説明

コイル台間隔調整装置

【課題】列設した複数のコイル台の夫々の間隔を効率良く調整する。
【解決手段】コイル台S2〜S3を、夫々のコイル台が所定の間隔で最接近するときの最接近位置と夫々のコイル台が所定の間隔で最離間するときの最離間位置との間で進退可能に構成する。また、固定フレーム4a・4bとコイル台S2・S3とを接近用ワイヤ8によって連設すると共に、固定フレーム4b〜4dとコイル台S3・S4とを離間用ワイヤ9によって連設する。さらに、接近用ワイヤ8及び離間用ワイヤ9をリール12に巻回させ、このリール12によって接近用ワイヤ8の巻取りと離間用ワイヤ9の巻出し、又は離間用ワイヤ9を巻取りと接近用ワイヤ8の巻出しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列設した複数のコイル台の夫々の間隔を調整するコイル台間隔調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板等のコイルを載置可能なコイル台として、コイルを横にした状態でその円筒面を担持する一対のスキッドプレートを夫々傾動可能に構成し、このスキッドプレートの傾斜角をコイル径に応じて調整することにより、スキッドプレートとコイルとの良好な接触状態を保ち、スキッドプレートのエッジによってコイルに疵を付けないようにするものがあった(特許文献1参照)。
【0003】
また、標準寸法のコイルを載置できるように所定幅の溝を形成した一対のサドルにおいて、サドルが形成する溝よりも幅の狭い溝を形成できる補助支持具をこのサドルに取付けることによって、標準寸法よりも小さなコイルを載置できるようにするものがあった(特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭63−180110号公報
【特許文献2】実開昭54−6786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1、2に記載された従来例のように、スキッドプレートやサドルで構成されるコイル台には、あらゆる寸法のコイルを載置できるような工夫がなされているが、複数のコイル台を列設し、各コイル台にコイルを載置してゆくような場合には、そのコイル径に応じて、隣接するコイル台同士の間隔を調整することも必要である。特に、列設した各コイル台にコイルを載置し、更にその上段にコイルを千鳥状に積載してゆくような場合には、コイル台同士の間隔調整が不可欠である。しかしながら、コイル台同士の間隔を調整するためには、コイル台を一つ一つ個別に移動させなければならないので、作業効率が低いという問題がある。
そこで、本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、列設した複数のコイル台の夫々の間隔を効率良く調整できるコイル台間隔調整装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るコイル台間隔調整装置は、
列設した複数のコイル台の夫々の間隔を調整するコイル台間隔調整装置において、
前記複数のコイル台を、夫々のコイル台が所定の間隔で最接近するときの最接近位置と夫々のコイル台が所定の間隔で最離間するときの最離間位置との間で進退可能に構成し、
前記コイル台に対して前記最接近位置側で対向する接近側固定フレームと、該接近側固定フレームと前記各コイル台とを交互に経由すると共に、夫々に進退自在に連架され、一端が前記接近側固定フレームに固定された接近用牽引索と、
前記コイル台に対して前記最離間位置側で対向する離間側固定フレームと、該離間側固定フレームと前記各コイル台とを交互に経由すると共に、夫々に進退自在に連架され、一端が前記離間側固定フレームに固定された離間用牽引索と、
前記接近用牽引索及び前記離間用牽引索の双方の他端側が巻回されると共に、当該接近用牽引索の巻取り及び当該離間用牽引索の巻出し、又は当該離間用牽引索の巻取り及び当該接近用牽引索の巻出しが可能な駆動手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
上記の構成によれば、駆動手段で接近用牽引索の巻取りを行うと、接近用牽引索によって各コイル台が離間側固定フレームの側から接近側固定フレームの側に引っ張られ、夫々の最接近位置に到達するまで時間的な遅れや進みを伴いつつ連動しながら牽引される。このとき、接近用牽引索の巻取りと同期して離間用牽引索の巻出しも行われるので、離間側固定フレームの側から接近側固定フレームの側への各コイル台の移動が許容される。
