説明

コネクタ及びゴム栓

【課題】ゴム栓のハウジングからの抜け止めを簡易な手段によって実現する。
【解決手段】コネクタ10は、端子金具50を装着可能なハウジング20と、ハウジング20の外周面に密着して嵌合されるゴム栓60とを備える。ゴム栓60の外周面には、リップ63が周方向に突出して形成されている。ハウジング20が嵌合相手と嵌合した状態では、ゴム栓60がハウジング20と嵌合相手との間に挟まれ、リップ63が嵌合相手の内周面に弾性的に圧潰される。ゴム栓60には、リップ63を有するシール部61と、リップ63を有さない保持部62とが、軸方向に分かれて形成されている。保持部62が、シール部61の最小内径Bよりも小さい内径寸法Aの小径部67を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及びゴム栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタ及びゴム栓が開示されている。コネクタは、端子金具を装着可能なブロック状のハウジングを備えている。ハウジングは、相手ハウジングに嵌合可能とされている。ゴム栓は、環状をなし、ハウジングの内周面に密着して嵌合される。ゴム栓の外周面には、複数条のリップが軸方向に並んで形成されている。ハウジングが相手ハウジングに嵌合されると、ゴム栓がハウジングと相手ハウジングとの間に挟まれ、リップが相手ハウジングの内周面に弾性的に圧潰されるようになっている。
【0003】
ここで、ゴム栓は、ハウジングの外周面に前方から装着され、ハウジングの前端部には、ゴム栓の装着後、フロントホルダが嵌着される。このため、ゴム栓の前方にはフロントホルダが位置し、このフロントホルダによってゴム栓の前方への抜け止めがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3968638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フロントホルダが必要とされないコネクタの場合、フロントホルダの代わりに、ゴム栓の前方への抜け止めを行うための抜け止め手段を別に設けなければならない。そうすると、コネクタの構造が複雑になるおそれがあり、また部品点数の増加によって、組付作業性が悪化するとともに、コストが高くつくおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ゴム栓のハウジングからの抜け止めを簡易な手段によって実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具を装着可能なハウジングと、前記ハウジングの外周面に密着して嵌合されるゴム栓とを備え、前記ゴム栓の外周面には、リップが周方向に突出して形成され、前記ハウジングは、嵌合相手に嵌合可能とされ、嵌合状態では、前記ゴム栓が前記ハウジングと前記嵌合相手との間に挟まれ、かつ前記リップが前記嵌合相手の内周面に弾性的に圧潰されるコネクタであって、前記ゴム栓には、前記リップを有するシール部と、前記リップを有さない保持部とが、軸方向に分かれて形成され、前記保持部が、前記シール部の最小内径よりも小さい内径の小径部を有しているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記保持部の内周面が、前記ゴム栓の前記ハウジングへの装着方向とは逆方向に次第に縮径するテーパ面とされているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、ハウジングの外周面に密着して嵌合され、自身の外周面にはリップが周方向に突出して形成され、前記ハウジングが嵌合相手と嵌合された状態で、前記ハウジングと前記嵌合相手との間に挟まれ、かつ前記リップが前記嵌合相手の内周面に弾性的に圧潰されるゴム栓であって、前記リップを有するシール部と、前記リップを有さない保持部とが、軸方向に分かれて形成され、前記保持部が、前記シール部の最小内径よりも小さい内径の小径部を有しているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記保持部の内周面が、前記ハウジングへの装着方向とは逆方向に次第に縮径するテーパ面とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1及び請求項3の発明>
