コイル部品
【課題】信号の反射を低減できるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品において、セラミック層C2等の積層方向において導体パターンP1の断面が凹凸状をなしていると共に、導体パターンP1の延在方向に沿って凹凸13が形成されている。信号が高周波化した高周波電流は、表皮効果によって導体パターンP1の表面を流れる。このとき、導体パターンP1の断面が凹凸状をなしているため、断面矩形状の従来の導体パターンよりも表面積が大きい。そのため、高周波電流に対する抵抗の低下、つまりインピーダンスの低減を図ることができる。また、導体パターンP1の延在方向に沿って凹凸13が形成されているため、延在方向における導体パターンP1の表面積も増大しており、高周波電流が反射して往復する距離を増大させることができる。
【解決手段】コイル部品において、セラミック層C2等の積層方向において導体パターンP1の断面が凹凸状をなしていると共に、導体パターンP1の延在方向に沿って凹凸13が形成されている。信号が高周波化した高周波電流は、表皮効果によって導体パターンP1の表面を流れる。このとき、導体パターンP1の断面が凹凸状をなしているため、断面矩形状の従来の導体パターンよりも表面積が大きい。そのため、高周波電流に対する抵抗の低下、つまりインピーダンスの低減を図ることができる。また、導体パターンP1の延在方向に沿って凹凸13が形成されているため、延在方向における導体パターンP1の表面積も増大しており、高周波電流が反射して往復する距離を増大させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品として、複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、積層体の端面側に形成された端子電極と、複数の導体パターンが互いに電気的に接続されて構成され、積層体の内部に配置されたコイルとを備えた積層型チップインダクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−136307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなインダクタ部品を信号系の回路に組み込む場合、インダクタ部品の前後に抵抗器を接続して配置される。このとき、抵抗器及びインダクタ部品に信号を流すと、インピーダンスの不整合により導体を伝わる信号が反射し、信号の減衰が生じるおそれがある。また、反射によって不要な輻射が生じ、ノイズの原因となってしまうおそれもある。従って、信号の反射成分を低減することが求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、信号の反射を低減できるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るコイル部品は、複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、複数の導体パターンが互いに電気的に接続されて構成され、積層体の内部に配置されたコイルと、積層体に形成され、コイルの両端側に位置する導体パターンに接続された一対の端子電極とを備えるコイル部品であって、導体パターンは、絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このコイル部品では、絶縁体層の積層方向において導体パターンの断面が凹凸形状をなしていると共に、導体パターンの延在方向に沿って凹凸が形成されている。信号が高周波化した高周波電流は、表皮効果によって導体パターンの表面を流れる。このとき、導体パターンの断面が凹凸形状をなしているため、断面矩形状を呈する従来の導体パターンよりも表面積が大きい。そのため、高周波電流に対する抵抗の低下、つまりインピーダンスの低減を図ることができる。また、導体パターンの延在方向に沿って凹凸が形成されているため、延在方向における導体パターンの表面積も増大しており、高周波電流が反射して往復する距離(線路長)を増大させることができる。したがって、信号の反射が生じた場合であっても反射成分を減衰させることができる。その結果、信号の反射の低減が可能となる。
【0008】
導体パターンは、端子電極に接続される導出部を有しており、端子電極の一方に接続される導体パターンの導出部が絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることが好ましい。信号の反射は、インピーダンスの不整合が生じる位置、つまり信号が入力される端子側にて生じる。そこで、信号が入力される端子電極側に接続される導体パターンの導出部に凹凸を設けることにより、信号の反射をより的確に低減させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信号の反射を低減できる。これにより、ノイズの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一本実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【図2】図1に示すコイル部品の断面図である。
【図3】図1に示すコイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。
【図4】導体パターンを示す斜視図である。
【図5】(a)は導体パターンの縦断面図、(b)は導体パターンを横から見た図、(c)は導体パターンを上から見た図である。
【図6】導体パターンの形成工程を示す工程図である。
【図7】導体パターンの形成工程を示す工程図である。
【図8】特性インピーダンス測定のサンプルを示す図である。
【図9】測定結果を示す図である。
【図10】本実施形態に係るコイル部品の実装構造を説明するための回路図である。
【図11】変形例に係る導体パターンの縦断面図である。
【図12】(a)は変形例に係る導体パターンを横から見た図、(b)は変形例に係る導体パターンを上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一本実施形態に係るコイル部品を示す斜視図、図2は、図1に示すコイル部品の断面図、図3は、図1に示すコイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。コイル部品1は、例えば積層型インダクタであり、略直方体形状の素体2と、素体2の長手方向の両端部にそれぞれ形成された端子電極3,4とを備えている。
【0013】
素体2は、長手方向に向かい合って互いに平行をなす一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2b間を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面2c,2dと、一対の主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面2e,2fと、を有する。主面2c,2dのうちの一方は、コイル部品1が外部基板(図示しない)に実装されたときに、当該外部基板に対応する面である。
【0014】
