説明

コラーゲン器具およびコラーゲン器具の作製方法

【課題】上のせグラフトと縫合可能なグラフトの両方として使用可能に構成された積層生体植込み型硬膜用グラフト製品を提供する。
【解決手段】積層生体植込み型硬膜用グラフト製品90が、上のせグラフトと縫合可能なグラフトの両方として使用可能に構成されている。硬膜用グラフト製品は、これが当てられる組織表面、例えば髄膜128の湾曲面の曲率に十分合致するよう十分に柔軟である。グラフト製品を使用することにより、縫合糸保持強度および流体不透性を含む特性を向上させることができる。体組織を置き換え、補強し、あるいは強化するためのインプラントとして硬膜用グラフト製品を使用するため、または付着バリヤとしての役目を持たせるために、硬膜用グラフトを体組織と接触状態で配置し、この硬膜用グラフトは体組織の曲率に合致する。縫合糸136を用いて硬膜用グラフトと体組織の接触状態を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本願は、2004年9月30日に出願された米国実用特許出願第10/955,835号(発明の名称:COLLAGEN AND METHOD OF PREPARING THE SAME)の一部継続出願であり、この米国実用特許出願は、2004年2月9日に出願された先の出願の米国仮特許出願第60/542,968号(発明の名称:COLLAGEN AND METHOD OF PREPARING THE SAME)および2004年4月27日に出願された先の出願の米国仮特許出願第60/565,747号(発明の名称:COLLAGEN DEVICE AND METHOD OF PREPARING THE SAME)の優先権主張出願であり、上述の特許出願の全てを参照することによりそのまま本明細書の一部とする。
【0002】
〔連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載〕
該当無し
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は、コラーゲン器具およびこのコラーゲン器具の作製方法に関する。本発明は特に、体組織に取って代わり、補強しあるいは強化するためのインプラントとして用いられ、付着バリヤとして用いられ、または水分保持、止血または組織保護のための短時間体接触手段として用いられるコラーゲン器具を作製する方法に関する。
【0004】
〔発明の背景〕
ヒトの脳および脊髄は、髄膜で覆われており、かかる髄膜の一体性は、中枢神経系の動作にとって重要である。ヒトの髄膜の一体性が、意図的にまたは偶発的に損なわれると、もしその髄膜を修復することができなければ、重篤な結果が生じる場合がある。髄膜は、3つの互いにオーバーラップした組織層を含み、これら組織層は、外側から順番に、硬膜(dura materまたはdura)、クモ膜、軟膜である。損傷した髄膜の修復は、損傷した硬膜に移植され、損傷した組織に取って代わると共に(あるいは)再生するよう設計されている植込み可能および(または)再吸収性の作製物(硬膜用代用品として知られている)に大きく焦点を当てている。
【0005】
従来型硬膜用代用品は、上のせ(例えば、縫合糸無し)グラフトか縫合可能なグラフトかのいずれかの範疇に分けられる。上のせグラフトは、損傷した硬膜の領域を覆ったときに硬膜とオーバーラップしてこれに接触する。このような接触により、上のせグラフトは、髄膜および(または)脳の幾何学的形状または全体的な曲率に実質的に合致する。上のせグラフトの重量それ自体により、グラフトは組織に対するグラフトの位置決め状態を維持するよう定位置に保持される。縫合可能な硬膜用グラフトは、損傷した硬膜の領域を覆い、グラフトを定位置に維持するための縫合糸を用いて髄膜に取り付けられる。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、複数個の細孔を有するコラーゲン器具に関し、これら細孔の大部分は、10μm未満の直径を有する。驚くべきことに、本発明に従って作られたコラーゲン器具は、このコラーゲン器具が不規則な形状の表面に合致するほど十分柔軟性があるが、カールせずまたは濡れてもそれ自体に、器械にまたは執刀医の手袋を着けた手にくっつかないほど硬いので、良好な取り扱い特性を備えている。加うるに、本発明のコラーゲン器具は、非常に良好な強度特性、例えば、引張強度を有し、それにより外科医にとって取り扱いが非常に容易になる。さらに、本発明のコラーゲン器具は、従来型コラーゲン器具、例えば現在入手できるコラーゲン硬膜用グラフトと同じ形状または寸法に作ることができ、しかも、依然として外科医に優れた強度および取り扱い特性を有する器具を提供する。
【0007】
本発明に従って作られたコラーゲン器具は、その細孔の大部分が10μm未満の直径を有しているにもかかわらず、実質的に十分に再吸収性である。驚くべきことに、本発明者は、当業者の考えによれば細孔の大きさが成長中の髄膜組織を侵入させることができるほど十分大きくなければならない(内部細孔については150μmの細孔直径が好ましく、表面細孔については70μmが好ましい)ことにもかかわらず、本発明のコラーゲンは、成長中の髄膜組織で置き換えられ、たとえその細孔の大部分の直径が10μm未満であっても実質的に十分に再吸収性であることを発見した。本発明の例示の実施形態によれば、コラーゲン器具を作製するには、混合物を形成するのに十分な期間にわたりコラーゲンと純水を混合する。混合物のpHを、コラーゲンを実質的に可溶化するのに十分なpHレベルに調整する。第1の所定量の混合物を容器内に入れる。混合物に凍結乾燥処理を施し、この混合物をコラーゲン器具の状態に形成する。また、コラーゲン器具を架橋する。コラーゲン器具は、複数個の細孔を有し、これら細孔の大部分は、10μm未満の直径を有する。体組織を置き換え、補強し、あるいは強化するためのインプラントとしてコラーゲン器具を使用するため、または付着バリヤとしての役目を持たせるために、コラーゲン器具を体組織と接触状態で配置し、この接触状態は、コラーゲン器具が実質的に体組織内に再吸収されるまで維持される。
【0008】
一実施形態では、硬膜用グラフトは、実質的に平坦で互いに向かい合った面を備えたコラーゲン層と、コラーゲン層の少なくとも一方の平坦面に配置された少なくとも1つの補強層とを有する。コラーゲン層と補強層の両方は、組織の曲率に実質的に合致するよう構成されている。補強層は、コラーゲン層の縫合糸保持強度よりも大きな縫合糸保持強度を有する。したがって、本発明の硬膜用グラフトは、上のせグラフトと縫合可能なグラフトの両方として用いられるよう構成されている。硬膜用グラフトが湾曲した組織表面に実質的に合致するので、硬膜用グラフトは、硬膜用グラフトと組織との間に存在する隙間を最小限に抑える。加うるに、硬膜用グラフトは、硬膜用グラフトが組織に縫合されている間または硬膜用グラフトが組織に縫合された後のいずれにおいても縫合糸引き抜き応力に耐えることができる。
【0009】
本発明は、添付の図面と関連して行われる以下の詳細な説明から十分に理解できる。
【0010】
〔発明の詳細な説明〕
