説明

コラーゲン産生促進剤

【課題】コラーゲン産生促進剤乃至組成物の提供。
【解決手段】1-アセトキシ-1-(2,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン(1-Acetoxy-1-(2,4-diacetoxyphenyl)-2-propene、以下、2,4-ACAとも称する)、1-アセトキシ-1-(3,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン(1-Acetoxy-1-(3,4-diacetoxyphenyl)-2-propene、以下、3,4-ACAとも称する)、及び1-アセトキシ-1-(4-アセトキシフェニル)-2 ヘプチンで表される化合物を有効成分とするコラーゲン産生促進剤。並びに、当該コラーゲン促進剤を含有してなる化粧用組成物、細胞培養用組成物及び創傷治癒用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン産生促進剤、並びに当該コラーゲン産生促進剤を含む化粧用組成物、細胞培養用組成物及び創傷治癒用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、線維芽細胞、及びコラーゲン等の細胞外マトリクスにより構成されており、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことによって、皮膚の保湿機能や柔軟性、弾力性等が確保され、張りや艶のあるみずみずしい肌の状態が維持される。ところが、紫外線の照射や乾燥等の外的因子の影響、又は加齢によって、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンの産生量が減少すると、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、皮膚の張りや艶が失われ、荒れ、シワ等の皮膚の老化症状を呈するようになる。このため、皮膚の老化防止及び/又は皮膚の状態の改善等を目的として、皮膚のコラーゲン量を増加させる化粧品や医薬用組成物の開発が進められてきた。例えば、特許文献1及び2には、真皮マトリクス成分安定作用やコラーゲン合成を刺激する作用を有する成分として、アスコルビン酸等を含有させたものが報告されている。しかし、従来の製品の多くは、コラーゲン量の分解を抑制することによって皮膚のコラーゲン量を維持するものであった。
【0003】
一方、特許文献3には、コラーゲンの産生能を向上させる化合物を有効成分とするコラーゲン産生能向上剤が開示されている。また、非特許文献1には、ショウガ抽出成分が、インターロイキン1βに関与したコラーゲンタイプII遺伝子の発現に影響を与える旨が記載されている。
【0004】
コラーゲン産生量の向上は、皮膚状態の改善等に有用と考えられるため、このような作用について更なる検討が求められていた。
【特許文献1】特開2004−075646号公報
【特許文献2】特開平11−246333号公報
【特許文献3】特開2006−151860号公報
【非特許文献1】CEJB,1(3), 2006, pp.430-450
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コラーゲン産生を促進させる作用に優れるコラーゲン産生促進剤、並びに当該産生促進剤を含む有用な組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物が、優れたコラーゲン産生促進作用を有することを見出し、更に検討を重ねて、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記のコラーゲン産生促進剤、及び組成物に関する。
【0007】
項1:一般式(1)
【0008】
【化1】

(式中、R1、R4は、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示す。
R2、R3、R5、R6は、同一又は異なって、水素又は−OC(O)R7を示す。R7 は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
点線は二重結合又は三重結合を示す。点線が二重結合の場合、RAはCHR8を示す。R8は、同一又は異なって、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。点線が三重結合の場合、RAはCR9を示す。R9は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される化合物を有効成分とするコラーゲン産生促進剤。
項2:項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有する化粧用組成物。
項3:項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有する細胞培養用組成物。
項4:項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有する創傷治癒用医薬組成物。
【0009】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0010】
1.コラーゲン産生促進剤
本発明のコラーゲン産生促進剤は、下記一般式(1)で表される化合物を有効成分とする:
一般式(1)
【0011】
【化2】