端子電極3は、一方の端面2a及び端面2aと直交する主面2c,2d及び側面2e,2fの各縁部の一部を覆うように形成されている。端子電極4は、他方の端面2b及び端面2bと直交する主面2c,2d及び側面2e,2fの各縁部の一部を覆うように形成されている。
【0015】
素体2は、図2及び図3に示されるように、複数(ここでは12枚)のセラミック層(絶縁体層)C1〜C12が積層されることにより構成された積層体である。素体2は、内部に導体パターンP1〜P10、スルーホール電極H1〜H9及び導出部P1a,P10aからなるコイルLを備えている。素体2は、導体パターンP1〜P10を形成したセラミック層C1〜C12の焼成によって形成されており、実際のコイル部品1では、セラミック層C1〜C12の各層同士は、視認できない程度に一体化されている。
【0016】
セラミック層C1〜C12及び後述する磁性体膜F1〜F10は、電気絶縁性を有する絶縁体として機能する。セラミック層C1〜C12は、主としてフェライト(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、又はNi−Cu系フェライト)から構成される。セラミック層C1〜C12の厚みは、例えば60μm程度である。なお、セラミック層C1〜C12及び磁性体膜F1〜F10は、フェライト以外の非磁性体セラミックでもよい。非磁性セラミックとしては、ガラスにアルミナ粉を混ぜたペースト(グリーンシート)を焼成したものが挙げられる。
【0017】
セラミック層C2の表面には、導体パターンP1及び磁性体膜F1が形成されている。導体パターンP1は、コイルLの略5/8ターン分に相当し、セラミック層C2上で略C字状に形成されている。導体パターンP1の一端には、導出部P1aが一体的に形成されている。導体パターンP1の導出部P1aは、セラミック層C2の縁に引き出され、その端部がセラミック層C2の端面に露出している。これにより、導出部P1aは、端子電極3に電気的に接続されることとなる。導体パターンP1の他端は、セラミック層C2を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール電極H1と電気的に接続されている。このため、導体パターンP1は、積層された状態で、スルーホール電極H1を介して隣接する導体パターンP2の一端と電気的に接続される。
【0018】
セラミック層C3の表面には、導体パターンP2及び磁性体膜F2が形成されている。導体パターンP2は、コイルLの略3/4ターン分に相当している。導体パターンP2は、セラミック層C3上で略U字状に形成されている。導体パターンP2の一端には、積層された状態でスルーホール電極H1と電気的に接続される領域が含まれている。導体パターンP2の他端は、セラミック層C3を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール電極H2と電気的に接続されている。このため、導体パターンP2は、積層された状態で、スルーホール電極H2を介して隣接している導体パターンP3の一端と電気的に接続される。
【0019】
セラミック層C5,C7,C9は、セラミック層C3と同様の構成を有している。すなわち、各セラミック層C5,C7,C9の表面には、導体パターンP4,P6,P8及び磁性体膜F4,F6,F8が形成されている。各導体パターンP4,P6,P8は、コイルLの略3/4ターン分に相当しており、各セラミック層C5,C7,C9上で略U字状に形成されている。各導体パターンP4,P6,P8の一端には、積層された状態で各スルーホール電極H3,H5,H7と電気的にそれぞれ接続される領域が含まれている。各導体パターンP4,P6,P8の他端は、各セラミック層C5,C7,C9を厚み方向に貫通して形成された各スルーホール電極H4,H6,H8とそれぞれ電気的に接続されている。このため、各導体パターンP4,P6,P8は、積層された状態で、各スルーホール電極H4,H6,H8を介してそれぞれ隣接している導体パターンP5,P7,P9の一端と電気的に接続される。
【0020】
セラミック層C4の表面には、導体パターンP3及び磁性体膜F3が形成されている。導体パターンP3は、コイルLの略3/4ターン分に相当している。導体パターンP3は、セラミック層C4上でそれぞれ略C字状に形成されている。導体パターンP3の一端には、積層された状態でスルーホール電極H2と電気的に接続される領域が含まれている。導体パターンP3の他端は、セラミック層C4を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール電極H3と電気的に接続されている。このため、導体パターンP3は、積層された状態で、スルーホール電極H3を介してそれぞれ隣接している導体パターンP4の一端と電気的に接続される。
【0021】
セラミック層C6,C8,C10は、セラミック層C4と同様の構成を有している。すなわち、各セラミック層C6,C8,C10の表面には、導体パターンP5,P7,P9及び磁性体膜F5,F7,F9が形成されている。各導体パターンP5,P7,P9は、コイルLの略3/4ターン分に相当しており、各セラミック層C6,C8,C10上で略C字状に形成されている。各導体パターンP5,P7,P9の一端には、積層された状態で各スルーホール電極H4,H6,H8と電気的にそれぞれ接続される領域が含まれている。各導体パターンP5,P7,P9の他端は、各セラミック層C6,C8,C10を厚み方向に貫通して形成された各スルーホール電極H5,H7,H9とそれぞれ電気的に接続されている。このため、各導体パターンP5,P7,P9は、積層された状態で、各スルーホール電極H5,H7,H9を介してそれぞれ隣接している導体パターンP6,P8,P10の一端と電気的に接続される。
【0022】
セラミック層C11の表面には、導体パターンP10及び磁性体膜F10が形成されている。導体パターンP10は、コイルLの略7/8ターン分に相当し、セラミック層C11上で略U字状に形成されている。導体パターンP10の一端には、積層された状態でスルーホール電極H9と電気的に接続される領域が含まれている。導体パターンP10の他端には、導出部P10aが一体的に形成されている。導体パターンP10の導出部P10aは、セラミック層C11の縁に引き出され、その端部がセラミック層C11の端面に露出している。これにより、導出部P10aは、端子電極4に電気的に接続されることとなる。
【0023】
以上のように、各セラミック層C1〜C12が積層され、各導体パターンP1〜P10が各スルーホール電極H1〜H9を介して相互に電気的に接続されることにより、ターン数が7.5ターンであるコイルLが構成される。各導体パターンP1〜P10及び導出部P1a,P10aは、Ag又はNiを主成分とする導電ペーストにて形成されている。
【0024】
続いて、図4を参照して、導体パターンP1〜P10の構成について詳細に説明する。図4は、導体パターンを拡大して示す斜視図である。また、図5(a)は、図4に示す導体パターンの縦断面図、図5(b)は、図4に示す導体パターンを横から見た図、図5(c)は、図4に示す導体パターンを上から見た図である。図5においては、説明の便宜上、磁性体膜F1〜F10の図示を省略している。以下、導体パターンP1を一例として説明する。各図に示すように、導体パターンP1は、セラミック層C1〜C12の積層方向における断面(縦断面)が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸13が形成されている。
