説明

コイル部品及びコイル部品製造方法

【課題】高い耐電圧・耐電流特性を有し且つ可聴周波数領域にかかるような周波数で駆動されても可聴ノイズ・うなりを抑制することのできるコイル部品及びその製造方法を提供すること
【解決手段】コイル部品100は、コイル内包絶縁包囲物を磁芯80内部に埋設してなる構造を備える。コイル内包絶縁包囲物は、第1の樹脂からなる絶縁体50にてコイル30を該コイル30の端部12,22を除くようにして包囲して得られる。磁芯80は、第2の樹脂82と磁性体粉末84との混成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及びその製造方法に関し、特に、電気自動車やハイブリッドカーに搭載される蓄電バッテリーのエネルギー制御においてリアクトルとして用いられるコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッドカーにおいて昇圧・回生用として用いられるコイル部品の駆動周波数は可聴領域の数kHzから数十kHzにかかることから、駆動時には、コイルの線間、コイルと磁芯との間にて相互吸引力に起因した振動が生じるなどして、可聴ノイズ・うなりを発生させるという問題がある。加えて、エアギャップを設けることなく、例えば、200A以上の大電流を流した際にも磁気飽和しないような磁芯の構成は従来見当たらなかったのであるが、エアギャップを設けると上述した振動の可能性に加え、ギャップを挟んだコアとコアとの間で振動が生じる可能性もある。
【0003】
樹脂と磁性体粉末とからなる磁芯を備えるコイル部品が知られている(特許文献1参照)。特許文献1のコイル部品は、樹脂と磁性体粉末からなる磁芯に加え、フェライト焼結体又は金属磁性体粉末からなる圧粉磁芯を備えている。コイルは圧粉磁芯の周囲に巻回され、それを覆うようにして樹脂と磁性体粉末とからなる磁芯が設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−185421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の目的の一つは、駆動時にノイズ発生を低減することのできるインダクタ、チョークコイル、トランスなどの磁性素子を提供することであるとされている。
【0006】
しかしながら、以下に示すように、特許文献1において問題視しているノイズは、少なくとも本願において問題視している可聴ノイズ・うなりとは異なるメカニズムにより生じるものであると考えられる。
【0007】
特許文献1の0006欄の記載から明らかなように、特許文献1に記載されたコイル部品の対象としている周波数範囲は、いわゆる“高周波”であり、可聴周波数を遥かに超えた周波数領域である。実際、特許文献1の0006欄には「数百kHz〜MHz」という記載があり、且つ、「高周波」という文言がキーワードとして頻繁に用いられている。
【0008】
数百kHz〜MHzといった非常に高い周波数で仮にエアギャップ部分が振動したとしても人間の耳では聞き取れない音を発生するのみであり、それが上述したような可聴ノイズ・うなりになることは考えられない。
【0009】
従って、可聴周波数帯域にて駆動されたことにより生じる可聴ノイズ・うなりについての解決策は、特許文献1に記載された技術から離れて考察するのが妥当である。
【0010】
加えて、特許文献1においてターゲットとしているコイル部品は、その例示されているサイズなどからも明らかなように、小電力システム用のコイル部品である。従って、当然のことながら、数百ボルト以上の耐電圧性能や数百アンペア以上の耐不要パルス電流性能(サージ電流などの望まれない電流ノイズに対する耐性)は望めない。
【0011】
このように、特許文献1に記載されていたコイル部品を大電力・低周波数用途に流用することは不適切であると考えるのが妥当である。
【0012】
本発明は、上記を鑑み、高い耐電圧性能と高い耐不要パルス電流性能とを有し且つ可聴周波数領域にかかるような周波数で駆動されても可聴ノイズ・うなりを抑制することのできるコイル部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、少なくとも第1の樹脂からなる絶縁体にてコイルを該コイルの端部を除くようにして包囲して得られるコイル内包絶縁包囲物の少なくとも一部を、少なくとも磁性体粉末を含む粉末と第2の樹脂との混成物からなる磁芯内部に埋設してなる、ことを特徴とするコイル部品が得られる。
【発明の効果】
【0014】
上記したコイル部品においては、コイルが少なくとも第1の樹脂からなる絶縁体にて包囲されていることから耐電圧特性及び耐不要パルス電流性能に優れており、且つ、それを少なくとも磁性体粉末を含む粉末と第2の樹脂との混成物からなる磁芯内部に埋設していることからコイルの動きが固定されていることから、たとえ可聴周波数帯域で駆動されても可聴ノイズ・うなりを生じるような振動は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品について図1乃至図10を参照して詳細に説明する。
【0016】
第1の実施の形態によるコイル部品100は、図4乃至図6に示されるようなコイル内包絶縁包囲物60を磁芯80内部に完全に埋設してなる構造を備えている。
【0017】
コイル内包絶縁包囲物60は、第1の樹脂からなる絶縁体50にて、コイル30を包囲して得られるような構造を備えている。但し、コイル30の端部12,22は絶縁体50により包囲されてはいない。
【0018】
