説明

コイル部材およびステータ

【課題】複数層のコイル線を並列に巻回した構造を採りつつ、循環電流を抑制しうるコイル部材およびステータを提供する。
【解決手段】複数のコイル線が、内層から外層に亘って並列に巻回されたコイル部材20であって、少なくとも2層のコイル線を構成する第1コイル線10a、第2コイル線10bが、途中部位で切断された端部が接合されることで互いの層を交換されているコイル部材20である。第1コイル線10a、第2コイル線10bの抵抗値は互いにほぼ等しくなり、高周波電流に対する循環電流が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転モータ、リニアモータ、発電機などに用いられるコイル部材、および、コイル部材を備えたステータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、発電機、リアクトル、トランスなどに配置されるコイル部材として、複数のコイル線を並列に巻回したものが知られている。特に、最近では、平角線と呼ばれる断面が角形の導線を、上下層に重ねて巻回する構造も提案されてきている。
【0003】
ところで、上下層に重ねて巻回された2つの導体の長さは異なるので、抵抗にも差が生じる。共通の端子に接続される2つの角形導線の抵抗に差があると、高周波電流に対して電圧差が生じ、循環電流が流れる。この循環電流は、モータの出力には寄与せず、無効な電流となる。
【0004】
そこで、特許文献1には、その対策としての技術が開示されている。特許文献1では、2本の角形導線(コイル線)をエッジワイズ形状に巻回した分割ステータの構造が開示されている。ここで、相接続される縦巻きコイル間において、一方のステータの内側の角形導線(内側コイル線)が、他方のステータの外側の角形導線(外側コイル線)に接続することが記載されている(同文献の段落[0050]参照)。このように接続することにより、2つのコイル線の電気抵抗のアンバランスを押さえようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−19618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、コイル部材間の端末接続構造が複雑になり、接続作業が困難となる。また、モータ軸長がいたずらに増大するおそれもある。
さらに、特許文献1の構造において、共通の相に属するコイル線の抵抗率差を0とするためには、スロット数(分割ステータ数)が偶数でなければならない。
【0007】
本発明の目的は、コイルの構造として、複数層のコイル線を並列に巻回した構造を採りつつ、循環電流を抑制しうるコイル部材、およびこのコイル部材を備えたステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコイル部材は、複数のコイル線が、内層から外層に亘って並列に巻回されたコイル部材であって、
前記複数のコイル線のうち少なくとも2層のコイル線が、全てのコイル線の抵抗値が共通の値に近づくように、途中部位で切断された端部が接合されることで互いの層を交換されている。
この典型的な例は、2層巻きの場合である。この場合、内層コイル線、外層コイル線が、途中部位で、それぞれ外層コイル線、内層コイル線に変換される。
3層巻きの場合は、中間層コイル線は、途中部位で層が変更されず、ずっと中間層である。そして、内層コイル線、外層コイル線が、途中部位で、それぞれ外層コイル線、内層コイル線に変換される。
4層巻きの場合は、第1層、第4層が途中部位で互いの層を変更され、第2層、第3層が途中部位で互いの層を交換される。
5層巻きの場合は、第3層コイル線は、途中部位で層が変更されず、ずっと第3層である。そして、第1層、第5層が途中部位で互いの層を変更され、第2層、第4層が途中部位で互いの層を交換される。
【0009】
これにより、コイル線の長さに対応した抵抗値の大小関係に応じて、すべてのコイル線の抵抗値が近くなる。よって、各コイル線の抵抗値の差が小さくなり、高周波電流に対し、循環電流が低減され、電流の利用効率が向上する。
【0010】
また、途中部位で層を交換する形態として、少なくとも2層のコイル線を、途中部位で切断して端部同士を接合する構成とすることで、簡単な処理で、上述の効果を得ることができる。
【0011】
少なくとも2層のコイル線は、コイルエンド部において互いの層を交換されていることが好ましい。これにより、占積率の低下を抑制することができる。
【0012】
