説明

コネクタ及びコネクタの製造方法

【課題】部品点数が少なく構造が簡単で、かつ製造が容易であり、しかもコンタクトモジュールを小型化しても高いシールド効果が得られるコネクタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コンタクトモジュール30が複数の挟持板を備え、隣り合う各挟持板の対向面に導電層32と絶縁部45をそれぞれ形成し、隣り合う各挟持板の絶縁部の間で絶縁部材60を挟み込み、絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトをそれぞれ挟持し、絶縁部材を挟んでコンタクトモジュールの厚み方向に並んだ2つのコンタクトを互いに同一仕様とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコンタクトモジュールを備えるタイプのコネクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信機器、放送映像機器、FAシステムの制御装置、医療機器、半導体の製造装置やテスター等には、近年、膨大な情報を高速かつ高精度で処理することが要求されている。そのため、これらの機器に適用するコネクタには高いシールド機能が要求される。
【0003】
特許文献1に開示されているコネクタ(プラグコネクタ3)は、フロントハウジング5と、フロントハウジング5に特定の一方向に重ねた状態で固定した複数のコンタクトモジュール6と、を備えている。
各コンタクトモジュール6は、インシュレータ28と、インシュレータ28に固定した複数の信号コンタクト16と、インサート成形によりインシュレータ28内に埋設した複数の金属製のシールド部材(第1のグランドプレート14、第2のグランドプレート15)と、を備えている。各信号コンタクト16の一端は回路基板に接続してあり、かつ他端は他のコネクタ(レセプタクルコネクタ4)のコンタクトピンに接続可能である。
第1のグランドプレート14、及び第2のグランドプレート15は、複数の略L字形状部18や凸状リブ22を具備している。これら略L字形状部18や凸状リブ22はインシュレータ28内において各信号コンタクト16の周囲を部分的に囲み、各信号コンタクト16を電磁的にシールドしている。
【特許文献1】特開2005−197163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のコネクタは、シールド効果を発揮するためにはシールド部材(第1のグランドプレート14、第2のグランドプレート15)が必要であり且つ、シールド部材を複雑な形状にする必要がある。そのため、部品点数が多くなるとともに生産性を上げることが困難であり製造コストが高くなる傾向にあった。
【0005】
さらに、金属製シールド部材は各信号コンタクト16の周囲を覆うことを目的としているが、一体成形品27の内部や外側面側にはシールド部材が存在しない領域が多いので、シールド効果を十分に得難い。
また、インシュレータ28内に複数のシールド部材を埋設する構造なので、一体成形品27を小型化することが困難である(省スペース化が難しい)。そのため、コンタクトモジュール6が大型化してしまい、ひいてはコネクタが大型化してしまう。
さらに、インシュレータ28内に複数のシールド部材を埋設する構造なので、各コンタクトモジュール6を高密度化(一つのコンタクトモジュール6当たりの信号コンタクト16の数の増加)を図るのが困難である。
【0006】
本発明の目的は、部品点数が少なく構造が簡単で、かつ製造が容易であり、しかもコンタクトモジュールを小型化しても高いシールド効果が得られるコネクタ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタは、一端が、他のコネクタに突設した複数のコンタクトピンとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタにおいて、上記コンタクトモジュールが、該コンタクトモジュールの厚み方向に並ぶ複数の挟持板を備え、隣り合う各挟持板の対向面に導電層と絶縁部をそれぞれ形成し、隣り合う各挟持板の上記絶縁部の間で絶縁部材を挟み込み、上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトをそれぞれ挟持し、上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトを互いに同一仕様としたことを特徴としている。
【0008】
上記各挟持板の上記絶縁部に、一端が該挟持板の端面において開口し、隣り合う挟持板を接合したときに上記コンタクトモジュールの内外を連通させる嵌合孔を構成する開口凹部を形成し、該嵌合孔を通して上記コンタクトモジュール内に進入した上記コンタクトピンが、該コンタクトモジュール内において上記コンタクトと導通するのが好ましい。
【0009】
さらに、上記厚み方向に対向する上記絶縁部と上記絶縁部材の対向面の少なくとも一方に、上記コンタクトを嵌合保持するコンタクト保持溝を凹設するのが好ましい。
【0010】
上記コンタクトの一部をシグナルコンタクトとし、残りをグランドコンタクトとして実施することも可能である。
即ち、上記絶縁部と上記絶縁部材との間で複数の上記コンタクトの一部を挟持し、上記導電層によって残りの上記コンタクトを保持してもよい。
【0011】
また、シングル伝送態様で実施することも可能である。
即ち、隣り合う上記挟持板の上記対向面のそれぞれに、複数の上記絶縁部を上記導電層で挟んで形成し、各絶縁部と絶縁部材の間で上記コンタクトを1本ずつ挟持してもよい。
【0012】
本発明のコネクタは、別の態様によると、一端が、他のコネクタの内部に挿入して該他のコネクタに内蔵した複数のコンタクトとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトピンを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタにおいて、上記コンタクトモジュールが、該コンタクトモジュールの厚み方向に並ぶ複数の挟持板を備え、隣り合う各挟持板の対向面に導電層と絶縁部をそれぞれ形成し、隣り合う各挟持板の上記絶縁部の間で絶縁部材を挟み込み、上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトピンをそれぞれ挟持し、上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトピンを互いに同一仕様としたことを特徴としている。
【0013】
上記各挟持板の上記絶縁部に、一端が該挟持板の端面において開口し、隣り合う挟持板を接合したときに上記コンタクトモジュールの内外を連通させる嵌合孔を構成する開口凹部を形成し、該嵌合孔を通して上記コンタクトピンが上記コンタクトモジュールの外側に突出するのが好ましい。
