説明

コタラヒンブツを含有したパン及び健康食品

【課題】 コタラヒンブツに含有される有効成分による種々の秀れた効能、即ち、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用,肝臓保護作用,抗酸化作用,抗腫瘍作用等を得られる米及びパンを提供するものである。
【解決手段】 コタラヒンブツが含有されているパン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コタラヒンブツ(学名:サラシア・レティキュラータ)を含有した健康食品、特に米,パンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コタラヒンブツ(学名:サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata))はスリランカに植生するトチノキ科のつる性植物で、血糖値上昇抑制作用、肥満抑制作用、肝臓保護作用等の薬効作用を有することで知られている。
【0003】
即ち、コタラヒンブツはサラシノール(Salacinol)やコタラノール(Kotalanol)をはじめとする種々の有効成分を含有し、これら有効成分によって、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用,肝臓保護作用,抗酸化作用,抗腫瘍作用等の効能が発揮される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から種々の健康に良い米やパンが提案されているが、コタラヒンブツを含有した米やパンはない。
【0005】
本発明は、コタラヒンブツに含有される有効成分による種々の秀れた効能、即ち、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用,肝臓保護作用,抗酸化作用,抗腫瘍作用等を得られる米及びパンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
コタラヒンブツが含有されていることを特徴とするパンに係るものである。
【0007】
また、米とコタラヒンブツとから成ることを特徴とする健康食品に係るものである。
【0008】
また、コタラヒンブツが含有されていることを特徴とする健康食品に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のように構成したから、コタラヒンブツに含有される有効成分による種々の秀れた効能、即ち、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用,肝臓保護作用,抗酸化作用,抗腫瘍作用等を得られる米及びパンとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るコタラヒンブツ含有の米やパンは、コタラヒンブツの有する種々の秀れた効能、即ち、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用,肝臓保護作用,抗酸化作用,抗腫瘍作用等を発揮する為、非常に健康に良い米やパンとなる。
【実施例1】
【0011】
実施例1は、コタラヒンブツが含有されているパンであり、具体的には、以下に説明するコタラヒンブツエキスに酵母菌及び乳酸菌を加えて共生培養させることにより得られる発酵液及びこの発酵液を乾燥した粉末状発酵物を小麦粉の重量に対して5〜10%混入し、常法により製造したパンである。
【0012】
先ず、コタラヒンブツエキスに酵母菌及び乳酸菌を加えて共生培養させることにより得られる発酵液及びこの発酵液を乾燥した粉末状発酵物の製造方法について説明する。
【0013】
原料となるコタラヒンブツ(例えば1kg)を粉砕する。
【0014】
続いて、粉砕したコタラヒンブツを大気圧状態下で温水抽出し、遠心分離機を用いて固形分(コタラヒンブツ)を除いた第一エキス分を得る。
【0015】
この温水抽出は、粉砕したコタラヒンブツを水(例えば50リットル)に加え、75℃〜85℃となるまで加熱してこの温度をおよそ1.5時間〜2.5時間保持することで行う。この際、80℃で2時間抽出することが最も好ましい。
【0016】
大気圧状態下での温水抽出を行うのは、コタラヒンブツに含まれる抗酸化酵素が破壊されたり若しくは活性を失うことを防止しつつ、種々の有効成分を抽出する為である。
【0017】
温水抽出した固形分(コタラヒンブツ)と第一エキス分(抽出液)とを遠心分離器により分離する。
【0018】
