説明

コレステロールセンサ

リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法であって、(a)試料中の高密度リポタンパク質に結合したコレステロールの量を電気化学的に決定すること、(b)試料中の総コレステロール量を電気化学的に決定すること、及び(b)の結果から(a)の結果を差し引くことを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質に結合したコレステロール量を決定するための方法に関する。本発明はまた、そのような方法において用いるためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
血漿中のコレステロールは、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)及びキロミクロン(CM)中に含有される。HDLコレステロール含量は、心疾患の危険性を低減することが示されているので、HDL中のコレステロールは、しばしば「善玉」コレステロールと考えられる。他方、高LDLコレステロール含量は心疾患の危険性を増大することが示されているので、LDL中のコレステロールは、しばしば「悪玉」コレステロールと考えられる。従って、米国コレステロール教育プログラム第3ガイドライン(National Cholesterol Education Program 3rd guidelines)により、心疾患の危険性の指標として、LDLコレステロールを測定することが推奨されている。
【0003】
LDLコレステロールレベルを決定するために、過去においては、2つのタイプの技法を典型的に用いてきた。1つの技法においては、試料の総コレステロール、HDLコレステロール及びトリグリセリド含量を測定し、そしてFriedwald式を、LDLコレステロール含量を算出するために用いる。しかしながら、このタイプの測定は、絶食時の試料に関してしか正確に実施できないトリグリセリドアッセイを伴う。そのような試料は、常に分析用に入手可能なわけではないので、この方法では、常に信頼できる結果を得られるわけではない。絶食時の試料が不要な技法が望ましい。
【0004】
これに代わる技法では、LDLコレステロール含量の直接的測定を目的とする。研究技法から適合された、初期の検査室的方法は、例えば超遠心分離による、手作業の分離段階の後、各リポタンパク質画分中のコレステロール含量の、個別の分析を必要とするものであった。しかしながら、そのような技法は完全には自動化できず、且つ複雑な処理段階を実施する必要がある。より最近になって、様々なリポタンパク質画分の分離を事前に必要とせず、且つ処理の自動化を可能にする、いくつかの技法が提示されてきた。1つのアプローチにおいては、様々なリポタンパク質画分を異なる速度で分解する、ある種の界面活性剤を用いる。例えば、ある界面活性剤は、はじめはHDLとより迅速に反応するかもしれず、そしてLDLとの反応はより緩やかに起こるかもしれない。界面活性剤を加えた後、所定の時間にコレステロール含量を測定することによって、HDLコレステロール含量よりもLDLコレステロール含量により大きく依存する測定を実施できることが分かってきた。
【0005】
しかしながら、この後者のアプローチは、その結果に必要な精度及び信頼性を生じてきておらず、また、測定は、依然としてある程度の、HDL、IDL、VLDL及びCM中のコレステロール含量への依存性を残していた。従って、簡単であるが信頼でき、且つ正確な心疾患の危険性の指標を提供する、異なるアプローチが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の要旨
本発明は、試料の総コレステロール及びHDLコレステロール含量のみの測定を頼りにする、別のアプローチを用いる。従って、当該技法はトリグリセリド含量の測定を必要とせず、また、絶食時の試料を必要としない。本発明においては、非HDLコレステロール含量(即ち、HDL以外のリポタンパク質、即ちLDL、IDL、VLDL及びCM中のコレステロール含量)は、総コレステロール含量から、HDLコレステロール含量を差し引くことによって決定される。この測定結果は、試料のLDL−コレステロール含量との良好な相関、従って心疾患の危険性との良好な相関も与えることが分かってきている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法であって、(a)試料中の高密度リポタンパク質に結合したコレステロールの量を電気化学的に決定すること、(b)試料中の総コレステロール量を電気化学的に決定すること、及び(b)の結果から(a)の結果を差し引くことを含む、方法を提供する。
【0008】
電気化学的分析を用いることによって、本発明は、非HDLコレステロール含量を分析するための、特別に簡単且つ迅速な方法を提供する。特に、決定(a)及び(b)は、同時又は実質的に同時に実施でき、非HDLコレステロール含量の決定が、試料を試験装置に添加してからほんの1分又は数分で可能になる。更に、当該試験は未熟な技術者が実施でき、専門的な(specialist)設備も必要としない。1つの実施形態において、当該試験は、例えば、医師の外科手術、病室若しくは病棟といった医療環境における使用、又は患者自身による家庭での使用に適切な、携帯型装置で実施できる。
【0009】
本発明はまた、リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロール量を決定するためのキットであって、
− 作用電極、参照又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極を有する第一の電気化学セル;
− 当該第一の電気化学セルに使われる、試料のHDLコレステロール含量を決定するための第一のシリーズの試薬;
− 作用電極、参照又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極を有する第二の電気化学セル;
− 当該第二の電気化学セルに使われる、試料の総コレステロール含量を決定するための第二のシリーズの試薬;
−各セルに電位を印加するための電源;
−結果生じる、各セルの電気化学的応答を測定するための測定機器;並びに
−高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロール量を算出するための計算装置、
を含む、キットを提供する。
【0010】
また、本発明のキットを使用する方法であって、
(i)試料を第一のシリーズの試薬と、結果生じる試料と第一のシリーズの試薬との混合物が第一の電気化学セルの作用電極に接触するように接触させること;
(ii)試料を第二のシリーズの試薬と、結果生じる試料と第二のシリーズの試薬との混合物が第二の電気化学セルの作用電極に接触するように接触させること;
(iii)各電気化学セルに電位を印加すること;
(iv)結果生じる、電気化学的応答を測定することによって、各セルにおいて形成した生成物量を電気化学的に検出すること;及び
(v)試料中の非HDLリポタンパク質に結合したコレステロール量を算出すること
を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明による装置の電気化学セルを示す。
【図2】図2は、本発明による装置の、電気化学センサストリップを示す。
【図3】図3は、界面活性剤アンヒトール20Nが、HDLを選択的に分解するかどうかを決定するための、試験プロトコルの結果を示す。
【図4】図4a及びbは、ドナーの血漿試料を用いて実施した、総コレステロール試験の結果のプロットである。
【図5】図5a及びbは、ドナーの血漿試料を用いて実施した、HDLコレステロール試験の結果のプロットである。
【図6】図6a及びbは、本発明に従って測定した血漿試料の非HDLコレステロール含量と、Randox SPACE clinical analyserによって測定した、試料のLDLコレステロール含量との相関のプロットである。
【図7】図7は、本発明に従って測定した血漿試料の非HDLコレステロール含量と、Friedwald式を用いて決定した、試料のLDLコレステロール含量との相関を示す。
【図8】図8(a)及び(b)は、実施例3に従って製造したセンサについての、HDL及びTCそれぞれについての、較正プロット(IOX(nA)対濃度(mM))を示す。
【図9】図9は、参照の方法を用いて測定したLDL含量と、実施例3〜5のセンサを用いて行ったTC及びHDL測定から決定したLDL含量との関係を示す。
【図10】図10は、参照の方法を用いて測定したLDL含量と、実施例3〜5のセンサを用いて行ったTC及びHDL測定から決定したLDL含量との関係を示す。
【図11】図11は、参照の方法を用いて測定した通りのLDL含量と、実施例3〜5のセンサを用いて行ったTC及びHDL測定から決定したLDL含量との関係を示す。
【図12】図12(a)及び(b)は、実施例7のセンサについての、HDL及びTCについての較正プロット(IOX(nA)対濃度(mM))を示す。
【図13】図13は、Randox analyserによって測定したLDL含量と、実施例7のセンサを用いて行ったTC及びHDL測定を用いて本発明により算出したLDL含量との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法は、試料のHDLコレステロール含量及び試料の総コレステロール含量についての試験を実施すること、並びに簡単な減算により非HDLコレステロール含量を決定することを含む。この非常に簡単な技法で、試料のLDLコレステロール含量、ひいては心疾患の危険性との良好な相関を持つことが分かった。
【0013】
HDLコレステロール試験は、任意の電気化学的方法により実施し得る。電気化学的方法は、コレステロールの反応を、電極での電気化学的応答を測定することによって検出するものである。典型的には、選択的試薬を加え、測定の時間枠内では、確実にHDLコレステロールしか反応し得ないようにする。次いで、試料をコレステロールエステル加水分解試薬及び、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼのいずれかと反応させる。コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応したコレステロールの量は、電極での電気化学的応答を測定することによって決定する。
【0014】
選択的試薬は、HDLコレステロールをコレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼと反応できるようにする、任意の物質であり得る。好適な選択的試薬としてはHDL以外のリポタンパク質と錯体を形成する錯化剤が挙げられる。錯化剤の例としては、多価陰イオン類、多価陰イオン類の2価の金属塩との組み合わせ、及びapoB含有リポタンパク質に結合できる抗体が挙げられる。多価陰イオン類は、リンタングステン酸及びその塩、デキストラン硫酸及びその塩、ポリエチレングリコール並びにヘパリン及びその塩から選択できる。一度錯化された形態になると、HDL以外のリポタンパク質は反応に利用できず、従ってコレステロール測定を妨げない。
【0015】
好ましい実施形態において、LDL、VLDL及びCMよりも、HDLに対して高度に選択的な特異的界面活性剤と、試料を反応させることによって選択性を実現する。従って、当該界面活性剤は、HDLに結合するコレステロール及びコレステロールエステル類についての測定を可能にするが、一方でLDL、VLDL及びCMに結合するものはリポタンパク質構造に結合したままであり、後のコレステロール含量の測定において実質的に反応しない。
【0016】
この実施形態において用いる界面活性剤は、試料中の高密度リポタンパク質を選択的に分解すると考えられるものである。しかしながら本発明は、この作用様式に限られない。従って、当該界面活性剤は、コレステロールアッセイにおいて、HDLコレステロールの反応を選択的に可能にするものであるが、一方でLDLコレステロールは実質的に反応できない。これは、当該界面活性剤は、LDL、VLDL及びCMと比較して、HDLと選択的に反応することを意味する。本発明の文脈では、HDLを選択的に分解する界面活性剤、即ち、コレステロールアッセイにおいてHDLコレステロールが反応することを選択的に可能にする界面活性剤は、典型的には、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は最も好ましくは少なくとも90%の、HDLとLDLとの間のディファレンシエーション(differentiation)を有する、界面活性剤である。
【0017】
HDLとLDLとの間のディファレンシエーションは、式(i):
【0018】
【数1】