【0014】
上記厚み方向に対向する上記絶縁部と上記絶縁部材の対向面の少なくとも一方に、上記コンタクトピンを嵌合保持するコンタクト保持溝を凹設するのが好ましい。
【0015】
この態様においても上記コンタクトピンの一部をシグナルコンタクトピンとし、残りをグランドコンタクトピンとして実施することも可能である。
即ち、上記絶縁部と上記絶縁部材との間で複数の上記コンタクトピンの一部を挟持し、上記導電層によって残りの上記コンタクトピンを保持してもよい。
【0016】
また、シングル伝送態様で実施することも可能である。
即ち、隣り合う上記挟持板の上記対向面のそれぞれに、複数の上記絶縁部を上記導電層で挟んで形成し、各絶縁部と絶縁部材の間で上記コンタクトピンを1本ずつ挟持してもよい。
【0017】
いずれの態様においても、上記コンタクトモジュールを、一対の上記挟持板によって構成してもよい。
また、上記コンタクトモジュールを、3枚以上の上記挟持板によって構成することも可能である。
【0018】
さらに、いずれの態様においても上記各挟持板の上記対向面全体に上記導電層を形成し、該導電層の表面の一部に上記絶縁部を形成することが可能である。
さらに、挟持した上記コンタクトの両側に位置する上記絶縁部の一対の側縁部に上記導電層が連続していてもよい。
【0019】
さらに、いずれの態様においても上記挟持板の上記対向面を除く表面部に、該対向面に形成した上記導電層に連続する導電層を形成してもよい。
上記挟持板を、樹脂部材の表面にメッキを施し、かつ上記内側面側に絶縁部用凹部を備える導電層部と、上記絶縁部用凹部を覆う樹脂材料からなる絶縁部と、により構成してもよい。
さらに、上記複数のコンタクトモジュールを重ねて構成したコンタクトモジュール群に装着することにより、各コンタクトモジュールを一体化する保持部材を備えるのが好ましい。
【0020】
本発明のコネクタの製造方法は、一端が、他のコネクタに突設した複数のコンタクトピンとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタの製造方法において、複数の樹脂材料の表面をメッキした導電層部を複数成形するステップ、各導電層部の表面の一部を樹脂材料からなる絶縁部でそれぞれ覆うことにより複数の挟持板を成形するステップ、複数の絶縁部材を成形するステップ、複数の上記挟持板を上記コンタクトモジュールの厚み方向に並べ、隣り合う各挟持板の間に上記絶縁部材を配置するステップ、上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトをそれぞれ挟持し、かつ、上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトを互いに同一仕様とすることにより複数の上記コンタクトモジュールを成形するステップ、及び各コンタクトモジュールを一体化するステップ、を有することを特徴としている。
【0021】
本発明のコネクタの製造方法は、別の態様によると、一端が、他のコネクタの内部に挿入して該他のコネクタに内蔵した複数のコンタクトとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトピンを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタの製造方法において、複数の樹脂材料の表面をメッキした導電層部を複数成形するステップ、各導電層部の表面の一部を樹脂材料からなる絶縁部でそれぞれ覆うことにより複数の挟持板を成形するステップ、複数の絶縁部材を成形するステップ、複数の上記挟持板を上記コンタクトモジュールの厚み方向に並べ、隣り合う各挟持板の間に上記絶縁部材を配置するステップ、上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトピンをそれぞれ挟持し、かつ、上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトピンを互いに同一仕様とすることにより複数の上記コンタクトモジュールを成形するステップ、及び各コンタクトモジュールを一体化するステップ、を有することを特徴としている。
【0022】
いずれの態様においても、上記各コンタクトモジュールを一体化するステップは、上記複数のコンタクトモジュールを重ねてコンタクトモジュール群を構成するステップ、及び該コンタクトモジュール群に保持部材を装着するステップ、を有することにより実現できる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1、6、11及び12の発明によると、各コンタクトを一種類のコンタクトで構成する場合も(請求項5または請求項10のようにシングル伝送の場合も)、二種類のコンタクトで構成する場合も(請求項4または9)、金属製のシールド部材を利用している従来のコネクタに比べて、リセプタクルコネクタ(請求項1)やプラグコネクタ(請求項6)の部品点数が少なく構造が簡単になる。しかも、絶縁部材を挟んでコンタクトモジュールの厚み方向に並んだ2つのコンタクトを互いに同一仕様(同じ材質、同じ長さ)としているので、この2つのコンタクトで差動ペアを構成する場合は、差動ペア間で伝送特性に差が生じるおそれを小さくできる。
さらに、金属製のシールド部材が不要になるので、従来技術のコネクタと同じ数のコンタクトを設けた場合に、コンタクトモジュールを従来技術より小型化でき、しかもコンタクトモジュール内におけるコンタクトの高密度化を図れる。
さらに、導電層の表面積を広くすることができるのでコネクタのシールド効果を高めることが可能である。従って、本発明を適用したコネクタは信号を高速伝送可能である。
【0024】
請求項2及び7記載の発明によると、従来のコネクタでは必要な要素であったハウジングが不要になるので、部品点数がより少なくなる。
【0025】
請求項3及び8記載の発明によると、隣り合う挟持板によるコンタクトの保持がより確実になる。
【0026】
請求項13記載の発明によると、絶縁層で挟持されたコンタクトに対する導電層によるシールド領域が拡がるので、より優れたシールド効果が得られる。
【0027】
請求項14記載の発明によると、隣り合う挟持板の対向面に形成した絶縁層でコンタクトを挟持すると、このコンタクトの周囲を一対の挟持板の導電層が完全に囲むので、各コンタクトの周囲が完全にシールドされる。そのため、非常に優れたシールド効果が得られる。
【0028】
請求項15記載の発明のように、挟持板の表面全体に導電層を形成すると、絶縁層の表面積が極めて大きくなるので、より優れたシールド効果が得られるようになる。
【0029】
請求項16記載の発明によると、挟持板を容易に製造できるようになる。
【0030】
請求項17記載の発明によると、コンタクトモジュール群を簡単に一体化できるようになる。
【0031】