【0007】
逆に、駆動手段で離間用牽引索の巻取りを行うと、離間用牽引索によって各コイル台が接近側固定フレームの側から離間側固定フレームの側に引っ張られ、夫々の最離間位置に到達するまで時間的な遅れや進みを伴いつつ連動しながら牽引される。このとき、離間用牽引索の巻取りと同期して接近用牽引索の巻出しも行われるので、接近側固定フレームの側から離間側固定フレームの側への各コイル台の移動が許容される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係るコイル間隔調整装置によれば、駆動手段によって接近用牽引索の巻取り及び離間用牽引索の巻出しを行うだけで、各コイル台を連動させながら夫々の最接近位置まで牽引し、各コイル台同士の間隔を縮めて最接近させることができる。逆に、駆動手段によって離間用牽引索の巻取り及び接近用牽引索の巻出しを行うだけで、各コイル台を連動させながら夫々の最離間位置まで牽引し、各コイル台同士の間隔を伸ばして最離間させることができる。
このように、1つの駆動手段によって接近用牽引索の巻取り及び離間用牽引索の巻出し、又は離間用牽引索の巻取り及び接近用牽引索の巻出しを行うだけで、複数のコイル台の夫々の間隔を効率良く調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、所定範囲の寸法のコイルCを載置可能なコイル台Sの側面図である。コイル台Sは、架台1と、架台1の上面に形成されコイルCを横にした状態でその円筒面を担持する一対のコイルスキッド2と、で構成されている。
図2は、コイル台S1〜S4を列設したときの平面図であり、図3は、その側面図である。コイル台S1は、所定位置に固定されており、残りのコイル台S2〜S4は、図示しない車輪によって、列設方向に配設された軌道レール3に沿って進退可能に構成されている。
【0010】
軌道レール3は、軌道レール3と略直行する固定フレーム4a〜4dを介して設置されており、この固定フレーム4a〜4dには、コイル台S1〜S4が所定の間隔で最接近するときの最接近位置で、コイル台S2〜S4に形成された突起5と当接して夫々を停止させ、尚且つコイル台S1〜S4が所定の間隔で最離間するときの最離間位置で、コイルS2〜S4に形成された突起6と当接して夫々を停止させるストッパ7が立設されている。したがって、コイル台S2〜S4は、夫々、突起5がストッパ7に当接する最接近位置と突起6がストッパ7に当接する最離間位置との間で進退できるように構成され、コイル台S2〜S4の全てが夫々の最接近位置まで移動したときにコイル台同士の間隔が最も接近した(縮んだ)状態となり、逆にコイル台S2〜S4の全てが夫々の最離間位置まで移動したときにコイル台同士の間隔が最も離間した(伸びた)状態となる。
【0011】
ここで、固定フレーム4aは、コイル台S2に対して最接近位置側(図面上は左側)で対向するように配置されており、固定フレーム4bは、コイル台S3に対して最接近位置側で対向すると共に、コイル台S2に対して最離間位置側(図面上は右側)で対向するように配置されており、固定フレーム4cは、コイル台S3に対して最離間位置側で対向するように配置されており、固定フレーム4dは、コイル台S4に対して最離間位置側で対向するように配置されている。
【0012】
固定フレーム4a・4bとコイル台S2・S3とは、接近用ワイヤ8によって連設されており、固定フレーム4b〜4dとコイル台S3・S4とは、離間用ワイヤ9によって連設されている。
接近用ワイヤ8は、固定フレーム4a、コイル台S2、固定フレーム4a、コイル台S3、固定フレーム4b、コイル台S4、固定フレーム4bを順に経由すると共に、夫々に配設された滑車10を介して進退自在に連架され、一端が固定フレーム4bに固定されている。
【0013】
一方の離間用ワイヤ9は、固定フレーム4b、コイル台S2、固定フレーム4c、コイル台S3、固定フレーム4d、コイル台S4、固定フレーム4dを順に経由すると共に、夫々に配設された滑車11を介して進退自在に連架され、一端が固定フレーム4dに固定されている。
なお、接近用ワイヤを支持する滑車10と離間用ワイヤ9を支持する滑車11とは、接近用ワイヤ8と離間用ワイヤ9とが接触しないように、上下位置をずらして配設されている。
【0014】
接近用ワイヤ8の他端側、及び離間用ワイヤ9の他端側は、電動モータ(図示省略)に連結されたリール12に巻回されており、このリール12は、例えば正転するときに接近用ワイヤ8の巻取ると共に離間用ワイヤ9を巻出し、逆転するときに離間用ワイヤ9を巻取ると共に接近用ワイヤ8を巻出すように構成されている。
