説明

コネクタ接続用検査治具

【課題】コネクタが基板の中央部にあっても当該コネクタにプローブを接触可能で、かつコネクタに対する位置合わせの際に検査員の視認性が良好なコネクタ接続用検査治具を提供する。
【解決手段】ガイド30は、基板1と当接し且つコネクタ2の側縁と係合することで自身のコネクタ2に対する位置決めが可能である。ガイド30に取り付けられたボス35a,35bと、プローブ保持体10のガイド溝11a,11bとにより、プローブ保持体10とガイド30とが連結される。プローブ保持体10及びガイド30は、ガイド30がコネクタ2に対して位置決めされたときにプローブ17の先端がコネクタ2に接触する第1の相対位置と、ガイド30がコネクタ2に対して位置決めされたときに、プローブ17の先端が基板1から離間すると共に基板1と垂直でコネクタ2を通過する仮想線から離間した第2の相対位置との間で相対移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やその他の機器の基板上のコネクタと検査機とをプローブを介して接続するコネクタ接続用検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やデジタルカメラのごとく小型の電子機器にあっては、小さなスペースに多くの電子回路を搭載するために、複数枚の基板を重ねるように配設し、基板間をそれぞれに配設されたコネクタ同士を連結して電気的に接続することが行われている。基板とそれに配設されたコネクタを検査するには、コネクタに検査機を電気的に接続する必要がある。
【0003】
本出願人は既に、下記特許文献1において、コネクタと検査機とを電気的に接続する中継コネクタを提案している。この中継コネクタは、図11及び図12(従来例1)に示すように、基板810及びコネクタ812を押圧ブロック815とガイド820とで挟み込むことで、プローブ830をコネクタ812に接触させる構造である。プローブ830及び配線基板840の配線パターン(不図示)を介してコネクタ812が検査機(不図示)と電気的に接続され、検査が実行される。図13及び図14(従来例2)は、押圧ブロック815側にプローブ830及び配線基板840を保持した例である。図15は、検査対象のコネクタ812の例示的な斜視図である。
【0004】
下記特許文献2は、コネクタと検査機とを電気的に接続するコネクタ検査用治具を開示している。このコネクタ検査用治具は、特許文献1のものと異なり、基板及びコネクタを挟み込まずに基板の上方からプローブをコネクタに押し当てて接触させる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−140770号公報
【特許文献2】特開2005−283218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の中継コネクタは、基板及びコネクタを挟み込む構造のため、コネクタが基板の端部にある場合はよいが、コネクタが基板の中央部にあるとプローブとコネクタとを接触させることが不可能ないし困難であるという問題がある。一方、特許文献2のコネクタ検査用治具は、基板及びコネクタを挟み込まずに基板の上方からプローブをコネクタに押し当てる構造のため、コネクタが基板の中央部にあってもプローブとコネクタとの接触が可能である。しかし、特許文献2のコネクタ検査用治具では、コネクタに対して位置合わせする際に、ガイドプレートやプローブ及びその保持体がコネクタ及びその周辺を覆い隠してしまうため、検査員の視認性に問題がある。
【0007】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、コネクタが基板の中央部にあっても当該コネクタにプローブを接触可能で、かつコネクタに対する位置合わせの際に検査員の視認性が良好なコネクタ接続用検査治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、コネクタ接続用検査治具である。コネクタ接続用検査治具は、
基板上のコネクタにプローブを接触させるコネクタ接続用検査治具であって、
プローブを保持するプローブ保持体と、前記プローブを基板上のコネクタと接触するように案内するガイドと、前記プローブ保持体と前記ガイドとを相互に相対移動可能に連結する連結手段とを備え、