本実施の形態によるコイル30は、図1及び図2に示されるように、平角導線を縦巻にして得られるコイル部10,20を連結してなるメガネ状の構造を備えるものである。詳しくは、コイル部10は端部12,14を備えており、同様に、コイル部20は端部22,24を備えている。コイル部10の端部14はコイル部20の端部24と接続される。これにより、コイル部10の端部12からコイル部20の端部22に対して電流を流すと、コイル部10とコイル部20とに反対方向に向かう磁束流が生じることになる。この反対方向に向かう磁束流は互いに結合され、一つの磁路のループを形成する。換言すると、コイル部10,20は、磁気的に直列接続されるようにして、端部14,24を接続されている。本実施の形態においては、図示されたように、2つの個別部品たるコイル部10,20を物理的に接続する構成を採用しているが、平角導線を縦巻してコイル部10を形成した後、そのまま連続してコイル20を形成するように平角導線を更に縦巻することとして、一本の平角導線により連続したコイル30を構成することとしても良い。
【0019】
図3には、上記のようにして得られたコイル30を用いて、本実施の形態によるコイル内包絶縁包囲物60を形成する工程が示されている。図3を参照すると、まず作成しようとしているコイル内包絶縁包囲物60の形状に応じて、一時的な注型用容器40の形状を選択されていることが理解される。一時的な注型用容器40は、2つの内部円筒状突出部42と断面8の字状の外側部44とを備えている。2つの内部円筒状突出部42と断面8の字状の外側部44は、図示されてはいないが、8の字状の平面を有する一時的な注型用容器40の底部にて、連結されている。
【0020】
この一時的な注型用容器40の底部には第1の絶縁体スペーサ46が配置される。第1の絶縁体スペーサ46は、後述する絶縁体50と同材料により形成されているものであり、それぞれの厚みは、作成しようとしているコイル内包絶縁包囲物60におけるコイル30の軸方向における絶縁体50の厚み(図6においてt2として示される)に実質的に等しい。
【0021】
この第1の絶縁体スペーサ46を一時的な注型用容器40の底部に配置した後、その上に、コイル30を載せる。この時点で、コイル30は、一時的な注型用容器40の底部からt2だけ離れた位置に位置決めされている。但し、第1の絶縁体スペーサ46によって位置決めされるのはコイル30の軸方向(すなわち、コイル内包絶縁包囲物60の垂直方向)における位置のみであるので、コイル30の径方向(すなわち、コイル内包絶縁包囲物60の水平方向)における位置決めをすべく、第2の絶縁体スペーサ48をコイル30の径方向における周囲に挿入する。なお、これら第2の絶縁体スペーサ48の厚みは、コイル内包絶縁包囲物60におけるコイル30の径方向における絶縁体50の厚み(図5及び6においてt1として示される)に実質的に等しい。
【0022】
このようにして第1及び第2の絶縁体スペーサ46,48でコイル30の注型用容器40内における上下左右方向における位置決めを適切になされると、コイル30と注型用容器40との間を満たすようにして絶縁体50の材料が充填される。
【0023】
本実施の形態において、絶縁体50はエポキシ樹脂からなる。以下、絶縁体50を構成する樹脂を第1の樹脂と呼ぶ。
【0024】
第1の樹脂たるエポキシ樹脂には液状で低粘度であるといった要求があるため、添加剤、硬化剤、触媒との相溶性、保存安定性も具体的なエポキシ樹脂選定において考慮されるべき重要な特性である。そういったことを考慮すると、主剤としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、多官能型等のエポキシ樹脂を用いることができ、硬化剤としては芳香族ポリアミン系、カルボン酸無水物系、潜在性硬化剤系のものを用いることができる。本実施例では、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂と無溶剤型低粘度液状芳香族アミンの硬化剤との組合せを使用した。
【0025】
なお、第1の樹脂は例えばシリコーン樹脂のような他の熱硬化性樹脂としても良いし、化学反応性硬化樹脂、紫外線硬化性樹脂、光硬化性樹脂などの熱を加えずとも硬化するような硬化性樹脂であっても良い。
【0026】
いずれにしても、コイル30と注型用容器40との間を満たすようにして、注型された第1の樹脂が硬化することにより、図4乃至図6に示されるようなコイル内包絶縁包囲物60が得られる。
【0027】
このようにして得られた本実施の形態によるコイル内包絶縁包囲物60は、図4乃至図6から明らかなように、コイル30の有する2つの中空部32,34に対応する中空部62,64を有している。また、2つのコイル部間の絶縁体50の寸法として、Y方向(コイル部の並ぶ方向と直交する方向)において厚みt3を有し、且つ、X方向(コイル部の並ぶ方向)において厚みt4を有している。
【0028】
このようにして得られたコイル内包絶縁包囲物60は、ケース70内に、図7に示されるようにして位置決め配置される。
【0029】
位置決め材は、磁芯80と同じ材料からなるスペーサである。本実施の形態における磁芯80は後述するように樹脂と磁性体粉末との混成物から作成されるものであるので、このスペーサは混成物スペーサと呼ばれる。なお、混成物を構成する樹脂は、絶縁体50を構成する樹脂(第1の樹脂)と区別するために第2の樹脂と呼ばれる。但し、名称上は第1及び第2の樹脂として両者を区別しているが、本実施の形態においては、両者は同一の樹脂材料からなる。第1及び第2の樹脂を同一の樹脂で構成するのは、コイル内包絶縁包囲物60を磁芯80内に埋設する際に、両者が適切に且つ容易に一体化されるようにするためである。
【0030】
図7を参照すると、まず、第1の混成物スペーサ72がケース70の底面上に適宜配置され、その上に、コイル内包絶縁包囲物60が載せられる。これにより、コイル内包絶縁包囲物60の垂直方向における位置決めがなされる。次いで、第2及び第3の混成物スペーサ74,76をコイル内包絶縁包囲物60の水平方向周囲に配置することにより、コイル内包絶縁包囲物60の水平方向における位置決めも行う。なお、第1、第2及び第3の混成物スペーサ72,74,76の大きさは、コイル内包絶縁包囲物60をケース70内においてどのような位置に配置したいかによって適宜変更することができる。本実施の形態においては、図8乃至図10に示されるように、コイル内包絶縁包囲物60がコイル30の端部12,22を除いてケース70内において混成物からなる磁芯80の中に完全に埋設されるように、第1、第2及び第3の混成物スペーサ72,74,76の大きさが決定されている。