【0025】
導体パターンP1は、所定の間隔を有して設けられた鍔部10と、鍔部10の間に配置され、鍔部10同士を接続する接続部11とから構成されている。鍔部10及び接続部11は、一体形成されている。鍔部10は、その上下(セラミック層C1〜C12の積層方向)部分で且つ中央部分に凹状の切欠部12a,12bがそれぞれ形成されており、積層方向における断面がH字状を呈している。
【0026】
接続部11は、略直方体状を呈しており、鍔部10よりも導体パターンP1の延在方向にやや厚く形成されていると共に、外形寸法(外周部)が鍔部10よりも小さくなっている。具体的には、接続部11の幅寸法は、鍔部10の幅寸法の略2/5程度となっている。このような構成により、導体パターンP1は、延在方向(セラミック層C2の面方向)に凹凸13が形成されている。この凹凸13は、導体パターンP1に連続して形成されている。つまり、導体パターンP1は、いわゆる蛇腹状をなしている。
【0027】
続いて、本実施形態に係るコイル部品1の製造方法について説明する。まず、セラミック層C1〜C12となるセラミックグリーンシートを準備する。セラミックグリーンシートには、レーザ加工等によってセラミックグリーンシートを厚み方向に貫通するスルーホールを所定位置に形成し、このスルーホールには、導電ペーストを充填する。
【0028】
続いて、セラミックグリーンシート上に導電ペーストを所定のパターンにて塗布することで、導体パターンを形成する。導体パターンは、スクリーン印刷やエッチング、スパッタ等によって形成される。導体パターンの形成方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6及び図7は、導体パターンの形成工程を示す工程図である。図6においては、導体パターンの一部のみを図示しているが、実際には、図6に示す構成が長手方向に連続して形成されている。また、図7においては磁性体膜F1(フェライト層FL1〜FL4)が形成されているが、その形成工程については一部省略して説明する。なお、以下の説明においては、導体パターンP1を一例とすると共に、スクリーン印刷による導体パターンの形成について説明する。
【0029】
導体パターンP1は、導電粉及びバインダー等を含む導電ペーストを複数回重ねて印刷することによって形成される。図6(a)及び図7(a)に示すように、まず一層目の第一導電ペースト層L1がグリーンシートG上に形成される。図6(a)に示されるように、第一導電ペースト層L1は、略直方体形状を呈しており、導体パターンP1の延在方向に所定の間隔を有して複数形成される。これにより、第一導電ペースト層L1は、グリーンシートG上において、凹凸状に形成される。また、図7(a)に示すように、第一導電ペースト層L1は、導体パターンP1の幅方向に所定の間隔を有して略平行に一対形成される。
【0030】
次に、図6(b)及び図7(b)に示すように、第一導電ペースト層L1とグリーンシートGとによって形成された空隙部K1を充填するように、フェライト層FL1が形成される。フェライト層FL1は、磁性体膜F1を形成する。フェライト層FL1は、第一導電ペースト層L1の上面と略面一となるように形成される。
【0031】
続いて、図6(c)及び図7(c)に示すように、第二導電ペースト層L2及び第三導電ペースト層L3が形成される。第二導電ペースト層L2は、第一導電ペースト層L1及びフェライト層FL1上に印刷される。第三導電ペースト層L3は、第二導電ペースト層L2上に形成される。第二導電ペースト層L2及び第三導電ペースト層L3は、接続部11に相当する部分においては、第一導電ペースト層L1の幅寸法よりも小さく形成される。具体的には、図5(c)に示されるように、第二導電ペースト層L2及び第三導電ペースト層L3は、第一導電ペースト層L1の幅寸法の略2/5程度の幅寸法で形成される。形成するペースト層の幅寸法の設定は、スクリーンメッシュの孔径を調整することによって行われる。
【0032】
続いて、図6(d)及び図7(d)に示すように、第四導電ペースト層L4が形成される。第四導電ペースト層L4は、第三導電ペースト層L3上に形成される。第四導電ペースト層L4は、第一導電ペースト層L1と同様に、略直方体形状を呈しており、鍔部10に該当する部分において、導体パターンP1の延在方向に所定の間隔を有して複数形成される。これにより、第四導電ペースト層L4は、第三導電ペースト層L3上において、凹凸状に形成される。また、図7(d)に示すように、第四導電ペースト層L4は、鍔部10に該当する部分において、導体パターンP1の幅方向に所定の間隔を有して略平行に一対形成される。
【0033】
そして、図6(e)及び図7(e)に示すように、第三導電ペースト層L3と第四導電ペースト層L4とによって形成された空隙部K2を充填するように、フェライト層FL4が形成される。フェライト層FL4は、第四導電ペースト層L4の上面と略面一となるように形成される。以上のように、導体パターンP1は、主面2d側(積層方向における一方側)から主面2c側(積層方向における他方側)に向かって、第一導電ペースト層L1、第二導電ペースト層L2、第三導電ペースト層L3、及び第四導電ペースト層L4の順番で積層されることで形成されている。導体パターンP2〜P10も、導体パターン1と同様に形成される。
【0034】
続いて、セラミック層C1〜C12を図3に示される順序で積層して、積層方向に圧力を加えて圧着し、積層体(図示しない)を形成する。得られた積層体をチップ単位に切断し、その後、所定温度(例えば、870℃程度)にて焼成を行い、素体2を形成する。素体2は、例えば、焼成後における長手方向の長さが2.0mm、幅が1.25mm、高さが0.8mmとなるようにする。焼成により、セラミックグリーンシートGがセラミック層C2となり、また第一〜第四導電ペースト層L1〜L4が導体パターンP1となる。つまり、セラミック層C2及び導体パターンP1は、それぞれセラミックグリーンシートGの焼成物及び第一〜第四導電ペースト層L1〜L4の焼成物から構成される。
【0035】
その後、素体2に対し、端子電極3,4を形成することで、コイル部品(積層型インダクタ)1が得られる。端子電極3,4は、素体2の長手方向の両端面にそれぞれ銀、ニッケル又は銅を主成分とする電極ペーストを転写した後、所定温度(例えば700℃程度)で焼き付けを行い、さらに電気めっきを施すことにより形成することができる。電気めっきには、Cu、Ni及びSn等を用いることができる。
【0036】
以上説明したように、コイル部品1では、セラミック層C1〜C12の積層方向において導体パターンP1〜P10の断面が凹凸状をなしていると共に、導体パターンP1〜P10の延在方向に沿って凹凸13が形成されている。信号が高周波化した高周波電流は、表皮効果によって導体パターンの表面を流れる。このとき、導体パターンP1〜P10の断面が凹凸状をなしているため、断面矩形状の従来の導体パターンよりも表面積が大きい。そのため、高周波信号に対する抵抗の低下、つまりインピーダンスの低減を図ることができる。また、導体パターンの延在方向に沿って凹凸が形成されているため、延在方向における導体パターンP1〜P10の表面積も増大しており、高周波電流が反射して往復する距離(線路長)を増大させることができる。したがって、信号の反射が生じた場合であっても、信号の反射成分を減衰させることができる。その結果、信号の反射の低減を図ることができる。
