説明

コネクタ

【課題】相手側コネクタとの嵌合時に十分なクリック感をユーザに伝えることができると共に嵌合状態を確実に保持することができるコネクタであって、低背化の要求にも対応可能な構造を有するコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタ100は、後端150bを保持部材120に保持され且つ保持部材120から前方向(+X方向)に延びるベースバネ部150を備えている。このベースバネ部150は、ピッチ方向(Y方向)に撓み可能である。このベースバネ部150に、相手側係合部(係合孔)に係合可能な係合部(バネ係合部)152が形成されている。従って、低背化の要求を満たしつつ、ベースバネ部150のバネ力を大きくとることができるため、相手側コネクタのコネクタ100に対する嵌合時に大きなクリック感を得ることができる共に、嵌合状態の維持を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側コネクタと嵌合するコネクタであって低背化を求められるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、同軸ケーブルを接続されたプラグコネクタ(コネクタ装置)と、基板に搭載固定されるレセプタクルコネクタ(基板側コネクタ装置)とを開示している。プラグコネクタの導電性カバーのピッチ方向の両端近傍には上側に突出した係合突起が設けられている。一方、レセプタクルコネクタの導電性シェルの上部のピッチ方向の両端近傍には、その導電性シェルの上部を上下方向において貫通する係合孔が形成されている。プラグコネクタをレセプタクルコネクタに嵌合すると、係合突起が係合孔にそれぞれ係合し、それによって導電性カバーと導電性シェルとが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラグコネクタとレセプタクルコネクタとの嵌合時にクリック感をユーザに伝えると共に嵌合状態を確実に保持するためには、係合突起の係合孔への係合前後における係合突起の変位量を大きくしなければならない。
【0005】
しかしながら、特許文献1のプラグコネクタ及びレセプタクルコネクタにおいて係合突起の変位量を大きくするためには、プラグコネクタやレセプタクルコネクタの高さ方向又は厚み方向のサイズを大きくしなければならず、低背化の要求を満たせないといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、相手側コネクタとの嵌合時に十分なクリック感をユーザに伝えることができると共に嵌合状態を確実に保持することができるコネクタであって、低背化の要求にも対応可能な構造を有するコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1のコネクタとして、
相手側係合部の形成された相手側シェルを有する相手側コネクタと嵌合するコネクタであって、
複数のコンタクトと、前記コンタクトをピッチ方向に列設保持する保持部材と、前記保持部材に一端を保持されたベースバネ部とを備えており、
前記ベースバネ部は、前記ピッチ方向と直交する前方向に延びており、且つ、前記ピッチ方向に撓み可能であり、
前記ベースバネ部には、前記相手側係合部と係合し、弾性変形可能な係合部が設けられており、
前記前方向の逆方向である後方向に沿って前記相手側コネクタを前記コネクタに対して嵌合させる過程において、前記ベースバネ部が初期状態から前記ピッチ方向に撓んだ後、前記ベースバネ部が前記初期状態に向かって戻ろうとしつつ前記係合部が前記相手側係合部に係合するように構成されている、コネクタを提供する。
【0008】
また、本発明は、第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記ベースバネ部は、板状の形状を有しており、前記ピッチ方向と直交している
コネクタを提供する。
【0009】
また、本発明は、第3のコネクタとして、第1又は第2のコネクタであって、
前記係合部は、前記ベースバネ部から前記ピッチ方向に隆起するように曲げ形成されたバネ係合部である
コネクタを提供する。
【0010】
また、本発明は、第4のコネクタとして、第3のコネクタであって、
前記バネ係合部の前端及び後端は、前記ベースバネ部と連続している
コネクタを提供する。
【0011】
