説明

コニカル反応器内での重合体の製造

本発明は、重合体の製造のための方法であって、(1)モノエチレン性不飽和単量体またはモノエチレン性不飽和単量体の混合物および開始剤を含む水性混合物を反応器の頭部に供給する工程と、(2)該モノエチレン性不飽和単量体を重合させて、重合体を含むゲル様水性混合物を形成する工程と、(3)該重合体を含むゲル様水性混合物を不活性気体を用いて反応器の底部から絞り出す工程とを含んで、該反応器は、その反応器の頭部直径(d1)とその反応器の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度(α)を有する、垂直の全コニカル反応器であるか、または2〜5個の結合された、垂直の全コニカル部分で構成されていて、その部分は、互いに頭部において、それぞれがその部分の頭部直径とその部分の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度を有する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体を製造する方法、反応器、および本発明の方法によって製造された重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
英国特許出願公開第1,054,028号公報(GB 1,054,028)には、水溶性重合体を回分法で製造する方法であって、単量体を水性媒体中で重合させて、重合体を含む粘稠な溶液を形成し、密接にはまり合う隔壁を用いることによって、該粘稠な溶液を反応器から絞り出す工程を含む方法が記載されている。この反応器は、垂直または水平のいずれかの管である。垂直の管であれば、コニカル形に成形された底部を有する。この反応器の短所は、重合体の連続的な製造を許さないことである。
【0003】
欧州特許出願公開A1第0 725 084号公報(EP 0725 084 A1)には、重合体を製造する方法であって、単量体を水性媒体中で重合させて、重合体を含むゲル様混合物を形成し、不活性気体を用いることによって、ゲル様混合物を反応器の底部から絞り出す工程を含む方法が記載されている。重合に用いられる反応は、垂直管である頭部、およびコニカルをなす底部からなる。
【0004】
この反応器の短所は、多少の単量体が水性媒体中の溶液として反応器の内壁を下降し、重合する時間を大幅に短縮して、そのため多少の未反応単量体が重合体とともに反応器を出るのを許すことである。これは操作上の問題を生じるが、なぜならば、水性媒体中の未反応単量体の溶液が、潤滑剤として作用し、重合体を含むゲル様混合物の押出し速度を制御するのに要する頭部圧力の量を変化させるからである。加えて、得られた重合体は、未反応単量体に汚染され、比較的多量の未反応単量体の存在は、重合体を造粒かつ乾燥するときに、加工上の更なる問題へと導きかねない。
【0005】
未反応単量体の含量が低い重合体を必要とするならば、未反応単量体は、追加の工程で、たとえば更なる開始剤での処理によって、除去しなければならない。しかし、多量の開始剤を含有する重合体は、経時的に分解する傾向があり、そのため好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
未反応単量体の含量が低い重合体の連続的製造を許す方法を提供し、未反応単量体が低含量の重合体を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の方法によって、請求項7の反応器によって、また請求項8の重合体によって解決される。
【0008】
重合体の製造のための本発明の方法は、
(1)モノエチレン性不飽和単量体またはモノエチレン性不飽和単量体の混合物および開始剤を含む水性混合物を反応器の頭部に供給する工程と、
(2)該モノエチレン性不飽和単量体を重合させて、重合体を含むゲル様水性混合物を形成する工程と、