【0037】
次に、本実施形態によって、信号の反射を低減できることを具体的に示す。ここでは、サンプルのインピーダンスをTDR(Time Domain Reflectometry)法により測定する。このTDR法とは、伝送線路にステップパルスを送出し、特性インピーダンスの不連続箇所にて反射されたパルスを測定することにより、伝送線路の特性インピーダンスを計測する測定法である。
【0038】
測定対象として、2種類のサンプルを準備した。図8は、特性インピーダンス測定のサンプルを示す図である。図8(a)に示すように、第一のサンプル20では、フェライト基板21上に導体パターン(電極)22を直線的に形成している。フェライト基板21は、長さが25mm、幅が10mm、厚さが1mmのものを用いた。導体パターン22は、幅を約1mmとした。一方、図8(b)に示すように、第二のサンプル24では、フェライト基板21に導体パターン25を第一のサンプル20よりも薄く且つ幅約2mmで形成し、さらに導体パターン25の一部を研磨することで表面に凹凸26を形成した。このような構成により、第二のサンプル24は、第一のサンプル20に比べて表面積が大きくなっている。いずれのサンプル20,24も、直流抵抗が5Ω、インダクタンスが約2μHとなっている。これらのサンプル20,24を用いたTDR法による測定結果を図9に示す。
【0039】
図9は、測定結果を示す図である。図9においては、第一のサンプル20の特性l1を実線で示し、第二のサンプル24の特性l2を破線で示している。図9に示すように、第一のサンプルでは、特性l1から分かるように、「T1」で示される位置でインピーダンスが大きくが変化していると共に、「T2」で示される位置でインピーダンスが変化している。
【0040】
これに対して、第二のサンプル24では、特性l2から分かるように、第一のサンプル20と同様に「T1」で示される位置でインピーダンスが変化していると共に、「T3」で示される位置でインピーダンスが変化している。第二のサンプル24では、第一のサンプル20と同様に「T1」の位置にてインピーダンスが変化しているが、その変化は第一のサンプル20に比べて小さい。また、第一のサンプル20における「T1」と次の変化点「T2」をつなぐ直線の傾きD1と、第二のサンプル24における「T1」と次に変化点「T3」とをつなぐ直線の傾きD2とを比べると、第二のサンプル24の傾きが小さくなっている。つまり、第一のサンプル20よりも表面積が大きい第二のサンプル24では、第一のサンプル24に比べて、立ち上がりの時間が緩くなっている。
【0041】
以上の結果より、導体パターン25の表面に凹凸26を形成することによって、断面の表面積が増大することで高周波電流に対する抵抗が低下するため、時間に対するインピーダンスが低減し、さらに、延在方向に凹凸が形成されることで、信号が反射して往復する距離が伸び、傾きが小さくなっている(信号の反射成分が減衰している)。
【0042】
続いて、図10を参照して、本実施形態に係るコイル部品1の実装構造について説明する。図10は、本実施形態に係るコイル部品の実装構造を説明するための回路図である。
【0043】
図10に示されているように、コイル部品1は、IC100への電源ライン102やIC100からの出力ライン(例えば、クロックラインや信号ライン等)104に挿入されている。電源ライン102に挿入されたコイル部品1は、コンデンサ106と共にLCフィルタを構成している。
【0044】
電源ライン102に挿入されたコイル部品1では、端子電極3がIC100に接続されている。出力ライン104に挿入されたコイル部品1も、端子電極3がIC100に接続されている。
【0045】
IC100では、その内部において高速でスイッチングが行なわれており、電源ライン102や出力ライン104等にノイズが重畳しやすい。しかしながら、上述したようにコイル部品1での反射が少なくなることから、IC100にて発生したノイズの重畳が少なくなる。従来の技術のコイル(インダクタ)部品では、コイル部品での反射が大きいことから、IC100にて発生したノイズの重畳が大きくなる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、導体パターンP1〜P10において、断面が凹凸形状をなしていると共に延在方向に沿って凹凸13が形成されている構成としているが、これらの形状は、信号の入力側にのみ設けられてもよい。つまり、導体パターンP1,P10の端子電極3,4側のいずれかに接続される導出部P1a,P10aにおいて、断面を凹凸形状とすると共に、延在方向に沿って凹凸13を形成してもよい。信号の反射は、インピーダンスの不整合が生じる位置、つまり信号が入力される端子側にて生じる。そこで、信号が入力される一方の端子電極3又は端子電極4側に接続される導体パターンP1の導出部P1a又は導体パターンP10の導出部P10aに凹凸13を設けることにより、信号の反射をより的確に低減させることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、導体パターンP1〜P10の断面を図5に示すようなH字状としているが、導体パターンP1〜P10の断面は、様々な形状を採用することができる。具体的には、図11(a)〜図11(c)に示すように、例えば導体パターンP1Aの断面は、切欠部40aが形成された凹状、複数(ここでは3つ)の切欠部40a〜40cが形成された形状、複数(ここでは4つ)の切欠部40a〜40dが形成された形状などであってもよい。要は、矩形状や円形状に比べて鍔部10の外周部の表面積が増大する形状であればよい。
【0048】
また、導体パターンP1〜P10の延在方向の凹凸形状も同様に、図5に示される形状に限定されない。例えば、図12(a)に示すように、導体パターンP1Bを横から見た場合に、凹凸13Aが千鳥格子状に形成されていてもよい。同様に、図12(b)に示すように、導体パターンP11Bを上から見た場合に、凹凸13Aが千鳥格子状に形成されていてもよい。さらに、図示しないが、導体パターンP1〜P10は、断面を凹凸形状とし、延在方向に螺旋状としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、導体パターンP1〜P10をスクリーン印刷にて形成しているが、導体パターンP1〜P10の形成は、スパッタリング、エッチング等によって行われてもよい。スパッタリングの場合には、所望する形状のマスクを用いることによって、薄膜の導体パターンが形成される。
【符号の説明】
【0050】