一般式(1)において、R1及びR4は、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示す。
好ましい例の一つは、R1がメチル基であり、R4がメチル基の場合である。
【0012】
R2、R3、R5及びR6は、同一又は異なって、水素又は−OC(O)R7を示す。好ましい例の一つは、R2が−OC(O)R7であり、R3、R5及びR6が水素又は−OC(O)R7の場合である。例えば、R2が−OC(O)R7であり、R3、R5及びR6が水素の場合である。また、他の例の一つは、R3が−OC(O)R7であり、R2、R5及びR6が水素又は−OC(O)R7の場合である。例えば、R3が−OC(O)R7であり、R2、R5及びR6が水素の場合である。
【0013】
R7は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。好ましくはメチル基を示す。
【0014】
点線は二重結合又は三重結合を示す。
点線が二重結合の場合、RAはCHR8を示す。R8は、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。好ましい例の一つは、点線が二重結合であり、RAがCH2の場合である。
点線が三重結合の場合、RAはCR9を示す。R9は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。
好ましい例の一つは、点線結合が三重結合であり、RAがCC4H9の場合である。
【0015】
具体的に、一般式(1)で表される化合物には、
1-アセトキシ-1-(2,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン(1-Acetoxy-1-(2,4-diacetoxyphenyl)-2-propene、以下、2,4-ACAとも称する)、
1-アセトキシ-1-(3,4-ジアセトキシフェニル)-2-プロペン(1-Acetoxy-1-(3,4-diacetoxyphenyl)-2-propene、以下、3,4-ACAとも称する)、及び
1-アセトキシ-1-(4-アセトキシフェニル)-2 ヘプチン
(1-Acetoxy-1-(4-acetoxyphenyl)-2 -heptyne 、以下、trp-7C-ACAとも称する)などが含まれる。
【0016】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物は、光学異性体を包含し、例えばラセミ体、R体、S体を包含する。
【0017】
例えば、一般式(1)で表される化合物には、1-Acetoxy-1-(2,4-diacetoxyphenyl)-2-propene(2,4-ACA)のラセミ体、(1R)-1-Acetoxy-1-(2,4-diacetoxyphenyl)-2-propene((R)-2,4-ACA)、(1S)-1-Acetoxy-1-(2,4-diacetoxyphenyl)-2-propene((S)-2,4-ACA)が含まれる。
【0018】
上記化合物は、公知の方法に従って、製造することができる。
【0019】
例えば、4位を含む2位又は複数の位置に水酸基を有するベンズアルデヒド化合物を原料とし、水酸基を保護した後、グリニャール試薬等の有機金属試薬を用いて、二重結合又は三重結合を有するアルキル基を導入した二級アルコールを合成する。次いで、脱保護及びアシル化を行い、目的とする化合物を得ることができる。好ましくは、実施例に記載の方法に従って得ることができる。
【0020】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、上記一般式(1)で表される化合物を有効成分とする。一般式(1)で表される化合物は、細胞におけるコラーゲン産生を促進させる作用に優れる。特にI型コラーゲンの産生促進作用に優れる。
【0021】
更に、本発明のコラーゲン産生促進剤は、コラーゲン産生促進作用の持続性に優れている。
【0022】
対象となる細胞は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に限定されないが、特に皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生を顕著に促進する。
【0023】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、上記一般式(1)で表される化合物そのものからなるものであってもよいし、当該化合物を有効成分とし、薬学上又は衛生上許容される担体等の他の成分を更に含んでなるものであってもよい。かかる担体又は成分の種類及び配合量は、本発明の効果を損なわないことを限度として、適宜設定することができる。
【0024】
コラーゲン産生促進剤の形態も特に制限されず、適用される製品の剤型、形態、用途等に応じて設定することができる。例えば、液状、乳液状、クリーム状、粉末状、顆粒、丸剤、軟膏等に調製することができる。
【0025】
コラーゲン産生促進剤の適用用途も、特に限定されず、目的に応じて設定することができる。例えば、生体に適用して、皮膚状態の改善や創傷治癒の促進のために用いることができる。また、培地や培養液に添加して、人工組織や足場材料等のコラーゲン含有組織の形成促進のために用いることができる。また、下記のような組成物の形態として、利用できる。
【0026】
2.化粧用組成物
本発明の化粧用組成物は、上記コラーゲン産生促進剤を含有することを特徴とする。
【0027】
本発明の化粧用組成物は、常法に従って作製することができる。例えば、上記コラーゲン産生促進剤を、適当な媒体又は担体と共に調製することにより、作製することができる。
【0028】
本発明の化粧用組成物における、一般式(1)で表される化合物の配合割合は、化合物の種類や、適用部位、適用対象の年齢や特性、化粧品用組成物の形態等によって異なり、一律に特定することはできないが、例えば、2,4-ACAの場合、組成物全体に対して 0.1〜1.0μM程度、好ましくは0.1〜0.5μM程度である。3,4-ACAの場合、組成物全体に対して0.1〜2.0μM程度、好ましくは0.5〜1.0μM程度である。またtrp-7C-ACAの場合、組成物全体に対して 0.1〜1.0μM程度、好ましくは0.1〜0.5μM程度である。
【0029】
上記のような割合は、成分濃度としては比較的低濃度であるが、上記化合物は、低濃度でありながら、優れたコラーゲン産生促進作用を奏する。
【0030】