続いて、遠心分離機により分離された固形分(コタラヒンブツ)と水(およそ50リットル)とを圧力釜に入れ、加圧状態下において、温水若しくは熱水抽出し、再度遠心分離機を用いて固形分(コタラヒンブツ)を除いて第二エキス分を得る。
【0019】
この加圧状態下における抽出は、少なくとも1.0気圧よりも高い圧力状態下で(好ましくは、1.0よりも高く3.0気圧以下の圧力状態下で)、120℃〜140℃で0.5時間〜1.5時間で行う。尚、この際、3.0気圧の圧力状態下において、140℃で0.5時間〜1時間抽出することが更に好ましい。
【0020】
加圧状態下で温水若しくは熱水抽出を行うのは、前記大気状態下での温水抽出では抽出されずに細胞膜内等に残存しているミネラル及び水溶性食物繊維をはじめとする種々の有効成分を抽出する為である。
【0021】
即ち、大気圧状態下での温水抽出と加圧状態下での温水若しくは熱水抽出を併用することにより、熱や圧力に比較的弱いとされる抗酸化酵素(SOD:スーパーオキシドディスムターゼ)を活性を失わない状態で良好に抽出でき、更に、細胞内若しくは細胞膜内に存在する有効成分を効率良く抽出することができる。
【0022】
続いて、第一エキス分と第二エキス分とを混合した混合エキス分に酵母菌及び乳酸菌を適量加え、共生培養(発酵)させて発酵液を得る。
【0023】
この発酵液を得る為の発酵は、28℃〜38℃の温度状態で、12時間〜48時間行う。
【0024】
乳酸菌としては、有胞子菌、例えばプランタルム,フェカリス,ビフィズス,ブルガリア及びサーモフィラスを採用する。
【0025】
続いて、前記発酵液を発酵させながら乾燥(以下、発酵乾燥という。)させて水分量を所定の量まで減少させることにより第二発酵液を得る。
【0026】
具体的には、前記発酵液の水分量がおよそ5.0%(重量)となるまで発酵乾燥を行う。
【0027】
また、発酵乾燥は、25℃〜35℃で風乾や除湿乾燥等により24時間〜38時間行う。発酵乾燥を25℃〜35℃で風乾や除湿乾燥により行うのは、酵母菌や乳酸菌等の菌類が熱に弱いからである(乾燥温度が高いと、酵母菌や乳酸菌等の菌類が熱分解されてしまう。)。また、風乾する場合には、低風力で行う。
【0028】
続いて、発酵乾燥させた第二発酵液を粉末化して粉末状発酵物を得、この粉末状発酵物を殺菌処理する。
【0029】
この殺菌処理は、粉末状発酵物中の有効成分が分解されたり活性を失ったりすることのない範囲内において、該粉末状発酵物を高温高圧処理することにより行う。
【0030】
尚、殺菌後の粉末状発酵物には、環状オリゴ糖を加えても良い(およそ900g〜950g)。環状オリゴ糖としては、サイクロデキストリンが採用されている。
【0031】
このサイクロデキストリンは、においを吸収してその内部に閉じ込める性質を有し、これにより、コタラヒンブツが有する独特なにおいを閉じ込めることができる。
【0032】
上記の製造方法により、コタラヒンブツに含有される有効成分を該コタラヒンブツから非常に効率良く多量に抽出することが可能であり、その上、抽出された有効成分は体内に非常に吸収され易い状態とすることができる為、コタラヒンブツに含有される有効成分による種々の秀れた効能、即ち、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用、肝臓保護作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用等が極めて良好に発揮される発酵液及び粉末状発酵物が得られる。
【0033】
即ち、上記の製造方法では大気圧状態下における温水抽出と加圧状態下における温水若しくは熱水抽出とを併用することで、コタラヒンブツから有効成分を従来に比して効率良く抽出することができる。
【0034】
この際、大気圧状態下における温水抽出を行った後に、加圧状態下における温水若しくは熱水抽出を行うことで、熱や圧力に比較的弱いとされる抗酸化酵素(SOD:スーパーオキシドディスムターゼ)が酵素活性を失わない状態で抽出でき、その上、コタラヒンブツの細胞内若しくは細胞膜内に含有される有効成分を効率良く抽出することができる。
【0035】
その上、コタラヒンブツの細胞内若しくは細胞膜内から抽出された有効成分は、酵母菌及び乳酸菌の共生培養によって十分に発酵されて該発酵作用によって低分子化(非クラスタ化)される為、発酵液及び粉末状発酵物の有効成分は、例えば腸管等から非常に効率良く体内に吸収される。
【0036】