前記ガイドは、前記コネクタと係合することで自身の前記コネクタに対する位置決めが可能であり、
前記連結手段は、前記プローブ保持体と前記ガイドとを、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされたときに前記プローブの先端が前記コネクタに接触する第1の相対位置と、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされたときに、前記プローブの先端が前記基板から離間すると共に前記基板と垂直で前記コネクタを通過する仮想線から離間した第2の相対位置との間で相対移動可能に連結する。
【0009】
ある態様のコネクタ接続用検査治具において、前記プローブ保持体と前記ガイドとの間に設けられて両者を所定の相対位置に付勢するスプリングを備え、前記スプリングが前記プローブ保持体と前記ガイドとを前記第2の相対位置に付勢するとよい。
【0010】
ある態様のコネクタ接続用検査治具において、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされ且つ前記プローブ保持体と前記ガイドとが少なくとも前記第2の相対位置にあるときに、前記コネクタを目視可能であるとよい。
【0011】
ある態様のコネクタ接続用検査治具において、前記連結手段は、前記第1の相対位置と、前記第1及び第2の相対位置の間であって、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされたときに、前記第1の相対位置を基準として前記プローブの先端が前記仮想線と平行に前記基板から離間した第3の相対位置との間で前記プローブ保持体と前記ガイドとを直線的に相対移動可能に連結するとよい。
【0012】
この場合、前記第2の相対位置から前記第3の相対位置に至る過程で、前記プローブの先端と前記基板との距離が単調に減少するとよい。
【0013】
ある態様のコネクタ接続用検査治具において、
前記連結手段は、前記プローブ保持体又は前記ガイドの一方に設けられたガイド溝又はガイドスリットと、他方に設けられたボス又は棒状部材とを含み、前記ボス又は前記棒状部材が前記ガイド溝又は前記ガイドスリットに係合して前記ガイド溝又は前記ガイドスリットに沿って相対移動することで、前記プローブ保持体と前記ガイドとを前記第1及び第2の相対位置の間で相対移動可能であるとよい。
【0014】
ある態様のコネクタ接続用検査治具において、前記ガイドは、前記コネクタに対して位置決めされている状態で下端部側面が前記コネクタの側面に当接し且つ下端を前記基板側との当接部として前記基板に対して立つ脚部を有するとよい。
【0015】
ある態様のコネクタ接続用検査治具において、
前記ガイドは、底面部と、前記底面部の両側から基板とは反対側に立ち上がって相互に対面する第1及び第2の側壁部とを有し、
前記第1及び第2の側壁部が前記底面部左右から立ち上がる一方、前方には側壁部が存在せず、
前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされ且つ前記プローブ保持体と前記ガイドとが前記第2の相対位置にあるときに、前記底面部の前記開口を通して前記コネクタを前方側から目視可能であるとよい。
【0016】
ある態様のコネクタ接続用検査治具において、
前記ガイドは、底面部と、前記底面部にある開口の周縁部から立ち上がる脚部と、前記脚部の立ち上がる位置の両側において前記底面部から前記脚部と反対側に立ち上がって相互に対面する第1及び第2の側壁部とを有し、
前記プローブ保持体は、前記第1及び第2の側壁部の間に位置し且つ前記第1及び第2の側壁部と対向する第1及び第2の対向面を有し、
前記連結手段は、前記第1及び第2の対向面又は前記第1及び第2の側壁部の一方に設けられたガイド溝又はガイドスリットと、他方に設けられたボス又は棒状部材とを含み、前記ボス又は前記棒状部材が前記ガイド溝又は前記ガイドスリットに係合して前記ガイド溝又は前記ガイドスリットに沿って相対移動することで、前記プローブ保持体と前記ガイドとを前記第1及び第2の相対位置の間で相対移動可能であり、
前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされている状態で、前記脚部の先端部側面が前記コネクタの側面に当接し、前記脚部の先端が前記基板に当接するとよい。
【0017】
