説明

コルゲート材の製造方法及び製造装置

【課題】本発明の目的は、シート状の基材をコルゲート形状に成形するに際して、基材に押圧力を加えず、且つ過度に引張ることなく製造することが可能なコルゲート材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】前部が先細状の案内部41、42となっている棒状体21、22を相互に離間するようにして複数並設した。棒状体21、22のそれぞれの先端部51、52は、隣合う先端部51、52の高さ方向の間隙が基材1の厚さよりも大きくして、基材1が先端部51、52の間にスムーズに案内されるようにした。そして、基材1が、棒状体21、22の長手方向に移動して棒状体21、22のそれぞれの間を通過する間に、コルゲート形状に成形されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の基材からコルゲート材を製造する方法に係り、詳しくは熱可塑性樹脂繊維製の不織布シートあるいは濾紙等のコルゲート材を製造する方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波形のいわゆるコルゲート材が様々な分野で利用されており、2枚のコルゲート材の頂部どうしを接合してハニカム状に形成して構造材として用いたり、不織布シートをコルゲート加工してフィルタとして用いたりする事例があげられる。
【0003】
特許文献1の繊維強化プラスチック製のハニカムコアの製造方法においては、波板の底部と頂部を接合してハニカムコアを製造するに先立ち、繊維基材の帯状シートをフォーミング型を用いて成形する事例が開示されている。その成形は、型面が波形をなすと共に、型面の大きさが徐々に変化するように形成されたフォーミング型を用い、先ず、そのフォーミング型に帯状シートを供給して型面に馴染むように絞り込んでいる。そして、その絞り込まれた帯状シートに樹脂を含浸させた後、加熱加圧加工により波板を成形している。
【0004】
特許文献2の積層フィルタの製造方法においては、一対の成形ロールからなるコルゲート成形機に2枚の濾過材を供給して、そのうちの1枚の濾過材の軟化温度で加熱押圧することにより、2枚の濾過材が熱接着されると共にコルゲート材に成形される事例が開示されている。
【特許文献1】特開平9−207252号公報([要約]を参照)
【特許文献2】特開2005−342633号公報([要約]を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているハニカムコアの製造方法は、構造材として十分な強度をもつハニカムコアを製造する方法であり、繊維基材に樹脂を付着、含浸及び混入させて加熱加圧することにより繊維基材を強化している。従って、基材の繊維間に樹脂が含浸しているため、この製造方法により得られる波板をフィルタとして用いることはできない。
【0006】
特許文献2に開示されているコルゲート材の製造方法では、コルゲート成形機に供給された濾過材が、ロールの軸方向に凹凸の溝が形成された一対のロール間で加熱押圧されるので、濾過材は圧縮状態で成形されることになる。その圧縮状態は、一対のロールの間で加熱押圧されることに加え、濾過材がロール外周面の凹凸により全幅に亘って同時に成形されるために幅方向に過度に引張られることによりもたらされる。従って、濾過材として不織布シートを用いる場合、コルゲート成形前の濾過材と成形後の濾過材とは、厚さが薄くなると共に繊維間の空隙が小さくなるため、濾過能力が異なることになる。
【0007】
また、一対のロールを用いるコルゲート成形機においては、コルゲート材の波形の凹溝部の形状は、底部から開口部へ向かって幅が広がる形状のものに限定され、底部の幅より開口部の幅のほうが狭い、いわゆるあり溝状のものは成形し難い。
【0008】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、シート状の基材をコルゲート形状に成形するに際して、基材に押圧力を加えず、且つ過度に引張ることなく製造することが可能なコルゲート材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために請求項1に記載のコルゲート材の製造方法の発明は、シート状の基材をコルゲート形状に成形するコルゲート材の製造方法において、前部が先細状の案内部となっている棒状体が相互に離間して複数並設され、前記基材が、前記棒状体の長手方向に移動して前記棒状体のそれぞれの間を通過することにより、コルゲート形状に成形されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、先細状の案内部を有する複数の棒状体が相互に離間した状態で並設されている。そして、シート状の基材を棒状体の長手方向に移動して、それぞれの棒状体の先細状の案内部の間に基材が案内されるようにすれば、基材は、棒状体に摺動しながら棒状体の間を通過する。