【0031】
このようにして、第1乃至第3の混成物スペーサ72,74,76を用いて、ケース70内におけるコイル内包絶縁包囲物60の位置決めが行われた後、図8乃至図10に示されるようにケース70とコイル内包絶縁包囲物60との間を満たすようにして、第2の樹脂82と磁性体粉末84との混成物をケース70内に流し込み、第2の樹脂82を硬化させることで本実施の形態による磁芯80を得る。
【0032】
上記の説明から明らかなように、混成物による磁芯80は、当該混成物を注型してなる注型品である。ここで、高電力用途のコイル部品のようにサイズが大きい場合、特に当該コイル部品が一定以上の高さを有する場合を考慮すると、混成物は溶剤を加えることなく注型できる材料からなることが好ましい。
【0033】
注型は、基本的には無加圧又は減圧で行われる。一旦、注型した後に、圧力を加え、充填率(磁芯80の密度)を向上させることとしても良い。混成物を注型する際の型形状については特に制限はなく、従って、混成物からなる磁芯80の形状としてはあらゆる形状が考えられる。
【0034】
混成物を構成する磁性体粉末84は軟磁性粉末、詳しくは、Fe系の軟磁性金属粉末である。更に具体的には、軟磁性金属粉末はFe−Si系粉末、Fe−Si−Al系粉末、Fe−Ni系粉末、及びFe系アモルファス粉末からなる群から選択された粉末である。ここで、Fe−Si系粉末における平均Si含有量は好ましくは0.0重量%以上11.0重量%以下である。また、Fe−Si−Al系粉末における平均Si含有量は好ましくは0.0重量%以上11.0重量%以下であり、平均Al含有量は好ましくは0.0重量%以上7.0重量%以下である。また、Fe−Ni系粉末における平均Ni含有量は好ましくは30.0重量%以上85.0重量%以下である。
【0035】
特に、本実施の形態による磁性体粉末84としては略球状の粉末が用いられている。このように略球状の磁性体粉末84を用いると、混成物における磁性体粉末84の充填率を向上させることができる。かかる略球状の磁性体粉末84は、例えばガスアトマイズ法によって得られる。ガスアトマイズ法によれば、磁性体粉末84の粒径及び形状はある程度の分布を有することとなるが、目安としては、最も標準的な磁性体粉末84の粒径(平均粒径)が500μm以下であることが望ましく、これを超えると十分な歩留まりや特性・性能が得られない。
【0036】
ガスアトマイズ法によれば、上記のような略球状の粉末の他に、非球状の粉末を意図的に形成することもできる。また、水アトマイズ法によれば、不定形の粉末を得ることもできる。本発明においては、当該実施の形態において採用されている略球状の粉末に代えて上記の手法により得られた非球状粉末や不定形粉末、その他の形状の粉末をも使用することができる。略球状以外の磁性体粉末84を採用する理由としては例えばその形状に起因した異方性を利用することが挙げられる。より具体的には、例えば、非球状、扁平状、又は針状の磁性体粉末84を第2の樹脂82に混成し、その樹脂82を硬化させる前に所定の磁界を加えて粉末群の異方性配向を行い、その後に樹脂82を硬化させるといった利用法が考えられる。
【0037】
混成物における第2の樹脂82の配合比率は流動性などを考慮して20体積%以上90体積%以下である必要がある。好ましくは、混成物における第2の樹脂82の配合比率は40体積%以上70体積%以下である。
【0038】
可聴域ノイズ・うなりを低減するための低騒音用途を考慮した場合、混成物からなる磁芯80の弾性率は3000MPa以上である必要がある。この場合、第2の樹脂82は、この磁芯80の弾性率を実現すべく、混成物を硬化させて磁芯80を得る際の条件と同条件にて第2の樹脂82を単独で硬化させた場合の当該樹脂82の弾性率が100MPa以上となるようにして、選択される。なお、上記の磁芯80又は硬化樹脂82の弾性率は、JIS−K6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に従って測定される値である。
【0039】
本実施の形態においては、混成物からなる磁芯80の弾性率は15000MPaであり、同一の硬化条件の下で硬化した第2の樹脂82単独の弾性率は1500MPaである。磁芯80の弾性率が15000MPa以上となると熱伝導率がそれ以下の場合と比較して2W/(K・m)以上と良くなる。従って、磁芯80の弾性率は好ましくは15000MPa以上であるとする。
【0040】
図19は、Fe−Si系粉末とエポキシ樹脂とを50体積%ずつ混成してなる混成物から得られる磁芯80の直流電流重畳特性を示す。図19を参照すれば明らかなように、本実施の形態における混成物からなる磁芯80の比透磁率は急激には飽和せず1000×10/4π[A/m]の磁界中においても15以上という比較的高い比透磁率を有している。
【0041】
上記した磁芯80は、その比透磁率が1000×10/4π[A/m]の磁界中において10以上である限り、適宜変更可能である。例えば、初期透磁率を若干大きくするために、磁性体粉末84の表面に高透磁率薄膜層を形成することとしても良い。ここで、高透磁率薄膜の例としてはFe−Ni系薄膜が挙げられる。また、磁性体粉末84による電気的短絡を避けるべく、磁性体粉末84を、樹脂と混成する前に、一層以上の絶縁層でコーティングすることとしても良い。ここで、磁性体粉末84の表面に高透磁率薄膜を形成する場合は、形成された高透磁率薄膜上に絶縁層をコーティングすることとする。更に、より高磁界中で高い比透磁率を確保すべく磁性体粉末84及び第2の樹脂82の混成物に対して非磁性フィラーを加えることとしても良い。非磁性フィラーとしては、例えば、シリカ粉、アルミナ粉、酸化チタン粉、石英ガラス粉、ジルコニウム粉、炭酸カルシウム粉または水酸化アルミニウム粉を含む無機質材系粉末、ガラス繊維、及び課粒状樹脂からなる群から選択された一の充填材が挙げられる。非磁性フィラーに代えて、透磁率調整用として、中空ガラス球を樹脂に混ぜることとしても良い。また、直流電流重畳特性をより高磁界中まで良好に伸ばすために永久磁石粉末を少量加えて磁芯80に磁気バイアスをかけることとしても良い。
