説明

コイル封入成形品及びその製造方法

【課題】 コイル封入成形品におけるコイルの端末部のフォーミング加工を不要にして製造コストを低減し、磁性粉体の粉体成形体にクラックが発生しないようにする。
【解決手段】 この発明は金型を用いて磁性粉体にコイル1をインサート成形するコイル封入成形品3の製造方法であって、前記金型内にコイル1を配設するとともに、該コイル1の端末部1c,1dを前記コイル封入成形品3の外側面に突設させるように組み付ける工程と、前記金型内に前記磁性粉体を充填して粉体成形体2を形成する工程と、該粉体成形体2の成形硬化後、前記金型を離型させ、前記コイルの端末部1c,1dを薄板から成る端子部材4に設けた嵌挿孔5に挿入してハンダ又は溶接等の手段で電気的に結合する工程と、該端子部材4は適宜個所から直角に折曲されており、該折曲部4aを前記粉体成形体2の角部外側面に密挿させる工程を含み、該折曲部4aがコイル1のリード端子として使用されるように形成されたコイル封入成形品の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル封入成形品及びその製造方法に関するものであり、特に、各種民生機器の電子回路に用いられるコイル封入成形品とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルが配設された金型内に熱硬化性樹脂を含有した結合剤と金属粉体とを混合した粉体(以下、磁性粉体という。)を充填し、加熱加圧して成形されるコイル封入成形品が知られている。(例えば、特許文献1参照)。磁性粉体を用いてコイルをインサート成形したコイル封入成形品は、コイルの外部に漏れ磁束が出ないため、比較的巻数の小なるコイルであっても大なるインダクタンスが得られる。又、前記コイル封入成形品は、コイルによって発生した磁束が圧粉鉄心から外部に漏れないため、インダクタンスの特性のバラツキが小さく、且つ、部品定数が比較的安定している。従って、コイル封入成形品は各種民生機器の電子回路等に好んで利用されている。
【0003】
又、図6は従来のコイル封入成形品を示し、その平面図、図7は同図の正面図である。図6に示すように、コイル封入成形品10はコイル11が磁性粉体の粉体成形体12の中にインサートされ、コイル端末11aが外部に突出した構成となっている。
【特許文献1】特許第3642277号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び図6、図7に示すコイル封入成形品は、樹脂モールドのインサート成形と同様に、粉体成形体の外部に取り出されたコイルの端末部をフォーミング加工してリード端子として使用している。このようなコイルの端末部のフォーミング加工は前記コイルが比較的厚い板材又は断面大径の線材を用いられているため、極めて難易度の高い加工となっており、従って、コイル封入成形品の製造コストを上昇させる要因となっている。
【0005】
更に又、上記フォーミング加工が極めて困難な作業であるため、該フォーミング加工時に磁性粉体の粉体成形体にクラックが発生することがあり、従って、該磁性粉体による所定磁路が形成されなくなってコイルのインダクタンスを低下させるおそれがある。又は、該粉体成形体のクラックの有無や或いはクラックの大小によってコイルのインダクタンス値にバラツキが生じることもある。
【0006】
そこで、此種コイル封入成形品におけるコイル端末部のフォーミング加工を不要にして製造コストを低減させるとともに、磁性粉体の粉体成形体にクラックが発生しないようにするために解決せられるべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案せられたものであり、請求項1記載の発明は、金型を用いて磁性粉体にコイルをインサート成形するコイル封入成形品の製造方法であって、前記金型内にコイルを配設するとともに、該コイルの端末部を前記コイル封入成形品の外側面に突設させるように組み付ける工程と、前記金型内に前記磁性粉体を充填して粉体成形体を形成する工程と、該粉体成形体の成形硬化後、前記金型を離型させ、前記コイルの端末部を薄板から成る端子部材に設けた嵌挿孔に挿入してハンダ又は溶接等の手段で電気的に結合する工程と、該端子部材は適宜個所から直角に折曲されており、該折曲部を
前記粉体成形体の角部外側面に密挿させる工程を含み、該折曲部がコイルのリード端子として使用されるように形成されたコイル封入成形品の製造方法を提供するものである。
【0008】
このコイル封入成形品の製造方法によれば、金型内に配設されるコイルの端末部は前記コイル封入成形品の外側面に突設させる状態で磁性粉体が該金型内に充填されて粉体成形体が形成される。そして、該粉体成形体が硬化した後、金型を離型させ、前記コイルの端末部を、予め開穿されている嵌挿孔を有する端子部材の該嵌挿孔に嵌挿し、ハンダ等の手段で双方を結合させる。又、該端子部材の折曲部は粉体成形体の角部外側面に密接させてリード端子部を形成させる。