請求項18記載の発明によると、部品点数が少なく構造が簡単で、コンタクトモジュールを小型化しても高いシールド効果が得られ、しかも絶縁部材を挟んでコンタクトモジュールの厚み方向に並んだ2つのコンタクトで差動ペアを構成した場合に差動ペア間で伝送特性に差が生じるおそれを小さくできるコンタクトモジュールを備えるリセプタクルコネクタを容易に製造できる。
同様に請求項19の発明によれば、部品点数が少なく構造が簡単で、コンタクトモジュールを小型化しても高いシールド効果が得られ、しかも絶縁部材を挟んでコンタクトモジュールの厚み方向に並んだ2つのコンタクトピンで差動ペアを構成した場合に差動ペア間で伝送特性に差が生じるおそれを小さくできるコンタクトモジュールを備えるプラグコネクタを容易に製造できる。
【0032】
請求項20記載の発明によると、コンタクトモジュール群を簡単に一体化できるので、コネクタの製造がより容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図1〜図14を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後及び左右の方向は図中の矢印の方向を基準としている。
本実施形態のコネクタ10はグランド用コンタクト(グランド用コンタクトピン)とシグナル用コンタクト(シグナル用コンタクトピン)を具備する差動伝送用のコネクタであり、例えば情報通信機器、放送映像機器、FAシステムの制御装置、医療機器、半導体の製造装置やテスター等に適用可能である。コネクタ10は、互いに着脱可能かつ図2に示すように結合することにより互いに電気的に接続するリセプタクルコネクタ20とプラグコネクタ100を備えている。
【0034】
まずリセプタクルコネクタ20について主に図3から図12を利用して説明する。
リセプタクルコネクタ20は大きな構成要素として3つのコンタクトモジュール30と、連結棒80と、保持部材90とを具備している。
まずコンタクトモジュール30の構造について説明する。
3つのコンタクトモジュール30は総て互いに左右対称をなす一対の挟持板31と、左右の挟持板31の間に位置する絶縁部材60と、6本のグランドコンタクト70A、70C、70Eと、6本のグランドコンタクト70B、70D、70Fと、を有している。
図6から図9に示すように挟持板31は2種類の樹脂部材を一体化したものである。
挟持板31の基材である左右の導電層部(導電層)32は互いに左右対称であり、絶縁性の合成樹脂料を図9に示す形状となるように金型(図示略)を利用して成形した後に、成形品の表面全体にめっきを施した部材である。めっきを施す方法は、所謂樹脂めっきや薄膜形成方法(蒸着法・スパッタリング法等)が挙げられる。樹脂めっきの場合は、成形品の表面を脱脂・洗浄した後、触媒を用いて表面を活性化させ、無電解めっき・ストライクニッケルめっき・電気銅めっき・ニッケルめっき・仕上げめっきの順に行う。あるいはMID(Molded Interconnect Device)により成形してもよい。
図示するように左右の導電層部32の対向面には、導電層部32の前端面と底面を連通する3本の絶縁部用凹部33、34、35が凹設してある。また、絶縁部用凹部33と絶縁部用凹部34の間、及び絶縁部用凹部34と絶縁部用凹部35の間に位置する2本の突条部と、絶縁部用凹部35の直下に位置する部分とには、導電層部32の前端面から後方に延びる開口凹部37と、開口凹部37の後端に連なる開口凹部37より広幅の端部収納部(コンタクト保持溝)38と、端部収納部38から導電層部32の底部まで延びる連通部(コンタクト保持溝)39と、がそれぞれ凹設してある。図示するように、この2本の突条部及び絶縁部用凹部35の直下に位置する部分の厚みは、導電層部32の上端部及び下端部の厚みの略半分となっている。
さらに、導電層部32の上端部の前部は後部に比べて一段下がった前側段部36となっており、この前側段部36の上面には前側段部36に比べて狭幅の前側係合凸部40が突設してある。また、導電層部32の後端面の上端部近傍には後側係合凹部41が凹設してあり、後側係合凹部41の天井面の角部にはキー溝42が形成してある。また、左右の導電層部32の外側面の前端部の下端部にはキー溝43が凹設してある。
このような形状として成形した左右の導電層部32の対向面には、図6及び図7等に示すように合成樹脂からなる絶縁部45を嵌め込む。左右の絶縁部45の厚みは絶縁部用凹部34及び絶縁部用凹部35の深さと略同一であり、かつ左右の絶縁部45は互いに左右対称である。絶縁部45は金型(図示略)を利用して導電層部32とは別個に成形するものであり、図6〜図8に示すように、絶縁部用凹部33、34、35とそれぞれ略同一形状の嵌合突条部46、47、48を具備しており、嵌合突条部46、47、48には、開口凹部37と同形状の開口凹部49と、開口凹部49の後端に連なる端部収納部38と同形状の端部収納部(コンタクト保持溝)50と、各端部収納部50の後端から絶縁部45の下端まで延びる連通部(コンタクト保持溝)51と、が凹設してあり、さらに絶縁部45の下端部には3本の連通部(コンタクト保持溝)52が凹設してある。
このような構造の絶縁部45は、その嵌合突条部46、47、48をそれぞれ絶縁部用凹部33、34、35に嵌合することにより導電層部32と一体化する。図6及び図7に示すように、導電層部32と一体化した絶縁部45は、その内側面が導電層部32の上記2本の突条部及び絶縁部用凹部35の直下に位置する部分の側面と連続し、かつ、各連通部52が導電層部32の対応する連通部39とそれぞれ連通する。
【0035】
左右の挟持板31によって挟まれる絶縁部材60は合成樹脂からなる板状部材である。絶縁部材60の側面形状は、左右の導電層部32の対向面に凹設された嵌合用凹部55(上下の板厚が厚い部分の間に形成された凹部)と略同一であり、その厚みは導電層部32の上端部及び下端部の厚みの略半分である。
絶縁部材60の左右両側面の前端部には、開口凹部37及び開口凹部49と同形状である6本の開口凹部61が上下方向に並べて凹設してあり、さらに両側面には対応する開口凹部61の後端に連なる端部収納部38及び端部収納部50と同形状の端部収納部(コンタクト保持溝)62が凹設してある。
【0036】
左側の挟持板31の右側面と絶縁部材60の左側面の間、及び、右側の挟持板31の左側面と絶縁部材60の右側面の間にはそれぞれ計6本のコンタクトが挟み込まれる。このコンタクトは3本のグランドコンタクト70A、70C、70Eと、3本のシグナルコンタクト70B、70D、70Fと、からなる。各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fはスタンピング成形により製造されたものであり、基材(例えばりん青銅、ベリリウム銅、チタン銅、ステンレス、コルソン系銅合金、)上に、下地めっき(例えばニッケル(Ni)めっき)を施した後に、仕上げめっき(例えば金(Au)めっき、錫(Sn)−銅(Cu)めっき、錫(Sn)−鉛(Pb)めっき)を施して製造したものである。各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fの側面形状は総て略L字形であり、それぞれの長さ(形状)は互いに異なる。各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fの前端部はばね状二股部71となっており、下端部はプレスフィット端子72となっている。
