説明

コポリマー混合物を含有する分散剤

本願発明は、3〜90質量%のコポリマーHならびに3〜90質量%のコポリマーKを含有するポリマー組成物に関する。コポリマーHおよびKは、それぞれコポリマーH及びK中で、1:20〜1:1のモル比で、ポリエーテルマクロモノマー構造単位および酸モノマー構造単位を含み、かつ、コポリマーHの全構造単位の少なくとも20モル%およびコポリマーKの全構造単位の少なくとも25モル%が酸モノマー構造単位の形で存在する。コポリマーHのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも60モル%は、イソプレノールポリエーテル誘導体構造単位により表され、かつコポリマーKのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも60モル%はビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位により表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物、分散剤、該ポリマー組成物および該分散剤の製造、ならびに該ポリマー組成物の使用に関する。
【0002】
粉末状の無機物質または有機物質、例えばクレー、シリケート粉末、チョーク、カーボンブラック、岩粉および水硬性結合剤の水性スラリーを、それらの加工性、すなわち混練性、塗布性、噴霧性、ポンプ圧送性または流動性の改善のために、しばしば、分散剤の形態の添加剤に混ぜることが公知である。この種の添加剤は、固体凝集物の形成を防止し、すでに存在する、水和によって新たに形成された粒子を分散させ、かつ、このようにして加工性を改善することができるものである。この効果はまた、殊に、水硬性結合剤、例えばセメント、石灰、石膏、半水石膏または硬石膏を含む建材混合物の製造に際して適切に利用される。
【0003】
上述の結合剤を基礎とするこれらの建材混合物を、すぐに使用できる、加工可能な形態に変えるために、一般に、後続の水和工程もしくは硬化工程におけるよりずっと多くの混水量が必要である。過剰量の、後で気化する水によって形成される、コンクリート体における空隙部分が、機械的な強度および安定性を著しく悪化させる。
【0004】
所定の加工コンシステンシーの場合にこれらの過剰の水分を減少させるためにおよび/または所定の水/結合剤−比の場合に加工性を改善するために、一般的に減水剤または流動化剤と呼ばれる添加剤が使用される。この種の作用物質として、実際には、殊に、酸モノマーおよび/または酸誘導体モノマーとポリエーテルマクロモノマーとのラジカル共重合によって製造されるコポリマーが使用される。
【0005】
WO2005/075529には、酸モノマー構造単位以外に、ポリエーテルマクロモノマー構造単位としてヒドロキシブチルビニルポリエチレングリコール構造単位を有するコポリマーが記載される。この種のコポリマー型は、優れた適用特性を有することから、高性能流動化剤として広く普及している。
【0006】
記載のコポリマーは経済的な高性能流動化剤と見なされているにも関わらず、依然として、コポリマーの品質および経済性をなお一層改善するという試みが行われている。
【0007】
そのため本発明の基礎を成している課題は、殊に良好にコンクリート用の流動化剤として適している、水硬性結合剤用の経済的な分散剤を提供することである。
【0008】
この課題の解決は、3〜90質量%のコポリマーHならびに3〜90質量%のコポリマーKを含有するポリマー組成物であり、その際、コポリマーHおよびKはそれぞれ、ポリエーテルマクロモノマー構造単位および酸モノマー構造単位を示し、これらの構造単位は、コポリマーHおよびKにおいてそれぞれ1:20〜1:1のモル比で存在し、かつ、コポリマーHの全構造単位の少なくとも20モル%およびコポリマーKの全構造単位の少なくとも25モル%が、それぞれ酸モノマー構造単位の形で存在し、コポリマーHのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも60モル%は、一般式(Ia)
【化1】

[式中、Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、
aは同じかまたは異なって、4〜300の整数によって表される]のイソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αによって表され、
コポリマーKのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも60モル%は、
一般式(Ib)
【化2】