【0009】
請求項2記載の発明は、磁性粉体にコイルをインサートして成形した粉体成形体から成るコイル封入成形品であって、該コイルの端末部は上記コイル封入成形品の外側面に突設されており、且つ、該突設部を薄板から成る端子部材に設けられている嵌挿孔に嵌合し、ハンダ又は溶接等の手段で双方を結合するとともに、該端子部材は適宜個所から略直角に折曲されており、該折曲部を前記コイル封入成形品の角部外側面に接合して、コイルのリード端子として用いられるように形成したコイル封入成形品を提供する。
【0010】
この構成によれば、コイルの端末部がコイル封入成形品の外側面に突設されており、このコイルの端末部を、予め適宜個所から直角に折曲され、且つ、その水平部に穿設されている嵌挿孔に嵌挿してハンダ等の手段で電気的に結合されるとともに、前記折曲部をコイル封入成形品の角部外側面に密接させてコイルのリード端子として用いられる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、粉体成形体の外側面に突設されているコイルの端末部を、予め所定個所から直角に折曲され、そして、その水平部に開穿されている嵌挿孔に嵌挿してハンダ等の手段で電気的に結合し、更に、該折曲部を粉体成形体の角部外側面に密接させて、該折曲部をコイルのリード端子として用いるコイル封入成形品を製造するのであるから、コイルは比較的厚手の板体が用いられる此種コイル封入成形品であってもコイルの端末部は従来のようにコイルのリード端子を形成するためのフォーミング加工が不要となる。依って、フォーミング加工時の不必要な力が粉体成形体に負荷されることがないので、該粉体成形体にクラックが生じることがなくなる。依って、該クラックによるコイルのインダクタンスの低下又はインダクタンス値のバラツキ等の現象も防止でき、且つ、困難なフォーミング加工を必要としないので、コストダウンにも寄与することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、コイル封入成形品の外側面に突設されているコイルの端末部は薄板から成る端子部材に設けられた嵌挿孔に嵌挿されてハンダ等の手段で電気的に結合され、更に、予め、直角に折曲されてなる折曲部は前記コイル封入成形品の角部外側面に密接して取り付けられているため、該コイルの端末部は従来例のようにリード端子部を形成するためのフォーミング加工が不要となり、依って、請求項1と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、コイル封入成形品におけるコイルの端末部のフォーミング加工を不要として製造コストを低減させるとともに、磁性粉体の粉体成形体にクラックが発生しないようにすると云う目的を、金型を用いて磁性粉体にコイルをインサート成形するコイル封入成形品の製造方法であって、前記金型内にコイルを配設するとともに、該コイルの端末部を前記コイル封入成形品の外側面に突設させるように組み付ける工程と、前記金型内に前記磁性粉体を充填して粉体成形体を形成する工程と、該粉体成形体の成形硬化後、前記金型を離型させ、前記コイルの端末部を薄板から成る端子部材に設けた嵌挿孔に挿入してハンダ又は溶接等の手段で電気的に結合する工程と、該端子部材は適宜個所から直角に折曲されており、該折曲部を前記粉体成形体の角部外側面に密挿させる工程を含み、該折曲部がコイルのリード端子として使用されるように形成されたことを特徴とするコイル封入成形品の製造方法を提供することにより実現した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図5に従って詳述する。図1は本発明に用いる空芯コイル1を示す。即ち、同図に示すコイル1はコイル作成工程において、図示しない中空ボビン等を用いて絶縁被覆された厚手の平角コイルを所定回数だけ巻回して、該コイル1を作成する。該コイル1は図2に示すように略同じ直径で数ターン、例えば4ターン巻回して成る。
【0015】
又、該コイル1は平角コイルに限らず丸コイルであってもよいが、図4及び図5に示すように金型(図示せず)内に充填された磁性粉体の加熱加圧によって成形される粉体成形体2の成形工程時において、原形を維持できるための充分の強度を有する。従って、例えば平角コイルの場合は厚手のものが採択され、丸コイルの場合も断面大径のものが採択される。又、該コイル1はコイル1の巻始め即ち、始端部1aと巻き終り、即ち、終端部1bの各端末部1c,1dが前記粉体成形体2の外側面に突設するように長く延設されている。
【0016】