上述のコイル部材をコアに装着したステータは、損失の小さなモータ、発電機、リアクトル、トランスなどの部品として、高い利便性を発揮する。ステータは、分割ステータであってもよいし、一体化されたステータであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコイル部材またはステータによると、複数のコイル線を内層から外層に亘って並列に巻回した構造を採用しつつ、電流の利用効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係るコイル部材および分割コアの構造を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1に係るステータの概略的な構造を示す断面図である。
【図3】実施の形態1に係る3相交流モータのステータの平面図である。
【図4】実施の形態1に係る3相交流モータのステータの等価回路を示す図である。
【図5】(a)、(b)は、順に、実施の形態2におけるコイル部材の斜視図および分割ステータの断面図である。
【図6】実施の形態3における分割ステータの断面図である。
【図7】実施の形態4における分割ステータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
−コイル部材およびステータの構造−
図1(a)、(b)は、実施の形態1に係るコイル部材20の形成手順を示す斜視図である。本実施の形態のコイル部材20は、第1、第2コイル線10a、10bを含む多重コイル線10をエッジワイズ状に巻回したものである。多重コイル線10は、第1コイル線10aと第2コイル線10bとの長辺同士を、同一平面上に並べたものである。
【0016】
まず、図1(a)に示すように、内層と外層とが互いに逆である、第1巻回部20aと第2巻回部20bとを形成する。具体的には、一方を右巻きとすると、他方を左巻きにすればよい。第1巻回部20aは、第1コイル線10aを内側に、第2コイル線10bを外側にして、巻回されている。第2巻回部20bは、第2コイル線10bを内側に、第1コイル線10aを外側にして、巻回されている。第1巻回部20aと第2巻回部20bとは、変換部10zでつながっている。
【0017】
次に、図1(b)に示すように、第1巻回部20aと第2巻回部20bとを折り曲げて、コイル面同士を合わせる。このとき、第1巻回部20aの第1コイル線10aと第2巻回部20bの第2コイル線10bとが対峙する。また、第1巻回部20aの第2コイル線10bと第2巻回部20bの第1コイル線10aとが対峙する。そして、変換部10zにおいて、多重コイル線10がねじられた状態となっている。
【0018】
変換部10zにおいて、第1コイル線10aは、内層から外層に変換され、第2コイル線10bは、外層から内層に変換されている。つまり、第1、第2コイル線10a、10bは、コイル部材20の途中部位である変換部10zにおいて、互いに層を変換されている。本実施の形態では、変換部10zは、コイルエンド部の上方に位置している。これにより、占積率の低下を抑制することができる。
【0019】
各コイル線10a、10bは、断面がほぼ矩形状の銅線12と、銅線12を被覆する、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等に代表されるイミド系樹脂からなる被覆膜13とを有している。銅線12の断面寸法は、短辺が約0.95mmで長辺が約2.40mmであり、被覆膜13の厚みは約0.03mmである。
【0020】
そして、第1コイル線10aと、第2コイル線10bとは、それぞれ両端の第1外部端子21と、第2外部端子22とにおいて、互いに導通している。つまり、第1コイル線10aと第2コイル線10bとは、電気的に並列に接続されている。
【0021】
図1(b)に示すように、分割コア51は、ヨーク部51aと、ヨーク部51aからロータ側に突出したティース部51bとを有している。本実施形態では、圧粉コア構造を採用しているが、積層鋼板を用いてもよい。圧粉構造の場合は、ヨーク部51aに、図1に示す破線部分を上下に設けてもよい。
図1(b)には図示されていないが、コイル部材20は、コイル全体をモールドしているモールド樹脂を備えている。そして、モールド樹脂と、分割コア51のティース部51bとを嵌合させて、コイル部材20が分割コア51に取り付けられる。コイル部材20および分割コア51により、分割ステータが構成される。
そのとき、変換部10zは、モールド樹脂40内に埋設されているが、第1外部端子21、第2外部端子22は、モールド樹脂から露出している。
【0022】
−モータの構造−
図2は、本実施の形態に係るモータのステータ50の概略的な構造を示す断面図である。図2においても、モールド樹脂の表示は省略されている。同図に示すように、ステータ50は、複数の分割コア51を環状に組み合わせた後、図示しないリング部材等を用いて外側から囲み込んで組み付けられる。本実施形態では、コアとして分割コア51を集合させたものを用いているが、コアが分割されずに一体化されたものであってもよい。
