説明

コエンザイムQ10、アスコルビン酸誘導体及びビタミンKなどを有効成分とする口唇用化粧料

【課題】 本発明は、CoQ10による保湿性の高い、殊に活性型CoQ10即ちCoQH2又はCoQHの作用の持続を利用し、更にAsAやビタミンKなどの有効作用を利用した保湿性且つその持続性を有する口唇用化粧料、殊にリップクリームや口紅を提供することを目的とする。
【解決手段】CoQ10にAsA誘導体、殊にAsA- P- Mgを配合してなり、更にはビタミンKやビタミンA、ビタミンEなどを配合してなり、前記ビタミンKは、合成及び/又は植物由来のビタミンKであり、前記口唇用化粧料はリポソーム化された成分を利用してなることによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10(以下、単にCoQ10と云う)類、アスコルビン酸誘導体及びビタミンK(ビタミンK1、K2、K3を含むビタミンK群; 以下単にビタミンKと云う)などを有効成分とする口唇用化粧料であり、殊に保湿性の高い且つその持続性が高いリップクリームや口紅などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CoQ10は、1950年にイギリスのモートン博士により発見され、その後アメリカのクレーン博士らにより、牛のミトコンドリア内からの結晶単離に成功し、1967年にその量産化が確立され、1974年に医薬品として使用され、2001年に食品としても使用され今日に至っている。
殊に最近では、肌老化防止成分として脚光を浴びているところであり、CoQ10は抗酸化とエネルギー代謝促進作用を有する健康食品素材としても注目されている。またこのCoQ10は、体内で20歳をピークに年々減少していくことから、この減少が老化の原因の一つであることが分かってきている。
従来、CoQ10は日本薬局方名ユビデカレノンとして虚血性心疾患、高血圧症やリウマチ性心疾患等に基づく、うっ血性心不全症(浮腫、肺うっ血、肝腫張や狭心症)の治療薬として用いられていた。また、最近では化粧品添加剤としても用いられてきているが、化粧品としてのその添加量は0.03%以内と制限されている。
特許文献1には、CoQ10を配合することを特徴とする化粧料が開示されており、この化粧料は手及び顔の肌荒れを防止し、皮膚に潤いを与え、美肌及び皮膚賦活効果を有する、とされている。
また、特許文献2には、皮膚又は粘膜の保湿性を改善し、又はそれらが乾燥することを防止するために、皮膚又は粘膜に適用することを意図した組成物、特に化粧品用組成物におけるポリアミノ酸誘導体の使用に関する発明が開示されており、保湿性に優れた口紅にも言及している。
【特許文献1】特公昭62ー121号公報
【特許文献2】特開2002ー308756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CoQ10の活性型であるユビキノール(以下、単にCoQH2 という)又はユビセミキノン(以下、単にCoQHという)は比較的不安定で空気中の酸素により元のCoQ10に変わり、化粧品添加物としての価値が低下する。
CoQ10を酸素原子1電子還元して得られるCoQHも当然還元性を示す。本発明者らはこのような化学反応を考慮して、安全にして安定なCoQH2又はCoQHを保湿性リップクリームや口紅などの口唇用化粧料に応用するため、活性型CoQ10即ち、CoQH2やCoQHの保湿作用、その作用の持続を求めて鋭意検討を重ねた結果、CoQ10とアスコルビン酸(以下単に、AsAと云う)殊にアスコルビン酸リン酸マグネシウム(以下、単にAsA- P- Mgと云う)を配合すれば口唇内においてのみ有用なCoQH2やCoQHに変わり、目的を達成でき得ることを知見し、本発明を完成させたものである。
即ち、AsA- P- Mgは口唇内やプラセンタエキスに存在するフォスファターゼにより徐々にAsAに変換し、ここに生成したAsAがCoQ10に作用し、CoQH2やCoQHに徐々に変換し、効果を発揮することを知見したものである。
【0004】
本発明は、以上の点から、活性型CoQ10即ちCoQH2又はCoQHの作用の持続を利用した保湿性リップクリームや口紅などの口唇用化粧料を提供することを目的としている。
【0005】
従来の口唇化粧料、例えばリップクリームなどは、ロウ、ワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、ラノリンアルコール、ヒマシ油、カカオ脂、セタノール、オレイルアルコール、脂肪酸エステル、流動パラフィン、界面活性剤、色素、その他添加物を配合成分とするものが殆どであり、このような従来のリップクリームなどでは、使用者の周囲の環境、例えば自然気候やエアコン、湿度の低下、排気ガスなどの人口環境の変化などから、ヒビワレ、乾燥、クスミなどの不具合が充分に解消されない場合が多かった。