(3)該重合体を含むゲル様水性混合物を不活性気体を用いて反応器の底部から絞り出す工程と
を含んで、該反応器は、その反応器の頭部直径(d1)とその反応器の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度(α)を有する、垂直の全コニカル反応器(fully conical reactor)であるか、または2〜5個の結合された、垂直の全コニカル部分で構成されていて、その部分は、互いに頭部において、それぞれがその部分の頭部直径とその部分の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度を有する。
【0009】
この反応器には、いかなる管状の区画もない。
【0010】
好ましくは、該反応器は、その反応器の頭部直径(d1)とその反応器の内壁との間に、90°より小さいが、45°より大きい角度(α)を有する、垂直の全コニカル反応器であるか、または2〜3個の結合された、垂直の全コニカル部分で構成されていて、その部分は、互いに頭部にあって、それぞれ、その部分の頭部直径とその部分の内壁との間に、90°より小さいが、45°より大きい角度を有する。
【0011】
より好ましくは、該反応器は、その反応器の頭部直径(d1)とその反応器の内壁との間に、90°より小さいが、45°より大きい角度(α)を有する、垂直の全コニカル反応器であるか、または2個の結合された、垂直の全コニカル部分で構成されていて、その部分は、互いに頭部にあって、それぞれ、その部分の頭部直径とその部分の内壁との間に、90°より小さいが、45°より大きい角度を有する。
【0012】
最も好ましくは、該反応器は、反応器の頭部直径(d1)と反応器の内壁との間に、90°より小さいが、45°より大きい角度(α)を有する、垂直の全コニカル反応器である。
【0013】
好ましくは、この角度は、90°より小さいが、60°より大きい。より好ましくは、該角度は、90°より小さいが、70°より大きい。はるかに好ましくは、該角度は、90°より小さいが、80°より大きい。最も好ましくは、87°より小さく、83°より大きい。
【0014】
反応器の頭部直径(d1)対底部直径(d2)の比は、1.1/1〜24/1であり得る。好ましくは、2/1〜10/1である。より好ましくは、3/1〜8/1である。最も好ましくは、5/1〜6/1である。
【0015】
反応器が2〜5個の結合された、垂直の全コニカル部分で構成されているとき、該垂直の全コニカル部分は、同じであるか、または異なることができる。垂直のコニカル部分の一つの頭部直径対底部直径の比は、1.1/1〜24/1であることができる。好ましくは、それは1.1/1〜10/1である。より好ましくは、1.2/1〜5/1である。最も好ましくは、1.5/1〜3/1である。
【0016】
該反応器は、適切ないかなる材料、たとえば鋼、軟鋼、またはガラス繊維強化プラスチックで製造することができる。反応器の内壁は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシ共重合体(PFA)またはフルオロエチレンプロピレン(FEP)のような、抗粘着性コーティングで被覆する。反応器は、少なくとも一つの吸気口、ならびに単量体および開始剤を供給するための少なくとも一つの入口を反応器頭部に、かつ重合体を取り出すための少なくとも一つの出口を反応器底部に有する。該反応器は、圧密であるよう密閉することができる。反応器は、冷却/加熱装置および撹拌装置を有することができるが、好ましくは、反応器はそのような装置を備えていない。
【0017】
モノエチレン性不飽和単量体は、水溶性であるか、または水に不溶性のモノエチレン性不飽和単量体であることができる。
【0018】
水溶性のモノエチレン性不飽和単量体は、式(I):
【0019】
【化1】