【0042】
本実施の形態においては、上述したように、コイル内包絶縁包囲物60の絶縁体50を構成する第1の樹脂と、磁芯80の混成物の材料たる第2の樹脂82とを同一の硬化性樹脂として、両者の物理的整合を図り、低周波数領域で駆動した場合に生じる可能性のある応力が両者を分断しないようにして新たな騒音防止がなされている。このような両者の物理的整合を図る他の手法としては、絶縁体50に非磁性フィラーを添加することが挙げられる。
【0043】
絶縁体50に添加される非磁性フィラーは、混成物が硬化して磁芯80が形成された場合に当該磁芯80が呈する弾性率又は線膨張率の少なくとも一方と絶縁体50が硬化した際に呈する弾性率又は線膨張率とを対応させるようにして、選択される。この場合における非磁性フィラーとしても、前述の混成物に添加可能な非磁性フィラーを用いることができる。すなわち絶縁体50に添加可能な非磁性フィラーの例としては、シリカ粉、アルミナ粉、酸化チタン粉、石英ガラス粉、ジルコニウム粉、炭酸カルシウム粉または水酸化アルミニウム粉を含む無機質材系粉末、ガラス繊維、及び課粒状樹脂からなる群から選択された一の充填材からなるものが挙げられる。なお、第1及び第2の樹脂を同一の硬化性樹脂からなるものとした上で、更に、絶縁体50に非磁性フィラーを添加して、上記の効果を狙うこととしても良いことは言うまでもない。
【0044】
絶縁体50に添加される非磁性フィラーとしては略球状粉末のものが好ましく、その平均粒径は500μm以下であることが望ましい。
【0045】
絶縁体50における第1の樹脂と非磁性フィラーとの配合比率については、流動性などを考慮して、第1の樹脂が30体積%以上であることが必要とされる。加えて、後述するように磁芯80と比較した場合の絶縁体50の磁気抵抗の高さを利用するような場合には、非磁性フィラーの含有量を50体積%以上とすることが好ましい。即ち、この場合には、第1の樹脂の配合比率は30体積%以上50体積%以下となる。
【0046】
ここで、絶縁体50の各部の厚みt1、t2、t4(図5及び図6参照)と、磁芯80を構成する磁性体粉末84の粒径d1との寸法的関係について言及する。良好な絶縁特性を確保するためには、絶縁体50の各部厚みt1、t2、t4は磁性体粉末84の粒径d1の3分の1よりも大きいことが望ましい。すなわち、t1>d1/3、t2>d1/3及びt4>d1/3である。同様に、絶縁体50に添加される非磁性フィラーの粒径をd2とした場合、絶縁体50の各部厚みt1、t2、t4は非磁性フィラーの粒径d2の3分の1よりも大きいことが望ましい。すなわち、t1>d2/3、t2>d2/3及びt4>d2/3である。更に、磁気回路において有効でない磁束のショートパスモードを避けるためには、t3≧t4>d2/3であることが望ましい。
【0047】
本実施の形態におけるケース70は、アルミニウム合金からなるものである。このケース70は例えばFe−Ni系合金など他の金属・合金で形成されていても良い。ケースが金属製である場合、適切な絶縁性能を確保するためには、ケース70の内面に絶縁膜を形成し、その後に混成物を注型して磁芯80を形成することが好ましい。なお、ケース70は例えばアルミナ成形体のようなセラミックスケースであっても良い。
【0048】
なお、本実施の形態においては、ケース70に対して混成物を注型することにより、ケース70に対して磁芯80及びそれに埋設されたコイル内包絶縁包囲物60を固定することとしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、一旦、フッ素樹脂シートの組み合わせで一時的なケースを作成し、これに対して混成物を注型することで磁芯80及びコイル内包絶縁包囲物60を備えるコイル部品を構成することとしても良い。これは例えば磁気ヨークとして機能するケース70を他の部品と共用部品とすることから、一旦、ケース70抜きでコイル部品を形成し、その後、そのコイル部品を共用部品たるケース70内に配置するといった場合に有効である。
【0049】
次に、図11乃至図15を用いて、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品について説明する。第2の実施の形態によるコイル部品においては、コイル内包絶縁包囲物61の形状のみが第1の実施の形態によるコイル部品100と異なる点であるので、以下の説明はこれに注力することとする。
【0050】
図13及び図5を比較すると明らかなように、本実施の形態によるコイル内包絶縁包囲物61のコイル部間の領域におけるY方向厚みt5は、第1の実施の形態におけるコイル内包絶縁包囲物60のコイル部間領域におけるY方向厚みt3よりも遥かに大きい。この厚みt5はコイル内包絶縁包囲物61における絶縁体50を増量した結果であるので、コイル部間に高い磁気抵抗領域54を配置したようなことと同じ効果を有する。
【0051】
より具体的には、図14及び図15に示されるように、第1の実施の形態によるコイル内包絶縁包囲物60の2つのコイル部間に、コイル30の軸方向と平行に延びる高磁気抵抗領域56,58がY方向において付加されたような形態となっている。この高磁気抵抗領域54(56,58)は、絶縁体50と同材料で形成されるものであり、本実施の形態においては20以下の比透磁率を有する。この高磁気抵抗領域54(56,58)の存在により、コイル30を構成する2つのコイル部のそれぞれにおいて生じた磁束は効率よく他のコイル部の中空部を通るようになる。
【0052】
