説明

コネクタ構造

【課題】異物の侵入や浸水を防止して信頼性の向上を図ることができるコネクタ構造を提供する。
【解決手段】嵌合口12を車室内に露呈させることなくフロア30の収納部31aに配置されたフロアコネクタ10は、シート40のフロア30への組み付けに伴い回動して嵌合口12を車室内に露呈させ、相手側コネクタ42と接続する。フロアコネクタ10には弾性部材17が係合しており、弾性部材17は嵌合口12を車室内に露呈させる回動方向とは反対方向にフロアコネクタ10を付勢している。相手側コネクタ42と接続した後にシート40がスライド移動されると、フロアコネクタ10はシート40と共に移動し、それに伴い、フロアコネクタ10と弾性部材17との係合が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアに設けられたフロアコネクタと、当該フロアに着脱可能に組付けられるシートやコンソールボックス等の組付体に設けられた相手側コネクタと、の接続にかかるコネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に、例えば携帯型オーディオ機器などの家庭用の電気機器が持ち込まれて車室内でも使用されており、これらの電気機器は、コンソールボックスやシートの脇などに置かれることがある。そこで、コンソールボックスやシートにコンセントがあると、これらの電気機器への給電に便利である。
【0003】
ところで、例えばコンソールボックスは、必要に応じてフロントシートとリアシートとの間のウォークスルーを可能とするべく、車両のフロアに着脱可能に且つスライド移動可能に設置される傾向にある。また、シートについても、シートアレンジの自由度を高めるべく、車両のフロアに着脱可能に且つスライド移動可能に設置される傾向にある。
【0004】
着脱式のコンソールボックスやシートにコンセントを設ける場合に、その取り付けに伴ってコンソールボックスやシート内の電気系統がフロア側の電気系統に接続されるように構成される。このような接続構造の一例として、図9に示すものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
図9には、シート100がフロア101に着脱可能に設置される構成が示されている。シート100の前端下部にシートコネクタ102が設けられており、これに対応する位置にフロアコネクタ103がシートコネクタ102との嵌合口を車室内に露呈させて設けられている。シート100の着脱に伴って、両コネクタ102,103が接続・分離されるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特表2004−524206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1では、シート100がフロア101から取り外されている際に、フロアコネクタ103が嵌合口を車室内に露呈させているために、接続には便利であるが、フロアコネクタ103への異物の侵入や浸水などの虞があり、接続の信頼性が低下する。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異物の侵入や浸水を防止して信頼性の向上を図ることができるコネクタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、本発明に係る下記(1)のコネクタ構造により達成される。
【0010】
(1)車両のフロアに設けられたフロアコネクタと、当該フロアに着脱可能に且つスライド移動可能に組み付けられる組付体に設けられた相手側コネクタと、を備え、
前記組付体の前記フロアへの組み付けに伴って、前記フロアコネクタと前記相手側コネクタとが自動的に接続されるコネクタ構造であって、
前記フロアコネクタが、前記フロアに凹設された収納部に前記相手側コネクタとの嵌合口を車室内に露呈させることなく配置され、前記嵌合口を車室内に露呈させるように回動可能に且つ前記組付体の移動方向にスライド移動可能に前記フロアに支持されており、前記組付体の前記フロアへの組み付けに伴って前記嵌合口を車室内に露呈させるよう回動して前記相手側コネクタと嵌合し、前記相手側コネクタと嵌合した後は前記組付体と共にスライド移動され、
前記フロアコネクタに係合して前記嵌合口を露呈させる方向とは反対方向に回動するように当該フロアコネクタを付勢する弾性部材をさらに備え、
前記弾性部材が、前記収納部にある前記フロアコネクタに係合すると共に、前記フロアコネクタが収納部から移動されるのに伴って前記フロアコネクタとの係合を解除されることを特徴とするコネクタ構造。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、組付体のフロアへの組み付け以前に、フロアコネクタは嵌合口を車室内に露呈させることなく収納部に配置されているので、フロアコネクタへの異物の侵入や浸水を防止することができる。そして、収納部にあるフロアコネクタには弾性部材が係合しており、この弾性部材が嵌合口を露呈させる方向とは反対方向にフロアコネクタを付勢していることにより、意図しないフロアコネクタの回動を防止して、組付体のフロアへの組み付け以前にフロアコネクタの嵌合口が車室内に露呈する不測の事態を回避することができる。そして、組付体がフロアへ組み付けられてフロアコネクタと相手側コネクタとが嵌合した後に組付体がスライド移動されてフロアコネクタが収納部から移動された際に、フロアコネクタとの係合から弾性部材を解除することにより、弾性部材への負荷を軽減して弾性部材の劣化を防止することができる。それにより、組付体の繰り返しの脱着に対しての信頼性を向上させることができ、また、弾性部材に用いられる材料の選定の自由度を向上させ、例えば環境対応の材料を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0013】