[式中、Rは同じかまたは異なって、水素原子、直鎖または分枝のC〜C12−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、フェニル基またはC〜C12−アリールアルキル基によって表され、
Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、
bは、同じかまたは異なって、6〜450の整数によって表される]のビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βによって表され、
その際、ビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値は、イソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値より少なくとも1.5倍高い。
【0009】
酸モノマー構造単位は、相当する酸モノマーの重合導入によって生じる。これに関連して、酸モノマーは、ラジカル共重合可能な、少なくとも1個の酸官能基を含み、かつ水性媒体中で酸として反応する、少なくとも1個の炭素二重結合を有するモノマーと解されるべきである。さらに酸モノマーは、ラジカル共重合可能な、加水分解反応に基づき水性媒体中で少なくとも1個の酸官能基を形成し、かつ水性媒体中で酸として反応する、少なくとも1個の炭素二重結合を有するモノマーと解されるべきである(例:無水マレイン酸または塩基性加水分解エステル、例えばエチルアクリレート)。ポリエーテルマクロモノマー構造単位は、相当するポリエーテルマクロモノマーの重合導入によって生じる。これに関連して、ポリエーテルマクロモノマーは本発明の範囲内において、少なくとも1種の炭素二重結合を有するラジカル共重合可能な化合物であり、この場合、これはエーテル−酸素原子を有する。したがって、コポリマー中に含まれるポリエーテルマクロモノマー構造単位は、エーテル−酸素原子を含有する少なくとも1個の側鎖を示す。
【0010】
一般的に、関連したポリエーテルマクロモノマー構造単位ならびに酸構造単位を有するコポリマーの作用様式は、構造パラメータにより決定されると言える。相応する高性能コポリマーの作用スペクトルは、最大減水性から最大スランプ保持性までの全帯域幅を範囲に含み、その際、減水性をもたらす構造パラメータが、良好なスランプ保持性の妨げになる。それゆえ、単位質量当たりの装入量以外に、側鎖の長さも、減水性能に関して重要である。そのつどの実際の適用において、頻繁に、短側鎖および長側鎖の選択について"取捨選択"が最も適しており、その際、短側鎖および長側鎖を混合してできたものが、この点に関して、たいていの場合、最良の解決手段を与えることが認められた。本発明は、この種の混合体が、経済的に、かつ高品質でいかにして提供されるのかを実現する。ビニルオキシポリエーテル型からのコポリマーKのポリエーテルマクロモノマー構造単位は、相応するモノマーのより高い反応性に基づき、比較的にイソプレノールポリエーテル型からのコポリマーHのポリエーテルマクロモノマー構造単位より簡単に、長いポリエーテル側鎖で(つまり、より簡単に、少ない残留モノマー含有率でも)重合導入され得る。したがってコポリマーKは、比較可能なコポリマーHよりも長いポリエーテル側鎖で量的に価値の高い方法で簡単に製造可能である。しかしながらコポリマーHは、さらに比較的簡単かつ効率的に(少ない残留モノマー含量で)、短い側鎖で製造可能であり、その際、イソプレノールポリエーテル型の相当するモノマーは、比較可能なコスト削減的な使用可能な出発材料と考えられる。要約すると、本発明によるポリマー組成物は、高品質の、かつ特に経済的な水硬性結合剤用の分散剤であると言える。
【0011】
本発明によるポリマー組成物は最大11〜75質量%のコポリマーHならびに6〜55質量%のコポリマーKを含有する。
【0012】
好ましくは、コポリマーHの全構造単位の少なくとも50モル%およびコポリマーKの全構造単位の少なくとも50モル%が、それぞれ酸モノマー構造単位の形で存在する。
【0013】
一般に、コポリマーHのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも85モル%は、一般式(Ia)
【化3】

[式中、Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、aは同じかまたは異なって、5〜39の整数によって表される]のイソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αによって表される。
【0014】
典型的には、コポリマーKのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも85モル%は、一般式(Ib)
【化4】