しかも、コタラヒンブツを発酵させる乳酸菌は、乳酸や酢酸等の有機酸を生成するが、この乳酸や酢酸等の有機酸は腸内を弱酸性に保って例えば病原菌や腐敗菌等の悪玉菌(ウェルシュ菌等)の増殖を抑えて善玉菌(ビフィズス菌等)が活発に活動できる状態を作り出す。即ち、乳酸菌により作り出された乳酸や酢酸等の有機酸により腸が刺激されて該腸のぜん動運動が活発となって、コタラヒンブツの有効成分が一層良好に消化吸収される状態が作出される。
【0037】
尚、上記の製造方法では、コタラヒンブツから抽出した前記混合エキスに、酵母菌及び乳酸菌を加えて共生培養させることで発酵させたが、酵母菌と乳酸菌とを別々に順次コタラヒンブツエキスに加えても良い。
【0038】
即ち、コタラヒンブツエキスに先ず例えば酵母菌を加えて十分発酵させ、続いて、乳酸菌を加えて十分発酵させて発酵液を得ることとしても良い。この際、酵母菌発酵は28℃〜35℃の温度状態で24時間〜48時間行うと良く、また、乳酸菌発酵は30℃〜38℃の温度状態で12時間〜36時間行うと良い。
【0039】
また、上記の製造方法では、粉末化発酵物を殺菌処理した後オリゴ糖を加えたが、粉末化発酵物に殺菌処理を施さずにオリゴ糖を加えても良い。
【0040】
この場合、乳酸菌として、乾燥や強酸等厳しい環境下において生き延びる能力に秀れた有胞子菌を使用することで、この有胞子菌は、胃酸や胆汁酸により死滅しにくい為、腸内まで確実に達し、前述したような、腸内細菌のバランスを整える効果をより確実且つ十分に発揮することができる。
【0041】
更に、乳酸菌は、免疫細胞を活性化する効果を有するともいわれており、これにより、より一層抗酸化作用,抗腫瘍作用等の秀れた効能が発揮される。
【0042】
また、上記の製造方法では、コタラヒンブツから有効成分を抽出したコタラヒンブツエキスに酵母菌及び乳酸菌を加えて共生培養することとしたが、粉砕したコタラヒンブツに直接酵母菌及び乳酸菌を加えて発酵させても良い。この場合には、製造工程の中に、発酵処理後のコタラヒンブツを除去する濾過工程等を施す。
【0043】
以下、実施例1のコタラヒンブツが含有されているパンとして、上述した製造方法により得られる発酵液若しくは粉末状発酵物を小麦粉の重量に対して5〜10%混入し、常法に基づき製造したパンについて説明する。
【0044】
従来、食パンやフランスパン等のパンを食べると血糖値が急激に上昇してしまうことから、食後血糖値の抑制を要する糖尿病患者等はパンを食べることを我慢したり、少量しか食べることができなかった。そこで、上述した製造方法で得られる発酵液若しくは発酵粉末物を混入した実施例1のパンとすると、食べても血糖値が上昇しにくいパンとなる。
【0045】
食後血糖値の管理を行っている被験者に、実施例1のパンを食べてもらったところ、このパンを食する前と後では被験者の血糖値が急激に上昇することがなかった。
【0046】
従って、実施例1のパンには、血糖値の上昇を抑制する効果が認められた。
【0047】
更に、実施例1のパンによれば、体内に吸収され易い低分子状態となった多量のコタラヒンブツの有効成分を、効率良く体内へ吸収することができることとなり、血糖値上昇抑制作用以外にも、抗肥満作用、肝臓保護作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用等の秀れた効能が極めて良好に得られるコタラヒンブツを含有したパンとできる。
【0048】
尚、実施例1のコタラヒンブツが含有されているパンは、菌類による発酵を行わないコタラヒンブツ粉末若しくはコタラヒンブツの抽出エキスが含有されたパンとしても良い。
【0049】
その場合、コタラヒンブツ粉末としては、原料となるコタラヒンブツを機械式若しくは気流式により粉砕することによって得られる粉末を用い、また、コタラヒンブツの抽出エキスとしては、前記コタラヒンブツ粉末から、上述した製造方法と同様に抽出して得られるエキス分を用い、この粉末若しくはエキス分を、夫々小麦粉の重量に対して5〜10%混入し、常法によりパンを製造している。
【0050】
食後血糖値の管理を行っている被験者に、このコタラヒンブツ粉末が含有されているパン及びコタラヒンブツのエキス分が含有されているパンを食べてもらったところ、このパンを食する前と後では被験者の血糖値が急激に上昇することがなかった。
【0051】
従って、コタラヒンブツ粉末若しくはこのコタラヒンブツ粉末から抽出したエキス分を混入したパンは、前記粉末状発酵物及び発酵液の効果よりは劣るが、血糖値の上昇を抑制する効果が認められた。
【実施例2】
【0052】
実施例2は、コタラヒンブツが含有されているご飯であり、具体的には、実施例1と同様の製造方法により得られる発酵液若しくは粉末状発酵物を米の重量に対して5〜10%混入し、常法により炊き上げたご飯若しくは常法により炊き上げたご飯に対して、実施例1と同様の製造方法により得られる発酵液及びこの発酵液を乾燥させた粉末状発酵物を5〜10%混入したご飯である。