また、本発明は、第5のコネクタとして、第3又は第4のコネクタであって、
前記バネ係合部には、前記ピッチ方向に突出した接点であって前記相手側コネクタが前記コネクタに嵌合する際に前記相手側シェルに接続する接点が設けられている
コネクタを提供する。
【0012】
また、本発明は、第6のコネクタとして、第1乃至第5のいずれかのコネクタであって、
基板に固定されるホールドダウンと、前記保持部材に組み込まれたシェルとを更に備えている
コネクタを提供する。
【0013】
また、本発明は、第7のコネクタとして、第6のコネクタであって、
前記ベースバネ部の前端から後方に向けて折り返された撓み限界規定部を更に備えており、
前記撓み限界規定部は、前記ピッチ方向において前記ベースバネ部と前記ホールドダウンとの間に位置しており、前記前方向及び前記後方向において前記ホールドダウンと少なくとも部分的に重複している
コネクタを提供する。
【0014】
また、本発明は、第8のコネクタとして、第7のコネクタであって、
前記撓み限界規定部の前端及び前記ベースバネ部の前端並びに前記ホールドダウンの前端は、前記保持部材の前端よりも前方に位置している
コネクタを提供する。
【0015】
また、本発明は、第9のコネクタとして、第7又は第8のコネクタであって、
前記撓み限界規定部の後端は、前記保持部材に保持されている
コネクタを提供する。
【0016】
また、本発明は、第10のコネクタとして、第7乃至第9のいずれかのコネクタであって、
前記ピッチ方向と直交し且つ前記後方向と直交する上下方向において、
前記撓み限界規定部の前端は前記ベースバネ部の幅と同一幅の広部を有し、前記撓み限界規定部の前記後方向に向かって延びる部分は前記広部よりも幅の狭い狭部を有する
コネクタを提供する。
【0017】
また、本発明は、第11のコネクタとして、第7乃至第9のいずれかのコネクタであって、
前記保持部材は前記ピッチ方向における端部に前記前方向に突出する突出部を有しており、
前記撓み限界規定部の後端が前記突出部に保持されている
コネクタを提供する。
【0018】
また、本発明は、第12のコネクタとして、第6乃至第11のいずれかのコネクタであって、
前記ベースバネ部は、前記シェルと一体形成されている
コネクタを提供する。
【0019】
また、本発明は、第13のコネクタとして、第6乃至第12のいずれかのコネクタであって、
前記シェルには、下板部と複数のグランドタブとが設けられており、
前記下板部は、前記相手側コネクタが前記コネクタに嵌合する際に前記相手側シェルと接続するものであり、且つ、前記ピッチ方向に長手を有する板状の形状を有するものであり、
前記グランドタブは、前記コネクタを前記基板に搭載した際に前記基板に接続されるものであり、且つ、前記ピッチ方向において互いに離間した状態で前記下板部から前方に突出するように配置されている
コネクタを提供する。
【0020】
また、本発明は、第14のコネクタとして、第13のコネクタであって、
前記保持部材は、前記相手側コネクタの一部が挿入される挿入口を有しており、
前記下板部は、前記挿入口内において露出している
コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、相手側コネクタの相手側係合部と係合させる係合部を上下方向ではなくピッチ方向に撓み可能なベースバネ部に設けたことから、低背化の要求を満たしつつ、十分なクリック感の創出や嵌合状態の確実な維持を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタと相手側コネクタとを備えるコネクタ組立体を示す上面斜視図である。
【図2】図1のコネクタ組立体のピッチ方向の端部近傍を示す拡大斜視図である。
【図3】図1のコネクタ組立体を示す底面斜視図である。
【図4】図1のコネクタ組立体をIV--IV線に沿って示す断面図である。
【図5】図1の相手側コネクタを示す上面斜視図である。
【図6】図5の相手側コネクタを示す底面斜視図である。
【図7】図5の相手側コネクタをVII--VII線に沿って示す断面図である。
【図8】図1のコネクタを示す上面斜視図である。
【図9】図8のコネクタのピッチ方向の端部近傍を示す拡大斜視図である。
【図10】図8のコネクタを示す底面斜視図である。
【図11】図8のコネクタを示す底面図である。
【図12】図11のコネクタのピッチ方向の端部近傍を示す拡大底面図である。
