説明

コネクタ

【課題】接触信頼性を低下させることなく、コネクタ挿入力を低減できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ11は、雄端子13を収容した第1ハウジング15と、雄端子13が挿入される雌端子17を収容した第2ハウジング19とを備える。雌端子17は、雄端子13が挿入される角筒状の電気接続部67と、電気接続部67内に配設された弾性接触片71とを有する。弾性接触片71が、電気接続部67内に挿入された雄端子13に弾性接触する端子接触部73と、端子接触部73からコネクタ嵌合方向に沿って電気接続部外方へ延設された係合片部75とを有する。第1ハウジング15に雄端子13と平行に突設された係合突起43が、コネクタ嵌合時に係合片部75と係合することにより、雄端子13に弾性接触する端子接触部73が、雄端子13に対して押圧付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄端子を収容した雄ハウジングと、雄端子が挿入される角筒状の雌端子を収容した雌ハウジングとを備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタには、接続信頼性を向上させたり、コネクタ挿入力を低減させたりするものがある。
図5に示すコネクタ501は、雌コネクタハウジング503にダミータブ505を着脱可能に保持し、雄コネクタハウジング507にダミーばね509を着脱可能に保持する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ダミータブ505は、雌コネクタハウジング503のフード部511に形成されたタブ保持壁513に保持される。雄接続端子515と雌接続端子517との接続に際し、接触突起519と接触ばね521との接触に先駆けてダミータブ505とダミーばね509との接触でアーク放電を発生させ、本来の接触部である雄接続端子515と雌接続端子517がアーク放電で劣化や損傷を受けるのを防止し、コネクタの信頼性を向上させている。
【0004】
また、図6に示す電線接続用コネクタ525は、ハウジング527のコンタクト収容穴529に収容されたコンタクト531の固定接触子533と板ばね接触子535との間に接続用電線537の芯線539を挿入した後、スライダ541を図中矢印方向に摺動してハウジング527に挿入し、固定接触子533と板ばね接触子535とで接続用電線537の芯線539を押圧挟持して接続を保持する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この電線接続用コネクタ525によれば、スライダ541をハウジング527に挿入する前には、接触片543と板ばね接触子535との間に挿入用空隙545が形成されるので、挿入用空隙545へ芯線539を抵抗なく挿入できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−250610号公報
【特許文献2】実開昭61−48573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コネクタには、雄端子を収容した雄ハウジングと、雄端子が挿入される角筒状の雌端子を収容した雌ハウジングとを備えるコネクタがある。この種のコネクタにおいて、雄端子と雌端子の双方がそれぞれの端子収容室に形成されたランスによって係止される場合には、それぞれの端子が微少量移動可能となるクリアランスを有する。このクリアランスは、端子嵌合時に生じている端子相互間の位置ズレを吸収し、挿入力の増大を軽減する方向に作用する。
【0008】
しかしながら、雄端子金具が雄ハウジングに圧入係止されたり、雄ハウジングにインサート成形されたりしていると、端子相互間の位置ズレ吸収作用が小さくなり、コネクタの挿入力が高くなることがある。これに対し、コネクタの挿入力を低減するため、雌端子金具の弾性接触片の接触荷重を低くすると、電気的な接続信頼性が低下してしまう。
【0009】
また、図6に示した電線接続用コネクタ525のように、ハウジング527と別体のスライダ541を設けると、部品点数が増大し、製品コストが増大するとともに、部品管理も煩雑となった。更に、電線接続用コネクタ525では、挿入抵抗を無くすため、接触片543と板ばね接触子535との間に、芯線539と干渉しない大きな挿入用空隙545を形成する。このため、板ばね接触子535の変位量を大きくしなければならず、板ばね接触子535に変形が生じていれば十分な接触状態が得られず、接触信頼性が低下することが考えられる。
【0010】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、電気的な接続信頼性を低下させることなく、コネクタ挿入力を低減できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 雄端子を収容した第1ハウジングと、前記雄端子が挿入される雌端子を収容した第2ハウジングとを備えたコネクタであって、前記雌端子は、前記雄端子が挿入される角筒状の電気接続部と、前記電気接続部内に配設された弾性接触片とを有し、前記弾性接触片が、前記電気接続部内に挿入された前記雄端子に弾性接触する端子接触部と、前記端子接触部からコネクタ嵌合方向に沿って前記電気接続部外方へ延設された係合片部とを有し、前記第1ハウジング内に前記雄端子と平行に突設された係合突起が、コネクタ嵌合時に前記係合片部と係合することにより、前記雄端子に弾性接触する前記端子接触部が、前記雄端子に対して押圧付勢されることを特徴とするコネクタ。
【0012】