本実施の形態においては、一時的な注型用容器41の形状を選択するだけで、上記のような高磁気抵抗領域54の形成を可能としている。すなわち、図3と図11とを比較すれば明らかなように、外側部45として8の字よりも陸上競技用トラックに近いような断面形状を有するものを採用している。これにより、図12及び図13に示されるような高磁気抵抗領域54を有するコイル内包絶縁包囲物62を簡単に形成することができる。なお、理論上は、まず第1の実施の形態によるコイル内包絶縁包囲物60を形成し、その後、別途作成した高磁気抵抗部材(高磁気抵抗領域56,58のような形状を有するもの)をそこに接着することも可能であるが、本実施の形態において紹介したような製造方法の方がコスト増加を抑えられる点で有利なのは言うまでもない。
【0053】
次に、図16乃至図18を用いて、本発明の第3の実施の形態によるコイル部品について説明する。第3の実施の形態によるコイル部品110は、第1の実施の形態によるコイル部品100において磁路の一部に、磁芯80の材料である混成物よりも磁気抵抗の高い材料からなる高磁気抵抗部材90が配置されてなるものである。
【0054】
かかる高磁気抵抗部材90が磁路の一部に挿入されると、コイル部品のインダクタンスがより高磁界中まで飽和しにくくなるという利点がある。
【0055】
本実施の形態における高磁気抵抗部材90は、絶縁体50と同じ材料からなるものであり、磁路中に20以上の比透磁率を有する高磁気抵抗領域を形成している。高磁気抵抗部材90は、例えば、絶縁体50に含まれる第1の樹脂と同じ樹脂から形成しても良いし、同樹脂に絶縁体50とは異なる非磁性フィラーを混ぜたもので形成しても良い。また、高磁気抵抗部材90は、例えば、絶縁体50に含まれる第1の樹脂と同じ樹脂に対して所定量(結果として高磁気抵抗部材90の磁気抵抗が混成物よりも高くなる程度の量)の磁性体粉末を混ぜたもので形成しても良い。
【0056】
図18に示されるように、高磁気抵抗部材90は、コイル30の中空部内に配置されている。これは、高磁気抵抗部材90がこの位置にあれば高磁気抵抗部材90の部分から磁束漏れが生じることがないためである。また、図18から理解されるように、本実施の形態においてはコイル30を構成するコイル部のそれぞれの中空部内に2つの高磁気抵抗部材90が互いに平行になるように配置されている。このような位置に各高磁気抵抗部材90を配置するには、例えば、混成物をケース70内に注型する途中で、混成物が適切なレベルに達したときに、予め作成しておいた高磁気抵抗部材90をコイル内包絶縁包囲物の中空部の所定の位置に落として配置すればよい。
【0057】
各高磁気抵抗部材90は図16及び図17に示されるように、凹面92及び平面94を有する凹レンズ形状を有している。このようにして、図示されたコイル部品110においては各コイル部で生じた磁束が効率よく他方のコイル部の中心領域を通過するように構成されている。
【0058】
なお、高磁気抵抗部材90の形状は、図16及び図17に示されるものには限られず、中心部の厚みが外周部の厚みよりも薄いものであれば、同様に磁束の密度の分布の平均化を達成することができる。高磁気抵抗部材90の形状として平板形状(対向する平面が平行なもの)を採用した場合には、磁束の密度の分布の平均化という点では若干劣ることとなるが、第1の実施の形態のように高磁気抵抗部材90を設けないものと比較すればインダクタンスが飽和しにくくなるという利点はある。
【0059】
上述した実施の形態は、本発明の概念の下、様々な変更が可能である。例えば、上述した第1乃至第3の実施の形態においては、コイル内包絶縁包囲物60,61はコイル30を第1の樹脂又は第1の樹脂と非磁性フィラーとからなる絶縁体50にて注型・封入したものであったが、コイル30の絶縁特性(線間絶縁及びコイル部間絶縁)を確保できる限り、他の形態を採用しても構わない。
【0060】
例えば、図20に示されるように、コイル内包絶縁包囲物160として、絶縁体150を有するものを用いても良い。絶縁体150は、中空部151を有する略円筒状のプロファイルを有するものであり、ボビン152とカバー156とから構成されている。ボビン152及びカバー156の材質は、上述した第1乃至第3の実施の形態における第1の樹脂と同じである。ボビン152にはらせん状の溝153が形成されている。コイル30は溝153に保持されるように、ボビン152の周囲に巻回され、その結果、溝153と円筒状のカバー156とで形成される空間内にコイル30が配置されることとなる。らせん状の溝153は、部分的に見れば、図20に示されるように、溝部間に絶縁材からなる壁(線間絶縁部)154を有することとなるので、巻回されたコイル30の近接する部位は互いに適切に絶縁されることとなる。
【0061】
図21及び図22に示されるように、従来の圧粉磁芯や積層磁芯からなる特定透磁率磁芯部材210にてコイル部品200の磁路の一部を構成することとしても良い。
【0062】
この場合、特定透磁率磁芯部材210は、コイル内包絶縁包囲物260の周囲及び/又は中空部261内に配置されることとなり、特定透磁率磁芯部材210は混成物からなる磁芯80によりコイル内包絶縁包囲物260に対して固定される。
【0063】
特定透磁率磁芯部材210の例としては、Fe系アモルファス粉末、又はFe−Si−Al系、Fe−Si系、若しくはFe−Ni系の粉末からなる圧粉磁芯部材や、Fe系積層磁芯部材が挙げられる。
【0064】
なお、第1乃至第3の実施の形態におけるコイル30は平角導線を縦巻して得られるものであったが、例えば、図22に示されるように丸線を巻回してなるものやリッツ線を巻回してなるものであっても良い。また、第1乃至第3の実施の形態におけるコイル30は、2つのコイル部からなるメガネ状のものであったが、図22に示されるようなソレノイドコイルであっても良いし、また、トロイダルコイルであっても良い。
【0065】