【0037】
各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fは次の要領によって左右の挟持板31及び絶縁部材60と一体化する。
まず、左右の挟持板31の導電層部32の3つの端部収納部38に、グランドコンタクト70A、70C、70Eのばね状二股部71を収容し、かつ、ばね状二股部71とプレスフィット端子72の間の部分を、各端部収納部38に連続する連通部39と各連通部39に連続する絶縁部45の連通部52とに嵌合し、各プレスフィット端子72を連通部52の下方に突出させる。また、左右の挟持板31の絶縁部45の3つの端部収納部50に、シグナルコンタクト70B、70D、70Fのばね状二股部71を収容し、かつ、ばね状二股部71とプレスフィット端子72の間の部分を、各端部収納部50に連続する連通部51に嵌合し、各プレスフィット端子72を連通部51の下方に突出させる。そして、絶縁部材60の左半部を左側の挟持板31の嵌合用凹部55に嵌め込み、かつ、絶縁部材60の右半部を右側の挟持板31の嵌合用凹部55に嵌め込む。すると、左右の挟持板31の対向面同士が接触し、かつ、各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fのばね状二股部71が絶縁部材60の対応する端部収納部62に収納される。さらに、左右の挟持板31の開口凹部37と、各開口凹部37と対向する絶縁部材60の開口凹部61とによって嵌合孔が形成され、かつ、左右の開口凹部49と、各開口凹部49と対向する絶縁部材60の開口凹部61とによって嵌合孔が形成される。
このようにして組み立てられたコンタクトモジュール30の各シグナルコンタクト70B、70D、70Fは、絶縁部材60を挟んで隣り合うもの同士が差動ペアを構成する。即ち、隣り合うシグナルコンタクト70B同士、隣り合う70D同士、及び、隣り合う70F同士がそれぞれ差動ペアを構成する。
【0038】
このようにして組み立てられた3つのコンタクトモジュール30を図5に示すように左右方向に重ねると一つのコンタクトモジュール群75が出来上がる。このコンタクトモジュール群75の各コンタクトモジュール30が互いに分離しないように結合するための部材が連結棒80と保持部材90である。
連結棒80はコンタクトモジュール群75の左右寸法と略同じ長さ(左右寸法)の断面略L字形の樹脂部材であり、略水平な挿入突部81と、略垂直な当接部82と、を具備している。さらに、挿入突部81の上面の両端部には一対の係合突部83が突設してあり、左右の係合突部83の間には係合突部83より広幅の一対の係合突部84が突設してある。
保持部材90は断面略コ字形状の樹脂部材であり、垂直部91と、共に垂直部91の上下両端部から後方に向かって延びる上片部92及び下片部93と、を具備している。垂直部91には上下に6個並べた貫通孔94が左右方向に6列穿設してある。また、下片部93の上面の前端部の左右両端には一対の係合突部95が突設してあり、左右の係合突部95の間には係合突部95より広幅の係合突部96が突設してある。さらに、上片部92の下面の前部には後方に向かって延びる3本の係合溝97が凹設してある。
【0039】
コンタクトモジュール群75の後端面には各コンタクトモジュール30の後側係合凹部41によって構成された左右方向に延びる溝が形成されているので、この溝に連結棒80の挿入突部81を嵌合すると、当接部82の前面がコンタクトモジュール30の上端部の後端面に当接する(図1、図2、図11参照)。さらに、左右の係合突部83が左右のコンタクトモジュール30の外側のキー溝42に係合し、かつ、左右の係合突部84が、右側のコンタクトモジュール30と中央のコンタクトモジュール30の隣り合うキー溝42によって形成された凹部と、左側のコンタクトモジュール30と中央のコンタクトモジュール30の隣り合うキー溝42によって形成された凹部とに係合するので、連結棒80によって各コンタクトモジュール30の後部が互いに結合される。
一方、コンタクトモジュール群75の前部に保持部材90を被せると、各コンタクトモジュール30の前側段部36によって形成された凹みに上片部92が嵌合し、かつ下片部93がコンタクトモジュール群75の下面の前部に係合する。また、図12に示すように、上片部92の3本の係合溝97が各コンタクトモジュール30の前側係合凸部40に嵌る。さらに、下片部93に突設した一対の係合突部95が左右のコンタクトモジュール30の外側のキー溝43に係合し、かつ、左右の係合突部96が右側のコンタクトモジュール30と中央のコンタクトモジュール30の隣り合うキー溝43によって形成された凹部と、左側のコンタクトモジュール30と中央のコンタクトモジュール30の隣り合うキー溝43によって形成された凹部とに係合するので、保持部材90によって各コンタクトモジュール30の前部が互いに結合される。
コンタクトモジュール群75と連結棒80と保持部材90はこのようにして一体化される。
このようにした組み立てられたリセプタクルコネクタ20の各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fのプレスフィット端子72を回路基板CB1(図1及び図2参照)の貫通孔に打ち込むと、各グランドコンタクト70A、70C、70Eのプレスフィット端子72が回路基板CB1上の接地パターンに接続し、各シグナルコンタクト70B、70D、70Fのプレスフィット端子72が該回路基板CB2上の回路パターンに接続する。
【0040】
次に、プラグコネクタ100について主に図13及び図14を利用して説明する。
プラグコネクタ100は大きな構成要素として3つのコンタクトモジュール110と、連結棒80と、保持部材130と、を具備している。
コンタクトモジュール110の構造はリセプタクルコネクタ20のコンタクトモジュール30と略同一である。異なるのはグランドコンタクトピン115A、115C、115Eと、シグナルコンタクトピン115B、115D、115Fの構造のみである。