図1は本発明のコネクタ構造の一実施形態であって、組付体であるシートの組み付け前の状態を示す側面図、図2は図1のコネクタ構造のシート組み付け後の状態を示す側面図、図3は図1のコネクタ構造のフロアコネクタ及び相手側コネクタの斜視図、図4〜図8は図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明するための側面図である。なお、以下の説明において、前、後、左、右は、車体の方向に準じて記載するものとし、図1中の左方が車体の前方である。
【0014】
図1、図2に示すように、本発明の一実施形態のコネクタ構造は、車両のフロア30に設けられたフロアコネクタ10と、フロア30に着脱可能に且つスライド移動可能に組み付けられるシート40に設けられた相手側コネクタ42と、を備え、シート40のフロア30への組み付けに伴って、フロアコネクタ10と相手側コネクタ42とが自動的に接続されるコネクタ構造である。
【0015】
フロアコネクタ10はフロア30にシート40のスライド移動方向に沿って凹設されている収納溝31の前端部である収納部31aに収納されている。そして、フロアコネクタ10は、シート40がフロア30の所定位置に組み付けられるのに伴って、収納部31a内において回動され、シート40に設けられている相手側コネクタ42に嵌合する。そして、シート40がフロア30上を前後にスライド移動するのに伴って、相手側コネクタ42に嵌合したままシート40と共に移動する。
【0016】
図3に示すように、フロアコネクタ10は、平面視T字形状のハウジング11を有している。ハウジング11の前端部には嵌合口12が形成されていて、ハウジング11内に不図示の雌型の端子金具が収納されている。
【0017】
また、フロアコネクタ10は、ハウジング11の中央部に、凹形状に形成された弾性部材収納部13を有している。弾性部材収納部13は、中央部に湾曲形状部(図4参照)14が形成されているとともに、下端部寄りに弾性部材係止面(図4参照)15が形成されている。また、フロアコネクタ10は、ハウジング11の後部側に、回動軸16が左右方向に突出形成されている。
【0018】
相手側コネクタ42は、シート40がフロア30の所定位置に組み付けられた際にフロア30の収納部31a上に配置されるシート40の前端部の底面に取り付けられている。ハウジング43には雄型の端子金具44が下方に向けて突出配置されている。
【0019】
相手側コネクタ42は、端子金具44よりもさらに下方に向けて突出した押圧部45を有している。尚、押圧部45は、相手側コネクタ42に代えて、シート40の下面に相手側コネクタ42とは別体に設けられても良い。
【0020】
図4に示すように、収納部31aに配置されたフロアコネクタ10は、弾性部材収納部13内に弾性部材17を収納している。弾性部材17は、コイルばねであって、一端部18がフロア30の収納部31aの前部に固定されているとともに、巻回部20を介して他端部19が下方に向けて延出されており、巻回部20は弾性部材収納部13の湾曲形状部14に接触し、他端部を19が弾性部材係止面15に接触している。また、フロアコネクタ10は、収納溝31の側部に形成されてシート40のスライド移動方向に延在しているスライド溝32に回動軸16を係入させている。回動軸16は、スライド溝32内で回動可能に且つスライド移動可能に支持されている。
【0021】
図4に示すシート組み付け前において、弾性部材収納部13の弾性部材係止面15に弾性部材17の他端部19が係止されているために、フロアコネクタ10は図4中の反時計まわりに付勢されていて、嵌合口12を車室内に露呈させることなく収納部31aを閉塞している。よって、嵌合口12を通してフロアコネクタ10内への異物の侵入や浸水が防止されている。
【0022】
そして、シート40は、後方側の2本の足41がフロア30上の所定位置に載置されるとともに前方側の2本の足41がフロア30から離れて配置され、その後に後方側の2本の足41を支点に傾動されて前方側の2本の足41がフロア30に向けて降下するようにして、フロア30に組み付けられる。この過程で押圧部45がフロアコネクタ10に上方から接近する。
【0023】
図5に示すように、シート40の傾動が進行することで、押圧部45がフロアコネクタ10の後端部に当接し、後端部を押圧する。押圧部45によって押圧されたフロアコネクタ10は、弾性部材17の付勢力に抗し、回動軸16を中心にして嵌合口12を上方に向けるように図5中の時計回転方向に回動を始める。
【0024】
図6に示すように、シート40の傾動がさらに進行することで、フロアコネクタ10は、弾性部材17の付勢力に抗して、図6中の時計回転方向へさらに回動を続けるために、嵌合口12が上方を向けた状態に配置され、その状態で押圧部45により保持される。
【0025】