更に、上述した実施の形態においては、絶縁体スペーサ46,48や混成物スペーサ72,74,76を用いてコイル30の位置決めをしつつコイル内包絶縁包囲物60,61やコイル部品100,110を形成する場合について説明してきたが、例えば、コイル30の部材自体がある程度の剛性を有するものである場合にはコイル30の端部12,22を保持してコイル30を吊り下げた状態にて絶縁体50又は磁芯80の注型を行えば同様の構成のものを製造することができる。また、フッ素樹脂線等にてコイル30を吊り下げた状態で絶縁体50又は磁芯80の注型を行っても同様のコイル部品100,110を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上具体的な例を掲げて説明してきた磁芯及びコイル部品の応用先としては、例えば、太陽光発電や風力発電などに用いられる昇電圧制御用のコイル部品や降電圧制御用のコイル部品などがある。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるコイル部品に含まれるコイル部を示す斜視図である。
【図2】図1に示されるコイル部から形成されるコイルを示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態によるコイル部品に含まれるコイル内包絶縁包囲物の製造工程を示す斜視図である。
【図4】図3に示される製造工程に従って製造されたコイル内包絶縁包囲物を示す斜視図である。
【図5】図4に示されるコイル内包絶縁包囲物の上面図である。
【図6】図5に示されるコイル内包絶縁包囲物の断面図である。
【図7】第1の実施の形態によるコイル部品の製造工程を示す斜視図である。
【図8】第1の実施の形態によるコイル部品を示す斜視図である。
【図9】図8に示されるコイル部品の上面図である。
【図10】図9に示されるコイル部品の断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるコイル部品に含まれるコイル内包絶縁包囲物の製造工程を示す斜視図である。
【図12】図11に示される製造工程に従って製造されたコイル内包絶縁包囲物を示す斜視図である。
【図13】図12に示されるコイル内包絶縁包囲物の上面図である。
【図14】図12に示されるコイル内包絶縁包囲物の構造を説明するために用いられる斜視図である。
【図15】図12に示されるコイル内包絶縁包囲物の構造を説明するために用いられる上面図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態によるコイル部品に含まれる高磁気抵抗部材を示す斜視図である。
【図17】図16に示される高磁気抵抗部材の断面図である。
【図18】図16及び図17に示される高磁気抵抗部材を含む、第3の実施の形態によるコイル部品を示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態におけるコイル部品に用いられている磁芯の直流電流重畳特性を示すグラフである。
【図20】コイル内包絶縁包囲物の変形例を示す図である。ここで、このコイル内包絶縁包囲物はボビン及びカバーを備えている。
【図21】コイル部品の他の変形例を示す斜視図である。
【図22】図21に示されるコイル部品の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 コイル部
12 端部
14 端部
20 コイル部
22 端部
24 端部
30 コイル
32 中空部
34 中空部
40 一時的な注型用容器
41 一時的な注型用容器
42 円筒状内部突出部
44 外側部
45 外側部
46 第1の絶縁材スペーサ
48 第2の絶縁材スペーサ
50 絶縁体
52 絶縁体
54 高磁気抵抗領域
56 高磁気抵抗領域
58 高磁気抵抗領域
60 コイル内包絶縁包囲物
61 コイル内包絶縁包囲物
62 中空部
64 中空部
70 ケース
72 第1の混成物スペーサ
74 第2の混成物スペーサ
76 第3の混成物スペーサ
80 磁芯
82 第2の樹脂
84 磁性体粉末
90 高磁気抵抗部材
92 凹面
94 平面
100 コイル部品
110 コイル部品
150 絶縁体
151 中空部
152 ボビン
153 溝
154 線間絶縁部
156 カバー
200 コイル部品
210 特定透磁率磁芯部材
260 コイル内包絶縁包囲物



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の樹脂からなる絶縁体にてコイルを該コイルの端部を除くようにして包囲して得られるコイル内包絶縁包囲物の少なくとも一部を、少なくとも磁性体粉末を含む粉末と第2の樹脂との混成物からなる磁芯内部に埋設してなる、ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記コイル内包絶縁包囲物は、前記コイルの端部を除いて、前記混成物からなる磁芯内部に完全に埋設されている、ことを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
前記コイル内包絶縁包囲物は、前記絶縁体を注型して得られる注型品である、ことを特徴とする請求項1又は2記載のコイル部品。
【請求項4】
前記コイル内包絶縁包囲物は、前記絶縁体からなり周囲に溝を有するボビンと、該ボビンの前記溝に保持されるようにして該ボビンの周囲に巻回された前記コイルと、該ボビンの周囲を覆うカバーとを備えており、前記コイルは、前記ボビンの溝と前記カバーとにより形成される空間に収容されている、ことを特徴とする請求項1又は2記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とは同一の硬化性樹脂からなる、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂はいずれも熱硬化性樹脂である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載のコイル部品。
【請求項7】