【図13】図8のコネクタをXIII--XIII線に沿って示す断面図である。
【図14】図8のコネクタに含まれるシェルを示す上面斜視図である。
【図15】図14のシェルを示す底面斜視図である。
【図16】図14のシェルを示す上面図である。
【図17】図14のシェルを示す底面図である。
【図18】図17のシェルのピッチ方向の端部近傍を示す拡大底面図である。
【図19】図12のコネクタの変形例を示す図である。
【図20】図12のコネクタの他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1乃至図4に示されるように、本発明の実施の形態によるコネクタ組立体10は、コネクタ(レセプタクルコネクタ)100と、コネクタ100と嵌合可能な相手側コネクタ(プラグコネクタ)200とを備えている。コネクタ100は基板(図示せず)に搭載されるものであり、相手側コネクタ200は複数のケーブル50を取り付けられるものである。
【0024】
図5乃至図7に示されるように、相手側コネクタ200は、金属からなる複数の相手側コンタクト210と、絶縁体からなる相手側保持部材220と、金属からなるカバーシェル(相手側シェル)230と、金属からなるベースシェル(相手側シェル)240と、金属からなるプルバー260とを備えている。本実施の形態による相手側コンタクト210とベースシェル240とは、インサート成型により、相手側保持部材220のモールド時に相手側保持部材220に組み込まれている。
【0025】
相手側保持部材220は、−X方向に張り出した嵌合部222と、ピッチ方向(Y方向)の両端に設けられた支持部224とを有している。嵌合部222は、板状の形状を有しており、ピッチ方向(Y方向)に長手を有する細長い板状の形状を有している。図7に良く示されるように、嵌合部222の上面には、相手側コンタクト210が少なくとも部分的に露出している。また、嵌合部222の下面には、ベースシェル240が少なくとも部分的に露出している。
【0026】
カバーシェル230は、相手側コンタクト210に対してケーブル50の導線を接続した後に、相手側保持部材220の上面をカバーするように取り付けられる。このカバーシェル230のピッチ方向(Y方向)の両端近傍にはピッチ方向(Y方向)内側に凹んだ係合孔(相手側係合部)252が形成されている。また、係合孔252のピッチ方向内側には相手側接点254が設けられている。
【0027】
図5及び図6に示されるように、プルバー260は、ピッチ方向(Y方向)に長い角ばったC字状の形状を有している。プルバー260の両端には、支持部224に回転自在に支持される被支持部262が設けられている。被支持部262は、ピッチ方向(Y方向)の内側に向かって延びており、支持部224内に受容されている。プルバー260には、後述するようにコネクタ100の一部に係止する相手側係止部264が設けられている。本実施の形態による相手側係止部264は2箇所設けられている。
【0028】
図8乃至図13に示されるように、コネクタ100は、金属からなる複数のコンタクト110と、絶縁体からなる保持部材120と、金属からなるシェル130とを備えている。本実施の形態によるシェル130は、インサート成型により、保持部材120のモールド時に保持部材120に組み込まれている。
【0029】
図8,図10及び図11に示されるように、保持部材120は、ピッチ方向(Y方向)に長手を有する細長い板状の形状を有している。この保持部材120には、図8,図9及び図13に示されるように、前端120fから後方向(−X方向)に向かって凹んだ挿入口122が形成されている。この挿入口122は、図4,図7及び図13から理解されるように、相手側コネクタ200の嵌合部222を受容するための部位である。
【0030】
図8乃至図13から理解されるように、保持部材120の後端120bには、後方向(−X方向)に突出した係止部124が設けられている。係止部124は、ピッチ方向(Y方向)において互いに離間した状態で2箇所設けられている。具体的には、係止部124は、ピッチ方向(Y方向)に所定の幅を有しており、保持部材120の後端120bの上部から後方向(−X方向)に張り出している。図2から理解されるように、コネクタ100と相手側コネクタ200とを嵌合した状態でプルバー260を後方向(−X方向)に倒すように回動させると、プルバー260の相手側係止部264が係止部124の下側にもぐり込み、それによってコネクタ100と相手側コネクタ200との嵌合状態の維持が図られる。即ち、係止部124は、相手側係止部264と共に、コネクタ100と相手側コネクタ200との嵌合状態を維持するためのものである。