その時、基材の移動方向と直交する方向における基材を、ある棒状体の上を乗り越えた後に、その隣の棒状体の下を潜り抜け、更にその隣の棒状体の上を乗り越えるようにすれば、基材の形状は波形になる。従って、基材は、複数の棒状体の間を通過することによりコルゲート形状に成形されることになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコルゲート材の製造方法において、前記棒状体のそれぞれの先細状の先端部は、一つ置きの先端部の高さが同一に配置された第1列と、その第1列に属する前記先端部に隣合い且つ先端部の高さが同一に配置された第2列とに区分され、前記第1列の先端部と第2列の先端部との高さ方向の間隙が前記基材の厚さよりも大となっており、その間隙に前記基材が案内されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、基材は第1列の先端部と第2列の先端部との間に容易に案内される。そして、それぞれの棒状体において先端部から後方へいくに従い棒状体の高さを変化させ、例えば、第1列の先端部を有する棒状体と第2列の先端部を有する棒状体との高さが同一となるようにすれば、基材は、棒状体の上半体の外周に沿った形状と棒状体の下半体の外周に沿った形状とが交互に繰り返される形状に成形される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコルゲート材の製造方法において、前記棒状体の基部には成形部を設け、前記基材がその成形部を通過することにより、前記基材がコルゲート形状に成形されることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、棒状体の成形部がコルゲート材の頂部裏面の形状又は底部表面の形状に対応する形状に形成されている。そして、一つ置きの棒状体の成形部の形状をコルゲート材の頂部裏面の形状に対応するようにし、その他の棒状体の成形部の形状をコルゲート材の底部表面の形状に対応するようにすれば、それぞれの成形部を通過する基材は所定のコルゲート形状に成形されることになる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のコルゲート材の製造方法において、前記第1列に属する棒状体における前記成形部は同一高さの列に配置され、前記第2列に属する棒状体における前記成形部は同一高さの列に配置され、且つ前記第1列の先端部と前記第2列の先端部との高低の位置関係が、それぞれの前記成形部における高低の位置関係において逆転するようにし、前記基材がそれぞれの成形部を通過することによりコルゲート形状に成形されることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、隣合う棒状体において、それぞれの先端部の高低の位置関係と成形部の高低の位置関係とを逆転した。そして、隣合う成形部の高低差を大きくとれば、基材は、頂部の裏面及び底部の表面が成形部により成形され、頂部と底面との間を連結する面を成形部に当接しているか否かに関わらず成形される。従って、成形部の形状を変えることなく、コルゲート材の溝の深さを深くすることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のコルゲート材の製造方法において、前記同一高さの列に配置された成形部の配列方向と直交する方向から見たとき、前記成形部のそれぞれが隣合う隙間が前記基材の厚さよりも小さくなるように前記成形部を配置し、前記基材がそれぞれの成形部を通過することによりコルゲート形状に成形されることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、隣合う成形部は、相互に高さが異なり、相互の隙間が基材の厚さよりも小さくなるよう配置されている。従って、ある棒状体の成形部に当接している基材とその隣の棒状体の成形部に当接している基材とを連結する基材は、それぞれの成形部の間を斜めに連結することになる。従って、基材がそれらの成形部を通過することによりコルゲート形状に成形された溝は、頂部間が狭く内部が広い、いわゆるあり溝となっている。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項3ないし5のうちいずれか一項に記載のコルゲート材の製造方法において、前記基材は、前記成形部に至るまでに加熱手段により加熱され、前記成形部を通過するまでに冷却手段により冷却されることを特徴とするものである。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、基材が、成形部に至るまでに加熱手段により加熱され、成形部を通過するまでに冷却されるので、基材の材質を熱可塑性樹脂とすれば、コルゲート形状に成形された基材はその形状を保つことができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項3ないし6のうちいずれか一項に記載のコルゲート材の製造方法において、前記基材は、前記棒状体の長手方向に移動して前記棒状体のそれぞれの間を通過する際に、その移動方向と直交する方向の張力を受けて、前記成形部を通過する間は緊張状態にあることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、基材は、牽引される方向に直交する方向に張力を受けられるようになっているので、複数の棒状体のそれぞれの隙間を弛みなく通過することができる。