上記は、本発明の原理の例示に過ぎず、当業者であれば本発明の範囲および精神から逸脱することなく種々の変更を行うことができることは理解されよう。本明細書に引用した技術文献の全ての記載内容全体を明示的に本明細書の一部とする。
【0011】
本発明のコラーゲン器具を作製するには、混合物を形成するのに十分な期間をかけてコラーゲンと純水を混ぜ合わせる。コラーゲンの純水に対する比は、約0.4重量%〜5.0重量%である。次に、混合物のpHを、コラーゲンを実質的に可溶化するのに十分なpHレベルに調整する。次に、所定量の混合物を容器内に入れる。次に、混合物を凍結乾燥法によりコラーゲンシートに形成する。混合物をブロック、筒体または他の所望の形状に形成してもよく、以下、これらをまとめてコラーゲンシートと称する。次に、コラーゲンシートを架橋させる。架橋中、コラーゲンシートを好ましくは架橋剤、例えばホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドの液体または蒸気形態に暴露させる。しかる後、架橋剤が蒸気である場合にはコラーゲンシートを通気し、または架橋剤が液体である場合にはコラーゲンシートを再凍結乾燥させる。混合物をコラーゲンシートの状態に形成するステップと架橋ステップを逆にしてもよい。
【0012】
その結果得られたコラーゲンシートは、複数個の細孔を有し、これら細孔の大部分は、10μm未満の直径を有する。好ましくは、細孔のうち80%以上は、10μm未満の直径を有する。より好ましくは、細孔のうち90%以上は、10μm未満の直径を有する。さらにより好ましくは、細孔のうち95%以上は、10μm未満の直径を有する。さらにより好ましくは、細孔のうち98%以上は、10μm未満の直径を有する。さらにより好ましくは、細孔のうち殆ど全ては、10μm未満の直径を有する。
【0013】
コラーゲンシート100を所定の形状に切断しまたは適切な大きさに形成された所定の形状に形成してもよい。シート100は、頂面102、底面104および周縁部106を有する。各所定形状の縁部106は、図1A〜図1Cに示すようにこれをそのままの位置(in situ)で濡らしたときに縁部の滑らかなプロフィールの実現を可能にするよう面取りされてもよい。面取り角度Dは好ましくは、頂面または底面を起点として回って、垂直(鉛直)線から約30°〜75°である。
【0014】
変形実施形態では、架橋前に、コラーゲンシートをローラで圧縮してもよい。コラーゲンシートをコラーゲンシートの元の厚さCの約1/2〜1/8の間まで圧縮することができる。
【0015】
使用にあたり、硬膜用代替品または付着バリヤとして用いるため、または水分保持、止血または組織保護のための短時間体接触のため、コラーゲンシートを体組織と接触状態に配置してもよい。インプラントとして用いられる場合、コラーゲンシートと体組織との間の接触状態を維持する。現在約9ヶ月であると推定される時点で、コラーゲンシートは、完全に再吸収されているであろう。コラーゲンシートを体組織と接触状態に配置すると、コラーゲンシートは、外科医の手を含む器械に粘着せずまたは付着しない。また、万が一コラーゲンシートを再位置決めする必要がある場合、外科医はコラーゲンシートがちぎれることなく再位置決めを行うことができる。
【0016】
コラーゲンシートは、非常に良好な強度特性、例えば引張強度を有し、それにより外科医にとって取り扱いが非常に容易になる。ASTM638タイプVに従って行われる試験の際、本発明のコラーゲンシートの平均引張強度は、6.0psiよりも高く、試験を行ったロット1つあたり7.43psi〜9.76psiであり、試験を行った全てのロットについて平均約8.74psiであった。現在入手できるコラーゲンシートを試験し、これらコラーゲンシートの平均引張強度は、約6.00psiであった。
【0017】
当業者であれば、本明細書において説明するコラーゲン器具はまた、生物学的活性物質、例えば、成長因子、自己細胞、骨髄、抗生物質、抗ガン剤、遺伝子作成物およびDNA作成物を投与するのにも使用できることは容易に理解されよう。
【0018】
コラーゲン器具およびこれを作製する方法を用いると、図2、図7Aおよび図7Bに示すように、多層製品または積層品のコンポーネントを提供することができる。コラーゲンシート100は、図示のように1つ以上の層またはラミネート110,112を含むことができる(図2は、1つのラミネートを示し、図7Aおよび図7Bは、2つのラミネートを示している)。説明対象のコラーゲンシートを次のもの、即ち、フィルム、フェルト、織りマトリックス、または不織マトリックス、メッシュ、または第2のコラーゲンシートのうちの1つまたは任意の数のものと積層しまたは違ったやり方でこれに取り付けてもよい。例えば、説明しているコラーゲンシートを不透性フィルムと組み合わせて水密作成物を提供してもよい。最終の多層作成物は、以下の特徴、即ち、縫合糸保持強度、流体不透性、再吸収持続時間、取り扱い特性、剛性および(または)組織への付着性のうちの1つまたは任意の数のものを向上させるために製造される。
【0019】
コラーゲンシートは、コラーゲンシートの処理時点においてフィルムまたは織りマトリックスの層を含むことができ、かかる層は、コラーゲンシートの境界部内に組み込まれるようになっている。別法は、第2の層を種々の方法でコラーゲンシートに被着させることであり、かかる方法としては、接着剤、ヒートプレス(熱圧)、オーブン内での加熱(減圧の有無を問わない)、材料を発熱体または加熱空気に暴露させること、および1つまたは両方の材料の部分的処理中層を組み合わせることが挙げられるが、これらには限定されない。積層品または多層製品は、再吸収可能である、または、再吸収可能ではない任意の生体適合性材料を含んでもよい。加うるに、コラーゲン器具に追加される層は、材料内に混ぜ込まれまたは材料に塗布された生物学的活性物質(例えば、抗生物質、成長因子、止血因子、粘着防止剤、抗ガン剤)を有してもよく、他方、かかる層は、コラーゲン器具に被着状態であってもよく、被着状態でなくてもよい。
【0020】
ラミネート構造体の種々の寸法は、互いに合致する寸法から1つの層、あるいは、多数の層が他の層のうちの1つよりも大きなまたは小さな寸法を有するものまで様々であってもよい。このように、1つの層の優先的な特性が、外科手技の必要性に応じて所望通り或る特定の場所で強調される場合がある。
【0021】
積層生体植込み型硬膜用グラフト製品90が、図2〜図7Bに更に示されている。生体適合性である硬膜用グラフト90は、上のせグラフトと縫合可能なグラフトの両方として使用できるよう構成されている。積層硬膜用グラフト製品90は、水和状態では、これが当てられる組織表面の曲率に十分に合致するよう十分に柔軟性がある。一実施形態では、硬膜用グラフト90は、これが髄膜の湾曲面に合致することができるのに十分な柔軟性を有する。上述したように、積層グラフト製品を用いると、向上した特性を持つことができ、かかる特性としては、縫合糸保持強度および流体不透性が挙げられる。
【0022】