而して、該コイル1は金型(図示せず)内に設置され、そして、前記コイル1の始端部1a及び終端部1bの夫々の端末部1c,1dは粉体成形体2の外側面から突設させることができる状態に維持し、そして、該金型内に磁性粉体を注入充填し、該磁性粉体が加熱加圧され、硬化して前記粉体成形体2が成形される。このとき、該粉体成形体2内にインサートされる前記コイル1の巻線ピッチの間隔が成形課程において変動することはない。従って、成形課程においてコイル1のインダクタンス値が変動することはないので、定数のバラツキの少ない高品質のコイル封入成形品3を容易に成形することができる。
【0017】
図3は前記コイル1の始端部1a及び終端部1bの夫々の端末部1c,1dに結合される薄板から成る端子部材4を示す。該端子部材4は幅広のものが採択される。
【0018】
而して、該端子部材4は薄板を用いて所定位置から略直角に折曲され、該折曲部4aを前記粉体成形体2の角部の外側面に密接させてコイルのリード端子として用いられるように構成される。又、該端子部材4の水平部4bの略中心部には前記コイル1の始端部1a及び終端部1bの夫々の端末部1c,1dを嵌挿して結合するための嵌挿孔5が開穿されている。
【0019】
図4及び図5において夫々粉体成形体2の下面に前記端子部材4の水平部4bを当接するとき、前記コイル1の始端部1a及び終端部1bの夫々の端末部1c及び1dを該水平部4bに開穿されている前記嵌挿孔5内に嵌挿し、更に、ハンダ等の手段で双方を夫々電気的に結合して固定する。更に又、該端子部材4の折曲部4aは図4に示すように、粉体成形体2の角部2aを介して右方の外側面2bに密接され、そして、コイル1のリード端子として用いられる。
【0020】
斯くの如く、コイル1は厚手の平角コイル又は断面大径の丸コイルであっても、従来のように前記コイルのリード端子を形成するため、該コイル1の端末部1c,1dに夫々フォーミング加工を施す必要がないので、フォーミング加工時の力が前記粉体成形体2に負荷されて該粉体成形体2にクラック等が生じると云うことはなくなる。従って、コイル1の所定のインダクタンス値を保ち、又はインダクタンスの特性のバラツキが最少限に抑えられることが可能となる。
【0021】
更に又、図4及び図5において、前記コイル1の始端部1a及び終端部1bの夫々の端末部1c,1dの末端部が前記端子部材4の水平部4bの下面から僅かに下方へ突出しているが、この突出部分は必要に応じてカットされてもよい。
【0022】
又、コイル1の始端部1aと終端部1bの夫々の端末部1c,1dは図5においては粉体成形体2の同一外側面に存在するが、コイル1の巻数に応じ該始端部1aの端末部1cと終端部1bの端末部1dとは図4の鎖線で示すように、粉体成形体2の異なった外側面に配設されてもよい。
【0023】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に用いられるコイルの平面図。
【図2】図1の右側面図。
【図3】本発明の一実施例に用いられる端子部材の斜視図。
【図4】本発明のコイル封入成形品の右側面図。
【図5】図4のA−A線平面図。
【図6】従来例のコイル封入成形品の平面図。
【図7】図6の右側面図。
【符号の説明】
【0025】
1 コイル
1a 始端部
1b 終端部
2 粉体成形体
3 コイル封入成形品
4 端子部材
4a 折曲部
4b 水平部
5 嵌挿孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて磁性粉体にコイルをインサート成形するコイル封入成形品の製造方法であって、
前記金型内にコイルを配設するとともに、該コイルの端末部を前記コイル封入成形品の外側面に突設させるように組み付ける工程と、前記金型内に前記磁性粉体を充填して粉体成形体を形成する工程と、該粉体成形体の成形硬化後、前記金型を離型させ、前記コイルの端末部を薄板から成る端子部材に電気的に結合する工程と、該端子部材は適宜個所から直角に折曲されており、該折曲部を前記粉体成形体の角部外側面に密接させる工程を含み、該折曲部がコイルのリード端子として使用されるように形成されたことを特徴とするコイル封入成形品の製造方法。
【請求項2】
磁性粉体にコイルをインサートして成形した粉体成形体から成るコイル封入成形品であって、
該コイルの端末部は上記コイル封入成形品の外側面に突設されており、且つ、該突設部を薄板から成る端子部材に双方を結合するとともに、該端子部材は適宜個所から略直角に折曲されており、該折曲部を前記コイル封入成形品の角部外側面に接合して、コイルのリード端子として用いられるように形成したことを特徴とするコイル封入成形品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−201322(P2007−201322A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20326(P2006−20326)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】