図14に示すように各コンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fは総て接触端部116とプレスフィット端子117を具備しており、その前後長はコンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fより長い。接触端部116はコンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fのばね状二股部71と接続する部分である。各コンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fはスタンピング成形により製造されたものであり、基材(例えばりん青銅、ベリリウム銅、チタン銅、ステンレス、コルソン系銅合金、)上に、下地めっき(例えばニッケル(Ni)めっき)を施した後に、仕上げめっき(例えば金(Au)めっき、錫(Sn)−銅(Cu)めっき、錫(Sn)−鉛(Pb)めっき)を施して製造したものである。
グランドコンタクトピン115A、115C、115Eは、導電層部32の開口凹部(コンタクト保持溝)37、端部収納部(コンタクト保持溝)38、連通部(コンタクト保持溝)39及び絶縁部45の連通部(コンタクト保持溝)52に嵌っており、接触端部116が導電層部32の開口凹部37と絶縁部材60の開口凹部(コンタクト保持溝)61によって形成された嵌合孔からコンタクトモジュール110の後方に突出している。一方、シグナルコンタクトピン115B、115D、115Fは、絶縁部45の開口凹部49(コンタクト保持溝)、端部収納部(コンタクト保持溝)50及び連通部(コンタクト保持溝)51に嵌っており、接触端部116が絶縁部45の開口凹部49と絶縁部材60の開口凹部(コンタクト保持溝)61によって形成された嵌合孔からコンタクトモジュール110の後方に突出している。
コンタクトモジュール110の各シグナルコンタクトピン115B、115D、115Fは、絶縁部材60を挟んで隣り合うもの同士が差動ペアを構成する。即ち、隣り合うシグナルコンタクトピン115B同士、隣り合う115D同士、及び、隣り合う115F同士がそれぞれ差動ペアを構成する。
【0041】
3つのコンタクトモジュール110を左右方向に重ね合わせることにより構成したコンタクトモジュール群120の前部には連結棒80が装着され、連結棒80によって各コンタクトモジュール110の前部が互いに結合される。
一方、コンタクトモジュール群120の後部は保持部材130によって結合される。
保持部材130は断面略H字形状の樹脂部材であり、垂直部131と、共に垂直部131の上下両端部から前向に向かって延びるコンタクトモジュール保持部132及びコンタクトモジュール保持部133と、垂直部131から後方に延びるリセプタクルコネクタ保持部134及びリセプタクルコネクタ保持部135と、を有している。垂直部131には上下に6個並べた貫通孔136が左右方向に6列穿設してある。さらに、コンタクトモジュール保持部133の上面には係合突部95と係合突部96が下片部93と同じ態様で突設してあり、コンタクトモジュール保持部132の下面には係合溝97が上片部92と同じ態様で凹設してある。
コンタクトモジュール保持部132とコンタクトモジュール保持部133は、上片部92及び下片部93と同じ要領によってコンタクトモジュール群120の後部に装着され、装着されることによりコンタクトモジュール110の後部が互いに結合される。また、各コンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fの接触端部116が垂直部131の対応する貫通孔136を貫通して、垂直部131の後方に突出する。
プラグコネクタ100のコンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fのプレスフィット端子117を回路基板CB2(図1及び図2参照)の貫通孔に打ち込むと、各グランドコンタクトピン115A、115C、115Eのプレスフィット端子117が回路基板CB2上の接地パターンに接続し、各シグナルコンタクトピン115B、115D、115Fのプレスフィット端子117が該回路基板CB2上の回路パターンに接続する。
【0042】
以上構成のリセプタクルコネクタ20とプラグコネクタ100を、図2に示すように保持部材130のリセプタクルコネクタ保持部134を保持部材90の上片部92の上面に被せかつリセプタクルコネクタ保持部135を下片部93の下面に被せながら接続すると、プラグコネクタ100の各グランドコンタクトピン115A、115C、115Eの接触端部116がリセプタクルコネクタ20の嵌合孔(開口凹部37、開口凹部49、開口凹部61)に嵌合し、リセプタクルコネクタ20の内部において対応するグランドコンタクト70A、70C、70Eのばね状二股部71を弾性変形させながら、各ばね状二股部71と接続する。同様に、プラグコネクタ100の各シグナルコンタクトピン115B、115D、115Fの接触端部116がリセプタクルコネクタ20の嵌合孔(開口凹部37、開口凹部49、開口凹部61)に嵌合し、リセプタクルコネクタ20の内部において対応するシグナルコンタクト70B、70D、70Fのばね状二股部71を弾性変形させながら、各ばね状二股部71と接続する。
従って、各グランドコンタクト70A、70C、70Eとグランドコンタクトピン115A、115C、115Eは、リセプタクルコネクタ20側の回路基板CB1の接地パターン及びプラグコネクタ100側の回路基板CB2の接地パターンと電気的に接続し、一方、各シグナルコンタクト70B、70D、70Fとシグナルコンタクトピン115B、115D、115Fはリセプタクルコネクタ20側の回路基板CB1の回路パターン及びプラグコネクタ100側の回路基板CB2の回路パターンと電気的に接続する。
【0043】
以上説明した本実施形態では、図12に示すように、各シグナルコンタクト70B、70D、70Fとシグナルコンタクトピン115B、115D、115Fの周囲が絶縁部45と絶縁部材60によって完全に覆われ、さらにその周囲が導電層部32に凹設した絶縁部用凹部33、34、35によって完全に覆われる。さらに、挟持板31の表面(外側面)全体を導電層部32により構成しており、しかも導電層部32における他方の挟持板31との対向面(内側面)に凹部(絶縁部用凹部33、34、35)を形成している(導電層部32の内側面の表面積が極めて大きい)ので、各絶縁部用凹部33、34、35によって、各シグナルコンタクト70B、70D、70Fとシグナルコンタクトピン115B、115D、115Fが確実にシールドされる(外部からのノイズを拾ったり、伝送時に自身が発生するノイズを外部に漏らしたりすることを極めて効果的に防止できる)。そのため、シールド特性に優れ、高速伝送が可能なコネクタ10が得られる。
しかも、差動ペアを構成する対をなすコンタクトを互いに同一仕様(同じ材質、同じ形状(長さ))にしているので、差動ペア間で伝送特性に差が生じるおそれを小さくできる。具体的には信号の時間的ズレ(ジッター)や波形の波打ち(リンギング)を抑止し、優れたシールド特性との相乗効果により信号品質を向上させることができる。
【0044】
さらに、コンタクトモジュール30とコンタクトモジュール110を構成する挟持板31が樹脂成形品であるため、絶縁部用凹部やコンタクト保持溝等の複雑な形状部位を備えていても、生産性を低下させることなく容易に生産できる。
