説明

コネクタ

【課題】ハウジングのキャビティ内に充填材を支障なく充填できるようにする。
【解決手段】コネクタ10は、電線90の端末に接続された端子金具20と、端子金具20を挿入可能なキャビティ35を有するハウジング30とを備える。ハウジング30の後面からは電線90が引き出され、キャビティ35内には充填材が流入充填される。ハウジング30には、電線90の周りを取り囲みつつキャビティ35の後端開口を閉止する閉止部材40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、電線の端末に接続される端子金具と、端子金具を挿入可能なキャビティを有するハウジングとを備えている。ハウジングの後面からは電線が引き出されている。そして、ハウジングのキャビティ内には前方からグリス等の充填材が流入充填され、これによりコネクタ内が液密にシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−100997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した充填材は、キャビティ内に挿入された端子金具や端子金具を抜け止めするランスの間をぬってハウジングの後端側へと流れる。この場合、キャビティ内には充填材の流れ易い部分と流れ難い部分とがあるため、キャビティ内に充填材が均等に行き渡らない段階で、ハウジングの後端から充填材が溢れ出ることがある。その結果、溢れ出た充填材を拭き取る作業が必要となり、また拭き残した充填材が周辺部品等に付着するおそれもある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジングのキャビティ内に充填材を支障なく充填できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、電線の端末に接続された端子金具と、前記端子金具を挿入可能なキャビティを有するハウジングとを備え、前記ハウジングの後面から前記電線が引き出され、前記キャビティ内には充填材が流入充填されるコネクタであって、前記ハウジングには、前記電線の周りを取り囲みつつ前記キャビティの後端開口を閉止する閉止部材が設けられているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記閉止部材が、相互の対向縁を向き合わせてなる2つの半割体を有し、前記両半割体の相互の対向縁には、前記向き合わせた状態で前記電線が挿通される略半円孤状の受け溝が形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記両半割体が可撓性のヒンジを介して前記ハウジングに一体に連結されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記両半割体が前記ハウジングとは別体に形成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記閉止部材には、前記キャビティ内に挿入された前記端子金具を後方から係止することにより、前記端子金具の前記キャビティからの抜けを規制するリテーナ部が一体に形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
閉止部材が電線の周りを取り囲みつつキャビティの後端開口を閉止するため、充填材がキャビティの後端開口から溢れ出るのが防止される。その結果、キャビティ内に充填材がほぼ均等に行き渡る。また、充填材を拭き取る作業も実質的に不要となる。したがって本発明によれば、ハウジングのキャビティ内に充填材を支障なく充填できる。
【0012】
<請求項2の発明>
両半割体の相互の対向縁には向き合わせた状態で電線が挿入される略半円孤状の受け溝が形成されているため、閉止部材が電線と干渉するのが回避される。
【0013】
<請求項3の発明>
両半割体が可撓性のヒンジを介してハウジングに一体に連結されているため、部品点数が増加するのが防止される。
【0014】
<請求項4の発明>
両半割体がハウジングとは別体に形成されているため、既存のハウジングに適用可能となる。
【0015】
<請求項5の発明>
閉止部材には端子金具のキャビティからの抜けを規制するリテーナ部が一体に形成されているため、リテーナ部が別に形成される場合に比べ、部品点数が増加するのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタの断面図である。
【図2】コネクタの分解断面図である。
【図3】閉止部材が開状態にあるハウジングの背面図である。
【図4】ハウジングの断面図である。
【図5】コネクタの平面図である。