【0006】
そもそも、口唇は皮膚とは多分に相違し、口腔粘膜から皮膚に至る移行帯を形成しており、角質層が非常に薄く、水分が蒸発し易いため、荒れやすくなっている。また、口唇の性状には季節差があり、冬期ほど有核細胞比率が高く、荒れやすい機構があるといわれている。また、口唇はメラニン色素が少なく紫外線防御能が小さいため、紫外線量の多い季節には特に影響を受けると考えられている。
【0007】
本発明は、以上の点から、CoQ10、AsAやビタミンKなどの有効作用を利用した保湿性が高く且つその作用の持続性の高い口唇用化粧料、特に保湿性リップクリーム又は口紅を提供することを目的としている。
殊に、抗酸化作用並びに血行促進作用により、唇の血行を促進させ、くすみを取り除き、健康な状態に整える、口唇用化粧料、特に保湿性リップクリーム又は口紅を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明によれば、CoQ10を配合してなることを特徴とする、口唇用化粧料により、達成される。
この発明においては、口唇用化粧料にCoQ10を配合することにより、保湿性が高い口唇用化粧料を得ることができるものである。
【0009】
上記目的は、本発明によれば、CoQ10にAsA誘導体を配合してなることを特徴とする、口唇用化粧料により、達成される。
この発明においては、CoQ10にAsAを配合すれば口唇中においてのみ有用なCoQH2やCoQHに変わり、持続性口唇用化粧料としての目的を達成でき得るものである。
【0010】
上記目的は、本発明によれば、前記AsAはAsA- P- Mgであることを特徴とする、口唇用化粧料により、達成される。
この発明においては、AsA誘導体をAsA- P- Mgに特定し、活性型CoQ10即ち、CoQH2やCoQHの作用の持続を利用するものである。
【0011】
上記目的は、本発明によれば、CoQ10にビタミンKを配合してなることを特徴とする、口唇用化粧料により、達成される。
この発明においては、CoQ10にビタミンKを配合することにより、保湿性が高く、且つその作用の持続性が高い口唇用化粧料を得ることができるものである。
【0012】
また上記目的は、本発明によれば、前記ビタミンKは、合成のビタミンKであることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、CoQ10に合成のビタミンKを配合したので血行促進作用や保湿作用が高く、且つその作用の持続性が高い口唇用化粧料を得ることができるものである。
【0013】
また上記目的は、本発明によれば、前記ビタミンKは、植物由来のビタミンKであることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、CoQ10に植物由来のビタミンKを配合したので血行促進作用や保湿作用が高く、且つその作用の持続性が高い口唇用化粧料を得ることができるものである。
【0014】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料は、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップトリートメントなどであることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、CoQ10にビタミンKを配合した口唇用化粧料として、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップトリートメントなど幅広く特定し、上記の目的を達成し得るものである。
【0015】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料は、固形状、軟膏状、クリーム状、ゲル状などであることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。 この発明においては、CoQ10にビタミンKを配合した口唇用化粧料の製剤形態として、固形状、軟膏状、クリーム状、ゲル状など幅広く特定し、上記の目的を達成し得るものである。
【0016】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料は、スティックタイプ、ジャータイプ、チューブタイプなどであることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、CoQ10にビタミンKを配合した口唇用化粧料の製品形状として、スティックタイプ、ジャータイプ、チューブタイプなど幅広く特定し、上記の目的を達成し得るものである。