ゴム栓にはリップを有するシール部とリップを有さない保持部とが軸方向に分かれて形成され、保持部がシール部の最小内径よりも小さい内径の小径部を有しているから、ハウジングの外周面に小径部が緊密に密着して、ゴム栓を抜け止め可能な所定の保持力(摩擦力)を得ることができる。よって、ゴム栓のハウジングからの抜け止めを簡易な手段によって実現することが可能となる。
【0012】
<請求項2及び請求項4の発明>
保持部の内周面がゴム栓のハウジングへの装着方向とは逆方向に次第に縮径するテーパ面とされているため、ゴム栓の装着時における挿入負荷が低減される。したがって、ゴム栓の装着作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係り、嵌合相手への嵌合前のコネクタの平面図である。
【図2】コネクタの断面図である。
【図3】コネクタの背面図である。
【図4】コネクタの正面図である。
【図5】ゴム栓の背面図である。
【図6】ゴム栓の断面図である。
【図7】参考例1に係るコネクタの平面図である。
【図8】ゴム栓の背面図である。
【図9】ハウジングとゴム栓の分解平面図である。
【図10】参考例2に係るゴム栓の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。実施形態1に係るコネクタ10は、ハウジング20と、ハウジング20に装着される端子金具50と、ハウジング20の外周面に嵌着されるゴム栓60とを備えている。ハウジング20は、嵌合相手となる機器80に嵌合され、かつその反対側で相手コネクタに嵌合される。なお、以下の説明において前後方向については、機器80への嵌合側を後方とし、相手コネクタへの嵌合側を前方とする。
【0015】
ハウジング20は合成樹脂製であって、ブロック状のハウジング本体21と、ハウジング本体21の前端から前方に突出する筒状のフード部22とを有している。ハウジング20の外周面におけるハウジング本体21とフード部22との間には、板状のフランジ部23が径方向に張り出して形成されている。フランジ部23は、図3及び図4に示すように、正面から視て四隅に丸みの付いた略平行四辺形状をなし、径方向外側に最も張り出す部分の対角位置に、一対の取付孔24が貫通して形成されている。フランジ部23の前面には、両取付孔24の周りを包囲する一対の円筒部25が突出して形成されている。
【0016】
両取付孔24には、図示しないボルトが前方から挿入される。ボルトは、機器80に螺合され、機器80との間にフランジ部23を締め付けることで、コネクタ10を機器80に固定する役割をはたす。また、フランジ部23の後面には、両取付孔24の位置する側とは別の対角位置に、一対の位置決め部26が突出して形成されている。コネクタ10が機器80に取り付けられる際に、両位置決め部26が機器80側の位置決め孔(図示せず)に挿入されることにより、機器80に対するコネクタ10の位置決めがなされる。
【0017】
ハウジング本体21の外周面には、段部27が全周に亘って突出して形成されている。段部27の前面は、フランジ部23の後面に一体に連結されている。ハウジング本体21の外周面のうち、段部27よりも後方の所定範囲は、ゴム栓60が装着されるゴム栓装着面28とされている。
ハウジング本体21には、ピン状の複数の端子金具50が整列して装着されている。各端子金具50の前端部は、フード部22内に二段で突出して、相手コネクタ側と電気的に接続される。また、各端子金具50の後端部は、ハウジング本体21の後方に一段で突出して、機器80側と電気的に接続される。ハウジング本体21の幅方向両端部には、各端子金具50の後端部を挟んだ幅方向両側に、一対の保護壁29が後方に突出して形成されている。
【0018】
続いてゴム栓60について説明すると、ゴム栓60はシリコンゴム等のゴム製であって、図5及び図6に示すように、全体として幅方向に長い円筒状をなしている。そして、ゴム栓60には、シール部61と保持部62とが、前後方向(軸方向)に分かれて形成されている。シール部61は、ゴム栓60の前側に配置され、保持部62は、ゴム栓60の後側に配置されている。
【0019】
シール部61の外周面には、複数条のリップ63が全周に亘って突出して形成されている。また、シール部61の内周面には、複数条の内周リップ64が同じく全周に亘って突出して形成されている。リップ63と内周リップ64とは、互いに前後方向の位相をずらして配置されている。
【0020】
リップ63は、前側に位置する前側リップ63Fと、後側に位置する後側リップ63Rとからなる。前側リップ63Fは、後面が前面よりも急傾斜とされ、後側リップ63Rは、前面が後面よりも急傾斜とされている。前側リップ63Fと後側リップ63Rとは、両者間に形成された谷部65を介して互いに対称な形状とされている。谷部65の底は、前側リップ63F及び後側リップ63Rの前後両端における両裾よりも径方向外側に位置している。