【0019】
(式中、GはXに対する、測定された応答のグラジエント(例、既知の濃度のXに対する、測定された電流)である)に従って決定できる。測定される応答は、リポタンパク質濃度に関係する(又は対応する)任意のパラメータであり得る(例、それは、当該濃度に比例するパラメータであり得る)。
【0020】
従って、当業者は、(LDLを含有しない、)HDLコレステロール含量が既知の試料の、HDLコレステロール含量を測定するために、選択した界面活性剤を用いることによって、そして対応して同じ手順を用いて、(HDLを含有しない、)LDLコレステロール含量が既知の試料の、LDLコレステロール含量を測定することによって、任意の所与の界面活性剤がHDLを選択的に分解するものかどうかを、容易に決定できる。結果からディファレンシエーションの値が計算できる。界面活性剤アンヒトール20Nを用いた、コレステロール含量の測定についての手順の例を、実施例1において示す。
【0021】
本発明において、HDL濃度は典型的には、コレステロールのコレステノンへの電気化学的変換に際して、電極で生じる電流を決定することによって電気化学的に測定される。従って、典型的には、測定電流値を、グラジエントを決定するために用いる。
【0022】
好ましい実施形態においては、本発明の選択的界面活性剤は、実質的にLDLを分解しない。従って、HDLとLDLとの間のディファレンシエーションは、経時的に一定である。しかしながら、それでもいくつかの界面活性剤は、依然として非常に緩やかではあるがLDLを分解し得る。この場合、HDLとLDLとの間のディファレンシエーションは、時間と共に変動し得る。ディファレンシエーションは、HDLコレステロール試験の間に用いる経過時間と同じの、試料への試薬の添加と、コレステロール含量の測定との間の経過時間を用いて測定しなくてはならない。そのような経過時間は、典型的には、3分以下、好ましくは120秒以下、90秒以下又は60秒以下のオーダーである。本発明の文脈では、選択的界面活性剤は、実施例1に記載する手順及び試料への試薬の添加と測定との間の、62秒の経過時間を用いてコレステロール含量を測定した場合、典型的には、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は最も好ましくは少なくとも90%の、HDLとLDLとの間のディファレンシエーションを有する界面活性剤である。
【0023】
HDLと選択的に反応する界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレン誘導体類、ペルフルオロアルカン類又はペルフルオロアルキル基含有化合物類、スクロースエステル類、テトラメチルデシンジオール及びエトキシ化テトラメチルデシンジオール類、任意にポリアルキレンオキシドと結合される、ポリアルキレンオキシド修飾ポリジメチルシロキサン、イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)、ヒドロキシエチルグルカミド誘導体類、N−メチル−N−アシルグルカミド誘導体類、マルトシド類及びチオマルトシド類等の非イオン性界面活性剤並びにアルキルベタイン誘導体類、アルキルアミンオキシド類及びアンモニオアルキルスルホン酸塩類等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、当該界面活性剤は、ポリオキシアルキレン誘導体類、ペルフルオロアルカン類又はペルフルオロアルキル基含有化合物、スクロースエステル類、テトラメチルデシンジオール及びエトキシ化テトラメチルデシンジオール類、任意にポリアルキレンオキシドと結合される、ポリアルキレンオキシド修飾ポリジメチルシロキサン、イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)及びヒドロキシエチルグルカミド誘導体類等の非イオン性界面活性剤、並びにアルキルベタイン誘導体類、アルキルアミンオキシド類及びアンモニオアルキルスルホン酸塩類等の両性界面活性剤から選択される。
【0025】
本発明のHDLアッセイにおいて用いるための、好ましい界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エマルゲン109P(花王株式会社)、エマルゲン1135S−70(花王株式会社)、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル(エマルゲンA−90、花王株式会社)、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル(ニューカルゲンFS12、竹本油脂株式会社)、p−イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)(Surfactant 10G、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、シルウェットL−7600(Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、PEG−30テトラメチルデシンジオール(スルフィノール 485、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、スクロースモノカプレート(Sigma Aldrich Co. Ltd)、ペルフルオロC−C16アルカン類(ゾニール FSN100、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、HEGA−8、HEGA−9、HEGA−10、C−HEGA−9、C−HEGA−10、n−オクチル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸塩(ツヴィッタージェント3−08、Calbiochem)、ラウリルジメチルアミンオキシド(アンヒトール20N、花王株式会社)、コカミドプロピルベタイン(ソフタゾリン CPB、川研ファインケミカル株式会社)及びラウラミドプロピルベタイン(ソフタゾリン LPB−R、川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、HDLアッセイで用いられる好ましい界面活性剤、エマルゲン1135S−70(花王株式会社)、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル(ニューカルゲンFS12、竹本油脂株式会社)、p−イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)(Surfactant 10G、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、シルウェットL−7600(Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、PEG−30テトラメチルデシンジオール(スルフィノール 485、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、スクロースモノカプレート(Sigma Aldrich Co. Ltd)、ペルフルロ(perfluro)C−C16アルカン類(ゾニール FSN100、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、HEGA−8、HEGA−9、HEGA−10、C−HEGA−9、C−HEGA−10、n−オクチル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸塩(ツヴィッタージェント3−08、Calbiochem)、ラウリルジメチルアミンオキシド(アンヒトール20N、花王株式会社)、コカミドプロピルベタイン(ソフタゾリン CPB、川研ファインケミカル株式会社)及びラウラミドプロピルベタイン(ソフタゾリン LPB−R、川研ファインケミカル株式会社)。
【0027】
更なる実施形態において、HDLアッセイで用いられる、好ましい界面活性剤としては、エマルゲン1135S−70(花王株式会社)、p−イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)(Surfactant 10G、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、シルウェットL−7600(Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、PEG−30テトラメチルデシンジオール(スルフィノール 485、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、スクロースモノカプレート、ペルフルロ(perfluro)C−C16アルカン類(ゾニール FSN100、Surfactant Tool Kit、Research Diagnostics Inc.)、HEGA−8、HEGA−9、HEGA−10、C−HEGA−9、C−HEGA−10、n−オクチル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸塩(ツヴィッタージェント3−08、Calbiochem)、ラウリルジメチルアミンオキシド(アンヒトール20N、花王株式会社)、コカミドプロピルベタイン(ソフタゾリン CPB、川研ファインケミカル株式会社)及びラウラミドプロピルベタイン(ソフタゾリン LPB−R、川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。エマルゲン1135S−70(花王株式会社)及びHEGA-8、HEGA-10、C-HEGA-9、C-HEGA-10を含むヒドロキシエチルグルカミド誘導体類が特に好ましい。スクロースモノカプレートも好ましい。
【0028】
本発明の1つの実施形態においては、好ましい界面活性剤は、スクロースエステル類、マルトシド類である。特に好ましい界面活性剤は、スクロースモノカプレート、スクロースモノデカノエート、n−オクチル−β−D−マルトシド、n−デシル−β−D−マルトシド Cymal−4及びCymal−5である。
【0029】
代替の実施形態においては、好ましい界面活性剤は、ヒドロキシエチルグルカミド誘導体類及びN−アシル−N−メチルグルカミン誘導体類である。HEGA−8、HEGA−10、HEGA−9、C−HEGA−9、C−HEGA−10及びMEGA−8が特に好ましい界面活性剤である。
【0030】
界面活性剤は個々に用いてもよく、又は2以上の異なる界面活性剤を組み合わせて用いてもよい。典型的には、使用する界面活性剤の総量は、試験試料1ml当たり最大200mg、好ましくは最大100mg/ml、例えば最大約50mg/mlである。
【0031】
選択的界面活性剤又は他の選択的試薬に加えて、典型的には、試料を、コレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させる。HDLリポタンパク質中に含有されるコレステロールは、遊離コレステロール又はコレステロールエステル類の形態であり得る。従って、コレステロールエステル加水分解試薬が、任意のコレステロールエステル類を遊離コレステロールに分解するために用いられる。コレステロールエステル類をコレステロールに加水分解できる任意の試薬が用いられ得る。試薬は、コレステロールとコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼとの反応、及び、アッセイにおけるその後の任意の段階を、妨げないものでなくてはならない。好ましいコレステロールエステル加水分解試薬は、酵素、例えば、コレステロールエステラーゼ及びリパーゼである。好適なリパーゼは、例えば、シュードモナス(pseudomonas)又はクロモバクテリウム・ビスコスム(chromobacterium viscosum)種由来のリパーゼである。任意に安定化剤又は保存剤等の添加剤を含有する市販の酵素(例、東洋紡又はアマノから入手可能なもの)を用い得る。コレステロールエステル加水分解試薬は、試料1mlあたり0.1〜20mg、好ましくは1mlあたり0.5〜15mgの量で用いられ得る。
【0032】
市販されている任意の形態のコレステロールオキシダーゼ及びコレステロールデヒドロゲナーゼを用いることができる。例えば、コレステロールデヒドロゲナーゼは、例えばノカルディア(Nocardia)種由来である。コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼは、試薬混合物1mlあたり0.01〜100mgの量で用いてよい。1つの実施形態においては、コレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼは、試料1mlあたり0.1〜80mg、好ましくは1mlあたり0.5〜30mgの量で用いてもよい。
【0033】
各酵素は、安定化剤又は保存剤等の添加剤を含有し得る。更に、各酵素は、化学的に修飾され得る。
【0034】
当該界面活性剤又は他の選択的試薬は、試料に対して、他の試薬を加える前に加えてもよく、又は他の試薬を加えるのと同時に加えてもよい。好ましい実施形態においては、コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼ及び選択的界面活性剤は、単一の段階で試料と混合される単一の試薬混合物の状態で存在する。特に好ましい実施形態において、当該方法は、試料を試薬と接触させる単一の段階を含み、そのため単一の試薬混合物のみ提供される必要がある。本発明の試薬混合物は、典型的には、コレステロールエステル加水分解試薬を試料1ml当たり0.1〜25mg(例、0.1〜20mg)、好ましくは0.5〜10mgの量で含み、且つコレステロールデヒドロゲナーゼを試料1ml当たり0.1〜80mg、好ましくは0.5〜25mgの量で含む。選択的試薬も存在し、典型的には選択的界面活性剤は、試料1ml当たり最大50mg、好ましくは最大20mg、例えば約5mgの量である。
【0035】
電極でコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼの反応を検出するために、典型的には試料をまた、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと相互作用できる補酵素、及び酸化又は還元されて電極で電気化学的に検出できる生成物を形成することができる酸化還元試薬と反応させる。試料と試薬との混合物は、生じる酸化還元反応が検出できるように、電気化学セルの作用電極と接触させる。セルに電位を印加し、結果生じる電気化学的応答、典型的には電流を測定する。
【0036】
この好ましい実施形態においては、HDL−コレステロール量は、以下のアッセイ:
【0037】
【化1】