1…コイル部品、2…素体(積層体)、3,4…端子電極、13…凹凸、C1〜C12…セラミック層(絶縁体層)、F1〜F10…磁性体膜(絶縁体層)、P1〜P10…導体パターン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品として、複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、積層体の端面側に形成された端子電極と、複数の導体パターンが互いに電気的に接続されて構成され、積層体の内部に配置されたコイルとを備えた積層型チップインダクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−136307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなインダクタ部品を信号系の回路に組み込む場合、インダクタ部品の前後に抵抗器を接続して配置される。このとき、抵抗器及びインダクタ部品に信号を流すと、インピーダンスの不整合により導体を伝わる信号が反射し、信号の減衰が生じるおそれがある。また、反射によって不要な輻射が生じ、ノイズの原因となってしまうおそれもある。従って、信号の反射成分を低減することが求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、信号の反射を低減できるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るコイル部品は、複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、複数の導体パターンが互いに電気的に接続されて構成され、積層体の内部に配置されたコイルと、積層体に形成され、コイルの両端側に位置する導体パターンに接続された一対の端子電極とを備えるコイル部品であって、導体パターンは、絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このコイル部品では、絶縁体層の積層方向において導体パターンの断面が凹凸形状をなしていると共に、導体パターンの延在方向に沿って凹凸が形成されている。信号が高周波化した高周波電流は、表皮効果によって導体パターンの表面を流れる。このとき、導体パターンの断面が凹凸形状をなしているため、断面矩形状を呈する従来の導体パターンよりも表面積が大きい。そのため、高周波電流に対する抵抗の低下、つまりインピーダンスの低減を図ることができる。また、導体パターンの延在方向に沿って凹凸が形成されているため、延在方向における導体パターンの表面積も増大しており、高周波電流が反射して往復する距離(線路長)を増大させることができる。したがって、信号の反射が生じた場合であっても反射成分を減衰させることができる。その結果、信号の反射の低減が可能となる。
【0008】
導体パターンは、端子電極に接続される導出部を有しており、端子電極の一方に接続される導体パターンの導出部が絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることが好ましい。信号の反射は、インピーダンスの不整合が生じる位置、つまり信号が入力される端子側にて生じる。そこで、信号が入力される端子電極側に接続される導体パターンの導出部に凹凸を設けることにより、信号の反射をより的確に低減させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信号の反射を低減できる。これにより、ノイズの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一本実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【図2】図1に示すコイル部品の断面図である。
【図3】図1に示すコイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。
【図4】導体パターンを示す斜視図である。
【図5】(a)は導体パターンの縦断面図、(b)は導体パターンを横から見た図、(c)は導体パターンを上から見た図である。
【図6】導体パターンの形成工程を示す工程図である。
【図7】導体パターンの形成工程を示す工程図である。
【図8】特性インピーダンス測定のサンプルを示す図である。
【図9】測定結果を示す図である。
【図10】本実施形態に係るコイル部品の実装構造を説明するための回路図である。
【図11】変形例に係る導体パターンの縦断面図である。
【図12】(a)は変形例に係る導体パターンを横から見た図、(b)は変形例に係る導体パターンを上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一本実施形態に係るコイル部品を示す斜視図、図2は、図1に示すコイル部品の断面図、図3は、図1に示すコイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。コイル部品1は、例えば積層型インダクタであり、略直方体形状の素体2と、素体2の長手方向の両端部にそれぞれ形成された端子電極3,4とを備えている。
【0013】
素体2は、長手方向に向かい合って互いに平行をなす一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2b間を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面2c,2dと、一対の主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面2e,2fと、を有する。主面2c,2dのうちの一方は、コイル部品1が外部基板(図示しない)に実装されたときに、当該外部基板に対応する面である。
【0014】
端子電極3は、一方の端面2a及び端面2aと直交する主面2c,2d及び側面2e,2fの各縁部の一部を覆うように形成されている。端子電極4は、他方の端面2b及び端面2bと直交する主面2c,2d及び側面2e,2fの各縁部の一部を覆うように形成されている。
【0015】
素体2は、図2及び図3に示されるように、複数(ここでは12枚)のセラミック層(絶縁体層)C1〜C12が積層されることにより構成された積層体である。素体2は、内部に導体パターンP1〜P10、スルーホール電極H1〜H9及び導出部P1a,P10aからなるコイルLを備えている。素体2は、導体パターンP1〜P10を形成したセラミック層C1〜C12の焼成によって形成されており、実際のコイル部品1では、セラミック層C1〜C12の各層同士は、視認できない程度に一体化されている。
【0016】
セラミック層C1〜C12及び後述する磁性体膜F1〜F10は、電気絶縁性を有する絶縁体として機能する。セラミック層C1〜C12は、主としてフェライト(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、又はNi−Cu系フェライト)から構成される。セラミック層C1〜C12の厚みは、例えば60μm程度である。なお、セラミック層C1〜C12及び磁性体膜F1〜F10は、フェライト以外の非磁性体セラミックでもよい。非磁性セラミックとしては、ガラスにアルミナ粉を混ぜたペースト(グリーンシート)を焼成したものが挙げられる。
【0017】
