説明

コネクタ

【課題】コンタクトを狭ピッチで配列した場合でも、ハウジングにおけるクラックの発生を抑制しながら十分なコンタクト保持力を確保することができるコネクタを提供する。
【解決手段】コンタクト本体15の側部から圧入方向に対して直角方向に突出形成された圧入片16は、コンタクト本体15から突出方向に離れるに従って次第に間隔が拡がる一対の側面16aと先端面16bとを有し、ハウジング12の圧入孔13へのコンタクト14の圧入に伴って、圧入孔13がコンタクト14の圧入片16の先端面16bによって幅方向に弾力的に押し拡げられると同時に、圧入孔13の角部18がそれぞれ対応する圧入片16の側面16aにより押圧されて弾性変形し、コンタクト14が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、ハウジングの圧入孔にコンタクトが圧入保持されたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気絶縁性を有するハウジングに形成された圧入孔に、平板状あるいは角柱状のコンタクトを圧入して保持させたコネクタが広く知られている。
例えば、特許文献1に開示されたコネクタにおいては、図20(A)に示されるように、コンタクト1が、圧入方向に延びた平板状のコンタクト本体2と、このコンタクト本体2の両側部からそれぞれ板幅方向に突出した突起部3とを備えている。一方、ハウジング4は、コンタクト1を挿入するための断面矩形状の圧入孔5を有すると共に、圧入孔5の内部にコンタクト1の突起部3を収容保持する突起保持部6が形成されている。
【0003】
コンタクト本体2をハウジング4の圧入孔5に挿入し、突起部3がハウジング4の突起保持部6に収容されるまで、コンタクト1を圧入することで、コンタクト1がハウジング4に保持される。
ここで、突起部3がコンタクト本体2の厚さを保持した状態で板幅方向に突出し、突起部3が配置された部分におけるコンタクト1の外周面の全面がハウジング4の圧入孔5の内面に接する場合には、コンタクト1の圧入に大きな力を要すると共に、このときハウジング4に大きな力が作用し、ハウジング4にクラックが発生してコンタクト1の保持力が低下するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1のコネクタでは、図20(B)に示されるように、突起部3の側面に面取り部7が形成され、これにより、突起部3の先端面の面積が小さくなるように設定されている。
このようなコンタクト1によれば、ハウジング4への圧入時に、コンタクト1がハウジング4に接触する面積が小さくなり、ハウジング4に作用する力が小さくなって、クラックの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−282668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のコネクタでは、コンタクト本体2の板幅方向端部に形成された突起部3の先端面をハウジング4の圧入孔5の内面に食い込ませ、このときのハウジング4の変形による反力を保持力としてコンタクト1を保持するので、例えば、多数のコンタクト1を狭ピッチで配列するために、互いに隣接するコンタクト1間のハウジング4が肉薄になる場合には、コンタクト1の突起部3の食い込みに起因してハウジング4にクラック等の塑性変形が発生しやすくなるという問題があった。また、このような事態を回避すべく、コンタクト1の突起部3のサイズを小さくすると、今度は十分な保持力を得ることができないという問題を抱えてしまう。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、コンタクトを狭ピッチで配列した場合でも、ハウジングにおけるクラックの発生を抑制しながら十分なコンタクト保持力を確保することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るコネクタは、ハウジングの圧入孔にコンタクトが圧入保持されたコネクタにおいて、コンタクトは、圧入方向に延びたコンタクト本体と、このコンタクト本体の側部から圧入方向に対して直角方向に突出形成されると共にコンタクト本体より大きな厚さを有する圧入片とを備え、ハウジングの圧入孔は、コンタクト本体および圧入片の断面形状に応じた凹凸形状の断面を有するものである。
【0009】