【0020】
[式中、R1、R2およびR3は、同じであるか、または異なり、水素、C1〜C2アルキル、カルボキシル、またはカルボキシル置換C1〜C2アルキルである]
で示されるカルボン酸、またはその塩、式(II):
【0021】
【化2】

【0022】
[式中、R7、R8およびR9は、同じであるか、または異なり、水素またはC1〜C2アルキルであり、Eは、C2〜C5アルキレンであり、R4、R5およびR6は、同じであるか、または異なり、C1〜C4アルキルであり、Xは、適切な陰イオンである]
で示されるもの、式(III)〜(V):
【0023】
【化3】

【0024】
[式中、R7、R8、R9、E、R4、R5、R6およびXは、上に示されたのと同じ意味を有し、R10は、水素またはメチルであり、Lは、C2〜C5アルキレンであり、Mは、適切な陽イオンである]
で示されるアミド、あるいは
ビニル誘導体またはジアリルアンモニウム誘導体であることができる。
【0025】
式(I)のカルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸である。その塩は、そのアンモニウムまたはアルカリ金属塩であることができる。アルカリ金属の例は、ナトリウムおよびカリウムである。
【0026】
1〜C2アルキルは、メチルまたはエチルであることができる。C2〜C5アルキレンの例は、エチレン、トリメチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、テトラメチレン、エチルエチレンおよびペンタメチレンである。C1〜C4アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびブチル、イソブチル、sec−ブチルならびにtert−ブチルである。適切な陰イオンの例は、ハロゲン化物、硫酸およびC1〜C4アルキル硫酸塩である。C1〜C4アルキル硫酸塩の例は、メチル硫酸塩である。ハロゲン化物の例は、臭化物および塩化物である。好適なハロゲン化物は、塩化物である。適切な陽イオンの例は、水素、アンモニウムおよびアルカリ金属である。
【0027】
式(II)のエステルの例は、ジメチルアミノエチルアクリラートメチルクロリド第四級塩、ジエチルアミノエチルアクリラートエチルクロリド第四級塩およびジメチルアミノエチルメタクリラートメチルクロリド第四級塩である。
【0028】
式(III)、(IV)または(V)のアミドの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドメチルクロリド第四級塩、ジエチルアミノエチルアクリルアミドエチルクロリド第四級塩、ジメチルアミノエチルメタクリルアミドメチルクロリド第四級塩および2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロペンスルホン酸である。
【0029】
ビニル誘導体の例は、ビニルホスホン酸またはビニルスルホン酸、およびその塩、たとえばそのアンモニウムまたはアルカリ金属塩、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリジノンおよび1−ビニルイミダゾールである。ジアリルアンモニウム誘導体の例は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドである。
【0030】
水溶性のモノエチレン性不飽和単量体は、C1〜C18アルカノールとの式(I)のカルボン酸のエステルであることができる。
【0031】
1〜C18アルカノールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノールおよびオクタデカノールである。
【0032】
水に不溶性のモノエチレン性不飽和単量体の例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ステアリルである。
【0033】
好ましくは、モノエチレン性不飽和単量体は水溶性である。
【0034】
より好適なモノエチレン性不飽和単量体は、水溶性であり、式(I):
【0035】
【化4】

【0036】
[式中、R1、R2およびR3は、同じであるか、または異なり、水素もしくはメチル、カルボキシル、またはカルボキシル置換メチルである]
で示されるカルボン酸、またはその塩、式(II):
【0037】
【化5】

【0038】
[式中、R7、R8およびR9は、同じであるか、または異なり、水素またはメチルであり、Eは、C2〜C3アルキレンであり、R4、R5およびR6は、同じであるか、または異なり、C1〜C3アルキルであり、Xは、適切な陰イオンである]
で示されるエステル、式(III)〜(V):
【0039】
【化6】

【0040】
[式中、R7、R8、R9、E、R4、R5、R6およびXは、上に示されたのと同じ意味を有し、R10は、水素またはメチルであり、Lは、C2〜C5アルキレンであり、Mは、適切な陽イオンである]
で示されるアミドからなる群から選ばれる。
【0041】
2〜C3アルキレンの例は、エチレン、トリメチレンおよびプロピレンである。C1〜C3アルキルの例は、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルである。
【0042】
はるかに好適なモノエチレン性不飽和単量体は、水溶性であり、式(I):
【0043】
【化7】

【0044】
[式中、R1は、水素またはメチルであり、R2およびR3は、ともに水素である]
で示されるカルボン酸、またはその塩、式(II):
【0045】
【化8】

【0046】
[式中、R7は、水素またはメチルであり、R8およびR9は、ともに水素であり、Eは、エチレンであり、R4、R5およびR6は、同じであるか、または異なり、C1〜C2アルキルであり、Xは、ハロゲン化物、硫酸塩またはC1〜C4アルキル硫酸塩である]
で示されるエステル、式(III)〜(V):
【0047】
【化9】

【0048】
[式中、R7、R8、R9、E、R4、R5、R6およびXは、上に示されたのと同じ意味を有し、R10は、水素またはメチルであり、Lは、C2〜C5アルキレンであり、Mは、水素、アンモニウムまたはアルカリ金属である]
で示されるアミドからなる群から選ばれる。
【0049】
最も好適なモノエチレン性不飽和単量体は、水溶性であり、アクリル酸またはその塩、式(II):
【0050】
【化10】