本発明の化粧用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、美白剤、保湿剤、殺菌・抗菌剤、収斂剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。また、ジエチレントリアミン五酢酸(Diethylenetriamine penta-acetic acid, 以下「DTPA」とも称する)、テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン(Tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine、以下「 TPEN」とも称する)及び1−アセトキシチャビコールアセテート(1-acetoxychavicol acetate、以下「 ACA」とも称する)などのコラーゲン産生能を向上させ得る化合物、或いはビタミンC又はその誘導体などのコラーゲン産生を増強させる化合物を配合することもできる。これらの他の成分の種類及び量は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜設定することができる。
【0031】
また、本発明の化粧用組成物は、所望に応じて、適当な形態、例えば、液状、乳液状、クリーム状、粉末状、顆粒状等に適宜調製することができる。
【0032】
また、本発明の化粧用組成物を用いて、化粧水、ローション、トニック、乳液、クリーム、軟膏、パック、口紅、入浴剤、整髪料等の各種化粧品や化粧料を、常法に従って製造することもできる。
【0033】
化粧用組成物の適用部位も、本発明の効果が奏される範囲内であれば特に限定されず、顔面用、ボディ用、頭髪用等、種々の部位に利用できる。
【0034】
本発明の化粧用組成物は、皮膚の線維芽細胞におけるコラーゲン産生を顕著に促進させる作用を有し、皮膚の老化防止及び/又は改善用、皮膚のハリ、艶の維持改善用又は皮膚の保湿機能の維持改善用などとして利用可能である。
【0035】
3.細胞培養用組成物
本発明の細胞培養用組成物は、上記コラーゲン産生促進剤を含有することを特徴とする。
【0036】
細胞培養組成物の作製方法は、特に限定されないが、例えば、公知の培養液又は培地に、上記コラーゲン産生促進剤を添加することで作製することができる。また、上記コラーゲン産生促進剤を、培地又は培養液の組成成分として調製することにより作製することができる。
【0037】
細胞培養用組成物における上記一般式(1)で表される化合物の割合は、細胞や培地、培養液の種類等によって異なり一律に特定することはできないが、例えば、2,4-ACAの場合、組成物全体に対して、0.1〜2.0μM程度、好ましくは0.1〜0.5μM程度である。3,4-ACAの場合、組成物全体に対して0.1〜5.0μM程度、好ましくは0.1〜1.0μM程度である。またtrp-7C-ACAの場合、組成物全体に対して0.1〜2.0μM程度、好ましくは0.1〜0.5μM程度である。
【0038】
本発明の細胞培養用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、炭素源、無機塩類、各種ビタミン、アミノ酸、緩衝剤、細胞増殖因子、血清を挙げることができる。また、DTPA、TPEN又はACAなどのコラーゲン産生能を向上させ得る化合物、或いはビタミンC又はその誘導体などのコラーゲン産生を増強させる化合物などを配合することもできる。
【0039】
本発明の細胞培養組成物は、培養細胞のコラーゲン産生を顕著に促進させる作用を有し、例えば、人工皮膚の培養用として用いて、人工組織の形成促進等のために利用することができる。また、再生医療用の足場材料の調製用として用いて、コラーゲン含有組織の形成促進等のために利用することができる。
【0040】
4.創傷治癒用医薬組成物
本発明の創傷治癒用医薬組成物は、上記コラーゲン産生促進剤を含有することを特徴とする。本発明の医薬組成物は、皮膚表面などにおける創傷の治癒を促進するために利用される。
【0041】
本発明の医薬組成物は、常法に従って、作製することができる。例えば、上記コラーゲン産生促進剤を、薬学的に許容できる担体と共に調製することにより、作製することができる。
【0042】
本発明の医薬組成物には、本発明の効果を奏する範囲内であれば、薬学的に許容可能な担体や、公知の添加剤、或いは他の薬学的活性成分などを含むこともできる。また、DTPA、TPEN又はACAなどのコラーゲン産生能を向上させ得る化合物、或いはビタミンC又はその誘導体などのコラーゲン産生を増強させる化合物などを配合することもできる。
【0043】
本発明の医薬組成物における、一般式(1)で表される化合物の配合割合は、適用部位、適用対象の年齢、医薬組成物の形態等によって異なり、一律に特定することはできないが、例えば、2,4-ACAの場合、組成物全体に対して、0.1〜2.0μM程度、好ましくは0.1〜0.5μM程度である。3,4-ACAの場合、組成物全体に対して0.1〜5.0μM程度、好ましくは0.1〜1.0μM程度である。またtrp-7C-ACAの場合、組成物全体に対して0.1〜2.0μM程度、好ましくは0.1〜0.5μM程度である。
【0044】
本発明の医薬組成物は、所望に応じて、適当な形態に設定することができる。例えば、乾燥粉末、ゲル、クリーム、軟こう、懸濁液、溶液又は生体適合性がある合成もしくは天然の固体マトリックスの形態とすることができる。
【0045】
本発明の創傷治癒用医薬組成物は、組織細胞のコラーゲン産生を顕著に促進させる作用を有し、創傷の迅速な治癒、症状の改善等のために利用可能である。
【発明の効果】
【0046】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、一般式(1)で表される化合物を有効成分とし、優れたコラーゲン産生促進作用を有し、作用の持続性にも優れる。
【0047】
更に、本発明は、上記コラーゲン産生促進剤を有効成分とし、優れたコラーゲン産生促進作用を有する化粧用組成物、細胞培養用組成物、及び創傷治癒用医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
1.化合物の調製
(1)2,4-ACAの調製
(1-1)2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(2,4-Dihydroxybenzaldehyde, Wako)、トリエチルアミン(Triethylamine, Wako, 2.5 eq)及び4-ジメチルアミノピリジン(4-Dimethylaminopyridine, Wako, 0.1 eq) を乾燥ジクロロメタンに溶解し0℃で撹拌しながら、tert-ブチルジメチルクロロシラン (tert-Butyldimethylchlorosilane, TCI, 2.3 eq) を少しずつ加えた。室温で3時間撹拌後、飽和NaHCO3水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物1を得た (収率87%)。
【0050】
工程(1-1)の概要を式1に示す。
【0051】
【数1】