図7に示すように、シート40の傾動がさらに進行することで、シート40の前方側の2本の足41もフロア30上の所定位置に載置されてシート40がフロア30に組み付けられると共に、上方に向けて配置されているフロアコネクタ10の嵌合口12に相手側コネクタ42の端子金具44が進入してフロアコネクタ10の端子金具と接続し、両コネクタ10,42が接続される。
【0026】
図8に示すように、シート40がフロア30上を後方に向けてスライド移動されると、フロアコネクタ10は、回動軸16をスライド溝32内でスライド移動させ、相手側コネクタ42に嵌合さしたままシート40と共に移動する。このとき、一端部18が収納部31aに固定されている弾性部材17は、弾性部材収納部13から離脱して収納部31a内に残留する。
【0027】
シート40がフロア30から取り外される際には、シート40が最前端までスライド移動される。このとき、弾性部材17が、再びフロアコネクタ10の弾性部材収納部13内に収納され、フロアコネクタ10に係合する。弾性部材17が係合したフロアコネクタ10は、シート40と共に相手側コネクタ42が取り外されるのに伴って、図4中の反時計回まわりに付勢されて同方向に回動し、嵌合口12を収納部31a内に納めて収納部31aを閉塞する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のコネクタ構造によれば、シート40のフロア30への組み付け以前に、フロアコネクタ10は嵌合口12を車室内に露呈させることなく収納部31aに配置されているので、フロアコネクタ10への異物の侵入や浸水を防止することができる。そして、収納部31aにあるフロアコネクタ10には弾性部材17が係合しており、この弾性部材17が嵌合口12を露呈させる方向とは反対方向にフロアコネクタ10を付勢していることにより、意図しないフロアコネクタ10の回動を防止して、シート40のフロア30への組み付け以前にフロアコネクタ10の嵌合口12が車室内に露呈する不測の事態を回避することができる。そして、シート40がフロア30へ組み付けられてフロアコネクタ10と相手側コネクタ42とが嵌合した後にシート40がスライド移動されてフロアコネクタ10が収納部31aから移動された際に、フロアコネクタ10との係合から弾性部材17を解除することにより、弾性部材17への負荷を軽減して弾性部材17の劣化を防止することができる。それにより、シート40の繰り返しの脱着に対しての信頼性を向上させることができ、また、弾性部材17に用いられる材料の選定の自由度を向上させ、例えば環境対応の材料を用いることができる。
【0029】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のコネクタ構造の一実施形態であって、組付体であるシートの組み付け前の状態を示す側面図である。
【図2】図1のコネクタ構造のシート組み付け後の状態を示す側面図である。
【図3】図1のコネクタ構造のフロアコネクタ及び相手側コネクタの斜視図である。
【図4】図1の待ち受けコネクタのシート装置取り付けに伴う動作の第1段階の要部左側面図である。
【図5】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明するための側面図である。
【図6】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明するための側面図である。
【図7】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明するための側面図である。
【図8】図1のコネクタ構造のシートの組み付けに伴う各部の動作を説明するための側面図である。
【図9】従来のコネクタ構造の概略図である。
【符号の説明】
【0031】
10 フロアコネクタ
12 嵌合口
17 弾性部材
30 フロア
31a 収納部
40 シート
42 相手側コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアに設けられたフロアコネクタと、当該フロアに着脱可能に且つスライド移動可能に組み付けられる組付体に設けられた相手側コネクタと、を備え、
前記組付体の前記フロアへの組み付けに伴って、前記フロアコネクタと前記相手側コネクタとが自動的に接続されるコネクタ構造であって、
前記フロアコネクタが、前記フロアに凹設された収納部に前記相手側コネクタとの嵌合口を車室内に露呈させることなく配置され、前記嵌合口を車室内に露呈させるように回動可能に且つ前記組付体の移動方向にスライド移動可能に前記フロアに支持されており、前記組付体の前記フロアへの組み付けに伴って前記嵌合口を車室内に露呈させるよう回動して前記相手側コネクタと嵌合し、前記相手側コネクタと嵌合した後は前記組付体と共にスライド移動され、
前記フロアコネクタに係合して前記嵌合口を露呈させる方向とは反対方向に回動するように当該フロアコネクタを付勢する弾性部材をさらに備え、
前記弾性部材が、前記収納部にある前記フロアコネクタに係合すると共に、前記フロアコネクタが収納部から移動されるのに伴って前記フロアコネクタとの係合を解除されることを特徴とするコネクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−192516(P2008−192516A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27176(P2007−27176)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】