図2は、コラーゲン層100および補強層120を有する積層硬膜用グラフト90の一実施形態を示している。例えば図1A〜図1Cについて上述したコラーゲン層100は、第1の平坦な表面122およびこれと反対側に位置する第2の平坦な表面124を有するシートとして形成されている。コラーゲン層100は、湾曲した組織表面に実質的に合致するよう構成されている。例えば、コラーゲン層100は、実質的に多孔質の構造体を構成し、この多孔質構造体は、或る程度は、コラーゲン層100が組織表面の全体的な幾何学的形状または曲率に実質的に合致しまたはこれを辿ることができるレベルの応従性をコラーゲン層100に与える。
【0023】
補強層120は、積層グラフト90がこれを当てた表面に合致できる能力を依然として保ちながら、単独で使用された場合でもコラーゲン層100の或る特定の特性(例えば、縫合糸保持強度、流体不透性)を高める生体適合性シートまたはフィルムであってもよい。例えば、補強層120は、硬膜用グラフト90の所望レベルの応従性を保持するフルオロポリマー、例えばGORTEXから形成することができる。別の例では、補強層120は、生体吸収性フィルム、例えば、ポリ乳酸(polylactic acid:PLA)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone:PCL)、ポリジオキサノン(polydioxanone:PDO)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate:TMC)、これらのコポリマーまたは配合物で形成されたものであってもよい。補強層120の厚さは、生体吸収性フィルムで形成された場合、コラーゲン層100の厚さと共に、硬膜用グラフト90の全体的な順応性に影響を及ぼす。例えば、コラーゲン層100は、約0.508mm(0.02インチ)〜5.08mm(0.20インチ)の厚さ133を有する。硬膜用グラフト90の順応性を維持するため、生体吸収性補強層120は、約0.025mm(0.001インチ)〜0.406mm(0.016インチ)の厚さ134を有する。コラーゲン層100と補強層120は、組合せ状態では、約0.533mm(0.021インチ)〜5.486mm(0.216インチ)の厚さを有する順応性硬膜用グラフト90を構成する。
【0024】
図2に示すように、補強層120は、コラーゲン層100の第1の平坦面124に隣接して位置決めされる。補強層120を種々の仕方でコラーゲン層100と組み合わせることができる。例えば、2つの層100,120を互いに物理的に組み合わせてもよく、あるいは、単に互いに隣接して配置してもよい。
【0025】
補強層120とコラーゲン層100を物理的に接合する技術の例としては、ヒートプレス(熱圧)法、例えばオーブン内での加熱(減圧の有無を問わない)、材料を発熱体または加熱空気に暴露させること、あるいは、補強層120をコラーゲン層100の平坦面124に超音波を用いてスポット溶接をすることが挙げられる。これら手順により、補強層120の一部がコラーゲン層100に融着し、それにより補強層120がコラーゲン層100に固定され、植込み後におけるコラーゲン層100に対する補強層120の相対的変位またはずれが最小限に抑えられる。補強層120をコラーゲン材料の処理中にコラーゲンに導入してもよい。補強層120を最終の処理(例えば、凍結乾燥)に先立ってコラーゲン混合物の頂部上または層相互間に配置してもよい。
【0026】
上述したように、補強層120は、硬膜用グラフト90の植込みに先立って、コラーゲン層100に物理的に結合しまたは取り付ける必要はない。その代わり、硬膜用グラフト90と接触状態にある体液(例えば、脳脊髄液)の表面張力により、植込み中、補強層120とコラーゲン層100との間の接触状態が維持される。一実施形態では、補強層120とコラーゲン層100を植込み後互いに物理的に接合してもよい。例えば、硬膜用グラフト90を髄膜に取り付ける場合、縫合糸を例えば図4に示すグラフト90の周囲にぐるりと施すのがよい。縫合糸が硬膜用グラフト90を髄膜に取り付けている間、縫合糸はまた、互いに別個の非取り付け状態の補強層120とコラーゲン層100を互いに物理的に結合する。
【0027】
上述したように、補強層120は、コラーゲン層100の或る特定の特性、例えば、コラーゲン層100の縫合糸保持強度を高めることができる。一例では、補強層120は、コラーゲン層100の縫合糸保持強度よりも高い縫合糸保持強度を有する。この特徴により、硬膜用グラフト90が組織に縫合されている間か硬膜用グラフトを組織に取り付けた後かのいずれにおいても硬膜用グラフト90の耐引き裂き性が向上し、積層グラフト製品90は、縫合糸の引き抜きに左右されにくくなることが可能である。例えば、コラーゲン層100の縫合糸保持強度は単独では、約0.311ニュートン(約0.07重量ポンド)である。補強層120により、コラーゲン層100の縫合糸保持強度が高くなり、その結果、硬膜用グラフト90(例えば、補強層120とコラーゲン層100の組合せ)についての縫合糸保持強度は、例えば、約8.896ニュートン(約2重量ポンド)〜17.79ニュートン(4重量ポンド)になる。したがって、補強層120は、コラーゲン層と組合せ状態で、髄膜128への硬膜用グラフト90の堅固な縫合を可能にし、それにより髄膜128に対する硬膜用グラフト90の相対位置が維持され、しかも、縫合糸が硬膜用グラフト90から不用意に引きちぎれ、引き抜かれまたはこれから抜けた状態になる恐れが最小限に抑えられる。
【0028】
上述したように、コラーゲン層100は、脳132からの流体、例えば、脳脊髄液(CSF)の流通に抵抗する実質的に多孔質のスポンジ状構造体を構成する。しかしながら、コラーゲン層は、流体不透性ではない。一実施形態では、補強層120は、実質的に流体不透性であり、或るレベルの流体不透性を硬膜用グラフト90に与える。例えば、補強層120をポリ乳酸(PLA)、ポリジオキサノン(PDO)または上述したような他の材料のフィルムとして形成してもよい。このような材料により、流体、例えばCSFの流通が制限される。流体不透性補強層120は、コラーゲン層100と関連して用いられた場合、脳132からコラーゲン層100を通過するCSFの流れを制限しまたは最小限に抑える。
【0029】
硬膜用グラフト90を外科手技中利用すると、損傷を受けた髄膜を修復しまたはこれに取って代わることができる。図3および図4は、外科手技中における髄膜に対する硬膜用グラフト90の位置決めおよび結合の例を示している。図3は、損傷した硬膜部位126を有する頭蓋125の一部を示している。植込みの間、硬膜用グラフト90を頭蓋125の頭骨133の開口部129中に挿入し、部位126のところで髄膜128と接触状態に配置する。例えば、硬膜用グラフト90は、硬膜用グラフト90の縁部127が髄膜128の一部とオーバーラップし、硬膜130の非損傷部分に接触するよう部位126のところに配置される。
【0030】
硬膜用グラフト90が硬膜130に接触しているとき、硬膜用グラフト90(例えば、水和硬膜用グラフト)は、髄膜128の全体的な曲率に実質的に合致する。例えば、図3および図4に示すように、硬膜用グラフト90のコラーゲン層100と補強層120の両方は、髄膜128の曲率に実質的に同一の湾曲した形状を形成する。硬膜用グラフト90が同じ形を取ることにより、硬膜用グラフト90と髄膜128との間に存在する隙間が最小限に抑えられ、それにより、硬膜用グラフトは、硬膜用グラフト90の植込み後、脳132内にCSF131を実質的に収容することができる。