【0023】
ステータ50の内方には、永久磁石を設けたロータ(図示せず)が配置される。分割コア51は、本実施の形態では、絶縁被膜を有する磁性粉末を圧縮成形して形成されている。ただし、多数の珪素鋼板を樹脂絶縁層を挟んで積層したものであってもよい。
そして、分割コア51のティース部51bには、第1コイル線10aおよび第2コイル線10bを含む多重コイル線10が巻回されている。樹脂は図示されていないが、多重コイル線10は樹脂モールドされている。
【0024】
−バスバーとの接続構造−
図3は、本実施の形態のステータ50であって、3相交流モータのステータ50の平面図である。図4は、3相交流モータのステータ50の等価回路を示す図である。見やすくするために、図3においては、モールド樹脂40の図示を省略している。
図3および図4に示すように、分割コア51のコイル部材20は、U相電力が供給されるもの、V相電力が供給されるもの、およびW相電力が供給されるもの、に分かれて配置される。それぞれの相では、4個のコイル部材20が直列配置され、各コイル部材20の端子は、バスバー32U、32V、32Wによって電気的に接続されている。各相の最も中心側の端部に位置するコイル部材20の第1外部端子21は、各相共通に中性点(基準点)用バスバー33に接続されている。また、直列接続の最も外側に位置するコイル部材20の第2外部端子22は、電源側接続導体31U、31V、31Wに接続されて、インバータモジュール等から変換された交流電力の供給を受ける。
【0025】
なお、図3においては、バスバー32U、32V、32Wのみ断面構造を示している。バスバー32U、32V、32Wは、端子部分を除き絶縁膜で被覆されているが、必ずしも絶縁膜で被覆されている必要はない。
【0026】
図4に示すように、第1コイル線10aは、第1コイル線10aの内層では抵抗値r1を、第2コイル線10bの外層では抵抗値r2を有している。ただし、r1<r2とする。つまり、外層においては、内層よりもコイル線が長いので、抵抗値が大きい。
一方、第2コイル線10bは、第1コイル線10aの外層では抵抗値r2を、第2コイル線10bの内層では抵抗値r1を有している。
つまり、第1コイル線10a、第2コイル線10b共に、全体の抵抗値は、r1+r2である。つまり、製造時の巻き径のばらつきや、変換部10zの位置のばらつき等を無視すると、第1、第2コイル線10a、10bの抵抗値はほぼ等しい。このように、第1、第2コイル線10a、10bは、変換部10zにおいて、抵抗値が近づくように(等しくなるように)、互いに層を変換されている。
【0027】
−実施の形態の効果−
本実施形態のコイル部材20またはステータ50によると、以下の作用効果が得られる。コイル部材20は、第1コイル線10aおよび第2コイル線10bを内層と外層とにして並列に巻回した構造を有している。そして、第1コイル線10aと第2コイル線10bとは、変換部10zにおいて、互いに層を変換されている。
【0028】
このように、第1、第2コイル線10a、10bが並列に巻回され、変換部10z(途中部位で)において、互いに層を変換されている。その結果、図4に示すように、第1コイル線10a、第2コイル線10bの抵抗値は互いにほぼ等しい。よって、高周波電流が流れても、循環電流が抑制され、電流の利用効率を高めることができる。
【0029】
また、特許文献1のように、ある分割ステータ51の第1コイル線10aを他の分割ステータ51の第2コイル線10bに接続する場合、図4に示すような簡素な構造とはならない。つまり、図4に示す第1コイル線10aと第2コイル線10bとが、1つの相内の全てのコイル部材を通じて、2つの並列回路に分かれる。したがって、各分割ステータ51間を結ぶバスバー32U、32V、32Wがそれぞれ2本ずつ必要である。そのために、図3に示す各端子21a、21b、22a、22bとバスバー32U、32V、32Wとの接続構造が複雑で、接続作業が困難となる。また、モータ軸長が増大することにより、モータ効率がかえって悪化するおそれもある。
【0030】
それに対し、本実施の形態では、各コイル部材20内で第1コイル線10aと第2コイル線10bとが各外部端子21、22で導通している。したがって、コイル部材20は、直列接続されている(図4参照)。したがって、各分割コア51間を電気的に接続するバスバーは1本ずつでよく、バスバー構造が簡素である。具体的には、図3に示す端子21、22および変換部10zは、モールド樹脂40内に埋設することができる。そして、中性点(基準点)用バスバー33を除くと、各分割コア51のコイル部材20間を接続するバスバー32U、32V、32Wが1本だけでよい。したがって、バスバーと端子との接続作業も容易である。
【0031】