(1-2)化合物1を乾燥THFに溶解し、窒素気流下、0℃でビニルマグネシウムブロミド(Vinylmagnesium Bromide, TCI, 1 mol/L in THF, 2 eq) を滴下した。室温で3時間撹拌後、0.5 M HCl水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物2を得た (収率59%)。
【0052】
工程(1-2)の概要を式2に示す。
【0053】
【数2】

(1-3)化合物2を乾燥THFに溶解し、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(Tetra-n-butylammonium Fluoride, TCI, 1 mol/L in THF, 3 eq) を0℃で滴下した。0℃で1時間撹拌後、飽和食塩水を加え、エーテル及び酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した後、ピリジンに溶解し、無水酢酸(5 eq)を加えて室温で一晩撹拌した。ピリジンを減圧留去したあとクロロホルムに溶解し、1 M HCl水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、2,4-ACAを得た (収率56%)。
【0054】
工程(1-3)の概要を式3に示す。
【0055】
【数3】

(1-4)2,4-ACAの分析データを以下に示す。
【0056】
NMR: α-400 (JEOL)
1H NMR (400 MHz, CDCl3); δ 2.09 (s, 3 H), 2.29 (s, 3 H), 2.31 (s, 3 H), 5.27 (d, 1 H, J = 10.4 Hz), 5.29 (d, 1 H, J = 16.8 Hz), 5.98 (ddd, 1 H, J = 6, 10.4, 16.8 Hz), 6.43 (d, 1 H, J = 6 Hz), 6.93 (d, 1 H, J = 2 Hz), 7.02 (dd, 1 H, J = 2, 8.4 Hz), 7.44 (d, 1 H, J = 8.4 Hz)
MS: JMS-700T (JEOL)
HRMS (FAB, direct) calcd for C15H16O6, [M]+ 292.0947; found, 292.0952.
【0057】
(2)3,4-ACAの調製
(2-1) 3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(3,4-Dihydroxybenzaldehyde ,Wako)、イミダゾール(Imidazole ,Wako, 2.8 eq) を乾燥DMFに溶解し0℃で撹拌しながら、tert-ブチルジメチルクロロシラン (tert-Butyldimethylchlorosilane, TCI, 2.3 eq) を少しずつ加えた。室温で3時間撹拌後、飽和NaHCO3水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物3を得た (収率51%)。
【0058】
工程(2-1)の概要を式4に示す。
【0059】
【数4】