しかも、コンタクトモジュール30とコンタクトモジュール110の内部に金属製のシールド部材を埋設しないので、従来のコネクタに比べて部品点数を低減できるとともに、従来のコネクタと同じ数のコンタクトを設けた場合に、コンタクトモジュール30とコンタクトモジュール110を従来技術より小型化できる。
しかも、従来のコネクタでは必要だったハウジングの代わりに、保持部材90と保持部材130を利用して各コンタクトモジュール30、コンタクトモジュール110を一体化しているので、この点においても製造(組み立て)が容易であると言える。
また、挟持板31に凹設した開口凹部37、端部収納部38、連通部39と、絶縁部45に凹設した開口凹部49、端部収納部50、連通部51、連通部52と、絶縁部材60に凹設した開口凹部61、端部収納部62とによって、各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70F、コンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fを挟持するので、各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70F、コンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fを挟持板31と絶縁部材60によって強固に保持可能であるとともに製造(組立)が容易であり生産性が高い。
さらに、保持部材130の垂直部131に貫通孔136を穿設してあるので、各コンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115F)を所定の位置に保持しやすい(アライメントを確保しやすい)。同様に、保持部材90の垂直部91には貫通孔94を穿設してあるので、コンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fをリセプタクルコネクタ20の内部に正確に導き易い(各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fと接触させ易い)。
【0045】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、図15及び図16に示す変形例のように、左右の挟持板31の間に2枚の絶縁部材145を配置してもよい。
この絶縁部材145の両側面には導電層部32と同様に絶縁部用凹部33、34、35、開口凹部37、端部収納部38、連通部39が形成してあり、絶縁部材145の両側面には絶縁部45を嵌合してある。さらに、絶縁部材145の上端の前部には前側段部146が形成してあり、前側段部146の上面には左右一対の前側係合凸部147が突設してある。また、絶縁部材145の後端面の上端部近傍には後側係合凹部148が凹設してあり、絶縁部材145の前端面の下端部にはキー溝149が凹設してある。
左側の挟持板31の嵌合用凹部55と左側の絶縁部材145の左側の嵌合用凹部55の間と、左側の絶縁部材145の右側の嵌合用凹部55と右側の絶縁部材145の左側の嵌合用凹部55の間と、右側の挟持板31の嵌合用凹部55と右側の絶縁部材145の右側の嵌合用凹部55との間には絶縁部材60がそれぞれ嵌合しており、隣り合う挟持板31と絶縁部材60の間、及び隣り合う絶縁部材145と絶縁部材60の間で各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fを挟持している。
図示は省略してあるが、このような構造のコンタクトモジュール140を左右方向に重ねたコンタクトモジュール群の後部を、後側係合凹部41と後側係合凹部148に対応する形状の係合突部を備える連結棒によって結合し、コンタクトモジュール群の前部を、キー溝43に対応する係合突部と前側係合凸部147に対応する係合溝とを備える保持部材によって結合すれば、リセプタクルコネクタとプラグコネクタが完成する。
【0046】
図15及び図16の変形例は、6組(1組は上下方向に並ぶ各コンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fからなる)のコンタクト群を4枚の挟持板(挟持板31、及び、絶縁部材145と2枚の絶縁部45からなる挟持板)と3枚の絶縁部材60を利用して挟む構造なので、2組のコンタクトを2枚の挟持板31と1枚の絶縁部材60とで挟むコンタクトモジュール30に比べて以下の利点がある。
第一に、コンタクトモジュール30では、例えば6組のコンタクトを挟むためには挟持板31が合計6枚必要になるが、この変形例では4枚で足りる。つまり、部品点数や組立工数、さらには部品毎に行うめっき等の工程の処理時間が削減できるので、生産性向上や製造コスト低減が可能となる。
第二に、コンタクトモジュール140を、挟持板31と、挟持板31よりも厚みがあり自身の機械的強度が高い絶縁部材145と2枚の絶縁部45からなる挟持板とで構成しているので、コンタクトモジュール30に比べてコンタクトモジュール及びコンタクトモジュール群としての機械的強度を高めることができる。
また、図15及び図16の変形例では、コンタクトモジュール140を構成する挟持板のうち、左右両側部の導電層部32の板厚を絶縁部材145の板厚の半分より小さくしているので、リセプタクルコネクタ用の保持部材とプラグコネクタ用の保持部材を左右の側壁を具備しないものとすれば、総てのコンタクト70A、70B、70C、70D、70E、70Fとコンタクトピン115A、115B、115C、115D、115E、115Fの左右方向間隔を同一にして、複数のプラグコネクタまたはリセプタクルコネクタを左右方向に並べることが可能である。
なお、左右の挟持板31の間に位置する絶縁部材60の枚数を1枚あるいは3枚以上として、リセプタクルコネクタとプラグコネクタを構成してもよい。
【0047】
また、図17に示した変形例での実施も可能である。
この変形例のリセプタクルコネクタ150の導電層部(導電層)32’の内側面には、グランドコンタクトを保持するための凹部である開口凹部37、端部収納部38及び連通部39を形成していない。即ち、このリセプタクルコネクタ150はシグナルコンタクト70B、70D、70Fのみを具備している。
このようにグランドコンタクトを省略した場合であっても、絶縁部材60の厚み(嵌合用凹部55の深さ)を調整して差動ペア間の距離を適正な距離とすれば、差動ペア間でのクロストークの発生を抑止できる(電磁的な干渉を抑止できる)。
なお、この変形例をプラグコネクタに適用できのは当然である。
【0048】
さらに、対向する嵌合突条部46、47、48と絶縁部材60の間で上下方向に並ぶ2つ以上の各シグナルコンタクト70B、70D、70Fやシグナルコンタクトピン115B、115D、115Fを挟持してもよい。この場合も、絶縁部材60を挟んで左右方向に対向するコンタクトとコンタクトピンは互いに同一仕様とする。