好ましくは、圧入片は、コンタクト本体から突出方向に離れるに従って次第に幅が拡がるような台形の断面形状を有している。例えば、圧入片が、それぞれ圧入方向に延びると共にコンタクト本体から突出方向に離れるに従って次第に間隔が拡がる一対の側面を有し、ハウジングの圧入孔は、コンタクトが圧入されたときに圧入片の前記側面により押圧されて弾性変形する角部を有している。なお、ハウジングの圧入孔が、第1の矩形の隅部で且つ第1の矩形の厚さ方向に第1の矩形よりも小さな第2の矩形が接続された断面形状を有し、これら第1の矩形と第2の矩形の接続部に角部が形成される構成とすることができる。
【0010】
圧入片は、圧入方向の一端部に形成された傾斜面を有することができる。
また、圧入片は、コンタクト本体の両側部にそれぞれ突出形成されてもよく、あるいは、コンタクト本体の一側部にのみ突出形成されていてもよい。
さらに、ハウジングが複数の圧入孔を有し、これらの圧入孔にそれぞれコンタクトが圧入保持された構造とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、コンタクト本体の側部から圧入方向に対して直角方向に突出形成された圧入片がコンタクト本体より大きな厚さを有し、ハウジングの圧入孔がコンタクト本体および圧入片の断面形状に応じた凹凸形状の断面を有するので、コンタクトを狭ピッチで配列した場合でも、ハウジングにおけるクラックの発生を抑制しながら十分なコンタクト保持力を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るコネクタを示す斜視図である。
【図2】実施の形態1のコネクタに用いられたコンタクトを示し、(A)は斜視図、(B)は拡大横断面図である。
【図3】実施の形態1のコネクタに用いられたハウジングを示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【図4】実施の形態1に係るコネクタの断面図である。
【図5】実施の形態2に係るコネクタを示す斜視図である。
【図6】図5に示したコネクタの部分断面図である。
【図7】実施の形態3に係るコネクタを示す斜視図である。
【図8】図7に示したコネクタの部分断面図である。
【図9】実施の形態4のコネクタに用いられたコンタクトを示し、(A)は斜視図、(B)は拡大横断面図である。
【図10】実施の形態4のコネクタに用いられたハウジングを示し、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【図11】実施の形態4に係るコネクタの断面図である。
【図12】実施の形態5に係るコネクタを示す斜視図である。
【図13】図12に示したコネクタの部分断面図である。
【図14】実施の形態6に係るコネクタを示す斜視図である。
【図15】図14に示したコネクタの部分断面図である。
【図16】実施の形態6の変形例に係るコネクタの部分断面図である。
【図17】実施の形態7に係るコネクタを示す斜視図である。
【図18】実施の形態7の変形例に係るコネクタを示す斜視図である。
【図19】実施の形態7の他の変形例に係るコネクタに用いられたコンタクトを示す斜視図である。
【図20】従来のコネクタを示し、(A)は部分縦断面図、(B)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るコネクタ11の構成を示す。コネクタ11は、電気絶縁性を有するハウジング12の圧入孔13に導電性を有するコンタクト14が圧入保持された構成を有している。
コンタクト14は、図2(A)に示されるように、ハウジング12への圧入方向に延びた平板状のコンタクト本体15と、コンタクト本体15の両側部からそれぞれ圧入方向に対して直角方向に突出形成された圧入片16を有している。コンタクト本体15は、一対の平行な表面15aとこれら表面15aに直交する一対の平行な側面15bを有しており、各圧入片16は、コンタクト本体15の対応する側面15bからコンタクト本体15の板幅方向に突出している。
【0014】
ここで、圧入片16が形成された部分におけるコンタクト14の横断面を図2(B)に示す。この図に示されるように、各圧入片16は、コンタクト本体15から突出方向に離れるに従って次第に間隔が拡がる一対の側面16aと、コンタクト本体15の側面15bと平行な先端面16bとを有している。すなわち、各圧入片16は、コンタクト本体15から突出方向に離れるに従って次第に幅が拡がるような台形の断面形状を有しており、これにより、圧入片16は、コンタクト本体15の厚さD1より大きい厚さD2を有している。また、一対の圧入片16がそれぞれコンタクト本体15の板幅方向に突出することから、圧入片16が形成された部分のコンタクト14の全幅W2は、コンタクト本体15の板幅W1より大きな値を有している。
【0015】
図2(A)に示されるように、圧入片16の一対の側面16aと先端面16bは、それぞれコンタクト14の圧入方向に延びており、圧入方向に対する圧入片16の先端側には、圧入片16の先端面16bとコンタクト本体15の側面15bとを接続する傾斜面17が形成されている。
