説明

コロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラム

【課題】少ない労力で、より正確にコロニーの個数を数えることができるコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムを提供する。
【解決手段】画像取得手段12により、培養後の培地1を通過する光による投影像を、グレースケール画像として取得する。フィルタ手段14により、そのグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得る。減算手段15により、グレースケール画像から基準画像を差し引いて判定用画像を得る。階調値設定手段16により、判定用画像に基づいて、複数の異なる階調値を設定する。抽出画像取得手段17により、判定用画像から、設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する複数の抽出画像を得る。判定手段18により、各抽出画像を階調値の濃い順に並べたとき、各階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物のコロニーを計数する方法として、レーザー装置により培地にレーザー光線を照射し、CCDエリアイメージセンサで培地を透過した光を受け、その投影検出信号をコンピュータで解析するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、培地を通過する光をエリアセンサで所定時間ごとに受け、その画像を2値化し、その2値化画像の中に存在する画素連結領域の個数を数えることにより、その培地で培養された細菌のコロニーを検出するものもある(例えば、特許文献2参照)。この方法では、コロニーが成長して面積が拡大すると、コロニーの影像が大きくなることから、影像が大きくなるものが成長したコロニーであると判断して数えている。
【0003】
なお、本発明者等は、コントラストと解像度の高い培地の画像を得る方法として、被写体を軸上色収差を有する結像レンズ装置により複数の異なる色で同一面に結像させて、異なる色ごとに被写体の奥行き方向でそれぞれピントの合う深さが異なる画像を取得し、色の異なる各画像を対応させて合成し、合成画像を得る方法を開発している(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−304689号公報
【特許文献2】特開2003−85533号公報
【特許文献3】特許第4411109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ゴミや食物残渣などをコロニーと判断したり、複数のコロニーが接触したときに、一つと数えたりする可能性があり、正確なコロニー数を得られないおそれがあるという課題があった。特許文献2に記載の方法では、培養中に何度も撮影する必要があり、そのたびに労力を要するという課題があった。また、計測途中で付着したゴミなどをコロニーと判断する可能性があり、正確なコロニー数を得られないおそれがあるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、少ない労力で、より正確にコロニーの個数を数えることができるコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るコロニー検出方法は、培地を通過する光による投影像に基づいて細菌のコロニーを検出するコロニー検出方法であって、培養後の培地の前記投影像を、白と黒の濃淡のデジタルのグレースケール画像として取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲をコロニーであると判定する検出ステップとを、有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るコロニー検出システムは、培地を通過する光による投影像に基づいて細菌のコロニーを検出するコロニー検出システムであって、培養後の培地の前記投影像を、白と黒の濃淡のデジタルのグレースケール画像として取得する画像取得手段と、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲をコロニーであると判定する検出手段とを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るコロニー検出プログラムは、培地を通過する光による投影像に基づいて細菌のコロニーを検出するコロニー検出プログラムであって、培養後の培地の前記投影像を、白と黒の濃淡のデジタルのグレースケール画像として取得する画像取得手段、および、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲をコロニーであると判定する検出手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0010】
培養されたコロニーの影像をグレースケール画像で表すと、中心が一番濃く、周囲に向かって薄くなっていく。本発明に係るコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムでは、白と黒の濃淡のデジタルのグレースケール画像として取得された培養後の培地の投影像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲をコロニーであると判定することにより、精度良くコロニーを検出することができ、正確にコロニーの個数を数えることができる。
【0011】
また、複数のコロニーが接触したときでも、それぞれのコロニーが周囲に向かって薄くなる特徴を有していれば、各コロニーを分離して検出することができる。ゴミ等はグレースケール画像では周囲に向かって薄くならないため、ゴミ等をコロニーと判断するのを防ぐことができる。このように、本発明に係るコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムによれば、より正確にコロニーの個数を数えることができる。また、培養後に、一回だけ培地の投影像を取得すればよく、培養中に何度も撮影する場合と比べて、少ない労力でコロニーの検出を行うことができる。