以上の構成では、固定フレーム4a・4bが「接近側固定フレーム」に対応し、接近用ワイヤ8が「接近用牽引索」に対応し、固定フレーム4b〜4dが「離間側固定フレーム」に対応し、離間用ワイヤ9が「離間用牽引索」に対応し、リール12及び電動モータが「駆動手段」に対応している。
【0015】
次に、上記一実施形態の動作や作用効果について説明する。
コイル台S1〜S4にコイルCを載置する前には、各コイル台S1〜S4の間隔を調整する必要があり、特に、各コイル台S1〜S4にコイルCを載置し、更にその上段にコイルCを千鳥状に積載してゆくような場合には、コイル台S1〜S4の間隔調整が不可欠である。
そこで、小径のコイルCを載置する場合には、コイル台S2〜S4の全てを夫々の最接近位置まで移動させてコイル台同士の間隔が最も接近した(縮んだ)状態にする。逆に、大径のコイルCを載置する場合には、コイル台S2〜S4の全てを夫々の最離間位置まで移動させてコイル台同士の間隔が最も離間した(伸びた)状態にする。
【0016】
先ず、コイル台S2〜S4の全てを夫々の最接近位置まで移動させるときには、リール12によって接近用ワイヤ8の巻取りを行うと、接近用ワイヤ8によってコイル台S2が固定フレーム4bの側から固定フレーム4aの側に引っ張られ、またコイル台S3が固定フレーム4cの側から固定フレーム4bの側に引っ張られ、さらにコイル台S4が固定フレーム4dの側から固定フレーム4cの側に引っ張られる。これにより、コイル台S2〜S4が夫々の最接近位置に到達するまで時間的な遅れや進みを伴いつつ連動しながら牽引される。
【0017】
このとき、接近用ワイヤ8の巻取りと同期して離間用ワイヤ9の巻出しも行われるので、固定フレーム4bの側から固定フレーム4aの側へのコイル台S2の移動と、固定フレーム4cの側から固定フレーム4bの側へのコイル台S3の移動と、固定フレーム4dの側から固定フレーム4cの側へのコイル台S4の移動とが許容される。
そして、コイル台S2〜S4の突起5がストッパ7に当接し、コイル台S2〜S4の全てが夫々の最接近位置まで移動したときに、リール12の回転を停止させる。
【0018】
次に、コイル台S2〜S4の全てを夫々の最離間位置まで移動させるときには、リール12によって離間用ワイヤ9の巻取りを行うと、離間用ワイヤ9によってコイル台S2が固定フレーム4aの側から固定フレーム4bの側に引っ張られ、またコイル台S3が固定フレーム4bの側から固定フレーム4cの側に引っ張られ、さらにコイル台S4が固定フレーム4cの側から固定フレーム4dの側に引っ張られる。これにより、コイル台S2〜S4が夫々の最離間位置に到達するまで時間的な遅れや進みを伴いつつ連動しながら牽引される。
【0019】
このとき、離間用ワイヤ9の巻取りと同期して接近用ワイヤ8の巻出しも行われるので、固定フレーム4aの側から固定フレーム4bの側へのコイル台S2の移動と、固定フレーム4bの側から固定フレーム4cの側へのコイル台S3の移動と、固定フレーム4cの側から固定フレーム4dの側へのコイル台S4の移動とが許容される。
そして、コイル台S2〜S4の突起6がストッパ7に当接し、コイル台S2〜S4の全てが夫々の最離間位置まで移動したときに、リール12の回転を停止させる。
【0020】
以上のように、リール12によって接近用ワイヤ8の巻取り及び離間用ワイヤ9の巻出しを行うだけで、コイル台S2〜S4を連動させながら夫々の最接近位置まで牽引し、各コイル台同士の間隔を縮めて最接近させることができる。逆に、リール12によって離間用ワイヤ9の巻取り及び接近用ワイヤ8の巻出しを行うだけで、コイル台S2〜S4を連動させながら夫々の最離間位置まで牽引し、各コイル台同士の間隔を伸ばして最離間させることができる。
【0021】
このように、1つのリール12によって接近用ワイヤ8の巻取り及び離間用ワイヤ9の巻出し、又は離間用ワイヤ9の巻取り及び接近用ワイヤ8の巻出しを行うだけで、コイル台S1〜S4の夫々の間隔を効率良く調整することができる。
また、1台の電動モータによって複数のコイル台S2〜S4を移動させることができるように、固定フレーム4a〜4dに配設された滑車10、11(定滑車に相当)と、コイル台S2〜S4に配設された滑車10、11(動滑車に相当)とを組み合わせたことで、必要な動力は、1台のコイル台を移動させるだけの大きさでよい。
【0022】
なお、上記の一実施形態では、各コイル台S2〜S4を牽引するのにワイヤを使用しているが、これに限定されるものではなく、各コイル台S2〜S4を牽引できれば、チェーンやロープ等、任意の牽引索でよい。