【0031】
同形性を持つグラフトでは、硬膜用グラフト90は、硬膜用グラフト90を髄膜128に固定するのに縫合糸を必要としない上のせグラフトとして使用できる。したがって、硬膜用グラフト90の重量により、部位126に対する硬膜用グラフト90の相対的位置決め状態が維持される。別の実施形態では、縫合糸136を用いて硬膜用グラフト90を髄膜128に固定してもよい。図4に示すように、1本以上の縫合糸136を硬膜用グラフト90に通し、そして硬膜用グラフト90の縁部または周囲127に沿ってぐるりと髄膜128に通す。補強層120が硬膜用グラフト90の一部として設けられているので、コラーゲン層100の縫合糸保持強度が高められ、縫合糸136が不用意にコラーゲン層100から引きちぎれまたは引き抜かれる恐れが最小限に抑えられる。
【0032】
硬膜用グラフト90を部位126のところにいったん植込むと、コラーゲン層100は、周囲組織との付着部の形成に抵抗する。したがって、髄膜に対する硬膜用グラフト90の向きは、硬膜用グラフト90と周囲組織の幾つかの部分との間の付着を最小限に抑えるよう選択することができる。例えば、図3に示すように、硬膜用グラフト90のコラーゲン層100は、頭骨133とは反対側に髄膜128の方へ差し向けられる。このような配向状態では、硬膜用グラフト90のコラーゲン層100は、髄膜128との付着部の形成を制限しまたはこれに抵抗する。変形例として、硬膜用グラフト90を補強層120が髄膜128に接触するよう差し向ける場合、コラーゲン層100と頭骨133との間の付着部の形成の恐れが減少する。
【0033】
当業者であれば理解されるように、積層硬膜用グラフト製品190を種々の仕方で構成することができる。図5に示すような一構成例では、硬膜用グラフト190は、2つの別々のコラーゲン層、即ち、第1のコラーゲン層100′および第2のコラーゲン層100″を有し、これら層100′,100″相互間には補強層120が設けられている。この構成例では、硬膜用グラフト90は、手術部位のところで組織に接触することができる2つの役に立つ平坦なコラーゲン表面140,142を有する。例えば図3に示す部位126のところでの硬膜用グラフト190の植込み後、コラーゲン層100′,100″の両方の表面140,142は、硬膜用グラフト190と周囲の組織(例えば、髄膜128または頭骨133)との間の付着部の形成を制限しまたはこれに抵抗する。
【0034】
図6に示すような実施形態では、硬膜用グラフト290は、コラーゲン層100の平坦面122に被着されると共にコラーゲン層100の周囲または縁部127に沿ってぐるりと位置決めされた補強層120を有する。この実施形態では、硬膜用グラフト290は、手術部位のところで組織に接触することができる2つの役に立つ平坦なコラーゲン表面122,124を有する。この部位のところでの硬膜用グラフト290の植込み後、コラーゲン層100,100″の両方の表面122,124は、硬膜用グラフト290と周囲組織(例えば、髄膜128または頭骨133)との間の付着部の形成を制限しまたはこれに抵抗する。
【0035】
図7Aおよび図7Bに示すような更に別の実施形態では、硬膜用グラフト390は、コラーゲン層100の第1の平坦面122に被着された第1の補強層120′およびコラーゲン層100の第2の平坦面に被着された第2の補強層120″を備えたコラーゲン層100を有する。例示の一実施形態では、第1の補強層120′および第2の補強層120″は、薄手の孔を有するポリマーシートから形成される。適当なポリマーシートの例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリジオキサノン(PDO)の配合物またはコポリマーが挙げられる。細孔または孔は、これらが組織の内方成長を可能にするので有用であると考えられる。
【0036】
〔実施例〕
次に図8を参照すると、本発明のコラーゲン器具を作製するための方法10に従って形成されたコラーゲン器具の非限定的な例が示されている。この方法は、コラーゲン粉末を純水に、好ましくはコラーゲン粉末の純水に対する比が約0.4重量%から5.0重量%の割合で、添加してコラーゲン粉末を水和する第1のステップ12を有する。約0.40重量%から約3.50重量%の割合がより好ましいが、約0.60重量%から約1.20重量%の割合が最も好ましい。コラーゲン粉末は、ニュージャージー州モントベール・フィリップス・パークウェイ14所在のデータスコープ(Datascope)社から市販されている。
【0037】
次に、ステップ14において、水和コラーゲンを混合物を形成するのに十分な時間をかけて純水と混ぜ合わせる。例示の実施形態では、この期間は好ましくは、約3分間〜6分間である。混合は好ましくは、まず最初に、コラーゲン繊維の剪断を最小限に抑えまたはゼロの状態でコラーゲンを可溶化するのに十分な比較的動作が緩やかな(緩動型)ミキサを用いて達成する。この緩動型ミキサは、0〜1,000rpmで混合を行い、アイルランド国クーロックダブリン所在のジェネラル・シグナル(General Signal)社の一部門であるライトニン(Lightnin)社から市販されているLightnin(登録商標)ミキサモデルL1U03であるのがよい。
【0038】
ステップ16において、混合中、混合物のpHを所定のpHレベルに調整する。一実施形態では、所定のpHレベルは好ましくは、約1.5〜4.0であり、これは、混合物の等電点よりも低い。別の実施形態では、所定のpHレベルは好ましくは、約11.0〜13.5であり、これは、混合物の等電点よりも高い。pHの調整の開始時に、ステップ18に示すように、タイマを起動する。混合物のpHを好ましくは、混合物が緩動型ミキサを用いて約400〜1,000rpmの混合速度で混合されている間、約3.0〜3.2のpHへの調整を達成する。pHを調整するために、好ましくは1.0N(規定)のHClを混合物に添加する。当然のことながら、塩化水素酸が混合物のpHを調整するために用いられるのが好ましいが、他の酸、例えば、酢酸、乳酸または燐酸を用いてもよい。
【0039】
pHの調整ステップは好ましくは、所定のpHレベルをオーバーシュートしないで達成される。万が一pHレベルをオーバーシュートした場合、添加剤、例えばNaOHを混合物に添加してpHレベルを上げなければならない。水酸化ナトリウムがコラーゲン溶液のpHを調整するために用いられるのが好ましいが、他の水酸化物、例えば他のアルカリ金属水酸化物または水酸化アンモニウムを用いてもよい。しかしながら、本発明者は、混合物のpHを上げ下げしまたは下げ上げすることにより、イオン強度の変化に起因して所望の孔径および生体適合性に悪影響を及ぼす場合のある凍結むらが生じる場合のあることを発見した。したがって、所定のpHレベルをオーバーシュートしないようにすることが好ましい。調節ステップ16の間、混合物へのHClの添加量、pHおよび固体濃度の割合の計算値をステップ20に示すように求める。