また、対向する2つの導電層部の一方のみにコンタクト保持溝を形成したり、対向する絶縁部と絶縁部材の一方のみにコンタクト保持溝を形成してもよい。
【0049】
さらに、上記両実施形態では挟持板31、及び、絶縁部材145と2枚の絶縁部45からなる挟持板の絶縁部用凹部33、34、35の側縁部(各コンタクトと平行に延びる部分。実施形態では絶縁部用凹部33、34、35の上縁と下縁をなす部分。)はいずれも導電層部32、32’によって覆われているが、その一部が導電層部によって覆われない形状として実施してもよい。図18はその一例であり、絶縁部用凹部33の一部(上部)が導電層部32’’によって覆われない。なお、図18はリセプタクルコネクタの変形例であるがプラグコネクタにも当然適用可能である。
【0050】
さらに、金型を利用して導電層部32(導電層部32’)に絶縁部を一体成形(所謂2色成形)してもよい。
さらに、合成樹脂材料の表面全体にメッキを形成した後、絶縁部が形成される部分の導電層部(メッキ)を取り除き、この取り除いた部分に絶縁部を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態のプラグコネクタとリセプタクルコネクタの分離状態の斜視図である。
【図2】プラグコネクタとリセプタクルコネクタを接続したときの斜視図である。
【図3】リセプタクルコネクタを、3つのコンタクトモジュールと保持部材と連結棒とに分解したときの前斜め上方から見た斜視図である。
【図4】リセプタクルコネクタを、3つのコンタクトモジュールと保持部材と連結棒とに分解したときの後斜め上方から見た斜視図である。
【図5】リセプタクルコネクタを、コンタクトモジュール群と保持部材と連結棒とに分解したときの前斜め上方から見た斜視図である。
【図6】リセプタクルコネクタのコンタクトモジュールを3つの部材に分離したときの分解斜視図である。
【図7】挟持板の拡大斜視図である。
【図8】リセプタクルコネクタのコンタクトモジュールを完全に分離したときの分解斜視図である。
【図9】導電層部の拡大斜視図である。
【図10】リセプタクルコネクタのコンタクト(シグナルコンタクト)の拡大斜視図である。
【図11】リセプタクルコネクタの拡大側面図である。
【図12】図11のXII−XII矢線に沿う断面図である。
【図13】プラグコネクタを、コンタクトモジュール群と保持部材と連結棒とに分解したときの後斜め上方から見た斜視図である。
【図14】プラグコネクタのコンタクトモジュールを完全に分離したときの分解斜視図である。
【図15】第1の変形例のリセプタクルコネクタのコンタクトモジュールの分解斜視図である。
【図16】導電層部の拡大斜視図である。
【図17】第2の変形例の図12と同様の断面図である。
【図18】第3の変形例の挟持板の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
10 コネクタ
20 リセプタクルコネクタ
30 コンタクトモジュール
31 31’ 挟持板
32 32’ 32’’ 導電層部(導電層)
33 34 35 絶縁部用凹部
36 前側段部
37 開口凹部(コンタクト保持溝)
38 端部収納部(コンタクト保持溝)
39 連通部(コンタクト保持溝)
40 前側係合凸部
41 後側係合凹部
42 43 キー溝
45 絶縁部
46 47 48 嵌合突条部
49 開口凹部(コンタクト保持溝)
50 端部収納部(コンタクト保持溝)
51 52 連通部(コンタクト保持溝)
55 嵌合用凹部
60 絶縁部材
61 開口凹部
62 端部収納部(コンタクト保持溝)
70A 70C 70E グランドコンタクト
70B 70D 70F シグナルコンタクト
71 ばね状二股部
72 プレスフィット端子
75 コンタクトモジュール群
80 連結棒
81 挿入突部
82 当接部
83 84 係合突部
90 保持部材
91 垂直部
92 上片部
93 下片部
94 貫通孔
95 96 係合突部
97 係合溝
100 プラグコネクタ
110 コンタクトモジュール
115A 115C 115E グランドコンタクトピン
115B 115D 115F シグナルコンタクトピン
116 接触端部
117 プレスフィット端子
120 コンタクトモジュール群
130 保持部材
131 垂直部
132 コンタクトモジュール保持部
133 コンタクトモジュール保持部
134 リセプタクルコネクタ保持部
135 リセプタクルコネクタ保持部
136 貫通孔
140 コンタクトモジュール
145 絶縁部材
146 前側段部
147 前側係合凸部
148 後側係合凹部
149 キー溝
150 リセプタクルコネクタ
CB1 CB2 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が、他のコネクタに突設した複数のコンタクトピンとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタにおいて、
上記コンタクトモジュールが、該コンタクトモジュールの厚み方向に並ぶ複数の挟持板を備え、
隣り合う各挟持板の対向面に導電層と絶縁部をそれぞれ形成し、
隣り合う各挟持板の上記絶縁部の間で絶縁部材を挟み込み、
上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトをそれぞれ挟持し、
上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトを互いに同一仕様としたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、
上記各挟持板の上記絶縁部に、一端が該挟持板の端面において開口し、隣り合う挟持板を接合したときに上記コンタクトモジュールの内外を連通させる嵌合孔を構成する開口凹部を形成し、
該嵌合孔を通して上記コンタクトモジュール内に進入した上記コンタクトピンが、該コンタクトモジュール内において上記コンタクトと導通するコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のコネクタにおいて、
上記厚み方向に対向する上記絶縁部と上記絶縁部材の対向面の少なくとも一方に、上記コンタクトを嵌合保持するコンタクト保持溝を凹設したコネクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記絶縁部と上記絶縁部材との間で複数の上記コンタクトの一部を挟持し、上記導電層によって残りの上記コンタクトを保持したコネクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
隣り合う上記挟持板の上記対向面のそれぞれに、複数の上記絶縁部を上記導電層で挟んで形成し、