【0051】
[式中、R7、R8およびR9は、水素であり、Eは、エチレンであり、R4、R5およびR6は、同じであるか、または異なり、C1〜C2アルキルであり、Xは、塩化物、硫酸塩またはC1〜C4アルキル硫酸塩である]
で示されるエステル、アクリルアミド、および式(V):
【0052】
【化11】

【0053】
[式中、R7、R8およびR9は、上に示されたのと同じ意味を有し、Lは、C2〜C4アルキレンであり、R10は、水素であり、Mは、水素、アンモニウムまたはアルカリ金属である]
で示されるアミドからなる群から選ばれる。
【0054】
2〜C4アルキレンの例は、エチレン、トリメチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、テトラメチレンおよびエチルエチレンである。
【0055】
さらに最も好適なモノエチレン性不飽和単量体は、水溶性であり、アクリルアミド、またはアクリルアミドと、アクリル酸またはその塩、および式(II):
【0056】
【化12】

【0057】
[式中、R7、R8およびR9は、水素であり、Eは、エチレンであり、R4、R5およびR6は、同じであるか、または異なり、C1〜C2アルキルであり、Xは、塩化物、硫酸塩またはC1〜C4アルキル硫酸塩である]
で示されるエステルからなる群から選ばれる水溶性のモノエチレン性不飽和単量体との混合物のいずれかである。
【0058】
好ましくは、アクリルアミドと、アクリル酸またはその塩、および式(II):
【0059】
【化13】