【0040】
ステップ16において所定のpHレベルをいったん達成すると、ステップ22に示すように、混合物を引き続き緩動型ミキサで好ましくはステップ12において粉末を純水に添加した時点から少なくとも1時間の全経過時間にわたり混合し続ける。固体濃度の割合は好ましくは、0.6%〜1.2%以内である。
【0041】
緩動型ミキサによる混合後、ステップ24に示すように、混合物を剪断型ミキサにより好ましくは約8,000〜9,000rpmの混合速度で混合する。剪断型ミキサは好ましくは、コラーゲン粉末を機械的に分解するのに十分な速度で動作する。この剪断型ミキサは、0〜10,000rpmで混合を行い、英国ウォーターサイド・チェサム・バックス所在のシルバーソン・マシーンズ・リミテッド(Silverson Machines Limited)から市販されているSilverson(登録商標)ミキサとすることができる。混合物のpHは好ましくは、混合物が剪断型ミキサで混合されている間、約3.4〜3.6のpHに更に調整される。
【0042】
ステップ26において、混合物の粘度を好ましくは混合ステップ24の開始と共に測定する。
【0043】
pHを上げてシート取り扱い特性を向上させる。この調整は好ましくは、所定のpHレベルをオーバーシュートしないで達成される。万が一pHレベルをオーバーシュートした場合、添加剤、例えばHClを混合物に添加してpHレベルを下げなければならない。
【0044】
ステップ28がいったん完了すると、ステップ30で示すように、所定量の混合物を容器内に入れる。十分な量の混合物を容器内に入れて結果として得られるコラーゲン器具は硬膜代用品、付着バリヤとして働き、または水分保持、止血または組織保護のための短時間体接触を可能にするほどの厚さを有するようにする。トレーは好ましくは、プラスチック材料、例えばPETGで作られる。しかしながら、トレーをガラス、金属、セラミック、基材をこびりつかない(非粘着性)表面、例えばテフロン(登録商標)(TEFLON:登録商標)で被覆したもの、または研磨金属で作ってもよい。また、トレーは、個々のコンパートメントを備えて形作られてもよく、各コンパートメントは、コラーゲン器具の所望の最終形態に合わせて形作られている。例えば、コンパートメントは、2.54cm×2.54cm(1インチ×1インチ)平方のものとすることができ、各縁部は面取り縁部となっている。当然のことながら、外科医の要望に応えるために、多種多様な形状寸法を同一トレー内を含めて面取り縁部を備えまたは備えないで形成してもよい。
【0045】
ステップ32に示すように、容器をチャンバ内に配置する。現時点において好ましい実施形態では、容器をチャンバ内の棚の上に置き、この棚は、棚の温度、それによりチャンバの温度を制御する温度制御機構体を有する。以下において、チャンバの温度について言及するが、当業者であれば、これは棚の温度を含むことは理解されよう。温度制御機構体は、チャンバの温度が好ましくは混合物の結晶温度よりも高くなるよう調節される。容器の底面は好ましくは、棚の頂面の平坦な表面と合致するよう平坦である。
【0046】
一実施形態では、チャンバの温度は、約15℃〜25℃の室温の状態にすることができる。別の実施形態では、チャンバは、約−3℃であってもよい。さらに別の実施形態では、チャンバの温度は、約−50℃まで混合物の結晶温度よりも十分低く設定してチャンバ内への配置時に、混合物を急速冷凍するのがよい。温度が室温であれば、ステップ34に示すように、チャンバの温度をほぼ第1の所定期間にわたり混合物の結晶温度よりもほぼ僅か高い第2の所定温度に調節する。好ましくは、第2の所定の温度は、−3℃〜−5℃であり、第1の所定の期間は、約60分間である。次に、チャンバを約45分間にわたり第2の所定の温度に保持する。
【0047】
ステップ36に示すように、チャンバの温度を約1時間の期間をかけて約−45℃に冷却する。チャンバを好ましくは、少なくとも約30分間このおおよその温度に保持する。
【0048】
次に、ステップ38に示すように、氷晶の適当な昇華を可能にするほど十分なほぼ第1の所定レベルまで真空をチャンバ内に引いてチャンバを排気する。チャンバの温度がステップ34において−45℃に保持されている間に真空を引いてもよい。現時点において好ましい例示の実施形態では、チャンバを約50〜250ミリトルまで排気する。氷晶の昇華の結果として、多数個の細孔を持つコラーゲンシートが形成され、細孔のうち大部分は、10μm未満の直径を有する。
【0049】
次に、ステップ40に示すように、チャンバの温度を十分な温度まで上げ、そして、一次乾燥が混合物中に生じるまで十分な期間にわたりこの温度状態に保つ、現時点において好ましい例示の実施形態では、チャンバを約5時間かけて約−5℃まで次第に上昇させ、そして約5時間この温度を維持する。この非限定的な例では、混合物は、上述のステップによりコラーゲンシートに変換される。
【0050】
ステップ42に示すように、次に、チャンバの温度を約7時間かけてほぼ室温まで変化させる。現時点において好ましい例示の実施形態では、チャンバを約3時間かけて約35℃まで上げ、そして、過剰の乾燥またはメルトバックを生じないで二次乾燥がコラーゲンシート中に生じるまで十分な期間の間この温度状態に保ち、この十分な期間は、現時点において好ましい実施形態では、約7時間〜20時間である。
【0051】
変形実施形態では、当業者であれば容易に認識されるように、コラーゲンシートをローラまたはプレートで圧縮してもよい。ローラは、シートをシートの元の厚さの1/2〜5%未満まで圧縮することができる。シートの圧縮の結果として、コラーゲンシートは、従来型シートよりも強固になる場合がある。
【0052】
次に、ステップ44に示すように、コラーゲンシートを架橋チャンバ内に配置する。コラーゲンのシートを架橋チャンバ内に吊しまたはスクリーン上に配置するのがよい。当然のことながら、シートは、同一チャンバ内に位置したままであってよく、架橋処理がこのチャンバ内で行われてもよい。
【0053】
ステップ46において、所定量の架橋剤を架橋チャンバに添加する。所定量のホルムアルデヒドは、コラーゲンシートを少なくとも部分的に飽和させるのに十分である。現時点において好ましい例示の実施形態では、架橋剤は、ホルムアルデヒドであり、ホルムアルデヒドの所定量は、約25ml〜35mlである。(当然のことながら、ホルムアルデヒドの添加量は、シートの枚数およびチャンバのサイズで決まる)。コラーゲンシートを架橋剤の液体または蒸気の形態に暴露させる。ステップ48およびステップ50において、約16時間および24時間後に架橋剤を架橋チャンバから取り出す。
【0054】
コラーゲンシートを好ましくは、蒸気架橋または溶液架橋により架橋させる。溶液を用いる場合、シートを好ましくは凍結乾燥により脱水する。架橋剤、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、カルボジイミド(carbodiimides)または二官能化スクシンイミド(difunctional succinimides)を使用してもよい。変形例として、マトリックスを、デヒドロサーマル(dehydrothermal)架橋またはUV放射線で架橋してもよい。