また、基材は、成形部を通過する間は所定の張力によって緊張状態になっているので、成形部の形状に沿って成形されることになる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載のコルゲート材の製造方法において、前記基材は、熱可塑性樹脂繊維製の不織布シートであることを特徴とするものである。
【0024】
請求項9に記載のコルゲート材の製造装置の発明は、シート状の基材をコルゲート形状に成形するコルゲート材の製造装置において、前部が先細状の案内部となっている棒状体が相互に離間して複数並設され、前記棒状体の基部には前記基材にコルゲート形状を付与する成形部を設けたことを特徴とするものである。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、前部が基材を案内する先細状の案内部であり、基部が基材にコルゲート形状を付与する成形部である棒状体を相互に離間して複数並設しただけの簡単な構造の装置によって、コルゲート材を製造することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のコルゲート材の製造装置において、前記成形部に進入する前記基材を加熱するための加熱手段と、前記成形部に到達した前記基材を冷却するための冷却手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、加熱手段と冷却手段とを設けたので、基材として熱可塑性樹脂繊維製の不織布シート等を用いれば、基材は容易にコルゲート材に成形されることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の棒状体を並設した簡単な装置により、シート状の基材をコルゲート形状に成形するコルゲート材の製造方法を提供できる。また、成形に際して、基材に押圧力を加えることがなく、且つ過度に引張ることもなく製造することが可能なので、基材の元の物性を保つことができるコルゲート材の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図4を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に用いられる装置は、図示しない枠体に支持部31を介して支持された棒状体21と、同じく枠体に支持部32を介して支持された棒状体22とのそれぞれが一つ置きに並設されている。隣合う棒状体21と棒状体22とは相互に離間して配置されている。そして、本実施形態の棒状体21は断面形状が円形の中実の丸棒状であり、棒状体21の前部は上向きに傾斜する先細状の案内部41となっており、その先端部51は球面状となっている。また、棒状体22は断面形状が円形の中実の丸棒状であり、棒状体22の前部は下向きに傾斜する先細状の案内部42となっており、その先端部52は球面状となっている。
【0030】
棒状体21及び棒状体22の基部(図2の右側)には成形部61、62が形成され、図3(c)に示すように、それらは同一の水平な基準面K上に配置されている。棒状体21の成形部61は、その下部の外周面61aにおいて基材1を成形するようになっている。そのため、本実施形態における棒状体21は、外周面61aとは反対側の成形部61の上部において支持部31により支持されている。同様に、棒状体22の成形部62は、その上部の外周面62aにおいて基材1を成形するようになっている。そのため、本実施形態における棒状体22は、外周面62aとは反対側の成形部62の下部において支持部32により支持されている。
【0031】
一つ置きに並設されている棒状体21の先端部51は、第1列として同一の高さに配置されている。また、一つ置きに並設されている棒状体22の先端部52は、第2列として同一の高さに配置されている。図2に示すように、先端部51と先端部52との間の間隙S1は、基材1の厚さよりも大きくなっており、基材1が図の矢印方向に移動する時、基材1の先端1aは容易に先端部51と先端部52との間に案内される。なお、基材1は、図示しない牽引手段により牽引され、棒状体21、22の長手方向(図1の矢印方向)に移動するようになっている。
【0032】
次に、シート状の基材1がコルゲート材13に成形される状況を図2〜図4を用いて説明する。なお、本実施形態における基材1は熱可塑性樹脂繊維製の不織布シートであり、少なくとも一部の繊維はバインダーとして他の繊維を結合するための低融点のものが用いられている。
【0033】