【0031】
図13に示されるように、コンタクト110は、保持部材120の後端120bを通して保持部材120に圧入されている。それにより、コンタクト110の一部が挿入口122内に露出した状態で、コンタクト110は保持部材120に保持されている。図10及び図11に示されるように、コンタクト110は、ピッチ方向(Y方向)に並ぶように配置されている。
【0032】
図14乃至図18に示されるように、シェル130は、上板部132と、下板部134と、それらをピッチ方向(Y方向)の両端近傍において連結する連結部136と、上板部132のピッチ方向(Y方向)の両端近傍から後方向(−X方向)に張り出した補強部138とを有している。上板部132及び下板部134は、いずれもピッチ方向(Y方向)に長手を有する細長い板状の形状を有している。前後方向(X方向)におけるサイズ及びピッチ方向(Y方向)のサイズに関し、下板部134は上板部132よりも小さい。連結部136は、2箇所設けられており、いずれも上板部132と下板部134とを前側で連結している。補強部138は、2箇所設けられており、いずれもピッチ方向(Y方向)において連結部136よりも外側に位置している。
【0033】
上述したように、シェル130は、インサート成型により保持部材120に組み込まれている。その結果、図13に示されるように、下板部134は、挿入口122内に露出している。上述したように、挿入口122内にはコンタクト110の一部も露出している。従って、相手側コネクタ200の嵌合部222を挿入口122に挿入すると、コンタクト110と相手側コンタクト210との接続を図ることができると共にシェル130の下板部134と相手側コネクタ200のベースシェル(相手側シェル)240との接続を図ることができる。
【0034】
また、図8,図9,図12,図14及び図18から理解されるように、連結部136及び補強部138は、保持部材120内に埋設されている。連結部136は、挿入口122のピッチ方向(Y方向)外側に位置している。補強部138は、係止部124内に位置しており、係止部124を強度補強している。そのため、係止部124と相手側係止部264による嵌合状態の維持を確実なものとすることができる。
【0035】
図14乃至図18に示されるように、本実施の形態によるシェル130には、ホールドダウン140と複数のグランドタブ142が形成されている。
【0036】
ホールドダウン140は、コネクタ100を基板(図示せず)に搭載した際にその基板に固定される部位であり、上板部132のピッチ方向(Y方向)の両端から下方向(−Z方向)に向けて延びている。ホールドダウン140は、前方向(+X方向)と直交する面内(YZ平面内)においてL字状又は角ばったJ字状の断面形状を有している。図12に示されるように、本実施の形態によるホールドダウン140の前端140fは、保持部材120の前端120fよりも前方(+X側)に位置している。ホールドダウン140の後端140bは、保持部材120の前端120fよりも後端120bに近い位置に位置している。
【0037】
グランドタブ142は、コネクタ100を基板(図示せず)に搭載した際にその基板上のグランドパターン(図示せず)に接続される部位であり、図13に示されるように、下板部134から前方に突出している。具体的には、グランドタブ142は、ピッチ方向(Y方向)と直交する面内(XZ平面内)においてクランク状の断面を有しており、従って、下板部134と基板上のグランドパターン(図示せず)とを接続することができる。また、これらグランドタブ142は、図8及び図14に示されるように、ピッチ方向(Y方向)において互いに離間して形成されている。これらグランドタブ142により、下板部134と相手側コネクタ200のベースシェル(相手側シェル)240とが接続された際に、ベースシェル240から基板上のグランドパターン(図示せず)までの電気的経路を短くすることができる。即ち、本実施の形態によるコネクタ組立体10においては、グランドの強化が図られている。
【0038】