(2-2)化合物3を乾燥THFに溶解し、窒素気流下、0℃でビニルマグネシウムブロミド(Vinylmagnesium Bromide ,TCI, 1 mol/L in THF, 2 eq) を滴下した。室温で3時間撹拌後、0.5 M HCl水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物4を得た (収率49%)。
【0060】
工程(2-2)の概要を式5に示す。
【0061】
【数5】

(2-3)化合物4を乾燥THFに溶解し、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(Tetra-n-butylammonium fluoride, TCI, 1 mol/l in THF, 3eq) を0℃で滴下した。0℃で1時間撹拌後、飽和食塩水を加え、エーテル及び酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した後、ピリジンに溶解し、無水酢酸(5eq)を加えて室温で一晩撹拌した。ピリジンを減圧留去したあとクロロホルムに溶解し、1 M HCl水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、3,4-ACAを得た (収率79%)。
【0062】
工程(2-3)の概要を式6に示す。
【0063】
【数6】

(2-4)3,4-ACAの分析データを以下に示す。
【0064】
NMR: α-400 (JEOL)
1H NMR (400 MHz, CDCl3); δ 2.11 (s, 3 H), 2.28 (s, 3 H), 2.29 (s, 3 H), 5.27 (d, 1 H, J = 10.4 Hz), 5.33 (d, 1 H, J = 16.8 Hz), 5.96 (ddd, 1 H, J = 6, 10.4, 16.8 Hz), 6.26 (d, 1 H, J = 6 Hz), 7.18-7.27 (m, 3 H)
MS: JMS-700T (JEOL)
HRMS (EI, direct) calcd for C15H16O6, [M]+ 292.0947; found, 292.0946
【0065】
(3)trp-7C-ACAの調製
(3-1)p-ヒドロキシベンズアルデヒド(p-Hydroxybenzaldehyde, Wako)、イミダゾール(Imidazole, Wako, 1.4 eq) を乾燥DMFに溶解し0℃で撹拌しながら、tert-ブチルジメチルクロロシラン (tert-Butyldimethylchlorosilane,TCI, 1.2 eq) を少しずつ加えた。室温で3時間撹拌後、飽和NaHCO3水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物5を得た (収率82%)。
【0066】
工程(3-1)の概要を式7に示す。
【0067】
【数7】

(3-2)1−ヘキシン(1-Hexyne, Aldrich, 1.2 eq) を乾燥THFに溶解し、n-ブチルリチウム(n-Butyllithium, Wako, 1.6 M in hexane,1.2 eq) を-78℃で滴下した。室温で15分間撹拌後、-78℃に冷却し、乾燥THFに溶解した化合物5を滴下した。0℃で1時間撹拌後、0.5 M HCl水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物6を得た (収率82%)。
【0068】
工程(3-2)の概要を式8に示す。
【0069】
【数8】

(3-3)化合物6を乾燥THFに溶解し、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(Tetra-n-butylammonium fluoride ,TCI, 1 mol/l in THF, 1.5 eq) を0℃で滴下した。0℃で1時間撹拌後、飽和食塩水を加え、エーテル及び酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した後、ピリジンに溶解し、無水酢酸(5 eq)を加えて室温で一晩撹拌した。ピリジンを減圧留去したあとクロロホルムに溶解し、1 M HCl水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、trp-7C-ACAを得た (収率57%)。
【0070】
工程(3-3)の概要を式9に示す
【0071】
【数9】

(3-4)trp-7C-ACA の分析データを以下に示す。
【0072】
NMR: α-400 (JEOL)
1H NMR (400 MHz, CDCl3); δ 0.91 (t, 3 H, J = 7.2 Hz), 1.35-1.46 (m, 2 H), 1.57-1.58 (m, 2 H), 2.09 (s, 3 H), 2.27 (dt, 2 H, J = 2, 7.2 Hz), 2.31 (s, 3 H), 6.45 (t, 1 H, J = 2 Hz), 7.09 (d, 2 H, J = 8.8 Hz), 7.54 (d, 2 H, J = 8.8 Hz)
MS: JMS-700T (JEOL)
HRMS (FAB, direct) calcd for C17H20O4, [M]+ 288.1362; found, 288.1367
【0073】
2.コラーゲン産生促進作用の評価
以下の手法で、化合物のコラーゲン産生促進作用を評価した。
【0074】
(1)試料の作成
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(CCD-1059SK、大日本製薬株式会社)を、10%FBS(fetal bovine serum)を含むEMEM培地で3〜6回継代培養した。次いで、細胞数が1x106個になるようにカルチャースライド(Culture slide:Falcon社製)に調製し、10%FBSを含むEMEM培地で24時間培養して、細胞をスライドに固定させ、更に、細胞周期を合わせるためにEMEM培地のみで24時間培養した。その後、10%FBSを含むEMEM培地に交換し、同時に被験化合物を添加して24時間培養して、各サンプル群を調製した。
被験化合物としては、上記1で調製した化合物を用いた。また比較のために、下記表1に示す類似化合物を用いた。
【0075】
【表1】