【0012】
本発明に係るコロニー検出方法で、前記検出ステップは、前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像に基づいて、複数の異なる階調値を設定する階調値設定ステップと、前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像から、前記階調値設定ステップで設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する複数の抽出画像を得る抽出画像取得ステップと、前記抽出画像取得ステップで得られた各抽出画像を、対応する階調値の濃い順に並べたとき、各階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する判定ステップとを、有することが好ましい。
【0013】
本発明に係るコロニー検出システムで、前記検出手段は、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に基づいて、複数の異なる階調値を設定する階調値設定手段と、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から、前記階調値設定手段で設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する複数の抽出画像を得る抽出画像取得手段と、前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像を、対応する階調値の濃い順に並べたとき、各階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する判定手段とを、有することが好ましい。
【0014】
本発明に係るコロニー検出プログラムで、前記検出手段は、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に基づいて、複数の異なる階調値を設定する階調値設定手段と、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から、前記階調値設定手段で設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する複数の抽出画像を得る抽出画像取得手段と、前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像を、対応する階調値の濃い順に並べたとき、各階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する判定手段とを、有することが好ましい。
【0015】
この判定手段等を有する場合、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲を抽出することができ、精度良くコロニーを検出することができる。複数の異なる階調値は、一定の間隔で設定されてもよく、徐々に間隔が増えたり減ったりするよう設定されてもよく、全く任意に設定されてもよい。また、取得されたグレースケール画像の最大の階調値と最小の階調値とから、間隔を求めて設定されてもよい。
【0016】
本発明に係るコロニー検出方法で、前記判定ステップは、前記抽出画像取得ステップで得られた所定の階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積より、前記所定の階調値の次に濃い階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定することが好ましい。
本発明に係るコロニー検出システムで、前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた所定の階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積より、前記所定の階調値の次に濃い階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定することが好ましい。
本発明に係るコロニー検出プログラムで、前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた所定の階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積より、前記所定の階調値の次に濃い階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定することが好ましい。
この場合、取得されたグレースケール画像で複数のコロニーが接触していても、コロニーであると判定したときの抽出画像の階調値よりも薄い階調値でそれらのコロニーが接触していれば、各コロニーを分離して検出することができる。
【0017】
本発明に係るコロニー検出方法で、前記判定ステップは、前記抽出画像取得ステップで得られた各抽出画像から、対応する階調値より濃い部分の形状が円形状のものについてのみ、コロニーかどうかを判定してもよい。
本発明に係るコロニー検出システムで、前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像から、対応する階調値より濃い部分の形状が円形状のものについてのみ、コロニーかどうかを判定してもよい。
本発明に係るコロニー検出プログラムで、前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像から、対応する階調値より濃い部分の形状が円形状のものについてのみ、コロニーかどうかを判定してもよい。
この場合、ゴミ等は円形状でないものが多く、コロニーは円形状を成して成長していくため、ゴミ等をコロニーと判定するのを効果的に防ぐことができる。また、円形状でないものはコロニーかどうかの判定から除外するため、効率的である。