【0038】
(式中、ChDはコレステロールデヒドロゲナーゼである)に従って測定する。このアッセイにおいて、所望により、コレステロールデヒドロゲナーゼは、コレステロールオキシダーゼと置き換えることができる。当該アッセイによって生成した、還元された酸化還元試薬量を電気化学的に測定する。しかるべき場合には、更なる試薬もまた、このアッセイに含めてもよい。
【0039】
典型的には、補酵素はNAD又はそのアナログである。NADのアナログは、NADと共通する構造的特徴を有し、且つコレステロールデヒドロゲナーゼの補酵素としても働く化合物である。NADのアナログの例としては、APAD(アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド);TNAD(チオNAD);AHD(アセチルピリジンヒポキサンチンジヌクレオチド);NaAD(ニコチン酸アデニンジヌクレオチド);NHD(ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチド);及びNGD(ニコチンアミドグアニンジヌクレオチド)が挙げられる。補酵素は、典型的には、1〜20mM、例えば3〜15mM、好ましくは5〜10mMの量で、試薬混合物中に存在する。
【0040】
典型的には、酸化還元剤は、上に示したアッセイに従って還元できるものでなくてはならない。この場合、酸化還元剤は補酵素から(又は後述のようなレダクターゼから)電子を受容でき、且つ電子を電極に伝達できるものでなくてはならない。酸化還元剤は分子又はイオン錯体であり得る。タンパク質等の、天然に存在する電子受容体であってもよく、又は合成分子であってもよい。酸化還元剤は、典型的には、少なくとも2つの酸化状態を有するであろう。
【0041】
好ましくは、酸化還元剤は無機錯体である。当該剤は金属イオンを含んでいてもよく、少なくとも2価を有することが好ましいであろう。特に、当該剤は、遷移金属イオンを含んでいてもよく、好ましい遷移金属イオンとしては、コバルト、銅、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、オスミウム又はルテニウムのイオン、例えば、コバルト、銅、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、又はルテニウムのイオンが挙げられる。酸化還元剤は帯電していてもよく、例えば、カチオン性又はその代わりにアニオン性であり得る。好適なカチオン性の剤の例は、Ru(NH3+等のルテニウム錯体であり、好適なアニオン性の剤の例は、Fe(CN)3−等のフェリシアン化錯体である。用いられ得る錯体の例としては、Cu(EDTA)2−、Fe(CN)3−、Fe(CN)(OCR)3−、Fe(CN)(シュウ酸塩)3−、Ru(NH3+、Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)(エチレンジアミン等の)それらのキレートアミンリガンド誘導体類、Ru(NH(py)3+、フェロセニウム、及び、−NH、−NHR、−NHC(O)R、及びCOH等の1以上の基が、2つのシクロペンタジエニル環の一方又は両方へと置換されたその誘導体類が挙げられる。無機錯体は、好ましくはFe(CN)3−、Ru(NH3+、又はフェロセニウムモノカルボン酸(FMCA)である。Ru(NH3+及びRu(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)が好ましい。
【0042】
酸化還元剤は、典型的には、10〜200mM、例えば20〜150mM、好ましくは30〜100mM又は最大80mMの量で試薬混合物中に存在する。
【0043】
好ましい実施形態においては、電気化学的アッセイにおいて用いる試薬混合物は、レダクターゼを更に含む。レダクターゼは、典型的には、還元型NADから2個の電子を伝達され、酸化還元剤へ2個の電子を伝達する。従って、レダクターゼの使用により、素早い電子の伝達がもたらされる。
【0044】
用いられ得るレダクターゼの例としては、ジアホラーゼ並びにチトクロームP450レダクターゼ、特に、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のチトクロームP450cam酵素系のプチダレドキシンレダクターゼ、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のP450BM−3酵素のフラビン(FAD/FMN)ドメイン、ホウレンソウフェレドキシン(ferrodoxin)レダクターゼ、アドレノドキシンレダクターゼ、硝酸還元酵素、チトクロームbレダクターゼ、トウモロコシ硝酸還元酵素、テルプレドキシンレダクターゼ及び酵母、ラット、ウサギ及びヒトNADPHチトクロームP450レダクターゼが挙げられる。本発明で用いるための好ましいレダクターゼとしては、ジアホラーゼ及びプチダレドキシンレダクターゼが挙げられる。
【0045】
レダクターゼは組み換えタンパク質、又は精製若しくは単離した天然に存在するタンパク質であってもよい。レダクターゼは、電子の伝達を行う速度又は基質特異性を最適化する等、その性能を向上するために変異されていてもよい。
【0046】
レダクターゼは、典型的には、0.5〜100mg/ml、例えば1〜50mg/ml、1〜30mg/ml又は2〜20mg/mlの量で試薬混合物中に存在する。
【0047】
本発明の好ましい実施形態においては、電気化学的アッセイの大まかなスキームは、以下:
【0048】
【化2】