上記(1)の構成のコネクタによれば、コネクタ嵌合時には、第1ハウジング内の係合突起が弾性接触片の係合片部と係合することにより、雄端子に弾性接触する弾性接触片の端子接触部が雄端子に対して押圧付勢される。そこで、接触信頼性を低下させることなく、弾性接触片自体の弾性付勢力を小さくして、端子接触部が雄端子と接触する際の接触荷重を小さくできる。その結果、コネクタ嵌合時のコネクタ挿入力を低減できる。
【0013】
(2) 上記(1)の構成のコネクタであって、前記係合片部が、前記端子接触部よりも前記雌端子の挿入方向前方に位置することを特徴とするコネクタ。
【0014】
上記(2)の構成のコネクタによれば、係合片部が端子接触部よりも挿入方向前方に配設されるので、コネクタ嵌合の完了直前に係合片部に当接させる係合突起は、係合片部が端子接触部の後方に配設される場合に比べて短く形成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコネクタによれば、接続信頼性を低下させることなく、コネクタ挿入力を低減できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【図2】図1に示した雌端子を上下反転させて見た斜視図である。
【図3】図1に示したコネクタの嵌合開始直後の断面図である。
【図4】図1に示したコネクタの嵌合完了後の断面図である。
【図5】従来の接触信頼性を高めたコネクタの断面図である。
【図6】従来の挿入力を低減させた電線接続用コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係るコネクタを詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るコネクタ11は、雄端子13(図3参照)を収容した第1ハウジング15と、雄端子13が挿入される雌端子17を収容した第2ハウジング19とを備える。なお、以下の説明においては、第1ハウジング15と第2ハウジング19について、互いに相手側と嵌合する側を前方とする。
【0019】
第1ハウジング15は、絶縁性の合成樹脂材により成形され、前面に第2ハウジング19の挿入開口部21が形成される矩形箱状に形成される。第1ハウジング15の内方は、挿入開口部21によって開放される挿入空間23となっている。
挿入空間23のアーム対向内壁25には、コネクタ嵌合方向に沿う一対の誤結防止リブ27が離間して形成される。これら誤結防止リブ27は、第2ハウジング19の一対の誤結防止溝29に係合することにより、第2ハウジング19の誤挿入(上下反転した姿勢での挿入等)が規制されるようになっている。
【0020】
図3に示すように、アーム対向内壁25には、一対の誤結防止リブ27の間にロック用係止突起31が突設される。ロック用係止突起31は、第2ハウジング19のロックアーム33に形成されるアーム係合部35を係止する。
挿入空間23の奥側には後壁37が形成され、後壁37は挿入空間23後方のほぼ全域を塞いでいる。この後壁37には導電性金属からなる雄端子13が貫通される。
雄端子13は、後壁37を貫通して挿入空間23に配置される先端が電気接触部分であるタブ部39となる。タブ部39は、先端にテーパー部41を形成した等幅等厚の狭幅短冊板状に形成される。本実施形態では、図3の紙面表裏方向に3つの雄端子13が併設されている。この雄端子13は、後壁37に対して圧入、またはインサート形成によって固定されている。つまり、コネクタ嵌合時の端子相対位置を調整可能なクリアランスは形成されない。
【0021】
後壁37には、挿入空間23に向かって雄端子13と平行に突出する係合突起43が設けられている。係合突起43は、後壁37と一体成形され、雄端子13の略半分の突出長で突出している。係合突起43の先端下面側には、係合突起43の先端を先細りとする先端傾斜面45が形成される。係合突起43は、各雄端子13に対応して設けられる。従って、本実施形態において、係合突起43は、図3の紙面表裏方向に3つが併設されている。
第1ハウジング15の後部は、不図示の装置本体や回路基板等に取り付け固定され、雄端子13が装置本体の図示しない回路に接続されている。
【0022】
一方、第2ハウジング19は、絶縁性の合成樹脂材により成形され、後面に雌端子17を挿入するための雌端子挿入開口49が3つ開口している。図3に示すように、第2ハウジング19の内方にはそれぞれの雌端子挿入開口49によって開放する3つの雌端子収容室51が形成されている。雌端子収容室51には、基端側が第2ハウジング19に連続し先端側が自由端となったランス53が配置され、ランス53は雌端子収容室51に挿入された雌端子17の抜け止め用係止部55に先端側のランス係止部57を係止して雌端子17の抜けを規制する。
【0023】
第2ハウジング19の一外側面には、上記のロックアーム33と、一対の誤結防止溝29とが配設される。図3に示すように、ロックアーム33は、基端側が第2ハウジング19の前壁部59に連続するようにして形成されている。前壁部59には、雌端子収容室51と連通し、且つ雄端子13を受ける雄端子挿入口61が開口されている。前壁部59には、雄端子挿入口61を挟んでロックアーム33の反対側に、係合突起進入口63が開口される。この係合突起進入口63は、第2ハウジング19の内方空間部65に接続している。この内方空間部65には、第1ハウジング15と第2ハウジング19が嵌合されると、係合突起43が挿入されることとなる。
【0024】
図2に示すように、雌端子17は、導電性金属からなり、雄端子13が挿入される角筒状の電気接続部67と、該電気接続部67の後端から延出して電線80を圧着する電線加締め部76と、抜け止め用係止部55とを備える。
電線加締め部76は、電線80の導体を圧着して導通させる導体加締め片76aと、電線80の被覆部に加締め付けることで電線80を固定する被覆加締め片76bとを備える。