図8,図9,図12及び図13に示されるように、本実施の形態によるシェル130には、ベースバネ部150と、撓み限界規定部156とが更に設けられている。図15及び図18から理解されるように、本実施の形態によるベースバネ部150は、下板部134のピッチ方向(Y方向)の両端から上方(+Z側)に立ち上がり且つ前方(+X側)に延びる部位で構成されている。ベースバネ部150は、板状の形状を有しており、ピッチ方向(Y方向)と直交する面内(XZ平面内)において前方向(+X方向)に延びている。図9及び図12に示されるように、ベースバネ部150の後端150bは、保持部材120に保持されている。即ち、ベースバネ部150は、保持部材120から前方向(+X方向)に突出するように延びており、ピッチ方向(Y方向)に撓み可能となっている。
【0039】
図13に示されるように、ベースバネ部150には、前後方向(X方向)に沿って延びる2つのスリット150sが形成されている。2つのスリット150sは、上下方向(Z方向)において離れて位置している。図9及び図13から理解されるように、スリット150sの間には、ピッチ方向(Y方向)の内側に隆起するように曲げ形成されてなるバネ係合部(係合部)152が設けられている。即ち、バネ係合部152は、上下方向(Z方向)においてスリット150sに挟まれているため、弾性変形可能となっている。また、本実施の形態においては、バネ係合部152の前端152f及び後端152bは、ベースバネ部150と連続している。即ち、本実施の形態によるバネ係合部152は両持ち構造のバネとなっている。バネ係合部152にはピッチ方向内側に更に突出した接点154が設けられている。
【0040】
図2,図5及び図9から理解されるように、コネクタ100と相手側コネクタ200との嵌合状態において、バネ係合部152は相手側コネクタ200の係合孔252に係合し、接点154は相手側接点254に接触する。詳しくは、後方向(−X方向)に沿って相手側コネクタ200をコネクタ100に対して嵌合させる際、バネ係合部152が係合孔252の周囲に乗り上げることにより、ベースバネ部150が初期状態からピッチ方向(Y方向)の外側に向けて撓む。更に嵌合を進めると、ベースバネ部150が初期状態に向かって戻ろうとしつつバネ係合部152が係合孔252に係合する。本実施の形態においては、ベースバネ部150を上下方向(Z方向)ではなくピッチ方向(Y方向)に撓むバネとしたことから、バネ力を大きくとることができ、従って、本実施の形態によれば、バネ係合部152の係合孔252に対する係合の際に大きなクリック感を生じさせることができると共に嵌合後の状態維持を確実に行うことができる。
【0041】
図9及び図12に示されるように、撓み限界規定部156は、ベースバネ部150の前端150fから後方向(−X方向)に向けて折り返されている。このことから理解されるように、撓み限界規定部156の前端156fは保持部材120の前端120fよりも前方に位置している。即ち、本実施の形態においては、図12に示されるように、撓み限界規定部156の前端156f及びベースバネ部150の前端150f並びにホールドダウン140の前端140fは、保持部材120の前端120fよりも前方に位置している。この簡易な構造により、ベースバネ部150とバネ係合部152とがピッチ方向(Y方向)に撓む弾性変形可能なバネとすることができる。
【0042】
具体的には、撓み限界規定部156は、図9及び図12に示されるように、ベースバネ部150の前端150fからピッチ方向(Y方向)の外側に向かった後、後方向(−X方向)に向かうように折り曲げ形成されており、ピッチ方向(Y方向)と前方向(+X方向)とで規定される面内(XY平面内)において、L字状の断面形状を有している。特に、本実施の形態による撓み限界規定部156は、上下方向(Z方向)においてベースバネ部150と同じサイズを有する広部158と、その広部158よりも上下方向(Z方向)のサイズの小さい狭部160とを有しており、広部158と狭部160との境界となる肩部162は撓み限界規定部156の前端156fに形成されている。即ち、撓み限界規定部156のうち、後方向(−X方向)に向かって延びる部分(狭部160の一部)は、ベースバネ部150よりも上下方向(Z方向)においてサイズが小さく、従って、上板部132と干渉することなく上板部132の下側(−Z側)に位置させることができる。
【0043】