【0055】
ステップ52において、コラーゲンシートに約8時間〜70時間通風して余分な架橋剤を取り除く。補強層120を設けることが望ましい場合、この補強層をステップ52後にコラーゲンシートに被着させてもよい。一実施形態では、補強層120とコラーゲン層の物理的接合が望ましい場合、これをヒートプレス法、オーブン内での加熱(減圧の有無を問わない)、発熱体または加熱空気への材料の暴露または超音波スポット溶接を用いて行うことができる。
【0056】
次に、ステップ54において、コラーゲンシートを切断ステーションにおいて所望の形状に切断する。コラーゲンシートをトレー内で適切な大きさに形成された所定の形状に形成してもよい。各所定の形状の縁部を面取りしてこれをそのままの位置で濡らしたときに縁部のスムーズなプロフィールの実現を可能にしてもよい。面取り角度は好ましくは、垂直線から見て約30°〜75°である。
【0057】
次に、ステップ56において、コラーゲンシートの各切断部分を好ましくは目で検査する。しかる後、幾つかのサンプルをステップ58において試験のために送ることができ、残りの切断部分を従来の滅菌方法で包装し、ステップ60において最終使用者に送ることができる。コラーゲンシートは、好ましくは、試験方法ASTM・E1294により試験し、ステップ58においてシートの多孔度が10μm未満であることを確かめる。
【0058】
コラーゲンシートを所望の形状に切断するステップと架橋ステップを逆にしてもよい。
【0059】
当業者であれば、上述の実施形態に基づく本発明の別の特徴および利点を理解されよう。本発明の基本的な新規特徴を本発明の好ましい実施形態に適用したものとして示し、説明し、指摘したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく図示の器具の形態および細部並びにこれらの作用における種々の省略、置換および変更を想到できることは理解されよう。例えば、同一の結果を得るために実質的に同一の機能を実質的に同一のやり方で実施する要素および(または)ステップの全ての組合せは本発明の範囲に含まれることは明らかである。説明した一実施形態から別の実施形態への要素の置換もまた、完全に意図されており、かつ想定されている。また、図面は必ずしも同一縮尺で作製されてはおらず、これらは性質上概念的であるに過ぎないことは理解されるべきである。したがって、本発明は、特許請求の範囲の記載を除き、具体的に図示されて説明された事項によっては限定されない。本明細書において引用した全ての刊行物および技術文献は、参照することによりその記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0060】
〔実施の態様〕
本発明の具体的な実施態様は、次の通りである。
(1)生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
実質的に平坦で互いに向かい合っている面を備えたコラーゲン層と、
前記コラーゲン層の少なくとも一方の平坦面に配置された少なくとも1つの補強層であって、前記コラーゲン層の縫合糸保持強度よりも大きな縫合糸保持強度を有し、組織の曲率に実質的に合致するよう形作られている、補強層と、
を含む、グラフト代用品。
(2)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層および前記コラーゲン層は、実質的に8.896ニュートン(2重量ポンド)〜17.79ニュートン(4重量ポンド)の縫合糸保持強度を有する、グラフト代用品。
(3)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記コラーゲン層は、複数個の細孔を備えた架橋コラーゲン層を含み、前記複数個の細孔の少なくとも一部は、10マイクロメートル未満の直径を備えている、グラフト代用品。
(4)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、実質的に流体不透性材料を含む、グラフト代用品。
(5)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、生体吸収性ポリマーから形成されている、グラフト代用品。
(6)実施態様(5)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリジオキサノン(polydioxanone)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate)、これらのコポリマーまたは配合物から成る群から選択されている、グラフト代用品。
【0061】
(7)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、前記コラーゲン層の少なくとも一方の平坦面に結合している、グラフト代用品。
(8)実施態様(7)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、前記コラーゲン層の前記少なくとも一方の平坦面に物理的に結合し、前記物理的結合は、縫合糸、ヒートプレスによる付着、減圧下での加熱、減圧していない状態での加熱、発熱体への暴露、加熱空気への暴露またはスポット溶接による付着から成る群から選択される、グラフト代用品。
(9)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記少なくとも1つの補強層は、第1の補強層および第2の補強層を含み、前記第1の補強層および前記第2の補強層は各々、前記コラーゲン層の前記互いに向かい合った平坦面の1つに配置されている、グラフト代用品。
(10)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記コラーゲン層は、第1のコラーゲン層および第2のコラーゲン層を含み、前記少なくとも1つの補強層は、前記第1のコラーゲン層と前記第2のコラーゲン層との間に位置している、グラフト代用品。
(11)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記コラーゲン層の厚さは、0.508mm(0.02インチ)〜5.08mm(0.20インチ)である、グラフト代用品。
(12)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記少なくとも1つの補強層の厚さは、0.025mm(0.001インチ)〜0.406mm(0.016インチ)である、グラフト代用品。
(13)実施態様(1)記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記少なくとも1つの補強層は、抗生物質、成長因子、止血因子、付着防止剤または抗ガン剤から成る群から選択された生物学的作用物質を含む、グラフト代用品。
【0062】
(14)硬膜用グラフト材料において、
複数個の細孔を備えた少なくとも1つのコラーゲン層であって、前記複数個の細孔の大部分は、10マイクロメートル未満の直径を備える、コラーゲン層と、