セラミック層C2の表面には、導体パターンP1及び磁性体膜F1が形成されている。導体パターンP1は、コイルLの略5/8ターン分に相当し、セラミック層C2上で略C字状に形成されている。導体パターンP1の一端には、導出部P1aが一体的に形成されている。導体パターンP1の導出部P1aは、セラミック層C2の縁に引き出され、その端部がセラミック層C2の端面に露出している。これにより、導出部P1aは、端子電極3に電気的に接続されることとなる。導体パターンP1の他端は、セラミック層C2を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール電極H1と電気的に接続されている。このため、導体パターンP1は、積層された状態で、スルーホール電極H1を介して隣接する導体パターンP2の一端と電気的に接続される。
【0018】
セラミック層C3の表面には、導体パターンP2及び磁性体膜F2が形成されている。導体パターンP2は、コイルLの略3/4ターン分に相当している。導体パターンP2は、セラミック層C3上で略U字状に形成されている。導体パターンP2の一端には、積層された状態でスルーホール電極H1と電気的に接続される領域が含まれている。導体パターンP2の他端は、セラミック層C3を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール電極H2と電気的に接続されている。このため、導体パターンP2は、積層された状態で、スルーホール電極H2を介して隣接している導体パターンP3の一端と電気的に接続される。
【0019】
セラミック層C5,C7,C9は、セラミック層C3と同様の構成を有している。すなわち、各セラミック層C5,C7,C9の表面には、導体パターンP4,P6,P8及び磁性体膜F4,F6,F8が形成されている。各導体パターンP4,P6,P8は、コイルLの略3/4ターン分に相当しており、各セラミック層C5,C7,C9上で略U字状に形成されている。各導体パターンP4,P6,P8の一端には、積層された状態で各スルーホール電極H3,H5,H7と電気的にそれぞれ接続される領域が含まれている。各導体パターンP4,P6,P8の他端は、各セラミック層C5,C7,C9を厚み方向に貫通して形成された各スルーホール電極H4,H6,H8とそれぞれ電気的に接続されている。このため、各導体パターンP4,P6,P8は、積層された状態で、各スルーホール電極H4,H6,H8を介してそれぞれ隣接している導体パターンP5,P7,P9の一端と電気的に接続される。
【0020】
セラミック層C4の表面には、導体パターンP3及び磁性体膜F3が形成されている。導体パターンP3は、コイルLの略3/4ターン分に相当している。導体パターンP3は、セラミック層C4上でそれぞれ略C字状に形成されている。導体パターンP3の一端には、積層された状態でスルーホール電極H2と電気的に接続される領域が含まれている。導体パターンP3の他端は、セラミック層C4を厚み方向に貫通して形成されたスルーホール電極H3と電気的に接続されている。このため、導体パターンP3は、積層された状態で、スルーホール電極H3を介してそれぞれ隣接している導体パターンP4の一端と電気的に接続される。
【0021】
セラミック層C6,C8,C10は、セラミック層C4と同様の構成を有している。すなわち、各セラミック層C6,C8,C10の表面には、導体パターンP5,P7,P9及び磁性体膜F5,F7,F9が形成されている。各導体パターンP5,P7,P9は、コイルLの略3/4ターン分に相当しており、各セラミック層C6,C8,C10上で略C字状に形成されている。各導体パターンP5,P7,P9の一端には、積層された状態で各スルーホール電極H4,H6,H8と電気的にそれぞれ接続される領域が含まれている。各導体パターンP5,P7,P9の他端は、各セラミック層C6,C8,C10を厚み方向に貫通して形成された各スルーホール電極H5,H7,H9とそれぞれ電気的に接続されている。このため、各導体パターンP5,P7,P9は、積層された状態で、各スルーホール電極H5,H7,H9を介してそれぞれ隣接している導体パターンP6,P8,P10の一端と電気的に接続される。
【0022】
セラミック層C11の表面には、導体パターンP10及び磁性体膜F10が形成されている。導体パターンP10は、コイルLの略7/8ターン分に相当し、セラミック層C11上で略U字状に形成されている。導体パターンP10の一端には、積層された状態でスルーホール電極H9と電気的に接続される領域が含まれている。導体パターンP10の他端には、導出部P10aが一体的に形成されている。導体パターンP10の導出部P10aは、セラミック層C11の縁に引き出され、その端部がセラミック層C11の端面に露出している。これにより、導出部P10aは、端子電極4に電気的に接続されることとなる。
【0023】
以上のように、各セラミック層C1〜C12が積層され、各導体パターンP1〜P10が各スルーホール電極H1〜H9を介して相互に電気的に接続されることにより、ターン数が7.5ターンであるコイルLが構成される。各導体パターンP1〜P10及び導出部P1a,P10aは、Ag又はNiを主成分とする導電ペーストにて形成されている。
【0024】
続いて、図4を参照して、導体パターンP1〜P10の構成について詳細に説明する。図4は、導体パターンを拡大して示す斜視図である。また、図5(a)は、図4に示す導体パターンの縦断面図、図5(b)は、図4に示す導体パターンを横から見た図、図5(c)は、図4に示す導体パターンを上から見た図である。図5においては、説明の便宜上、磁性体膜F1〜F10の図示を省略している。以下、導体パターンP1を一例として説明する。各図に示すように、導体パターンP1は、セラミック層C1〜C12の積層方向における断面(縦断面)が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸13が形成されている。
【0025】
導体パターンP1は、所定の間隔を有して設けられた鍔部10と、鍔部10の間に配置され、鍔部10同士を接続する接続部11とから構成されている。鍔部10及び接続部11は、一体形成されている。鍔部10は、その上下(セラミック層C1〜C12の積層方向)部分で且つ中央部分に凹状の切欠部12a,12bがそれぞれ形成されており、積層方向における断面がH字状を呈している。
【0026】
接続部11は、略直方体状を呈しており、鍔部10よりも導体パターンP1の延在方向にやや厚く形成されていると共に、外形寸法(外周部)が鍔部10よりも小さくなっている。具体的には、接続部11の幅寸法は、鍔部10の幅寸法の略2/5程度となっている。このような構成により、導体パターンP1は、延在方向(セラミック層C2の面方向)に凹凸13が形成されている。この凹凸13は、導体パターンP1に連続して形成されている。つまり、導体パターンP1は、いわゆる蛇腹状をなしている。
【0027】
続いて、本実施形態に係るコイル部品1の製造方法について説明する。まず、セラミック層C1〜C12となるセラミックグリーンシートを準備する。セラミックグリーンシートには、レーザ加工等によってセラミックグリーンシートを厚み方向に貫通するスルーホールを所定位置に形成し、このスルーホールには、導電ペーストを充填する。
【0028】