さらに、前記脚部は、筒形状であって内側面が前記コネクタの側面に当接するとよい。
【0018】
さらに、前記ガイドは前記脚部の下端のみが前記基板側との当接部であるとよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、前記連結手段が前記プローブ保持体と前記ガイドとを前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間で相対移動可能に連結するため、前記ガイドをコネクタに対して位置合わせする際には前記第2の相対位置としておくことで、特許文献2の治具と比較して良好な視認性を確保できる。また、特許文献1の中継コネクタと異なり、基板を挟み込む構成でないため、コネクタが基板の中央部にあっても当該コネクタにプローブを接触可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るコネクタ接続用検査治具の側面図。
【図2】第1の実施の形態における前記コネクタ接続用検査治具の分解斜視図。
【図3】第1の実施の形態における、ガイドを基板上のコネクタに位置決めしたときの前記コネクタ接続用検査治具の側面図。
【図4】第1の実施の形態における、プローブが前記コネクタの真上に来たときの前記コネクタ接続用検査治具の側面図。
【図5】第1の実施の形態における、前記プローブの先端が前記コネクタに接触したときの前記コネクタ接続用検査治具の側面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るコネクタ接続用検査治具の側面図。
【図7】第2の実施の形態における前記コネクタ接続用検査治具の分解斜視図。
【図8】第2の実施の形態における、ガイドを基板上のコネクタに位置決めしたときの前記コネクタ接続用検査治具の側面図。
【図9】第2の実施の形態における、プローブが前記コネクタの真上に来たときの前記コネクタ接続用検査治具の側面図。
【図10】第2の実施の形態における、前記プローブの先端が前記コネクタに接触したときの前記コネクタ接続用検査治具の側面図。
【図11】従来例1の中継コネクタのプローブ非接触時の側面図。
【図12】前記中継コネクタのプローブ接触時の側面図。
【図13】従来例2の中継コネクタのプローブ非接触時の側面図。
【図14】前記中継コネクタのプローブ接触時の側面図。
【図15】検査対象のコネクタの例示的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコネクタ接続用検査治具の側面図である。図2は、前記コネクタ接続用検査治具の分解斜視図である。このコネクタ接続用検査治具は、図1に示す検査対象の基板1上に設けられたコネクタ2にプローブ17を接触させて検査を行うものである(コネクタ2の上面に多数の電極部(図15参照)があり、それにプローブ17を接触させる)。コネクタ接続用検査治具は、プローブ保持体10と、ガイド30と、スプリング90とを備える。
【0024】
例えば絶縁樹脂製のプローブ保持体10は、摺動部材11と、基板上部カバー15と、基板下部カバー18と、ピンブロック19とを備える。摺動部材11は、ここでは左右対称形状である。図2に示すように、摺動部材11は、後述の第1の側壁部35と対面(又は接触)して相互に摺動する第1の摺動部111と、同様に後述する第2の側壁部37と対面(又は接触)して相互に摺動する第2の摺動部112とを有する。第1及び第2の摺動部111,112は、間に空間113を有するように相互に一体となっている。空間113は、後述のように、スプリング90の可動空間を成す。
【0025】
第1の摺動部111の右側面(第1の側壁部35との対向面)には、相互に同形状のガイド溝11a,11bが形成されている。ガイド溝11bは、ガイド溝11aを第1の摺動部111の右側面上で平行移動した位置関係である。第2の摺動部112の左側面(第2の側壁部37との対向面)にも同様に、相互に平行なガイド溝(図には現れないが、ガイド溝11a,11bと同形状)が形成されている。これらのガイド溝は、後述のボス35a,35b,37a,37bとともに、プローブ保持体10及びガイド30の連結手段を成す。
【0026】