【0018】
本発明に係るコロニー検出方法で、前記検出ステップは、前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得るフィルタステップと、前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像から前記フィルタステップで得られた基準画像を差し引いて、または、前記グレースケール画像を前記基準画像で割って判定用画像を得る減算ステップとを有し、前記階調値設定ステップは、前記減算ステップで得られた判定用画像に基づいて各階調値を設定し、前記抽出画像取得ステップは、前記減算ステップで得られた判定用画像に基づいて各抽出画像を得てもよい。
本発明に係るコロニー検出システムで、前記検出手段は、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得るフィルタ手段と、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から前記フィルタ手段で得られた基準画像を差し引いて、または、前記グレースケール画像を前記基準画像で割って判定用画像を得る減算手段とを有し、前記階調値設定手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各階調値を設定し、前記抽出画像取得手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各抽出画像を得てもよい。
本発明に係るコロニー検出プログラムで、前記検出手段は、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得るフィルタ手段と、前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から前記フィルタ手段で得られた基準画像を差し引いて、または、前記グレースケール画像を前記基準画像で割って判定用画像を得る減算手段とを有し、前記階調値設定手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各階調値を設定し、前記抽出画像取得手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各抽出画像を得てもよい。
【0019】
このローパスフィルタを適用する場合、ローパスフィルタにより、コロニーや培地の濁りなどの部分的な濃淡を取り除いた基準画像を得ることができる。グレースケール画像からこの基準画像を差し引いたり、グレースケール画像を基準画像で割ったりすることにより、背景となる培地の色が薄く、部分的な濃淡のみが残る判定用画像を得ることができる。この判定画像に基づいてコロニーの判定を行うことにより、より高精度にコロニーを検出することができる。さらに背景となる培地の色を薄くしてコロニーの検出精度を高めるために、ローパスフィルタを適用した画像にオフセットを加えたものを基準画像としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少ない労力で、より正確にコロニーの個数を数えることができるコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態のコロニー検出システムを示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態のコロニー検出システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態のコロニー検出システムによるコロニー検出方法を示すフローチャートである。
【図4】図1に示すコロニー検出システムの処理原理を示す(a)コロニーおよびゴミの投影像、(b)その投影像のグレースケール濃度分布を示すグラフである。
【図5】図1に示すコロニー検出システムの、処理前の培地の一例を示す(a)平面図、(b)側面図、(c)グレースケール濃度分布および設定された閾値(階調値)を示すグラフである。
【図6】図1に示すコロニー検出システムの、図5に示す培地の処理例を示す、図5(c)の各階調値(丸数字)に対応する抽出画像である。
【図7】図1に示すコロニー検出システムの、コロニーの検出結果の一例を示す投影像である。
【図8】図1に示すコロニー検出システムの、(a)処理前の培地の一例を示す投影像、(b)その投影像にローパスフィルタを適用した後の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図8は、本発明の実施の形態のコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムを示している。なお、本発明の実施の形態のコロニー検出方法は、そのコロニー検出システムにより実行される方法であり、コロニー検出プログラムを記録したハードディスク、CD−ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体によりコンピュータに実行させることができる。
【0023】
本発明の実施の形態のコロニー検出システムは、被検査対象の細菌を含むと考えられる試料を培養する培地に対して、培地を通過する光による投影像に基づいて細菌のコロニーを検出するために使用される。図1に示すように、本発明の実施の形態のコロニー検出システムは、光源11と画像取得手段12と検出手段13とを有している。
【0024】
図1に示すように、光源11は、白色面光源から成っている。
画像取得手段12は、デジタル顕微鏡に取り付けられた、エリアセンサと色収差の大きい結像レンズを有するデジタル式のカメラから成っている。画像取得手段12は、デジタル顕微鏡にセットされたシャーレに収納された培地1に対して、反対側から光源11の光をあてたときの培地1の投影像を取得するよう構成されている。なお、画像取得手段12は、特許文献3に記載の方法により投影像を取得してもよい。画像取得手段12は、培養後の培地1の投影像を白と黒の濃淡で表された、デジタルのビットマップ形式のグレースケール画像として取得するようになっている。