【0017】
また上記目的は、本発明によれば、前記CoQ10及びAsA成分にビタミンK、ビタミンA、ビタミンEなどの内、1種以上の成分を添加してなることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、有用なCoQ10及びAsA及び成分にビタミンK、ビタミンA、ビタミンEを配合し、口唇の血行促進などの作用効果をより高めている。
【0018】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料はリポソーム化された成分を利用してなることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、口唇用化粧料がリポソーム化されているので、CoQ10成分などの安定化が図られ、更にはCoQ10成分の析出を防ぐことができる。
【0019】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料は口唇内やプラセンタエキスに存在するフォスファターゼを利用してなることを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、AsA- P- Mgは口唇内やプラセンタエキスに存在するフォスファターゼにより徐々にAsAに変換し、ここに生成したAsAがCoQ10に作用してCoQH2やCoQHに徐々に変換し、作用効果を発揮することとなる。
【0020】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料は前記AsA- P- Mgは、0.10〜9.00%量含有することを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、CoQ10に配合するAsA- P- Mgの分量を特定し、その作用効果をより高めている。
【0021】
また上記目的は、本発明によれば、前記CoQ10成分は、0.01〜1.00%量含有することを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、有用なCoQ10を口唇用化粧料に応用するため、CoQ10の有効成分の配合成分量を特定し、その作用効果をより高めている。
【0022】
また上記目的は、本発明によれば、前記合成のビタミンKは0.10〜5.00%量含有することを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、有用なビタミンKを口唇用化粧料に応用するため、合成のビタミンKの有効成分の配合成分量を特定し、その作用効果をより高めている。
【0023】
また上記目的は、本発明によれば、前記植物由来のビタミンKは0.10〜10.00%量含有することを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、有用なビタミンKを口唇用化粧料に応用するため、植物由来のビタミンKの有効成分の配合成分量を特定し、その作用効果をより高めている。
【0024】
また上記目的は、本発明によれば、前記ビタミンAは0.10〜1.00%、ビタミンEは0.10〜1.00%量含有することを特徴とする口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、有用なCoQ10、ビタミンKに加え、ビタミンA、ビタミンE有効成分の配合成分量を特定し、口唇の血行促進などの作用効果をより高めている。
【0025】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料は、重質流動イソパラフィン、パルミチン酸デキストリン、メチルフェニルポリシロキサン、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、天然ビタミンE、パルミチン酸レチノール[混]、アボカド油、キョウニン油、ローズヒップ油、ダイズ発酵エキス、フィトナジオン、CoQ10、水素添加ダイズリン脂質、コレステロール、プラセンタエキス(1)[混]、精製水、リン酸L−アスコルビルマグネシウムなどの内1種以上の成分からなることを特徴とするリップクリーム又はその他の口唇用化粧料により達成される。
この発明においては、有用なCoQ10やAsA- P- Mg、ビタミンKなどをリップクリーム成分などに利用するため、その他の具体的な配合成分と共に特定し、その作用効果をより高めている。
【0026】