第1の摺動部111は、貫通孔115を有する。第2の摺動部112も同様に、貫通孔(図には現れず)を有する。これら貫通孔に、例えばアルミ等の金属製の棒状部材119の両端が挿通されて(両端は突出しない)、空間113を通して第1及び第2の摺動部111,112の間を渡す。棒状部材119には、スプリング90の一端が取り付けられる(引っ掛けられる)。
【0027】
基板上部カバー15は、摺動部材11の底面にネジ止め等で固定される。配線用基板13は、基板上部カバー15にネジ止め等で固定される。配線用基板13の上面は、基板上部カバー15で覆われる。配線用基板13には、プローブ17と不図示の検査機とを接続する配線パターンが形成されている。基板下部カバー18は、配線用基板13の下面の一部を覆う位置で、すなわち自身と基板上部カバー15とで配線用基板13を挟み込む位置で、基板上部カバー15にネジ止め等で固定される。
【0028】
ピンブロック19は、自身と基板上部カバー15とで配線用基板13を挟み込む位置で、基板上部カバー15にネジ止め等で固定される。なお、ピンブロック19は、基板下部カバー18と一体であってもよいし、別体であってもよい。ピンブロック19の貫通孔161に、所定本数のプローブ17がそれぞれ挿通保持され、各プローブ17の先端部が貫通孔161から所定長に渡って下方に突出する。なお、各プローブ17は、例えばスプリング(図示せず)を内蔵し、先端部が貫通孔161の内部に引っ込む方向に収縮可能で、かつ先端部が貫通孔161から所定長だけ突出した状態に付勢されているとよい。
【0029】
図2に示すように、例えば絶縁樹脂製で好ましくは無色透明のガイド30は、底面部31と、第1及び第2の側壁部35,37とを備える。平板状の底面部31は、中央部に開口32を有する。開口32の縁部から、筒状の脚部33が立ち上がる(下方に突出する)。開口32及び脚部33の内径は、ピンブロック19の凸部192の断面と等しい又は僅かに大きく、ピンブロック19の凸部192をがたつきなくガイド可能である。図1に示すように、脚部33の下端は内側に折り曲がった折曲げ部331であり、脚部33の下端側開口332がコネクタ2に対応した大きさとなっている。図1に拡大して示すように、下端側開口332は、先端から所定長に渡って開口径が徐々に小さくなるテーパー部333と、テーパー部333から上方に延びる開口径が一定の当接部334とからなる。テーパー部333は、コネクタ2に対する脚部33の位置決め(ガイド30の位置決め)を容易にする。検査時には、当接部334の内側面がコネクタ2の側面と当接する。
【0030】
第1及び第2の側壁部35,37は、脚部33の立ち上がる位置の両側において底面部31から脚部33と反対側に(上方に)立ち上がり、相互に平行に対面する。例えばアルミ等の金属製の棒状部材38は、第1及び第2の側壁部35,37の段付き貫通孔352,372に両端がそれぞれ差し込まれ、第1及び第2の側壁部35,37の間を渡す。棒状部材38には、スプリング90の他端が取り付けられる(引っ掛けられる)。
【0031】
図2に示すように、底面部31と脚部33は一体である一方、底面部31並びに第1及び第2の側壁部35,37は別体である。底面部31の両側縁部にある凹部311,312に第1及び第2の側壁部35,37の下端部中央の凸部351,371が嵌合した状態で、底面部31並びに第1及び第2の側壁部35,37がネジ313,314によって相互に固定される。また、棒状部材38の両端部は雌ネジ穴となっており、その雌ネジ穴にネジ381,382が螺着することで棒状部材38が第1及び第2の側壁部35,37に固定される。なお、生産性の観点から、第1及び第2の側壁部35,37は相互に同一形状であるとよい。
【0032】
プローブ保持体10及びガイド30の連結について説明する。前述のガイド溝11a,11bと共に連結手段を成すボス35a,35bは、第1の側壁部35の穴部353,354に嵌入される。同様に、連結手段を成すボス37a,37bは、第2の側壁部37の穴部373,374に嵌入される。ボス35a,35bは、第1の側壁部35からの突出部分がプローブ保持体10の摺動部材11の右側面のガイド溝11a,11bと係合し、ガイド溝11a,11bに沿って相対的に摺動可能である。同様に、ボス37a,37bは、摺動部材11の左側面のガイド溝(不図示)と係合し、当該ガイド溝に沿って相対的に摺動可能である。したがって、プローブ保持体10及びガイド30は相対的に摺動可能である。摺動可能範囲は、前記ガイド溝の形状によって定まる(規制される)。
【0033】