図12に最も良く示されているように、撓み限界規定部156は、ピッチ方向(Y方向)においてベースバネ部150とホールドダウン140との間に位置している。具体的には、撓み限界規定部156とホールドダウン140との距離が撓み限界規定部156とベースバネ部150との距離よりも極めて小さくなるように、撓み限界規定部156の位置は決められている。また、撓み限界規定部156は、前後方向(X方向)、即ち前方向(+X方向)及び後方向(−X方向)においてホールドダウン140と部分的に重複している。これにより、ピッチ方向(Y方向)の外側に向かう過度な力がベースバネ部150に対して加わった場合でも、撓み限界規定部156がホールドダウン140に当接し、ホールドダウン140が撓み限界規定部156をバックアップすることとなるため、ベースバネ部150の過度な撓み変形が抑制される。
【0044】
以上、本発明について実施の形態を掲げて具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、ベースバネ部150のようにピッチ方向(Y方向)に撓むバネをレセプタクルコネクタではなくプラグコネクタ側に設けることとしてもよいし、ベースバネ部150に設ける係合部を係合孔として相手側係合部を係合突起とすることとしてもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態においては、図12に示されるように、撓み限界規定部156の後端156bは保持部材120には保持されていない自由端であったが、本発明はこれに限定されず、図19に示されるコネクタ100′の撓み限界規定部156′のように後端156b′を保持部材120′の前端120f′に保持させることとして、ベースバネ部150のバネをより硬いものとしてもよい。同様に、図20に示されるコネクタ100″のように、保持部材120″のピッチ方向(Y方向)の両端に前端120f″よりも前方向(+X方向)に突出する突出部126を設けて、突出部126に撓み限界規定部156″の後端156b″を保持させることとしてもよい。
【0046】
更に、上述した実施の形態においては、図9及び図13に示されるように、バネ係合部152の前端152f及び後端152bの双方がベースバネ部150と連続していたが、いずれか一方のみがベースバネ部150と連続することとしてもよい。即ち、バネ係合部152を両持ち構造のバネではなく片持ち構造のバネとして構成してもよい。但し、係合孔(相手側係合部)252との係合の際の十分なクリック感を得るためには、バネ係合部152を両持ち構造のバネとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
10 コネクタ組立体
50 ケーブル
100,100′,100″ コネクタ(レセプタクルコネクタ)
110 コンタクト
120,120′,120″ 保持部材
120f,120f′,120f″ 前端
120b 後端
122 挿入口
124 係止部
126 突出部
130 シェル
132 上板部
134 下板部
136 連結部
138 補強部
140 ホールドダウン
140f 前端
140b 後端
142 グランドタブ
150 ベースバネ部
150f 前端
150b 後端
150s スリット
152 バネ係合部(係合部)
152f 前端
152b 後端
154 接点
156,156′,156″ 撓み限界規定部
156f 前端
156b,156b′,156b″ 後端
158 広部
160 狭部
162 肩部
200 相手側コネクタ(プラグコネクタ)
210 相手側コンタクト
220 相手側保持部材
222 嵌合部
224 支持部
230 カバーシェル(相手側シェル)
240 ベースシェル(相手側シェル)
252 係合孔(相手側係合部)
254 相手側接点
260 プルバー
262 被支持部
264 相手側係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側係合部の形成された相手側シェルを有する相手側コネクタと嵌合するコネクタであって、
複数のコンタクトと、前記コンタクトをピッチ方向に列設保持する保持部材と、前記保持部材に後端を保持されたベースバネ部とを備えており、
前記ベースバネ部は、前記ピッチ方向と直交する前方向に延びており、且つ、前記ピッチ方向に撓み可能であり、
前記ベースバネ部には、前記相手側係合部と係合し、弾性変形可能な係合部が設けられており、