また、特許文献1の構造では、共通の相に属する2系列のコイル線の抵抗率差を0とするためには、共通の相に属するコイル部材20(分割ステータ51)の数が偶数でなければならない。
それに対し、本実施の形態では、コイル部材20の個数に拘わらず、コイル部材20内における第1、第2コイル線10a、10bの抵抗値差がほぼ0になる。よって、モータ等の種類や構造に応じた最適な数のスロット数に設計することができる。すなわち、分割ステータの構造を有するものでは、最適な分割ステータ数(コイル部材数)に、設計することができる。
【0032】
(実施の形態2)
図5(a)〜(b)は、実施の形態2におけるコイル部材20の形成手順を示す斜視図である。図5(a)〜(b)において、実施の形態1と同じ部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
まず、図5(a)に示すように、第1コイル線10aを内層に、第2コイル線10bを外層にした第1巻回部20aを準備する。また、第1コイル線10aを外層に、第2コイル線10bを内層にした第2巻回部20bを準備する。ただし、この段階では、第1コイル線10aと第2コイル線10bとは、互いに同じ構造を有している。
【0033】
次に、図5(b)に示すように、第1巻回部20aと第2巻回部20bとを一体化する。そして、各コイル20a、20bの切断部分同士を合わせる。
【0034】
そして、図5(b)に示すように、第1コイル線10a同士を第1変換部10z1において接続する。また、第2コイル線10b同士を第2変換部10z2において、TIG溶接等により、接合する。つまり、第1、第2変換部10z1、10z2を含む変換部10zにおいて、第1、第2コイル線10a、10bの内層、外層が変換されている。
【0035】
上記実施の形態2では、変換部10zは、TIG溶接等の溶接により形成されているが、ろう付けなど、他の方法によって接合することもできる。
【0036】
本実施の形態においても、モータのステータ50の概略的な構造は、図2に示すとおりである。また、ステータ50の平面構造および等価回路は、図3および図4に示すとおりである。
【0037】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第1コイル線10a、第2コイル線10bの抵抗値は、ほぼ等しい。よって、実施の形態1と同じ効果を発揮することができる。加えて、本実施の形態では、第1巻回部20aと第2巻回部20bとを同じ構造にすることができる利点がある。
【0038】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3における分割ステータの断面図である。同図においては、モールド樹脂の図示が省略されている。図6において、実施の形態1と同じ部材については、同じ符号を付して、説明を省略する。
本実施の形態では、第1コイル線10aと第2コイル線10bとは、フラットワイズ状に巻回されている。
図6においては、理解を容易にするために、この断面には存在しない変換部10zが表示されている。
【0039】
本実施の形態においても、第1コイル線10aは、変換部10zにおいて、内層から外層に変換されている。また、第2コイル線10bは、変換部10zにおいて、外層から内層に変換されている。つまり、変換部10zにおいて、第1、第2コイル線10a、10bは、互いの層を交換されている。
なお、図示されていないが、各コイル線10a、10bは、両端の外部端子(21、22)において、互いに導通している。
本実施の形態においても、モータのステータ50の概略的な構造は、図2に示すとおりである。また、ステータ50の平面構造および等価回路は、図3および図4に示すとおりである。
【0040】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第1コイル線10a、第2コイル線10bの抵抗値は、ほぼ等しい。よって、実施の形態1と同じ効果を発揮することができる。加えて、本実施の形態では、フラットワイズ状に巻回することにより、巻回時の変形に要する応力を低減することができる。つまり、コイル部材20の形成が容易となる。
【0041】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態3における分割ステータの断面図である。同図においては、モールド樹脂の図示が省略されている。図7において、実施の形態1と同じ部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施の形態では、第1コイル線10aと第2コイル線10bとに加えて、第3コイル線10cが存在する。つまり、3つのコイル線10a、10c、10bが内側から順に重ねられて、エッジワイズ状に巻回されている。そして、第1コイル線10aは、変換部10zにおいて、内層から外層に変換されている。また、第2コイル線10bは、変換部10zにおいて、外層から内層に変換されている。一方、第3コイル線10cは、ずっと、中間層のままである。つまり、変換部10zにおいて、第1、第2コイル線10a、10bは、互いの層を交換され、第3コイル線10cは、層を変換されていない。
