説明

コネクタおよび該コネクタを用いた電気接続箱

【課題】電気接続箱の未使用の空きのヒューズ収容部を有効利用する。
【解決手段】電気接続箱のケース外面に設けたヒューズ収容部のうち、未使用のヒューズ収容部に装着するコネクタであって、該コネクタのハウジングは前記ヒューズ収容部に収容予定であったヒューズの樹脂本体と同形状とすると共に、該ハウジング内に一対の接続材を有し、各接続材の一端は前記ハウジングの一端側の外面開口に位置させて、ワイヤハーネスの電線端末の相手方端子を嵌合接続する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ワイヤハーネスに接続されるコネクタおよび該コネクタを用いた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用ワイヤハーネスが接続されるジャンクションボックス等の電気接続箱には、そのケース外面に外部からヒューズを差し込み接続する多数のヒューズ収容部が設けられている。これらヒューズ収容部に装着するヒューズの個数は車種のグレードや仕向け地等によって相違する場合があり、低グレードの車種ではヒューズが装着されない未使用のヒューズ収容部が多数存在する場合がある。
【0003】
このように、ヒューズが装着されない空きのヒューズ収容部が発生した場合、本出願人は特開2005−20912号公報でスペアヒューズを装着することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−20912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、未使用のヒューズ収容部にスペアヒューズを装着してもよいが、スペアヒューズとして装着する個数より未使用のヒューズ収容部の個数が多くなる場合が多く、未使用のヒューズ収容部の利用率が下がり、有効利用することができない。
一方、自動車に配索するワイヤハーネスには、該ワイヤハーネスを構成する電線同士をスプライス接続したり、別のワイヤハーネスの電線と接続する必要がある場合、ワイヤハーネスの電線同士をジョイントコネクタやスルーコネクタを介して接続し、これらのコネクタをワイヤハーネスの外周や車体パネルに取り付ける必要があり、スペースを取ると共に作業負担もかかる。
さらに、自動車に装着するオプション部品を電源回路、信号回路やアース回路と接続する回路が予め設けられていない場合には、該オプション部品と接続したワイヤハーネスを電気接続箱の内部回路とコネクタ接続できるようにすることが好ましい。
【0006】
本発明は前記観点より、電気接続箱のヒューズ収容部に未使用のヒューズ収容部が発生する一方、ワイヤハーネスと電気接続箱の内部回路とをコネクタ接続する必要が生じた場合に、未使用のヒューズ収容部を利用できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明として、電気接続箱のケース外面に設けたヒューズ収容部のうち、未使用のヒューズ収容部に装着するコネクタであって、
該コネクタのハウジングは前記ヒューズ収容部に収容予定であったヒューズの樹脂本体と同形状とすると共に、該ハウジング内に一対の接続材を有し、各接続材の一端は前記ハウジングの一端側の外面開口に位置させて、ワイヤハーネスの電線端末の相手方端子を嵌合接続する構成としていることを特徴とするコネクタを提供している。
【0008】
前記ハウジングの外面に係止用凸部を設ける一方、前記未使用となるヒューズ収容部の周壁に凹部を設け、該凹部に前記係止用凸部が内嵌固定できるようにしていることが好ましい。
【0009】
また、前記ハウジングの一方外面にコ字状連結部を設けると共に他方外面にI字状連結部を設け、複数のコネクタを前記コ字状連結部とI字状連結部とを嵌合して順次嵌合して連結できる構成としていることが好ましい。
【0010】
電気接続箱のケース外面に設けるヒューズ収容部は複数個数を並列して設けられている場合が多い。これら並列したヒューズ収容部が未使用で前記ワイヤハーネスに接続するコネクタを収容する場合、コネクタに前記連結部を設け、一体に連結した状態で未使用のヒューズ収容部に装着することができる。
【0011】
前記ハウジング内の一対の接続材は連結してジョイントコネクタとし、前記ワイヤハーネスの電線同士をスプライスするジョイントコネクタとしている。
該構成とすると、ワイヤハーネスのスプライス部分を電気接続箱の未使用のヒューズ収容部に収容することができる。
【0012】