図3(a)に示すように、第1列の先端部51と第2列の先端部52との間に案内された基材1は、図示しない引張装置により幅端部を左右から引張られ、先端部51と先端部52との間に支持されている。このとき、基材1に作用する引張力は基材1が弛まない程度の弱い力に制御されている。
【0034】
図3(b)に示すように、先端部51の基部側に位置する案内部41と、先端部52の基部側に位置する案内部42との間に移動してきた基材1は、案内部41で下向きに案内され、案内部42で上向きに案内され、波状に変形されている。このとき、図2に示す加熱手段71、72から熱風を吹き付られて、基材1は、その一部を構成する低融点の樹脂繊維が溶融する温度に昇温される。
【0035】
図3(c)に示すように、全ての成形部61、62は水平な基準面Kに沿って配置されており、それらの成形部61、62の隙間に摺動してきた基材1は、成形部61、62によりコルゲート形状に成形される。このとき、基材1は、牽引方向においても幅方向においても所定の緊張状態にあり、外周面62a及び外周面61aの外周形状に沿って成形される。また、この時、図2に示す冷却手段81、82から冷風を吹き付けられて、溶融した樹脂繊維がその他の樹脂繊維を結合して固化するので、基材1は成形部61、62の外周形状に沿った形状に固定される。
【0036】
そして、コルゲート形状に成形された基材1は、成形部61、62を通過した後、更に牽引されて、図示しない切断装置により所定長さに切断されたり、又は、図示しない巻き取り装置にロール上に巻き取られたりする。従って、本実施形態の製造方法及び装置によれば、コルゲート材を連続して製造することが可能である。
【0037】
本実施形態における成形部61、62の断面形状は円形であるが、例えば断面形状を三角形、台形又は直角四角形(いずれも図示せず)とすることにより、三角形と逆三角形、台形と逆台形又は直角四角形が交互に連なるような波形のコルゲート材を製造することができる。
【0038】
従って、上記実施形態のコルゲート材13の製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、先細状の案内部41、42を有する複数の棒状体21、22を相互に離間した状態で並設した。そして、基材1を、棒状体21、22の長手方向に移動して、それぞれの棒状体21、22の先端部51と先端部52との間に案内するようにしたので、基材1の形状を波形とすることができる。従って、複数の棒状体21、22の間に基材1を通過させることによりコルゲート材13を容易に製造することができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、一つ置きに並設された先端部51を同一の高さに配置して第1列とし、同じく一つ置きに並設された先端部52を同一の高さに配置して第2列とし、第1列と第2列との間隙を基材1の厚さよりも大とした。そのため、基材1の先端1aを、予め波形に変形させることなく、第1列と第2列との間隙に容易に案内することができる。
【0040】
(3)上記実施形態では、棒状体21、22において案内部41、42を傾斜させた。そして、第1列の先端部51を有する棒状体21の成形部61と第2列の先端部52を有する棒状体22の成形部62との高さが同一となるようにした。そのため、シート状の基材1から、棒状体22の上半体の外周形状に沿った形状と棒状体21の下半体の外周形状に沿った形状とが交互に繰り返される形状のコルゲート材を製造する製造方法を提供できる。
【0041】
(4)上記実施形態では、成形部62の外周面62aの形状がコルゲート材13の頂部14の裏面15の形状に対応し、成形部61の外周面61aの形状がコルゲート材13の底部16の表面形状に対応するように、外周面62a及び外周面61aを形成した。そして、それらの成形部61、62の間に基材1を通過させることにより、所定の断面形状を有するコルゲート材13を製造する製造方法を提供できる。
【0042】
(5)上記実施形態では、基材1が移動して成形部61、62に至るまでに加熱手段71、72から熱風を吹き付けて基材1を加熱した。そして、基材1が成形部61、62を通過するまでに冷却手段81、82から冷風を吹き付けて基材1を冷却した。そのため、基材1を構成する低融点の樹脂繊維が溶融し他の繊維を結合した状態で固化するので、シート状の基材1から成形されたコルゲート材の形状を保持することができるコルゲート材の製造方法を提供できる。
【0043】
(6)上記実施形態では、基材1は、棒状体21、22の長手方向に牽引されて移動すると共に、移動する方向と直交する方向に張力を受けられる。そのため、基材1は複数の棒状体21、22間のそれぞれの隙間を弛みない状態で通過することができる。また、基材1は、成形部61、62を通過する間は所定の張力によって緊張状態になっているため、外周面62a及び外周面61aの形状に沿って成形されることになる。従って、基材1は押圧力を受けて圧縮されることもなく、過度の引張力を受けて延伸されることもないため、基材1の成形前の物性、例えば厚さや見かけ密度等の物性を保つことが可能なコルゲート材の製造方法を提供できる。