続いて、セラミックグリーンシート上に導電ペーストを所定のパターンにて塗布することで、導体パターンを形成する。導体パターンは、スクリーン印刷やエッチング、スパッタ等によって形成される。導体パターンの形成方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6及び図7は、導体パターンの形成工程を示す工程図である。図6においては、導体パターンの一部のみを図示しているが、実際には、図6に示す構成が長手方向に連続して形成されている。また、図7においては磁性体膜F1(フェライト層FL1〜FL4)が形成されているが、その形成工程については一部省略して説明する。なお、以下の説明においては、導体パターンP1を一例とすると共に、スクリーン印刷による導体パターンの形成について説明する。
【0029】
導体パターンP1は、導電粉及びバインダー等を含む導電ペーストを複数回重ねて印刷することによって形成される。図6(a)及び図7(a)に示すように、まず一層目の第一導電ペースト層L1がグリーンシートG上に形成される。図6(a)に示されるように、第一導電ペースト層L1は、略直方体形状を呈しており、導体パターンP1の延在方向に所定の間隔を有して複数形成される。これにより、第一導電ペースト層L1は、グリーンシートG上において、凹凸状に形成される。また、図7(a)に示すように、第一導電ペースト層L1は、導体パターンP1の幅方向に所定の間隔を有して略平行に一対形成される。
【0030】
次に、図6(b)及び図7(b)に示すように、第一導電ペースト層L1とグリーンシートGとによって形成された空隙部K1を充填するように、フェライト層FL1が形成される。フェライト層FL1は、磁性体膜F1を形成する。フェライト層FL1は、第一導電ペースト層L1の上面と略面一となるように形成される。
【0031】
続いて、図6(c)及び図7(c)に示すように、第二導電ペースト層L2及び第三導電ペースト層L3が形成される。第二導電ペースト層L2は、第一導電ペースト層L1及びフェライト層FL1上に印刷される。第三導電ペースト層L3は、第二導電ペースト層L2上に形成される。第二導電ペースト層L2及び第三導電ペースト層L3は、接続部11に相当する部分においては、第一導電ペースト層L1の幅寸法よりも小さく形成される。具体的には、図5(c)に示されるように、第二導電ペースト層L2及び第三導電ペースト層L3は、第一導電ペースト層L1の幅寸法の略2/5程度の幅寸法で形成される。形成するペースト層の幅寸法の設定は、スクリーンメッシュの孔径を調整することによって行われる。
【0032】
続いて、図6(d)及び図7(d)に示すように、第四導電ペースト層L4が形成される。第四導電ペースト層L4は、第三導電ペースト層L3上に形成される。第四導電ペースト層L4は、第一導電ペースト層L1と同様に、略直方体形状を呈しており、鍔部10に該当する部分において、導体パターンP1の延在方向に所定の間隔を有して複数形成される。これにより、第四導電ペースト層L4は、第三導電ペースト層L3上において、凹凸状に形成される。また、図7(d)に示すように、第四導電ペースト層L4は、鍔部10に該当する部分において、導体パターンP1の幅方向に所定の間隔を有して略平行に一対形成される。
【0033】
そして、図6(e)及び図7(e)に示すように、第三導電ペースト層L3と第四導電ペースト層L4とによって形成された空隙部K2を充填するように、フェライト層FL4が形成される。フェライト層FL4は、第四導電ペースト層L4の上面と略面一となるように形成される。以上のように、導体パターンP1は、主面2d側(積層方向における一方側)から主面2c側(積層方向における他方側)に向かって、第一導電ペースト層L1、第二導電ペースト層L2、第三導電ペースト層L3、及び第四導電ペースト層L4の順番で積層されることで形成されている。導体パターンP2〜P10も、導体パターン1と同様に形成される。
【0034】
続いて、セラミック層C1〜C12を図3に示される順序で積層して、積層方向に圧力を加えて圧着し、積層体(図示しない)を形成する。得られた積層体をチップ単位に切断し、その後、所定温度(例えば、870℃程度)にて焼成を行い、素体2を形成する。素体2は、例えば、焼成後における長手方向の長さが2.0mm、幅が1.25mm、高さが0.8mmとなるようにする。焼成により、セラミックグリーンシートGがセラミック層C2となり、また第一〜第四導電ペースト層L1〜L4が導体パターンP1となる。つまり、セラミック層C2及び導体パターンP1は、それぞれセラミックグリーンシートGの焼成物及び第一〜第四導電ペースト層L1〜L4の焼成物から構成される。
【0035】
その後、素体2に対し、端子電極3,4を形成することで、コイル部品(積層型インダクタ)1が得られる。端子電極3,4は、素体2の長手方向の両端面にそれぞれ銀、ニッケル又は銅を主成分とする電極ペーストを転写した後、所定温度(例えば700℃程度)で焼き付けを行い、さらに電気めっきを施すことにより形成することができる。電気めっきには、Cu、Ni及びSn等を用いることができる。
【0036】
以上説明したように、コイル部品1では、セラミック層C1〜C12の積層方向において導体パターンP1〜P10の断面が凹凸状をなしていると共に、導体パターンP1〜P10の延在方向に沿って凹凸13が形成されている。信号が高周波化した高周波電流は、表皮効果によって導体パターンの表面を流れる。このとき、導体パターンP1〜P10の断面が凹凸状をなしているため、断面矩形状の従来の導体パターンよりも表面積が大きい。そのため、高周波信号に対する抵抗の低下、つまりインピーダンスの低減を図ることができる。また、導体パターンの延在方向に沿って凹凸が形成されているため、延在方向における導体パターンP1〜P10の表面積も増大しており、高周波電流が反射して往復する距離(線路長)を増大させることができる。したがって、信号の反射が生じた場合であっても、信号の反射成分を減衰させることができる。その結果、信号の反射の低減を図ることができる。
【0037】
次に、本実施形態によって、信号の反射を低減できることを具体的に示す。ここでは、サンプルのインピーダンスをTDR(Time Domain Reflectometry)法により測定する。このTDR法とは、伝送線路にステップパルスを送出し、特性インピーダンスの不連続箇所にて反射されたパルスを測定することにより、伝送線路の特性インピーダンスを計測する測定法である。
【0038】
測定対象として、2種類のサンプルを準備した。図8は、特性インピーダンス測定のサンプルを示す図である。図8(a)に示すように、第一のサンプル20では、フェライト基板21上に導体パターン(電極)22を直線的に形成している。フェライト基板21は、長さが25mm、幅が10mm、厚さが1mmのものを用いた。導体パターン22は、幅を約1mmとした。一方、図8(b)に示すように、第二のサンプル24では、フェライト基板21に導体パターン25を第一のサンプル20よりも薄く且つ幅約2mmで形成し、さらに導体パターン25の一部を研磨することで表面に凹凸26を形成した。このような構成により、第二のサンプル24は、第一のサンプル20に比べて表面積が大きくなっている。いずれのサンプル20,24も、直流抵抗が5Ω、インダクタンスが約2μHとなっている。これらのサンプル20,24を用いたTDR法による測定結果を図9に示す。
【0039】