[式中、Rは同じかまたは異なって、水素原子、直鎖または分枝のC〜C12−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、フェニル基またはC〜C12−アリールアルキル基によって表され、
Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、
bは、同じかまたは異なって、41〜400の整数によって表される]のビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βによって表される。
【0015】
一般に、ビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値は、イソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値より少なくとも2倍高い。
【0016】
一般に、コポリマーHおよびKの酸モノマー構造単位は、それぞれ、一般式(IIa)
【化5】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され;
Xは同じかまたは異なって、NH−(C2n)[式中、n=1、2、3または4である]および/またはO−(C2n)[式中、n=1、2、3または4である]によって、および/または1個の存在しない単位によって表され、
は同じかまたは異なって、ならびにOH、SOH、PO、O−POおよび/またはパラ置換されたC−SOHによって表される(但し、Xが存在しない基である場合には、RはOHによって表される)]、
(IIb)
【化6】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され、
n=0、1、2、3または4であり、
は同じかまたは異なって、SOH、PO、O−POおよび/またはパラ置換された存在するC−SOHによって表される]、
(IIc)
【化7】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され;
Zは同じかまたは異なって、Oおよび/またはNHによって表される]および/または(IId)
【化8】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され;
Qは同じかまたは異なって、NHおよび/またはOによって表され;
は同じかまたは異なって、H、(Cn2n)−SOH(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C2n)−OH(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C2n)−PO(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C2n)−OPO(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C)−SOH、(C)−PO、(C)−OPOおよび/または(C2m−O−(A’O)α−R(式中、m=0、1、2、3,または4であり、e=0、1、2、3または4であり、A’はCx’2x’(式中、x’=2、3、4または5である)および/またはCHC(C)H−であり、αは1〜350の整数であり、その際、Rは同じかまたは異なって、非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表される)]の一つによって存在する。
【0017】
しばしば、コポリマーHおよびKの酸モノマー構造単位は、それぞれ酸モノマーであるメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物および/またはマレイン酸の半エステルの重合導入によって生じる。
【0018】
pH値に応じて、酸モノマー構造単位は、塩として脱プロトン化された形態でも存在してよく、その際、そのとき対イオンとして代表的なものはNa+、K+ならびにCa2+である。
【0019】
典型的には、コポリマーKのビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βは、アルコキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテル、これは好ましくは、41〜400個のオキシアルキレン基の算術的平均値を有するもの、の重合導入によって生じる。
【0020】
コポリマーHおよびKはそれぞれ、酸モノマー構造単位の同じまたは異なる型を示すものであってもよい。
【0021】
一般に、それぞれコポリマーHおよびKのすべての構造単位の少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%は、酸モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーの重合導入によって生じる。
【0022】
本発明はまた、少なくとも30質量%の水ならびに少なくとも10質量%の前述のポリマー組成物を含有する分散剤に関する。有利には、分散剤は水溶液の形態で存在する。
【0023】
さらに本発明は、本発明によるポリマー組成物または本発明による分散剤を製造するための方法に関し、その際、コポリマーHおよびKはそれぞれ互いに別個に水溶液中で製造され、引き続いて別個に製造されたコポリマーまたは別個に製造された水溶液を互いに混合する。通常は、酸モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーを、過酸化物含有レドックス開始剤系の存在下で水溶液中で、ラジカル重合によって反応させ、その際、水溶液の温度は重合の間に10〜45℃であり、かつ、pH値3.5〜6.5である。
【0024】
最後に本発明は、水硬性結合剤用および/または潜在水硬性結合剤用の分散剤としての、本発明によるコポリマーの使用に関する。本発明によるポリマー組成物は、例えばまた(殊に脱水された形態で)、セメント製品用の添加剤(純粋なポルトランドセメントもしくは複合セメントのための粉砕助剤および"減水剤")として使用されることができる。
【0025】
以下、本発明を、実施例に基づき詳説する。
【0026】
ポリマー1
攪拌機、pH電極および複数個の供給装置が備え付けられたガラス反応器に、脱イオン水400.0gおよびビニルオキシブチルポリエチレングリコール(4−ヒドロキシブチル−1−モノビニルエーテルに65モルのエチレンオキシドを付加した生成物)450.0gを装入し、かつ、15℃の重合開始温度に冷却した。
【0027】
別個の供給容器に、アクリル酸29.2gと、脱イオン水84.3gおよび40%濃度の水酸化カリウム溶液15.4gを、冷却しながら混合した。
【0028】
平行して、水中でのBrueggolit(登録商標)FF6(Brueggemann Chemicals GmbH社の市販製品)の6%の溶液を製造した(溶液B)。
【0029】
攪拌および冷却しながら、溶液A43.4mL、20%濃度の苛性ソーダ水溶液3.5mLおよび3−メルカプトプロピオン酸0.5gを、反応器中に計量供給した。残されている溶液Aに対して、3−メルカプトプロピオン酸0.9gを添加した。
【0030】
反応を開始するために、硫酸鉄(II)七水和物0.030gおよび過酸化水素1.9g(水中30%)を、順番に反応器中に添加した。同時に、攪拌された装入物への溶液Aおよび溶液Bの添加を始める。溶液Aの添加速度は、以下の計量供給プロフィールで再度示す。
【0031】
【表1】