【0016】
一方、ハウジング12は、弾力性を有する材料から形成され、圧入孔13は、コンタクト14の断面形状に応じた凹凸形状の断面、具体的には、図3(A)および(B)に示されるように、横長のH字状の断面を有している。すなわち、幅W3、厚さD3の第1の矩形S1の4隅にそれぞれ小さな第2の矩形S2が厚さ方向に接続されることにより、幅方向両端部の厚さがD4に拡大された断面形状で、これら小さな第2の矩形S2と第1の矩形S1との接続部に4つの角部18が形成されている。
予め、圧入孔13の幅W3は、コンタクト14の全幅W2よりわずかに小さい値に設定され、厚さD3は、コンタクト本体15の厚さD1より大きい値に、厚さD4は、圧入片16の厚さD2より大きい値に、それぞれ設定されている。
【0017】
コネクタ11を組み立てる際には、このような断面形状のハウジング12の圧入孔13にコンタクト14が挿入される。コンタクト本体15の幅W1および厚さD1は、それぞれ圧入孔13の幅W3および厚さD3より小さいので、圧入片16が圧入孔13に到達するまでは、ハウジング12から抵抗を受けることなく、コンタクト14を圧入孔13に挿入することができる。
【0018】
圧入片16が圧入孔13に到達すると、圧入孔13の幅W3がコンタクト14の全幅W2よりわずかに小さい値に設定されているため、コンタクト14の圧入に伴って、圧入孔13の幅W3がコンタクト14の全幅W2に一致するまで、圧入孔13がコンタクト14の圧入片16の先端面16bによって幅方向に弾力的に押し拡げられる。これと同時に、図4に示されるように、双方の圧入片16の側面16aが、それぞれ圧入孔13の対応する角部18に当接し、この側面16aにより角部18が押圧されて弾性変形する。このとき、コンタクト本体15の表面15aは、ハウジング12の圧入孔13の内面に接触せず、これらの間に間隙が形成されている。
【0019】
これにより、コンタクト14は、各圧入片16の先端面16bと一対の側面16aがそれぞれハウジング12から反力を受けることとなり、コンタクト14と圧入孔13の内面との接触面積が過度に増大することを回避しつつ多数の接触点数を確保している。このため、適度な圧入力でコンタクト14をハウジング12に圧入することができ、コンタクト14の圧入時におけるハウジング12のクラック発生のおそれが未然に防止されると共に、十分な保持力で確実にコンタクト14を保持することが可能となる。
【0020】
なお、上述したように、コンタクト14の圧入方向に対して圧入片16の先端側に、圧入片16の先端面16bとコンタクト本体15の側面15bとを接続する傾斜面17が形成されているので、圧入孔13へのコンタクト14の挿入に伴って圧入片16が圧入孔13に到達しても、コンタクト14をさらに圧入するだけで、円滑に、圧入片16の先端面16bにより圧入孔13を幅方向に押し拡げると共に圧入片16の側面16aにより圧入孔13の角部18を押圧して弾性変形させることができる。
【0021】
コンタクト14は、リン青銅等の導電性を有する材料から形成されるが、例えば、均一な厚さの板材から、コンタクト本体の両側部にそれぞれ圧入片が付随するような形状の部材を切り抜いた後、コンタクト本体の部分が最も大きく圧縮されると共に圧入片の先端部に至るほど圧縮率が小さくなるような所定の圧縮型を用いて、この部材を厚さ方向に圧縮することで製造することができる。
一方、ハウジング12は、電気絶縁性と弾力性とを有する材料、例えば、LCP(液晶ポリマー)等の合成樹脂や合成繊維を用いて成形することにより製造することができる。特に、圧入孔13のサイズが小さい場合には、所望の断面形状を得るために、優れた流動性を有するLCPを使用することが望ましい。
【0022】
実施の形態2
図5に、実施の形態2に係るコネクタ21の構成を示す。このコネクタ21は、共通のハウジング22に、それぞれ実施の形態1で用いられた複数のコンタクト14を保持させたものである。
図6に示されるように、複数のコンタクト14は、2つのコンタクト列23および24を形成するように配列されている。各コンタクト列23および24においては、複数のコンタクト14が所定のピッチP1でそれぞれの幅方向に整列しており、コンタクト列23とコンタクト列24は、それぞれのコンタクト14が厚さ方向に所定のピッチP2で配列されるように形成されている。さらに、コンタクト列23のコンタクト14とコンタクト列24のコンタクト14は、互いに千鳥状に配置されている。
【0023】
ハウジング22には、各コンタクト14に対応して、実施の形態1におけるハウジング12に形成されたものと同様にH字状の断面形状を有する圧入孔13が形成されている。