更に、被験化合物を添加しないサンプルをコントロールとして用いた。
【0076】
<サンプル群>
コントロール 化合物未添加群
1) 2,4-ACA 0.1μM添加群
2) 3,4-ACA 0.1μM添加群
3) trp-7C-ACA 0.1μM添加群
a) 3’-ACA 0.1 μM添加群
b) rac-ADC 0.1 μM添加群
c) rac-DHACA 0.1 μM添加群
d) rac-m-ACA 0.1 μM添加群
e) rac-o-ACA 0.1 μM添加群
f) rac-iBCiB 0.1 μM添加群
【0077】
(2)コラーゲンの産生量の測定
(1)で調製したサンプル群について、次の手順により、コラーゲンの産生量を免疫組織化学的に解析した。
【0078】
カルチャースライドをPBS溶液で5分間、3回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド溶液を添加して4℃で一晩静置し、サンプルを固定した。0.1%Triton-Xを含むPBS溶液で5分間、3回洗浄後、3%H2O2溶液で5分間、内因性peroxidaseのブロッキングを行なった。次いで、10%標準ヤギ血清(normal goat serum)を用いて5分間、非特異的反応のブロッキングを行なった。その後、抗ラットI型コラーゲン抗体(Anti-rat type I collagen 抗体(LSL社製)200倍希釈液)を用いて一次抗体の反応を60分間行なった。PBS溶液で5分間、3回洗浄した後、ビオチン標識ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン抗体(Biotinylated Goat anti-rabbit immunogloblins抗体(DAKO社製)400倍希釈液)を用いて二次抗体の反応を30分間行なった。PBS溶液で5分間、3回洗浄した後、酵素溶液(Horseradish peroxidase-labelled streptavidine-biotine complex(DAKO社製)400倍希釈液)による反応を30分間行なった。PBS溶液で5分間、3回洗浄した後、DAB(3,3-diaminobenzidin tetra-hydrocheloride)溶液を5分間反応させ、peroxidase発色反応を行なった。PBS溶液で5分間、3回洗浄した後、水溶性封入剤で封入して、標本を作製した。得られた標本における陽性反応(I型コラーゲンの発現)箇所における染色強度を、NIH imageソフトを用いて定量化し、画像解析によりI型コラーゲンの産生量を解析した。
【0079】
各サンプル群のコラーゲン染色像を図1に示す。また、染色強度の解析結果を表2及び図2に示す。
【0080】
I型コラーゲンの発現量 (NIH imageによる解析) 平均値
【0081】
【表2】

表2中の強度の値は、コントロールを100としたときの各サンプルの染色強度(1スライドにつき細胞20個について測定して平均した値)の割合として表したものである。
【0082】
その結果、表2並びに図1及び図2の結果に示されるように、本発明の実施例に相当する1)〜3)については、2,4-ACA、3,4-ACA、trp-7C-ACAの全てについて、コラーゲンの産生量が顕著に向上していることが確認された。一方、比較例に相当するa)〜f)については、コントロールと同程度かそれ以下の産生量しか得られなかった。
【0083】
更に、1)〜3)は、作用の持続性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】各サンプル群のヒト由来線維芽細胞のI型コラーゲン染色像を示す図面である。
【図2】各サンプル群の画像解析によって定量化したI型コラーゲンの産生量をグラフ化した図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R4は、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示す。
R2、R3、R5、R6は、同一又は異なって、水素又は−OC(O)R7を示す。R7 は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
点線は二重結合又は三重結合を示す。点線が二重結合の場合、RAはCHR8を示す。R8は、同一又は異なって、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。点線が三重結合の場合、RAはCR9を示す。R9は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される化合物を有効成分とするコラーゲン産生促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有してなる化粧用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有してなる細胞培養用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤を含有してなる創傷治癒用医薬組成物。




【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−79004(P2009−79004A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249630(P2007−249630)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】