図1に示すように、ガイド溝11a,11bは、プローブ17の長さ方向と平行且つ直線的にボス35a,35bをガイドする第1のガイド溝部121a,121bと、第1のガイド溝部121a,121bの下端部から所定の角度を成して斜め下方にボス35a,35bをガイドする第2のガイド溝部122a,122bとを有する。なお、第1のガイド溝部121a,121bと第2のガイド溝部122a,122bとの接続箇所は、角張らないようにR面となっている。
【0034】
棒状部材38,119間を連結するスプリング90により、ガイド30に対してプローブ保持体10は引っ張られて、ガイド30は図1(及び図3)に示す相対位置(本発明の第2の相対位置に対応)に付勢される。検査の際には、スプリング90による付勢に抗して検査員がプローブ保持体10を押下げ操作することにより、プローブ保持体10及びガイド30を、図1(及び図3)に示す相対位置から図4に示す相対位置(本発明の第3の相対位置に対応)及び図5に示す相対位置(本発明の第1の相対位置に対応)に相対移動可能である。
【0035】
以下、本実施の形態のコネクタ接続用検査治具を用いた検査の流れを説明する。
【0036】
1.位置合わせ工程
検査員は、コネクタ接続用検査治具を図3に示すようにセットする。すなわち、ガイド30の脚部33と基板1上のコネクタ2とを係合させる。具体的には、筒状の脚部33の下端側開口332の内側にコネクタ2が入るように、脚部33の下端を基板1に当接させる。すると、図3に拡大して示すように、下端側開口332の当接部334の内側面がコネクタ2の側面に当接する。
【0037】
このとき、スプリング90の付勢力により、プローブ保持体10及びガイド30は、第2の相対位置にある。この第2の相対位置では、プローブ17は、基板1と垂直でコネクタ2を通過する仮想線5と平行で、かつ仮想線5から離間している。また、プローブ保持体10及び配線用基板13も仮想線5から離間している。さらに、ガイド30は、第1及び第2の側壁部35,37以外に底面部31から上方に立ち上がるものがない。したがって、検査員の視線(図3に矢印Xで示す)は位置合わせ工程の実行中に底面部31の開口32を通してコネクタ2を目視可能であるため、位置合わせの作業性が良好である。
【0038】
2.プローブ接触工程
検査員は、スプリング90による付勢に抗してプローブ保持体10を押下げ操作し、プローブ保持体10及びガイド30を図3に示す第2の相対位置から図4に示す第3の相対位置に相対移動する。すなわち、ボス35a,35bを第2のガイド溝部122a,122bに沿って相対移動する(ボス37a,37bも同時かつ同様に相対移動する)。この第3の相対位置では、プローブ17は、仮想線5と平行で且つコネクタ2の真上にあり、プローブ17の仮想延長線上にコネクタ2が位置する。また、第2の相対位置と比較して、プローブ17の先端は基板1に近づいている。なお、第2の相対位置から第3の相対位置に相対移動する際、プローブ17の先端と基板1との距離は単調に減少する。すなわち、第2の相対位置から第3の相対位置に相対移動する過程で、プローブ17は斜め下方向に直線的に移動するため、プローブ17の先端と基板1との距離は増加することなく減少する。
【0039】
検査員は、スプリング90による付勢に抗してプローブ保持体10をさらに押下げ操作し、プローブ保持体10及びガイド30を、図4に示す第3の相対位置から図5に示す第1の相対位置に直線的に相対移動する。すなわち、ボス35a,35bを第1のガイド溝部121a,121bに沿って直線的に相対移動する(ボス37a,37bも同時かつ同様に相対移動する)。ここでの相対移動方向は、仮想線5及びプローブ17と平行である。
【0040】
この第1の相対位置では、ピンブロック19は、凸部192がガイド30の脚部33の内側に入り込み(脚部33にガイドされ)、プローブ17は、仮想線5と平行で且つ先端がコネクタ2に接触する。そして、コネクタ2を有する電子部品等の検査対象の検査が実行される。すなわち、コネクタ2からの信号をプローブ17で受け取り、配線基板13を介して不図示の検査機へ伝達する。もしくは、不図示の検査機から送られた信号が、配線基板13を介し、プローブ17からコネクタ2へと伝達される。なお、図3に示す第2の相対位置から図5に示す第1の相対位置への相対移動は、通常は図4に示す第3の相対位置で一旦停止することなく連続的に実行される。また、検査が終了してコネクタ接続用検査治具を基板1から離せば、スプリング90の付勢力によりプローブ保持体10及びガイド30は図1に示す第2の相対位置に戻る。