実施の形態1で述べたように、コンタクト14は、それぞれの圧入片16の先端面16bと一対の側面16aにおける多数の接触点で圧入孔13の内面と接触することにより、適度な圧入力でコンタクト14を圧入しながらも、十分な保持力で確実にコンタクト14を保持することができる。従って、配列ピッチP1およびP2を小さく設定することで、互いに隣接するコンタクト14間のハウジング22の厚さが小さくなった狭ピッチのコネクタ21を構成しても、ハウジング22のクラックの発生を防止しつつ十分なコンタクト保持力を得ることが可能となる。
【0024】
なお、この実施の形態2では、コンタクト列23のコンタクト14とコンタクト列24のコンタクト14を互いに千鳥状に配置したが、これに限るものではなく、双方のコンタクト列のコンタクト14を厚さ方向にも整列配置させることができる。ただし、それぞれの圧入孔13がH字状の断面形状を有しているので、コンタクト列23のコンタクト14とコンタクト列24のコンタクト14を互いに千鳥状に配置した方が、圧入孔13をより小さなピッチP2で厚さ方向に配列形成することができる。
また、実施の形態2では、複数のコンタクト14を2つのコンタクト列23および24に配列したが、同様に、1つのコンタクト列あるいは3つ以上のコンタクト列に配列してもよい。
【0025】
実施の形態3
図7に、実施の形態3に係るコネクタ31の構成を示す。このコネクタ31は、実施の形態2のコネクタ21と同様に、共通のハウジング32に、それぞれ実施の形態1で用いられた複数のコンタクト14を保持させたものであるが、実施の形態2では、各コンタクト列における複数のコンタクト14がそれぞれ幅方向に整列していたのに対し、この実施の形態3では、各コンタクト列における複数のコンタクト14がそれぞれ厚さ方向に整列している。
図8に示されるように、複数のコンタクト14は、2つのコンタクト列33および34を形成するように配列されている。各コンタクト列33および34においては、複数のコンタクト14が所定のピッチP3でそれぞれの厚さ方向に整列しており、コンタクト列33とコンタクト列34は、それぞれのコンタクト14が幅方向に所定のピッチP4で配列されるように形成されている。さらに、コンタクト列33のコンタクト14とコンタクト列34のコンタクト14は、互いに千鳥状に配置されており、一方の列の互いに隣接するコンタクト14の間に他方の列のコンタクト14が入り込むような構成を有している。
【0026】
ハウジング32には、各コンタクト14に対応して、実施の形態1におけるハウジング12に形成されたものと同様にH字状の断面形状を有する圧入孔13が形成されている。
実施の形態1で述べたように、コンタクト14は、それぞれの圧入片16の先端面16bと一対の側面16aにおける多数の接触点で圧入孔13の内面と接触することにより、適度な圧入力でコンタクト14を圧入しながらも、十分な保持力で確実にコンタクト14を保持することができる。従って、配列ピッチP3およびP4を小さく設定することで、互いに隣接するコンタクト14間のハウジング32の厚さが小さくなった狭ピッチのコネクタ31を構成しても、ハウジング32のクラックの発生を防止しつつ十分なコンタクト保持力を得ることが可能となる。
【0027】
なお、この実施の形態3では、コンタクト列33のコンタクト14とコンタクト列34のコンタクト14を互いに千鳥状に配置したが、これに限るものではなく、双方のコンタクト列のコンタクト14を幅方向にも整列配置させることができる。ただし、コンタクト列33のコンタクト14とコンタクト列34のコンタクト14を互いに千鳥状に配置した方が、圧入孔13をより小さなピッチP4で幅方向に配列形成することができる。
また、実施の形態3では、複数のコンタクト14を2つのコンタクト列33および34に配列したが、同様に、1つのコンタクト列あるいは3つ以上のコンタクト列に配列してもよい。
【0028】
実施の形態4
図9(A)に、実施の形態4に係るコネクタに用いられるコンタクト44の構成を示す。このコンタクト44は、図2(A)に示したコンタクト14において、コンタクト本体15の両側部にそれぞれ圧入片16が突出形成される代わりに、コンタクト本体15の一方の側部にのみ圧入片16が突出形成されたものである。
すなわち、圧入方向に延びた平板状のコンタクト本体15の一側部15bから圧入方向に対して直角方向に圧入片16が突出形成されている。