【0021】
各内周リップ64の内端は、径方向に関して同じ位置に揃えられている。そして、各内周リップ64の内端の径寸法は、シール部61の最小内径に相当し、ハウジング本体21のゴム栓装着面28の外径寸法よりも少し小さくされている。
【0022】
ここで、ゴム栓60がハウジング20に装着されると、図2に示すように、段部27の後端にシール部61の前端が当て止め可能に配置され、かつ内周リップ64がハウジング本体21の外周面に弾性的に当接する。その後、図1に示すように、コネクタ10が機器80に形成された装着孔81に挿入されると、ゴム栓60がハウジング20と機器80との間に挟持され、これにより、リップ63が機器80の装着孔81の内周面に当接して弾性的に圧潰されるとともに、内周リップ64がハウジング本体21の外周面に弾性的に圧潰される。
【0023】
保持部62は、リップ63及び内周リップ64を有さず、長さ方向にほぼ一定の厚みを有している。本実施形態の場合、保持部62の厚みは、シール部61の厚みよりも薄くされている。また、保持部62は、その全体がシール部61の後端から後方に向けて全周に亘って径方向内向きに縮径する形態とされている。つまり、保持部62の内周面は、後方に向けて次第に縮径するテーパ面66とされている。そして、保持部62のテーパ面66の後端は、ゴム栓60の後端に相当し、シール部61の最小内径Bよりも小さく、かつゴム栓60全体の中で最も小さい内径寸法Aを有する小径部67とされている。この小径部67の内径寸法Aは、ハウジング本体21のゴム栓装着面28の外径寸法よりも充分に小さくされている。なお、保持部62のテーパ面66の前端は、ハウジング本体21のゴム栓装着面28の外径寸法よりも大きくされている。
【0024】
本実施形態に係るコネクタ10及びゴム栓60の構成は上述の通りであり、続いて、その作用効果を説明する。
ハウジング20に後方からゴム栓60を装着する。ゴム栓60の装着過程では、シール部61の内周リップ64がハウジング本体21の外周面を摺動するとともに、保持部62の小径部67が拡開した状態でハウジング本体21の外周面を摺動する。一方、保持部62のテーパ面66の前端はハウジング本体21の外周面とはほぼ非接触に保たれる。
【0025】
ハウジング20にゴム栓60が正規装着されると、ゴム栓60の前端が段部27に当接して、ゴム栓60のそれ以上前方への押し込みが規制される。また、ゴム栓60の小径部67がその弾性復元力によってハウジング本体21のゴム栓装着面28を緊密に締め付ける。これにより、ゴム栓60の小径部67とハウジング本体21のゴム栓装着面28との間に所定の保持力(摩擦力)が得られ、ゴム栓60の後方への抜けが防止される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゴム栓60に、リップ63を有するシール部61と、リップ63を有さない保持部62とが、前後に分かれて形成され、保持部62がシール部61の最小内径Bよりも小さい内径寸法Aの小径部67を有しているため、ハウジング20のゴム栓装着面28に小径部67が緊密に密着して、ゴム栓60を抜け止め可能な所定の保持力を得ることができる。したがって、ゴム栓60のハウジング20からの抜け止めを、別体の抜け止め手段等を用いずに、簡易な手段によって実現することが可能となる。
【0027】
また、保持部62の内周面がゴム栓60のハウジング20への装着方向とは逆方向に次第に縮径するテーパ面66とされているため、ゴム栓60の装着時における挿入負荷が低減される。したがって、ゴム栓60の装着作業性が良好となる。
【0028】
<参考例1>
図7ないし図9は、参考例1に係るコネクタ10Aのゴム栓60A及びハウジング20Aを示す。
【0029】
参考例1では、リップ63Aを有するシール部61Aがゴム栓60Aの後側に配置され、リップ63Aを有さない保持部62Aがゴム栓60Aの前側に配置されている。保持部62Aは、前後方向に沿って配置され、実施形態1と違って、テーパ形状ではなく小径部67を有していない。そして、保持部62Aは、周方向に間隔をあけて、複数の保持溝68を有している。
【0030】
保持溝68は、ゴム栓60Aの上下両壁の幅方向両側に一対ずつ形成され、前後方向に延びてゴム栓60Aの前端に開口する形態とされている。この保持溝68は、開口端側(前端側)から奥端側(後端側)に向けて次第に拡開するアリ溝状とされている。よって、保持溝68の開口端の幅寸法Eは、奥端の幅寸法Fよりも小さくされている。
【0031】