【0041】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0042】
(1) プローブ保持体10及びガイド30を上記のとおり連結する構成のため、位置合わせ工程の実行中は、基板1と垂直でコネクタ2を通過する仮想線5(換言すればコネクタ2の真上)からプローブ17、プローブ保持体10及び配線用基板13が離間した状態(図1及び図3に示す第2の相対位置)とすることが可能である。また、底面部31の開口32の前後には側壁部が存在しない。したがって、位置合わせ工程に際して検査員はコネクタ2を開口32を通して前方斜め上から目視可能であり、特許文献2のように位置合わせ時にガイドプレートやプローブ及びその保持体がコネクタ及びその周辺を覆い隠す構成と比較して、位置合わせ工程の作業性が良好でミスも少ない。
【0043】
(2) スプリング90の付勢力により、位置合わせ工程の際に検査員は意識しなくてもプローブ保持体10及びガイド30を図1及び図3に示す第2の相対位置に維持することができる。このため、位置合わせ工程におけるコネクタ2の良好な視認性を容易に確保可能である。また、検査終了後は、スプリング90の付勢力により図5に示す第1の相対位置から図1及び図3に示す第2の相対位置に自然に復帰するため、次の検査への移行がスムーズである。
【0044】
(3) 図4に示す第3の相対位置から図5に示す第1の相対位置への移動は、仮想線5及びプローブ17と平行で直線的である。したがって、プローブ17をコネクタ2に垂直に押し当てることができ、横方向(プローブ17と垂直な方向)の応力が発生しない。したがって、プローブ17が折れるのを防止でき、また接触の確実性も高い。
【0045】
(4) 底面部31が無色透明なため、開口32を通してだけでなく、底面部31を透過してコネクタ2を目視可能となり、位置合わせの作業性が一層良好となる。
【0046】
(5) 基板1を挟み込まずにプローブ17をコネクタ2に押し当てる構造のため、特許文献1の構成と異なり、コネクタ2が基板1の中央部にあっても不都合なく検査を実行可能である。
【0047】
(6) 脚部33の下端のみが基板1との当接部であるため、基板1上のコネクタ2の周囲に別の部品が存在しても、支障なく検査を実行可能である。
【0048】
(7) ガイド溝11a,11bが上記の形状のため、図3に示す第2の相対位置から図4に示す第3の相対位置に相対移動する過程で、プローブ17の先端と基板1との距離が単調に減少する(つまり増加することなく減少する)。すなわち、図3に示す第2の相対位置から図4に示す第3の相対位置を経由して図3に示す第1の相対位置まで相対移動させる場合に、検査員はプローブ保持体10に上方向の力を加える必要がない。したがって、図4に示す第3の相対位置で一旦停止することなく図3に示す第2の相対位置から図3に示す第1の相対位置までスムーズに相対移動させることが容易で、作業性が良い。
【0049】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るコネクタ接続用検査治具の側面図である。図7は、前記コネクタ接続用検査治具の分解斜視図である。第1の実施の形態では各相対位置間でプローブ17は平行移動させたが、本実施の形態ではプローブ17を平行移動に加えて回転させる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0050】
摺動部材11(ここでは左右対称形状)の右側面に形成されたガイドスリット110は、プローブ17と平行な直線状の第1のガイドスリット部121と、円弧状等の曲線状の第2のガイドスリット部122とからなる。摺動部材11の左側面にも同形状のガイドスリット(不図示)が形成され、両方のガイドスリットを棒状部材38が渡す。そして、棒状部材38は、両方のガイドスリットを通るとともに両端が第1及び第2の側壁部35,37の段付き貫通孔352,372にそれぞれ差し込まれ、両端の雌ネジ穴にネジ381,382が螺着することで第1及び第2の側壁部35,37に固定される。
【0051】