また上記目的は、本発明によれば、前記口唇用化粧料は、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、白色ワセリン、セスキオレイン酸ソルビタン、天然ビタミンE、パルミチン酸レチノール[混]、ホホバ油、キャンデリラロウ、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(2)、還元ラノリン、アボカド油、キョウニン油、ローズヒップ油、ダイズ発酵エキス、フィトナジオン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、CoQ10、水素添加ダイズリン脂質、コレステロール、プラセンタエキス(1)[混]、精製水、リン酸L−アスコルビルマグネシウムなどの内1種以上の成分からなることを特徴とするリップクリーム又はその他の口唇用化粧料により達成される。 この発明においては、有用なCoQ10やAsA- P- Mg、ビタミンKなどをリップクリーム成分などに利用するため、その他の具体的な配合成分と共に特定し、その作用効果をより高めている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の上記構成によれば、CoQ10、AsA及びビタミンKなどの有効成分を活かした保湿性口唇用化粧料、特に保湿性が高く且つその作用が持続するリップクリームや口紅を得ることができる。
本発明の上記構成によれば、活性型CoQ10即ち、CoQH2やCoQHの作用を利用し、且つその作用の持続性を活かした保湿性リップクリーム又は口紅を得ることができる。即ち、上記リップクリームや口紅においても口唇に接触してから口唇内に浸透するまで或いはまた口唇に浸透してからも長時間作用効果が持続することとなる。
殊に、本発明の上記構成によれば、リポソーム化した上記口唇用化粧料、特にCoQ10成分の安定並びに析出を防止した保湿性リップクリームや口紅を得ることができる。
殊に本発明による口唇用化粧料は、唇に良くのびて馴じみやすく、唇の乾燥感がなくしかも色調の劣悪感もなく、これらの作用の持続が図られ、使用感並びに唇の保護作用に優れた口唇用化粧料を得ることができる。特に、
・唇の荒れ、ひび割れや乾燥から守る。
・なめらかで潤った唇に保つ。
・みずみずしさとつやを与える。
・しっとり感を長続きさせる。
・活性酸素や紫外線から唇を守る。
・唇の血行を促進し、くすみのない血色の良い色に整える。
・炎症を抑える。
などの作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0029】
CoQ10は細菌、カビ、酵母、植物、動物など広く生物界から見いだされるキノンであることよりユビキノンとも呼ばれ、種によりイソプレン単位を異にする同族体を生合成することが知られている。ある種の微生物では、イソプレン数が5個であり、原虫テトラヒメナでは8個、植物では9個、ヒトでは10個である。本願発明においては、人体及び高等動物にのみ存在し、ミトコンドリア中にて重要な生理活性作用を担うCoQ10を保湿性リップクリーム又は口紅に配合し、保湿作用及び細胞賦活作用を利用するものである。
【0030】
この内、還元型CoQ10が化粧料としてはより有効であり、化粧料一般としては、皮膚細胞に浸透し、還元力を発揮し、色素沈着、シミの原因となるメラニンの生成を抑え、美白、潤い肌、老化防止、細胞を傷つける活性酸素の除去、エネルギー代謝の促進、老廃物の分解、皮膚細胞の活性、肌荒れの改善などが期待されるところであるが、本発明においては、口唇用化粧料として、上記CoQ10の有効作用の内、口唇への潤い、細胞を傷つける活性酸素の除去、老廃物の分解、口唇細胞の活性、口唇荒れの改善などに利用するものである。
【0031】
上述のようにCoQH2やCoQHは比較的不安定で空気中の酸素により元のCoQ10に変わり、化粧品添加物としての価値が低下する。しかしながら、本発明は活性型CoQ10即ち、CoQH2やCoQHの作用の持続を求めたものであり、CoQ10とAsA- P- Mgを配合すれば口唇中において有用なCoQH2やCoQHが得られ、保湿性リップクリームや口紅などの口唇用化粧料に利用できるものである。
即ち、AsA- P- Mgは口唇内やプラセンタエキスなどに存在するフォスファターゼにより徐々にAsAに変換する。CoQ10は、ここに生成したAsAと作用し、CoQH2やCoQHに変換され、効果を発揮するものである。
上述の持続性にする理由は、一つには口唇に対する刺激性を緩和するためであり、保湿性リップクリームや口紅などの口唇用化粧料においては極めて重要なことと言える。又もう一つの理由は、より有用なCoQH2やCoQHを徐々に作用させ、持続させるためであり、大きな特徴を成すものである。
【0032】