【0032】
溶液Aと同時に、必要に応じて20%濃度の苛性ソーダ水溶液を計量供給して、反応混合物のpH値は5.5を下回らないようにする。
【0033】
溶液Bを、45分の言及された時間に亘って、一定の計量供給速度で添加した。溶液Aの計量供給後に、反応混合物が過酸化物不含になるまでさらに溶液Bを計量供給した。引き続いて、得られたポリマー溶液を20%濃度の水酸化ナトリウム溶液を用いて中和した(pH6.5〜7.0)。
【0034】
得られたコポリマーは、やや黄色みを帯びた溶液として生じ、かつ64000g/Mol(GPCにより測定されたもの)の質量平均分子量を示す。
【0035】
合成例2
攪拌機、pH電極および複数個の供給装置が備え付けられたガラス反応器に、脱イオン水125.0gおよびビニルオキシブチルポリエチレングリコール−1100(4−ヒドロキシブチル−1−モノビニルエーテルに22モルのエチレンオキシドを付加した生成物)137.5gおよびビニルオキシブチルポリエチレングリコール−500(4−ヒドロキシブチル−1−モノビニルエーテルに10モルのエチレンオキシドを付加した生成物)62.5g(0.125モル)を装入し、かつ、12℃の重合開始温度に冷却した。
【0036】
別個の供給容器に、冷却しながら、アクリル酸25.2g、2−ヒドロキシプロピルアクリレート9.8gおよび40%濃度の水酸化カリウム溶液12.5gを、脱イオン水101.8gと均質に混合した。引き続いて、3−メルカプロプロピオン酸2.4gを添加した(溶液A)。
【0037】
平行して、水中でのBrueggolit(登録商標)FF6(Brueggemann Chemicals GmbH社の市販製品)の6%の溶液を製造した(溶液B)。
【0038】
攪拌および冷却しながら、溶液A43.6mLならびに引き続いて20%濃度の苛性ソーダ水溶液12.2gを反応器中に添加した。
【0039】
その後に、順番に硫酸鉄(II)七水和物0.0465gを添加し、かつ、過酸化水素2.9g(水中30%)を装入混合物に添加することによって反応を開始した。同時に、攪拌された装入物への溶液Aおよび溶液Bの添加を始めた。
【0040】
残りの溶液Aの添加速度は、以下の計量供給プロフィールから得られる。
【0041】
【表2】

【0042】
溶液Bの添加速度は、溶液Aの計量供給の間において18mL/hに調整される。溶液Aの供給後に、反応混合物が過酸化物不含になるまで、さらに溶液Bを反応器中に計量供給した。
【0043】
反応時間中において、必要に応じて5.6を上回るpH値を維持するために20%濃度の苛性ソーダ水溶液を添加した。
【0044】
引き続き、得られたポリマー溶液を、20%濃度の水酸化ナトリウム溶液でpH6.5に調整した。
【0045】
得られたコポリマーは、やや黄色みを帯びた溶液の形で生じ、これは43.8%の固体含有率を示す。コポリマーの質量平均分子量は、23000g/Molであり、この場合、全変換率は(GPCスペクトルを用いて測定)は94%であった。
【0046】
合成例3
攪拌機、pH電極および複数個の供給装置を備え付けたガラス反応器中で、脱イオン水87.0gおよびイソプレノールポリエチレングリコール−1100 82.5g(3−メチルブト−3−エン−1−オールに対して23モルのエチレンオキシドから成る付加生成物)およびイソプレノールポリエチレングリコール−500 37.5g(3−メチルブト−3−エン−1−オールに10モルのエチレンオキシドを付加した生成物)を装入し、かつ重合温度15℃に冷却した。
【0047】
別個の供給容器に、冷却しながら、アクリル酸16.2g、2−ヒドロキシプロピルアクリレート5.9gおよび40%濃度の水酸化カリウム溶液9.2gを、脱イオン水49.5gと均質に混合した(溶液A)。
【0048】
平行して、水中でのBrueggolit(登録商標)FF6(Brueggemann Chemicals GmbH社の市販製品)の6%の溶液を製造した(溶液B)。
【0049】
攪拌および冷却しながら、溶液A27.5mL、3−メルカプロプロピオン酸1.1gならびに引き続いて20%濃度の苛性ソーダ水溶液0.5gを反応器中に添加した。残りの溶液Aに対して、3−メルカプトプロピオン酸0.9gを添加した。
【0050】
その後に、順番に硫酸鉄(II)七水和物0.0465gを添加し、かつ、過酸化水素2.9g(水中30%)を装入混合物に添加することによって反応を開始した。同時に、攪拌された装入物への溶液Aおよび溶液Bの添加を始めた。
【0051】
残りの溶液Aの添加速度は、以下の計量供給プロファイルから得られる。
【0052】
【表3】