ボス35aは、第1の側壁部35の穴部353に嵌入される。ボス37aは、第2の側壁部37の穴部373に嵌入される。ボス35aは、第1の側壁部35からの突出部分がプローブ保持体10の摺動部材11の右側面のガイド溝11a(プローブ17と平行な直線状)と係合し、ガイド溝11aに沿って相対的に摺動可能である。ボス37aは、摺動部材11の左側面のガイド溝(不図示。ガイド溝11aと同形状)と係合し、当該ガイド溝に沿って相対的に摺動可能である。
【0052】
スプリング90は、一端が摺動部材11の引っ掛け部118に取り付けられ(引っ掛けられ)、他端は棒状部材38に取り付けられる(引っ掛けられる)。スプリング90は、プローブ保持体10及びガイド30を図6(及び図8)に示す相対位置(本発明の第2の相対位置に対応)に付勢する。検査の際には、スプリング90による付勢に抗して検査員がプローブ保持体10を回転及び押下げ操作することにより、プローブ保持体10及びガイド30を、図6(及び図8)に示す相対位置から図9に示す相対位置(本発明の第3の相対位置に対応)及び図10に示す相対位置(本発明の第1の相対位置に対応)に相対移動可能である。
【0053】
以下、本実施の形態のコネクタ接続用検査治具を用いた検査の流れを説明する。
【0054】
検査員は、コネクタ接続用検査治具を図8に示すようにセットする。すなわち、ガイド30の脚部33と基板1上のコネクタ2とを係合させる。このとき、スプリング90の付勢力により、プローブ保持体10及びガイド30は、第2の相対位置にある。この第2の相対位置では、プローブ17は、基板1と垂直でコネクタ2を通過する仮想線5と垂直で、かつ先端が仮想線5から離間している。また、プローブ保持体10及び配線用基板13も仮想線5から離間している。さらに、ガイド30は、第1及び第2の側壁部35,37以外に底面部31から上方に立ち上がるものがない。したがって、検査員の視線(図8に矢印Xで示す)は底面部31の開口32を通してコネクタ2を目視可能であるため、位置合わせの作業性が良好である。なお、摺動部材11の空間113を通し、かつ底面部31の開口32を通してコネクタ2を見ることも可能である。
【0055】
検査員は、スプリング90による付勢に抗してプローブ保持体10を、ボス35a,37aを軸にガイド30に対して回転させ、これによりプローブ保持体10及びガイド30を図8に示す第2の相対位置から図9に示す第3の相対位置に相対移動する。すなわち、棒状部材38を第2のガイドスリット部122に沿って相対移動する。この第3の相対位置では、プローブ17は、仮想線5と平行で且つコネクタ2の真上にあり、プローブ17の仮想延長線上にコネクタ2が位置する。また、第2の相対位置と比較して、プローブ17の先端は基板1に近づいている。
【0056】
検査員は、スプリング90による付勢に抗してプローブ保持体10を押下げ操作し、プローブ保持体10及びガイド30を、図9に示す第3の相対位置から図10に示す第1の相対位置に直線的に相対移動する。すなわち、棒状部材38を第1のガイドスリット部121に沿って直線的に相対移動する。同時にボス35aもガイド溝11aに沿って直線的に相対移動する(ボス37aも同時かつ同様に相対移動する)。ここでの相対移動方向は、仮想線5及びプローブ17と平行である。
【0057】
この第1の相対位置では、ピンブロック19は、凸部192がガイド30の脚部33の内側に入り込み(脚部33にガイドされ)、プローブ17は、仮想線5と平行で且つ先端がコネクタ2に接触する。そして、コネクタ2を有する検査対象の検査が実行される。なお、検査が終了してコネクタ接続用検査治具を基板1から離せば、スプリング90の付勢力によりプローブ保持体10及びガイド30は図6に示す第2の相対位置に戻る。
【0058】
本実施の形態によれば、操作性は若干複雑になるものの、その他の点では第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0060】
実施の形態におけるガイド溝11a等は、ガイドスリットとしてもよい。この場合、係合するボスの抜止めのために、ガイドスリットを段付きスリットにする等の工夫をするとよい。あるいは、左右のガイドスリットを渡す棒状部材をボスの替わりに設けてもよい。
【0061】
実施の形態とは逆に、ガイド溝11a等をガイド30側(第1及び第2の側壁部35,37)に設け、ボス35a等をプローブ保持体10側(摺動部材11)に設けてもよい。この場合も、同様の相対移動を実現可能である。
