解決手段】コイル内蔵基板1は、基体11と、基体11内に設けられたコイル導体12とを含んでいる。コイル導体12は、上下方向において互いに異なる高さ位置に配置された複数の導体パターン12aおよび12bを含んでおり、複数の導体パターン12aおよび12bは、上下方向に延びる仮想軸12xを囲むような形状を有している。上下方向において隣接する導体パターン12aおよび12bは、平面透視において重ならないように設けられている。基体11は、導体パターン12aおよび12bを挟むように設けられた複数の磁性体層11aおよび11bと、導体パターン12aおよび12bの間に設けられた介在層11cとを含んでいる。介在層11cは、複数の磁性体層11aおよび11bよりも高い絶縁性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電子機器等において用いられるコイル内蔵基板および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話等の電子機器の電源装置等においてコイル内蔵基板が用いられている。コイル内蔵基板は、磁性体から成る基体と、基体内に設けられたコイル導体とを含んでおり、例えば電子素子がコイル内蔵基板上に実装されるとともにコイル導体に電気的に接続される。
【0003】
コイル導体は、上下方向に配置された複数の導体パターンを含んでおり、複数の導体パターンは、上下方向に延びる仮想軸を囲むような形状を有しており、それぞれの端部において電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−158975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば電子機器の薄型化に伴ってコイル内蔵基板においても低背化を図る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様によれば、コイル内蔵基板は、基体と、基体内に設けられたコイル導体とを含んでいる。コイル導体は、上下方向において互いに異なる高さ位置に配置された複数の導体パターンを含んでおり、複数の導体パターンは、上下方向に延びる仮想軸を囲むような形状を有している。複数の導体パターンのうち上下方向に隣接する導体パターンは、平面透視において重ならないように設けられている。基体は、隣接する導体パターンを挟むように設けられた複数の磁性体層と、隣接する導体パターンの間に設けられた介在層とを含んでいる。介在層は、複数の磁性体層よりも高い絶縁性を有している。
【0007】
本発明の他の態様によれば、電子装置は、上記構成のコイル内蔵基板と、コイル内蔵基板の基体に実装されておりコイル導体に電気的に接続された電子素子とを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によるコイル内蔵基板において、複数の導体パターンのうち隣接する導体パターンが平面透視において重ならないように設けられており、基体が隣接する導体パターンを挟むように設けられた複数の磁性体層と隣接する導体パターンの間に設けられた介在層とを含んでおり、介在層が複数の磁性体層よりも高い絶縁性を有していることによって、コイル内蔵基板において低背化を図ることができる。
【0009】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のコイル内蔵基板を含んでいることによって、低背化が図られている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態における電子装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示された電子装置のA−Aにおける縦断面図である。
【図3】図1に示された電子装置におけるコイル内蔵基板の平面透視図である。
【図4】(a)は図1に示されたコイル導体の構造を示す図であり、(b)は比較例のコイル導体の構造を示す図である。
【図5】(a)は図1に示されたコイル導体の構造を示す図であり、(b)は比較例のコイル導体の構造を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例におけるコイル導体の構造を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における電子装置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例におけるコイル導体の構造を示す図である。
【図9】複数の導体パターンの配置を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における電子装置は、図1および図2に示されているように、コイル内蔵基板1と、コイル内蔵基板1に実装された電子素子2とを含んでいる。電子素子2は、例えば電子機器の電源装置等において用いられるIC素子等である。図1において、電子装置は、仮想のxyz空間内に設けられており、以下便宜的に「上方向」とは仮想のz軸の正方向のことをいう。
【0013】
コイル内蔵基板1は、基体11と、基体11内に設けられたコイル導体12とを含んでいる。
【0014】
基体11は、複数の層11a〜11cを含んでおり、層11aおよび11bは、磁性体から成り、以下、層11aおよび11bを磁性体層11aおよび11bという。層11cは、磁性体層11aおよび11bの間に設けられており、以下、層11cを介在層11cという。磁性体層11aおよび11bは、例えば、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,N
iFe,BaFe,SrFeまたはCuFe等のフェライト材料から成る。介在層11cは、磁性体層11aおよび11bよりも高い絶縁性を有しており、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC)等の絶縁材料から成る。
【0015】