【0060】
[式中、R7、R8およびR9は、水素であり、Eは、エチレンであり、R4、R5およびR6は、同じであるか、または異なり、C1〜C2アルキルであり、Xは、塩化物、硫酸塩またはC1〜C4アルキル硫酸塩である]
で示されるエステルからなる群から選ばれる水溶性のモノエチレン性不飽和単量体との混合物中のアクリルアミドの量は、該単量体混合物の重量を基準にして、少なくとも30重量%である。
【0061】
用いられるモノエチレン性不飽和単量体または単量体混合物に応じて、本発明の方法によって製造される重合体は、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性であることができる。
【0062】
適切ないかなる開始剤も、用いることができる。開始剤は、たとえば過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物、硫酸塩、酸化還元対、またはそれらの混合物であることができる。
【0063】
過酸化物の例は、過酸化水素、過酸化カリウム、過酸化tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよび過酸化ベンゾイルである。過硫酸塩の例は、過硫酸アンモニウム、ナトリウムまたはカリウムである。アゾ化合物の例は、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)および2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)および2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩である。硫酸塩の例は、硫酸アンモニウム第一鉄および硫酸アンモニウムである。酸化還元対は、酸化剤および還元剤からなる。酸化剤は、上に列挙された過酸化物、過硫酸塩、硫酸塩もしくはアゾ化合物の一つ、またはアルカリ金属塩素酸塩もしくは臭素酸塩であることができる。アルカリ金属の例は、上に示されている。還元剤の例は、アスコルビン酸、グルコース、またはアンモニウムもしくは亜硫酸水素アルカリ金属塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩もしくは硫化物、または硫酸アンモニウム第一鉄である。
【0064】
好ましくは、開始剤は、酸化還元対と、過酸化物、過硫酸塩およびアゾ化合物からなる群から選ばれる一つまたはそれ以上の開始剤との混合物である。
【0065】
より好ましくは、開始剤は、酸化剤が過酸化物およびアルカリ金属臭素酸塩からなる群から選ばれ、還元剤がアンモニウムもしくは亜硫酸水素アルカリ金属塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩もしくは硫化物、または硫酸アンモニウム第一鉄からなる群から選ばれる酸化還元対と、一つまたはそれ以上のアゾ化合物である開始剤との混合物である。
【0066】
はるかに好ましくは、開始剤は、酸化剤が過酸化水素およびアルカリ金属臭素酸塩からなる群から選ばれ、還元剤が亜硫酸水素アルカリ金属塩または亜硫酸塩である酸化還元対と、一つまたはそれ以上のアゾ化合物である開始剤との混合物である。
【0067】
最も好ましくは、開始剤は、酸化剤がtert−ブチルヒドロペルオキシドおよび臭素酸カリウムからなる群から選ばれ、還元剤が亜硫酸ナトリウムである酸化還元対と、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)および2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)からなる群から選ばれる一つまたはそれ以上のアゾ化合物開始剤との混合物である。
【0068】
モノエチレン性不飽和単量体または単量体混合物および開始剤を含む水性混合物は、水または緩衝液中の単量体および開始剤の溶液、分散液もしくは懸濁液であることができる。好ましくは、水中の単量体および開始剤の溶液である。
【0069】
単量体および開始剤を含む水性混合物は、尿素、封鎖剤、有機酸、連鎖移動試薬および架橋剤のような添加剤も含有し得る。
【0070】
封鎖剤の例は、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩およびジエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩である。
【0071】
有機酸の例は、アジピン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸および安息香酸である。
【0072】
連鎖移動試薬の例は、チオグリコール酸、次亜リン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、N−ドデシルメルカプタンおよびtert−ドデシルメルカプタンである。
【0073】
架橋剤の例は、N,N’−モノメチレンビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート、テトラアリルアンモニウムクロリドおよびフタル酸ジアリルのようなポリエチレン性不飽和単量体である。
【0074】
好ましくは、この水性媒体は、尿素、封鎖および/または有機酸も含有する。より好ましくは、該水性媒体は、尿素、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩および/またはアジピン酸も含有する。
【0075】
本発明の方法によって製造される重合体が陽イオン性ならば、水性媒体は、最も好ましくは、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩およびアジピン酸も含有する。製造される重合体が陰イオン性ならば、水性媒体は、最も好ましくは、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩および尿素も含有する。製造される重合体が非イオン性ならば、水性媒体は、最も好ましくは、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、尿素およびアジピン酸も含有する。
【0076】