【図6】実施形態2に係るコネクタの断面図である。
【図7】コネクタの背面図である。
【図8】上側の半割体の正面図である。
【図9】下側の半割体の正面図である。
【図10】コネクタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。実施形態1に係るコネクタ10は、端子金具20と、端子金具20を収容可能なハウジング30とを備えている。ハウジング30は図示しない相手ハウジングに嵌合可能とされている。なお、以下の説明において前後方向については、相手ハウジングに対する嵌合面側を前方とする。
【0018】
ハウジング30は、ほぼ扁平な角ブロック状のハウジング本体31を有している。ハウジング本体31の上面には、図3に示すように、凹部32が前後方向の全長に亘って形成され、凹部32の底面には、ロックアーム33が突出して形成されている。ロックアーム33は、凹部32内に収容されつつ前後方向に延出する形態とされ、その後端部に、操作部34が一段高く形成されている。ハウジング30が相手ハウジングに嵌合されると、ロックアーム33が相手ハウジングに弾性的に係止され、これによって両ハウジングが嵌合状態に保持される。また、操作部34が押圧されると、ロックアーム33の係止状態が解除され、両ハウジングを互いに引き離すことが可能とされている。
【0019】
ハウジング本体31内には、複数のキャビティ35が形成されている。各キャビティ35は、ハウジング本体31内において凹部32を挟んだ両側では上下2段で配置され、凹部32の下方では1段で配置されている。後述するように、各キャビティ35内には、前方からグリス等の充填材が注入されて充填される。各キャビティ35の内壁には、図2に示すように、ランス36が前方へ突出して形成されている。凹部32を挟んだ両側の各ランス36は、上下のキャビティ35間を仕切る隔壁38において背合わせ状に配置されている。
【0020】
ここで、各キャビティ35内には、後方から端子金具20が挿入され、正規挿入された端子金具20は、ランス36によって弾性的に抜け止めされる。端子金具20は導電性であって、図1及び図2に示すように、筒状の箱部21と、箱部21の後方に連なるオープンバレル状のバレル部22、23とを有している。箱部21には相手ハウジングに装着された図示しない相手端子金具が挿入されて接続される。そして、箱部21には、ランス36の先端部が進入して係止されるランス孔24が開口して形成されている。バレル部22、23は、電線90の端末部における芯線91に圧着されるワイヤバレル部22と、電線90の端末部における被覆92に圧着されるインシュレーションバレル部23とからなる。
【0021】
ハウジング本体31の後部の外壁には、各キャビティ35を露出させる切欠部39が開口して形成されている。また、ハウジング本体31の後部の外壁には、切欠部39を閉止可能な閉止部材40が一体に形成されている。閉止部材40は、上下夫々の半割体41U、41Lと、両半割体41U、41Lの夫々とハウジング本体31とを一体につなげるヒンジ42とからなる。ヒンジ42は、可撓性であって、半割体41U、41Lとハウジング本体31との間で細長く延びる紐状の形態とされている。
【0022】
両半割体41U、41Lは、キャップ状をなし、ハウジング本体31から離間して切欠部39を開口させる開状態と、ハウジング本体31に装着されて切欠部39を閉止させる閉状態とに変位可能とされている。両半割体41U、41Lの変位途中ではヒンジ42が折り畳まれるようにして変形される。そして、両半割体41U、41Lの両端部には一対ずつのロック片43が高さ方向(上下方向)に突出して形成されている。ロック片43の先端部には係止爪44が前方へ突出して形成されており、係止爪44はハウジング本体31に形成されたロック受け部37に係止可能とされている。
【0023】
両半割体41U、41Lの前端部には、閉状態でキャビティ35内に進入するリテーナ部45が形成されている。リテーナ部45は、その後方から前方へ段付き状に突出する形態とされている。リテーナ部45の前端は高さ方向に沿った抜止面46とされ、閉状態では、端子金具20の箱部21の後端にこの抜止面46が対向することで、端子金具20のキャビティ35から抜けが阻止される。また、上側の半割体41Uには凹所47が切り欠いて形成され、閉状態では凹所47を通して操作部34への解除操作が可能とされている。
【0024】
また、両半割体41U、41Lには、高さ方向に沿った閉止壁48が形成されている。両閉止壁48の相互の対向縁は、閉状態では互いに向き合って配置されている。そして、両閉止壁48の相互の対向縁には、各キャビティ35と対応する位置に、略半円弧状の受け溝49が並列に形成されている。このため、両閉止壁48の相互の対向縁は、全体として櫛歯状をなしている。