【0025】
図1に示すように、検出手段13は、コンピュータから成り、画像取得手段12に接続されている。図2に示すように、検出手段13は、フィルタ手段14と減算手段15と階調値設定手段16と抽出画像取得手段17と判定手段18とを有している。フィルタ手段14は、画像取得手段12で取得されたグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して、コロニーや培地1の濁りなどの部分的な濃淡を取り除いた基準画像を得るよう構成されている。減算手段15は、画像取得手段12で取得されたグレースケール画像から、フィルタ手段14で得られた基準画像を差し引き、さらに僅かなオフセット値を差し引いた判定用画像を得るよう構成されている。
【0026】
階調値設定手段16は、減算手段15で得られた判定用画像に基づいて、複数の異なる階調値(閾値)を設定するよう構成されている。階調値設定手段16は、判定用画像の最大の階調値と最小の階調値との間に、所定の間隔で複数の階調値を設定するよう構成されている。抽出画像取得手段17は、減算手段15で得られた判定用画像から、階調値設定手段16で設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する2値化された複数の抽出画像を得るよう構成されている。
【0027】
判定手段18は、まず、抽出画像取得手段17で得られた各抽出画像から、対応する階調値より濃い部分の形状が円形状のもの以外を除去するよう構成されている。さらに、判定手段18は、抽出画像取得手段17で得られた各抽出画像を、対応する階調値の濃い順に並べたとき、所定の階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積より、次に濃い階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定するよう構成されている。また、判定手段18は、コロニーであると判定された範囲にマーカーを付け、階調値が薄くなるにつれて連結したコロニーがある場合は分離するよう構成されている。こうして、検出手段13は、画像取得手段12で取得されたグレースケール画像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている円形状の範囲をコロニーであると判定するようになっている。
【0028】
次に、図3を参照して、本発明の実施の形態のコロニー検出システムの処理手順について説明する。まず、画像取得手段12により培養後の培地1の投影像をグレースケールで取得し、検出手段13に送る(ステップ21)。検出手段13のフィルタ手段14により、グレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得る(ステップ22)。減算手段15により、グレースケール画像(元画像)から基準画像を差し引き、さらにオフセット値を差し引いた判定用画像を得る(ステップ23)。階調値設定手段16により、判定用画像の最大の階調値を初期閾値に設定する(ステップ24)。
【0029】
抽出画像取得手段17により、判定用画像から初期閾値より濃い画素のみを抽出して、2値化された抽出画像を得る(ステップ25)。判定手段18により、抽出画像から、濃い部分の形状が円形状のもの以外を除去する(ステップ26)。このとき、コロニーは円形状を成して成長していくため、円形状でないゴミ等を除去することができる。階調値設定手段16により、初期閾値から、判定用画像の最大の階調値と最小の階調値との間隔から求められた所定の間隔の値を差し引いて、新たな閾値とする(ステップ27)。
【0030】
その閾値に基づいて、ステップ25およびステップ26を行う。判定手段18により、一つ濃い閾値に対応する抽出画像の、その閾値より濃い部分の面積より、現在の閾値に対応する抽出画像の、その閾値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する。このとき、図4に示すように、コロニーの投影像は、グレースケールの濃度分布が円錐状になるのに対し、円形のゴミ等の投影像は、グレースケールの濃度分布が円柱になる。このように、ゴミ等はグレースケール画像では周囲に向かって薄くならないため、ゴミ等を除去することができる。コロニーであると判定された範囲にマーカーを付け、その画像を計数画像とする(ステップ28)。階調値設定手段16により、現在の閾値から、所定の間隔の値を差し引いて、新たな閾値とする(ステップ27)。
【0031】
その閾値に基づいて、ステップ25、26、28を行う。このとき、新たな計数画像を前回求めた計数画像と比較して、連結したコロニーがある場合は分離し、分離後の画像を新しい計数画像とする(ステップ29)。階調値設定手段16により、現在の閾値から、所定の間隔の値を差し引いて、新たな閾値とする(ステップ27)。ステップ25、26、28、29、27を、閾値が0以下になるまで繰り返す(ステップ30)。閾値が0以下になったならば、そのときの計数画像をコロニーカウント画像として保存する(ステップ31)。保存されたコロニーカウント画像中のマーカーの付いたコロニーの数を数える。
【0032】
次に、図5および図6の具体例に沿って、本発明の実施の形態のコロニー検出システムの処理手順を示す。図5に示す培養後の培地1に対して、図6に示すように、初期閾値よりも大きい階調値(丸数字1)で抽出画像を作成すると、コロニーも何も存在しない画像が得られる。初期閾値(丸数字2)での抽出画像では、濃い部分が円形ではないため、判定手段18によりコロニーではないものとして除去される。次の閾値(丸数字3)での抽出画像では、丸数字2の初期閾値のものと変化がないため、コロニーは抽出されない。
【0033】
次の閾値(丸数字4)での抽出画像では、2つの円形状の領域が現れ、これらがコロニーの候補となる。次の閾値(丸数字5)での抽出画像では、前の丸数字4の抽出画像で現れた2つの円形状の領域が拡大したため、これらをコロニーと判定し、マーカーを付ける。また、さらに円形状の領域が1つ現れ、これもコロニーの候補となる。次の閾値(丸数字6)での抽出画像では、前の丸数字5の抽出画像でマーカーを付けた2つのコロニーが連結しているが、これらを分離して2つのコロニーとする。また、前の丸数字5の抽出画像で現れた円形状の領域が拡大したため、これをコロニーと判定し、マーカーを付ける。