【0053】
従来、白米のご飯を食べると血糖値が急激に上昇してしまうことから、食後血糖値の抑制を要する糖尿病患者等はご飯を食べることを我慢したり、少量しか食べることができなかった。そこで、実施例2のご飯とすると、食べても血糖値が上昇しにくいご飯となる。
【0054】
食後血糖値の管理を行っている被験者に、実施例2のご飯を食べてもらったところ、このご飯を食する前と後では被験者の血糖値が急激に上昇することがなかった。
【0055】
従って、実施例2のご飯には、血糖値の上昇を抑制する効果が認められた。
【0056】
更に、実施例2のご飯よれば、体内に吸収され易い低分子状態となった多量のコタラヒンブツの有効成分を、効率良く体内へ吸収することができることとなり、血糖値上昇抑制作用以外にも、抗肥満作用、肝臓保護作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用等の秀れた効能が極めて良好に得られるコタラヒンブツを含有したご飯とできる。
【0057】
尚、常法により炊き上げたご飯に対して、実施例1と同様の製造方法により得られる殺菌処理を施さない発酵液及びこの発酵液を乾燥させた粉末状発酵物を5〜10%混入したご飯の場合、コタラヒンブツを発酵させる乳酸菌として、乾燥や強酸等厳しい環境下において生き延びる能力に秀れた有胞子菌を使用することで、この有胞子菌は、胃酸や胆汁酸より死滅しにくい為、腸内まで確実に達し、これにより、腸内を弱酸性に保って例えば病原菌や腐敗菌等の悪玉菌(ウェルシュ菌等)の増殖を抑えて善玉菌(ビフィズス菌等)が活発に活動できる状態を作り出し、即ち、乳酸菌によって腸内に作り出された乳酸や酢酸等の有機酸により腸が刺激されて該腸のぜん動運動が活発となって、コタラヒンブツの有効成分が一層良好に消化吸収される状態が作出される。
【0058】
また、乳酸菌は、免疫細胞を活性化する効果を有するともいわれており、これにより、より一層抗酸化作用,抗腫瘍作用等の秀れた効能が発揮される。
【0059】
よって、常法により炊き上げたご飯に対して、実施例1と同様の製造方法により得られる発酵液及びこの発酵液を乾燥させた粉末状発酵物を5〜10%混入したご飯の場合、体内に吸収され易い低分子状態となった多量のコタラヒンブツの有効成分を、消化吸収の働きが非常に活発となった例えば腸から極めて効率良く体内へ吸収することができることとなって、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用、肝臓保護作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用等の秀れた効能が極めて良好に得られるご飯となる。
【0060】
尚、実施例2のコタラヒンブツが含有されているご飯は、菌類による発酵を行わないコタラヒンブツ粉末若しくはコタラヒンブツの抽出エキスが含有されたご飯としても良く、その場合、実施例1と同様のコタラヒンブツ粉末若しくは実施例理1と同様のコタラヒンブツの抽出エキス分を、夫々米の重量に対して5〜10%混入して常法により炊き上げるか、常法により炊き上げたご飯の重量に対して5〜10%混入している。
【0061】
食後血糖値の管理を行っている被験者に、コタラヒンブツ粉末が含有されているご飯及び、コタラヒンブツの抽出エキスが含有されているご飯を食べてもらったところ、このご飯を食する前と後では被験者の血糖値が急激に上昇することがなかった。
【0062】
従って、コタラヒンブツ粉末若しくはこのコタラヒンブツ粉末から抽出したエキスを混入したご飯は、前記粉末状発酵物及び発酵液の効果よりは劣るが、血糖値の上昇を抑制する効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コタラヒンブツが含有されていることを特徴とするパン。
【請求項2】
米とコタラヒンブツとから成ることを特徴とする健康食品。
【請求項3】
コタラヒンブツが含有されていることを特徴とする健康食品。

【公開番号】特開2006−42623(P2006−42623A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224919(P2004−224919)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(597142631)
【出願人】(503352729)
【Fターム(参考)】