前記コラーゲン層に接合された少なくとも1つの補強層であって、該補強層は、実質的に流体不透性である、補強層と、
を含む、グラフト材料。
(15)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、前記コラーゲン層の縫合糸保持強度よりも大きな縫合糸保持強度を有する、グラフト材料。
(16)実施態様(15)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記補強層および前記コラーゲン層は、実質的に8.896ニュートン(2重量ポンド)〜17.79ニュートン(4重量ポンド)の縫合糸保持強度を有する、グラフト材料。
(17)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、組織の曲率に実質的に合致するよう形作られている、グラフト材料。
(18)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、生体吸収性ポリマーから形成されている、グラフト材料。
(19)実施態様(18)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリジオキサノン(polydioxanone)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate)、これらのコポリマーまたは配合物から成る群から選択されている、グラフト材料。
(20)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記補強層は、前記コラーゲン層の前記少なくとも一方の平坦面に物理的に結合し、前記物理的結合は、縫合糸、ヒートプレスによる付着、減圧下での加熱、減圧していない状態での加熱、発熱体への暴露、加熱空気への暴露またはスポット溶接による付着から成る群から選択される、グラフト材料。
【0063】
(21)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、第1の補強層および第2の補強層を含み、前記第1の補強層および前記第2の補強層は各々、前記コラーゲン層の前記互いに向かい合った平坦面の1つに被着されている、グラフト材料。
(22)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記コラーゲン層は、第1のコラーゲン層および第2のコラーゲン層を含み、前記少なくとも1つの補強層は、前記第1のコラーゲン層と前記第2のコラーゲン層との間に結合されている、グラフト材料。
(23)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記コラーゲン層の厚さは、0.508mm(0.02インチ)〜5.08mm(0.20インチ)であり、前記少なくとも1つの補強層の厚さは、0.025mm(0.001インチ)〜0.406mm(0.016インチ)である、グラフト材料。
(24)実施態様(14)記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、抗生物質、成長因子、止血因子、付着防止剤または抗ガン剤から成る群から選択された生物学的作用物質を含む、グラフト材料。
【0064】
(25)損傷した硬膜を修復する方法において、
硬膜損傷部位に硬膜用グラフトを植え込むステップを含み、
前記硬膜用グラフトは、実質的に平坦で互いに向かい合った面を備えたコラーゲン層、および、前記互いに向かい合った平坦面のうちの一方に接合された補強層を備え、前記補強層は、実質的に流体不透性である、
方法。
(26)実施態様(25)記載の方法において、
前記硬膜用グラフトを縫合糸で前記硬膜損傷部位に固定するステップを有する、方法。
(27)実施態様(26)記載の方法において、
前記固定ステップは、前記硬膜用グラフトを前記縫合糸で前記硬膜損傷部位に固定するステップを含み、前記硬膜用グラフトは、8.896ニュートン(2重量ポンド)〜17.79ニュートン(4重量ポンド)の縫合糸保持強度を有する、方法。
(28)実施態様(26)記載の方法において、
前記縫合糸を前記コラーゲン層および前記補強層中に挿入して前記コラーゲン層と前記補強層を接合するステップを有する、方法。
(29)実施態様(25)記載の方法において、
前記硬膜用グラフトを前記硬膜損傷部位の曲率に実質的に合致させるステップを有する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】コラーゲン器具の下から見た斜視図である。
【図1B】コラーゲン器具の側面図である。
【図1C】コラーゲン器具の平面図である。
【図2】本発明の一特徴としての補強層が積層されているコラーゲン器具を示す図である。
【図3】図2のコラーゲン器具が植込まれた頭蓋の一部の断面図である。
【図4】図3の植込まれた状態のコラーゲン器具の斜視図である。
【図5】コラーゲン器具の多層実施形態を示す図である。
【図6】多層コラーゲン器具の別の実施形態を示す図である。
【図7A】多層コラーゲン器具の別の実施形態を示す図である。
【図7B】多層コラーゲン器具の別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のコラーゲン器具の作製方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
90 積層生体植込み型硬膜用グラフト
100 コラーゲン層
110,112 層またはラミネート
120 補強層
125 頭蓋
128 髄膜
130 硬膜
131 CSF(脳脊髄液)
132 脳
133 頭骨
136 縫合糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
実質的に平坦で互いに向かい合っている面を備えたコラーゲン層と、
前記コラーゲン層の少なくとも一方の平坦面に配置された少なくとも1つの補強層であって、前記コラーゲン層の縫合糸保持強度よりも大きな縫合糸保持強度を有し、組織の曲率に実質的に合致するよう形作られている、補強層と、
を含む、グラフト代用品。
【請求項2】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層および前記コラーゲン層は、8.896ニュートン(2重量ポンド)〜17.79ニュートン(4重量ポンド)の縫合糸保持強度を有する、グラフト代用品。
【請求項3】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記コラーゲン層は、複数個の細孔を備えた架橋コラーゲン層を含み、前記複数個の細孔の少なくとも一部は、10マイクロメートル未満の直径を備えている、グラフト代用品。
【請求項4】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、実質的に流体不透性材料を含む、グラフト代用品。