コイル導体12は、複数の導体パターン12aおよび12bを含んでおり、複数の導体パターン12aおよび12bは、上下方向において隣接するように互いに異なる高さ位置に配置されており、上下方向に延びる仮想軸12xを囲むような形状を有している。図1において、仮想軸12xが二点鎖線によって示されている。コイル導体12は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)または銀合金等の金属材料から成る。
【0016】
図3に示されているように、導体パターン12aおよび12bは、平面透視において重ならないように設けられており、互いに異なる径を有している。導体パターン12bの径D12bは、導体パターン12aの径D12aよりも小さい。すなわち、導体パターン12bは、平面透視において、導体パターン12aよりも内側に設けられている。図4(a)および(b)に示されているように、複数の導体パターン12a,12bまたは22a,22bにおいて絶縁性を確保するために必要な距離が等しく設けられている場合に、図4(a)に示されているように複数の導体パターン12aおよび12bがずれた位置に設けられている方が、図4(b)に示されているように複数の導体パターン22aおよび22bがそろった位置に設けられているよりも、上下方向における複数の導体パターン間の距離を低減できる。すなわち、複数の導体パターン12aおよび12bがずれた位置に設けられていることによって、複数の導体パターン12aおよび12bの上下方向における距離D12は、比較例における複数の導体パターン22aおよび22bの上下方向における距離D22よりも低減されている。複数の導体パタ
ーン12aおよび12bの上下方向における距離D12が低減されていることによって、コイル内蔵基板1の低背化が図られている。
【0017】
ここで、単に導体パターン12bの径D12bを小さくするだけではコイル導体12全体のインダクタンス値が小さくなってしまうが、本実施形態のコイル内蔵基板1においては、導体パターン12bの径D12bを小さくしつつコイル導体12全体のインダクタンス値を確保する工夫がなされている。
【0018】
本実施形態のコイル内蔵基板1において、コイル導体12全体のインダクタンス値を確保するために、導体パターン12aおよび12bの間の電磁的結合が増大されている。さらに詳細には、導体パターン12aおよび12bの間の上下方向における距離D12を小さくする工夫がなされている。導体パターン12aおよび12bの間の絶縁性を確保しつつ距離D12を小さくするために、導体パターン12aおよび12bの間に磁性層11aおよび11bよりも絶縁性の高い介在層11cが設けられている。介在層11cは、前述のように、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC)等の絶縁材料から成る。図5(a)に示されているように、基体11が複数の導体パターン12aおよび12bの間に設けられた介在層11cを含んでいることによって、本実施形態におけるコイル内蔵基板1は、図5(b)に示されているような複数の導体パターン32aおよび32bの間に磁性体層が設けられているものに比べて、複数の導体パターン12aおよび12bの間の距離を低減させることができる。したがって、複数の導体パターン12aおよび12bの間の電磁的結合が増大されて、コイル導体12全体のインダクタンス値が確保されている。また、導体パターン12aおよび12bの距離が低減されていることによって、本実施形態のコイル内蔵基板1において低背化が図られている。
【0019】
本実施形態のコイル内蔵基板1において、複数の導体パターン12aおよび12bが平面透視において重ならないように設けられており、基体が複数の導体パターン12aおよび12bの間に設けられた介在層11cを含んでおり、介在層11cが複数の導体パターン12aおよび12bを挟むように設けられた複数の磁性体層11aおよび11bよりも高い絶縁性を有していることによって、実施形態のコイル内蔵基板1は、所望のコイル特性を確保しつつ低背化を図ることができる。
【0020】
なお、本実施形態のコイル内蔵基板1において、複数の導体パターン12aおよび12bは、介在層11c内に埋設されるように設けられており、複数の導体パターン12aおよび12bの絶縁性の向上が図られている。
【0021】
ここで、本実施形態におけるコイル内蔵基板1の変形例について図6を参照して説明する。変形例において、導体パターン12aおよび12bはそれぞれ傾斜面12a,12bを有しており、傾斜面12aおよび12bは互いに対向するように設けられている。変形例のコイル内蔵基板1において、導体パターン12aおよび12bが、互いに対向している傾斜面12aおよび12bを有していることによって、導体パターン12aおよび12bの上下方向における距離D12をさらに小さくすることが可能となる。したがって、変形例におけるコイル内蔵基板1において、さらなる低背化が可能となる。なお、図6に示された変形例において、傾斜面12aおよび12bは平面状であるように示されているが、傾斜面12aおよび12bは曲面状であってもよい。
【0022】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図7を参照して説明する。第2の実施形態のコイル内蔵基板1において、図2等に示された第1の実施形態のコイル内蔵基板1と異なる構成は、基体11が複数の介在層11cおよび11dを含んでいるとともに、コイル導体12が複数の導体パターン対121および122を含んでおり、複数の導体パターン対121および122に対応するように介在層11cおよび11dが設けられていることである。第2の実施形態におけるその
他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0023】
基体11は、磁性体層11a、11bおよび11eと、介在層11cおよび11dとを含んでおり、介在層11cおよび11dは、磁性体層11a、11bおよび11eよりも高い絶縁性を有している。
【0024】
コイル導体12は、第1の導体パターン対121および第2の導体パターン対122を含んでおり、第1の導体パターン対121が第1の導体パターン12aおよび第2の導体パターン12b
から成り、第2の導体パターン対122が第3の導体パターン12cおよび第4の導体パター
ン12dから成る。