図9(B)に示されるように、圧入片16は、コンタクト本体15から突出方向に離れるに従って次第に間隔が拡がる一対の側面16aと、コンタクト本体15の側面15bと平行な先端面16bとを有している。すなわち、圧入片16は、コンタクト本体15から突出方向に離れるに従って次第に幅が拡がるような台形の断面形状を有しており、これにより、圧入片16は、コンタクト本体15の厚さD1より大きい厚さD2を有している。また、圧入片16がコンタクト本体15の板幅方向に突出することから、圧入片16が形成された部分のコンタクト44の全幅W4は、コンタクト本体15の板幅W1より大きな値を有している。
【0029】
コンタクト44を保持するためのハウジング42を図10(A)および(B)に示す。ハウジング42は、実施の形態1で用いられたハウジング12と同様に、電気絶縁性および弾力性を有する材料から形成され、ハウジング42に、コンタクト44の断面形状に応じた凹凸形状の断面、具体的には、T字状の断面を有する圧入孔43が形成されている。すなわち、幅W5、厚さD3の第1の矩形S3の幅方向一端側の2つの隅部にそれぞれ小さな第2の矩形S4が厚さ方向に接続されることにより、幅方向端部の厚さがD4に拡大された断面形状で、これら小さな第2の矩形S4と第1の矩形S3との接続部に2つの角部48が形成されている。
予め、圧入孔43の幅W5は、コンタクト44の全幅W4よりわずかに小さい値に設定され、厚さD3は、コンタクト本体15の厚さD1より大きい値に、厚さD4は、圧入片16の厚さD2より大きい値に、それぞれ設定されている。
【0030】
コネクタを組み立てる際には、このような断面形状のハウジング42の圧入孔43にコンタクト44が挿入される。コンタクト本体15の幅W1および厚さD1は、それぞれ圧入孔43の幅W5および厚さD3より小さいので、圧入片16が圧入孔43に到達するまでは、ハウジング42から抵抗を受けることなく、コンタクト44を圧入孔43に挿入することができる。
【0031】
圧入片16が圧入孔43に到達すると、圧入孔43の幅W5がコンタクト44の全幅W4よりわずかに小さい値に設定されているため、コンタクト44の圧入に伴って、圧入孔43の幅W5がコンタクト44の全幅W4に一致するまで、圧入孔43がコンタクト44の圧入片16の先端面16bによって幅方向に弾力的に押し拡げられる。これと同時に、図11に示されるように、圧入片16の一対の側面16aが、それぞれ圧入孔43の対応する角部48に当接し、角部48が押圧されて弾性変形する。このとき、コンタクト本体15の表面15aは、ハウジング42の圧入孔43の内面に接触せず、これらの間に間隙が形成されている。
【0032】
これにより、コンタクト44は、圧入片16の先端面16bと一対の側面16aおよび圧入片16が形成されていない側のコンタクト本体15の側面15bがそれぞれハウジング42から反力を受けることとなり、コンタクト44と圧入孔43の内面との接触面積が過度に増大することが回避され、多数の接触点数が確保されている。このため、適度な圧入力でコンタクト44をハウジング42に圧入することができ、コンタクト44の圧入時におけるハウジング42のクラック発生のおそれが防止されると共に、十分な保持力で確実にコンタクト44を保持することが可能となる。
コンタクト44およびハウジング42は、それぞれ実施の形態1におけるコンタクト14およびハウジング12と同様にして製造することができる。
【0033】
実施の形態5
図12に、実施の形態5に係るコネクタ51の構成を示す。このコネクタ51は、共通のハウジング52に、それぞれ実施の形態4で用いられた複数のコンタクト44を保持させたものである。
図13に示されるように、複数のコンタクト44は、2つのコンタクト列53および54を形成するように配列されている。各コンタクト列53および54においては、複数のコンタクト44が所定のピッチP5でそれぞれの幅方向に整列しており、コンタクト列53とコンタクト列54は、それぞれのコンタクト44が厚さ方向に所定のピッチP6で配列されるように形成されている。さらに、コンタクト列53のコンタクト44とコンタクト列54のコンタクト44は、互いに千鳥状に配置されている。
【0034】
ハウジング52には、各コンタクト44に対応して、実施の形態4におけるハウジング42に形成されたものと同様にT字状の断面形状を有する圧入孔43が形成されている。
実施の形態4で述べたように、コンタクト44は、圧入片16の先端面16bと一対の側面16aおよび圧入片16が形成されていない側のコンタクト本体15の側面15bにおける多数の接触点で圧入孔43の内面と接触することにより、適度な圧入力でコンタクト44を圧入しながらも、十分な保持力で確実にコンタクト44を保持することができる。従って、配列ピッチP5およびP6を小さく設定することで、互いに隣接するコンタクト44間のハウジング52の厚さが小さくなった狭ピッチのコネクタ51を構成しても、ハウジング42のクラックの発生を防止しつつ十分なコンタクト保持力を得ることが可能となる。