【0049】
(式中、
PdRはプチダレドキシンレダクターゼであり
Diaはジアホラーゼであり
ChDはコレステロールデヒドロゲナーゼである)
の通りである。
【0050】
試薬混合物は、任意に、1以上の更なる成分、例えば、賦形剤及び/又は緩衝剤及び/又は安定化剤を含有する。混合物を安定化するため、並びに任意で、試薬混合物を本発明の装置上で乾燥する場合に当該乾燥混合物に多孔性を提供するために、当該試薬混合物に賦形剤を含めることが好ましい。好適な賦形剤の例としては、マンニトール、イノシトール及びラクトース等の糖類、並びにPEGが挙げられる。グリシンもまた、賦形剤として用いることができる。至適酵素活性のために必要なpHを提供するために、緩衝剤も含めてもよい。例えば、トリス緩衝剤(pH9)を用いてもよい。例えば酵素の安定性を高めるために、安定化剤を加えてもよい。好適な安定化剤の例は、アミノ酸(例、グリシン及びエクトイン)である。
【0051】
典型的には、試料は単一の段階で全ての試薬と接触する。従って、アッセイを実施するために、必要な試薬を全て含有し、且つ試料と容易に接触できる試薬混合物を提供する。好ましい実施形態においては、本発明のHDLコレステロールアッセイのための試薬混合物は、高密度リポタンパク質を選択的に分解する界面活性剤;コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ;コレステロールデヒドロゲナーゼ;NAD又はそのアナログ;レダクターゼ;及び酸化還元剤を含む。より好ましい実施形態においては、HDLコレステロールアッセイのための試薬混合物は、高密度リポタンパク質を選択的に分解する界面活性剤、コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、NAD又はそのアナログ、ジアホラーゼ又はプチダレドキシンレダクターゼ及びRu(NH3+を含む。
【0052】
本発明はまた、試料の総コレステロール含量のためのアッセイを包含する。総コレステロール含量を電気化学的に検出する、任意の方法を用いてもよい。好ましい方法においては、全てのリポタンパク質を分解する界面活性剤を試料に添加し、全てのリポタンパク質に結合するコレステロール及びコレステロールエステル類を、反応のために利用可能にする。次いで、当該試料をコレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、並びに典型的には補酵素及び酸化還元試薬並びに任意にレダクターゼと反応させる。コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ及び任意の他の成分を用いるコレステロールの測定は、典型的には、HDLコレステロール試験についての上述したのと同様の方法で実施する。
【0053】
本発明の1つの実施形態において、総コレステロール試験は、HDLコレステロール試験とは別個のシリーズの試薬を用いて実施する。この実施形態においては、試料に、HDLコレステロール試験を実施するために第一のシリーズの試薬を添加し、そして分けた、試料の一部に、総コレステロール試験を実施するために第二のシリーズの試薬を添加する。総コレステロールアッセイにおいて用いる界面活性剤は、典型的には、胆汁酸誘導体類又はその塩であるが、それはこれらが全てのタイプのリポタンパク質を効率的に分解することが分かってきたからである。好適な胆汁酸誘導体類の例としては、コール酸、タウロコール酸、グリココール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、CHAPS(3−[(3−コールアミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]プロパン)、CHAPSO、BIGCHAP及びデオキシBIGCHAPが挙げられる。2以上の胆汁酸誘導体類又はその塩の組み合わせも用い得る。例えば、CHAPS単独での使用では、時折、酵素の沈殿を生じることが分かってきている。従って、CHAPSと、この効果を有しない、異なる界面活性剤(例、デオキシBIGCHAP)との組み合わせが、よいことが分かってきている。好ましい実施形態において、CHAPSとデオキシBIGCHAPは、1:1の比率で用いられる。グルコピラノシド類もまた、界面活性剤として用いられ得る(例、n−ノニル−β−D−グルコピラノシド)。
【0054】
存在する界面活性剤の総量は、コレステロールデヒドロゲナーゼ酵素の重量に対して、典型的には60〜85重量%、好ましくは70〜80重量%である。
【0055】
総コレステロール試験において用いる試薬は、典型的には、単一の試薬混合物の形態で提供され、単一の段階で試料と反応させることができる。試薬混合物には、好ましくは、胆汁酸誘導体類又はその塩;コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ;コレステロールデヒドロゲナーゼ;NAD又はそのアナログ;レダクターゼ;及び酸化還元試薬が含まれる。より好ましい実施形態においては、総コレステロールアッセイのための試薬混合物には、CHAPS、デオキシBIGCHAP、コレステロールエステラーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、TNAD、プチダレドキシンレダクターゼ及びRu(NH3+が含まれる。
【0056】
本発明の別の実施形態においては、HDLコレステロール試験及び総コレステロール試験を実施するために、同一の試薬を用いる。この実施形態においては、上記した通りの選択的試薬(例、選択的界面活性剤)を、試料のHDLコレステロール含量の測定を提供するために用いる。しかしながら、用いる選択的試薬は、他のリポタンパク質との反応を完全に抑制するものではなく、HDLと選択的に反応するものである。このように、HDLコレステロール試験は、まず、HDLが選択的に反応する時間に試料/試薬混合物の電気化学的応答を測定することによって実施される。次いで、反応を継続させ、そして全てのリポタンパク質が反応する時間に、第二の電気化学的測定を行う。このように、単一の電気化学セル中の単一の試薬混合物を、試料のHDL含量に対応する第一の測定結果を提供するために用い、そして試料の総コレステロール含量に対応する第二の測定結果のために用い得る。
【0057】
HDL及び総コレステロール含量に対応する2回の測定を行い得る時間は、用いる特定の選択的試薬の反応速度に依存するであろう。当業者は、任意の特定の選択的試薬についての測定のための、しかるべき時点を、決定することができるであろう。多くの場合において、HDLコレステロール試験は、試料を試薬混合物に添加して約1分以内(例、30秒以内)に完了するであろうし、且つ総コレステロール試験は、試料を試薬混合物に添加してから約2分後に完了するであろう。
【0058】
各HDLコレステロールアッセイのための試薬混合物及び、総コレステロールアッセイのための試薬混合物を用いる場合、それらは、典型的には、固形形態(例えば、乾燥形態)又はゲルとして提供される。任意に、当該試薬を凍結乾燥してもよい。代替的にはそれらは、溶液又は懸濁液の形態であり得る。試薬混合物中に存在する各成分の量は、上ではモル濃度又はw/vで表しているが、当業者は、存在する各成分の相対量が同じままであるようにして、これらの量を乾燥混合物又はゲルに好適な単位に適合させることができるであろう。
【0059】
本発明の好ましい実施形態においては、試料の一部をHDLコレステロールアッセイのための試薬と反応させ、且つ同時又は実質的に同時(例、30秒以内又は15秒以内)に、試料の更に一部を総コレステロールアッセイのための試薬と反応させる。これで、決定すべき試料の非HDLコレステロール含量の算出が、非常に短時間で可能になる。好ましい実施形態において、HDLコレステロール及び総コレステロールアッセイは、試料を試薬に添加してから5分以内、好ましくは3分、2分、90秒又は60秒以内に完了する。
【0060】
電気化学的測定が全血で実施される場合、得られる測定結果はヘマトクリット値に依存し得る。従って、測定結果は理想的には、少なくとも部分的に、この要因を説明するために調整するべきである。或いは、アッセイを実施する前に、試料を濾過することによって赤血球を除去できる。
【0061】
本発明のキットは、各セルが、作用電極、参照電極又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極を有する電気化学セルを、少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ有する装置を含む。当該セルが所望の電気化学的試験を提供するために、シリーズの試薬が当該セル又は各セルに使われる。当該試薬が電気化学セルに使われるということによって意味されるのは、一度試料が試薬と接触すると、試薬と試料の混合物が電気化学セルの作用電極に接触することになるように、試薬は位置するということである。当該キットはまた、各セルに電位を印加するための電源及び結果生じる、各セルの電気化学的応答を測定するための測定機器を含む。
【0062】
本発明の装置は、HDLコレステロールアッセイを実施するための上記の第一のシリーズの試薬が使われる、少なくとも1つの電気化学セルを有する。1つの実施形態において、この単一セルは、HDLコレステロール試験及び総コレステロール試験を実施するために用いる。代替の実施形態において、当該装置は、総コレステロールアッセイを実施するための、上記の第二のシリーズの試薬が使われる、少なくとも1つの第二の電気化学セルを含む。当該キットはまた、総コレステロールの結果からHDLコレステロールの結果を差し引くことによって、試料の非HDLコレステロール含量を決定するための、算出手段、典型的には、コンピュータプログラムを含む。
【0063】
典型的には、各シリーズの試薬は、単一の試薬混合物の形態(即ち、各シリーズの試薬について、1つの試薬混合物が提供される)で装置中に与えられる。試薬混合物は、液体又は固体のいずれかの形態で存在し得るが、固体形態が好ましい。典型的には、試薬混合物は、好適な液体(例、水)中に懸濁/溶解させて装置中に挿入するか又は装置上に置き、次いで所定の位置で乾燥させる。装置中/上で物質を乾燥させる段階は、当該物質を望ましい場所に保持するのに役立ち、且つ試薬が、装置の一方の電気化学セルからもう一方へと移動するのを妨げるのに役立つ。乾燥は、例えば、風乾、真空乾燥、凍結乾燥又はオーブン乾燥(加熱)によって実施し得る。試薬混合物は、典型的には、試料が試薬混合物と接触したとき、電極との接触も起きるように、電極の付近に配置される。
【0064】
当該装置には、任意に、試験する試料が、試薬混合物と接触する前に通過する膜が含まれ得る。当該膜は、例えば、赤血球(red blood cell)、赤血球(erythrocyte)及び/又はリンパ球等の成分を濾過で除去するために用いることができる。血液濾過膜を含む好適な濾過膜は、当該技術において公知である。Presence 200及びPall filtrationのPALL BTS SP300、Whatman VF2, Whatman Cyclopore, Spectral NX及びSpectral Xが血液濾過膜の例である。繊維ガラスフィルター(例えばWhatman VF2)は全血から血漿を分離でき、また、全血検査試料が装置に供給され、且つ試験される試料が血漿である場合に好適に用いられる。
【0065】
使用前に親水的又は疎水的処理を経てきたものを含む、代替的、又は付加的な膜も用いられ得る。所望により、当該膜の表面の他の特徴も改変してもよい。例えば、所望の試料の膜を通る流れを促進するために、水中における膜の接触角を修正するための処理を用いてもよい。当該膜は1又は2以上の材料層を含んでもよく、各々は同じであっても、異なっていてもよい。例えば、異なる膜材料の2層を有する、従来の二重層膜を用いてもよい。
【0066】
本発明において用いるための適切な装置には、WO2003/056319及びWO2006/000828に記載のものが含まれる。
【0067】
本発明の1つの実施形態による装置の電気化学セルを、図1に示す。この実施形態においては、作用電極5は、ミクロ電極である。本発明の目的のために、ミクロ電極は、50μmを超えない少なくとも1つの、作業寸法を有する電極である。本発明のミクロ電極は、巨大なサイズの(即ち50μmを上回る)寸法を有してもよい。
【0068】
セルは、底部1及び壁(単数又は複数)2を有するレセプタクル又は容器の形態である。典型的には、レセプタクルは、25〜1000μmの深さ(即ち、上部から底部まで)を有するであろう。1つの実施形態においては、レセプタクルの深さは、50〜500μm、例えば100〜250μmである。代替の実施形態においては、レセプタクルの深さは50〜1000μm、好ましくは200〜800μmであり、例えば300〜600μmである。レセプタクルの長さ及び幅(即ち、壁から壁まで)、又はレセプタクルが円筒状の場合はその直径は、典型的には、0.1〜5mm、例えば0.5〜1.5mm(1mm等)である。
【0069】
レセプタクル3の開口端は、部分的に不透過性材料で覆われてもよく、又は半透性又は透過性の膜等の、半透性又は透過性の材料で覆われてもよい。レセプタクルの開口端は、実質的に、半透性又は透過性の膜4で覆われるのが好ましい。膜4は、とりわけ、埃又は他の混入物質がレセプタクルに入ることを防ぐのに役立つ。
【0070】
作用電極5は、レセプタクルの壁に位置する。作用電極は、例えば、レセプタクルの壁周囲の連続した帯の形態である。作用電極の厚みは、典型的には0.01〜25μm、好ましくは0.05〜15μmであり、例えば0.1〜20μmである。より厚みのある作用電極、例えば、0.1〜50μm、好ましくは5〜20μmの厚みを有する電極も想定している。作用電極の厚みは、レセプタクルをその底部に置く場合は、その垂直方向の寸法である。作用電極の厚みは、その有効作業寸法、即ち、試験する試料と接触する、電極の寸法である。作用電極は、例えば、導電性インクの形態の、炭素、パラジウム、金又は白金で形成するのが好ましい。当該導電性インクは、例えば、白金、及び/又はグラファイトといった更なる材料を含有する改良インクであり得る。作用電極を形成するために2以上の層を用いてもよく、当該層は、同じか、又は異なった材料で形成される。
【0071】
セルはまた、例えば、レセプタクルの底部、レセプタクルの壁(単数又は複数)中、又はレセプタクルの周囲若しくは付近の装置の領域中に存在し得る擬似参照電極(示さず)を含有する。擬似参照電極は、典型的には、Ag/AgClから作るが、他の材料も用い得る。擬似参照電極として用いるための好適な材料は、当業者に公知である。この実施形態においては、セルは、擬似参照電極が対向電極及び参照電極の両方として働く2電極システムである。セルが参照電極及び別個の対向電極を含む、代替の実施形態も想定できる。
【0072】
擬似参照(又は参照)電極は、典型的には、作用電極5と同様のサイズの、又はそれより小さい、或いは大きい(例えば相当大きい)表面積を有する。典型的には、擬似参照(又は参照)電極の表面積の、作用電極の表面積に対する比率は、少なくとも1:1、例えば少なくとも2:1、又は少なくとも3:1である。好ましい比率は、少なくとも4:1である。擬似参照(又は参照)電極は、例えば、マクロ電極であってもよい。好ましい擬似参照(又は参照)電極は、0.01mm又はそれを上回る、例えば、0.1mm又はそれを上回る、寸法を有する。これは例えば、0.1mm又はそれを上回る、寸法である。擬似参照(又は参照)電極の典型的な面積は、0.001mm〜100mm、好ましくは0.1mm〜60mmであり、例えば、1mm〜50mmである。作用電極と擬似参照(又は参照)電極との間の最短距離は、例えば、10〜1000μmである。
【0073】
セルが機能できるためには、電極は各々絶縁材料6によって分離されなければならない。絶縁材料は、典型的には、例えば、アクリレート、ポリウレタン、PET,ポリオレフィン、ポリエステルといったポリマー又は他の任意の安定な絶縁材料である。ポリカーボネート並びに他のプラスチック及びセラミックも、好適な絶縁材料である。絶縁層はポリマー溶液から溶媒を蒸発させることによって形成され得る。塗布後硬化する液体、例えばワニスも、用いられ得る。或いは、例えば、熱若しくはUVへの曝露によって、又は2成分の架橋可能なシステムの活性部分と混合することによって架橋される、架橋可能なポリマー溶液を用いても良い。しかるべき場合には、絶縁層を形成するために、誘電性インクも用いられ得る。代替の実施形態においては、絶縁層は装置にラミネートされる(例えば熱でラミネートされる)。
【0074】
電気化学セルの電極は、好適な任意の手段によって、必要な任意の測定機器に、接続され得る。典型的には、電極は、導電性のトラックに接続され、該導電性のトラックは、必要な測定機器にそれ自身接続されるか、又は接続され得る。
【0075】
図1中の7に示す通り、必要な試薬は、典型的にはレセプタクル内に含有させる。典型的には、単一の試薬混合物の形態の試薬は、液体の形態でレセプタクル内に挿入された後、組成物を固定するのに役立つよう乾燥させる。試薬混合物は、例えば、風乾、真空乾燥、凍結乾燥、又はオーブン乾燥(加熱)してもよく、最も好ましくは、凍結乾燥される。
【0076】
本発明の装置は、1以上の電気化学セルを含む。ストリップS上に4つの電気化学セル10を有する装置を、図2に示す。各セルは、作用電極を含み、且つ対向電極を更に含み得る。好ましくは、図2に示すように、単層の擬似参照電極材料5を、ストリップ61、62の表面上に与え、各レセプタクルを囲んで、且つレセプタクルの周囲と擬似参照電極層の端との間のブランク領域13を残す。当該電極は、伝導トラック12を介して必要な機器に接続する。
【0077】
本発明の実施形態は、多くの測定が同時になされるのを可能にする。この実施形態の好ましい態様において、セルの1つはHDLコレステロール試験を実施するための試薬混合物を含有し、第二のセルが総コレステロール試験を実施するための試薬を含有する。
【0078】
更なるセルをコントロールセルとして用いてもよい。コントロールセルは、典型的には、界面活性剤、補酵素、酸化還元試薬及び任意にレダクターゼ並びに所望の緩衝剤、安定化剤及び賦形剤を含む、更なるシリーズの試薬を含む。典型的には、コントロール試薬は、コレステロールと反応する酵素が存在しないことを除いて、HDLコレステロール及び総コレステロール試験を実施するために用いる試薬と同じか、又は非常に似たものである。試料をコントロール試薬と反応させ、続いて任意の電気化学的応答を測定することで、当業者は、試料中の妨害物質に起因する応答を決定できる。その後、妨害物質に起因する応答を、総コレステロール試験及びHDLコレステロール試験の測定結果から差し引いて、妨害物質の効果が低減又は除去された、より正確な結果を得ることができる。更に、試験される試料が、当該試験をうまくいかなくさせる任意の著しい量の妨害物質を含有する場合には、コントロール反応を用いて、これを同定できる。
【0079】
本発明のキットは、電気化学セル(例、図2に記載及び上記のもの)を含むストリップS、及び、当該ストリップSと電子的な接触を形成できる電子装置(例、携帯型電子装置)を含み得る。例えば、当該電子装置は、電極へ電位を提供するための電源並びに電気化学的応答を検出するための測定機器及び他の必要な任意の測定機器を内蔵し得る。当該電子装置はまた、非HDLコレステロール含量を決定するための計算装置も含み得る。1以上のこれらのシステムを、コンピュータプログラムによって作動させてもよい。
【0080】
本発明の装置は、試料を装置に提供すること、及び試料が各試薬混合物に接触するのを可能にすることによって機能させる。固体形態の試薬混合物の場合、当該試薬混合物を試料中で溶解/懸濁することを可能とするため、及び、反応が起こることを可能にするために、典型的には概ね20秒の含水(wet-up)時間が与えられる。しかしながら、この含水時間は、用いる装置の性質に依存して変えてもよい。例えば、試薬と接触させる前に試料を濾過するための膜が存在する場合、最大5分の含水時間を用い得る。試料/試薬混合物は、電極で電気化学反応が起こり得るように、対応する作用電極と電子的に接触していなくてはならない。
【0081】
次いで、各セルに電位を印加し、そして各セルの電気化学的応答を測定する。これは、典型的には、電流を測定することによって実現される。典型的には、試料と試薬とを混合した時点から10秒間〜500秒間、例えば、10秒間〜400秒間又は10秒間〜180秒間(例、少なくとも10秒又は15秒、且つ最大90秒、60秒又は30秒、例えば概ね20秒間)の後に、電位を印加し、そして測定する。この好ましい範囲内の時間を用いることで、HDLコレステロールアッセイでHDLに結合したコレステロールのみを検出することを保証するのに役立つ。
【0082】
単一のセルを用いて、試料のHDLコレステロール及び総コレステロール含量を測定する場合、更なる経過時間の後、セルに第二の電位を印加する。例えば、第二の電位は、試料と試薬とを混合した時点から少なくとも120秒又は少なくとも150秒又は180秒で印加され得る。この第二の電位の印加の間に電流を測定することで、総コレステロール含量に対応する結果が与えられる。
【0083】
典型的には、Ru(II)が作用電極で検出すべき生成物の場合、セルに印加する電位は0.1V〜0.3Vである。0.15Vが好ましい印加電位である。(本明細書中で述べる電圧はすべて、0.1M塩化物ありでの、Ag/AgCl参照電極に対する値である。)好ましい実施形態においては、電位が約1秒間、0.15Vの正の印加電位であるのが最初の段階である。還元電流の測定を望む場合、次いで、−0.4〜−0.6Vの負の電位を印加する。二重の電位段階の使用は、WO 03/097860(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。異なる酸化還元剤を用いる場合、酸化/還元ピークが生じる電位に従って、印加電位を変えることができる。
【0084】
従って、本発明の電気化学的試験で、非HDLコレステロールの測定を、試料を装置にアプライしてから非常に短時間で、典型的には約5分以内で、好ましくは3分以内で、2分以内で、又は1分以内にでさえ、行うことが可能になる。状況によっては、試料を装置にアプライしてからわずか15秒又は30秒で結果を得ることができるかもしれない。
【実施例】
【0085】
実施例1:HDL選択的界面活性剤の解析
本実施例において、界面活性剤が選択的にHDLコレステロールを破壊するか、従って本発明のHDLコレステロールアッセイに使用するのにふさわしいかどうか、を決定するための試験プロトコルを記載する。
【0086】
緩衝溶液の調製(トリス緩衝液−5%グリシン pH9.0)
結晶化トリス及びトリスHClを含有するトリズマプレセット結晶(Trizma Pre-Set Crystals)(pH9.0、シグマ、T−1444)を950mlのdHOに溶解し、pHを記録した。続いて、50gのグリシン(シグマ、G−7403)を該トリス溶液に加え、pHを記録した。次いで、10M 水酸化カリウム(シグマ、P−5958)を用いてpHを8.8−9.2の範囲内に調整し、dHOにより該溶液を1000mlとし、最終pHを記録した(pH9.1)。使用期限を1ヶ月とし、4℃にて、該溶液を保存した。
【0087】
界面活性剤溶液の調製
事前調製した緩衝溶液にアンヒトール 20N(花王)を加えることにより、界面活性剤溶液を調製し、10%アンヒトール 20N緩衝溶液を得た。
【0088】
LDL及びHDL試料の調製
脱脂血清(dilipidated serum)(Scipac、S139)を用いて、LDL(Scipac、P232−8)及びHDL(Scipac、P233−8)試料を、必要濃度の10倍で作成した(最終テスト混合物中で1:10で希釈するため)。次いで、スペースクリニカルアナライザー(Space clinical analyser)(Schiappanelli Biosystems Inc)を用いて試料を解析した。LDL及びHDLの適切な濃度は10mMであり、最終テスト混合物中で1mMを与える。
【0089】
酵素混合物の調製
事前調製した緩衝溶液に以下を加えることにより、酵素混合物を調製した:

160mM 塩化ルテニウムヘキサアミン(Hexaammine)(III)(アルファ・エイサー、10511)
17.7mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
6.7mg/ml コレステロールエステラーゼ(Sorachim/東洋紡、COE−311)
44.4mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0090】
テストプロトコル
9μlの界面活性剤溶液を9μlの酵素混合物と混合した。T=−30秒において、2μlの試料(10倍濃度LDL若しくは10倍濃度HDLのいずれか、又は2μlの脱脂血清)を得られた界面活性剤と混合した:酵素混合物及び9μlの得られた溶液を電極上に置いた。T=0秒においてクロノアンペロメトリーテストを開始した。0.15Vの酸化電位を印加し、続いて−0.45Vの還元電位を印加した。酸化電位の印加中、5つのタイムポイント(T=0、32、63、90及び118秒)にて電流を測定した。各試料を重複してテストした。
【0091】
結果
HDL及びLDLテストの結果を、コントロールとしての脱脂試料と共に、図3に示す。特に短いタイムピリオドにおいて、アンヒトール 20NがLDLよりもHDLに対して選択的であることが、図3より明らかである。
【0092】
ディファレンシエーションの値を決定するため、測定したHDL電流を既知のHDL濃度に対してプロットし、各タイムポイントでのグラジエントを測定した。同様に、各LDL測定結果に対するグラジエントを計算した。T=32秒(試薬に試料を加えた後合計62秒)において、HDLグラジエント(GHDL)は、0.796mMの既知のHDL濃度に基づいて433.08、LDLグラジエント(GLDL)は、0.744mMの既知のLDL濃度に基づいて171.10、並びに得られたディファレンシエーションの値は60.49だった。
【0093】
他の選択的界面活性剤に対するいくつかのディファレンシエーションの値を下の表1に示すが、全てT=32秒において測定している:
【0094】
【表1】