【0062】
操作性は低下するものの、コストその他の要因のためにスプリング90を設けないことも考えられる。
【0063】
脚部33は、筒状である場合に限られない。ピンブロック19の各側面をガイドし且つコネクタ2の各側面と当接する脚部が別々に(例えば4つ)底面部31から立ち上がってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 プローブ保持体
11 摺動部
11a,11b ガイド溝
13 配線用基板
15 基板上部カバー
17 プローブ
18 基板下部カバー
19 ピンブロック
30 ガイド
31 底面部
32 開口
33 脚部
35 第1の側壁部
35a,35b ボス
37 第2の側壁部
37a,37b ボス
90 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のコネクタにプローブを接触させるコネクタ接続用検査治具であって、
プローブを保持するプローブ保持体と、前記プローブを基板上のコネクタと接触するように案内するガイドと、前記プローブ保持体と前記ガイドとを相互に相対移動可能に連結する連結手段とを備え、
前記ガイドは、前記コネクタと係合することで自身の前記コネクタに対する位置決めが可能であり、
前記連結手段は、前記プローブ保持体と前記ガイドとを、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされたときに前記プローブの先端が前記コネクタに接触する第1の相対位置と、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされたときに、前記プローブの先端が前記基板から離間すると共に前記基板と垂直で前記コネクタを通過する仮想線から離間した第2の相対位置との間で相対移動可能に連結する、コネクタ接続用検査治具。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ接続用検査治具において、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされ且つ前記プローブ保持体と前記ガイドとが少なくとも前記第2の相対位置にあるときに、前記コネクタを目視可能である、コネクタ接続用検査治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタ接続用検査治具において、前記連結手段は、前記第1の相対位置と、前記第1及び第2の相対位置の間であって、前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされたときに、前記第1の相対位置を基準として前記プローブの先端が前記仮想線と平行に前記基板から離間した第3の相対位置との間で前記プローブ保持体と前記ガイドとを直線的に相対移動可能に連結する、コネクタ接続用検査治具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のコネクタ接続用検査治具において、前記ガイドは、前記コネクタに対して位置決めされている状態で下端部側面が前記コネクタの側面に当接し且つ下端を前記基板側との当接部として前記基板に対して立つ脚部を有する、コネクタ接続用検査治具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のコネクタ接続用検査治具において、
前記ガイドは、底面部と、前記底面部の両側から基板とは反対側に立ち上がって相互に対面する第1及び第2の側壁部とを有し、
前記第1及び第2の側壁部が前記底面部左右から立ち上がる一方、前方には側壁部が存在せず、
前記ガイドが前記コネクタに対して位置決めされ且つ前記プローブ保持体と前記ガイドとが前記第2の相対位置にあるときに、前記底面部の前記開口を通して前記コネクタを前方側から目視可能である、コネクタ接続用検査治具。

【図2】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−59427(P2012−59427A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199503(P2010−199503)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】