【0025】
電気接続部67の一外側面には、係合片貫通孔69が形成されている。図3に示すように、電気接続部67の内方には弾性接触片71が配設されている。弾性接触片71は、電気接続部67の展開形状の一部分として形成される。弾性接触片71は、電気接続部67内に挿入された雄端子13に弾性接触する基端側の端子接触部73と、端子接触部73からコネクタ嵌合方向に沿って電気接続部67外方へ延設された先端側の係合片部75とを有している。係合片部75は、係合片貫通孔69を貫通して電気接続部67の外方へと突出される。係合片部75は、端子接触部73よりも雌端子17の挿入方向前方に位置している。
【0026】
係合片部75は、第1ハウジング15と第2ハウジング19が嵌合された際、第1ハウジング15の後壁37に突設された係合突起43と干渉する。端子接触部73の先端側は、略S字状に折り曲げられて形成される。すなわち、係合片部75の先端は、係合突起43の先端傾斜面45と円滑に摺動するよう凸曲面となって形成されている。係合片部75を外方へ突出させた弾性接触片71は、この係合片部75が、係合突起43に押圧されることで、端子接触部73が雌端子収容室51の内方へと弾性変形して移動されることになる。
【0027】
本実施形態の雌端子17は、弾性接触片71が電気接続部67と同一の板金素板から形成される。電気接続部67は、板金素板を折り曲げ加工することで角筒状に形成されている。板金素板の一部分に形成された弾性接触片71の係合片部75は、係合片貫通孔69を貫通するように折り曲げ加工される。尚、弾性接触片71は、電気接続部67と別体に形成した後、レーザ溶接等により電気接続部67に固定する構造とすることもできる。
【0028】
次に、上記構成を有するコネクタ11の作用を説明する。
本実施形態のコネクタ11では、第1ハウジング15の挿入空間23(図3参照)に雄端子13と平行に突設された係合突起43が、コネクタ嵌合の完了直前に係合片部75と干渉する。
【0029】
しかしながら、図3に示すように、コネクタ嵌合開始時には、第1ハウジング15の係合突起43は、弾性接触片71の係合片部75と干渉しない。従って、コネクタ嵌合が開始されてから、係合突起43の先端が係合片部75に到達するまでの間は、弾性接触片71自体の小さい弾性付勢力によって端子接触部73が雄端子13のタブ部39に弾性接触する。そこで、雄端子13が電気接続部67に挿入される時の弾性接触片71の変形に要する力は小さいものとなる。つまり、挿入抵抗を殆ど増大させない。これにより、低挿入力でのコネクタ嵌合が実現する。
【0030】
そして、コネクタ嵌合完了の直前に、係合突起43の先端傾斜面45は弾性接触片71の係合片部75に当接する。この際、低挿入力での挿入方向の慣性力が働き、係合突起43が係合片部75に当接することによる抵抗は軽減される。係合突起43が係合片部75に当接した状態で更にコネクタ嵌合が進行すると、図4に示すように、係合突起43によって係合片部75が押圧され、その結果、弾性接触片71の端子接触部73が雄端子13に対して押圧付勢される。端子接触部73は、既に雄端子13に接触しているので、端子接触部73の変位量は小さくて済む。
【0031】
これにより、接触信頼性を低下させることなく、弾性接触片71自体の弾性付勢力を小さくして、端子接触部73が雄端子13と接触する際の接触荷重を小さくできる。
また、係合片部75が端子接触部73よりも挿入方向前方に配設されるので、コネクタ嵌合の完了直前に係合片部75に当接させる係合突起43は、係合片部75が端子接触部73の後方に配設される場合に比べて短く形成できる。
コネクタ11では、係合突起43が第1ハウジング15と一体に成形されているので、部品点数や組み立てコストが増大せず、部品管理も煩雑とならない。
【0032】
従って、本実施形態に係るコネクタ11によれば、接触信頼性を低下させることなく、コネクタ挿入力を低減できる。
なお、本発明のコネクタは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0033】
11…コネクタ
13…雄端子
15…第1ハウジング
17…雌端子
19…第2ハウジング
43…係合突起
67…電気接続部
71…弾性接触片
73…端子接触部
75…係合片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子を収容した第1ハウジングと、前記雄端子が挿入される雌端子を収容した第2ハウジングとを備えたコネクタであって、
前記雌端子は、前記雄端子が挿入される角筒状の電気接続部と、前記電気接続部内に配設された弾性接触片とを有し、
前記弾性接触片が、前記電気接続部内に挿入された前記雄端子に弾性接触する端子接触部と、前記端子接触部からコネクタ嵌合方向に沿って前記電気接続部外方へ延設された係合片部とを有し、
前記第1ハウジング内に前記雄端子と平行に突設された係合突起が、コネクタ嵌合時に前記係合片部と係合することにより、前記雄端子に弾性接触する前記端子接触部が、前記雄端子に対して押圧付勢されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記係合片部が、前記端子接触部よりも前記雌端子の挿入方向前方に位置することを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89421(P2013−89421A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228165(P2011−228165)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】