フォスファターゼは、通常われわれの皮膚内や口唇内に存在するが、プラセンタエキス由来のものであってもよい。プラセンタエキスは通常加熱処理してアルカリフォスファターゼを失活させて口唇用化粧料に応用するが、本発明のプラセンタエキスは未加熱もしくは部分加熱したものを使用する。部分加熱は通常50〜80℃で10〜60分処理を行うが、存在するアルカリフォスファターゼが完全に失活せずに、弱いながら活性が残存する状態で使用する。
【0033】
本発明においては、保湿性リップクリームや口紅などの口唇用化粧料にAsA- P- Mgを配合し、活性型CoQ10即ち、CoQH2やCoQHの作用の持続を求めたものである。
【0034】
上述のように、口唇と肌などの他の部位とは自ずから異なり、部位の厚みが違っていて、口唇は粘膜に近いものであり、そのため傷つき易く細菌汚染などの可能性などもあり、特異な部位と云える。殊に、
(1)バリアー機能(油分)については、皮膚には皮脂腺があるのに比べ、口唇には無い。また皮膚には皮脂膜があるのに比べ、口唇には無い。
(2)バリアー機能(角層)については、皮膚には角層があるのに比べ、口唇は極めて薄い。また皮膚のターンオーバーは遅いのに比べ、口唇は早い。
(3)保湿機能については、皮膚にはNMFが多いのに比べ、口唇には少ない。また皮膚は水分蒸散速度が遅いのに比べ、口唇は早い。また皮膚には水分量が多いのに比べ、口唇には少ない。
(4)紫外線防御機能については、皮膚にはメラニン量が多いのに比べ、口唇には少ないか無い。
(5)その他の保護機能については、皮膚には毛があるのに比べ、口唇には無い。 本発明は、以上のような口唇の特徴に鑑み、CoQ10、AsA、ビタミンK、ビタミンA、ビタミンEなどを配合し、口唇化粧料として肌の化粧料とは異なる有効な作用効果を考慮したものである。
【0035】
前記ビタミンKは類縁物質であるピロロキノリンキノンや植物及び/又は食品より得られた混合物でもよく、或いはまたビタミンKを含有するアボカド油・ローズヒップ油・キョウニン油・ダイズ発酵エキス(株式会社ホルス製、商品名「ホルスKコンプレックス」)品などの2つ以上よりなる混合物であってもよい。後述のように、本発明においては、植物由来のビタミンKとして上述の「ホルスKコンプレックス」を使用し、その配合量は0.10〜10.00%が好ましく、就中1.00〜5.00%が最適である。
ここに挙げたビタミンKは化学構造的にはナフトキノン誘導体でありベンゾキノンの誘導体であるCoQ10とは類縁体と見なされ、活性型はカルボニル基が生体内で還元作用を受けて生成したナフトキノールと言われている。ビタミンK化粧品原料としての有用性は保湿性等であるが、CoQ10配合口唇用化粧料にこれらの作用が加味されて、より有用性を発揮するのものである。後述のように、本発明においては、合成のビタミンKとしてフィトナジオンを使用し、その配合量は0.10〜5.00%が好ましく、就中0.10〜1.00%が最適である。
【0036】
前記のリポソーム化は、殊にCoQ10に対して有効であり、脂溶性が高く水に溶け難いCoQ10を水溶化し易くなる利点があり、口唇用化粧料製造時に有用である。またこの他に、CoQ10の口唇吸収の促進、刺激性の低減、口唇改善作用、保湿性・柔軟性・平滑性などの作用効果の高まりが期待される。
リポソームは、天然に存在するリン脂質を水中に分散させることにより、2分子膜を有する小胞体が形成されることの発見に由来し、非常に近似度の高い生体膜モデルであることよりリポソ−ムと呼ばれ、今日に至っている。
本発明においては、このリポソームの有する作用をCoQ10などに利用するものであり、CoQ10、リン脂質などを用いてリポソーム液を調整し、ゲルろ過装置などを使用してリポソーム分画し、CoQ10などをリポソーム膜中に存在させることによって、リップクリーム又は口紅の成分としてより有効な作用効果をもたらすようにするものである。
【0037】
本発明の口唇用化粧料の種類は、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップトリートメントなどであるが、これに限らない。
【0038】
本発明の口唇用化粧料の製剤形態としては、固形状、軟膏状、クリーム状、ゲル状などであるが、これに限らない。
【0039】
本発明の口唇用化粧料の製品形状としては、スティックタイプ、ジャータイプ、チューブタイプなどであるが、これに限らない。
【実施例1】
【0040】
以下の成分、製法により、保湿性の高いCoQ10、AsA及びビタミンK等配合リップクリームを得た。
成分名 分 量(%)
1 重質流動イソパラフィン 適 量
2 パルミチン酸デキストリン 5.00
3 メチルフェニルポリシロキサン 30.00