【0095】
実施例2:非HDLコレステロール含量の決定
図2に従う電気化学センサストリップを使用した。各ストリップは図1に従う2つの電気化学セルを含有していた。
【0096】
第1の電気化学セルは、総コレステロールテストを実行するための製剤を含有していた。該製剤は以下の通りであった:
0.1M トリス(pH9.0)、50mM MgSO、5%w/v グリシン、1%w/v ミオイノシトール、1%w/v エクトイン、5%w/v CHAPS、5%w/v デオキシbigCHAP、80mM Ru(NHCl、8.8mM TNAD、4.4mg/mL PdR、3.3mg/mL ChE及び66mg/mLゼラチンフリーChDH。
【0097】
第2の電気化学セルは、HDLコレステロールテストを実行するための製剤を含有していた。該製剤は以下の通りであった:
0.1M トリス(pH9.0)、2%w/v MgCl、3%w/v グリシン、1%w/v ヒドロキシエクトイン、1%w/v ラクチトール、1%w/v ラクトース、2%w/v エマルゲン B66、20mM Ru(NHCl、1.66mM TNAD、2mg/mL PdR、3.3mg/mL クロモバクテリウム・ビスコサム由来ジェンザイムリパーゼ、20mg/mLゼラチンフリーChDH。
【0098】
各製剤を、水性の溶液/懸濁液として作成して、各電気化学セルに挿入し、乾燥した。
【0099】
1日目は10人のドナー及び2日目は20人のドナーにより、実験を2日に渡って行った。ドナーは絶食させなかった。全血試料をLiヘパリン採血管内に採取した。これらの試料を遠心し、血漿を採取した。
【0100】
事前調製した電気化学センサストリップを用いて、各試料の総コレステロール及びHDLコレステロール含量をテストした。各ストリップに20uLの血漿をアプライして、各電気化学セルを満たした。試料を加えた後、以下の時間で0.15Vの酸化電位を印加し、続いて−0.45Vの還元電位を印加した:HDL:36秒;総コレステロール:110秒。酸化及び還元電流のバルブ(valves)の両方を測定した。個々のセンサストリップでの8反復の測定を、各試料で行った。
【0101】
また、各試料中の総コレステロール、HDLコレステロール及びLDLコレステロールの濃度を、ランドックススペースクリニカルアナライザー(Randox SPACE clinical analyzer)を用いて決定した。アナライザーでの各測定を重複して行い、平均濃度値を決定した。
【0102】
総コレステロール(TC)テストの結果を図4a及び4b(それぞれ1日目及び2日目)に示す。これらの図は、ランドックススペースクリニカルアナライザーにより決定されたTC含量に対してプロットした酸化電流応答を示す。同様に、HDLコレステロールテストの結果を図5a及び5bに示すが、ランドックススペースクリニカルアナライザーにより決定されたHDLコレステロール含量に対して酸化電流をプロットしている。
【0103】
直線回帰を各グラフに対して行った。各グラフの最良の直線近似由来の勾配及び切片を用いて、各電流応答に対する分析物濃度を予測した:
【0104】
【数2】

【0105】
TC及びHDLコレステロールに関して計算された分析物の値を用いて、下の式に従って非HDLコレステロールの濃度を計算した:
【0106】
【数3】

【0107】
ランドックススペースクリニカルアナライザーにより決定された、[LDL](x軸)に対する、各試料の測定されたHDLコレステロール及びTCから決定された[非HDL](y軸)のプロットを図6a及び6bに示す。非HDLコレステロール濃度とLDLコレステロール濃度との間に良好な相関が観察された。
【0108】
また、本発明に従って測定された非HDLコレステロール含量を、フリードワルド式を用いて決定されたLDLコレステロール含量と比較した:
【0109】
【数4】

【0110】
式中、[総コレステロール]は試料中のコレステロールの総濃度であり、[HDL]は高密度リポタンパク質に結合したコレステロールの濃度であり、[トリグリセリド]は試料のトリグリセリド濃度であり、濃度はmmol dm−3で測定している。
【0111】
非HDLコレステロール含量に対してプロットした結果を、図7に示す。非HDLコレステロール含量とフリードワルド式を用いて決定されたLDLコレステロール含量との間に良好な相関が見られた。
【0112】
実施例3:MEGA−8
本実験の目的は、短い測定時間でのHDLへの応答及び長い測定時間でのTCへの応答を用いることによって、LDLへの応答を判定するための、100mM MEGA−8を含有するシングルセンサの使用を調べることであった。
【0113】
10%β−ラクトース緩衝液
0.1M トリス pH9.0、30mM KOH及び10% β−ラクトースを含有する緩衝溶液を調製した。
【0114】
30mM RuAcac溶液:
上記10%ラクトース緩衝液にRuAcacを加えることにより、30mM RuAcac溶液を作成した。Covarisのアコースティックミキサーを用いて、この溶液を混合した。
RuAcac=Cis−[Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)]
【0115】
MEGA溶液
上記RuAcac溶液にMEGAを加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度MEGA溶液を作成した:
MEGA−8(Soltec Ventures S116)
200mM(292μl RuAcac溶液中に、0.0188g)
【0116】
酵素混合物
RuAcac溶液に酵素を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度で酵素混合物を作成した:
17.7mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
6.7mg/mlリパーゼ(ジェンザイム)
44.4mg/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
Covarisのアコースティックミキサーを用いて、この溶液を混合した。
【0117】
分注及び凍結乾燥
最終酵素溶液のために、等量(約50ul)の2倍濃度酵素溶液及びMEGA溶液を1:1で混合し、酵素/界面活性剤の最終混合物を得た。電動ピペットを用いて、0.4μl/ウェルの各溶液を、WO0356319に記載の通りのセンサ上に分注した。次いで、分注したセンサシートを凍結乾燥した。
【0118】
血漿試料
血漿試料を30分間解凍した後、2900RCFで5分間遠心した。脱脂血清(Scipac、S139)も、試料として使用した。試料について、TC濃度、TG濃度、HDL濃度及びLDL濃度を、スペースクリニカルアナライザー(Schiappanelli Biosystems Inc)を用いて解析した。
【0119】
テストプロトコル
12−15μlの血漿試料を電極ごとに用いた。血漿を加えて、Autolabに連結されたマルチプレクサーを用いて、クロノアンペロメトリーテストを開始した。13のタイムポイント(0、32、64、96、128、160,192、224、256、288、320、352及び384秒)にて、0.15Vで酸化電流を測定し、最後のタイムポイント(416秒)にて、−0.45Vで還元電流を測定した。各試料を重複してテストした。
【0120】
解析
各タイムポイントにおけるHDL若しくはTCに対する較正プロットを構築した。
【0121】
結果
32秒におけるHDLに対して、及び384秒におけるTCに対して良好な較正プロットが観察された。これらを図8に示す。
【0122】
個々の電極に関して、32秒における電流値を用いて、グラジエント及び切片の値を用いて、HDL較正プロットにより予測されるHDL値を計算した。同様に、個々の電極に関して、384秒における電流値を用いて、グラジエント及び切片値を用いて、TC較正プロットにより予測されるTC値を計算した。
【0123】
個々の電極に関して、これらのHDL及びTCの予測値を用いて、TC−HDLの値を計算した。これらのTC−HDLの値を、ランドックスアナライザーで測定した血漿試料のLDL値に対してプロットした。
【0124】
ランドックスLDLに対する、計算されたTC−HDLのプロットを図9に示す。TC−HDLの計算値は、参照の方法により測定したLDLの値と妥当な相関を与えた。
【0125】
結論
短期間でのHDL、及び長期間でのTCへの応答を測定し、LDL=TC−HDLを計算することにより、LDLへの応答を計算するために、100mM MEGA−8に基づいたシングルセンサを使用することができる。
【0126】
実施例4:様々な酵素
本実験の目的は、様々なコレステロールエステル加水分解酵素(リパーゼ若しくはコレステロールエステラーゼ)又は様々なNADHオキシダーゼ(プチタドキシン(Putitadoxin)レダクターゼ若しくはジアホラーゼ)で調製したTC及びHDLセンサを用いた、TC−HDL値からの血漿LDLの決定を調べることであった。
【0127】
3つの別々のTCセンサ及び3つの別々のHDLセンサを調製した。各センサに用いた試薬の違いを下の表にまとめる:
【0128】
【表2】