【請求項5】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、生体吸収性ポリマーから形成されている、グラフト代用品。
【請求項6】
請求項5記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリジオキサノン(polydioxanone)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate)、これらのコポリマーまたは配合物から成る群から選択されている、グラフト代用品。
【請求項7】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、前記コラーゲン層の少なくとも一方の平坦面に結合している、グラフト代用品。
【請求項8】
請求項7記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、前記コラーゲン層の前記少なくとも一方の平坦面に物理的に結合し、前記物理的結合は、縫合糸、ヒートプレスによる付着、減圧下での加熱、減圧していない状態での加熱、発熱体への暴露、加熱空気への暴露またはスポット溶接による付着から成る群から選択される、グラフト代用品。
【請求項9】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記少なくとも1つの補強層は、第1の補強層および第2の補強層を含み、前記第1の補強層および前記第2の補強層は各々、前記コラーゲン層の前記互いに向かい合った平坦面の1つに配置されている、グラフト代用品。
【請求項10】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記コラーゲン層は、第1のコラーゲン層および第2のコラーゲン層を含み、前記少なくとも1つの補強層は、前記第1のコラーゲン層と前記第2のコラーゲン層との間に位置している、グラフト代用品。
【請求項11】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記コラーゲン層の厚さは、0.508mm(0.02インチ)〜5.08mm(0.20インチ)である、グラフト代用品。
【請求項12】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記少なくとも1つの補強層の厚さは、0.025mm(0.001インチ)〜0.406mm(0.016インチ)である、グラフト代用品。
【請求項13】
請求項1記載の生体植込み型硬膜用グラフト代用品において、
前記少なくとも1つの補強層は、抗生物質、成長因子、止血因子、付着防止剤または抗ガン剤から成る群から選択された生物学的作用物質を含む、グラフト代用品。
【請求項14】
硬膜用グラフト材料において、
複数個の細孔を備えた少なくとも1つのコラーゲン層であって、前記複数個の細孔の大部分は、10マイクロメートル未満の直径を備える、コラーゲン層と、
前記コラーゲン層に接合された少なくとも1つの補強層であって、該補強層は、流体不透性である、補強層と、
を含む、グラフト材料。
【請求項15】
請求項14記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、前記コラーゲン層の縫合糸保持強度よりも大きな縫合糸保持強度を有する、グラフト材料。
【請求項16】
請求項15記載の硬膜用グラフト材料において、
前記補強層および前記コラーゲン層は、8.896ニュートン(2重量ポンド)〜17.79ニュートン(4重量ポンド)の縫合糸保持強度を有する、グラフト材料。
【請求項17】
請求項14記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、組織の曲率に合致するよう形作られている、グラフト材料。
【請求項18】
請求項14記載の硬膜用グラフト代用品において、
前記補強層は、生体吸収性ポリマーから形成されている、グラフト材料。
【請求項19】
請求項18記載の硬膜用グラフト材料において、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリジオキサノン(polydioxanone)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate)、これらのコポリマーまたは配合物から成る群から選択されている、グラフト材料。
【請求項20】
請求項14記載の硬膜用グラフト材料において、
前記補強層は、前記コラーゲン層の前記少なくとも一方の平坦面に物理的に結合し、前記物理的結合は、縫合糸、ヒートプレスによる付着、減圧下での加熱、減圧していない状態での加熱、発熱体への暴露、加熱空気への暴露またはスポット溶接による付着から成る群から選択される、グラフト材料。
【請求項21】
請求項14記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、第1の補強層および第2の補強層を含み、前記第1の補強層および前記第2の補強層は各々、前記コラーゲン層の前記互いに向かい合った平坦面の1つに被着されている、グラフト材料。
【請求項22】
請求項14記載の硬膜用グラフト材料において、
前記コラーゲン層は、第1のコラーゲン層および第2のコラーゲン層を含み、前記補強層は、前記第1のコラーゲン層と前記第2のコラーゲン層との間に結合されている、グラフト材料。
【請求項23】
請求項14記載の硬膜用グラフト材料において、
前記コラーゲン層の厚さは、0.508mm(0.02インチ)〜5.08mm(0.20インチ)であり、前記少なくとも1つの補強層の厚さは、0.025mm(0.001インチ)〜0.406mm(0.016インチ)である、グラフト材料。
【請求項24】
請求項14記載の硬膜用グラフト材料において、
前記少なくとも1つの補強層は、抗生物質、成長因子、止血因子、付着防止剤または抗ガン剤から成る群から選択された生物学的作用物質を含む、グラフト材料。
【請求項25】
損傷した硬膜を修復する方法において、
硬膜損傷部位に硬膜用グラフトを植え込むステップを含み、
前記硬膜用グラフトは、実質的に平坦で互いに向かい合った面を備えたコラーゲン層、および、前記互いに向かい合った平坦面のうちの一方に接合された補強層を備え、前記補強層は、実質的に流体不透性である、
方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−7423(P2007−7423A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−180095(P2006−180095)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500140415)コドマン・アンド・シャートレフ・インコーポレイテッド (34)
【氏名又は名称原語表記】Codman & Shurtleff, Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham, Massachusetts 02767−0350, U.S.A.
【Fターム(参考)】