なお、図示されていないが、各コイル線10a〜10cは、両端の外部端子(21、22)において、互いに導通している。
【0043】
本実施の形態においても、モータのステータ50の概略的な構造は、図2に示すとおりである。また、ステータ50の平面構造および等価回路は、図3および図4に示すとおりである。ただし、図4の部分拡大図に示す構造においては、3本のコイル線10a〜10cが、並列に接続されることになる。
【0044】
本実施の形態において、変換部10zから端部までの内層、中間層、外層のコイル線の抵抗値をr1、r3、r2とする。このとき、r1<r3<r2である。すると、第1、第2、第3コイル線10a、10b、10cのコイル部材20における抵抗値は以下の通りである。
第1コイル線10aの抵抗値:r1+r2
第2コイル線10bの抵抗値:r1+r2
第3コイル線10cの抵抗値:2×r3
【0045】
第1コイル線10aと第2コイル線10bとの抵抗値はほぼ等しい。一方、r3はr1とr2の中間的な値である。よって、第1、第2コイル線10a、10bと第3コイル線10cとの抵抗値は、厳密に等しいとはいえないが、近似的には等しい。
【0046】
本実施の形態によると、第1〜第3コイル線10a〜10cのコイル部材20における抵抗値は近似的に等しくなる。よって、3層以上のコイル線を巻回した構造においても、実施の形態1と同様の効果を発揮することができる。
【0047】
(他の実施の形態)
上記各実施の形態では、コア50を多数の分割コア51に分割した構造を採用したが、複数の分割コア51が一体化されたものであってもよい。
【0048】
上記各実施の形態では、各コイル線10a〜10cの断面形状をほぼ矩形状としたが、円形やその他の形状であってもよい。
【0049】
上記各実施の形態では、コイル部材20として、樹脂でモールドされたカセットコイル構造を採用しているが、本発明は掛かる実施の形態に限定されるものではない。ただし、カセットコイル構造を採用することにより、モジュール化された部材を利用して、組立や商品化の便宜を図ることができる。
【0050】
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のコイル部材およびステータは、産業用モータ、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、ロボットなどに配置されるモータ(リニアモータを含む)、発電機、リアクトル、トランスなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 多重コイル線
10a 第2コイル線
10b 第1コイル線
10c 第3コイル線
10z 変換部
12 銅線
13 被覆膜
20 コイル部材
20a 第1巻回部
20b 第2巻回部
21 第1外部端子
22 第2外部端子
31U、31V、31W 電源側接続導体
32U、32V、32W バスバー
33 中性点用バスバー
50 ステータ
51 分割コア
51a ヨーク部
51b ティース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイル線が、内層から外層に亘って並列に巻回されたコイル部材であって、
前記複数のコイル線のうち少なくとも2層のコイル線が、全てのコイル線の抵抗値が共通の値に近づくように、途中部位で切断された端部が接合されることで互いの層を交換されている、コイル部材。
【請求項2】
前記少なくとも2層のコイル線は、コイルエンド部において互いの層を交換されている、請求項1に記載のコイル部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコイル部材と、
前記コイル部材が装着されるコアと、
を備えているステータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−102680(P2013−102680A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2681(P2013−2681)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2008−232198(P2008−232198)の分割
【原出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】