各絶縁部と上記絶縁部材の間で上記コンタクトを1本ずつ挟持したコネクタ。
【請求項6】
一端が、他のコネクタの内部に挿入して該他のコネクタに内蔵した複数のコンタクトとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトピンを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタにおいて、
上記コンタクトモジュールが、該コンタクトモジュールの厚み方向に並ぶ複数の挟持板を備え、
隣り合う各挟持板の対向面に導電層と絶縁部をそれぞれ形成し、
隣り合う各挟持板の上記絶縁部の間で絶縁部材を挟み込み、
上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトピンをそれぞれ挟持し、
上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトピンを互いに同一仕様としたことを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
請求項6記載のコネクタにおいて、
上記各挟持板の上記絶縁部に、一端が該挟持板の端面において開口し、隣り合う挟持板を接合したときに上記コンタクトモジュールの内外を連通させる嵌合孔を構成する開口凹部を形成し、
該嵌合孔を通して上記コンタクトピンが上記コンタクトモジュールの外側に突出するコネクタ。
【請求項8】
請求項6または7記載のコネクタにおいて、
上記厚み方向に対向する上記絶縁部と上記絶縁部材の対向面の少なくとも一方に、上記コンタクトピンを嵌合保持するコンタクト保持溝を凹設したコネクタ。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記絶縁部と上記絶縁部材との間で複数の上記コンタクトピンの一部を挟持し、上記導電層によって残りの上記コンタクトピンを保持したコネクタ。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
隣り合う上記挟持板の上記対向面のそれぞれに、複数の上記絶縁部を上記導電層で挟んで形成し、
各絶縁部と上記絶縁部材の間で上記コンタクトピンを1本ずつ挟持したコネクタ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記コンタクトモジュールを、一対の上記挟持板によって構成したコネクタ。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記コンタクトモジュールを、3枚以上の上記挟持板によって構成したコネクタ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記各挟持板の上記対向面全体に上記導電層を形成し、該導電層の表面の一部に上記絶縁部を形成したコネクタ。
【請求項14】
請求項13記載のコネクタにおいて、
挟持した上記コンタクトの両側に位置する上記絶縁部の一対の側縁部に上記導電層が連続しているコネクタ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記挟持板の上記対向面を除く表面部に、該対向面に形成した上記導電層に連続する導電層を形成したコネクタ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記挟持板を、
樹脂部材の表面にメッキを施し、かつ上記内側面側に絶縁部用凹部を備える導電層部と、
上記絶縁部用凹部を覆う樹脂材料からなる上記絶縁部と、により構成したコネクタ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記複数のコンタクトモジュールを重ねて構成したコンタクトモジュール群に装着することにより、各コンタクトモジュールを一体化する保持部材を備えるコネクタ。
【請求項18】
一端が、他のコネクタに突設した複数のコンタクトピンとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタの製造方法において、
複数の樹脂材料の表面をメッキした導電層部を複数成形するステップ、
各導電層部の表面の一部を樹脂材料からなる絶縁部でそれぞれ覆うことにより複数の挟持板を成形するステップ、
複数の絶縁部材を成形するステップ、
複数の上記挟持板を上記コンタクトモジュールの厚み方向に並べ、隣り合う各挟持板の間に上記絶縁部材を配置するステップ、
上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトをそれぞれ挟持し、かつ、上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトを互いに同一仕様とすることにより複数の上記コンタクトモジュールを成形するステップ、及び
各コンタクトモジュールを一体化するステップ、
を有することを特徴とするコネクタの製造方法。
【請求項19】
一端が、他のコネクタの内部に挿入して該他のコネクタに内蔵した複数のコンタクトとそれぞれ接続し、他端が回路基板に接続する複数のコンタクトピンを有するコンタクトモジュールを複数備えるコネクタの製造方法において、
複数の樹脂材料の表面をメッキした導電層部を複数成形するステップ、
各導電層部の表面の一部を樹脂材料からなる絶縁部でそれぞれ覆うことにより複数の挟持板を成形するステップ、
複数の絶縁部材を成形するステップ、
複数の上記挟持板を上記コンタクトモジュールの厚み方向に並べ、隣り合う各挟持板の間に上記絶縁部材を配置するステップ、
上記絶縁部材と、該絶縁部材の両側に位置する2つの上記絶縁部との間で少なくとも一つの上記コンタクトピンをそれぞれ挟持し、かつ、上記絶縁部材を挟んで上記厚み方向に並んだ2つの上記コンタクトピンを互いに同一仕様とすることにより複数の上記コンタクトモジュールを成形するステップ、及び
各コンタクトモジュールを一体化するステップ、
を有することを特徴とするコネクタの製造方法。
【請求項20】
請求項18及び19記載のコネクタの製造方法において、
上記各コンタクトモジュールを一体化するステップが、
上記複数のコンタクトモジュールを重ねてコンタクトモジュール群を構成するステップ、及び
該コンタクトモジュール群に保持部材を装着するステップ、
を有するコネクタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−9748(P2010−9748A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163959(P2008−163959)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000128407)京セラエルコ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】