4 リンゴ酸ジイソステアリル 10.00
5 トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン 15.00
6 天然ビタミンE 0.15
7 パルミチン酸レチノール[混] 0.10
8 アボカド油・キョウニン油・ローズヒップ油・ダイズ発酵エキス5.00
(植物由来のビタミンK;(株)ホルス社製「ホルスKコンプレックス」)
又はフィトナジオン(合成のビタミンK) 0.50
9 コエンザイムQ10 0.03
10 水素添加ダイズリン脂質 0.20
11 コレステロール 0.04
12 プラセンタエキス(1)[混] 3.00
13 精製水 1.00
14 リン酸L−アスコルビルマグネシウム 0.10
合計 100.00
・上記成分中、成分1〜11の各成分を混合し、85℃に加熱融解する。
・均一に混合した後、冷却(急冷)を行う。
・50℃で、成分12〜14の各成分を添加し、さらに冷却を行う。
・35℃にて冷却を止め、静置し完成とする。
なお、この実施例1は上述の成分配合から分かるように、色素を入れていないが、健康的な口唇色が出ている。
【実施例2】
【0041】
以下の成分、製法により、保湿性の高いCoQ10、AsA及びビタミンK等配合リップクリームを得た。
成分名 分 量(%)
1 スクワラン 適 量
2 マイクロクリスタリンワックス 5.00
3 セレシン 5.00
4 白色ワセリン 20.00
5 セスキオレイン酸ソルビタン 0.50
6 天然ビタミンE 0.15
7 パルミチン酸レチノール[混] 0.10
8 ホホバ油 10.00
9 キャンデリラロウ 5.00
10 ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(2) 10.00
11 還元ラノリン 5.00
12アボカド油・キョウニン油・ローズヒップ油・ダイズ発酵エキス5.00
(植物由来のビタミンK;(株)ホルス社製「ホルスKコンプレックス」)
又はフィトナジオン(合成のビタミンK) 0.50
13 トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 20.00
14 コエンザイムQ10 0.03
15 水素添加ダイズリン脂質 0.20
16 コレステロール 0.04
17 プラセンタエキス(1)[混] 3.00
18 精製水 1.00
19 リン酸L−アスコルビルマグネシウム 0.10
合計 100.00
・上記成分中、成分1〜16の各成分を混合し、85℃に加熱融解する。
・均一に混合した後、冷却(急冷)を行う。
・50℃で、成分17〜19の各成分を添加し、さらに冷却を行う。
・35℃にて冷却を止め、静置し完成とする。
なお、この実施例2においても上述の成分配合から分かるように、色素を入れていないが、健康的な口唇色が出ている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上述した実施形態においては、リップクリームとして構成されているが、これに限らず、口紅、リップグロス、リップトリートメントなど各種口唇用化粧料に利用できる。
【0043】
このようにして、本発明によれば、CoQ10、AsA及びビタミンKなどの有効作用を利用したリップクリームや口紅などの口唇用化粧料を提供することができる。
【比較例1】
【0044】
保湿性リップクリームの効果テスト
実施例1により得られた保湿性リップクリームを、年齢20才〜30才の女性からなる被験者50人の唇に就寝前継続的(1ケ月)に塗布した結果を下記する。
1)有効性: 保湿性・乾燥防止並びに色調について:
2)安全性: 刺激・連用による影響について。重篤な副作用が見られた場合は、その症状・程度・発見時期・処置内容を記録:
3)使い心地: 匂い・感触・のびについて:
4)結果:
CoQ10、AsA、ビタミンK等を有効成分とする保湿性リップクリームの有効性について:協力機関: 西新井皮膚科形成外科
(累計比率)
著効 有効 やや有効 どちらとも云えない 刺激有り 計
本願 発明 22 20 7 1 0 50
A社従来品 12 10 8 20 0 50

このように、本発明に関わるCoQ10、AsA、ビタミンKなどを有効成分とする保湿性リップクリームによれば、従来品が50例中著効〜やや有効が60%であるのに比し、50例中96%が約1ケ月で保湿性・乾燥防止に関する著効〜やや有効がみられ、唇に良くのびて馴じみやすく、唇の乾燥感がなく、色調の劣悪感もなく、これらの作用の持続が図られ、使用感並びに唇の保護作用が優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10を配合してなることを特徴とする、口唇用化粧料。