あるいは、前記ハウジング内に収容する前記一対の端子材は前記ハウジングの他端側から突出させると共に長さ方向の中間部を連結してジョイントコネクタとし、前記電気接続箱の対向側から挿入する電線端末の端子を嵌合し、電気接続箱の上下から接続する合計4本の電線をジョイント接続できるものとしている。
【0013】
あるいは、前記ハウジング内の一対の端子材は連結せずに独立させると共に前記ハウジングの他端側から突出させ、前記電気接続箱の対向側から接続する電線同士を接続するスルーコネクタとしている。
【0014】
さらに、第2の発明として、未使用のヒューズ収容部に前記コネクタを装着している電気接続箱を提供している。
【発明の効果】
【0015】
前記のように、本発明のコネクタは、電気接続箱のケース外面に形成されている多数のヒューズ収容部のうち未使用のヒューズ収容部に装着し、ワイヤハーネスの外部回路と電気接続箱の内部回路あるいは電気接続箱の対向側から接続する他のワイヤハーネスの外部回路とのジョイントコネクタあるいは/およびスルーコネクタクタ、さらにはワイヤハーネスの電線同士をスプライスするジョイントコネクタとしている。よって、本発明のコネクタを用いることで電気接続箱の未使用のヒューズ収容部を有効利用できる。かつ、ワイヤハーネスのスプライスを電気接続箱の内部に収めることができ、例えば、外部でワイヤハーネス同士をジョイントコネクタを介して接続するのを廃止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のコネクタを収容する電気接続箱を示し、(A)は概略平面図、(B)は概略斜視図、(C)はヒューズ収容部の拡大斜視図である。
【図2】ヒューズを示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)はヒューズをヒューズ収容部に装着して電線と接続する状態を示す図面である。
【図3】本発明の実施形態の未使用のヒューズ収容部に装着するジョイントコネクタの斜視図である。
【図4】(A)は図3のジョイントコネクタの正面図、(B)は側面図、(C)は平面図、(D)は断面図である。
【図5】ジョイントコネクタの連結状態を示し、(A)は連結前の斜視図、(B)は連結した状態の正面図、(C)は連結した状態の平面図である。
【図6】未使用のヒューズ収容部にジョイントコネクタを装着し、電線をジョイントする状態を示す図面である。
【図7】前記ジョイントコネクタの上下方向から電線端末の端子を接続する状態を示す斜視図である。
【図8】他のジョイントコネクタを示し、(A)は断面図、(B)は電線との接続状態を示す図面である。
【図9】スルーコネクタを示し、(A)は断面図、(B)は電線との接続状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳述する。
図1は自動車に搭載する電気接続箱1であり、該電気接続箱1のケース2の上面に多数のヒューズ収容部3を並列したヒューズ収容ブロック4が複数設けられている。
【0018】
1つのヒューズ収容部3は、図2に示すヒューズ5を上方から差し込んで嵌合する形状である。該ヒューズ5は周知形状で、一対の入力端子6aと出力端子6bとを溶断部6cで連続した端子材6を樹脂ケース本体7に埋設し、入力端子6aと出力端子6bとを樹脂ケース本体7の下端面から突出させている。該ヒューズ5を装着するヒューズ収容部3はヒューズ5の樹脂ケース本体7を囲む周壁3aを備えると共に底壁3bに入力端子6aと出力端子6bの挿入口3c、3dを備えている。
ヒューズ収容ブロック4ではヒューズ収容部3の周壁3aが隣接するヒューズ収容部3との仕切壁となって、ヒューズ収容部3が並列している。
【0019】
前記ヒューズ収容ブロック4のうち、第1ブロック4Aではヒューズ収容部3に装着するヒューズ5の入力端子6aと出力端子6bに電気接続箱1の下方から接続するワイヤハーネス8の一対の電線8A、8Bの端末の端子8At、8Btをコネクタ接続するものとしている。
また、第2ブロック4Bではヒューズ収容部3に装着するヒューズ5の入力端子6aと出力端子6bは電気接続箱1内に収容した内部回路のバスバーに設けた端子と嵌合接続するものとしている。
【0020】
前記第1ブロック4Aおよび第2ブロック4Bに並設するヒューズ収容部3の個数は、同一車種の内でハイグレード車およびオプション搭載品が有る場合に合わせて設けている。よって、第1ブロック4Aおよび第2ブロック4Bともヒューズが装着されない未使用のヒューズ収容部3ーCが発生している。
【0021】
前記未使用の空きのヒューズ収容部3ーCに、図1に示すように、ジョイントコネクタ10、11およびスルーコネクタ12を装着している。なお、ジョイントコネクタ10、11、スルーコネクタ12のうちのいずれか1種でもよい。