【0053】
溶液Bの添加速度は、溶液Aの計量供給の間において27mL/hに調整される。溶液Aの計量供給後に、反応混合物が過酸化物不含になるまで、さらに溶液Bを反応器中に計量供給した。
【0054】
反応時間中において、必要に応じて5.1を上回るpH値を維持するために20%濃度の苛性ソーダ水溶液を添加する。
【0055】
引き続き、得られたポリマー溶液を、20%の水酸化ナトリウム溶液でpH6.5に調整した。
【0056】
得られたコポリマーは、やや黄色みを帯びた溶液の形で生じ、これは43.0%の固体含有率を示す。コポリマーの質量平均分子量は、28000g/Molであり、この場合、全変換率は(GPCスペクトルを用いて測定)は94%であった。
【0057】
使用試験:
ポルトランドセメント(CEM I 42.5 R)330kgならびに石灰岩粉30kgを16mmの最大粒径を有するFuller粒度曲線に従った組成の丸形骨材および、本発明による生成物または比較生成物を溶解された形態で含有する水152kgと攪拌した。コンクリート混合物の製造直後に、プラステシティー(Ausbreitmasses、DIN 12350−5による)の測定ならびにその60分に亘る時間の経時変化の測定を実施した。
【0058】
試験結果は、以下の表に示す。
【表4】

ポリマー1=合成例1によるポリマー;ポリマー混合物1a=合成例1によるポリマーおよび合成例2によるポリマーから成る物理的混合物、混合比(質量比)1:1;ポリマー混合物1b=合成例1によるポリマーおよび合成例3によるポリマーから成る物理的混合物、混合比(質量比)1:1
計量供給量、セメント正味重量に対するポリマー固体含量の質量%
【0059】
使用例から、ポリマー混合物1aおよび1bの使用特性が、測定精度の範囲内で同一であることが明らかであった。したがって、ポリマー混合物1bは、特に経済的な分散液であることが示され、それというのも、合成例3にしたがってポリマー混合物1bの場合に使用されるポリマー成分は、コスト削減的なイソプレノールポリエーテルマクロモノマー構成単位を含有するためである。同一の使用特性に基づいて、この経済的な利点は、場合による高い計量供給によって減少することはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜90質量%のコポリマーHならびに3〜90質量%のコポリマーKを含有するポリマー組成物であり、その際、コポリマーHおよびKはそれぞれ、ポリエーテルマクロモノマー構造単位および酸モノマー構造単位を示し、これらの構造単位は、コポリマーHおよびKにおいてそれぞれ1:20〜1:1のモル比で存在し、かつ、コポリマーHの全構造単位の少なくとも20モル%およびコポリマーKの全構造単位の少なくとも25モル%が、それぞれ酸モノマー構造単位の形で存在し、コポリマーHのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも60モル%は、一般式(Ia)
【化1】

[式中、Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、
aは同じかまたは異なって、4〜300の整数によって表される]のイソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αによって表され、
コポリマーKのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも60モル%は、
一般式(Ib)
【化2】

[式中、Rは同じかまたは異なって、水素原子、直鎖または分枝のC〜C12−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、フェニル基またはC〜C12−アリールアルキル基によって表され、
Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、
bは、同じかまたは異なって、6〜450の整数によって表される]のビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βによって表され、
その際、ビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値は、イソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値より少なくとも1.5倍高い、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
11〜75質量%のコポリマーHおよび6〜55質量%のコポリマーKを含有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
コポリマーHの全構造単位の少なくとも50モル%およびコポリマーKの全構造単位の少なくとも50モル%が、それぞれ酸モノマー構造単位の形で存在する、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
コポリマーHのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも85モル%は、一般式(Ia)
【化3】