【0025】
図1に示すように、両半割体41U、41Lのうち、上側の半割体41Uの受け溝49は、閉状態では、上段のキャビティ35から引き出された電線90の外周面の略上半部に沿って当接可能に配置され、下側の半割体41Lの受け溝49は、閉状態では、下段のキャビティ35から引き出された電線90の外周面の略下半部に沿って当接可能に配置されている。そして、両半割体41U、41Lの受け溝49は、ロックアーム33と対応する位置を除いて、閉状態では上下で実質的に連続して環状をなす電線挿通孔51を構成する。電線挿通孔51は、高さ方向に長い長円形をなし、ここに上下の電線90が挿通されるとともに、ここを通して後方から隔壁38及びランス36を目視可能とされている。なお、上側の半割体41Uのうち、凹部32及びロックアーム33の後方には、キャビティ35が形成されていないため、受け溝49も形成されていない。
【0026】
上記のように、両半割体41U、41Lが閉状態にあるとき、キャビティ35の後端開口のうち電線90周りの開口は、閉止壁48によって塞がれる。このため、後述するように、キャビティ35内を流れるグリス等の充填材は閉止壁48により塞き止められることとなる。
【0027】
次に、本実施形態に係るコネクタ10の製造方法等について説明する。
両半割体41U、41Lを開状態とし、その状態で、各キャビティ35内に後方から端子金具20を挿入する(図2を参照)。正規挿入された端子金具20はランス36によって一次的に抜け止めされる。続いて、両半割体41U、41Lを閉状態となす。すると、ロック片43がロック受け部37を弾性的に係止し、これによって両半割体41U、41Lがハウジング本体31に保持される。また、両半割体41U、41Lが閉状態となることにより、リテーナ部45の抜止面46が端子金具20の箱部21に後方から係止可能に配置され、これによって端子金具20が二次的に抜け止めされる(図1を参照)。
【0028】
さらに、両半割体41U、41Lが閉状態となることにより、切欠部39が閉止されるとともに、電線90が受け溝49を通して外部へ引き出される。次いで、各キャビティ35内に前方(図1の矢印方向)からグリス等の充填材を注入する。すると、充填材は、端子金具20やランス36に付着しながらキャビティ35内を後方へ流動し、さらにハウジング本体31の後端位置にて閉止部材40の閉止壁48に当接してその流れが止められる。このため、キャビティ35内の流れ易い部分を通った充填材がハウジング30の後端位置に先に到着しても、その充填材がハウジング30外へ溢れ出るのが防止される。その後、キャビティ35内の全体に充填材が行き渡ったら、充填材の注入を停止する。これにより、ハウジング30内の防水性が確保されることになる。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、キャビティ35内に注入された充填材が閉止部材40の閉止壁48に塞き止められることにより、ハウジング30外へ溢れ出るのが防止される。その結果、充填材が各キャビティ35内の全体に均等に行き渡る。また、充填時間も短縮されるとともに、溢れ出た充填材の拭き取り作業も実質的に不要となり、かつ充填材が周辺部品に付着するのも回避される。その結果、ハウジング30のキャビティ35内に充填材を支障なく充填できるようになる。
【0030】
また、両半割体41U、41Lの相互の対向縁には両半割体41U、41Lを向き合わせた状態で電線90が挿入される略半円孤状の受け溝49が形成されているため、閉止部材40が電線90と干渉するのが回避される。さらに、両半割体41U、41Lが可撓性のヒンジ42を介してハウジング30に一体に連結されているため、部品点数が増加するのが防止される。しかも、閉止部材40には端子金具20のキャビティ35からの抜けを規制するリテーナ部45が一体に形成されているため、リテーナ部45が別に形成される場合に比べ、部品点数が増加するのが防止される。
【0031】
<実施形態2>
本発明の実施形態2に係るコネクタ10Aを図6ないし図10によって説明する。実施形態2では閉止部材40Aがハウジング本体31とは別体とされており、この点で実施形態1とは異なる。その他、実施形態2には実施形態1と共通する構造が多く含まれるため、実施形態1と同様の構造には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
ハウジング本体31には、閉止部材40Aとは別体のリテーナ45Aが装着されている。リテーナ45Aは、ハウジング本体31の切欠部39を閉止可能とされ、切欠部39を閉止した状態で、端子金具20の箱部21に後方から係止可能とされている。なお、このリテーナ45Aは、実施形態1における閉止部材40のうち閉止壁48を除く部分とほぼ同様の形状とされている。