【0022】
図3および図4に示すジョイントコネクタ10は、第1ブロック4Aの未使用のヒューズ収容部3ーCに装着するものである。該ジョイントコネクタ10は図6に示すように、電気接続箱1のケース上面から接続するワイヤハーネス50の2本の電線50Aと50Bと、ケース下面から接続するワイヤハーネス51の2本の電線51Aと51Bとの4本の電線をスプライス接続するものである。
【0023】
該ジョイントコネクタ10のコネクタハウジング(以下、ハウジングと略す)21は前記ヒューズ5の樹脂ケース本体7の直方体状の外形と同様とし、ヒューズ収容部3の周壁3aに内嵌する形状としている。かつ、該ハウジング21の短辺側の両側外面21aに係止用凸部21bを設け、図6に示すように、周壁3aの内面に設けた凹部3xに嵌合してセミロックがかかるようにしている。
【0024】
さらに、ハウジング21の長辺側の両側外面21cにそれぞれコ字状連結部21eを設けると共にI字状連結部21fを並列で設けると共に、両側のコ字状連結部21eとI字状連結部21fとは点対称に位相させている。これにより、図5(A)(B)(C)に示すように、並列する複数のジョイントコネクタ10は、コ字状連結部21eにI字状連結部21fを差し込むことで順次連結できるようにしている。
【0025】
ジョイントコネクタ10のハウジング21の内部には、ヒューズ5の入力端子6a、出力端子6bと同様な形状とした一対のバスバーからなる端子材22、23を連結部24で連結して並列状としたジョイント端子25を収容している。該ジョイント端子25の端子材22、23の一端側はヒューズの入出力端子と同様にハウジング21の下端から突出させ、タブ状の端子22a、23aとしている。該端子材22、23の他端はハウジング21の上面開口21kの内部に露出させたタブ状の端子22b、23bとしている。
【0026】
以下に、前記ジョイントコネクタ10の使用状態について説明する。
複数の未使用のヒューズ収容部3−Cに複数のジョイントコネクタ10を図5に示すようにコ字状連結部21eにI字状連結部21fを差し込んで順次連結して装着する。
その際、各ジョイントコネクタ10のハウジング21の外面に突設した係止用凸部21bが各ヒューズ収容部の周壁3aの凹部3xに嵌合しセミロックされる。
【0027】
前記のように未使用のヒューズ収容部3−Cにそれぞれジョイントコネクタ10を装着した状態で、ジョイントコネクタ10のジョイント端子25の下端の端子22a、23aをヒューズ収容部3の底壁の挿入口3c、3dから下方へ突出させる。また、上端の端子22b、23bはハウジング21の上端開口の内部に位置している。
【0028】
図6、図7に示すように、未使用のヒューズ収容部3−Cに装着したジョイントコネクタ10に対して、電気接続箱1のケース上面から接続するワイヤハーネス50の2本の電線50Aと50Bの端末に接続した雌端子50A−t、50B−tをハウジング21の上端開口から挿入して端子22b、23bと嵌合接続する。
また、ケース下面から接続するワイヤハーネス51の2本の電線51Aと51Bの端末に接続した雌端子51A−t、51B−tをハウジング21の下端から突出する端子22a、23aと嵌合接続する。
【0029】
前記のように、ワイヤハーネス50の電線50Aと50B、ワイヤハーネス51の電線51Aと51Bとをジョイントコネクタ10のジョイント端子25で接続して、4本の電線を電気接続箱1の内部でスプライスしている。
【0030】
なお、ヒューズ収容部3に装着するヒューズ5の入力端子6aと出力端子6bを電気接続箱1内に収容した内部回路のバスバーに設けた端子と嵌合接続する第2ブロック4Bにおいて未使用のヒューズ収容部3−Cが発生し、かつ、オプション部品と前記バスバーの端子とが接続できる場合、ジョイントコネクタ10を第2ブロック4Bの未使用のヒューズ収容部3−Cに装着してもよい。
その場合、該ジョイントコネクタ10の端子22a、23aは内部回路のバスバー(図示せず)の端子と接続され、外部側の端子22b、23bはオプション部品と接続するワイヤハーネス50の電線端末の端子と接続される。
【0031】
ジョイントコネクタ11は図8(A)に示す形状とし、前記ジョイントコネクタ10との相違点は、ジョイントコネクタ11ではジョイント端子25の下方に突出する端子22a、23aを設けておらず、端子材22と23の下端を連結部24で連結したU形状としている。他の構成は同様で、ハウジング21の形状およびジョイント端子25の上端の端子22b、23bはハウジング21の上面開口の内部に露出させている構成はジョイントコネクタ10と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