また、上記の一実施形態では、接近用ワイヤ8と離間用ワイヤ9とを別体で構成しているが、これに限定されるものではなく、両者を一体化してもよい。この場合、リール12で巻取る側と巻出す側とが干渉しないように、巻取り位置と巻出し位置とを離間させればよい。
また、上記の一実施形態では、各コイル台同士の間隔が略等しくなるようにストッパ7や突起5、6を配設しているが、これに限定されるものではなく、ストッパ7や突起5、6の配設位置を適宜調整し、各コイル台を任意の位置で停止させるようにしてもよい。
【0023】
また、上記の一実施形態では、コイル台S3を固定フレーム4b側へ引っ張るために、固定フレーム4aからの接近用ワイヤ8を固定フレーム4bへ経由させているが、これに限定されるものではない。要は、接近用ワイヤ8を、コイル台に対して最接近位置側で対向する固定フレームと、そのコイル台とを交互に経由させればよいので、固定フレーム4aからの接近用ワイヤ8を再び固定フレーム4aへ経由させてもよい。したがって、コイル台S4を固定フレーム4c側へ引っ張るために、固定フレーム4bからの接近用ワイヤ8を再び固定フレーム4bへ経由させているが、固定フレーム4a又は4bからの接近用ワイヤ8を固定フレーム4a又は4bへ経由させてもよい。勿論、離間用ワイヤ9についても同様である。
【0024】
さらに、上記の一実施形態では、接近用ワイヤ8がコイル台S2〜S4を経由する順路を、S2→S3→S4としたが、これに限定されるものではなく、固定フレームと交互に経由させればコイル台S2〜S4を経由する順路は任意でよい。勿論、離間用ワイヤ9についても同様である。
また、上記の一実施形態では、4台のコイル台S1〜S4の間隔を調整する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2台や3台、或いは5台以上のコイル台同士の間隔を調整する場合にも本発明を適用することができる。
また、上記の一実施形態では、水平方向に並んだコイル台の水平方向の間隔を調整する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、垂直方向に並んだコイル台の垂直方向の間隔を調整する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】コイル台の概略構成図である。
【図2】本発明の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
C コイル
S コイル台
1 架台
2 コイルスキッド
3 軌道レール
4a〜4d 固定フレーム
5、6 突起
7 ストッパ
8 接近用ワイヤ
9 離間用ワイヤ
10、11 滑車
12 リール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列設した複数のコイル台の夫々の間隔を調整するコイル台間隔調整装置において、
前記複数のコイル台を、夫々のコイル台が所定の間隔で最接近するときの最接近位置と夫々のコイル台が所定の間隔で最離間するときの最離間位置との間で進退可能に構成し、
前記コイル台に対して前記最接近位置側で対向する接近側固定フレームと、該接近側固定フレームと前記各コイル台とを交互に経由すると共に、夫々に進退自在に連架され、一端が前記接近側固定フレームに固定された接近用牽引索と、
前記コイル台に対して前記最離間位置側で対向する離間側固定フレームと、該離間側固定フレームと前記各コイル台とを交互に経由すると共に、夫々に進退自在に連架され、一端が前記離間側固定フレームに固定された離間用牽引索と、
前記接近用牽引索及び前記離間用牽引索の双方の他端側が巻回されると共に、当該接近用牽引索の巻取り及び当該離間用牽引索の巻出し、又は当該離間用牽引索の巻取り及び当該接近用牽引索の巻出しが可能な駆動手段と、を備えることを特徴とするコイル台間隔調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−206288(P2006−206288A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22984(P2005−22984)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(598052562)株式会社ナカサク (2)
【出願人】(593005644)JFE物流株式会社 (11)
【Fターム(参考)】