【0044】
(7)上記実施形態では、成形部61、62を通過して更に牽引されるコルゲート材を所定長さに切断したりロール状に巻き取るなどしたりした。従って、コルゲート材を連続して製造することが可能な製造方法を提供できる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化したコルゲート材13の製造方法の第2の実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図5及び図6を用いて説明する。
【0046】
図5及び図6に示すように、第1列の先端部51を有する棒状体21の成形部61と、第2列の先端部52を有する棒状体22の成形部62とは、その高さを異ならせており、成形部61の中心は基準面Kよりも下に位置し、成形部62の中心は基準面Kよりも上に位置している。言い換えれば、第1列の先端部51と第2列の先端部52との高さ方向の位置関係が、それぞれの成形部61、62の位置関係において逆転している。本実施形態における基準面Kは、成形部61と、成形部62との中間位置に相当する面である。
【0047】
このように、第1列の先端部51と第2列の先端部52との高さ方向の位置関係が、それぞれの成形部61、62の位置関係において逆転するように棒状体21と棒状体22とを配置すれば、外周面62a及び外周面61aに沿う部分を除く基材1は、外周面62aと外周面61aとの間において所定の緊張状態の下に置かれることにより成形される。従って、基材1を過度の圧縮状態に置くことなく、頂部14と底部16との間隔が広い波形形状を成形できる。
【0048】
また、図6(c)に示すように、同一高さに配置された成形部61、62の配列方向と直交する方向から見たとき、隣合う成形部61と成形部62との隙間S2が基材1の厚さよりも小さくなるように、成形部61と成形部62とは交互に配置されている。そして、外周面62a及び外周面61aに沿う部分を除く基材1は、斜めに配置されて、基材1の波形の断面形状は、間口が狭く内部が広いあり溝状に形成されている。
【0049】
なお、図6(b)の状態から図6(c)の状態に移る間に、棒状体21及び棒状体22の高さ方向の位置関係を逆転させてから、隣合う棒状体21と棒状体22との隙間S2が基材1の厚さよりも小さくなるように、棒状体21及び棒状体22の断面形状を外方へ膨出させて大きくしている。従って、棒状体21と棒状体22との隙間が基材1の厚さよりも大きい状態が常に保たれているので、その隙間を通過する基材1が、棒状体21及び棒状体22の外周面により押圧状態にされることはない。
【0050】
そして、この第2実施形態においては、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)上記実施形態では、第1列の先端部51と第2列の先端部52との高さ方向の位置関係が、それぞれの成形部61、62の位置関係において逆転するように棒状体21と棒状体22とを配置した。そして、外周面62a及び外周面61aに沿う部分を除く基材1を、所定の緊張状態の下に置くことだけで成形できるようにした。従って、基材1の厚さや繊維間の隙間等の成形前の物性をほぼ保ちつつ、頂部14と底部16との間が広い波形形状を有するコルゲート材13を製造することがきる。
【0051】
(9)上記実施形態では、同一高さに配置された成形部61、62の配列方向と直交する方向から見たとき、隣合う成形部61と成形部62との隙間S2が基材1の厚さよりも小さくなるように、成形部61と成形部62とを交互に配置した。また、隣合う成形部61、62どうしの隙間は基材1の厚さよりも大きくなるようにした。従って、外周面62a及び外周面61aに沿う部分を除く基材1は、斜めに配置されて、間口が狭く内部が広いあり溝状の断面形状を有するコルゲート材13を製造することができる。
【0052】
(変更例)
なお、前記両実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 先端部51、52を球面状としたが、球面状に限らず、先鋭状のように基材1の移動の障害とならない形状であればいかなる形状でもよい。
・ 支持部31、32を、棒状体21、22の成形部61、62に設けたが、成形部61、62に限らず棒状体21、22のどの部分に設けてもよく、また棒状体21、22の全長に亘って設けてもよい。
・ 棒状体21、22を一体の丸棒状としたが、例えば案内部41、42と成形部61、62との間に断熱材を設けた2体からなる棒状体21、22として、成形部61、62の内部に冷却水を流通させる等して成形部61、62を冷却してもよい。そうすることで、基材1が効率よく冷却される。
・ 棒状体21、22を中実の丸棒状としたが、多孔質の板状体からなる中空体として、内部から基材1に対して熱風又は冷風を吹き付けるようにしてもよい。