【請求項2】
前記コエンザイムQ10にアスコルビン酸誘導体を配合してなることを特徴とする、請求項1に記載の口唇用化粧料。
【請求項3】
前記アスコルビン酸誘導体はアスコルビン酸リン酸マグネシウムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の口唇用化粧料。
【請求項4】
前記コエンザイムQ10にビタミンKを配合してなることを特徴とする、請求項1〜3に記載の口唇用化粧料。
【請求項5】
前記ビタミンKは、合成のビタミンKであることを特徴とする、請求項1〜4に記載の口唇用化粧料。
【請求項6】
前記ビタミンKは、植物由来のビタミンKであることを特徴とする、請求項1〜4に記載の口唇用化粧料。
【請求項7】
前記口唇用化粧料は、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップトリートメントなどであることを特徴とする、請求項1〜6に記載の口唇用化粧料。
【請求項8】
前記口唇用化粧料は、固形状、軟膏状、クリーム状、ゲル状などであることを特徴とする、請求項1〜7に記載の口唇用化粧料。
【請求項9】
前記口唇用化粧料は、スティックタイプ、ジャータイプ、チューブタイプなどであることを特徴とする、請求項1〜8に記載の口唇用化粧料。
【請求項10】
前記コエンザイムQ10及びアスコルビン酸誘導体成分にビタミンK、ビタミンA、ビタミンEなどの内、1種以上の成分を添加してなることを特徴とする、請求項1〜9に記載の口唇用化粧料。
【請求項11】
前記口唇用化粧料は、リポソーム化された成分を利用してなることを特徴とする、請求項1〜10に記載の口唇用化粧料。
【請求項12】
前記口唇用化粧料は、口唇内やプラセンタエキスに存在するフォスファターゼを利用してなることを特徴とする、請求項1〜11に記載の口唇用化粧料。
【請求項13】
前記アスコルビン酸リン酸マグネシウムは、0.10〜9.00%量含有することを特徴とする、請求項1〜12に記載の口唇用化粧料。
【請求項14】
前記コエンザイムQ10成分は、0.01〜1.00%量含有することを特徴とする、請求項1〜13に記載の口唇用化粧料。
【請求項15】
前記合成のビタミンKは、0.10〜5.00%量含有することを特徴とする、請求項1〜14に記載の口唇用化粧料。
【請求項16】
前記植物由来のビタミンKは、0.10〜10.00%量含有することを特徴とする、請求項1〜14に記載の口唇用化粧料。
【請求項17】
前記ビタミンAは、0.10〜1.00%、ビタミンEは0.10〜1.00%量含有することを特徴とする、請求項1〜16に記載の口唇用化粧料。
【請求項18】
前記口唇用化粧料は、重質流動イソパラフィン、パルミチン酸デキストリン、メチルフェニルポリシロキサン、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、天然ビタミンE、パルミチン酸レチノール[混]、アボカド油、キョウニン油、ローズヒップ油、ダイズ発酵エキス、フィトナジオン、コエンザイムQ10、水素添加ダイズリン脂質、コレステロール、プラセンタエキス(1)[混]、精製水、リン酸L−アスコルビルマグネシウムなどの内1種以上の成分からなることを特徴とする、請求項1〜17に記載のリップクリーム又はその他の口唇用化粧料。
【請求項19】
前記口唇用化粧料は、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、白色ワセリン、セスキオレイン酸ソルビタン、天然ビタミンE、パルミチン酸レチノール[混]、ホホバ油、キャンデリラロウ、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(2)、還元ラノリン、アボカド油、キョウニン油、ローズヒップ油、ダイズ発酵エキス、フィトナジオン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、コエンザイムQ10、水素添加ダイズリン脂質、コレステロール、プラセンタエキス(1)[混]、精製水、リン酸L−アスコルビルマグネシウムなどの内1種以上の成分からなることを特徴とする、請求項1〜17に記載のリップクリーム又はその他の口唇用化粧料。

【公開番号】特開2006−193492(P2006−193492A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8629(P2005−8629)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(500279357)株式会社日本天然物研究所 (3)
【Fターム(参考)】