図9は、測定結果を示す図である。図9においては、第一のサンプル20の特性l1を実線で示し、第二のサンプル24の特性l2を破線で示している。図9に示すように、第一のサンプルでは、特性l1から分かるように、「T1」で示される位置でインピーダンスが大きくが変化していると共に、「T2」で示される位置でインピーダンスが変化している。
【0040】
これに対して、第二のサンプル24では、特性l2から分かるように、第一のサンプル20と同様に「T1」で示される位置でインピーダンスが変化していると共に、「T3」で示される位置でインピーダンスが変化している。第二のサンプル24では、第一のサンプル20と同様に「T1」の位置にてインピーダンスが変化しているが、その変化は第一のサンプル20に比べて小さい。また、第一のサンプル20における「T1」と次の変化点「T2」をつなぐ直線の傾きD1と、第二のサンプル24における「T1」と次に変化点「T3」とをつなぐ直線の傾きD2とを比べると、第二のサンプル24の傾きが小さくなっている。つまり、第一のサンプル20よりも表面積が大きい第二のサンプル24では、第一のサンプル24に比べて、立ち上がりの時間が緩くなっている。
【0041】
以上の結果より、導体パターン25の表面に凹凸26を形成することによって、断面の表面積が増大することで高周波電流に対する抵抗が低下するため、時間に対するインピーダンスが低減し、さらに、延在方向に凹凸が形成されることで、信号が反射して往復する距離が伸び、傾きが小さくなっている(信号の反射成分が減衰している)。
【0042】
続いて、図10を参照して、本実施形態に係るコイル部品1の実装構造について説明する。図10は、本実施形態に係るコイル部品の実装構造を説明するための回路図である。
【0043】
図10に示されているように、コイル部品1は、IC100への電源ライン102やIC100からの出力ライン(例えば、クロックラインや信号ライン等)104に挿入されている。電源ライン102に挿入されたコイル部品1は、コンデンサ106と共にLCフィルタを構成している。
【0044】
電源ライン102に挿入されたコイル部品1では、端子電極3がIC100に接続されている。出力ライン104に挿入されたコイル部品1も、端子電極3がIC100に接続されている。
【0045】
IC100では、その内部において高速でスイッチングが行なわれており、電源ライン102や出力ライン104等にノイズが重畳しやすい。しかしながら、上述したようにコイル部品1での反射が少なくなることから、IC100にて発生したノイズの重畳が少なくなる。従来の技術のコイル(インダクタ)部品では、コイル部品での反射が大きいことから、IC100にて発生したノイズの重畳が大きくなる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、導体パターンP1〜P10において、断面が凹凸形状をなしていると共に延在方向に沿って凹凸13が形成されている構成としているが、これらの形状は、信号の入力側にのみ設けられてもよい。つまり、導体パターンP1,P10の端子電極3,4側のいずれかに接続される導出部P1a,P10aにおいて、断面を凹凸形状とすると共に、延在方向に沿って凹凸13を形成してもよい。信号の反射は、インピーダンスの不整合が生じる位置、つまり信号が入力される端子側にて生じる。そこで、信号が入力される一方の端子電極3又は端子電極4側に接続される導体パターンP1の導出部P1a又は導体パターンP10の導出部P10aに凹凸13を設けることにより、信号の反射をより的確に低減させることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、導体パターンP1〜P10の断面を図5に示すようなH字状としているが、導体パターンP1〜P10の断面は、様々な形状を採用することができる。具体的には、図11(a)〜図11(c)に示すように、例えば導体パターンP1Aの断面は、切欠部40aが形成された凹状、複数(ここでは3つ)の切欠部40a〜40cが形成された形状、複数(ここでは4つ)の切欠部40a〜40dが形成された形状などであってもよい。要は、矩形状や円形状に比べて鍔部10の外周部の表面積が増大する形状であればよい。
【0048】
また、導体パターンP1〜P10の延在方向の凹凸形状も同様に、図5に示される形状に限定されない。例えば、図12(a)に示すように、導体パターンP1Bを横から見た場合に、凹凸13Aが千鳥格子状に形成されていてもよい。同様に、図12(b)に示すように、導体パターンP11Bを上から見た場合に、凹凸13Aが千鳥格子状に形成されていてもよい。さらに、図示しないが、導体パターンP1〜P10は、断面を凹凸形状とし、延在方向に螺旋状としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、導体パターンP1〜P10をスクリーン印刷にて形成しているが、導体パターンP1〜P10の形成は、スパッタリング、エッチング等によって行われてもよい。スパッタリングの場合には、所望する形状のマスクを用いることによって、薄膜の導体パターンが形成される。
【符号の説明】
【0050】
1…コイル部品、2…素体(積層体)、3,4…端子電極、13…凹凸、C1〜C12…セラミック層(絶縁体層)、F1〜F10…磁性体膜(絶縁体層)、P1〜P10…導体パターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、
複数の導体パターンが互いに電気的に接続されて構成され、前記積層体の内部に配置されたコイルと、
前記積層体に形成され、前記コイルの両端側に位置する前記導体パターンに接続された一対の端子電極とを備えるコイル部品であって、
前記導体パターンは、前記絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記導体パターンは、前記端子電極に接続される導出部を有しており、
前記端子電極の一方に接続される前記導体パターンの前記導出部が前記絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されて構成された積層体と、
複数の導体パターンが互いに電気的に接続されて構成され、前記積層体の内部に配置されたコイルと、
前記積層体に形成され、前記コイルの両端側に位置する前記導体パターンに接続された一対の端子電極とを備えるコイル部品であって、
前記導体パターンは、前記絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記導体パターンは、前記端子電極に接続される導出部を有しており、
前記端子電極の一方に接続される前記導体パターンの前記導出部が前記絶縁体層の積層方向における断面が凹凸形状をなしていると共に、延在方向に沿って凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−49372(P2012−49372A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190919(P2010−190919)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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