前記磁性体粉末の表面に高透磁率薄膜層が形成されている、ことを特徴とする、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項8】
前記磁性体粉末は、前記第2の樹脂と混成される前に、一層以上の絶縁層でコーティングされている、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項9】
前記混成物における前記第2の樹脂の配合比率は20体積%以上90体積%以下である、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項10】
前記混成物における前記第2の樹脂の配合比率は40体積%以上70体積%以下である、ことを特徴とする請求項9記載のコイル部品。
【請求項11】
前記混成物における前記第2の樹脂はエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂である、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項12】
前記絶縁体における前記第1の樹脂はエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂である、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項13】
前記磁性体粉末は軟磁性粉末からなる、ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項14】
前記軟磁性粉末は軟磁性金属粉末である、ことを特徴とする請求項13記載のコイル部品。
【請求項15】
前記軟磁性金属粉末はFe−Si系粉末である、ことを特徴とする請求項14記載のコイル部品。
【請求項16】
前記Fe−Si系粉末における平均Si含有量は0.0重量%以上11.0重量%以下である、ことを特徴とする請求項15記載のコイル部品。
【請求項17】
前記軟磁性金属粉末はFe−Si−Al系粉末である、ことを特徴とする請求項14記載のコイル部品。
【請求項18】
前記Fe−Si−Al系粉末における平均Si含有量は0.0重量%以上11.0重量%以下であり、平均Al含有量は0.0重量%以上7.0重量%以下である、ことを特徴とする請求項17記載のコイル部品。
【請求項19】
前記軟磁性金属粉末はFe−Ni系粉末である、ことを特徴とする請求項14記載のコイル部品。
【請求項20】
前記Fe−Ni系粉末における平均Ni含有量は30.0重量%以上85.0重量%以下である、ことを特徴とする請求項19記載のコイル部品。
【請求項21】
前記軟磁性金属粉末はFe系アモルファス粉末である、ことを特徴とする請求項14記載のコイル部品。
【請求項22】
前記磁性体粉末は略球状粉末である、ことを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項23】
前記コイルの径方向における前記絶縁体の厚みを第1の厚みとし、前記コイルの軸方向における前記絶縁体の厚みを第2の厚みとする場合において、前記第1及び第2の厚みのいずれも前記磁性体粉末の平均粒径の3分の1よりも大きい、ことを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項24】
前記混成物は非磁性フィラーを含む、ことを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項25】
前記混成物からなる前記磁芯は1000×10/4π[A/m]の磁界中にて10以上の比透磁率を有する、ことを特徴とする請求項1乃至24のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項26】
前記絶縁体は非磁性フィラーを前記第1の樹脂に加えてなる、ことを特徴とする請求項1乃至25のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項27】
前記非磁性フィラーは、前記混成物が硬化した場合に呈する弾性率又は線膨張率の少なくとも一方と当該非磁性フィラーを含む前記絶縁体が硬化した際に呈する弾性率又は線膨張率とを対応させるようにして、選択されている、ことを特徴とする請求項26記載のコイル部品。
【請求項28】
前記非磁性フィラーは、シリカ粉、アルミナ粉、酸化チタン粉、石英ガラス粉、ジルコニウム粉、炭酸カルシウム粉または水酸化アルミニウム粉を含む無機質材系粉末、ガラス繊維、及び課粒状樹脂からなる群から選択された一の充填材である、ことを特徴とする請求項26又は27記載のコイル部品。
【請求項29】
前記非磁性フィラーは略球状粉末である、ことを特徴とする請求項26乃至28のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項30】
前記コイルの径方向における前記絶縁体の厚みを第1の厚みとし、前記コイルの軸方向における前記絶縁体の厚みを第2の厚みとする場合において、前記第1及び第2の厚みのいずれも前記磁性体粉末の平均粒径の3分の1よりも大きく、且つ、前記非磁性フィラーの平均粒径の3分の1よりも大きい、ことを特徴とする請求項29記載のコイル部品。
【請求項31】
前記第1の樹脂と前記非磁性フィラーとからなる前記絶縁体における前記第1の樹脂の配合比率は30体積%以上である、ことを特徴とする請求項26乃至30のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項32】
前記コイル内包絶縁包囲物は前記コイルに囲まれた中空部を有する、ことを特徴とする請求項1乃至31のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項33】