前記ジョイントコネクタ11は未使用のヒューズ収容部3−Cを装着部として利用しているだけである。即ち、図8(B)に示すように、ワイヤハーネス53の電線53A、53B同士をスプライス接続するジョイントコネクタ11を電気接続箱1の未使用のヒューズ収容部3−Cに装着しているだけである。よって、第1ヒューズ収容ブロック4A、第2ヒューズ収容ブロック4Bのいずれの未使用のヒューズ収容部3−Cにも装着することができる。
【0033】
スルーコネクタ12は図9(A)に示す形状とし、前記ジョイントコネクタ10との相違点はハウジング21内に収容する端子材22と23とは独立させ、連結部で連結していない点でる。他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
前記スルーコネクタ12を第1ヒューズ収容ブロック4Aの未使用のヒューズ収容部3−Cに装着すると、図9(B)に示すように、上方から接続するワイヤハーネス55の電線55Aと下方からのワイヤハーネス56の電線56Aとをスルー接続でき、同様に電線55Bと電線56Bとをスルー接続できる。
【0035】
かつ、第2ヒューズ収容ブロック4Bの未使用のヒューズ収容部3−Cにスルーコネクタ12を装着し、電気接続箱1の内部回路とワイヤハーネスの各電線とを接続することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 電気接続箱
2 ケース
3 ヒューズ収容部
3a 周壁
3x 凹部
4(4A、4B) ヒューズ収容ブロック
5 ヒューズ
10、11 ジョイントコネクタ
12 スルーコネクタ
21 コネクタハウジング
22、23 端子材
24 連結部
25 ジョイント端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続箱のケース外面に設けたヒューズ収容部のうち、未使用のヒューズ収容部に装着するコネクタであって、
該コネクタのハウジングは前記ヒューズ収容部に収容予定であったヒューズの樹脂本体と同形状とすると共に、該ハウジング内に一対の接続材を有し、各接続材の一端は前記ハウジングの一端側の外面開口に位置させて、ワイヤハーネスの電線端末の相手方端子を嵌合接続する構成としていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングの外面に係止用凸部を設ける一方、前記未使用となるヒューズ収容部の周壁に凹部を設け、該凹部に前記係止用凸部が内嵌固定できるようにしている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングの一方外面にコ字状連結部を設けると共に他方外面にI字状連結部を設け、複数のコネクタを前記コ字状連結部とI字状連結部とを嵌合して順次嵌合して連結できる構成としている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジング内の一対の接続材は連結してジョイントコネクタとし、前記ワイヤハーネスの電線同士をスプライスするジョイントコネクタとしている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジング内に収容する前記一対の端子材は前記ハウジングの他端側から突出させると共に長さ方向の中間部を連結してジョイントコネクタとし、前記電気接続箱の対向側から挿入する電線端末の端子を嵌合し、電気接続箱の上下から接続する合計4本の電線をジョイント接続できるものとしている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジング内の一対の端子材は連結せずに独立させると共に前記ハウジングの他端側から突出させ、前記電気接続箱の対向側から接続する電線同士を接続するスルーコネクタとしている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のコネクタを、未使用のヒューズ収容部に装着している電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−205369(P2012−205369A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66667(P2011−66667)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】