ハウジング本体21には、各保持溝68と対応する位置に、複数の保持突起33が形成されている。各保持突起33は、前後方向にほぼ一定幅で延出するリブ状の形態とされ、フランジ部23Aの後面に一体に連結されている。
各保持突起33の幅寸法Gは、保持溝68の開口端の幅寸法Eよりも大きくされ、保持溝68の奥端の幅寸法Fとほぼ同じとされている。なお、参考例1のその他の構成は、実施形態1とほぼ同様であり、重複する説明は省略する。
【0032】
参考例1によれば、ゴム栓60Aがハウジング20Aに装着されると、保持突起33が保持溝68にその前方から挿入され、保持溝68の開口端が拡開される。このとき、保持溝68の開口端におけるゴム栓60Aの弾性復元力によって保持突起33が緊密に締め付けられ、ゴム栓60Aを抜け止め可能な所定の保持力(摩擦力)が得られる。したがって、参考例1によれば、ゴム栓60Aのハウジング20Aからの抜け止めを簡易な手段によって実現することが可能となる。
【0033】
<参考例2>
図10は、参考例2に係るゴム栓60Bを示す。参考例2は、保持溝68Bの形態が参考例1とは異なる点を除いて、参考例1とほぼ同様の構成とされる。
【0034】
保持溝68Bの幅方向両側縁には、複数の係止リブ69が前後方向に並んで形成されている。このため、保持溝68Bの谷間の幅寸法Hは、係止リブ69間の幅寸法Iよりも大きくされている。ゴム栓60Bがハウジング20Aに装着されると、保持突起33が保持溝68Bにその前方から挿入される。このとき、各係止リブ69が保持突起33の幅方向両側縁に強固に当接して、所定の保持力(摩擦力)が得られる。したがって、参考例2によれば、ゴム栓60Bのハウジング20Aからの抜け止めを簡易な手段によって実現することが可能となる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)ゴム栓が、嵌合相手としての相手ハウジングとハウジングとの間に挟まれる構成であってもよい。
(2)保持部の厚みが、シール部の厚みよりも大きくされていてもよい。
(3)保持部の内周面がテーパ面とされず、小径部が保持部の内周面に段付き状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…コネクタ
20…ハウジング
50…端子金具
60…ゴム栓
61…シール部
62…保持部
63…リップ
67…小径部
80…機器(嵌合相手)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を装着可能なハウジングと、
前記ハウジングの外周面に密着して嵌合されるゴム栓とを備え、
前記ゴム栓の外周面には、リップが周方向に突出して形成され、
前記ハウジングは、嵌合相手に嵌合可能とされ、嵌合状態では、前記ゴム栓が前記ハウジングと前記嵌合相手との間に挟まれ、かつ前記リップが前記嵌合相手の内周面に弾性的に圧潰されるコネクタであって、
前記ゴム栓には、前記リップを有するシール部と、前記リップを有さない保持部とが、軸方向に分かれて形成され、前記保持部が、前記シール部の最小内径よりも小さい内径の小径部を有していることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記保持部の内周面が、前記ゴム栓の前記ハウジングへの装着方向とは逆方向に次第に縮径するテーパ面とされていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
ハウジングの外周面に密着して嵌合され、自身の外周面にはリップが周方向に突出して形成され、前記ハウジングが嵌合相手と嵌合された状態で、前記ハウジングと前記嵌合相手との間に挟まれ、かつ前記リップが前記嵌合相手の内周面に弾性的に圧潰されるゴム栓であって、
前記リップを有するシール部と、前記リップを有さない保持部とが、軸方向に分かれて形成され、前記保持部が、前記シール部の最小内径よりも小さい内径の小径部を有していることを特徴とするゴム栓。
【請求項4】
前記保持部の内周面が、前記ハウジングへの装着方向とは逆方向に次第に縮径するテーパ面とされていることを特徴とする請求項3記載のゴム栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−129078(P2012−129078A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279736(P2010−279736)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】