【0033】
そして、ハウジング本体31の後面には、この後面を覆うようにして、上下夫々の半割体41UA、41LAが取り付けられている。両半割体41UA、41LAは、左右に長い矩形の平板状をなし、ハウジング本体31への装着に伴って相互の対向縁を向き合わせて閉止部材40Aを構成する。そして、両半割体41UA、41LAの相互の対向縁には、実施形態1と同様、複数の受け溝49Aが並んで形成されている。また、図7に示すように、両半割体41UA、41LAがハウジング本体31に取り付けられた状態では、ロックアーム33と対応する位置を除いて、上下の受け溝49Aが実質的に連続して縦長環状の電線挿通孔51Aを構成する。なお、ロックアーム33の後方は上側の半割体41Uにより覆われて隠蔽される。
【0034】
両半割体41UA、41LAの両端部には、図8及び図9に示すように、一対ずつのロック片43Aが前方へ突出して形成されている。両ロック片43Aの先端部(前端部)には係止爪44Aが内側へ突出して形成されており、係止爪44Aはハウジング本体31に形成されたロック受け部37Aに係止可能とされている。図10に示すように、係止爪44Aがロック受け部37Aに弾性的に係止されることにより、両半割体41UA、41LAがハウジング本体31に保持されるようになっている。また、両半割体41UA、41LAがハウジング本体31に保持されると、受け溝49Aに電線90が挿通されるとともに、キャビティ35の後端開口が電線90の挿通部分を除いて両半割体41UA、41LAにより閉止される。このため、実施形態2によれば、実施形態1と同様、各キャビティ35内に注入された充填材がハウジング30の後面から溢れ出るのが防止される。また、実施形態2によれば、両半割体41UA、41LA(閉止部材40A)がハウジング30とは別体とされるため、既存のハウジング30に適用可能となる。また、ハウジング30及び両半割体41UA、41LAの夫々の成形の自由度が高められる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)両半割体がハウジング本体に対して嵌合方向と交差する斜め方向に押し込まれて取り付けられるものであってもよい。
(2)両半割体の相互の対向縁が突き合わされるものであってもよい。
(3)実施形態1では、閉止部材からリテーナ部を省略してもよい。
(4)実施形態2では、閉止部材とリテーナとを一体化してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10、10A…コネクタ
20…端子金具
30…ハウジング
35…キャビティ
40、40A…閉止部材
41U…上側の半割体
41L…下側の半割体
42…ヒンジ
45…リテーナ部
49、49A…受け溝
90…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に接続された端子金具と、前記端子金具を挿入可能なキャビティを有するハウジングとを備え、前記ハウジングの後面から前記電線が引き出され、前記キャビティ内には充填材が流入充填されるコネクタであって、
前記ハウジングには、前記電線の周りを取り囲みつつ前記キャビティの後端開口を閉止する閉止部材が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記閉止部材が、相互の対向縁を向き合わせてなる2つの半割体を有し、前記両半割体の相互の対向縁には、前記向き合わせた状態で前記電線が挿通される略半円孤状の受け溝が形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記両半割体が可撓性のヒンジを介して前記ハウジングに一体に連結されている請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記両半割体が前記ハウジングとは別体に形成されている請求項2記載のコネクタ。
【請求項5】
前記閉止部材には、前記キャビティ内に挿入された前記端子金具を後方から係止することにより、前記端子金具の前記キャビティからの抜けを規制するリテーナ部が一体に形成されている請求項1ないし4のいずれか1項記載のコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−164579(P2012−164579A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25306(P2011−25306)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】