【0034】
次の閾値(丸数字7)での抽出画像では、新たに円形状の領域が1つ現れ、これをコロニーの候補とする。次の閾値(丸数字8)での抽出画像では、前の丸数字7の抽出画像で現れた円形状の領域が拡大していないため、判定手段18によりコロニーではないものとして除去する。この段階で閾値が0以下となるため、処理を終了する。処理の結果、コロニーは3個となり、ゴミ等を除去して、精度良くコロニーを検出し、正確にコロニーの個数を数えることができている。
【0035】
このように、本発明の実施の形態のコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムによれば、精度良くコロニーを検出することができ、正確にコロニーの個数を数えることができる。また、取得されたグレースケール画像で複数のコロニーが接触していても、コロニーであると判定したときの抽出画像の階調値よりも薄い階調値でそれらのコロニーが接触していれば、各コロニーを分離して検出することができる。
【0036】
培養後に、一回だけ培地1の投影像を取得すればよく、培養中に何度も撮影する場合と比べて、少ない労力でコロニーの検出を行うことができる。また、ローパスフィルタにより、コロニーや培地1の濁りなどの部分的な濃淡を取り除いたものを基準画像とし、グレースケール画像から基準画像およびオフセットを差し引いたものを判定用画像としているため、背景となる培地1の色を薄くしてコロニーの検出精度を高めることができる。
【0037】
図7に示すように、本発明の実施の形態のコロニー検出方法、コロニー検出システムおよびコロニー検出プログラムにより、実際の培養後の培地1中のコロニーの検出を行った。その結果、円形状ではないゴミや、円形状のゴミをコロニーと判定するのを防ぐことができた。また、コロニー同士が連結したものも、2個に分離して正確に数えることができた。
【0038】
図8に、画像取得手段12により取得された実際の培養後の培地1の画像、および、フィルタ手段14によりローパスフィルタを適用した後の画像を示す。図8に示すように、ローパスフィルタにより、コロニーや培地1の濁りなどの部分的な濃淡を取り除くことができていることが確認できる。
【符号の説明】
【0039】
1 培地
11 光源
12 画像取得手段
13 検出手段
14 フィルタ手段
15 減算手段
16 階調値設定手段
17 抽出画像取得手段
18 判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地を通過する光による投影像に基づいて細菌のコロニーを検出するコロニー検出方法であって、
培養後の培地の前記投影像を、白と黒の濃淡のデジタルのグレースケール画像として取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲をコロニーであると判定する検出ステップとを、
有することを特徴とするコロニー検出方法。
【請求項2】
前記検出ステップは、
前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像に基づいて、複数の異なる階調値を設定する階調値設定ステップと、
前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像から、前記階調値設定ステップで設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する複数の抽出画像を得る抽出画像取得ステップと、
前記抽出画像取得ステップで得られた各抽出画像を、対応する階調値の濃い順に並べたとき、各階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する判定ステップとを、
有することを特徴とする請求項1記載のコロニー検出方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記抽出画像取得ステップで得られた所定の階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積より、前記所定の階調値の次に濃い階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定することを、特徴とする請求項2記載のコロニー検出方法。
【請求項4】
前記判定ステップは、前記抽出画像取得ステップで得られた各抽出画像から、対応する階調値より濃い部分の形状が円形状のものについてのみ、コロニーかどうかを判定することを、特徴とする請求項2または3記載のコロニー検出方法。
【請求項5】
前記検出ステップは、
前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得るフィルタステップと、
前記画像取得ステップで取得されたグレースケール画像から前記フィルタステップで得られた基準画像を差し引いて、または、前記グレースケール画像を前記基準画像で割って判定用画像を得る減算ステップとを有し、
前記階調値設定ステップは、前記減算ステップで得られた判定用画像に基づいて各階調値を設定し、
前記抽出画像取得ステップは、前記減算ステップで得られた判定用画像に基づいて各抽出画像を得ることを、
特徴とする請求項2、3または4記載のコロニー検出方法。
【請求項6】
培地を通過する光による投影像に基づいて細菌のコロニーを検出するコロニー検出システムであって、
培養後の培地の前記投影像を、白と黒の濃淡のデジタルのグレースケール画像として取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲をコロニーであると判定する検出手段とを、
有することを特徴とするコロニー検出システム。
【請求項7】