【0129】
2つの別々の酵素混合物を以下のように調製したが、1つは80mM Ru(NHClメディエーターを有し、1つは30mM RuAcacメディエーターを有していた。
80mM Ru(NHClメディエーターを有する酵素混合物:
10%β−ラクトース緩衝液;
0.1M トリス pH9.0、30mM KOH及び10%β−ラクトースを含有する緩衝溶液を調製した。
【0130】
界面活性剤溶液
ラクトース溶液に界面活性剤を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度界面活性剤溶液を作成した。

10% CHAPS(シグマ−アルドリッチ、C5070)
500ul ラクトース溶液中に0.05g。

10%デオキシbigCHAP(Soltec Ventures、S115)
380ul CHAPS溶液中に0.038g。
【0131】
80mM Ru(NHCl溶液:
10%CHAPS/デオキシBIGCHAP溶液にRu(NHClを加えることにより、80mM Ru(NHCl溶液を作成した。
【0132】
酵素混合物
Ru(NHCl溶液に酵素を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度で酵素混合物を作成した:
17.7mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)若しくは8.4mg/mLジアホラーゼ(ユニチカ)
6.7mg/ml コレステロールエステラーゼ(東洋紡、COE−311)若しくはリパーゼ(東洋紡、LPL311)
44.4mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0133】
各最終酵素溶液のために、等量(約50uL)の2倍濃度酵素溶液及び界面活性剤溶液を1:1で混合し、酵素/界面活性剤の最終混合物を得た。
【0134】
30mM RuAcacメディエーターを有する酵素混合物:
10%β−ラクトース緩衝液
0.1M トリス pH9.0、30mM KOH及び10% β−ラクトースを含有する緩衝溶液を調製した。
30mM RuAcac溶液:
上記10%ラクトース緩衝液にRuAcacを加えることにより、30mM RuAcac溶液を作成した。Covarisのアコースティックミキサーを用いて、この溶液を混合した。
RuAcac=Cis−[Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)]
【0135】
界面活性剤溶液
RuAcac溶液に界面活性剤を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍濃度界面活性剤溶液を作成した:
200mM SMC(同仁堂、SO21−12)
303ulのRuAcac溶液中0.0298g

200mM HEGA−9(アナトレース、H109)
204ulのRuAcac溶液中0.0149g
【0136】
酵素混合物
RuAcac溶液に酵素を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度で酵素混合物を作成した:
17.7mMチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/mlプチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)若しくはジアホラーゼ(ユニチカ)
20.1mg/mlリパーゼ(ジェンザイム)若しくはコレステロールエステラーゼ(ジェンザイム)
44.4mg/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
Covarisのアコースティックミキサーを用いて、この溶液を混合した。
【0137】
血漿試料の分注、凍結乾燥、調製及び試験プロトコルは、HEGA−9を有するセンサを除き、実施例3に記載の通りであり、HEGA−9を有するセンサは、6反復の酸化(0、59、118、177、236及び295秒のタイムポイントにて)を用いてテストし、最後のタイムポイント(354秒)にて−0.45Vで還元電流を測定した。トランジェント時間は、8秒だった。
【0138】
解析
各タイムポイントにおけるHDL若しくはTCに対する較正プロットを構築した。
【0139】
結果
TCセンサの応答を、それぞれ192秒、224秒若しくは224秒の測定時間で、TC濃度に対するTC1、TC2及びTC3に関してプロットした。HDLセンサの応答を、HDL1、HDL2、HDL3に対して、それぞれ384秒、384秒及び295秒の測定時間で、血漿HDL濃度に対してプロットした。
【0140】
これらの各較正プロットに関して、最良直線近似の勾配及び切片を用いて各電流値のTC(若しくはHDL)濃度を計算した。次いで、濃度値を各試料について平均化した(n=8)。
【0141】
TC及びHDLセンサの全ての可能な組み合わせについて、TC−HDL濃度値を各血漿試料について計算し、ラボアナライザーにより測定された試料のLDL濃度に対してプロットした。これらの較正プロットを図10に示す。
【0142】
図10説明文:
A:TCセンサ1及びHDLセンサ1
B:TCセンサ1及びHDLセンサ2
C:TCセンサ1及びHDLセンサ3
D:TCセンサ2及びHDLセンサ1
E:TCセンサ2及びHDLセンサ2
F:TCセンサ2及びHDLセンサ3
G:TCセンサ3及びHDLセンサ1
H:TCセンサ3及びHDLセンサ2
I:TCセンサ3及びHDLセンサ3
【0143】
結論
様々な酵素で調製したTC及びHDLセンサに関して、標準方法により決定された血漿TC−HDL及び血漿LDLの計算値の間に良好な相関が観察される。
【0144】
実施例5:様々な界面活性剤
本実験の目的は、一連の界面活性剤の型で調製したTC及びHDLセンサを用いて、TC−HDL値からの血漿LDLの決定を調べることであった。
【0145】
2つの別々の酵素混合物を調製したが、1つは80mM Ru(NHClメディエーターを有しており、1つは30mM RuAcacメディエーターを有していた。80mM Ru(NHClメディエーター溶液及び30mM RuAcacメディエーター溶液を、実施例4に記載の通りに調製した。
【0146】
80mM Ru(NHClメディエーターを有する酵素混合物
界面活性剤溶液
Ru(NHCl溶液に界面活性剤を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍の濃度の界面活性剤溶液を作成した:

10%CHAPSO(シグマ−アルドリッチ、C4695)
180ulのRu(NHCl溶液中に、0.018g

10%デオキシbigCHAP(Soltec Ventures、S115)
227ulのRu(NHCl溶液中に、0.0227g
【0147】
酵素混合物
Ru(NHCl溶液に酵素を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度で酵素混合物を作成した:
17.7mMチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/mlプチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
6.7mg/mlコレステロールエステラーゼ(東洋紡、COE−311)
44.4mg/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0148】
30mMRuAcacメディエーターを有する酵素混合物:
界面活性剤溶液
RuAcac溶液に界面活性剤を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度界面活性剤溶液を作成した:

10%n−ノニル−β−D−グルコピラノシド(アナトレース、N324)
192ulのRuAcac溶液中に、0.0192g

100mMスクロースモノドデカノエート(カルビオケム、324374)
173ulのRuAcac溶液中に、0.0091g

200mM HEGA−9(アナトレース、H109)
203ulのRuAcac溶液中に、0.0148g

200mM n−オクチル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、O310)
211ul RuAcac溶液中に、0.0191g
【0149】
酵素混合物
RuAcacに酵素を加え、以下の最終濃度にすることにより2倍強度で酵素混合物を作成した:
17.7mMチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/mlプチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
20.1mg/mlリパーゼ(ジェンザイム)
44.4mg/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
Covarisのアコースティックミキサーを用いて、この溶液を混合した。
【0150】
血漿試料の分注、凍結乾燥、調製及び試験プロトコルはHEGA−9を有するセンサを除き、4秒のトランジェント時間で、実施例3に記載の通りであり、HEGA−9を有するセンサは、6反復の酸化(0、59、118、177、236及び295秒のタイムポイントにて)を用いてテストし、最後のタイムポイント(354秒)にて−0.45Vで還元電位を測定した。トランジェント時間は、8秒だった。各試料を重複してテストした。
【0151】
解析
各タイムポイントにおけるHDL若しくはTCに対する較正プロットを構築した。
【0152】
結果
CHAPSO、デオキシbigCHAP又はn−ノニル−β−D−グルコピラノシドを含有するセンサの応答を、それぞれ224秒、160秒及び288秒の測定時間で、TC濃度に対してプロットした。スクロースドデカノエート、HEGA−9又はn−オクチル−β−D−マルトピラノシドを含有するセンサの応答を、それぞれ384秒、118秒及び384秒の測定時間で、血漿HDL濃度に対してプロットした。
【0153】
これらの較正プロットごとに、最良直線近似の勾配及び切片を用いて各電流値のTC(若しくはHDL)濃度を計算した。次いで、濃度の値を各試料に関して平均化した(n=8)。
【0154】
TC及びHDLセンサの全ての可能な組み合わせに関して、各血漿試料に対してTC−HDL濃度の値を計算して、ラボアナライザーにより測定された試料のLDL濃度に対してプロットした。これらの較正プロットを図11に示す。
【0155】
図11説明文:
A:TCセンサは5%CHAPSOを含有し、HDLセンサは50mM スクロースモノドデカノエートを含有する。
B:TCセンサは5%CHAPSOを含有し、HDLセンサは100mM HEGA−9を含有する。
C:TCセンサは5%CHAPSOを含有し、HDLセンサは100mM n−オクチル−β−D−マルトシドを含有する。
D:TCセンサは5%デオキシbigCHAPを含有し、HDLセンサは50mMスクロースモノドデカノエートを含有する。
E:TCセンサは5%デオキシbigCHAPを含有し、HDLセンサは100mM HEGA−9を含有する。
F:TCセンサは5%デオキシbigCHAPを含有し、HDLセンサは100mM n−オクチル−β−D−マルトシドを含有する。
G:TCセンサは5%n−ノニル−β−D−グルコピラノシドを含有し、HDLセンサは50mMスクロースモノドデカノエートを含有する。
H:TCセンサは5%n−ノニル−β−D−グルコピラノシドを含有し、HDLセンサは100mM HEGA−9を含有する。
I:TCセンサは5%n−ノニル−β−D−グルコピラノシドを含有し、HDLセンサは100mM n−オクチル−β−D−マルトシドを含有する。
【0156】
結論
様々な界面活性剤で調製したTC及びHDLセンサに関して、標準方法により決定した血漿TC−HDL及び血漿LDLの計算値との間に良好な相関が観察される。
【0157】
実施例6:総コレステロール及びHDLコレステロール電気化学センサストリップを用いた非HDLコレステロールの測定
TC及びHDL用の複数分析物電気化学センサストリップを社内で調製した。各センサストリップは、TC及びHDL用の個々のセンサを含有し、乾燥酵素試薬及びスクリーン印刷微小電極(センサの詳細はWO200356319を参照)を含んでいた。各センサストリップを、乾燥剤と共に個々に包装した。
【0158】
TCセンサに使用した製剤は以下の通りであった:
0.1M トリス(pH9.0)、50mM MgSO、5%w/v グリシン、1%w/v ミオイノシトール、1%w/v エクトイン、5%w/v CHAPS、5% w/v デオキシbigCHAP、80mM Ru(NHCl、8.8mM TNAD、4.2mg/mL PdR、3.3mg/mL ChE及び66mg/mLゼラチンフリーChDH。
【0159】
HDLセンサに使用した製剤は以下の通りであった:
0.1M トリス(pH9.0)、10%w/v ラクトース、5%w/v スクロースモノカプレート、80mM Ru(NHCl、8.8mM TNAD、4.2mg/mL PdR、3.4mg/mL クロモバクテリウム・ビスコサム由来ジェンザイムリパーゼ、22mg/mL ゼラチンフリーChDH。
【0160】
実験は1日で、30人のドナーで行った(10人は絶食並びに20人は非絶食)。全血試料をLiヘパリン採決管に採取した。これらの試料を遠心して、血漿を採取した。各試料中のTC、HDL及びLDLの濃度は、ランドックススペースクリニカルアナライザーを用いて決定した。アナライザーでの各測定を重複して行い、平均濃度値を使用した。
【0161】
autolab及びマルチプレクサーを用いてストリップごと20uL 血漿を用いて電気化学センサ応答を決定した。14秒間隔で、15のタイムポイントにて酸化電流(nA)を測定した。個々のセンサでの8反復の測定を各試料を用いて行った。
【0162】
各タイムポイントにおいて、各センサ応答を酸化電流値(nA)として記録した。
【0163】
結果
TC及びHDLに関する較正グラフを、ランドックススペースクリニカルアナライザーから得られた濃度値を用いて、分析物の濃度に対するフィルター処理した酸化電流の応答から作成した。
【0164】
各グラフに関して直線回帰を行った。グラフを図12(a)(TC)及び図12(b)(HDL)に示したが、182秒及び154秒における較正プロットを用いている。各グラフの最良直線近似からの勾配及び切片を用いて各電流応答に関する分析物濃度を予測した:
【0165】
【数5】

【0166】
TC及びHDLコレステロールの計算した分析物の値を用いて、下の式に従って非HDLコレステロールの濃度を計算した:
【0167】
【数6】

【0168】
[LDL](x軸)に対する[非HDL](y軸)のプロットを作成した。このグラフを図13に示す。非HDLコレステロール濃度とLDLコレステロール濃度との間に良好な相関が観察された。
【0169】
結論
総コレステロール及びHDLコレステロールセンサを含有する電気化学センサストリップは、血漿の非HDLコレステロール濃度を決定するために使用することができ、これは血漿のLDLコレステロールの測定値に対して良好な相関を与える。
【0170】
本発明を、様々な具体的な実施形態及び実施例に関して説明してきた。しかし、本発明はこれらの具体的な実施形態及び実施例に決して限定されるものではないことを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法であって、(a)試料中の高密度リポタンパク質に結合したコレステロールの量を電気化学的に決定すること、(b)試料中の総コレステロール量を電気化学的に決定すること、及び(b)の結果から(a)の結果を差し引くことを含む、方法。
【請求項2】
段階(a)が試料を
(a1)コレステロールエステル加水分解試薬;
(a2)コレステロールデヒドロゲナーゼ;
(a3)補酵素;
(a4)酸化又は還元されて生成物を形成することができる酸化還元剤;及び
(a5)高密度リポタンパク質を選択的に分解する界面活性剤、
を含む第一のシリーズの試薬と反応させること、並びに形成された生成物の量を電気化学的に検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤(a5)が、少なくとも50%を下回る、式(i):
【数1】

[式中、測定(HDLコレステロール)又は測定(LDLコレステロール)は、それぞれHDL又はLDLコレステロール濃度に関係する測定値である]で与えられるLDLに対するHDLのディファレンシエーションを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
界面活性剤(a5)が、スクロースエステル、マルトシド、ヒドロキシエチルグルカミド誘導体又はN−メチル−N−アシルグルカミン誘導体である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
界面活性剤(a5)が、式CH(CH13(OCHCH33.5OHの界面活性剤、ヒドロキシエチルグルカミド誘導体又はスクロースモノカプレートである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(b)が、試料を
(b1)コレステロールエステル加水分解試薬;
(b2)コレステロールデヒドロゲナーゼ;
(b3)補酵素;
(b4)酸化又は還元されて生成物を形成することができる酸化還元剤;及び任意に
(b5)界面活性剤、
を含む第二のシリーズの試薬と反応させること、並びに形成された生成物の量を電気化学的に検出することを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
界面活性剤(b5)が、1以上の胆汁酸誘導体類又はその塩を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
試料を実質的に同時に第一のシリーズの試薬及び第二のシリーズの試薬と反応させる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
段階(a)が、試料を第一のシリーズの試薬と反応させること及び形成された生成物を、高密度リポタンパク質が選択的に反応する時間に電気化学的に検出することを含み;且つ段階(b)が、試料と第一のシリーズの試薬との間の反応を継続すること及び形成された生成物を、全てのリポタンパク質が反応する時間に電気化学的に検出することを含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第一及び/又は第二のシリーズの試薬が更にレダクターゼを含む、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
リポタンパク質を含有する試料が全血であり、且つ方法が、赤血球を除去するために、試料を濾過する段階を更に含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
方法が、全体で3分以下の時間内で完了する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロール量を決定するためのキットであって、
− 作用電極、参照又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極を有する第一の電気化学セル;
− 請求項2〜5又は8のいずれか1項で規定された通りの第一のシリーズの試薬であって、当該第一の電気化学セルに使われる、第一のシリーズの試薬;
− 作用電極、参照又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極を有する第二の電気化学セル;
− 請求項6〜8のいずれか1項で規定された通りの第二のシリーズの試薬であって、当該第二の電気化学セルに使われる、第二のシリーズの試薬;
− 各セルに電位を印加するための電源;
− 結果生じる、各セルの電気化学的応答を測定するための測定機器;及び
− 高密度リポタンパク質以外のリポタンパク質中のコレステロール量を算出するための計算装置、
を含む、キット。
【請求項14】
第一のシリーズの試薬が、単一の、第一の試薬混合物の形態で存在し、且つ第二のシリーズの試薬が、単一の、第二の試薬混合物の形態で存在する、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
各試薬混合物が乾燥した形態である、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
キットを、請求項13〜15のいずれか1項において規定された通りに使用する方法であって、
(i)試料を第一のシリーズの試薬と、結果生じる試料と第一のシリーズの試薬との混合物が第一の電気化学セルの作用電極に接触するように接触させること;
(ii)試料を第二のシリーズの試薬と、結果生じる試料と第二のシリーズの試薬との混合物が第二の電気化学セルの作用電極に接触するように接触させること;
(iii)各電気化学セルに電位を印加すること;
(iv)結果生じる、電気化学的応答を測定することによって、各セルにおいて形成された生成物の量を電気化学的に検出すること;及び
(v)試料中の非HDLリポタンパク質に結合したコレステロールの量を算出すること
を含む、方法。
【請求項17】
段階(i)及び(ii)が、実質的に同時に実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
段階(v)が、試料を第一及び/又は第二のシリーズの試薬と接触させた時間から最大3分以内の時間で完了する、請求項16又は17に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−537020(P2009−537020A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510535(P2009−510535)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001769
【国際公開番号】WO2007/132226
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500472327)オックスフォード バイオセンサーズ リミテッド (19)
【Fターム(参考)】