【0025】
第1の導体パターン対121は、複数の磁性体層11aおよび11eによって上下方向から挟
まれており、介在層11cは、第1の導体パターン対121の第1の導体パターン12aおよび
第2の導体パターン12bの間に設けられている。図7に示された構成において、第1の導体パターン12aおよび第2の導体パターン12bは、介在層11c内に埋設されるように設けられている。
【0026】
第2の導体パターン対122は、複数の磁性体層11eおよび11bによって上下方向から挟
まれており、介在層11dは、第2の導体パターン対122の第3の導体パターン12cおよび
第4の導体パターン12dの間に設けられている。図7に示された構成において、第3の導体パターン12cおよび第4の導体パターン12dは、介在層11d内に埋設されるように設けられている。
【0027】
本実施形態のコイル内蔵基板1において、複数の導体パターン12aおよび12bが互いに異なる径を有しているとともに、複数の導体パターン12cおよび12dが互いに異なる径を有している。基体11は、複数の導体パターン12aおよび12bの間に設けられた介在層11cと、複数の導体パターン12cおよび12dの間に設けられた介在層11dとを含んでいる。介在層11cおよび11dは、複数の磁性体層11a、11bおよび11eよりも高い絶縁性を有している。本実施形態のコイル内蔵基板1は、このような構成を有していることによって、所望のコイル特性を確保しつつ低背化を図ることができる。
【0028】
本実施形態のコイル内蔵基板1は、第1の導体パターン対121および第2の導体パター
ン対122の間に設けられた磁性体層11eを含んでいることによって、第1の導体パターン
対121および第2の導体パターン対122の間の磁気抵抗が低減されており、第1の導体パターン対121および第2の導体パターン対122の全体を囲む磁路が形成されやすくなる。したがって、コイル内蔵基板1のコイル特性が向上されている。
【0029】
ここで、本実施形態におけるコイル内蔵基板1の変形例について図8を参照して説明する。変形例において、導体パターン12aおよび12bはそれぞれ傾斜面12a,12bを有しており、傾斜面12aおよび12bは互いに対向するように設けられている。また、導体パターン12cおよび12dはそれぞれ傾斜面12c,12dを有しており、傾斜面12cおよび12dは互いに対向するように設けられている。変形例のコイル内蔵基板1において、導体パターン12aおよび12bが互いに対向している傾斜面12aおよび12bを有しており、導体パターン12cおよび12dが互いに対向している傾斜面12cおよび12dを有していることによって、導体パターン12aおよび12bの上下方向における距離D121
よび導体パターン12cおよび12dの上下方向における距離D122をさらに小さくすること
が可能となる。したがって、変形例におけるコイル内蔵基板1において、さらなる低背化が可能となる。なお、図8に示された変形例において、傾斜面12a〜12dは平面状であるように示されているが、傾斜面12a〜12dは曲面状であってもよい。
【0030】
なお、上述の第1および第2の実施形態のコイル内蔵基板1において、複数の導体パターンのうち最上段に位置する導体パターンが、下方に位置する導体パターンよりも外側に設けられていると、コイル導体12と電子素子2との間に干渉が生じる可能性が低減される。図9において、コイル導体12が5段の導体パターンから成る例が示されている。図9に示された例において、複数の導体パターンのうち最上段に位置する導体パターン12aが、下方に位置する導体パターン12bよりも外側に設けられていることによって、コイル内蔵基板1の上部に形成される磁路が外側に向かって広がるような構造となり、コイル導体12の上方に設けられる電子素子2とコイル導体12との間に干渉が生じる可能性が低減されている。なお、図2および図7において、磁路の広がりについては考慮されずに図示されている。また、コイル内蔵基板1の上部に形成される磁路が外側に向かって広がるような構造となっていることによって、基体11の内部において磁路が効率的に形成されて、コイル導体12のインピーダンス値が向上されている。また、図9に示された例において、複数の導体パターンのうち最下段に位置する導体パターン12eが、上方に位置する導体パターン12dよりも外側に設けられていることによって、基体11の内部において磁路が効率的に形成されて、コイル導体12のインピーダンス値が向上されている。
【符号の説明】
【0031】
1 コイル内蔵基板
11 基体
11a、11b 磁性体層
11c 介在層
12 コイル導体
12a、12b 導体パターン
2 電子素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
該基体内に設けられており、上下方向において互いに異なる高さ位置に配置されているとともに前記上下方向に延びる仮想軸を囲むような形状を有している複数の導体パターンを含むコイル導体とを備えており、
前記複数の導体パターンのうち上下方向に隣接する導体パターンが、平面透視において重ならないように設けられており、
前記基体が、隣接する前記導体パターンを挟むように設けられた複数の磁性体層と、隣接する前記導体パターンの間に設けられた介在層とを含んでおり、
該介在層が、前記複数の磁性体層よりも高い絶縁性を有することを特徴とするコイル内蔵基板。
【請求項2】
前記複数の導体パターンが、互いに対向する傾斜面を有していることを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコイル内蔵基板と、
該コイル内蔵基板の前記基体に実装されており、前記コイル導体に電気的に接続された電子素子とを備えていることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−115242(P2013−115242A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260283(P2011−260283)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】