前記検出手段は、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に基づいて、複数の異なる階調値を設定する階調値設定手段と、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から、前記階調値設定手段で設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する複数の抽出画像を得る抽出画像取得手段と、
前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像を、対応する階調値の濃い順に並べたとき、各階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する判定手段とを、
有することを特徴とする請求項6記載のコロニー検出システム。
【請求項8】
前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた所定の階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積より、前記所定の階調値の次に濃い階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定することを、特徴とする請求項7記載のコロニー検出システム。
【請求項9】
前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像から、対応する階調値より濃い部分の形状が円形状のものについてのみ、コロニーかどうかを判定することを、特徴とする請求項7または8記載のコロニー検出システム。
【請求項10】
前記検出手段は、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得るフィルタ手段と、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から前記フィルタ手段で得られた基準画像を差し引いて、または、前記グレースケール画像を前記基準画像で割って判定用画像を得る減算手段とを有し、
前記階調値設定手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各階調値を設定し、
前記抽出画像取得手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各抽出画像を得ることを、
特徴とする請求項7、8または9記載のコロニー検出システム。
【請求項11】
培地を通過する光による投影像に基づいて細菌のコロニーを検出するコロニー検出プログラムであって、
培養後の培地の前記投影像を、白と黒の濃淡のデジタルのグレースケール画像として取得する画像取得手段、および、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像の中で、中心が濃く、周囲に向かって薄くなっている範囲をコロニーであると判定する検出手段、
としてコンピュータを機能させるためのコロニー検出プログラム。
【請求項12】
前記検出手段は、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に基づいて、複数の異なる階調値を設定する階調値設定手段と、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から、前記階調値設定手段で設定された各階調値より濃い画素のみをそれぞれ抽出して、各階調値に対応する複数の抽出画像を得る抽出画像取得手段と、
前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像を、対応する階調値の濃い順に並べたとき、各階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定する判定手段とを、
有することを特徴とする請求項11記載のコロニー検出プログラム。
【請求項13】
前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた所定の階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積より、前記所定の階調値の次に濃い階調値に対応する抽出画像の、その階調値より濃い部分の面積が拡大している範囲をコロニーであると判定することを、特徴とする請求項12記載のコロニー検出プログラム。
【請求項14】
前記判定手段は、前記抽出画像取得手段で得られた各抽出画像から、対応する階調値より濃い部分の形状が円形状のものについてのみ、コロニーかどうかを判定することを、特徴とする請求項12または13記載のコロニー検出プログラム。
【請求項15】
前記検出手段は、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像に対してローパスフィルタを適用して基準画像を得るフィルタ手段と、
前記画像取得手段で取得されたグレースケール画像から前記フィルタ手段で得られた基準画像を差し引いて、または、前記グレースケール画像を前記基準画像で割って判定用画像を得る減算手段とを有し、
前記階調値設定手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各階調値を設定し、
前記抽出画像取得手段は、前記減算手段で得られた判定用画像に基づいて各抽出画像を得ることを、
特徴とする請求項12、13または14記載のコロニー検出プログラム。


【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−75409(P2012−75409A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225281(P2010−225281)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(501354912)マイクロバイオ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】