【0035】
なお、この実施の形態5では、コンタクト列53のコンタクト44とコンタクト列54のコンタクト44を互いに千鳥状に配置したが、これに限るものではなく、双方のコンタクト列のコンタクト44を厚さ方向にも整列配置させることができる。ただし、それぞれの圧入孔43がT字状の断面形状を有しているので、コンタクト列53のコンタクト44とコンタクト列54のコンタクト44を互いに千鳥状に配置した方が、圧入孔43をより小さなピッチP6で厚さ方向に配列形成することができる。
また、実施の形態5では、複数のコンタクト44を2つのコンタクト列53および54に配列したが、同様に、1つのコンタクト列あるいは3つ以上のコンタクト列に配列してもよい。
【0036】
実施の形態6
図14に、実施の形態6に係るコネクタ61の構成を示す。このコネクタ61は、共通のハウジング62に、それぞれ実施の形態4で用いられた複数のコンタクト44を保持させたものである。
図15に示されるように、複数のコンタクト44は、2つのコンタクト列63および64を形成するように配列されている。各コンタクト列63および64においては、複数のコンタクト44が所定のピッチP7でそれぞれの厚さ方向に整列しており、コンタクト列63とコンタクト列64は、それぞれのコンタクト44が幅方向に所定のピッチP8で配列されるように形成されている。さらに、コンタクト列63のコンタクト44とコンタクト列64のコンタクト44は、互いに千鳥状に配置されており、一方の列の互いに隣接するコンタクト44の間に他方の列のコンタクト44が入り込むような構成を有している。
【0037】
ハウジング62には、各コンタクト44に対応して、実施の形態4におけるハウジング42に形成されたものと同様にT字状の断面形状を有する圧入孔43が形成されている。
実施の形態4で述べたように、コンタクト44は、圧入片16の先端面16bと一対の側面16aおよび圧入片16が形成されていない側のコンタクト本体15の側面15bにおける多数の接触点で圧入孔43の内面と接触することにより、適度な圧入力でコンタクト44を圧入しながらも、十分な保持力で確実にコンタクト44を保持することができる。従って、配列ピッチP7およびP8を小さく設定することで、互いに隣接するコンタクト44間のハウジング62の厚さが小さくなった狭ピッチのコネクタ61を構成しても、ハウジング62のクラックの発生を防止しつつ十分なコンタクト保持力を得ることが可能となる。
【0038】
なお、この実施の形態6では、コンタクト列63のコンタクト44とコンタクト列64のコンタクト44を互いに千鳥状に配置したが、これに限るものではなく、双方のコンタクト列のコンタクト44を幅方向にも整列配置させることができる。ただし、コンタクト列63のコンタクト44とコンタクト列64のコンタクト44を互いに千鳥状に配置した方が、圧入孔43をより小さなピッチP8で幅方向に配列形成することができる。
また、実施の形態6では、複数のコンタクト44を2つのコンタクト列63および64に配列したが、同様に、1つのコンタクト列あるいは3つ以上のコンタクト列に配列してもよい。
【0039】
図15に示した実施の形態6のコネクタ61では、コンタクト列63とコンタクト列64のうち、一方の列の互いに隣接するコンタクト44のコンタクト本体15の間に他方の列のコンタクト44の圧入片16が位置するように配置されていたが、図16に示されるように、一方の列の互いに隣接するコンタクト44のコンタクト本体15の間に他方の列のコンタクト44のコンタクト本体15が位置するように、2つのコンタクト列73および74をハウジング72に配置形成すれば、さらに各コンタクト列の配列ピッチP9およびコンタクト列73とコンタクト列74の間のピッチP10を小さくしたコネクタを得ることができる。
【0040】
実施の形態7
上述した実施の形態1のコネクタ11では、コンタクト14が直線状に延びたコンタクト本体15を有していたが、図17に示されるコネクタ81のように、屈曲したコンタクト本体を有するコンタクト84を用いることもできる。コンタクト84は、図2(A)に示したコンタクト14と同様に、コンタクト本体の両側部にそれぞれ突出形成された圧入片を有しており、これらの圧入片をハウジング12の圧入孔13に圧入することで、ハウジング12に保持される。
【0041】
このようなコンタクト84を用いて、図18に示されるように、実施の形態2と同様に、共通のハウジング92に、複数のコンタクト84をそれぞれ幅方向に整列した状態で保持させたコネクタ91を構成することもできる。複数のコンタクト84を複数のコンタクト列に配列する場合には、コンタクト列毎にハウジング92からコンタクト84の屈曲部までの距離を変えることにより、複数のコンタクト列のコンタクト84を互いに接触させることなく、同一方向に屈曲させることができる。