前記前方向の逆方向である後方向に沿って前記相手側コネクタを前記コネクタに対して嵌合させる過程において、前記ベースバネ部が初期状態から前記ピッチ方向に撓んだ後、前記ベースバネ部が前記初期状態に向かって戻ろうとしつつ前記係合部が前記相手側係合部に係合するように構成されている、コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記ベースバネ部は、板状の形状を有しており、前記ピッチ方向と直交している
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタであって、
前記係合部は、前記ベースバネ部から前記ピッチ方向に隆起するように曲げ形成されたバネ係合部である
コネクタ。
【請求項4】
請求項3記載のコネクタであって、
前記バネ係合部の前端及び後端は、前記ベースバネ部と連続している
コネクタ。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載のコネクタであって、
前記バネ係合部には、前記ピッチ方向に突出した接点であって前記相手側コネクタが前記コネクタに嵌合する際に前記相手側シェルに接続する接点が設けられている
コネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコネクタであって、
基板に固定されるホールドダウンと、前記保持部材に組み込まれたシェルとを更に備えている
コネクタ。
【請求項7】
請求項6記載のコネクタであって、
前記ベースバネ部の前端から前記後方向に向けて折り返された撓み限界規定部を更に備えており、
前記撓み限界規定部は、前記ピッチ方向において前記ベースバネ部と前記ホールドダウンとの間に位置しており、前記前方向及び前記後方向において前記ホールドダウンと少なくとも部分的に重複している
コネクタ。
【請求項8】
請求項7記載のコネクタであって、
前記撓み限界規定部の前端及び前記ベースバネ部の前端並びに前記ホールドダウンの前端は、前記保持部材の前端よりも前方に位置している
コネクタ。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載のコネクタであって、
前記撓み限界規定部の後端は、前記保持部材に保持されている
コネクタ。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のコネクタであって、
前記ピッチ方向と直交し且つ前記後方向と直交する上下方向において、
前記撓み限界規定部の前端は前記ベースバネ部の幅と同一幅の広部を有し、前記撓み限界規定部の前記後方向に向かって延びる部分は前記広部よりも幅の狭い狭部を有する
コネクタ。
【請求項11】
請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のコネクタであって、
前記保持部材は前記ピッチ方向における端部に前記前方向に突出する突出部を有しており、
前記撓み限界規定部の後端が前記突出部に保持されている
コネクタ。
【請求項12】
請求項6乃至請求項11のいずれかに記載のコネクタであって、
前記ベースバネ部は、前記シェルと一体形成されている
コネクタ。
【請求項13】
請求項6乃至請求項12のいずれかに記載のコネクタであって、
前記シェルには、下板部と複数のグランドタブとが設けられており、
前記下板部は、前記相手側コネクタが前記コネクタに嵌合する際に前記相手側シェルと接続するものであり、且つ、前記ピッチ方向に長手を有する板状の形状を有するものであり、
前記グランドタブは、前記コネクタを前記基板に搭載した際に前記基板に接続されるものであり、且つ、前記ピッチ方向において互いに離間した状態で前記下板部から前方に突出するように配置されている
コネクタ。
【請求項14】
請求項13記載のコネクタであって、
前記保持部材は、前記相手側コネクタの一部が挿入される挿入口を有しており、
前記下板部は、前記挿入口内において露出している
コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−4221(P2013−4221A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132119(P2011−132119)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】