[式中、Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、aは同じかまたは異なって、5〜39の整数によって表される]のイソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αによって表される、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
コポリマーKのポリエーテルマクロモノマー構造単位の少なくとも85モル%は、一般式(Ib)
【化4】

[式中、Rは同じかまたは異なって、水素原子、直鎖または分枝のC〜C12−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、フェニル基またはC〜C12−アリールアルキル基によって表され、
Aは、同じかまたは異なって、C2x(式中、xは2、3、4または5である)によるアルキレン基によって表され、かつ、
bは、同じかまたは異なって、41〜400の整数によって表される]のビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βによって表される、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値は、イソプレノールポリエーテル誘導体構造単位αに属する構造単位のアルキレン基Aの算術平均値より少なくとも2倍高い、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
コポリマーHおよびKの酸モノマー構造単位は、それぞれ、一般式(IIa)
【化5】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され;
Xは同じかまたは異なって、NH−(C2n)[式中、n=1、2、3または4である]および/またはO−(C2n)[式中、n=1、2、3または4である]によって、および/または1個の存在しない単位によって表され、
は同じかまたは異なって、OH、SOH、PO、O−POおよび/またはパラ置換されたC−SOHによって表される(但し、Xが存在しない基である場合には、RはOHによって表される)]、
(IIb)
【化6】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され、
n=0、1、2、3または4であり、
は同じかまたは異なって、SOH、PO、O−POおよび/またはパラ置換された存在するC−SOHによって表される]、
(IIc)
【化7】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され;
Zは同じかまたは異なって、Oおよび/またはNHによって表される]および/または(IId)
【化8】

[式中、Rは同じかまたは異なって、Hおよび/または1個の非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表され;
Qは同じかまたは異なって、NHおよび/またはOによって表され;
は同じかまたは異なって、H、(Cn2n)−SOH(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C2n)−OH(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C2n)−PO(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C2n)−OPO(式中、n=0、1、2、3または4である)、(C)−SOH、(C)−PO、(C)−OPOおよび/または(C2m−O−(A’O)α−R(式中、m=0、1、2、3または4であり、e=0、1、2、3または4であり、A’はCx’2x’(式中、x’=2、3、4または5である)および/またはCHC(C)H−であり、αは1〜350の整数であり、その際、Rは同じかまたは異なって、非分枝または分枝のC〜C−アルキル基によって表される)]の一つによって存在する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
コポリマーHおよびKの酸モノマー構造単位は、それぞれ酸モノマーであるメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物および/またはマレイン酸の半エステルの重合導入によって生じる、請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
コポリマーKのビニルオキシポリエーテル誘導体構造単位βは、アルコキシ化ヒドロキシブチルビニルエーテル(好ましくは、41〜400個のオキシアルキレン基の算術的平均値を有するもの)の重合導入によって生じる、請求項1から8までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
コポリマーHおよびKはそれぞれ、酸モノマー構造単位の同じまたは異なる型を示すものであってもよい、請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
コポリマーHおよびKの全構造単位のそれぞれ少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%は、酸モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーの重合導入によって生じる、請求項1から10までのいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
少なくとも30質量%の水ならびに少なくとも10質量%の請求項1から11までのいずれか1項に記載のポリマー組成物を含有する分散剤。
【請求項13】
水溶液の形態で存在する、請求項12に記載の分散剤。
【請求項14】
コポリマーHおよびKはそれぞれ互いに別個に水溶液中で製造され、引き続いて別個に製造されたコポリマーまたは別個に製造された水溶液を互いに混合する、請求項1から10までのいずれか1項に記載のポリマー組成物または請求項12または13に記載の分散液を製造する方法。
【請求項15】
酸モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーを、過酸化物含有レドックス開始剤系の使用下で水溶液中で、ラジカル重合によって反応させ、その際、水溶液の温度は重合の間に10〜45℃であり、かつ、pH値3.5〜6.5である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水硬性結合剤用および/または潜在水硬性結合剤用の分散剤としての、請求項1から15までのいずれか1項に記載のポリマー組成物の使用。

【公表番号】特表2012−511093(P2012−511093A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539999(P2011−539999)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065785
【国際公開番号】WO2010/076092
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】