【0042】
同様に、屈曲したコンタクト84を用いて、実施の形態3のように、複数のコンタクト84をそれぞれ厚さ方向に整列させてハウジングに保持させたコネクタを構成してもよい。
また、実施の形態4〜6のコネクタにおいても、コンタクト44の代わりに、一側部にのみ圧入片が突出形成され且つ屈曲されたコンタクト本体を有するコンタクトを使用することができる。
【0043】
さらに、図19に示されるように、FPC(フレキシブル・プリンデッド・サーキット)、FFC(フレキシブル・フラットケーブル)等の平板形状の接続対象物体に接続するためにコンタクト本体101が分岐部102を有するようなコンタクト103に対しても、この発明を適用することができる。すなわち、コンタクト本体101の側部にコンタクト本体101より大きな厚さを有する圧入片104を突出形成すると共に、圧入片104の断面形状に応じた凹凸形状の断面を有する圧入孔を図示しないハウジングに形成し、この圧入孔に圧入片104を圧入することで、コンタクト103をハウジングに保持させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 コンタクト、2 コンタクト本体、3 突起部、4 ハウジング、5 圧入孔、6 突起保持部、7 面取り部、11,21,31,51,61,81,91 コネクタ、12,22,32,42,52,62,72,92 ハウジング、13,43 圧入孔、14,44,84,103 コンタクト、15,101 コンタクト本体、15a 表面、15b 側面、16,104 圧入片、16a 側面、16b 先端面、17 傾斜面、18,48 角部、23,24,33,34,53,54,63,64,73,74 コンタクト列、102 分岐部、D1 コンタクト本体の厚さ、D2 圧入片の厚さ、W1 コンタクト本体の板幅、W2,W4 コンタクトの全幅、W3,W5 圧入孔の幅、D3 圧入孔の厚さ、D4 圧入孔の幅方向端部の厚さ、S1,S3 第1の矩形、S2,S4 第2の矩形、P1〜P10 配列ピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの圧入孔にコンタクトが圧入保持されたコネクタにおいて、
前記コンタクトは、圧入方向に延びたコンタクト本体と、このコンタクト本体の側部から圧入方向に対して直角方向に突出形成されると共に前記コンタクト本体より大きな厚さを有する圧入片とを備え、
前記ハウジングの圧入孔は、前記コンタクト本体および前記圧入片の断面形状に応じた凹凸形状の断面を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記圧入片は、前記コンタクト本体から突出方向に離れるに従って次第に幅が拡がるような台形の断面形状を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記圧入片は、それぞれ圧入方向に延びると共に前記コンタクト本体から突出方向に離れるに従って次第に間隔が拡がる一対の側面を有し、
前記ハウジングの圧入孔は、前記コンタクトが圧入されたときに前記圧入片の前記側面により押圧されて弾性変形する角部を有する請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの圧入孔は、第1の矩形の隅部で且つ前記第1の矩形の厚さ方向に前記第1の矩形よりも小さな第2の矩形が接続された断面形状を有し、
前記第1の矩形と前記第2の矩形の接続部に前記角部が形成されている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記圧入片は、圧入方向の一端部に形成された傾斜面を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記圧入片は、前記コンタクト本体の両側部にそれぞれ突出形成された請求項1〜5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記圧入片は、前記コンタクト本体の一側部にのみ突出形成された請求項1〜5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングは、複数の前記圧入孔を有し、これらの前記圧入孔にそれぞれ前記コンタクトが圧入保持された請求項1〜7のいずれか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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