・ 基材1として熱可塑性樹脂繊維製の不織布シートを用いたが、基材1の材質はこれに限らず、セルロースを含む濾紙、ガラス繊維を含む濾紙、フッ素樹脂を含む濾紙等を用いた基材1とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態の製造方法に用いる装置を模式的に示す斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態の製造方法に用いる装置を模式的に示す右側面図。
【図3】図2に示す棒状体に対して基材が矢印方向へ移動する時の位置関係を示す、(a)は図2のAA矢視断面図、(b)は図2のBB矢視断面図、(c)は図2のCC矢視断面図。
【図4】本発明の製造方法により製造されたコルゲート材を示す一部斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態の製造方法に用いる装置を模式的に示す右側面図。
【図6】図5に示す棒状体に対して基材が矢印方向へ移動する時の位置関係を示す、(a)は図5のAA矢視断面図、(b)は図5のBB矢視断面図、(c)は図5のCC矢視断面図。
【符号の説明】
【0054】
S1…間隙、S2…隙間、1…基材、13…コルゲート材、14…頂部、16…底部、21,22…棒状体、41,42…案内部、51,52…先端部、61,62…成形部、71,72…加熱手段、81,82…冷却手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材をコルゲート形状に成形するコルゲート材の製造方法において、前部が先細状の案内部となっている棒状体が相互に離間して複数並設され、前記基材が、前記棒状体の長手方向に移動して前記棒状体のそれぞれの間を通過することにより、コルゲート形状に成形されることを特徴とするコルゲート材の製造方法。
【請求項2】
前記棒状体のそれぞれの先細状の先端部は、一つ置きの先端部の高さが同一に配置された第1列と、その第1列に属する前記先端部に隣合い且つ先端部の高さが同一に配置された第2列とに区分され、前記第1列の先端部と第2列の先端部との高さ方向の間隙が前記基材の厚さよりも大となっており、その間隙に前記基材が案内されることを特徴とする請求項1に記載のコルゲート材の製造方法。
【請求項3】
前記棒状体の基部には成形部を設け、前記基材がその成形部を通過することにより、前記基材がコルゲート形状に成形されることを特徴とする請求項2に記載のコルゲート材の製造方法。
【請求項4】
前記第1列に属する棒状体における前記成形部は同一高さの列に配置され、前記第2列に属する棒状体における前記成形部は同一高さの列に配置され、且つ前記第1列の先端部と前記第2列の先端部との高低の位置関係が、それぞれの前記成形部における高低の位置関係において逆転するようにし、前記基材がそれぞれの成形部を通過することによりコルゲート形状に成形されることを特徴とする請求項3に記載のコルゲート材の製造方法。
【請求項5】
前記同一高さの列に配置された成形部の配列方向と直交する方向から見たとき、前記成形部のそれぞれが隣合う隙間が前記基材の厚さよりも小さくなるように前記成形部を配置し、前記基材がそれぞれの成形部を通過することによりコルゲート形状に成形されることを特徴とする請求項4に記載のコルゲート材の製造方法。
【請求項6】
前記基材は、前記成形部に至るまでに加熱手段により加熱され、前記成形部を通過するまでに冷却手段により冷却されることを特徴とする請求項3ないし5のうちいずれか一項に記載のコルゲート材の製造方法。
【請求項7】
前記基材は、前記棒状体の長手方向に移動して前記棒状体のそれぞれの間を通過する際に、その移動方向と直交する方向の張力を受けて、前記成形部を通過する間は緊張状態にあることを特徴とする請求項3ないし6のうちいずれか一項に記載のコルゲート材の製造方法。
【請求項8】
前記基材は、熱可塑性樹脂繊維製の不織布シートであることを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載のコルゲート材の製造方法。
【請求項9】
シート状の基材をコルゲート形状に成形するコルゲート材の製造装置において、前部が先細状の案内部となっている棒状体が相互に離間して複数並設され、前記棒状体の基部には前記基材にコルゲート形状を付与する成形部を設けたことを特徴とするコルゲート材の製造装置。
【請求項10】
前記成形部に進入する前記基材を加熱するための加熱手段と、前記成形部に到達した前記基材を冷却するための冷却手段とを設けたことを特徴とする請求項9に記載のコルゲート材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−293163(P2009−293163A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149357(P2008−149357)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】