好ましくは、水性混合物中のモノエチレン性不飽和単量体または単量体混合物の量は、反応器の頭部に供給される水性混合物の重量を基準にして、5〜60重量%である。より好ましくは、水性混合物を基準にして、10〜50重量%である。はるかに好ましくは、水性混合物の重量を基準にして、25〜40重量%である。最も好ましくは、水性混合物中の重量を基準にして、28〜35重量%である。
【0077】
好ましくは、水性混合物中の開始剤の総量は、単量体または単量体混合物の重量を基準にして、0.001〜5重量%である。より好ましくは、単量体または単量体混合物の重量を基準にして、0.005〜2重量%である。最も好ましくは、単量体または単量体混合物の重量を基準にして、0.05〜1重量%である。開始剤が酸化還元対を含む開始剤混合物であるならば、酸化剤の量は、単量体の重量を基準にして、好ましくは0.0001〜1重量%、より好ましくは0.0002〜0.01重量%であり、還元剤対酸化剤の比は、3/1〜1/4、好ましくは2.5/1〜1/3である。
【0078】
好ましくは、添加剤の量は、単量体の重量を基準にして、0.0001〜20重量%である。より好ましくは、単量体の重量を基準にして、0.001〜15重量%である。
【0079】
単量体または単量体混合物および開始剤を含む水性混合物は、単量体または単量体混合物の水溶液を、開始剤の水溶液と活溌に混合することによって調製してから直ちに、得られた溶液を反応器の頭部に供給することができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体の水溶液は、脱気してから、開始剤溶液と混合する。
【0080】
好ましくは、単量体または単量体混合物および開始剤を含む水性混合物は、単量体または単量体混合物、1種類またはそれ以上のアゾ化合物である開始剤、および尿素、有機酸または封鎖剤のような添加剤を含有する水溶液を、酸化還元対である開始剤、および場合により追加のアゾ化合物である開始剤を含有する水溶液と活溌に混合することによって調製してから直ちに、得られた溶液を反応器の頭部に供給することができる。
【0081】
好ましくは、単量体および開始剤を含む水性混合物は、25℃未満に冷却してから、反応器の頭部に供給する。より好ましくは、10℃まで冷却する。はるかに好ましくは、0℃まで冷却する。最も好ましくは、−5℃まで冷却する。
【0082】
好ましくは、単量体および開始剤を含む水性混合物は、約2〜6時間の滞留時間を許す速度で、反応器に供給する。滞留時間は、用いられる単量体に依存し、当業者が調整することができる。一般に、陽イオン性単量体は、陰イオン性単量体より長い滞留時間を必要とする。
【0083】
好ましくは、重合は、酸素の不在下、かつ窒素のような不活性気体の存在下で実施する。好ましくは、重合中の不活性気体の圧力は、1〜10バール、より好ましくは1〜5バール、最も好ましくは1〜3バールである。反応混合物の温度は、重合中に100℃まで上昇させることができる。好ましくは、反応混合物の温度は、重合中に85〜95℃である。この温度は、装置を加熱かつ冷却することによって制御することができるが、好ましくは、反応器の頭部に供給される水性媒体中の単量体および開始剤の量によって制御する。重合によって、重合体が生じて、これが水性媒体中でゲル様混合物を形成する。得られる重合体は、通常、1〜108単量体単位を含有し、水溶性または水不溶性のいずれかである。水膨潤性または非水膨潤性であることができる。
【0084】
重合体が反応器の底部にゲル様混合物を形成したら直ちに、底部出口を開くことができ、窒素のような不活性気体を用いて、反応混合物を反応器の底部から絞り出すことができる。好ましくは、加える不活性気体の圧力は、1〜10バール、より好ましくは1〜5バール、最も好ましくは1〜3バールである。
【0085】
好ましくは、得られた重合体中の未反応単量体の含量は、重合体の重量を基準にして、0.15重量%未満である。より好ましくは、重合体の重量を基準にして、0.1重量%未満である。最も好ましくは、重合体の重量を基準にして、0.01重量%未満である。
【0086】
重合体を含む得られたゲル様混合物は、慣用の造粒および乾燥装置内で造粒かつ乾燥して、12重量%未満の含水量を有する重合体を得ることができる。
【0087】
この方法は、回分または連続方式で実施することができる。好ましくは、連続方式で実施する。
【0088】
この方法によって製造される重合体は、採鉱から汚水処理にわたる産業で水の精製を助け、製紙工程中に紙の繊維を束ね、また金属鉱粒を凝固させて、金属抽出を促進するために、水中の固体粒子を凝集させるのに用いることができる。
【0089】
本発明の一部は、本発明の方法のために採用される反応器でもある。反応器に関する詳細は、上に説明されている。
【0090】
本発明の一部は、本発明の方法によって製造される重合体でもある。
【発明の効果】
【0091】
本発明の方法の利点は、反応器が、低含量の未反応単量体を有する重合体の製造を、有意な圧力変化を伴わずに連続的に実施できることである。そのため、従来の方法の問題点、すなわち反応中の圧力の面倒な制御、未反応単量体による乾燥機の汚染、および未反応単量体の量を削減するための重合体の後処理が回避される。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
アクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリラートメチルクロリド第四級アンモニウム塩およびアジピン酸を75/23/3の重量比で含む、水性混合物250kgを調製した。混合物は、400ppmの2,2−アゾビスイソブチロニトリル、および300ppmのジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(ともに水性混合物の重量を基準とする)も含有した。混合物は、合計溶解固体濃度が34%であった。混合物を−1℃に冷却し、溶解酸素を除去するために、水性媒体中に窒素気体を通過させた。7ppmの臭素酸カリウム、および14ppmの亜硫酸ナトリウム(ともに水性混合物の重量を基準とする)を順次水性混合物に加え、完全に混合した。得られた水性混合物を、全コニカル反応器(容積:200L、角度:85°)の頭部に約50kg/時の速度で供給した。反応器内にて約4時間の滞留時間の後、底部の弁を開き、窒素気体の頭部圧力を加えて、ゲル様反応混合物を底部から絞り出した。圧力は、反応器の底部から出る材料の質量が頭部に入る単量体の質量に等しくなるよう調整した。重合体は、1,000ppm未満の残留アクリルアミド含量を有することが判明した。
【0093】
(実施例2)
アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよび尿素を63/27/10の重量比で含む、水性単量体混合物250kgを調製した。混合物は、400ppmの2,2−アゾビスイソブチロニトリル、100ppmの4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、および300ppmのジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(すべて水性混合物の重量を基準とする)も含有した。混合物は、合計溶解固体濃度が32%であった。混合物を−1℃に冷却し、溶解酸素または他の揮発性の反応性化学種を除去するために、水性媒体中に窒素気体を通過させた。4ppmのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および8ppmの亜硫酸ナトリウム(ともに水性混合物の重量を基準とする)を順次水性混合物に加え、十分に混合した。得られた水性混合物を、全コニカル反応器(容積:200L、角度:85°)の頭部に約50kg/時の速度で供給した。反応器内にて約4時間の滞留時間の後、底部の弁を開き、窒素気体の頭部圧力を加えて、ゲル様反応混合物を底部から絞り出した。圧力は、反応器の底部から出る材料の質量が頭部に入る単量体の質量に等しくなるよう調整した。重合体は、1,000ppm未満の残留アクリルアミド含量を有することが判明した。
【0094】
(実施例3)
アクリルアミド、尿素およびアジピン酸を98/1/1の重量比で含む、水性単量体混合物250kgを調製した。混合物は、400ppmの2,2−アゾビスイソブチロニトリル、400ppmの4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、および300ppmのジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(すべて水性混合物の重量を基準とする)も含有した。混合物は、合計溶解固体濃度が31%であった。混合物を−1℃に冷却し、溶解酸素を除去するために、水性媒体中に窒素気体を通過させた。10ppmの臭素酸カリウム、4ppmの亜硫酸ナトリウム、および50ppmの2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩(すべて水性混合物の重量を基準とする)を順次水性混合物に加え、十分に混合した。得られた水性混合物を、全コニカル反応器(容積:200L、角度:85°)の頭部に約50kg/時の速度で供給した。反応器内にて約4時間の滞留時間の後、底部の弁を開き、窒素気体の頭部圧力を加えて、ゲル様反応混合物を底部から絞り出した。圧力は、反応器の底部から出る材料の質量が頭部に入る単量体の質量に等しくなるよう調整した。重合体は、1,000ppm未満の残留アクリルアミド含量を有することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】全コニカル反応器を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)モノエチレン性不飽和単量体またはモノエチレン性不飽和単量体の混合物および開始剤を含む水性混合物を、反応器の頭部に供給する工程と、
(2)該モノエチレン性不飽和単量体を重合させて、重合体を含むゲル様水性混合物を形成する工程と、
(3)該重合体を含むゲル様水性混合物を、不活性気体を用いて反応器の底部から絞り出す工程と
を含む重合体の製造方法であって、
該反応器が、その反応器の頭部直径(d1)とその反応器の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度(α)を有する垂直の全コニカル反応器であるか、または2〜5個の結合された、垂直の全コニカル部分で構成されていて、その部分は、互いに頭部において、それぞれがその部分の頭部直径とその部分の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度を有する、方法。
【請求項2】
反応器の角度が90°より小さいが、60°より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応器の頭部直径と底部直径との比が1.1/1〜24/1である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
モノエチレン性不飽和単量体が、水溶性のモノエチレン性不飽和単量体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水性混合物中のモノエチレン性不飽和単量体または単量体混合物の量が、反応器の頭部に供給される水性混合物の重量を基準にして5〜60重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
連続方式で実施される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応器の頭部直径(d1)と反応器の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度(α)を有する垂直の全コニカル反応器であるか、または2〜5個の結合された、垂直のコニカル部分で構成されていて、その部分は、互いに頭部において、それぞれがその部分の頭部直径とその部分の内壁との間に90°より小さいが、45°より大きい角度を有する、反応器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって製造され、重合体の重量を基準にして0.15重量%未満の量の未反応単量体量を有する重合体。

【図1】
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【公表番号】特表2008−539291(P2008−539291A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508195(P2008−508195)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061675
【国際公開番号】WO2006/117292
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】