前記コイル内包絶縁包囲物の周囲及び/又は前記中空部内に配置された少なくとも一つの特定透磁率磁芯部材を更に備えており、該特定透磁率磁芯部材は前記混成物からなる前記磁芯により前記コイル内包絶縁包囲物に対して固定されている、ことを特徴とする請求項32記載のコイル部品。
【請求項34】
前記特定透磁率磁芯部材は、Fe系アモルファス粉末、又はFe−Si−Al系、Fe−Si系、若しくはFe−Ni系の粉末からなる圧粉磁芯部材であるか、又は、Fe系積層磁芯部材である、ことを特徴とする請求項33記載のコイル部品。
【請求項35】
前記混成物からなる前記磁芯内に埋設された、前記混成物よりも磁気抵抗の高い高磁気材料部材を更に有する、ことを特徴とする請求項32乃至34のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項36】
前記高磁気材料部材は前記第1の樹脂と同じ樹脂を含む材料からなる、ことを特徴とする請求項35記載のコイル部品。
【請求項37】
前記高磁気材料部材は前記絶縁体と同一材料からなる、ことを特徴とする請求項36記載のコイル部品。
【請求項38】
前記高磁気材料部材は前記中空部内に配置されている、ことを特徴とする請求項32乃至37のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項39】
前記高磁気材料部材は少なくとも2以上あり、該高磁気材料部材は互いに平行となるように配置されている、ことを特徴とする請求項38記載のコイル部品。
【請求項40】
前記高磁気材料部材は外周部の厚みよりも中心部の厚みの方が薄い形状を備えている、ことを特徴とする請求項38又は39記載のコイル部品。
【請求項41】
前記高磁気材料部材は前記混成物からなる前記磁芯内部に比透磁率20以下の領域を形成する、ことを特徴とする請求項35乃至40のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項42】
前記混成物からなる前記磁芯は、前記コイルの中空部を通る磁路のループを構成している、ことを特徴とする請求項32記載のコイル部品。
【請求項43】
前記コイルは2以上のコイル部を各コイル部の軸方向が互いに平行になるようにして且つ隣接する2つの前記コイル部が一の磁路を形成するようにして接続して得られるような形状を備えており、前記隣接する2つの前記コイル部間には該コイル部の軸方向と平行な方向に延びる高磁気抵抗領域が形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至42のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項44】
前記高磁気抵抗領域は20以下の比透磁率を有する、ことを特徴とする請求項43記載のコイル部品。
【請求項45】
前記高磁気抵抗領域は前記第一の樹脂と同じ樹脂を含む材料からなる、ことを特徴とする請求項43又は44記載のコイル部品。
【請求項46】
前記高磁気抵抗領域は前記絶縁体と同一材料からなる、ことを特徴とする請求項45記載のコイル部品。
【請求項47】
ケースを更に備え、前記コイル内包絶縁包囲物が前記ケース内に配置され、前記混成物からなる前記磁芯は前記コイル内包絶縁包囲物と前記ケースとの間の空間を満たし且つ前記コイル内包絶縁包囲物を当該磁芯内部に封入している、ことを特徴とする請求項1乃至46のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項48】
前記ケースはセラミックスケース又は内面に絶縁層の形成された金属ケースである、ことを特徴とする請求項47記載のコイル部品。
【請求項49】
前記金属ケースはアルミニウム若しくはFe−Ni合金からなる、又は前記セラミックスケースはアルミナ成形体からなる、ことを特徴とする請求項48記載のコイル部品。
【請求項50】
前記磁芯は、前記混成物を注型することにより得られる注型品である、ことを特徴とする請求項1乃至49のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項51】
前記混成物は溶剤を用いることなく注型できる材料からなる、ことを特徴とする請求項50記載のコイル部品。
【請求項52】
少なくとも第1の樹脂からなる絶縁体にてコイルを該コイルの端部を除くようにして包囲して得られるコイル内包絶縁包囲物と、少なくとも磁性体粉末を含む粉末と第2の樹脂からなる混成物で形成された磁芯とを備えるコイル部品の製造方法であって、
前記混成物にて混成物スペーサを形成するステップと、
前記混成物スペーサを用いて前記コイル内包絶縁包囲物の前記ケース内における位置決めを行うステップと、
前記混成物を前記ケース内に流し込むステップと、
該混成物を硬化させて、前記混成物からなる前記磁芯内部に前記コイル内包絶縁包囲物を埋設するステップと
を備えることを特徴とするコイル部品製造方法。
【請求項53】
前記絶縁体にて絶縁体スペーサを形成するステップと、
一時的な注型用容器を用意すると共に、前記絶縁体スペーサを用いて前記コイルの前記一時的な注型用容器内における位置決めを行うステップと、
前記コイルの端部を除き前記絶縁体にて前記コイルを包囲するように、前記一時的な注型用容器内に前記絶縁体を流し込むステップと、
該絶縁体を硬化させて前記コイル内包絶縁包囲物を形成するステップと
を更に備えることを特徴とする請求項52記載のコイル部品製造方法。
【請求項54】
前記コイル内包絶縁包囲物は前記コイルに囲まれた中空部を有しており、
前記混成物よりも磁気抵抗の高い材料にて高磁気材料部材を形成するステップと、
前記混成物を前記ケース内に流し込むステップの途中で該高磁気材料部材を前記コイル内包絶縁包囲物の前記中空部内に配置するステップと
を更に備えることを特徴とする請求項52又は53記載のコイル部品製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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